(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第二の芳香族ジオールが3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール及び3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノールから選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
前記有機溶媒が、20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で測定して、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さいHClの塩化水素(HCl)溶解度を有し、この有機溶媒が、90℃よりも高く、250℃よりも低い標準沸点を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
工程(c)に於いて第二の混合物の中に添加される窒素塩基が、少なくとも2.0で3.0よりも小さい、窒素塩基対第二の芳香族ジオールのモル比を与えるために充分な量にある請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
6,6’−(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ジジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンの製造プロセスであって、
(a)PCl3を、2,2’−ビフェノールと、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの存在下で、スラリー(このスラリーは、固体形での2,2’−ビフェノール及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの一部分を含み、そして有機溶媒中の2,2’−ビフェノール及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの残りの部分を含む溶液相を含んでなる)中で、25℃よりも高く75℃よりも低い反応温度で、2,2’−ビフェノールの95モル%超を1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイトに転化させるのに充分な時間、接触させる工程(ここで、このスラリーは、2,2’−ビフェノールの合計モル基準で計算して5モル%未満の窒素塩基を含み、PCl3の2,2’−ビフェノールに対するモル比が、1.0/1よりも大きく3.5/1よりも小さく、この有機溶媒が、20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で測定して、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さいHClの塩化水素溶解度を有し、それによって、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイト、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール及び過剰のPCl3を含む第一の混合物を得る)、
(b)過剰のPCl3を除去して、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイト及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールからなる第二の混合物を得る工程並びに
(c)トリアルキルアミン及びピリジンからなる群から選択された窒素塩基を、少なくとも2.0で3.0よりも小さい、窒素塩基対3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールのモル比を与えるのに充分な量で、6,6’−(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ジジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンを製造するのに充分な条件下で添加する工程
を含んでなるプロセス。
【背景技術】
【0002】
ホスファイトは、均一系触媒のためのリガンドとして、そして可塑剤、難燃剤、UV安定剤及び酸化防止剤の成分として、有用である、有機リン化合物の種々の種類を表す。ホスファイトは、更に、有機モノホスファイト及び有機ポリホスファイトとして分類することができる。有機ポリホスファイト、特に、単に「ビスホスファイト」として、より一般的に参照される有機ビスホスファイトは、或る種の均一系触媒のために特に有用である。例えば特許文献1は、一般的に、ビスホスファイトを含む有機ポリホスファイトの合成及びヒドロホルミル化プロセスに於けるリガンドとしてのその使用に関する。
【0003】
有機ポリホスファイトは、典型的には、中間体としてホスホロモノクロリダイトを使用して段階式プロセスに於いて合成される。例えば特許文献2、特許文献3及び特許文献1を参照されたい。ホスホロモノクロリダイトは、典型的には、三塩化リン(PCl
3)を、1モル当量のジアルコール又は2モル当量のモノアルコールと、出発アルコールの反応性及び得られるホスホロモノクロリダイトに依存性の反応条件下で接触させることによる縮合反応に於いて合成される。生成されるホスホロモノクロリダイトのそれぞれの分子について、この縮合反応は、2分子の塩化水素(HCl)を生成する。アルコールの高い、例えば90%よりも高い転化率を達成するための縮合反応のために、反応溶液からHClを除去する必要がある。
【0004】
縮合反応からのHCl除去のための一つのアプローチは、生成されるべきHClの理論量に対して化学量論的量で又は過剰で、窒素塩基を使用してHClを中和することである。例えば特許文献4、特許文献2、特許文献5、特許文献6及び非特許文献1を参照されたい。しかしながら、窒素塩基を使用すると、得られる窒素塩基−HCl塩を、濾過手順によって反応混合物から除去しなくてはならず、この手順は、塩化物及び窒素含有廃液を生じ、次いでコストを増加する。
【0005】
PCl
3−アルコール縮合反応からのHCl除去のための別のアプローチは、アルコール及び大過剰量のPCl
3の混合物を、PCl
3(沸点(bp):74〜78℃)を還流するのに充分に高い温度で加熱すること(これによって、HClが追い出される)を含む。このアプローチに於いて、窒素塩基は、必要でないか又は使用されない。例えば特許文献1には、2,2’−ビフェノールと3.7モル当量(2.7当量過剰)のPCl
3との混合物を還流することによる、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルホスホロモノクロリダイトの製造手順が開示されている。ホスホロモノクロリダイト生成物は、減圧下での蒸留によって、使用される2,2’−ビフェノールのモル基準で、72モル%収率で単離されると開示されている。非特許文献2及び非特許文献3に於いて参照されるような別の手順は、1,1’−ビ−2−ナフトール及び11.5モル当量のPCl
3の混合物を、75〜80℃で加熱することによって、4−クロロジナフト[2,1−d:1’,2’−f][1,3,2]ジオキサホスフェピンを合成する。上記のアプローチの一つの望ましくない特徴は、それが、大過剰量のPCl
3(これは、水分と発熱的に反応し、典型的には追加の安全考慮を含む)を除去し、取り扱うニーズを含む。このプロセスに於いて使用されるべきPCl
3の過剰量を減少させることが望ましいであろう。
【0006】
PCl
3−アルコール縮合反応が、固体ジオールを使用すると、HCl除去のための更に別のアプローチには、a)固体ジオールを、非プロトン性極性有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)中に又は非プロトン性極性有機溶媒を含有する溶媒中に溶解して、供給物溶液を製造する工程及びb)この供給物溶液を、炭化水素溶媒、例えばトルエン中に溶解されたPCl
3の還流溶液の中にゆっくり添加する工程が含まれる。この還流は、反応溶液から気体として、HClを追い出すことを必要とする。非プロトン性極性有機溶媒、例えばTHFは、一般的に、特にジオールが炭化水素溶媒中に許容できない溶解度を有する場合、供給物溶液の重量基準で、環境温度で20重量%よりも多いジオールを含有する供給物溶液を得ることを要求される。このプロセスは、商業的に使用されており、特許文献7の主題である。
【0007】
上記の商業的プロセスを参照して、塩化水素は、好ましい非プロトン性極性有機溶媒、テトラヒドロフランと反応して、4−クロロブタノールを生成することが知られている。例えば非特許文献4を参照されたい。塩化水素は、他の条件が同じままである場合、より低い温度でテトラヒドロフランと一層ゆっくり反応する。しかしながら、約98℃よりも低い温度で運転すると、反応溶液中でTHF−HCl錯体の形で、塩化水素の蓄積に至り得、この錯体は、次いで4−クロロブタノール生成の一層高い速度に至り得る。不利なことに、PCl
3及びホスホロモノクロリダイトの両方は、4−クロロブタノールと反応して、望ましくない副生物を生成する。
【0008】
ホスホロモノクロリダイトは、望ましくは、有機ポリホスファイトの合成に於いて、更なる精製なしに使用される。しかしながら、ホスホロモノクロリダイト縮合反応の間の4−クロロブタノールの生成は、ホスホロモノクロリダイト生成物、好ましくは1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルホスホロモノクロリダイトの収率を低下させるのみならず、続く有機ポリホスファイト合成反応を複雑にする。
【0009】
前記の商業的プロセスの更なる面として、このプロセスから回収されるPCl
3及びTHFの任意の混合物も、PCl
3(bp:74〜78℃)とTHF(bp:65〜67℃)とを分離するニーズのために、典型的には再使用されない。
【0010】
上記の観点で、ホスホロモノクロリダイトを製造する一層効率的なプロセス及びビスホスファイトを製造する一層効率的なプロセスについての、当該技術分野に於けるニーズが存在する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に於いて使用される、或る種の句、用語及び語を以下に定義する。句、用語又は語の意味を解釈するとき、特定の使用のために、本明細書中のどこかで、異なった意味が記載されていない限り又はその句、用語若しくは語の使用の文脈が、ここに示された定義とは異なった意味が意図されることを明らかに示していない限り、以下の定義が支配する。
