特許第5746058号(P5746058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746058コヒーレント・ネットワークMIMOのためのアンテナ同期
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746058
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】コヒーレント・ネットワークMIMOのためのアンテナ同期
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20150618BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20150618BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20150618BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20150618BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04W16/28 130
   H04W56/00
   H04B7/04
   H04B7/06
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-553410(P2011-553410)
(86)(22)【出願日】2010年3月8日
(65)【公表番号】特表2012-520590(P2012-520590A)
(43)【公表日】2012年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2010052887
(87)【国際公開番号】WO2010102969
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2011年9月12日
(31)【優先権主張番号】09003607.0
(32)【優先日】2009年3月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,ハンス−ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シュレシンジャー,ハインツ
【審査官】 藤江 大望
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−252278(JP,A)
【文献】 特表2008−523665(JP,A)
【文献】 特開2007−228603(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/064058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 7/02
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線伝送システム(1、1a、1b)の別々の位置に配置された複数のRFアンテナ・サイト(3aから3i)のRFアンテナ信号(5aから5i)を同期する方法であって、
該無線伝送システム(1、1a、1b)の中央ユニット(2)に配置された基準発振器(6)において基準信号(7)を生成するステップと、
該基準信号(7)を光信号として、該中央ユニット(2)から光ファイバ・リンク(9a、9a’、9a’’、…)を介して該複数のRFアンテナ・サイト(3aから3i)に送信するステップと、該別々のアンテナ・サイト(3aから3i)の該RFアンテナ信号(5aから5i)を同期するために該送信された基準信号(7)を使用するステップとを含み、
RF周波数をGHzレンジで有する該基準信号(7)を生成するステップと、該RFアンテナ信号(5aから5i)の少なくとも2つのためのキャリア信号を生成するために該RFアンテナ・サイト(3aから3i)のうちの少なくとも2つによって該基準信号(7)を使用するステップと、該RFアンテナ・サイト(3aから3i)のうちの少なくとも2つによって該少なくとも2つのRFアンテナ信号(5aから5i)を送信するステップとを含み、
該光信号は、別々の波長を有する2つの成分を含み、該方法はさらに、該RFアンテナ・サイト(3aから3i)の周波数混合器によって、該2つの成分間の差としてクロック基準を生成するステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
