特許第5746039号(P5746039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746039燃料電池装置に連結するための供給アセンブリ及びこの供給アセンブリを備える燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746039
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】燃料電池装置に連結するための供給アセンブリ及びこの供給アセンブリを備える燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20150618BHJP
   H01M 8/10 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/04 J
   H01M8/04 K
   H01M8/10
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-536753(P2011-536753)
(86)(22)【出願日】2009年10月29日
(65)【公表番号】特表2012-509559(P2012-509559A)
(43)【公表日】2012年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2009007753
(87)【国際公開番号】WO2010057567
(87)【国際公開日】20100527
【審査請求日】2011年11月15日
【審判番号】不服2014-4223(P2014-4223/J1)
【審判請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】102008058072.4
(32)【優先日】2008年11月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】ハイナー・クンケル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ホイモス
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 田村 嘉章
【審判官】 藤井 昇
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭63−18304(JP,B2)
【文献】 特開昭63−209729(JP,A)
【文献】 特開昭63−51923(JP,A)
【文献】 特開平8−283002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 - 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置(2)の排気ガス(B)の湿気を使って、前記燃料電池装置(2)用の酸化剤(A)を加湿するために形成及び/又は配置されているガス対ガス加湿装置(7)を備え、
該ガス対ガス加湿装置(7)は、排気ガス領域(14)と酸化剤領域(13)とを有し、これらの領域は分離層によって互いに切り離されており、前記分離層により、酸化剤(A)を加湿するために前記排気ガス領域(14)から前記酸化剤領域(13)に湿気を伝達することが可能な、燃料電池装置(2)に連結するための供給アセンブリ(3)であって、
前記ガス対ガス加湿装置(7)が、前記排気ガス領域(14)と前記酸化剤領域(13)とを形成するための1つの部品で一体形成されている一体型のハニカムボディ(11)を有すること、
前記排気ガスから前記酸化剤へと湿気を伝達する前記分離層が、前記一体型ハニカムボディ(11)のセラミック材料によって形成されていること、
前記一体型ハニカムボディ(11)の中に、多数のダクト(12)が収納されており、前記ダクトの第1のグループが前記排気ガス領域(14)を形成し、前記ダクトの第2のグループが前記酸化剤領域(13)を形成していること、
前記2つのグループの一方の供給および排出用の連結開口部が、それぞれ前記一体型ハニカムボディ(11)の正面に配置されていること、および
前記2つのグループの他方の供給および排出用の連結開口部が、それぞれ前記正面で閉じられ、前記一体型ハニカムボディ(11)の周辺面に配置されていることを特徴とする供給アセンブリ。
【請求項2】
前記第1と前記第2のグループが、前記一体型ハニカムボディ(11)の中で規則的に層の形で交代に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の供給アセンブリ(3)。
【請求項3】
前記周辺面の連結開口部が、切削によって作られていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の供給アセンブリ(3)。
【請求項4】
前記一体型ハニカムボディ(11)が、補足的にインタクーラとして設計及び/又は形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の供給アセンブリ(3)。
【請求項5】
