特許第5746008号(P5746008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746008
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20150618BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20150618BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150618BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150618BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20150618BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20150618BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150618BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   F01N3/24 R
   F01N3/10 A
   F01N3/24 F
   F01N3/08 A
   F01N3/28 301A
   F01N3/28 301F
   F02D41/14 310J
   F01N3/22 301M
   F01N3/22 301G
   B01D53/36 101B
   F01N3/20 F
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-270313(P2011-270313)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-122178(P2013-122178A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−173782(JP,A)
【文献】 特表2011−527404(JP,A)
【文献】 特開2011−196199(JP,A)
【文献】 特開2010−265831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に配置された卑金属触媒を担持する第一NOX還元触媒装置と、前記排気通路の前記第一NOX還元触媒装置の下流側に配置されたアンモニア吸蔵能力を有する第二NOX還元触媒装置と、前記第一NOX還元触媒装置の上流側に配置された炭化水素吸蔵装置と、前記炭化水素吸蔵装置をバイパスするバイパス通路とを具備し、前記第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリッチであるときには、前記第一NOX還元触媒装置によって排気ガス中のNOXを還元してアンモニアを生成すると共に、生成された前記アンモニアを前記第二NOX還元触媒装置に吸蔵し、前記第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには、前記第二NOX還元触媒装置によって排気ガス中のNOXを前記NOX還元触媒装置に吸蔵された前記アンモニアを使用して還元する内燃機関の排気浄化装置において、内燃機関の燃焼空燃比がリッチにされているときに前記炭化水素吸蔵装置に吸蔵された炭化水素が内燃機関の燃焼空燃比を前記リーンから前記リッチにする直前に放出されるように、排気ガスを前記バイパス通路及び前記炭化水素吸蔵装置のいずれを通過させるかと、内燃機関の燃焼空燃比とが制御され、前記排気通路の前記第二NOX還元触媒装置の下流側に配置された酸化触媒装置と、前記排気通路の前記第二NOX還元触媒装置と前記酸化触媒装置との間に二次空気を供給する二次空気供給装置と、前記排気通路の前記第二NOX還元触媒装置と前記酸化触媒装置との間に配置された第一NOXセンサと、前記排気通路の前記酸化触媒装置の下流側に配置された第二NOXセンサとを具備し、内燃機関の燃焼空燃比を前記リッチにすると共に前記二次空気供給装置により二次空気を供給し、前記第二NOXセンサによりNOXが検出されたときには、少なくとも第一NOXセンサによりNOXが検出されるまで内燃機関の燃焼空燃比を前記リーンにすることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチにされているときに、排気ガス温度が設定温度未満ならば排気ガスが前記炭化水素吸蔵装置を通過するようにし、排気ガス温度が前記設定温度以上ならば排気ガスが前記バイパス通路を通過するようにし、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリーンにされているときには、排気ガスが前記バイパス通路を通過するようにし、内燃機関の燃焼空燃比を前記リーンから前記リッチとするときには、排気ガス温度が前記設定温度未満ならば排気ガスが前記バイパス通路を通過するようにして内燃機関の燃焼空燃比を前記リッチにし、排気ガス温度が前記設定温度以上ならば排気ガスが前記炭化水素吸蔵装置を通過するようにし、前記炭化水素吸蔵装置から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンとなったときに内燃機関の燃焼空燃比を前記リッチにするように、排気ガスを前記バイパス通路及び前記炭化水素吸蔵装置のいずれを通過させるかと、内燃機関の燃焼空燃比とが制御されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中のHC、CO、及びNOXを浄化するために、三元触媒装置を機関排気系に配置することが公知である。しかしながら、三元触媒装置に一般的に使用される白金等の貴金属触媒は高価であり、貴金属触媒に代えて卑金属触媒を使用することが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、三元触媒装置において、貴金属触媒を代えて卑金属触媒を使用したり、貴金属触媒の一部を卑金属触媒に置き換えたりすると、NOX還元触媒装置としてNOXの還元性能が低下するために、燃焼空燃比を理論空燃比より僅かにリッチにして、排気ガス中にHC及びCO等の還元物質の濃度を高めてNOXを還元し易くすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−125862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、卑金属触媒を担持してNOXの還元性能が低いNOX還元触媒装置を備える内燃機関の排気浄化装置において、NOXを良好に還元するのに燃焼空燃比を理論空燃比よりリッチにしたのでは、燃料消費が大幅に悪化してしまう。
【0006】
従って、本発明の目的は、卑金属触媒を担持してNOXの還元性能が低いNOX還元触媒装置を備える内燃機関の排気浄化装置において、排気ガス中のNOXの還元のための燃料消費の悪化を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置は、排気通路に配置された卑金属触媒を担持する第一NOX還元触媒装置と、前記排気通路の前記第一NOX還元触媒装置の下流側に配置されたアンモニア吸蔵能力を有する第二NOX還元触媒装置と、前記第一NOX還元触媒装置の上流側に配置された炭化水素吸蔵装置と、前記炭化水素吸蔵装置をバイパスするバイパス通路とを具備し、前記第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリッチであるときには、前記第一NOX還元触媒装置によって排気ガス中のNOXを還元してアンモニアを生成すると共に、生成された前記アンモニアを前記第二NOX還元触媒装置に吸蔵し、前記第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには、前記第二NOX還元触媒装置によって排気ガス中のNOXを前記NOX還元触媒装置に吸蔵された前記アンモニアを使用して還元する内燃機関の排気浄化装置において、内燃機関の燃焼空燃比がリッチにされているときに前記炭化水素吸蔵装置に吸蔵された炭化水素が内燃機関の燃焼空燃比を前記リーンから前記リッチにする直前に放出されるように、排気ガスを前記バイパス通路及び前記炭化水素吸蔵装置のいずれを通過させるかと、内燃機関の燃焼空燃比とが制御されることを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチにされているときに、排気ガス温度が設定温度未満ならば排気ガスが前記炭化水素吸蔵装置を通過するようにし、排気ガス温度が前記設定温度以上ならば排気ガスが前記バイパス通路を通過するようにし、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリーンにされているときには、排気ガスが前記バイパス通路を通過するようにし、内燃機関の燃焼空燃比を前記リーンから前記リッチとするときには、排気ガス温度が前記設定温度未満ならば排気ガスが前記バイパス通路を通過するようにして内燃機関の燃焼空燃比を前記リッチにし、排気ガス温度が前記設定温度以上ならば排気ガスが前記炭化水素吸蔵装置を通過するようにし、前記炭化水素吸蔵装置から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンとなったときに内燃機関の燃焼空燃比を前記リッチにするように、排気ガスを前記バイパス通路及び前記炭化水素吸蔵装置のいずれを通過させるかと、内燃機関の燃焼空燃比とが制御されることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記排