データ信号(11)を該中央ユニット(2)から該RFアンテナ・サイト(3aから3i)に送信するステップをさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
該データ信号(11)と該基準信号(7)は、別々のファイバ・リンク(9a、12a)を介して送信される、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、
該データ信号(11)と該基準信号(7)は、同一のファイバ・リンク(9a’、9a’’、…)を介して送信される、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
同一のファイバ・リンク(9a’)を介して別々の波長で該データ信号(11)と該基準信号(7)を送信するために波長分割多重化(WDM)を行うステップをさらに含む、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
同一のファイバ・リンク(9a’’)を介して該データ信号(11)と該基準信号(7)を送信するために電気多重化を行うステップをさらに含む、方法。
【請求項7】
別々の位置に配置された複数のRFアンテナ・サイト(3aから3i)を備え、各RFアンテナ・サイト(3aから3i)が、RFアンテナ信号(5aから5i)を生成するための少なくとも1つのRFアンテナ(4aから4i)を有し、さらに、
基準信号(7)を生成するための基準発振器(6)を備える中央ユニット(2)と、
該基準信号(7)を光信号として、該中央ユニット(2)から該複数のRFアンテナ・サイト(3aから3i)へ送信するための複数の光ファイバ・リンク(9a、9a’、9a’’、…)とを備える無線伝送システム(1、1a、1b)であって、
該RFアンテナ・サイト(3aから3i)は、該別々のRFアンテナ・サイト(3aから3i)の該RFアンテナ信号(5aから5i)を同期するために該送信された基準信号(7)を使用するように適合され、
該基準発振器(6)は、RF周波数をGHzレンジで有する基準信号(7)を生成するように適合され、該RFアンテナ・サイト(3aから3i)のうちの少なくとも2つは、該基準信号(7)を使用して、該RFアンテナ・サイト(3aから3i)のうちの少なくとも2つの該RFアンテナ信号(5aから5i)のためのキャリア信号を生成するように適合され、該RFアンテナ・サイト(3aから3i)のうちの少なくとも2つは、該RFアンテナ信号(5aから5i)を送信するように適合され、
該光信号は、別々の波長を有する2つの成分を含み、クロック基準が、該RFアンテナ・サイト(3aから3i)の周波数混合器によって、該2つの成分間の差として生成される、無線伝送システム。
【請求項8】
請求項7に記載の無線伝送システムにおいて、
該中央ユニット(2)から該RFアンテナ・サイト(3aから3i)へのデータ信号(11)の送信に適合された、無線伝送システム。
【請求項9】
請求項8に記載の無線伝送システムにおいて、
該データ信号(11)を該中央ユニット(2)から該RFアンテナ・サイト(3aから3i)へ送信するための少なくとも1つの追加のファイバ・リンク(12a)をさらに備える、無線伝送システム。
【請求項10】
請求項8に記載の無線伝送システムにおいて、
別々の波長を使用して同一のファイバ・リンク(9a’)を介して該基準信号(7)と該データ信号(11)を送信するための波長分割多重化(WDM)構成(16、17aから17i)をさらに備える、無線伝送システム。
【請求項11】
請求項8に記載の無線伝送システムにおいて、
同一のファイバ・リンク(9a’’)を介した該基準信号(7)と該データ信号(11)の組み合わされた送信のための電気多重化構成(18、19aから19i)をさらに備える、無線伝送システム。
【請求項12】
請求項8に記載の無線伝送システムにおいて、
該光ファイバ・リンク(9a、9a’、9a’’、…)は、20km未満の長さ、好ましくは10km未満の長さを有する、無線伝送システム。
【請求項13】
請求項7に記載の無線伝送システムにおいて、
該RFアンテナ・サイト(3aから3i)の各々は、多素子アンテナの単一アンテナ素子のサイトである、無線伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線伝送システムの別々の位置に配置された複数のRFアンテナ・サイト(antenna site)のRFアンテナ信号を同期するための方法に関する。本発明はまた、この方法を実施するように適合された無線伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント・ネットワーク(coherent network)MIMO(多入力/多出力)は、セルラ・ネットワーク(cellular network)のような無線伝送システムにおいて、特に、各セルで同じスペクトルが使用される周波数再利用を伴うシステムにおいて、スペクトル効率の顕著な増大をもたらす。この場合、システム性能は、通常はセル間干渉によって制限される。
