【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を備える供給アセンブリ及び請求項11の特徴を備える燃料電池システムによって解決される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態又は有利な実施形態は、従属請求項、以下の説明、及び添付の図に示されている。
【0010】
本発明は、燃料電池装置に連結するために適している及び/又は形成されている供給アセンブリに関する。とりわけ、この連結は解除可能に形成されていることから、供給アセンブリを燃料電池装置から外すことができる。燃料電池装置の中には、好ましくは、多数の燃料電池が配置されている。
【0011】
この供給アセンブリは、好ましくはカソード供給として形成され、ガス対ガス加湿装置を有しており、このガス対ガス加湿装置により、燃料電池装置の排気ガス、特にカソード排気ガスの湿気を用いて、燃料電池装置用の酸化剤、特に供給される空気を加湿することができる。加湿を実施するために、このガス対ガス加湿装置には排気ガス領域と酸化剤領域とが設けられ、これらの領域は湿気を通す分離層によって互いに切り離されており、この分離層により、排気ガス領域から酸化剤領域に湿気が伝達され、酸化剤を加湿することができる。すでに冒頭で述べたように、酸化剤の加湿は、燃料電池装置の膜、特にプロトン交換膜(PEM)の要求に対する状態調節のために働く。
【0012】
本発明において提案されるのは、ガス対ガス加湿装置が排気ガス領域と酸化剤領域とを形成するための一体型ハニカムボディを有することである。特に、排気ガス領域と酸化剤領域とは、共通の一体型ハニカムボディの中に配置されている。
【0013】
本発明の意味において、一体型ボディとは1つの部品で一体形成されているボディである。この一体形成は、例えば押出し加工などの成形、又はフライス加工、穴あけ加工などの切削プロセスなどによって半製品から作ることができる。ハニカムボディとは、少なくとも2のハニカム、すなわち排気ガス領域のハニカムと酸化剤領域のハニカムとを有するボディを意味する。好ましいのは、このハニカムボディが多数のハニカムを有していることである。これらのハニカムは、例えば、丸型、円形、楕円形、多角形、六角形、長方形など、断面を任意に形成することができる。例えば、一体型ハニカムボディは、セラミックボディとして形成されている。
【0014】
本発明の利点として、1つには、従来の技術と比較して、個々の膜を樹脂に鋳込むという経費のかかる作業を省略していることがある。その代わりに、機械的に安定した、あまり敏感に反応しない一体型ボディが用いられる。もう1つの利点は、一体型ハニカムボディの好ましい実施形態は内燃機関の排気ガス後処理ですでに広く使用されているため、低コストかつ高品質なものが市場で入手可能なことである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、排気ガス領域から酸化剤領域へ、即ち排気ガスから酸化剤へと湿気を伝達する分離層が、一体型ハニカムボディの基本材料から成り、又はこの基本材料によって形成されている。簡単な実施形態の場合、基本材料は、その基本的な特徴から、湿気を伝達するのに必要な能力を有するように、多孔質に形成されている。
【0016】
本発明の好ましい発展形態では、分離層、すなわち一体型ハニカムボディのベースボディが、例えばゼオライト、酸化ケイ素、温度安定性高分子又は酸化アルミニウムなどの材料でコーティングされている、及び/又は加工されている。
【0017】
両方の実施形態において、分離層又はベースボディの透過性は、酸化剤の酸素は透過せずに残り、湿気、特に水蒸気が透過するように形成されている。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、一体型ハニカムボディが多数のダクトをハニカムとして有しており、ダクトの第1のグループが排気ガス領域を形成し、ダクトの第2のグループが酸化剤領域を形成している。これらのグループは、それぞれ同じ数のダクトを有することができるが、異なる数で配分することもできる。ダクトは全て同じ形態で実施することができるが、異なった実施形態にする場合は、とりわけグループに応じてダクトの形を区別することができる。
【0019】
考えられる実施形態では、第1と第2のグループのダクトが、一体型ハニカムボディの中に規則的に、好ましくは層の形で交代に、及び/又は交互に配置されている。第1の層には酸化剤のダクトが配置され、第2の層には排気ガスのダクト、第3の層には再び酸化剤のダクトが配置されるため、湿気を中央の層から2方向に伝達することができる。