少なくとも1つの燃料電池装置(2)と、該燃料電池装置(2)に酸化剤(A)を供給する供給アセンブリと、を備える燃料電池システム(1)であって、前記供給アセンブリ(3)が請求項1〜のいずれか一項に従って形成されていることを特徴とする燃料電池システム(1)。
【請求項6】
前記ガス対ガス加湿装置(7)の中で、前記酸化剤(A)と前記排気ガス(B)との間で直接的な湿気の伝達が行われることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項7】
前記ガス対ガス加湿装置(7)の周辺を通るバイパスライン(8)を特徴とする、請求項に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項8】
前記ガス対ガス加湿装置(7)の上流に、流体技術的に、前記酸化剤(A)を圧縮するコンプレッサ(6)が接続されている、及び/又は前記ガス対ガス加湿装置(7)の下流に、前記排気ガス(B)の圧力を除去するタービン(10)が接続されていることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項9】
前記ガス対ガス加湿装置(7)の下流に、凝縮水セパレータが接続されていることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の燃料電池システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置の排気ガスの湿気を使って燃料電池装置用の酸化剤を加湿するために形成及び/又は配置されているガス対ガス加湿装置を備える、燃料電池装置に連結するための供給アセンブリに関し、このガス対ガス加湿装置は、排気ガス領域と酸化剤領域とを有しており、これらの領域は分離層によって互いに切り離され、この分離層により、酸化剤を加湿するために排気ガス領域から酸化剤領域に湿気を伝達することが可能となっている。本発明は、また、この供給アセンブリを備える燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの場合、消費ガスの状態調節、すなわち酸化剤及び燃料の状態調節は、効果的なエネルギー効率と燃料電池システムの長い耐用年数を保証する上で重要である。酸化剤の状態調節では、最初に酸化剤を圧縮して圧力を上昇させ、続いて冷却するのが一般的である。燃料電池システム内に配置され、個々の燃料電池の中でアノード領域とカソード領域とを分離している、いわゆるポリマ電解質膜(PEM)は乾燥に対して反応しやすいことから、常に、酸化剤も十分に加湿されていることが必要である。このような加湿は、通常、燃料電池システムの供給ラインに取り付けられている加湿装置によって確保される。
【0003】
特許文献1は燃料電池システムの一例を示し、化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、ハニカムボディの燃料電池システムを公開している。この文献の冒頭で、燃料電池の2種類の形態が提案されており、第1の形態による管状モデルでは構造の堅牢性が特徴であり、第2の形態による平面モデルでは、出力密度は高いものの、管状モデルに比べ機械的安定性の小さいことが特徴となっている。この考えに基づき、高い出力密度と構造的堅牢性との利点を一致させるために、ハニカムボディの燃料電池構造が提案される。その後の説明において、このハニカムボディの中には、その他の機能グループを補足的に組み込み可能であることが示されている。
【0004】
特許文献2は、燃料電池のカソード供給システムにおける水蒸気の伝達方法及び装置に関する。酸化剤の供給は、互いに平行に配置されている多数の管によって行われ、これらの管の外側を燃料電池のカソード排出ガスが流れており、このカソード排出ガスの湿気が、管の壁を通して、供給されている酸化剤に伝達される。管の端部は、機械的に固定するため、樹脂の中に埋められている。
【0005】
最も近い従来技術である特許文献3は、燃料電池内の反応ガスを状態調節するための装置に関する。この文献では、反応媒体として供給される空気の温度調整と加湿を行うために、「冷却」と「加湿」という両方の機能を1つの機能ユニットに組み合わせることが提案されており、いわゆる中空繊維膜が使用され、これらの膜は温度耐性材料から作られている。この文献における実施形態では、好ましくはセラミックからなる膜、及び例えばゼオライト、酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは温度安定性高分子膜などからなる高温耐性の膜を使用することが提案されている。これらの膜はチャンバの中に貼り付けられ、フレッシュガスと排気ガスとが中空繊維膜を介して流れ、接触することによって、水蒸気が排気ガスからフレッシュガスに伝達されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0282051A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0155328A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102007003144A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低コスト及び/又は作動中の負荷に耐える構造を有する、供給アセンブリ及びこの供給アセンブリを備える燃料電池システムを提案するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を備える供給アセンブリ及び請求項11の特徴を備える燃料電池システムによって解決される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態又は有利な実施形態は、従属請求項、以下の説明、及び添付の図に示されている。