【0003】
ダウンリンク方向で、すなわち、RFアンテナ・サイトから移動局へのコヒーレント・ネットワークMIMO伝送から最大限の利益を得るためには、離れたアンテナ・サイトに位置する(例えば、複数の協働する基地局、または同一の基地局の複数のリモート・ラジオ・ヘッド(Remote Radio Head)に位置する)アンテナが、(「校正されたアンテナ」として機能して)相関位相を有する無線信号を送信すべきである。
【0004】
このため、RFアンテナ信号の同期を維持するための方法として、RFアンテナ信号間の偏差(位相ジッタ)をおよそ100msの時間フレームでRF周期の数分の1より小さく抑えることが望ましい。この周期は、フィードバック機構が位相を制御できるために十分な長さとなる。無線信号の搬送周波数は、一般に、セルラ用途で1から5GHzの間であり、アンテナ間の間隔は、マクロ・セルラ(macro-cellular)環境で、例えば、500mから1km程度かまたはそれより大きくすることができる。
【0005】
基地局の同期のための公知の方法は、例えば、イーサネット・バックホール・リンク(Ethernet backhaul link)の使用、あるいはGPSクロック基準の使用に基づいており、以下で両者について簡単に説明する。
【0006】
IEEE1588またはCPRIインターフェース(イーサネット・バックホール・リンク)の使用
イーサネット・ベース(またはプロトコル・ベース)の同期のカテゴリでは、1つにはIEEE1588に従う方法、もう1つにはCPRIインターフェースに基づく方法がある。このカテゴリの方法では、同期をミリ秒の数分の1にまで短くすることができるが、これらは、離れたアンテナが前述の要件で校正されるように維持することができない。
【0007】
GPS基準の使用
GPSの場合は、マスタ・クロック(master clock)(マスタ発振器)がGPSシステムの衛星に配置され、10MHzの基準信号がGPS衛星受信機ユニットにより提供される。GPS受信機は、発振器を制御する信号を提供する各アンテナ・サイトに設置される。
【0008】
しかし、両者の手法、すなわち、GPSとIEEE1588は、別の理由からも十分に精密ではなく、それは、RFキャリア信号をそれよりはるかに低い周波数を有する基準信号から生成するために位相ロック・ループ(Phase Locked Loop)(PLL)を使用することに起因する。
【0009】
PLLを使用して2GHzのRF信号が10MHzの基準信号から得られるとした場合、20log(2GHz/10MHz)=46dBのPLL帯域内位相ノイズが実現されることになる。しかし、現在のRF無線チャネル・グリッド(RF-radio channel grid)は、100KHzから1MHzの範囲であり、したがって、PLL帯域内位相ノイズが、例えば、100KHz基準周波数では86dBにまで増大することになる。これにより、任意のリモート・ラジオ・ヘッドにおける個々のRF−(LO)発振器内で非常に大きな無相関の位相偏移がもたらされ、それに、エア・インターフェース(air interface)上の(SDMA(空間分割多重アクセス)パターンに類似する)望ましくない無相関の無線パターンが伴うことになる。
【0010】
結果として、送信プロセスにおいて協働しているすべてのアンテナは、およそ搬送周波数ほどの周波数を有するマスタ発振器から得られる信号を使用する精密な同期を必要とする。
【0011】
ルビジウム(Rb)時計と組み合わせたGPS信号を使用することにより、そうした同期を実施するための、商用の1つの解決手法がある。この事例では、GPS信号によって非常に精密な(ルビジウム)時計が外部同期される。しかし、ルビジウム時計を使用するため、この解決手法は高価であり、多くの用途でその使用が妨げられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、序文に記載された方法が提供され、この方法は、無線伝送システムの中央ユニットに配置された基準発振器において基準信号を生成するステップと、基準信号を光信号として、中央ユニットから光ファイバ・リンクを介してRFアンテナ・サイトに送信するステップと、例えば、送信された基準信号を共通クロック信号としてアンテナ・サイトのそれぞれにおいて使用することにより、別々のアンテナ・サイトのRFアンテナ信号を同期するために、送信された基準信号を使用するステップとを含む。このような方法で、別々のアンテナ・サイトのRFアンテナ信号を、信頼性があり費用効率が高いやり方で同期することができる。