気通路の前記第二NOX還元触媒装置の下流側に配置された酸化触媒装置と、前記排気通路の前記第二NOX還元触媒装置と前記酸化触媒装置との間に二次空気を供給する二次空気供給装置と、前記排気通路の前記第二NOX還元触媒装置と前記酸化触媒装置との間に配置された第一NOXセンサと、前記排気通路の前記酸化触媒装置の下流側に配置された第二NOXセンサとを具備し、内燃機関の燃焼空燃比を前記リッチにすると共に前記二次空気供給装置により二次空気を供給し、前記第二NOXセンサによりNOXが検出されたときには、少なくとも第一NOXセンサによりNOXが検出されるまで内燃機関の燃焼空燃比を前記リーンにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置によれば、排気通路に配置された卑金属触媒を担持する第一NOX還元触媒装置と、排気通路の第一NOX還元触媒装置の下流側に配置されたアンモニア吸蔵能力を有する第二NOX還元触媒装置と、第一NOX還元触媒装置の上流側に配置された炭化水素吸蔵装置と、炭化水素吸蔵装置をバイパスするバイパス通路とを具備し、第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリッチであるときには、還元能力が低くても第一NOX還元触媒装置によって排気ガス中のNOXを還元することができ、一部のNOXからはアンモニアが生成される。こうして生成されたアンモニアは第二NOX還元触媒装置に吸蔵される。一方、第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンであるときには、第二NOX還元触媒装置によって排気ガス中のNOXを第二NOX還元触媒装置に吸蔵されたアンモニアを使用して還元するようになっている。こうして、第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンであるときにも排気ガス中のNOXを良好に還元することができる。それにより、内燃機関においてNOXの還元のために燃焼空燃比を常に理論空燃比よりリッチにする場合に比較して、燃料消費の悪化を改善することができる。
【0011】
また、第一NOX還元触媒装置の上流側には炭化水素吸蔵装置が配置されており、内燃機関の燃焼空燃比がリッチにされているときに炭化水素吸蔵装置に吸蔵された炭化水素が内燃機関の燃焼空燃比をリーンからリッチにする直前に放出されるように、排気ガスをバイパス通路及び炭化水素吸蔵装置のいずれを通過させるかと、内燃機関の燃焼空燃比とが制御されるようになっている。それにより、内燃機関の燃焼空燃比がリーンとされていて第二NOX還元触媒装置により吸蔵アンモニアを使用するNOXの還元ができなくなっても、炭化水素が放出されている間は、第一NOX還元触媒装置においてNOXの還元が可能となり、内燃機関の燃焼空燃比をリッチにする期間を短縮することができるために、燃料消費の悪化をさらに改善することができる。
【0012】
また、本発明による請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置によれば、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチにされているときに、排気ガス温度が設定温度未満ならば排気ガスが炭化水素吸蔵装置を通過するようにして、炭化水素吸蔵装置に排気ガス中の炭化水素を吸蔵する。しかしながら、排気ガス温度が設定温度以上ならば排気ガスが炭化水素吸蔵装置を通過するようにすると、吸蔵した炭化水素が放出されてしまうために、排気ガスはバイパス通路を通過するようにする。内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリーンにされているときには、排気ガス中に炭化水素は殆ど含まれていないために、排気ガスがバイパス通路を通過するようにする。
【0013】
内燃機関の燃焼空燃比をリーンからリッチとするときには、排気ガス温度が設定温度未満ならば炭化水素吸蔵装置から炭化水素を放出させることができないために排気ガスがバイパス通路を通過するようにして内燃機関の燃焼空燃比をリッチにするが、排気ガス温度が設定温度以上ならば排気ガスが前記炭化水素吸蔵装置を通過するようにして、炭化水素吸蔵装置から吸蔵した炭化水素を放出させ、第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりリッチにし、吸蔵炭化水素が殆ど放出されて炭化水素吸蔵装置から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンとなったときに内燃機関の燃焼空燃比をリッチにする。このように、排気ガスをバイパス通路及び炭化水素吸蔵装置のいずれを通過させるかと、内燃機関の燃焼空燃比とが制御されることにより、炭化水素吸蔵装置に炭化水素を良好に吸蔵することができると共に、炭化水素吸蔵装置から効果的に吸蔵炭化水素を放出させることができ、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリッチとする前のリーンとされているときに、第一NOX還元触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりリッチにしてNOXの還元が可能となり、内燃機関の燃焼空燃比をリッチとする期間を短くして燃料消費の悪化をさらに改善することができる。
