(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有するハニカム構造体であって、 前記ハニカムユニットは、鉄イオンによりイオン交換されているゼオライト及び無機バインダを含む原料ペーストを押出成形した後、該押出成形された原料ペーストを焼成して作製されており、 前記ゼオライトは、比表面積が500m2/g以上800m2/g以下であり、外表面積が40m2/g以上80m2/g以下であることを特徴とするハニカム構造体。
前記原料ペーストは、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカムユニットを有するハニカム構造体を製造する方法であって、 鉄イオンによりイオン交換されているゼオライト及び無機バインダを含む原料ペーストを押出成形する工程と、 該押出成形された原料ペーストを焼成して前記ハニカムユニットを作製する工程を有し、 前記ゼオライトは、比表面積が500m2/g以上800m2/g以下であり、外表面積が40m2/g以上80m2/g以下であることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
前記原料ペーストは、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0026】
図1に、本発明のハニカム構造体の一例を示す。ハニカム構造体10は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されている単一のハニカムユニット11を有する。また、ハニカムユニット11は、鉄イオンによりイオン交換されているゼオライト及び無機バインダを含む原料ペーストを押出成形した後、
押出成形された原料ペーストを焼成して作製されている。さらに、ハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層12が形成されている。
【0027】
以下、ゼオライトは、原料ペーストに含まれるゼオライトを意味する。
【0028】
ゼオライトの比表面積は、500〜800m
2/gであり、500〜600m
2/gが好ましく、535〜538m
2/gがより好ましい。ゼオライトの比表面積が500m
2/g未満であると、ハニカムユニット11中の気孔の数が少なくなるため、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなり、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、比表面積が800m
2/gを超えるゼオライトを製造することは困難である。
【0029】
なお、ゼオライトの比表面積は、BET一点法(N
2吸着法)を用いて測定することができる。また、ゼオライトの比表面積を測定する際には、例えば、自動比表面積/細孔分布測定装置トライスター3000(島津製作所社製)を用いることができる。
【0030】
ゼオライトの外表面積は、40〜80m
2/gであり、40〜60m
2/gが好ましく、40〜52m
2/gがより好ましい。ゼオライトの外表面積が40m
2/g未満であると、ゼオライトの比表面積に対する外表面積の比が小さくなる、即ち、ゼオライトの表面に存在する細孔が多くなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、外表面積が80m
2/gを超えるゼオライトを製造することは困難である。
【0031】
なお、ゼオライトの外表面積は、t−プロット法(N
2吸着法)を用いて測定することができる。また、ゼオライトの外表面積を測定する際には、例えば、自動比表面積/細孔分布測定装置トライスター3000(島津製作所社製)を用いることができる。
【0032】
ゼオライトは、鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量が1.6質量%以上であることが好ましい。ゼオライトの鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量が1.6質量%未満であると、NOxの浄化性能が十分に向上しない。
【0033】
なお、鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量が5.0質量%を超えるゼオライトを製造することは困難であるため、ゼオライトは、鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量が1.6〜5.0質量%であることがより好ましい。また、ゼオライトは、鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量が3.6〜4.7質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、ゼオライトは、NOxの浄化性能を向上させることが可能な遷移金属イオン等でさらにイオン交換されていてもよい。
【0035】
ゼオライトの鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量、比表面積及び外表面積を、それぞれM[質量%]、S
1[m
2/g]及びS
2[m
2/g]とすると、式 0.25≦M×(S
2/S
1)≦0.60
を満たすことが好ましく、式
0.27≦M×(S
2/S
1)≦0.45
を満たすことがより好ましい。M×(S
2/S
1)が0.25質量%未満であると、NOxの浄化性能が十分に向上しない。一方、M×(S
2/S
1)が0.60質量%を超えるゼオライトを製造することは困難である。
【0036】
ゼオライトは、二次粒子の平均粒径が3〜5μmであることが好ましい。ゼオライトの二次粒子の平均粒径が3μm未満であると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ゼオライトの二次粒子の平均粒径が5μmを超えると、ハニカムユニット11中の気孔の数が少なくなるため、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなり、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0037】
ゼオライトとしては、特に限定されないが、β型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、NOxの浄化性能に優れるため、β型ゼオライトが好ましい。
【0038】
ハニカムユニット11は、見掛けの体積当たりのゼオライトの含有量が230〜400g/Lであることが好ましい。ハニカムユニット11の見掛けの体積当たりのゼオライトの含有量が230g/L未満であると、NOxの浄化性能を向上させるためにハニカムユニット11の見掛けの体積を大きくする必要がある。一方、ハニカムユニット11の見掛けの体積当たりのゼオライトの含有量が400g/Lを超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分になったり、ハニカムユニット11の開口率が小さくなったりする。
【0039】
原料ペーストに含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0040】
原料ペーストの固形分中の無機バインダの固形分の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%がより好ましい。原料ペーストの固形分中の無機バインダの固形分の含有量が5質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、原料ペーストの固形分中の無機バインダの固形分の含有量が30質量%を超えると、ハニカムユニット11を押出成形することが困難になる。
【0041】
原料ペーストは、ハニカムユニット11の強度を向上させるために、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことが好ましい。
【0042】