【0013】
本発明者らは、光リンクを使用して、基準/クロック信号を中央サイトの「マスタ」発振器から光ファイバ・リンクを介し「スレーブ」アンテナ・サイトへ送信することを提案する。本発明者らは、この方法により実現されるクロック同期の精度が短期のジッタによって与えられることを発見した。(光路長の差に起因する)この短期位相ジッタの大部分は、使用されたファイバの偏波モード分散(PMD)によって引き起こされる。偏波モード分散は、およそ0.1/0.5ps/√kmであり、20kmのサイト間に対して全体で0.45/2.25psとなる。この値は、100ms測定期間内の必要値の50psの偏差をはるかに下回る。
【0014】
このように、本発明は、遠隔アンテナの位相同期(校正)のための方法を提供し、結果として、LTE FDDのようなシステムのためのダウンリンクにおけるコヒーレント・ネットワークMIMOの使用を可能にするものである。なぜなら、エア・インターフェース上の度を越さない伝送オーバーヘッドを伴って移動局と基地局の間のフィードバック・ループを使用して無線チャネルを制御することができる程度に遠隔アンテナの位相が安定化されるためである。
【0015】
アンテナ・サイトにおけるリモート・ラジオ・ヘッドとともに中央ユニットとしてNode B(NodeB)を含む構成の場合、既にデジタル・ベースバンド信号のために配備されたファイバ・リンクが存在する。古典的Node Bおよびファイバ・バックホーリング(fibre backhauling)を含む無線アクセス・ネットワークの場合、同じ同期方法が実現されることも可能である。具体的には、複数の協働する基地局(Node B)がアンテナ・サイトの役割をすることができ、基準発振器を含む通信ネットワークの中央サイトが、それらの複数の基地局に基準信号を提供することができる。Node B(アンテナ・サイト)のうちの1つが中央サイト/中央ユニット(マスタ・ユニット)の役割をして、他のNode B(スレーブ)に基準信号を提供することができることは、当業者には認識されよう。上述の方法はまた、多素子アンテナにも適用することができる。この場合、クロック分配、あるいは基準信号の分配は、光バックプレーンによって実現される。
【0016】
ある変形形態では、この方法はさらに、RF周波数を特にGHzレンジで有する基準信号を生成するステップを含み、また、好ましくは、RFアンテナ信号の少なくとも1つについてのキャリア信号を生成するために基準信号を使用するステップを含む。基準信号は、一般に、キャリア信号の周波数のオーダーで周波数を有する。具体的には、基準信号の周波数は、キャリア信号の周波数と同じであってもキャリア信号の周波数の半分であってもよい。
【0017】
基準信号は、精密な基準(クロック信号)として使用しても、RFアンテナ信号のためのキャリア信号を生成するために直接使用してもよい。後者の場合、基準信号は、キャリアとして使用される前に増幅/再生されうることは理解されよう。
【0018】
別の変形形態では、この方法はさらに、データ信号を中央ユニットからRFアンテナ・サイトに送信するステップを含む。一般に、データ信号は、デジタル信号として、例えば、光ファイバを介して送信される。もちろん、ファイバ(例えば、同軸ケーブル)を介してRFアンテナ信号の公知のアナログ伝送を使用することも可能である。しかし、そうしたアナログ伝送は、歪みを生じることになる。一般にすべてのRFアンテナ・サイトに共通する基準信号とは対照的に、一般に別々のデータ信号が別々のRFアンテナ・サイトに対して送信されることは、当業者には認識されよう。MIMOアプリケーションでは、データ信号は、別々の位相であっても通常は同じユーザ・データを含む。
【0019】
この変形形態のある展開では、データ信号と基準信号は、別々のファイバ・リンクを介して送信される。この場合、基準信号の送信は、データ信号の送信と独立して行うことができる。
【0020】
この変形形態の別の展開では、データ信号および基準信号は、同一のファイバ・リンクを介して送信される。前述のように、基準信号の送信にも使用されうるベースバンド信号の送信のために配備された光ファイバ・リンクが既に存在することがある。同一のファイバ・リンクを介して同時にデータ信号および基準信号を送信するために、いくつかの選択肢がある。
【0021】
第1の選択肢は、同一のファイバ・リンクを介して別々の波長でデータ信号と基準信号を送信するために波長分割多重化(WDM)を行うことである。この場合、デジタル・データ信号と基準信号を分離するために(符号)WDM方式を用いることができる。