【0028】
冠詞(a及びthe)は、冠詞によって修飾されているものの単数形又は複数形を指す。2個又はそれ以上の員のリストの最初の員の前で使用されるとき、冠詞は、独立に、そのリスト内のそれぞれの員を指す。本明細書中に使用されるとき、冠詞、「少なくとも一つの」及び「一つ又はそれ以上の」は、互換的に使用される。用語「を含んでなる(comprise)」及びその変形は、これらの用語が説明及び特許請求の範囲中に現れる場合、限定する意味を有しない。従って、例えば芳香族ジオールを含んでなる反応剤混合物は、この芳香族ジオールが「1種又はそれ以上」の芳香族ジオールを含むことを意味するとして解釈することができる。
【0029】
全てのパーセント(%)、好ましい量又は測定値、範囲及びそれらの終点は、包括的である。即ち、「5〜10の範囲」は、5及び10を含む。「少なくとも」は「以上」と等価であり、従って「最大」は「以下」と等価である。本明細書中の数字は、記載したもの以上の精度を有しない。従って、「115」は、少なくとも114.6から115.4までを含む。「少なくとも」、「よりも大きい」、「以上」として又は同様に記載されたパラメーターから、「最大」、「以下」、「よりも小さい」、「以下である」として又は同様に記載されたパラメーターまでの全ての範囲は、それぞれのパラメーターについて示された好ましさの相対程度に無関係に好ましい範囲である。従って、最も好ましい上限と組合せられた有利な下限を有する範囲は、本発明の実施のために好ましい。用語「有利には」は、必要なものよりも多い好ましさの程度を示すために使用され、より少ない好ましさの程度は、用語「好ましくは」によって示される。
【0030】
実施例又はその他の方法で示されている場合を除いて、本明細書に於いて、量、パーセント、性質、官能基等を表す全ての数は、全ての例に於いて、用語「約」によって修飾されるとして理解されるべきである。他の方法で記載されていない限り、望ましくない影響を起こすことができる要素、材料又は工程が、それが、許容できない程度までは影響を起こさないような、量又は形で存在するとき、それらの要素、材料又は工程は、本発明の実施のために実質的に存在しないと考えられる。当業者は、許容できる限界が、装置、条件、適用及びその他の変数と共に変化するが、それらが適用できるそれぞれの状況に於いて過度の実験なしに決定できることを認識している。幾つかの例に於いて、一つのパラメーターに於ける変動又は逸脱は、他の望ましい目的を達成するために許容できる。
【0031】
本明細書中で使用される句「式を有する」又は「式によって表される」は、限定されることを意図せず、用語「を含んでなる」が普通に使用されるときと同じように使用される。
【0032】
用語「を含んでなる」は、「含有する」、「含む」又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的であるか又は制限が無く、追加的、列挙されていない要素、材料又は工程を排除しない。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特定された要素、材料又は工程に加えて、列挙されていない要素、材料又は工程が、主題の少なくとも1個の基本的で新規な構成に、許容できなく、著しく影響を与えない量で任意的に存在することを示す。用語「のみからなる(consisting of)」は、列挙されていない要素、材料又は工程が、認識できる影響を有しないか又は実質的に存在しない程度まで任意に存在することを除いて、記載された要素、材料又は工程のみが存在することを示す。
【0033】
「ヒドロカルビル」部分は、1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去によって、炭化水素から誘導される一価の部分として定義される。「炭化水素」は、炭素原子及び水素原子から構成される化合物を指す、その通常の意味を有するものとする。ヒドロカルビルは、1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去によって、それぞれ、アルカン、アルケン、アルキン又はアレーンから誘導される一価の部分として定義される、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであってよい。アルキルは、第一級アルキル、第二級アルキル又は第三級アルキル(これは、それぞれ、アルキルを形成する炭素原子上に、2個若しくは3個の水素原子を有するか、1個の水素原子を有するか又は水素原子を有しない)であってよい。
【0034】
「ヒドロカルビレン」部分は、2個の炭素原子から2個の水素原子の除去によって、炭化水素から誘導される二価の部分として定義される。
【0035】
「置換ヒドロカルビル」又は「置換ヒドロカルビレン」部分は、ヒドロカルビル又はヒドロカルビレン中の1個又はそれ以上のH又はC原子が、1個若しくはそれ以上のヘテロ原子又は1個若しくはそれ以上の、1個若しくはそれ以上のヘテロ原子(これは、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、リン、ホウ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む)を含有する官能基によって置換されていることを意味する。置換ヒドロカルビル部分は、RO−(式中、Rは上記に定義されたようなヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル部分である)の一般式を有する「ヒドロカルビルオキシ」部分であってよい。
【0036】
炭素原子の数又は部分若しくは化合物を形成するそれらの範囲は、それぞれ、式「C
m」又は「C
m〜C
n」(式中、m及びnは整数である)によって部分又は化合物に接頭辞を付けることによって定義される。例えばC
1〜C
10ヒドロカルビルはヒドロカルビルが1〜10個の炭素原子の範囲内である炭素原子の数を有することを意味する。
【0039】
の3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノールの構造を使用することによって例示する。上記の構造に於いて、2個のフェニル環に接続している炭素原子は、1及び1’として指定され、ヒドロキシ基を有する炭素原子は、2及び2’として指定される。2及び2’の炭素原子に接続されている炭素原子は、それぞれ、3及び3’として指定され、以下同様である。
【0040】
有機溶媒中の「低い塩化水素溶解度」は、20セルシウス度(℃)の温度及び760水銀ミリメートル(mmHg)(101kPa)の全圧での、溶媒1モル当たり0.2モルよりも少ない塩化水素(HCl)として定義される。最低塩化水素溶解度は、重要ではなく、実際的に、20セルシウス度(℃)の温度及び760水銀ミリメートル(mmHg)(101kPa)の全圧で、溶媒1モル当たり0モルのHClであってよい。
【0041】
用語「有機溶媒」は、環境温度及び圧力で液体であり、別の物質(溶質)を溶解して、分子又はイオンレベルで均一に分散された混合物(溶液)を形成することができる有機物質を指す、その通常の意味を有する。
【0042】
用語「環境温度」は、22℃±2℃の温度を示す。
【0043】
用語「非プロトン性」は、ここでは、プロトンを供与しない有機溶媒を指す。
【0044】
有機溶媒を参照して、用語「沸点」は、その液相の蒸気圧が、1気圧の定義された圧力に等しい温度を意味する。
【0045】
「窒素塩基」は、HClを中和して、このプロセスに於いて使用される有機溶媒中に本質的に不溶性である塩を形成することができる、窒素含有有機化合物として定義される。窒素塩基は、好ましくは窒素−水素結合を含有せず、更に好ましくは窒素塩基は3個のアルキル置換基を含むか、(トリアルキルアミン)又はピリジン誘導体を含む(即ち、水素−窒素結合無し)。
【0046】
略字及び記号、「g」、「hr」、「L」、「mL」、「mol」、「mmol」「NMR」、「℃」及び「%」が、それぞれ、「グラム」、「時間」、「リットル」、「ミリリットル」、「モル」、「ミリモル」、「核磁気共鳴」、「セルシウス度」及び「パーセント」及びこれらの複数形のために使用される。全ての圧力は、絶対圧として表される。
【0047】
本明細書に於いて、元素の周期表に対する参照は、Nomenclature of Inorganic Chemistry:IUPAC Recommendations 2005,Royal Society of Chemistry,2005,N.G.Connelly及びT.Damhus編で刊行された元素の周期表を指すものとする。また、族又は族群に対する全ての参照は、族に番号を付けるためのIUPACシステムを使用するこの元素の周期表中に反映されている族又は族群であるものとする。
【0048】
本明細書中で引用したそれぞれの文献の関連する教示は、米国法律によって許容される最大範囲まで含められる。含められた文献の一部と本件特許出願との間の抵触の場合に、本件特許出願は、含められた部分に優先する。
【0049】
前記要約の通り、第一の面に於いて、本発明は、有機溶媒中で、芳香族ジオール(第一の芳香族ジオール)を三塩化リン(PCl
3)と接触させることを含んでなる、ホスホロモノクロリダイトを製造する新規な合成プロセスを提供する。本発明に於いて使用される第一の芳香族ジオールは、式I:
【0051】
(式中、mはゼロ、1又は2であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして任意的に、R
2はR
3に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意的に、ここで、R
4はR
5に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される。好ましくは、mはゼロ又は1であり、R
7及びR
8は、それぞれ、水素である。更に好ましくは、mはゼロ又は1であり、R
1、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ、水素である。式Iによって表される化合物は、後で説明されるような本発明の別の好ましい面に於いて、第二の、異なった芳香族ジオールが、また、プロセスに於いて使用され得るので、「第一の芳香族ジオール」として本明細書に於いて参照される。
【0052】