原料ペーストに含まれる無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0043】
原料ペーストに含まれる無機繊維のアスペクト比は、2〜1000であることが好ましく、5〜800がより好ましく、10〜500がさらに好ましい。原料ペーストに含まれる無機繊維のアスペクト比が2未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、原料ペーストに含まれる無機繊維のアスペクト比が1000を超えると、ハニカムユニット11を押出成形する際に金型に目詰まり等が発生したり、無機繊維が折れて、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなったりする。
【0044】
鱗片状物質は、平たい物質を意味し、厚さが0.2〜5.0μmであることが好ましく、最大長さが10〜160μmであることが好ましく、厚さに対する最大長さの比が3〜250であることが好ましい。
【0045】
原料ペーストに含まれる鱗片状物質を構成する材料としては、特に限定されないが、ガラス、白雲母、アルミナ、シリカ等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0046】
テトラポット状物質は、針状部が三次元に延びている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0047】
原料ペーストに含まれるテトラポット状物質を構成する材料としては、特に限定されないが、酸化亜鉛等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0048】
三次元針状物質は、針状部同士がそれぞれの針状部の中央付近でガラス等の無機化合物により結合されている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0049】
また、三次元針状物質は、複数の針状部が三次元に連なっていてもよく、針状部の直径が0.1〜5.0μmであることが好ましく、長さが0.3〜30.0μmであることが好ましく、直径に対する長さの比が1.4〜50.0であることが好ましい。
【0050】
原料ペーストに含まれる三次元針状物質を構成する材料としては、特に限定されないが、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、ベーマイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0051】
原料ペーストの固形分中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量は、3〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。原料ペーストの固形分中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が3質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、原料ペーストの固形分中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が50質量%を超えると、ハニカムユニット11中のゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0052】
ハニカムユニット11は、気孔率が20〜50%であることが好ましい。ハニカムユニット11の気孔率が20%未満であると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が50%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0053】
なお、ハニカムユニット11の気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0054】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜75%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0055】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31〜155個/cm
2であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31個/cm
2未満であると、ゼオライトと排ガスが接触しにくくなって、NOxの浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が155個/cm
2を超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0056】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.1mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.4mmを超えると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0057】
外周コート層12は、厚さが0.1〜2.0mmであることが好ましい。外周コート層12の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造体10の強度を向上させる効果が不十分になる。一方、外周コート層12の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積当たりのゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0058】
ハニカム構造体10の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0059】
貫通孔11aの形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0060】
次に、ハニカム構造体10の製造方法の一例について説明する。まず、鉄イオンによりイオン交換されているゼオライト及び無機バインダを含み、必要に応じて、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む原料ペーストを用いて押出成形し、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されている円柱状のハニカム成形体を作製する。
【0061】
また、原料ペーストには、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて、適宜添加してもよい。
【0062】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、ゼオライト、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の総質量に対して、1〜10%であることが好ましい。
【0063】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0064】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0065】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0066】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。
【0067】
さらに、ハニカム乾燥体を脱脂してハニカム脱脂体を作製する。脱脂条件は、ハニカム乾燥体に含まれる有機物の種類
及び量によって適宜選択することができるが、400℃で2時間であることが好ましい。
【0068】