【0022】
第2の選択肢は、同一のファイバ・リンクを介してデータ信号と基準信号を送信するために電気多重化を行うことである。この選択肢が適用される場合、アナログRF基準信号は、中央サイトの光送信機およびRFアンテナ・サイトの光受信機のそれぞれで電気的挿入/脱挿入(多重化)を用いて、デジタル・ベースバンド・データ信号の上に変調されうる。このような手法を用いると、第2のファイバの配備またはWDMスプリッタ/コンバイナ(combiner)装置の配備なしで済まされる。ファイバ・リンクは一般に比較的短く(例えば、20または10km未満)、電気多重化が可能であり、したがって、光リンク・バジェット(optical link budget)に大きな余裕が残される。
【0023】
本発明の第2の態様は、無線伝送システムに実装され、無線伝送システムは、別々の位置に配置された複数のRFアンテナ・サイトであって、各RFアンテナ・サイトが、RFアンテナ信号を生成するための少なくとも1つのRFアンテナを有する、複数のRFアンテナ・サイトと、基準信号を生成するための基準発振器を備える中央ユニットと、基準信号を中央ユニットから複数のRFアンテナ・サイトへ送信するための複数の光ファイバ・リンクとを備え、RFアンテナ・サイトは、別々のRFアンテナ・サイトのRFアンテナ信号を同期するために、送信された基準信号を使用するように適合されている。
【0024】
上述の無線伝送システムでは、基準信号は、単一の波長のみを含む光信号として提供されうる。代替として、基準信号は、別々の波長を有する2つ以上の成分を含んでもよい。この場合、RFアンテナ・サイトは、例えば、基準信号の2つの成分間の差としてクロック基準(周波数)を生成するための周波数混合器を備える。この手法は、ファイバの光路長のばらつきによって与えられる位相変動を低減させ、それにより、受信基準信号のジッタを低減させる。
【0025】
一実施形態では、基準発振器は、RF周波数を特にGHzレンジで有する基準信号を生成するように適合される。十分な精度で同期を実行するために、基準信号の周波数は、RFアンテナ信号のキャリア信号のオーダーであるべきである。通常、基準発振器は、光ファイバを介して送信される前に電気/光変換されるアナログ電気信号を生成するように適合されている。
【0026】
他の実施形態では、少なくとも1つのRFアンテナ・サイトが、基準信号を使用して、RFアンテナ・サイトのRFアンテナ信号のためのキャリア信号を生成するように適合される。基準信号をキャリア信号として使用する最も容易な方法は、キャリア信号の周波数を有する基準信号を提供して、基準信号がキャリア信号として直接(場合によっては、RFアンテナ・サイトで再増幅/再生成後に)使用できるようにすることである。
【0027】
無線伝送システムの別の実施形態は、中央ユニットからRFアンテナ・サイトへのデータ信号の送信に適合される。
【0028】
この実施形態のある展開では、無線伝送システムは、データ信号を中央ユニットからRFアンテナ・サイトへ送信するための少なくとも1つの追加のファイバ・リンクを備える。
【0029】
別の展開では、無線伝送システムはさらに、別々の波長を使用して同一のファイバ・リンクを介して基準信号とデータ信号を送信するための波長分割多重化(WDM)構成(マルチプレクサ/デマルチプレクサ)を備える。光多重化は、適切なスプリッタ/コンバイナ装置を使用して行うことができる。
【0030】
一実施形態では、無線伝送システムはさらに、同一のファイバ・リンクを介した基準信号とデータ信号の組み合わされた送信のための電気多重化構成を備える。電気多重化を行うとき、ファイバ・リンクを介して送信された信号は、例えば、大きい信号成分としてデジタル・データ信号を、小さい信号成分としてアナログ基準信号を含むことができる。
【0031】
例えば、上述のような(光または電気多重化を使用し、別個のファイバを介して)光信号を送信する様々な可能性が、同じ伝送システムで、例えば、別々のタイプの装置を有するRFアンテナ・サイトが同じ中央サイトに接続されるとき、実現されうることは理解されよう。
【0032】
一実施形態では、各ファイバ・リンクは、20km未満の長さ、好ましくは10km未満の長さを有する。前述のように、クロック同期を高い精度で行えることを保証するために、可能であれば、ファイバ・リンクの長さはこれらの値を超えるべきではない。
【0033】
以下の例示的実施形態の説明で、図面の図を参照して、さらに特徴および利点を説明する。それらは、重要な詳細を示し、特許請求の範囲によって定義される。個々の特徴は、別個にそれ自体で実施することができ、また、任意の所望の組み合わせでそれらのいくつかを実施してもよい。