本発明プロセスに於いて第一の芳香族ジオールとして使用することができる芳香族ジオールの例には、これらに限定されないが、2,2’−ビフェノール、5,5’−ジメチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジクロロ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジヨード−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−プロピル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソプロピル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−sec−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−アミル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(2,2−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−2−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−2−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−4−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−2−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−4−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2’−ビフェノール、5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジフェニル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジエトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−プロポキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソプロポキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−sec−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソ−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−tert−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)及び2,2’−メチレンビス(4−tert−ブチル−フェノール)が含まれる。この芳香族ジオールの一つの好ましい種は2,2’−ビフェノールである。
【0053】
任意の商業的供給者から得ることができるような三塩化リンも、本発明のプロセスのために必要である。このプロセスに於いて使用される、PCl
3の第一の芳香族ジオールの全量に対するモル比は、有利には1.0よりも大きく、好ましくは1.1よりも大きく、更に好ましくは1.2よりも大きく、そして、有利には3.5よりも小さく、好ましくは3.3よりも小さく、更に好ましくは3.1よりも小さく、なお更に好ましくは2.9よりも小さく、なお更に好ましくは2.7よりも小さく、なお更に好ましくは2.5よりも小さく、なお更に好ましくは2.3よりも小さく、なお更に好ましくは2.1よりも小さく、なお更に好ましくは1.9よりも小さい。先行技術と比較したとき、PCl
3の合計芳香族ジオールに対する上記のモル比は、有利に、この縮合反応の完結の際に除去すべき過剰の未転化のPCl
3の量を減少させる。
【0054】
上記で判るように、一方に於いて、全芳香族ジオールに対するより低い過剰量のPCl
3が、望ましく使用されるが、他方に於いて、第一の芳香族ジオールとホスホロモノクロリダイト反応生成物との副反応を最小にするために、縮合反応の溶液相中の溶解した第一芳香族ジオールに対するPCl
3の高いモル比を維持することが望ましい。例えば2,2’−ビフェノールは、その反応生成物である1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイトと反応して、望ましくない副生物である2’−(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イルオキシ)ビフェニル−2−オール(式V)及び2,2’−ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イルオキシ)ビフェニル(式VI)を生成することができる。
【0056】
スラリー中に第一の芳香族ジオールの一部を維持する、即ち、固相と溶液相との間に分配する有機溶媒(及びその量)を選択することによって、本発明プロセスは、同時に、全第一の芳香族ジオールに対するPCl
3の全体的により低い過剰量を有することの前記の利益を得ながら、溶液又は反応相中の溶解した第一の芳香族ジオールに対するPCl
3の高いモル比を有することの利益を有利に得る。
【0057】
従って、プロセス中の有機溶媒の望ましい機能には、これらに限定されないが、a)溶液相中の第一の芳香族ジオールの濃度を低下させて、縮合反応の経過の間に、溶液相中の溶解した第一の芳香族ジオールに対するPCl
3の高いモル比を維持すること及びb)縮合反応溶液からのHClの放出を容易にすることが含まれる。上記の機能の少なくとも1個を実施するために、本発明プロセスのための有機溶媒は、下記の規準、即ちa)有機溶媒中の第一の芳香族ジオールの溶解度が、25℃で溶液の重量基準で、1%よりも高い、好ましくは2%よりも高い、更に好ましくは3%よりも高いが、50%よりも低いこと及びb)有機溶媒中のHClの溶解度が、20℃の温度及び760水銀ミリメートル(mmHg)(101kPa)の全圧で、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さい、好ましくは0.1モルよりも小さいHClであることに基づいて選択することができる。
【0058】
有機溶媒中の第一の芳香族ジオールの溶解度は、公知の手順を使用することによって測定することができる。例えば、特定の温度での有機溶媒中の第一の芳香族ジオールの溶解度は、過剰量の第一の芳香族ジオールを、有機溶媒中で、この特定の温度で、平衡が達成されるまでの充分な時間の間撹拌することによって得られる、第一の芳香族ジオールの飽和溶液を使用する、平衡溶解度方法によって決定することができる。その後、得られる液相飽和溶液、得られる固相又は液相及び固相の両方を、有機溶媒中の第一の芳香族ジオールの溶解度に到達する任意の一般的な分析方法によって分析する。
【0059】
有機溶媒中のHCl溶解度を決定するための手順は公知である。例えばバブラー(bubbler)手順が、多数の有機溶媒中のHCl溶解度を測定するために、Gerrard等(Chem.Rev.、1959,59,1105)及びAhmed等、(J.Appl.Chem.、1970年、第20巻、4月、第109−116頁)によって使用された。Gerrard等及びAhmed等によって報告された有機溶媒中のHCl溶解度の例を、表1に示す。
【0061】
このプロセスに於いて使用される有機溶媒の追加の望ましい機能には、これらに限定されないが、a)反応溶液中に式IIのホスホロモノクロリダイトを保持すること及びb)PCl
3の任意の過剰量の除去を単純化することによって、有機溶媒中の溶液としてのホスホロモノクロリダイトの単離を単純化することが含まれる。
【0062】
有利には、本発明のプロセスのために選択される有機溶媒は、90℃よりも高い、好ましくは95℃よりも高い、更に好ましくは100℃よりも高いが、好ましくは250℃よりも低い沸点を有し、そうして、このプロセスで使用される任意の過剰のPCl
3を、反応溶液から優先的に除去して、実質的にホスホロモノクロリダイト及び有機溶媒を含む生成物溶液を得ることができる。
【0063】
有機溶媒は、有利に、炭化水素溶媒及び塩素化炭化水素溶媒から選択される。トルエン、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、オクタン及びこれらの混合物は、本発明プロセスに於いて使用することができる有機溶媒の限定されない例である。ジアルキルエーテル、例えばジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンは、このような溶媒中のHClの高い溶解度(表1参照)のために、このプロセスに於いて使用されない。例えば20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で、溶媒1モル当たり、0.2モルHClよりも大きい、好ましくは0.5モルHClよりも大きい溶解度は、有機溶媒のために好ましくない。以下に記載するように、一定の条件下、例えば、高い温度で、THFは、HClと不利に反応して、4−クロロブタノールを生成する。例えば、Barry等、Journal of Organic Chemistry(1981)、46(16)、3361-4を参照されたい。アルコールとして、4−クロロブタノールは、所望のホスホロモノクロリダイト生成物の方に不利に反応性である。
【0064】
本発明プロセスに於いて使用される有機溶媒の量は、その有機溶媒中の第一の芳香族ジオールの溶解度と結び付けて決定される。有機溶媒の量は、有利には、第一の芳香族ジオールの全量の、1重量%よりも多く、好ましくは3重量%よりも多く、更に好ましくは5重量%よりも多くて、有利には50重量%よりも少なく、好ましくは40重量%よりも少なく、更に好ましくは30重量%よりも少なく、有機溶媒中に溶解されるようなものである。第一の芳香族ジオールの残りは、固相として存在し、それによってスラリーを形成する。スラリー中の有機溶媒の量は、スラリー(これは、固体及び溶解された形の両方での第一の芳香族ジオール、PCl
3及び有機溶媒からなる)の全重量基準で、スラリーの、有利には20重量%よりも多く、好ましくは25重量%よりも多く、更に好ましくは30重量%よりも多くて、有利には95重量%よりも少なく、好ましくは90重量%よりも少なく、更に好ましくは85重量%よりも少ない。望ましくは、有機溶媒の量は、第一の芳香族ジオールの実質的に全部が、反応条件下で転化された後、ホスホロモノクロリダイト生成物を実質的に可溶化するために充分である。有利には、ホスホロモノクロリダイト生成物の、90重量%よりも多く、好ましくは95重量%よりも多く、本質的に100重量%が、有機溶媒中に可溶化される。典型的には、第一の芳香族ジオールの全量の、95重量%よりも多く、好ましくは98重量%よりも多く、更に好ましくは本質的に100重量%が、反応中に転化される。
【0065】