【0010】
本発明は、燃料電池装置に連結するために適している及び/又は形成されている供給アセンブリに関する。とりわけ、この連結は解除可能に形成されていることから、供給アセンブリを燃料電池装置から外すことができる。燃料電池装置の中には、好ましくは、多数の燃料電池が配置されている。
【0011】
この供給アセンブリは、好ましくはカソード供給として形成され、ガス対ガス加湿装置を有しており、このガス対ガス加湿装置により、燃料電池装置の排気ガス、特にカソード排気ガスの湿気を用いて、燃料電池装置用の酸化剤、特に供給される空気を加湿することができる。加湿を実施するために、このガス対ガス加湿装置には排気ガス領域と酸化剤領域とが設けられ、これらの領域は湿気を通す分離層によって互いに切り離されており、この分離層により、排気ガス領域から酸化剤領域に湿気が伝達され、酸化剤を加湿することができる。すでに冒頭で述べたように、酸化剤の加湿は、燃料電池装置の膜、特にプロトン交換膜(PEM)の要求に対する状態調節のために働く。
【0012】
本発明において提案されるのは、ガス対ガス加湿装置が排気ガス領域と酸化剤領域とを形成するための一体型ハニカムボディを有することである。特に、排気ガス領域と酸化剤領域とは、共通の一体型ハニカムボディの中に配置されている。
【0013】
本発明の意味において、一体型ボディとは1つの部品で一体形成されているボディである。この一体形成は、例えば押出し加工などの成形、又はフライス加工、穴あけ加工などの切削プロセスなどによって半製品から作ることができる。ハニカムボディとは、少なくとも2のハニカム、すなわち排気ガス領域のハニカムと酸化剤領域のハニカムとを有するボディを意味する。好ましいのは、このハニカムボディが多数のハニカムを有していることである。これらのハニカムは、例えば、丸型、円形、楕円形、多角形、六角形、長方形など、断面を任意に形成することができる。例えば、一体型ハニカムボディは、セラミックボディとして形成されている。
【0014】
本発明の利点として、1つには、従来の技術と比較して、個々の膜を樹脂に鋳込むという経費のかかる作業を省略していることがある。その代わりに、機械的に安定した、あまり敏感に反応しない一体型ボディが用いられる。もう1つの利点は、一体型ハニカムボディの好ましい実施形態は内燃機関の排気ガス後処理ですでに広く使用されているため、低コストかつ高品質なものが市場で入手可能なことである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、排気ガス領域から酸化剤領域へ、即ち排気ガスから酸化剤へと湿気を伝達する分離層が、一体型ハニカムボディの基本材料から成り、又はこの基本材料によって形成されている。簡単な実施形態の場合、基本材料は、その基本的な特徴から、湿気を伝達するのに必要な能力を有するように、多孔質に形成されている。
【0016】
本発明の好ましい発展形態では、分離層、すなわち一体型ハニカムボディのベースボディが、例えばゼオライト、酸化ケイ素、温度安定性高分子又は酸化アルミニウムなどの材料でコーティングされている、及び/又は加工されている。
【0017】
両方の実施形態において、分離層又はベースボディの透過性は、酸化剤の酸素は透過せずに残り、湿気、特に水蒸気が透過するように形成されている。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、一体型ハニカムボディが多数のダクトをハニカムとして有しており、ダクトの第1のグループが排気ガス領域を形成し、ダクトの第2のグループが酸化剤領域を形成している。これらのグループは、それぞれ同じ数のダクトを有することができるが、異なる数で配分することもできる。ダクトは全て同じ形態で実施することができるが、異なった実施形態にする場合は、とりわけグループに応じてダクトの形を区別することができる。
【0019】
考えられる実施形態では、第1と第2のグループのダクトが、一体型ハニカムボディの中に規則的に、好ましくは層の形で交代に、及び/又は交互に配置されている。第1の層には酸化剤のダクトが配置され、第2の層には排気ガスのダクト、第3の層には再び酸化剤のダクトが配置されるため、湿気を中央の層から2方向に伝達することができる。
【0020】
実際の実施形態では、2つのグループの一方の1つ又は複数の連結開口部が、一体型ハニカムボディの正面に設けられている。これらの連結開口部は、排気ガス又は酸化剤の供給ラインあるいは排出ラインと連結可能であるように形成されている。好ましいのは、このグループの連結開口部が、一体型ハニカムボディの両方の正面に配置されていることである。