【0034】
例示的実施形態を以下の概略図に示し後述の記載で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】データ信号と基準信号を送信するために別個の光ファイバを使用する無線伝送システムの第1の実施形態を示す概略図である。
図2】WDMを用いてデータ信号および基準信号を送信するために単一の光ファイバを使用する無線伝送システムの第2の実施形態を示す概略図である。
図3】電気多重化を用いてデータ信号および基準信号を送信するために単一の光ファイバを使用する無線伝送システムの第3の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、(本例では、Node Bである)基地局の形態の中央ユニット2と、 中央ユニット2から離れて、例えば、中央ユニット2から約1km離れて別々の位置に配置されたリモート・ラジオ・ヘッドRRHの形態の複数のRFアンテナ・サイト3a、…、3iとを有する無線伝送システム1を示す。各RFアンテナ・サイト3a、…、3iは、対応するRFアンテナ信号5a、…、5iを生成/送信するための少なくとも1つのRFアンテナ4a、…、4iを備える。
【0037】
ダウンリンク方向でコヒーレント・ネットワークMIMO伝送から最大限の利益を得るために、離れたRFアンテナ・サイト3a、…、3iに位置するRFアンテナ4a、…、4iは、相関位相を有するRFアンテナ信号5a、…、5iを送信すべきであり、すなわち、共通クロック/基準信号を使用したRFアンテナ信号5a、…、5iの同期が必要である。
【0038】
そのような共通クロック信号をRFアンテナ4a、…、4iへ供給するために、中央ユニットは、アナログ(電気)基準信号7を生成するための基準発振器6を有する。基準信号7が電気/光送信機8(例えば、レーザ・ダイオード)を介して渡された後、基準信号7は、光ファイバ・リンク9aを介して第1のRFアンテナ・サイト3aに送信される。本例では、基準信号7は、光/電気変換のためのPINフォトダイオードを有するRFアンテナ・サイト3aのRF変調器10aに供給される。
【0039】
また、デジタル・データ信号11も、中央ユニット2から別個の光ファイバ12aを介して第1のRFアンテナ・サイト3aに送信される。データ信号11は、中央ユニット2のデジタル・ベースバンド装置13で生成され、半導体(レーザ)ダイオードを使用してデジタル電気/光送信機14で光送信用に準備され、その光パワーは、データ信号7によって変調される。RFアンテナ・サイト3aは、例えばPINフォトダイオードを使用して、デジタル光データ信号11をアナログ電気データ信号に変換するための、デジタル/アナログおよび光/電気変換器15aを有する。
【0040】
データ信号11および基準信号7のRFアンテナ・サイト3aへの送信後に、両者は、他のRFアンテナ・サイト3b、…、3iのRFアンテナ信号5b、…、5iと同期させられるRFアンテナ信号5aを生成するために使用される。
【0041】
このために、基準信号9はまず、(例えば、RF変調器10aで)再生および/または増幅され、次いで、RFアンテナ信号5aのためのキャリア信号として使用され、また、データ信号11は、アナログ形式に変換されキャリア信号を変調するために使用される。最も単純なケースでは、基準信号7をキャリア信号として使用するために、基準信号7の周波数が(GHzレンジで)キャリア信号の周波数と対応することは理解されよう。
【0042】
しかし、基準信号7は、単にキャリア信号のオーダーにある周波数、例えば、キャリア周波数の2分の1の周波数の基準信号7を有することも可能である。この場合、例えばPLLを用いた周波数の上方変換が基準信号7に適用でき、この上方変換は、基準信号7の周波数がキャリア信号の周波数から著しく離れていない限り、すなわち、典型的には基準信号7の周波数がキャリア信号の少なくとも1/10の周波数を有する限り可能である。
【0043】
別法として、基準信号7は、単に、RFアンテナ・サイト3aにおいてRFアンテナ信号5aを生成するための精密なクロック基準として使用してもよいことは理解されよう。また、複数、例えば2つの波長を有する基準信号7を使用し、例えば、RFアンテナ・サイト3aにおいて送信された基準信号7の2つの波長成分を抜き取ることによって、基準周波数が基準信号7から復元されることも可能である。いずれの場合も、基準信号7をクロック基準として使用したとき、別々のRFアンテナ・サイト3aから3iのRFアンテナ信号5aから5iを同期することができる。