一般的に、ホスホロモノクロリダイトは、出発芳香族ジオールのヒドロキシル基からの水素結合形成性水素原子の除去のために、本発明プロセスのために使用される有機溶媒中で、その出発芳香族ジオールよりも可溶性である。選択された有機溶媒中のホスホロモノクロリダイトの溶解度は、前記のような平衡溶解度方法によって決定することができる。その代わりに、選択された有機溶媒中のホスホロモノクロリダイトの溶解度は、有機溶媒の希薄溶液(例えば希薄溶液の重量基準で1重量%)中でホスホロモノクロリダイトを製造し、次いで、ホスホロモノクロリダイトの飽和溶液が得られるまで、この希薄溶液から有機溶媒を蒸発させることによって決定することができる。飽和溶液中のホスホロモノクロリダイトの濃度は、定量的
31P NMR又は単純重量分析によって決定することができる。
【0066】
このプロセスの一つの態様に於いて、PCl
3を、最初に、固体形及び溶解した形態(後者は有機溶媒中に溶解している)の両方にある第一の芳香族ジオールを含むスラリーと環境温度で接触させる。次いで、スラリーの温度を、有利には2時間以内に、好ましくは1.5時間以内であるが、典型的には30分間以上かけて、ホスホロモノクロリダイトを製造するために充分な反応温度まで上昇させる。この反応温度は、有利には25℃超、好ましくは30℃超であり、有利には80℃未満、好ましくは75℃未満である。この接触は、有利には、この反応温度で、第一の芳香族ジオールの95%よりも多く、好ましくは98%よりも多く、更に好ましくは本質的に100%が、反応中に転化される、充分に長い反応時間の間実施される。この反応時間は、有利には3時間超、好ましくは6時間超であり、有利には48時間未満、好ましくは36時間未満である。
【0067】
本発明のプロセスの別の態様に於いて、PCl
3を、最初に、このスラリーと、有利には20℃以下、好ましくは15℃未満、更に好ましくは10℃未満、なお更に好ましくは5℃未満、なお更に好ましくは0℃未満の温度で接触させる。最低運転可能温度は、選択された有機溶媒の凝固点よりも上にある。典型的には、本プロセスは、−78℃よりも高い温度で実施される。より低い初期接触温度のこの範囲は、初期の混合及び反応熱に起因する温度に於ける任意の予想されない上昇(これは、次いで、許容できないほど高い初期反応速度に至り得る)を防止する。許容できないほど高い初期反応速度は、不利に、第一の芳香族ジオールとその反応生成物との間の副反応が起こる程度を増加させることができる。
【0068】
反応が進行するとき、固体形にある第一の芳香族ジオールの部分は、時間の経過と共に有利に溶解して、溶液相中の第一の芳香族ジオールの実質的に一定の濃度を維持する。固体状の第一の芳香族ジオールは、有利には、第一の芳香族ジオールの30%よりも多く、好ましくは40%よりも多く、更に好ましくは50%よりも多くが、反応中に転化したとき、実質的に全部溶解される。固体状の第一の芳香族ジオールの実質的に全部が溶解した後、縮合反応の進行は、
31P NMR分析(PCl
3の消滅及びホスホロモノクロリダイトの出現)のための反応溶液のアリコートを採取することによって、便利にモニターすることができる。
【0069】
PCl
3を、固体形にある第一の芳香族ジオールの一部を有するスラリー中の第一の芳香族ジオールと接触させることは、溶液相中の第一の芳香族ジオールの濃度を低下させ、これは、第一の芳香族ジオールと式IIの反応生成物との間の副生物生成を減少させる。第一芳香族ジオールが2,2’−ビフェノールであるとき生成される、式V及びVIの副生物は、本発明のスラリー方法によって減少させることができる。
【0070】
一般的に、本プロセスは、1気圧(101kPa)として取られる環境圧力で実施されるが、所望により、より高い圧力又はより低い圧力を使用することができる。好ましくは、この反応は、不活性雰囲気、例えば窒素、アルゴン又はヘリウムのブランケット下で実施される。更に好ましくは、反応器からHClスクラバーへ出る溶液を通過する不活性雰囲気のパージが、遊離されたHClを除去する際に助けになるために使用される。
【0071】
本発明プロセスに於いて製造されたホスホロモノクロリダイトは、有利には、減圧下での蒸発により又は大気圧若しくは減圧下での蒸留により、過剰のPCl
3を除去することによって、有機溶媒の溶液として単離される。有機溶媒の幾らかは、PCl
3の完全な除去を確実にするために又はホスホロモノクロリダイトの好ましい濃度を有する溶液を得るために、PCl
3と共に除去することができる。除去されたPCl
3及び除去された有機溶媒は、存在する場合、プロセスの効率を更に上昇させるために、次のホスホロモノクロリダイト合成反応のために再使用することができる。生のホスホロモノクロリダイト生成物は、所望により、蒸留によって得ることができる。ホスホロモノクロリダイトの収率は、このプロセス中に使用された全第一の芳香族ジオールのモル基準で、有利には90モル%よりも高い、好ましくは95モル%よりも高い。
【0072】
本発明のプロセスに於いて、ホスホロモノクロリダイトの収率は、少なくとも部分的に、第一の芳香族ジオール中の微量の同定されていない不純物のレベル(不純物のレベルは第一の芳香族ジオールの源泉及び/又は特定のバッチと共に変化する)に依存して変化し得る。収率範囲内の高端部で一貫しているホスホロモノクロリダイトの収率を得ることが望ましい。驚くべきことに、これは、この縮合反応を、微量の塩基、好ましくは窒素塩基の存在下で実施することによって達成された。従って、このプロセスでは、有利には、微量の塩基、好ましくは窒素塩基が使用される。窒素塩基の微量は、本プロセスに於いて使用される芳香族ジオールの合計モル基準で、有利には5モル%よりも少ない、更に好ましくは3モル%よりも少ない。窒素塩基が使用される場合、好ましくは、窒素塩基の微量は、このプロセスに於いて使用される第一の芳香族ジオールの合計モル基準で、0.01モル%よりも多い。窒素塩基の限定されない例には、ピリジン、トリアルキルアミン及びN,N−ジアルキルアニリン(ここで、全てのアルキル基は、好ましくはC1〜C15アルキルである)が含まれる。微量の塩基を使用するとき、ホスホロモノクロリダイトの収率、好ましくは単離収率は、本プロセスに於いて使用される第一の芳香族ジオールの合計モル基準で、有利には93モル%よりも高い、更に好ましくは96モル%よりも高い。
【0073】
先行技術に於いては、例えば特許文献4、特許文献2、特許文献5、特許文献6及び非特許文献1に於けるように、ホスホロモノクロリダイト合成プロセスに於いて、HClを中和するために窒素塩基が使用されるとき、この窒素塩基は、一般的に、生成されるHClの1モル当量当たり1モル当量よりも多い量で使用される。本発明に於いて使用されるとき、窒素塩基は、縮合反応に於いて生成されるHClを中和することは意図していない。それは、使用される塩基の微量は、このプロセスに於いて生成されるHClの合計モルの2.5モル%よりも少ないからである。微量の塩基が、縮合反応に於いて存在する又は生成される酸(群)を中和する場合、得られる微量の塩は、このプロセスへの有害な影響をもたらさず、実際に、有機溶媒中のホスホロモノクロリダイトと共に、次の有機ポリホスファイト合成工程に運ばれる。
【0074】
本発明のプロセスから単離された式IIのホスホロモノクロリダイトは、有機ポリホスファイト合成反応に於いて、ホスホロモノクロリダイトを有機ポリ−ヒドロキシ化合物と縮合させることにより有機ポリホスファイトを製造するために有用である。塩化水素が、下流のプロセスの共生成物として生成される。ホスホロモノクロリダイトは、有機溶媒の溶液として又は生の形で、有機ポリホスファイト合成に於いて使用することができる。有機ポリホスファイト合成反応は、有利に、生成されるHClの本質的に全部を中和するために充分な量の窒素塩基の存在下で実施される。有機ポリホスファイトの単離には、一般的に、濾過により又は水性ワークアップ(aqueous workup)により、中和から生成される窒素塩基−HCl塩を除去するための手順が含まれる。例えば特許文献2、特許文献3及び特許文献1を参照されたい。有機ポリホスファイトを単離するためのいずれかの塩除去手順が、ホスホロモノクロリダイトと共に持ち越された全ての微量の塩を除去する際に有効であることが見出された。
【0075】
前記の本発明の第一の面のプロセスは、a)スラリーの溶液相中の第一の芳香族ジオールの濃度を低下させるために有機溶媒を使用すること−それによって、より高いホスホロモノクロリダイト収率及びより少ない副生物になる、b)先行技術と比較して、PCl
3対全第一の芳香族ジオールのより低いモル比を使用すること−それによって、PCl
3の過剰量を減少させる、c)この反応を、溶媒又はPCl
3を還流させることなく、より低い温度で実施すること−それによって、運転を単純化し、エネルギー必要量を減少させる、d)窒素塩基−HCl塩を殆ど又は全く生成させないこと−それによって、廃物及びコストを減少させる並びにe)回収されたPCl
3の過剰量のリサイクルを可能にすること−それによって、効率を更に改良し、コストを減少させるを含む、利点の1個又はそれ以上を有する。
【0076】
第二の面に於いて、本発明は、ビスホスファイトを製造するための新規な合成プロセス(このプロセスは、「課題を解決するための手段」に記載したような3工程を含んでなる)を提供する。
【0077】
本発明の第二の面に於いて、工程(a)に於いて、前記の式IIによって表されるホスホロモノクロリダイトは、式III:
【0079】
(式中、
R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、
R
10〜R
15は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして
ここで、任意的に、R
11はR
12に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意に、R
13はR
14に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される第二の芳香族ジオールの存在下で、前に(即ち、本発明の第一の面に於いて)記載したようなプロセスを実施することによって製造される。好ましくは、R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
1〜C
10アルキル部分から選択される。更に好ましくは、R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
3〜C
10第二級及び第三級アルキル部分から選択される。なお更に好ましくは、R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