【0014】
また、本発明による請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置によれば、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、排気通路の第二NOX還元触媒装置の下流側に配置された酸化触媒装置と、排気通路の第二NOX還元触媒装置と酸化触媒装置との間に二次空気を供給する二次空気供給装置と、排気通路の第二NOX還元触媒装置と酸化触媒装置との間に配置された第一NOXセンサと、排気通路の酸化触媒装置の下流側に配置された第二NOXセンサとを具備し、内燃機関の燃焼空燃比をリッチにすると共に二次空気供給装置により二次空気を供給する。それにより、第一NOX還元触媒装置のNOXの還元能力が低くても、第一NOX還元触媒装置において良好にNOXを還元することができ、第一NOX還元触媒装置から流出するHC及びCOは、下流側の酸化触媒装置において二次空気中の酸素を使用して酸化することができる。
【0015】
第一NOX還元触媒装置でのNOXの還元によって生成されたアンモニアは、第一NOX還元触媒装置の下流側に配置されたアンモニア吸蔵能力を有する第二NOX還元触媒装置に吸蔵され、第二NOX還元触媒装置のアンモニア吸蔵能力が飽和すると、第二NOX還元触媒装置からアンモニアが流出し、第二NOX還元触媒装置の下流側に配置された酸化触媒装置に流入して二次空気中の酸素を使用して酸化され、NOXが生成される。それにより、第二NOXセンサによりNOXが検出されたときには、第二NOX還元触媒装置には飽和量のアンモニアが吸蔵されていることとなり、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリーンにする。
【0016】
それにより、排気ガス中のNOXは第一NOX還元触媒装置において還元されないが、第二NOX還元触媒装置において吸蔵されたアンモニアによって良好に還元され、殆ど大気中へ放出されることはない。第二NOX還元触媒装置において吸蔵されたアンモニアの全てがNOXの還元に使用されると、第二NOX還元触媒装置からNOXが流出して第一NOXセンサによりNOXが検出される。少なくともこのときにまでは、内燃機関の燃焼空燃比はリーンにされる。その後は、第二NOX還元触媒装置ではNOXを還元することができないために、燃焼空燃比をリーンとしたまま炭化水素吸蔵装置から放出される炭化水素を利用して第一NOX還元触媒装置によりNOXを還元するか、又は、燃焼空燃比をリッチとして第一NOX還元触媒装置によりNOXを還元することとなる。こうして、内燃機関において燃焼空燃比を常に理論空燃比よりリッチにする場合に比較して、燃料消費の悪化を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による内燃機関の排気浄化装置を示す概略図である。
図2図1の排気浄化装置の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明による内燃機関の排気浄化装置を示す概略図である。内燃機関10は例えば筒内噴射式火花点火の四気筒内燃機関である。内燃機関10のエキゾーストマニホルド20の下流側の排気通路30には、炭化水素吸蔵装置40が配置されている。炭化水素吸蔵装置40は、例えばハニカム構造の基体上に炭化水素吸蔵材として例えばゼオライト等が担持されたものである。炭化水素吸蔵装置40は、排気ガス温度が設定温度(例えば300°C)未満であるときには、排気ガス中の炭化水素を良好に吸蔵し、排気ガス温度が設定温度以上となると、吸蔵した炭化水素を放出するものである。
【0019】
排気通路30には、炭化水素吸蔵装置40をバイパスするバイパス通路32が炭化水素吸蔵装置40の上流側に設けられた切換弁31を介して接続されており、切換弁31を第一位置とすることにより、排気ガスは実線矢印で示すようにバイパス通路32を通過せずに炭化水素吸蔵装置40を通過するようになり、切換弁31を第二位置とすることにより、排気ガスは点線矢印で示すように炭化水素吸蔵装置40を通過せずにバイパス通路32を通過するようになる。
【0020】