【0021】
これに対して、同一の正面にある他方のグループの1つ又は複数の連結開口部が、例えばディストリビュータキャップによって閉じられるのも好ましい。ディストリビュータキャップの使用により、最初に、一体型ハニカムボディの全ての連結開口部が開き、次に、このディストリビュータキャップによって連結開口部が選択的に閉じられるという利点が生じる。他方のグループの連結開口部を封鎖するため、ディストリビュータキャップの代わりに、別の閉鎖エレメントを使用することもできる。
【0022】
好ましいのは、一方のグループの1つ又は複数の連結開口部が一体型ハニカムボディの周辺面に配置されていることである。特に、ここでの連結開口部は、正面から到達できないダクトグループのための連結開口部である。これらの周辺側の連結開口部は、切削プロセスによって、特に細長い切り込みを入れることによって作られるのが好ましい。
【0023】
従って、例えば、排気ガスと酸化剤の材料の流れを、正面で閉鎖されたダクト列と、閉鎖されたダクト列の側面の切り込みとによって別々にガイドすることができる。このように準備された一体型ハニカムボディの正面には、閉鎖されていないダクト列に配分され、これらのダクト列を通る材料の流れが送り込まれる。第2の材料の流れは、側面の連結開口部を介して、正面が閉鎖されているダクト列に送り込まれ、他方の端部で、同様にそこに取り付けられている側面の連結開口部を介して、再び一体型ハニカムボディから出る。
【0024】
特に好ましいのは、一体型ハニカムボディが、第1と第2のグループの材料の流れだけを通している場合である。
【0025】
本発明の好ましい発展形態では、一体型ハニカムボディが、補足的にインタクーラとして設計及び/又は形成されている。しばしば流入する酸化剤は圧縮され、このとき圧縮終了温度は最大200℃に達する。下流に接続されている燃料電池装置にとって、この温度は高すぎる。温度感度が小さい一体型ハニカムボディを、ガス対ガス加湿装置として使用することにより、冷却されていない圧縮された酸化剤を直接一体型ハニカムボディに流し込むことができ、さらに酸化剤はこの中で冷却され、湿気を受け取ることも可能となる。
【0026】
本発明のもう1つの対象は、少なくとも1つの燃料電池装置と、燃料電池装置に酸化剤を供給する供給アセンブリとを備える燃料電池システムに関し、この供給アセンブリは前述のように形成されている。
【0027】
この燃料電池システムは、好ましくは移動する燃料電池システムとして、特に車両に駆動エネルギーを供給するために形成されている。この燃料電池システムは、多数の、特に100以上、好ましくは150以上の燃料電池を備えた、好ましくは1つ又は複数の燃料電池スタックを有している。
【0028】
好ましくは、この燃料電池システムでは、ガス対ガス加湿装置によって、酸化剤とカソード排気ガスとの間で直接的及び/又は標準的な熱及び/又は湿気の伝達が行われるのを特徴とする。とりわけ、もう1つの加湿装置及び/又は圧縮された酸化剤を冷却するための別のインタクーラを省略することができる。これによって、一方では必要コンポーネント数が削減され、他方では供給アセンブリの負荷容量をさらに高めるという、本発明のもう1つの可能な利用方法が生じる。
【0029】
好ましくは、燃料電池システムが制御又は調整可能なバイパスラインを有し、このバイパスラインは、ガス対ガス加湿装置の周りに通されており、ガス対ガス加湿装置を介して送られる酸化剤と、ガス対ガス加湿装置のそばを通り過ぎる酸化剤との割合によって、温度と同時に酸化剤の湿度も調整するようになっている。
【0030】
本発明の実際の実施形態では、ガス対ガス加湿装置が、流体技術的に、酸化剤を圧縮するコンプレッサの下流に接続されている、及び/又は排気ガスの圧力を除去するタービンの上流に接続されている。好ましくは、コンプレッサとタービンとがギヤ−シャフトによって相互に連結されているため、圧力除去の際に取り除かれるエネルギーが、排気ガスから酸化剤へと、圧縮エネルギーとして送られる。ガス対ガス加湿装置は、除湿のための凝縮液セパレータの上流に接続されているのが好ましい。
【0031】
以下に、本発明の好ましい実施例と添付の図から、本発明の詳しい特徴、利点および効果を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例である供給アセンブリを備える燃料電池システムのブロック図である。
図2図1の供給アセンブリの一体型ハニカムボディの上から見た正面図、側面断面図及び上から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、燃料電池システム1のブロック図である。この燃料電池システム1は、多数の燃料電池(図示されていない)が配置されている燃料電池装置2を含み、これらの燃料電池はそれぞれPE膜(プロトン交換膜(PEM))を有している。酸化剤を燃料電池装置2に供給する、又は燃料電池装置2から排出する供給アセンブリ3は、接続ラインによって燃料電池装置2に接続されている。例えばアノード供給などの、燃料電池装置2のその他の供給装置は図示されていない。