【0044】
図1に示す実施形態では、データ信号11の送信は、代替として標準規格のRFケーブルを介して行ってもよい、すなわち、データ信号11は、中央サイト2からRFアンテナ・サイト3aから3iへ電気信号として送信されてもよいことは理解されよう。
【0045】
図2は、中央サイト2をRFアンテナ・サイト3aに接続する単一の光ファイバ9a’のみを有する無線伝送システム1aの代替実施形態を示す。この場合には、データ信号11と基準信号7の両方が、別々の波長を使用してファイバ9a’を介して送信され、(C)WDMマルチプレクサ16および(C)WDMデマルチプレクサ17aがそれぞれ、データ信号11と基準信号7の波長を組み合わせ/分離するために、中央サイト2およびRFアンテナ・サイト3aに配置されている。
【0046】
図3では、基準信号7とデータ信号11の両方を第1のRFアンテナ・サイト3aに送信するための同様に単一のファイバ9a’’を有する、さらに他の伝送システム1bが示されている。ただし、図2に示す伝送システム1aとは異なり、伝送システム1bは、中央サイト2に電気/光送信機18を、第1のRFアンテナ・サイト3aに電気/光受信機19aを備える。電気変調器18、19aは、デジタル・ベースバンド信号11の上にアナログ基準信号7を変調することによって電気的挿入および脱挿入を行うために使用される。
【0047】
上記のすべての無線伝送システム1、1a、1bでは、RFアンテナ・サイト3aから3iが、局部基準発振器の代わりに、基準として中央発振器6から送信される基準信号7を使用する。図1から3ではRFアンテナ・サイト3aから3iは同一の構造を有するが、図1から3に示される基準信号7およびデータ信号11の送信のタイプは混合されてもよいことは理解されよう。例えば、RFアンテナ・サイト3aから3iのうちいくつかが単一のファイバ9aを介して中央サイト2に接続される一方で、他のRFアンテナ・サイトはそのようにされなくてもよい。
【0048】
この場合、中央サイト2の機器は、その目的に適合される必要があることは理解されよう。この点に関して、単一の波長分割マルチプレクサ16および単一の電気マルチプレクサ18が示されているが、より多くのこうした装置が、別個の光ファイバ・リンクを介して他のRFアンテナ・サイト3bから3iにサービスするために中央サイト2に配備されうる(簡単にするため、それらの1つ(9i、9i’、9i’’)のみが示されている)ことは当業者には認識されよう。
【0049】
いずれの場合も、別々のアンテナ・サイト3aから3iのRFアンテナ信号5aから5iを同期するために、基準信号を送信するためのファイバ・リンク9a、9a’、9a’’の長さは、可能な限り、およそ20km、好ましくは10kmを超えるべきではない。というのは、かかるファイバ長を使用することにより、RFアンテナ信号5aから5iの同期が容易になり、別々の経路長を有する光ファイバでの偏波モード分散によって生じる位相ジッタが十分に小さいため、RFアンテナ・サイト3aから3iとRFアンテナ信号5aから5iを受信する移動局(図示せず)との間のフィードバック機構による補償が可能になり、したがって、所望の方法でそれらの位相を制御できるからである。
【0050】
上述の伝送システム1、1a、1bは、中央サイトとして基地局(Node B)を、RFアンテナ・サイト3aから3iとしてリモート・ラジオ・ヘッド(RRH)を使用するが、複数の協働する基地局(Node B)がアンテナ・サイトの役割をし、通信ネットワークの中央サイトがこれら複数の基地局にサービスする基準発振器を含むようにすることも可能であることは、当業者には認識されよう。また、上述の方法およびシステムは、中央素子が基準発振器を含む多素子アンテナ、あるいは他の適切な装置に適用することもできる。
【0051】
要約すると、上述の手法は、LTE FDDのようなシステムのためのダウンリンクにおけるコヒーレント・ネットワークMIMOの使用を可能にするものであり、それにより、エア・インターフェース上の控えめな伝送オーバーヘッドとともに移動局と基地局(例えば、Node B)の間のフィードバック・ループを使用して無線チャネルを制御することができる程度に遠隔アンテナの位相が安定化される。
【0052】
以上の好ましい実施形態の説明は、例として示されている。与えられた開示から、当業者は、本発明およびそれに伴う効果を理解するだけでなく、開示された構造および方法に対する明らかな様々な変更および改変も見出すことができよう。したがって、本出願人は、添付の特許請求の範囲によって定義されるこうしたすべての変更および改変、ならびにそれらの均等物を包含しようとするものである。
図1
図2
図3