排気通路30のバイパス通路32の合流位置33より下流側(すなわち、炭化水素吸蔵装置40の下流側)には、第一NOX還元触媒装置50が配置されている。第一NOX還元触媒装置50は、例えばハニカム構造の基体上に、白金Pt等の高価な貴金属触媒ではなく、銅Cu、鉄Fe、銀Ag、又は、金Au等の卑金属触媒をアルミナ又はセリア等を担体として担持したものである。また、第一NOX還元触媒装置50は、一般的な三元触媒装置の貴金属触媒の一部を卑金属触媒に置換するなどして、高価な貴金属触媒の使用量を減少させたものとすることができる。
【0021】
また、排気通路30の第一NOX還元触媒装置50の下流側には、例えばハニカム構造の基体上に、例えば、超強酸処理したジルコニアZrO2を担持したり、銅Cu又は鉄FeをゼオライトZSM5又はSAPOを担体として担持したりして形成されて、アンモニア吸蔵機能を有するようにした第二NOX還元触媒装置60が配置されている。第二NOX還元触媒装置60は、排気ガスの空燃比がリーンでも吸蔵したアンモニアを還元剤として使用してNOXを還元することができる。また、排気通路30の第二NOX還元触媒装置60の下流側には、例えばハニカム構造の基体上に、卑金属触媒(又は貴金属触媒)を担持する酸化触媒装置70が配置されている。
【0022】
また、排気通路30の第二NOX還元触媒装置60と酸化触媒装置70との間には、二次空気を供給する二次空気供給装置80が配置されている。また、排気通路30の第二NOX還元触媒装置60と酸化触媒装置70との間には、第一NOXセンサ91が配置され、排気通路30の酸化触媒装置70の下流側には、第二NOXセンサ92が配置されている。第一NOXセンサ91及び第二NOXセンサ92は、排気ガス中のNOX濃度を検出することができる。
【0023】
前述の第一NOX還元触媒装置50は、貴金属触媒を担持する一般的な三元触媒装置に比較して、還元性能が低下するために、理論空燃比の排気ガスではNOXを十分に還元浄化することができず、NOXを十分に還元するためには、燃焼空燃比を理論空燃比より僅かにリッチ(例えば空燃比14)にして排気ガス中の還元物質の濃度を高めるようにしなければならない。しかしながら、常に燃焼空燃比を理論空燃比よりリッチにしたのでは、燃料消費が悪化してしまう。
【0024】
この問題を改善するために、本排気浄化装置は電子制御装置(図示せず)によって図2に示すフローチャートに従って制御される。本フローチャートは、機関始動と共に開始される。先ず、ステップ101において、フラグFが1であるか否かが判断される。機関停止と共にフラグFは0にリセットされるために、当初は、ステップ101の判断は否定されてステップ102へ進む。
【0025】
ステップ102では、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比より僅かにリッチ(例えば空燃比14)にする。このような燃焼空燃比の制御を可能とするために、排気通路30の切換弁31の上流側には排気ガスの空燃比を検出することができる第一空燃比センサ34が配置されている。次いで、ステップ103において、二次空気供給装置80から酸化触媒装置70の上流側への二次空気の供給を実施する。次いで、ステップ104において、排気ガス温度Tが設定温度T’(例えば300°C)以上であるか否かが判断される。
【0026】
排気ガス温度Tは、切換弁31の直上流側において温度センサ(図示せず)により測定しても良いが、現在の機関運転状態(機関負荷及び機関回転数)に基づきマップ等を使用して推定しても良い。ステップ104の判断が否定されるときには、ステップ105において切換弁31は第一位置とされ、ステップ104の判断が肯定されるときには、ステップ106において切換弁31は第二位置とされる。
【0027】
内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチにされているときには、理論空燃比よりリーンとされるときに比較してNOXの生成量が少なく、また、切換弁31がいずれの位置にされても、第一NOX還元触媒装置50へ流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比よりリッチとなり、排気ガス中のNOXは、還元性能が低い第一NOX還元触媒装置50においても、還元作用が活発となり、排気ガス中に含まれるHC及びCOを使用して良好に還元される。このときに、一部のNOXからはアンモニアが生成される(CO+H2O→H2+CO2,2NO+2CO+3H2→2NH3+2CO2)。こうして生成されたアンモニアは、第二NOX還元触媒装置60に吸蔵される。
【0028】
また、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチとされているときには、排気ガス中のHC及びCOの濃度が高くなり、一部のHC及びCOは、第一NOX還元触媒装置50において、NOXの還元に使用されることなく、また、酸化されることもなく、第一NOX還元触媒装置50から流出する。このように流出するHC及びCOは、第二NOX還元触媒装置60を通過して酸化触媒装置70へ流入し、二次空気供給装置80から供給される二次空気に含まれる酸素を使用して、酸化触媒装置70において酸化されるために、大気中へは殆ど放出されることはない。