4〜C
10の第三級アルキル部分から選択される。なお更に好ましくは、R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
4〜C
10第三級アルキル部分から選択され、R
10、R
12、R
13及びR
15は、それぞれ水素であり、そしてR
11及びR
14は、それぞれ独立に、C
1〜C
10置換又は非置換のアルキル部分から選択される。
【0080】
このプロセスに於いて使用することができる第二の芳香族ジオールの例には、これらに限定するものではないが、3,3’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジクロロ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジエチル−5,5’−ジブロモ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジヨード−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジ−n−プロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−イソプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−sec−ブチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−アミル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ビス(2,2−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−2−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−3−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−2−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−3−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−4−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−オクチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−2−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−オクチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−4−オクチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジフェニル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジエトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−プロポキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−イソプロポキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−sec−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−イソブトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−tert−ブトキシ−2,2’−ビフェノール及び3,3’−ジ−tert−ブチル−1,1’−ビ−2−ナフトールが含まれる。第二の芳香族ジオールの好ましい種は、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール(イソ−BHT−ジオール)及び3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノールである。
【0081】
第二の芳香族ジオールは、次のプロセス工程に於いて、第一の芳香族ジオールから製造されたホスホロモノクロリダイトの実質的に全部を消費するために充分な量で使用される。第二の芳香族ジオールの量は、使用される第一の芳香族ジオールのモル基準で、好ましくは35モル%よりも多く、更に好ましくは40モル%よりも多い。第二の芳香族ジオールの量は、使用される第一の芳香族ジオールのモル基準で、好ましくは50モル%よりも少なく、更に好ましくは45モル%よりも少ない。
【0082】
第二の芳香族ジオールは、有利には、使用される有機溶媒中に少なくとも部分的に可溶性である。好ましくは、第二の芳香族ジオールの5重量%よりも多く、更に好ましくは10重量%よりも多くが、有機溶媒中に溶解される。第二の芳香族ジオールが、本プロセスのこの工程(a)の開始時に部分的にのみ溶解されるが、この工程の間又は完結時に完全に溶解されることも可能である。
【0083】
第二の芳香族ジオールは、工程(a)のプロセス条件下で実質的に非反応性である(これは、第二の芳香族ジオールの5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満が、工程(a)の運転条件下で、PCl
3との縮合生成物に転化されることを意味する)ことが要求されることが注目される。有用なガイドラインとして、当業者は、第一の芳香族ジオール及び塩基を除外する別の試験反応に於いて、第二の芳香族ジオールの反応性を評価することができる。このような評価は、少なくとも工程(a)の反応条件下で実施されるが、工程(a)のために意図されるものよりも高い温度を使用することができる。更に詳しくは、研究室規模量(例えば、5〜10グラム)の第二の芳香族ジオールを、窒素入口及びベントラインを取り付けた窒素パージしたフラスコの中に装入することができる。脱気した選択した有機溶媒(例えば30〜75mL)を添加し、この混合物を0℃まで冷却し、次いでPCl
3を化学量論的過剰で添加する。得られるスラリーを、不活性雰囲気の流れの下で、工程(a)のための所望の温度又はより高い温度で、少なくとも12時間、好ましくは1日〜約3日間、加熱する。次いで、スラリーを濾過し、回収された固体及び濾液を、
31P NMRによって、PCl
3と第二の芳香族ジオールとの間の全ての縮合生成物の存在について、別々に分析する。具体例として、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールを、窒素下で、トルエン中で、3日間80℃(これは、工程(a)の好ましい運転温度よりも高い)で加熱するとき、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの2パーセント未満が反応して、縮合生成物を生成することが観察された。従って、前記の工程(a)に於ける反応性の欠落を示す全ての第二の芳香族ジオールを、このプロセスに於いて適切に使用することができる。別の観点から、第二の芳香族ジオールは、工程(c)に到達するまで、傍観者として本質的に機能する。
【0084】
本発明の第二の面の工程(a)を実施するための他の反応条件は、本発明の第一の面のプロセスについて前記した反応条件と本質的に同じものである。このプロセス条件は、第一の芳香族ジオールをPCl
3と反応させて、前記の式IIによって表されるホスホロモノクロリダイトを製造するために充分である。他方、第二の芳香族ジオールは、PCl
3が第一の芳香族ジオールのモル過剰で使用するときでも、本質的に反応しないままである。従って、工程(a)の反応条件下で、ホスホロモノクロリダイト、第二の芳香族ジオール及び過剰のPCl
3を含む第一の混合物が得られる。
【0085】
本発明の第二の面に於ける工程(b)に於いて、第一の混合物中の過剰のPCl
3は、ホスホロモノクロリダイト及び第二の芳香族ジオールを含む第二の混合物を得るための前記のホスホロモノクロリダイト単離手順と同様の手順を実施することによって除去される。前記のホスホロモノクロリダイト単離手順と同様に、有機溶媒の幾らかをPCl
3と共に除去して、PCl
3の完全な除去を確実にする。除去されたPCl
3及び除去された有機溶媒は、存在する場合、プロセスの効率を上昇させるために、次のホスホロモノクロリダイト合成反応のために再使用することができる。追加量の有機溶媒を第二の混合物に添加して、過剰のPCl
3の除去の間に除去された全ての有機溶媒を補給することができる。
【0086】
本発明の第二の面に於けるプロセスの工程(c)に於いて、窒素塩基を第二の混合物の中に添加する。添加された窒素塩基は、第二の芳香族ジオールとホスホロモノクロリダイトとの間の反応(これは、以下、ビスホスファイト生成反応として参照される)を促進して、式IV:
【0088】
(式中、m及びR
1〜R
16は上記定義した通りである)
によって表されるビスホスファイトを製造する。
【0089】
ビスホスファイト生成反応を実施する際に有効であると、当該技術分野に於いて知られている任意の窒素塩基、例えば特許文献2、特許文献3及び特許文献1に開示されているものを使用することができる。ポリマーアミンもビスホスファイト生成反応を実施する際に使用することができる。好ましい窒素塩基は、トリアルキルアミン及びピリジンである。適切な窒素塩基の限定されない例はトリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンである。工程(a)に於いて微量の窒素塩基を使用する場合、この工程(c)に於いて同じ窒素塩基を使用することができるが、所望により異なった塩基を使用することができる。
【0090】
窒素塩基は、有利には少なくとも2.0:1、好ましくは少なくとも2.1:1、更に好ましくは少なくとも2.2:1で、有利には3.0未満:1、好ましくは2.9未満:1、更に好ましくは2.8未満:1の、窒素塩基対第二の芳香族ジオールのモル比を与えるために充分な量で使用される。
【0091】
好ましくは、第二の混合物を、15℃又はそれ以下、更に好ましくは0℃又はそれ以下の温度まで冷却する。この温度は、好ましくは−78℃よりも高く、更に好ましくは−30℃よりも高い。次いで、窒素塩基を、冷却された第二の混合物の中に、有利には15分間よりも長い、好ましくは30分間よりも長い、そして有利には2時間よりも短い、好ましくは1時間よりも短い時間を掛けて添加する。次いで、この反応混合物を、環境温度まで加温し、環境温度で、第二の芳香族ジオールの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、更に好ましくは98%をホスホロモノクロリダイトと反応させて、式IVによって表されるビスホスファイトを含む最終反応溶液を得るために充分に長い追加の時間の間撹拌する。この追加の時間は、好ましくは少なくとも1時間、更に好ましくは少なくとも2時間であり、好ましくは36時間未満、好ましくは24時間未満である。ビスホスファイト生成反応の進行は、