【0034】
供給アセンブリ3は、酸化剤の供給部分4と排出部分5とを有している。供給部分4は、燃料電池装置2に酸化剤を供給し、排出部分5は、燃料電池装置2のカソード領域から排気ガスを排出する。
【0035】
酸化剤として供給される周辺空気は、まずコンプレッサ6で圧縮され、次にガス対ガス加湿装置7に送られるが、この加湿装置7は、機能的に見た場合、圧縮された酸化剤を冷却し、加湿する。圧縮され、加湿された酸化剤は、次に、燃料電池装置2に送られる。加湿及び/又は冷却を調整できるようにするために、バイパス8が設けられており、このバイパスは、酸化剤の部分流又は酸化剤の全ての材料の流れが燃料電池装置2へ向かう途中でガス対ガス加湿装置7を迂回するようにバルブによって制御可能である。燃料電池装置2において酸化剤が電解反応に加わった後、排気ガス流は再びガス対ガス加湿装置7に送られ、そこで、圧縮された酸化剤の廃熱によって暖められ、除湿される。ガス対ガス加湿装置7を出ると、凝縮液セパレータ9において、場合により残っている液状の水分が分離され、その後、排気ガスはタービン10の中で圧力を除去されて、周辺に排出される。タービン10は、ギヤ−シャフトによってコンデンサと連結されているため、タービン10によってコンプレッサ6を駆動することができる。
【0036】
従って、このガス対ガス加湿装置7は、圧縮された酸化剤を冷却する機能と、排気ガス流の湿気によって酸化剤を加湿する機能との、2つの機能を受け持っている。湿気は、燃料電池装置2における酸化剤と燃料との電解反応の副産物である。
【0037】
図2は、ガス対ガス加湿装置7に組み込まれている、立方形の一体型ハニカムボディ11を示す複数の外観図である。一体型ハニカムボディ11の基本形状は押出し成形されており、例えば温度安定性のセラミック材料から製造されている。このことにより、このハニカムボディは、最大200℃の圧縮された酸化剤温度に対して損傷せずに耐えることができる。
【0038】
一体型ハニカムボディ11は多数のダクト12を有しており、これらのダクトは、規則的かつ同方向に一体形成の基本材料の中に収納されている。ダクト12は、ここでは正方形の断面で示されているが、その他の任意の形状も同様に取りうる。
【0039】
一体型ハニカムボディ11の原形では、互いに平行に方向づけられた多数のダクト12しか準備されていないが、以下に説明する変更例では、酸化剤領域13と排気ガス領域14という2つの領域が一体型ハニカムボディ11の中で形成又は分割されている。この場合、図2に示されている実施形態による領域の割当ては単なる例にすぎない。原則的に、14で示されている領域を酸化剤領域として機能させ、13で示されている領域を排気ガス領域として機能させることも可能である。両方の領域13、14は、一体型ハニカムボディ11の基本材料からなる中間壁によって互いに分離され、作動中は、酸化剤Aと排気ガスBとの該当する材料の流れがこれらの領域を通って流れている。この場合、図2に示されている実施形態による酸化剤をAとし、排気ガスをBとする割当ては単なる例にすぎない。原則的に、排気ガスをAとし、酸化剤をBと割り当てることも可能である。
【0040】
第1の変更例は、上から見た図のA−Aによって示されているように、一体型ハニカムボディ11の正面のダクト列を閉鎖することによって達成される。この場合、それぞれ2列目が閉鎖エレメント15によって閉じられており、閉鎖エレメント15は、ハニカムボディ11の両方の正面で用いられる。酸化剤Aは、この変更例によって、全てのダクト12を通って流れることができ、これらのダクトは両方の正面に塞がれてない連結開口部を示している。これに対して、それぞれ2列目は、両側で閉鎖エレメント15によって閉鎖されている。
【0041】
排気ガスBが一体型ハニカムボディ11を通って流れるようにするために、このハニカムボディ11の側面には切り込み16が設けられており、これらの切り込みは、1つの列の中で、全てのダクト12がつながり合っているか、又は塞がれずに接続されている限り伸びている。従って、排気ガスBは、周辺側から一体型ハニカムボディ11の中に送り込まれ、切り込み16で全てのダクト12に配分されることができ、酸化剤Aに対して平行に、及び同一方向又は反対方向に一体型ハニカムボディ11を流れることができる。
【0042】
酸化剤流Aと排気ガス流Bとは、一体型ハニカムボディ11のベースボディからなる分離層によってのみ互いに分割されており、このベースボディは、酸素は透過せずに残るが、湿気、水蒸気又は水は透過するような膜として形成されている。オプションとして、この分離層は、ゼオライト、酸化ケイ素又はポリマからなるコーティングを施すことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 燃料電池システム
2 燃料電池装置
3 供給アセンブリ
4 供給部分
5 排出部分
6 コンプレッサ
7 ガス対ガス加湿器
8 バイパス
9 凝縮水セパレータ
10 タービン
11 ハニカムボディ
12 ダクト
13 酸化剤領域
14 排気ガス領域
15 閉鎖エレメント
16 切り込み
図1
図2