【0020】
実際の実施形態では、2つのグループの一方の1つ又は複数の連結開口部が、一体型ハニカムボディの正面に設けられている。これらの連結開口部は、排気ガス又は酸化剤の供給ラインあるいは排出ラインと連結可能であるように形成されている。好ましいのは、このグループの連結開口部が、一体型ハニカムボディの両方の正面に配置されていることである。
【0021】
これに対して、同一の正面にある他方のグループの1つ又は複数の連結開口部が、例えばディストリビュータキャップによって閉じられるのも好ましい。ディストリビュータキャップの使用により、最初に、一体型ハニカムボディの全ての連結開口部が開き、次に、このディストリビュータキャップによって連結開口部が選択的に閉じられるという利点が生じる。他方のグループの連結開口部を封鎖するため、ディストリビュータキャップの代わりに、別の閉鎖エレメントを使用することもできる。
【0022】
好ましいのは、一方のグループの1つ又は複数の連結開口部が一体型ハニカムボディの周辺面に配置されていることである。特に、ここでの連結開口部は、正面から到達できないダクトグループのための連結開口部である。これらの周辺側の連結開口部は、切削プロセスによって、特に細長い切り込みを入れることによって作られるのが好ましい。
【0023】
従って、例えば、排気ガスと酸化剤の材料の流れを、正面で閉鎖されたダクト列と、閉鎖されたダクト列の側面の切り込みとによって別々にガイドすることができる。このように準備された一体型ハニカムボディの正面には、閉鎖されていないダクト列に配分され、これらのダクト列を通る材料の流れが送り込まれる。第2の材料の流れは、側面の連結開口部を介して、正面が閉鎖されているダクト列に送り込まれ、他方の端部で、同様にそこに取り付けられている側面の連結開口部を介して、再び一体型ハニカムボディから出る。
【0024】
特に好ましいのは、一体型ハニカムボディが、第1と第2のグループの材料の流れだけを通している場合である。
【0025】
本発明の好ましい発展形態では、一体型ハニカムボディが、補足的にインタクーラとして設計及び/又は形成されている。しばしば流入する酸化剤は圧縮され、このとき圧縮終了温度は最大200℃に達する。下流に接続されている燃料電池装置にとって、この温度は高すぎる。温度感度が小さい一体型ハニカムボディを、ガス対ガス加湿装置として使用することにより、冷却されていない圧縮された酸化剤を直接一体型ハニカムボディに流し込むことができ、さらに酸化剤はこの中で冷却され、湿気を受け取ることも可能となる。
【0026】
本発明のもう1つの対象は、少なくとも1つの燃料電池装置と、燃料電池装置に酸化剤を供給する供給アセンブリとを備える燃料電池システムに関し、この供給アセンブリは前述のように形成されている。
【0027】
この燃料電池システムは、好ましくは移動する燃料電池システムとして、特に車両に駆動エネルギーを供給するために形成されている。この燃料電池システムは、多数の、特に100以上、好ましくは150以上の燃料電池を備えた、好ましくは1つ又は複数の燃料電池スタックを有している。
【0028】
好ましくは、この燃料電池システムでは、ガス対ガス加湿装置によって、酸化剤とカソード排気ガスとの間で直接的及び/又は標準的な熱及び/又は湿気の伝達が行われるのを特徴とする。とりわけ、もう1つの加湿装置及び/又は圧縮された酸化剤を冷却するための別のインタクーラを省略することができる。これによって、一方では必要コンポーネント数が削減され、他方では供給アセンブリの負荷容量をさらに高めるという、本発明のもう1つの可能な利用方法が生じる。
【0029】
好ましくは、燃料電池システムが制御又は調整可能なバイパスラインを有し、このバイパスラインは、ガス対ガス加湿装置の周りに通されており、ガス対ガス加湿装置を介して送られる酸化剤と、ガス対ガス加湿装置のそばを通り過ぎる酸化剤との割合によって、温度と同時に酸化剤の湿度も調整するようになっている。
【0030】
本発明の実際の実施形態では、ガス対ガス加湿装置が、流体技術的に、酸化剤を圧縮するコンプレッサの
下流に接続されている、及び/又は排気ガスの圧力を除去するタービンの
上流に接続されている。好ましくは、コンプレッサとタービンとがギヤ−シャフトによって相互に連結されているため、圧力除去の際に取り除かれるエネルギーが、排気ガスから酸化剤へと、圧縮エネルギーとして送られる。ガス対ガス加湿装置は、除湿のための凝縮液セパレータの
上流に接続されているのが好ましい。
【0031】
以下に、本発明の好ましい実施例と添付の図から、本発明の詳しい特徴、利点および効果を説明する。