31P NMR分析(ホスホロモノクロリダイトの消滅及びビスホスファイトの出現)のための反応溶液のアリコートを採取することによって、便利にモニターすることができる。
31P NMR分析によって決定されたとき、このプロセスの開始時に、第二の芳香族ジオールの不充分な量が使用された場合、第二の芳香族ジオールの追加量を、この時点で添加して、第二の混合物中の全てのホスホロモノクロリダイトを本質的に完全に消費することができる。
【0092】
ビスホスファイト生成物は、当該技術分野で公知の手順、例えば特許文献1に開示されているものによって、単離し、精製することができる。例えば水を最終反応溶液に添加し、続いて相分離して、プロセス中に生成した塩を除去して、有機溶液を得る。この有機溶液を、任意的に、任意の公知の手段、例えば乾燥剤を使用すること又は共沸蒸留によって乾燥することができる。乾燥剤が、過度に吸収しない又はビスホスファイトと反応しない限り、任意の公知の乾燥剤を使用することができる。適切な乾燥剤の例には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及びモレキュラーシーブスが含まれる。ビスホスファイトは、通常、有機溶液を濃縮する及び/又は有機溶液を冷却することによる結晶化によって単離される。必要であるか又は所望する場合、ビスホスファイトを更に精製するために、単離されたビスホスファイトの再結晶を行うことができる。第二の芳香族ジオールのモル基準で計算した、単離されたビスホスファイトの収率は、有利には75モル%超、好ましくは80モル%超である。
【0093】
上記の本発明の第二の面のプロセスは、本発明の第一の面のプロセスと同じ利点の1個又はそれ以上を有する。第二の芳香族ジオールを第一芳香族ジオールと共に、開始時に固体として反応器の中に添加することによって、本発明の第二の面のプロセスは、a)タンク又は別の反応器内で第二の芳香族ジオールを溶解させることの任意の必要性を排除する、b)有機溶媒の量を減少する、c)第二の芳香族ジオールの有機溶液を取り扱うことの必要性を排除する及びd)固体取扱い装置が必要である1工程のみを使用する、を含む、追加の1個又はそれ以上の利点を有する。ビスホスファイトを、第一の反応器内でのホスホロモノクロリダイトの合成、続く第二の反応器内でのビスホスファイトの合成による先行技術に従って製造するとき、両方の反応器並びにそれらの連結パイプ及び導管は、引火性条件を回避し、溶媒煙霧を減少させるために、不活性雰囲気によってパージする(「不活化」)ことを必要とする。本発明に従って、1個の反応器内でビスホスファイトの合成を行うことは、不活化を、結果的に運転の間のより短いサイクル時間を伴う、1個のみの反応器に有利に減少する。
【0094】
本発明の具体的な態様
下記の実施例は、本発明の例示であり、本発明を限定すると見なされるべきではない。反応条件、例えば反応剤、温度及び溶媒に於ける変形は、本明細書中に含まれる説明及び実施例に基づいて、当業者に明らかであろう。本明細書で参照された全ての部、パーセント及び比率は、他の方法で示されない限り、重量基準で示される。
31P NMR分析に関して、リン酸をδ=0.0ppmに設定することによって、分光計を標準化した。
【0095】
実施例1
1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイトの製造
2,2’−ビフェノール(6.2g、33ミリモル)を、隔壁部、磁気攪拌棒及び還流凝縮器(これの頂部に、窒素入口及びスクラバーへのベントラインを取り付けた)を取り付けた、窒素パージした乾燥250mL、三つ口丸底フラスコの中に装入する。脱気した無水トルエン(50mL、43g)を添加し、得られるスラリーを、氷浴によって0℃まで冷却し、続いてPCl
3(7.1g、51ミリモル)及び次いでピリジン(0.1mL、1ミリモル)を添加する。得られるスラリー(これは、固体の2,2’−ビフェノール、溶解された2,2−ビフェノール、PCl
3及びトルエンを含有している)を、35℃に加温しながら、60分間撹拌し、次いで、35℃で一夜撹拌し、その時間内に、固体が溶解して、透明な溶液を与える。
31P NMR分析は、残りのPCl
3及び5モル%未満の不純物を有する1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイト(δ=180.5ppm)のみを示す。この溶液を94℃以下で蒸留して、過剰のPCl
3(bp=76°)を除去する。
【0096】
実施例2
6,6’−(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ジジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンの製造
2,2’−ビフェノール(6.25g、0.0335モル)及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール(イソ−BHT−ジオール、6.80g、0.0166モル)の粉末を、窒素入口及びスクラバーへのベントライン、隔壁部並びに磁気攪拌棒を取り付けた、窒素パージした乾燥250mL、三つ口丸底フラスコの中に装入する。この粉末を脱気し、次いでトルエン(50mL)を添加して、スラリーを得る。このスラリーを氷温度(0℃)まで冷却する。三塩化リン(PCl
3、7.1g、0.051モル)を、冷却したスラリーの中に添加し、続いてピリジン(0.1mL、0.001モル)を添加する。得られるスラリーを、環境温度まで加温しながら、60分間撹拌し、次いで、35℃で一夜撹拌し、その時間内に、固体が溶解して、透明な薄黄色溶液を与える。
31P NMR分析は、過剰のPCl
3及び10%未満の他の不純物を有するホスホロモノクロリダイト(δ=180.5ppm)のみを示す。(イソ−BHT−ジオールは、それがP原子を欠いているので検出されないであろう)。この溶液を136℃以下で蒸留して、過剰のPCl
3(bp=76°)を除去して、ホスホロモノクロリダイト及びイソ−BHT−ジオールを含有する溶液を得る。この溶液を氷温度(0℃)まで冷却した後、25mLのトルエンを添加し、次いで25mLのトルエン中に稀釈した8.0gのピリジン(0.1モル)を、45分間かけて滴下により添加し、黄褐色固体を含有する混合物になる。この混合物を一夜撹拌し、その間に、温度は環境温度にまで上昇する。この混合物の上澄み液の
31P NMR分析は、ホスホロモノクロリダイト及びイソ−BHT−ジオールの、10%未満の合計不純物を有する所望のビスホスファイトである、6,6’−(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ジジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(δ=146.0ppm)への非常にきれいな転化を示す。
【0097】
本発明の態様
本発明の下記の態様が考えられる。
【0100】
(式中、mはゼロ、1又は2であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして
ここで、任意的に、R
2はR
3に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意的に、R
4はR
5に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される芳香族ジオールと、
固体形の芳香族ジオールの一部分を含み、そして芳香族ジオールの残りの部分及び有機溶媒を含む溶液相を含んでなるスラリー中で接触させることを含む、ホスホロモノクロリダイトの製造プロセスであって、このスラリーが、この芳香族ジオールの合計モル基準で計算して5モル%よりも少ない窒素塩基からなり、そしてこの有機溶媒が、低い塩化水素溶解度を有し、この接触が、式:
【0102】
(式中、m及びR
1〜R
8は上記の定義を有する)
によって表されるホスホロモノクロリダイトを製造するのに充分な反応条件下で実施されるプロセス。
【0103】
2.mがゼロ又は1である前記の態様。
3.R
1、R
6、R
7及びR
8が、それぞれ水素である前記の態様のいずれか一つ。
4.前記芳香族ジオールが、これらに限定するものではないが、下記のもの、即ち2,2’−ビフェノール、5,5’−ジメチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジクロロ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジヨード−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−プロピル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソプロピル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−sec−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−アミル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(2,2−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−2−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−2−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−4−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−2−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−4−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2’−ビフェノール、5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジフェニル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジエトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−プロポキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソプロポキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−n−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−sec−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−イソ−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−tert−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)及び2,2’−メチレンビス(4−tert−ブチル−フェノール)、好ましくは2,2’−ビフェノールから選択される前記態様のいずれか1つ。