【0029】
また、排気ガス温度Tが設定温度T’未満であるときには、炭化水素吸蔵装置40は、排気ガス中の炭化水素を良好に吸蔵するために、ステップ105において切換弁31が第一位置とされることにより、理論空燃比よりリッチな排気ガスが炭化水素吸蔵装置40を通過するようにされ、排気ガス中の一部の炭化水素が炭化水素吸蔵装置40に吸蔵される。一方、排気ガス温度Tが設定温度T’以上であれば、排気ガスが炭化水素吸蔵装置40を通過するようにされると、吸蔵した炭化水素を放出してしまうために、ステップ106において切換弁31が第二位置とされることにより、排気ガスはバイパス通路32を通過するようにされる。こうして、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチとされているときにおいて、排気ガス温度Tが設定温度T’未満であれば、炭化水素吸蔵装置40には炭化水素が吸蔵される。
【0030】
次いで、ステップ107において、第二NOXセンサ92によって酸化触媒装置70から流出する排気ガス中にNOXが含まれているか否かが判断される。当初は、酸化触媒装置70から流出する排気ガス中には殆どNOXは含まれておらず、ステップ107の判断は否定されてステップ109へ進む。
【0031】
ステップ109では、第一NOXセンサ91によって第二NOX還元触媒装置60から流出する排気ガス中にNOXが含まれているか否かが判断される。当初は、第二NOX還元触媒装置60から流出する排気ガス中には殆どNOXは含まれておらず、ステップ109の判断は否定されて、そのままステップ101へ戻る。
【0032】
詳しくは後述するが、もし、ステップ109の判断が肯定されれば、ステップ110において、排気ガス温度Tが設定温度T’以上であるか否かが判断され、この判断が否定されるときには、ステップ111において切換弁31を第二位置とし、ステップ114においてフラグFが0にリセットされる。
【0033】
一方、ステップ110の判断が肯定されるときには、ステップ112において切換弁31が第一位置とされ、次いで、ステップ113において炭化水素吸蔵装置40から流出する排気ガスの空燃比がリーンであるか否かが判断され、この判断が肯定されるときに、ステップ114においてフラグFは0にリセットされる。
【0034】
前述のようにして、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリッチにされ続けると、第一NOX還元触媒装置50において生成されるアンモニアが第二NOX還元触媒装置60に吸蔵され続け、遂には、第二NOX還元触媒装置60のアンモニア吸蔵量が上限値に達し、第二NOX還元触媒装置60からアンモニアが流出するようになる。こうして流出するアンモニアは、酸化触媒装置70へ流入し、二次空気供給装置80から供給される二次空気に含まれる酸素を使用して、酸化触媒装置70において酸化されてNOXを生成する(4NH3+5O2→4NO+6H2O)。
【0035】
それにより、第二NOXセンサ92がNOXを検出するために、ステップ107の判断が肯定され、ステップ108においてフラグFは1とされる。このときにおいて、依然として燃焼空燃比は理論空燃比よりリッチとされているために、第二NOX還元触媒装置60から流出する排気ガス中にはNOXは殆ど含まれておらず、ステップ109の判断が肯定されることはない。
【0036】
フラグFが1とされると、ステップ101の判断は肯定され、ステップ115において、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリーン(例えば空燃比15)とし、ステップ116において、二次空気供給装置70からの二次空気の供給を停止する(制御を簡素化するために二次空気の供給は常に実施するようにしても良い)。こうして、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリーンとされると、第一NOX還元触媒装置50へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンとなるために、第一NOX還元触媒装置50においては、還元作用が不活発となって、排気ガス中のNOXを良好に還元することはできず、NOXを含む排気ガスが第二NOX還元触媒装置60へ流入する。
【0037】
第二NOX還元触媒装置60において、排気ガスの空燃比はリーンであるが、排気ガス中のNOXは第二NOX還元触媒装置60に吸蔵されているアンモニアを還元剤として良好に還元される(6NO+4NH3→5N2+6H2O)。こうして、大気中へはNOXは殆ど放出されることはない。このときには、第二NOX還元触媒装置60からアンモニアがそのまま流出することはなく、ステップ107の判断は否定されるが、フラグFは1のままである。また、排気ガス中のNOXは第二NOX還元触媒装置60において還元されるために、ステップ109の判断も否定される。