5.前記有機溶媒が、20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で測定して、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さい、好ましくは0.1モルよりも小さいHClの塩化水素(HCl)溶解度を有する前記態様のいずれか1つ。
【0104】
6.前記有機溶媒が、90℃よりも高い、好ましくは95℃よりも高い、更に好ましくは100℃よりも高いが、好ましくは250℃よりも低い沸点を有する前記態様のいずれか一つ。
【0105】
7.前記有機溶媒がトルエン、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、オクタン及びこれらの混合物からなる群から選択される前記態様のいずれか一つ。
【0106】
8.前記有機溶媒が、このスラリーの全重量基準で、20重量%よりも多く、好ましくは25重量%よりも多く、更に好ましくは30重量%よりも多くで、95重量%よりも少ない、好ましくは90重量%よりも少ない、更に好ましくは85重量%よりも少ない量で使用される、前記の態様のいずれか一つ。
【0107】
9.PCl
3の芳香族ジオールに対するモル比が、有利には1.0よりも大きく、好ましくは1.1よりも大きく、更に好ましくは1.2よりも大きく、そして、有利には3.5よりも小さく、好ましくは3.3よりも小さく、更に好ましくは3.1よりも小さく、なお更に好ましくは2.9よりも小さく、なお更に好ましくは2.7よりも小さく、なお更に好ましくは2.5よりも小さく、なお更に好ましくは2.3よりも小さく、なお更に好ましくは2.1よりも小さく、なお更に好ましくは1.9よりも小さい前記態様のいずれか一つ。
【0108】
10.前記プロセスが、PCl
3をこの芳香族ジオールと、有利には25℃以上、好ましくは30℃以上であり、有利には80℃以下、好ましくは75℃以下の温度で接触させることからなる、前記の態様のいずれか一つ。
【0109】
11.前記プロセスが、1気圧(101kPa)として取られる環境圧力で実施されるが、所望により、より高い圧力又はより低い圧力を使用することができる、好ましくは、このプロセスが、不活性雰囲気、例えば窒素、アルゴン又はヘリウムのブランケット下で実施される前記の態様のいずれか1つ。
【0110】
12.前記反応時間が、有利には3時間超、好ましくは6時間超であり、有利には48時間未満、好ましくは36時間未満である、前記態様のいずれか一つ。
【0111】
13.PCl
3を、最初に、このスラリーと、有利には20℃未満、好ましくは15℃未満、更に好ましくは10℃未満、なお更に好ましくは5℃未満、なお更に好ましくは0℃未満であるが、選択された有機溶媒の凝固点よりも上にある、好ましくは−78℃よりも高い温度で接触させる前記の態様のいずれか1つ。
【0112】
14.前記接触を、前記プロセスに於いて使用される芳香族ジオールの合計モル基準で、有利には5モル%よりも少ない、更に好ましくは約3モル%よりも少ない量であるが、塩基が使用される場合、0.01モル%よりも多い量で窒素塩基の存在下で実施する前記の態様のいずれか1つ。
【0113】
15.前記窒素塩基が、ピリジン、トリアルキルアミン及びN,N−ジアルキルアニリン(ここで、任意のアルキル基は、好ましくはC1〜C15アルキルである)からなる群から選択される前記の態様のいずれか一つ。
【0114】
16.前記プロセスが、未反応のPCl
3を除去して、ホスホロモノクロリダイト及び有機溶媒からなる生成物溶液を得ることを含む前記の態様のいずれか一つ。
【0115】
17.未反応のPCl
3の全部又は一部を回収して、プロセスに再循環させる、前記の態様のいずれか一つ。
【0116】
18.1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイトの製造プロセスであって、このプロセスが、PCl
3を2,2’−ビフェノールと、スラリー(このスラリーは、固体形での2,2’−ビフェノールの一部分を含み、そして2,2’−ビフェノールの残りの部分及び有機溶媒を含む溶液相を含んでなる)中で、25℃よりも高く75℃よりも低い反応温度で、2,2’−ビフェノールの95モル%よりも多くを1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイトに転化させるために充分な時間接触させることからなり、このスラリーが、2,2’−ビフェノールの合計モル基準で計算して、5モルパーセントよりも少ない窒素塩基を含有し、PCl
3対2,2’−ビフェノールのモル比が、1.0/1よりも大きく3.5/1よりも小さく、この有機溶媒が、20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で測定して、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さいHClの塩化水素溶解度を有するプロセス。
【0117】
19.ビスホスファイトの製造プロセスであって、
(a)三塩化リンを、式:
【0119】
(式中、mは、ゼロ、1又は2であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして
ここで、任意的に、R
2はR
3に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意的に、R
4はR
5に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される第一の芳香族ジオールと、
式:
【0121】
(式中、R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、
R
10〜R
15は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして
ここで、任意的に、R
11はR
12に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意的に、R
13はR
14に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される第二の芳香族ジオールの存在下で接触させる工程、
前記接触は、固体形での第一及び第二の芳香族ジオールの両方の一部分を含み、そして第一及び第二の芳香族ジオールの両方の残りの部分並びに有機溶媒を含む溶液相を含んでなるスラリー中で実施され、ここで、このスラリーは、第一の芳香族ジオールの合計モル基準で計算して5モル%よりも少ない窒素塩基を含み、そしてこの有機溶媒が、低い塩化水素溶解度を有し、この接触が、式:
【0123】
(式中、m及びR
1〜R
8は上記の定義を有する)
によって表されるホスホロモノクロリダイト、第二の芳香族ジオール及び過剰の三塩化リンを含む第一の混合物を製造するために充分な反応条件下で実施される、
(b)過剰の三塩化リンを第一の混合物から除去して、このホスホロモノクロリダイト及び第二の芳香族ジオールを含む第二の混合物を得る工程並びに
(c)第二の芳香族ジオールをこのホスホロモノクロリダイトと反応させて、式:
【0125】
(式中、m及びR
1〜R
16は上記定義した通りである)
によって表されるビスホスファイトを製造するのに充分な条件下で、窒素塩基を第二混合物に添加する工程
を含んでなるプロセス。
【0126】
20.mがゼロ又は1である19の態様。
【0127】
21.R
1、R
6、R
7及びR
8が、それぞれ、水素である態様19又は20のいずれか一つ。
【0128】
22.第一の芳香族ジオールが2,2’−ビフェノールである態様19〜21のいずれか一つ。
【0129】
23.R
9及びR
16が、それぞれ独立に、C
1〜C
10アルキル部分から選択される態様19〜22のいずれか一つ。
【0130】
24.R
9及びR
16が、それぞれ独立に、C
3〜C
10第二級アルキル部分から選択される態様19〜22のいずれか一つ。
【0131】
25.R
9及びR
16が、それぞれ独立に、C
4〜C
10第三級アルキル部分から選択される態様19〜22のいずれか一つ。
【0132】
26.R
9及びR
16が、それぞれ独立に、C
4〜C
10の第三級アルキル単位から選択され、R
10、R
12、R
13及びR
15が、それぞれ水素であり、そしてR
11及びR
14が、それぞれ独立に、C
1〜C
10の置換又は非置換のアルキル部分から選択される、態様19〜22のいずれか一つ。
【0133】
27.第二の芳香族ジオールが3,3’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジクロロ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジエチル−5,5’−ジブロモ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジヨード−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−5,5’−ジ−n−プロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−イソプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−sec−ブチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−アミル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ビス(2,2−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−2−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−3−ヘキシル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−2−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−3−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−4−ヘプチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−オクチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−2−オクチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジ−3−オクチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−4−オクチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジフェニル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジエトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−プロポキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−イソプロポキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−n−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−sec−ブトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−イソブトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−tert−ブトキシ−2,2’−ビフェノール及び3,3’−ジ−tert−ブチル−1,1’−ビ−2−ナフトールから選択される。第二の芳香族ジオールの好ましい種が、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール(イソ−BHT−ジオール)及び3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルプロピル)−2,2’−ビフェノールである態様19〜26のいずれか一つ。
【0134】
28.前記有機溶媒が、20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で測定された、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さい、好ましくは0.1モルよりも小さいHClの塩化水素(HCl)溶解度を有する態様19〜27のいずれか一つ。
【0135】
29.前記有機溶媒が90℃よりも高い、好ましくは95℃よりも高い、更に好ましくは100℃よりも高いが、好ましくは250℃よりも低い沸点を有する態様19〜28のいずれか一つ。
【0136】
30.前記有機溶媒が、トルエン、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、オクタン及びこれらの混合物からなる群から選択される態様19〜29のいずれか一つ。
【0137】
31.前記有機溶媒が、このスラリーの重量基準で、20重量%よりも多いから95重量%よりも少ないまでの量で使用される態様19〜30のいずれか一つ。
【0138】
32.PCl
3の第一の芳香族ジオールに対するモル比が、有利には1.0よりも大きく、好ましくは1.1よりも大きく、更に好ましくは1.2よりも大きく、そして、有利には3.5よりも小さく、好ましくは3.3よりも小さく、更に好ましくは3.1よりも小さく、なお更に好ましくは2.9よりも小さく、なお更に好ましくは2.7よりも小さく、なお更に好ましくは2.5よりも小さく、なお更に好ましくは2.3よりも小さく、なお更に好ましくは2.1よりも小さく、なお更に好ましくは1.9よりも小さい態様19〜31のいずれか一つ。
【0139】
33.工程(a)の接触を、有利には25℃超、好ましくは30℃超で、有利には80℃未満、好ましくは75℃未満の温度で実施する態様19〜32のいずれか一つ。
【0140】
34.工程(a)の反応時間が、第一の芳香族ジオールの95モル%よりも多くが、反応中に転化されるように、3時間超から48時間未満である態様19〜33のいずれか一つ。
【0141】
35.前記プロセスの工程(a)が、更に、PCl
3を、第一の芳香族ジオールと、−78℃よりも高く20℃よりも低い範囲内の初期温度で接触させ、次いで、これを25℃よりも高く80℃よりも低い反応温度にまで上昇させることを含む態様19〜34のいずれか一つ。
【0142】
36.工程(a)の接触を、このプロセスに於いて使用される芳香族ジオールの合計モル基準で、5モル%よりも少ない、更に好ましくは約3モル%よりも少ない量であるが、塩基が使用される場合、0.01モル%よりも多い量で窒素塩基の存在下で実施する態様19〜35のいずれか一つ。
【0143】
37.前記窒素塩基が、ピリジン、トリアルキルアミン及びN,N−ジアルキルアニリン(ここで、任意のアルキル基は、好ましくはC1〜C15アルキルである)からなる群から選択される態様36。
【0144】
38.工程(c)に於いて第二の混合物中に添加される窒素塩基が、有利には少なくとも2.0:1、好ましくは少なくとも2.1:1、更に好ましくは少なくとも2.2:1で、有利には3.0未満:1、好ましくは2.9未満:1、更に好ましくは2.8未満:1の、窒素塩基対第二芳香族ジオールのモル比を与えるのに充分な量にある態様19〜37のいずれか一つ。
【0145】
39.前記窒素塩基が、15℃又はそれ以下、更に好ましくは0℃又はそれ以下であるが、好ましくは−78℃よりも高い、更に好ましくは−30℃よりも高い温度で、第二の混合物中に添加される態様38。
【0146】
40.6,6’−(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ジジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンの製造プロセスであって、
(a)PCl
3を、2,2’−ビフェノールと、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの存在下で、スラリー(このスラリーは、固体形での2,2’−ビフェノール及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの一部を含み、そして有機溶媒中の2,2’−ビフェノール及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールの残りの部分を含む溶液相を含んでなる)中で、25℃よりも高く75℃よりも低い反応温度で、2,2’−ビフェノールの95モル%よりも多くを1,1‘−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイトに転化させるために充分な時間、接触させる工程(ここで、スラリーは、2,2’−ビフェノールの合計モル基準で計算して5モル%よりも少ない窒素塩基を含み、PCl
3の2,2’−ビフェノールに対するモル比が、1.0/1よりも大きく3.5/1よりも小さく、この有機溶媒が、20℃の温度及び760mmHg(101kPa)の全圧で測定された、有機溶媒1モル当たり、0.2モルよりも小さいHClの塩化水素溶解度を有し、それによって、1,1‘−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイト、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール及び過剰のPCl
3を含む第一の混合物を得る、
(b)過剰のPCl
3を除去して、1,1‘−ビフェニル−2,2’−ジイル ホスホロモノクロリダイト及び3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールを含んでなる第二の混合物を得る工程並びに
(c)トリアルキルアミン及びピリジンからなる群から選択された窒素塩基を、少なくとも2.0で3.0よりも小さい、窒素塩基対3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールのモル比を与えるのに充分な量で、6,6’−(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ジジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンを製造するのに充分な条件下で添加する工程
を含んでなるプロセス。
【0149】
(式中、mはゼロ、1又は2であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして
ここで、任意的に、R
2はR
3に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意的に、R
4はR
5に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される第一の芳香族ジオール及び
式:
【0151】
(式中、R
9及びR
16は、それぞれ独立に、C
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、
R
10〜R
15は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン及びC
1〜C
10の置換又は非置換のヒドロカルビル部分から選択され、そして
ここで、任意的に、R
11はR
12に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成し、そして/又は
任意的に、R
13はR
14に結合されて、5員若しくは6員環を形成するように、置換若しくは非置換のヒドロカルビレン部分を形成する)
によって表される第二の芳香族ジオール
を含んでなる反応組成物。
【0152】
42.更に、前記組成物が、その中で、第一及び第二の芳香族ジオールの一部分が固相中に存在し、そして第一及び第二の芳香族ジオールの残りの部分が有機溶媒中に溶解されて、溶液相を形成しているスラリーからなるように、有機溶媒を含む態様42。