【0038】
こうして、内燃機関の燃焼空燃比が理論空燃比よりリーンにされ続けると、第二NOX還元触媒装置60において吸蔵されたアンモニアがNOXの還元に使用され続け、遂には、第二NOX還元触媒装置60のアンモニア吸蔵量がゼロ又は非常に少なくなり、排気ガス中のNOXを還元することができなくなる。
【0039】
それにより、第二NOXセンサ92が酸化触媒装置60から流出する排気ガス中のNOXを検出してステップ107においてフラグFを1としても、第一NOXセンサ91が第二NOX還元触媒装置60から流出する排気ガス中のNOXを検出するために、ステップ109の判断が肯定され、ステップ114においてフラグFは0にリセットされる。
【0040】
ここで、ステップ109の判断が肯定されたときに、もし、排気ガス温度Tが設定温度T’未満であれば、ステップ110の判断が否定され、ステップ111において、切換弁31を第二位置とし、排気ガスがバイパス通路32を通過するようにして、ステップ114においてフラグFが0にリセットされるために、ステップ101の判断が否定され、ステップ102において、再び、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比より僅かにリッチ(例えば空燃比14)にする。次いで、ステップ103において、二次空気供給装置80から酸化触媒装置70の上流側への二次空気の供給を実施する。
【0041】
しかしながら、ステップ109の判断が肯定されたときに、排気ガス温度Tが設定温度T’以上であれば、ステップ110の判断が肯定され、ステップ112において、切換弁31を第一位置とし、排気ガスが炭化水素吸蔵装置40を通過するようにする。それにより、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリッチとしている間において、排気ガス温度Tが設定温度T’未満のときに炭化水素吸蔵装置40に吸蔵された炭化水素が、高温の排気ガスの通過により放出され、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリッチにしなくても、排気ガスの空燃比を理論空燃比よりリッチにすることができ、下流側の第一NOX還元触媒装置50において排気ガス中のNOXを良好に還元することができる。こうして、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリッチにする期間を短くすることが可能となる。
【0042】
93は炭化水素吸蔵装置40から流出する排気ガスの空燃比を検出するための第二空燃比センサであり、第二空燃比センサ93の出力がリーンとなるまでは、フラグFを0にリセットしないようになっている。炭化水素吸蔵装置40からの炭化水素の放出によっても、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンとなれば、第一NOX還元触媒装置50において排気ガス中のNOXを良好に還元することができなくなり、このときには、ステップ113の判断が肯定され、ステップ114においてフラグFは0にリセットされる。それにより、ステップ101の判断が否定され、ステップ102において、再び、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比より僅かにリッチ(例えば空燃比14)にする。次いで、ステップ103において、二次空気供給装置80から酸化触媒装置70の上流側への二次空気の供給を実施する。
【0043】
このようにして、内燃機関の燃焼空燃比を交互にリッチ及びリーンとするが、前述したように、大気中へ殆どNOXが放出されないようにすることができ、内燃機関において燃焼空燃比を常に理論空燃比よりリッチにする場合に比較して、燃料消費の悪化を改善することができる。また、炭化水素吸蔵装置40を使用することにより、内燃機関の燃焼空燃比を理論空燃比よりリーンからリッチとする直前において依然としてリーンとされているときに、第一NOX還元触媒装置50へ流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりリッチにすることができ、内燃機関の燃焼空燃比をリッチとする期間を短くして燃料消費の悪化をさらに改善することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 内燃機関
30 排気通路
31 切換弁
32 バイパス通路
34 第一空燃比センサ
40 炭化水素吸蔵装置
50 第一NOX還元触媒装置
60 第二NOX還元触媒装置
70 酸化触媒装置
80 二次空気供給装置
91 第一NOXセンサ
92 第二NOXセンサ
93 第二空燃比センサ
図1
図2