次に、ハニカム脱脂体を焼成することにより、円柱状のハニカムユニット11を作製する。焼成温度は、600〜1200℃であることが好ましく、600〜1000℃がより好ましい。焼成温度が600℃未満であると、焼結が進行せず、ハニカムユニット11の強度が低くなる。一方、焼成温度が1200℃を超えると、焼結が進行しすぎて、ゼオライトの反応サイトが減少する。
【0069】
次に、円柱状のハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0070】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0071】
外周コート層用ペーストに含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0072】
外周コート層用ペーストに含まれる無機粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、炭化ケイ素等の炭化物、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素が好ましい。
【0073】
外周コート層用ペーストに含まれる無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、シリカアルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナが好ましい。
【0074】
外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
【0075】
外周コート層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0076】
外周コート層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0077】
外周コート層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0078】
外周コート層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0079】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化し、円柱状のハニカム構造体10を作製する。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類
及び量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0080】
なお、鉄イオンによりイオン交換されているゼオライトの代わりに、鉄イオンによりイオン交換されていないゼオライトを用いて、ハニカムユニット11又はハニカム構造体10を、鉄イオンを含む水溶液(例えば、硝酸
鉄水溶液)中に浸漬することにより、ゼオライトをイオン交換してもよい。
【0081】
図2に、本発明の排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、ハニカム構造体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属容器(シェル)30にキャニングすることにより作製することができる。また、排ガス浄化装置100には、排ガスが流れる方向に対して、ハニカム構造体10の上流側の配管(不図示)内に、アンモニア又は分解してアンモニアを発生させる化合物を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(不図示)が設けられている。これにより、配管を流れる排ガス中にアンモニアが添加されるため、ハニカムユニット11に含まれるゼオライトにより、排ガス中に含まれるNOxが還元される。
【0082】
分解してアンモニアを発生させる化合物としては、配管内で排ガスにより加熱されて、アンモニアを発生させることが可能であれば、特に限定されないが、貯蔵安定性に優れるため、尿素水が好ましい。
【0083】
尿素水は、配管内で排ガスにより加熱されて、加水分解し、アンモニアが発生する。
【0084】
図3に、本発明のハニカム構造体の他の例を示す。なお、ハニカム構造体10’は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されているハニカムユニット11’(
図4参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0085】
ハニカムユニット11’は、長手方向に垂直な断面の断面積が10〜200cm
2であることが好ましい。ハニカムユニット11’の長手方向に垂直な断面の断面積が10cm
2未満であると、ハニカム構造体10’の圧力損失が増大する。一方、ハニカムユニット11’の長手方向に垂直な断面の断面積が200cm
2を超えると、ハニカムユニット11’に発生する熱応力に対する強度が不十分になる。
【0086】
なお、ハニカムユニット11’は、長手方向に垂直な断面の断面積以外は、ハニカムユニット11と同一の構成である。
【0087】
接着層13は、厚さが0.5〜2.0mmであることが好ましい。接着層13の厚さが0.5mm未満であると、ハニカムユニット11’の接着強度が不十分になる。一方、接着層13の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10’の圧力損失が増大する。
【0088】
次に、ハニカム構造体10’の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカム構造体10
のハニカムユニット11と同様にして、四角柱状のハニカムユニット11’を作製する。次に、ハニカムユニット11’の両端面を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11’を順次接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11’の集合体を作製する。
【0089】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0090】
接着層用ペーストに含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0091】
接着層用ペーストに含まれる無機粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、炭化ケイ素等の炭化物、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素が好ましい。
【0092】
接着層用ペーストに含まれる無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、シリカアルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナが好ましい。
【0093】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含んでいてもよい。
【0094】
接着層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0095】
接着層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0096】
接着層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0097】
接着層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0098】
次に、ハニカムユニット11’の集合体を円柱状に切削加工した後、必要に応じて、研磨することにより、円柱状のハニカムユニット11’の集合体を作製する。
【0099】
なお、ハニカムユニット11’の集合体を円柱状に切削加工する代わりに、長手方向に垂直な断面が所定の形状に成形されているハニカムユニット11’を接着させて、円柱状のハニカムユニット11’の集合体を作製してもよい。このとき、ハニカムユニット11’の長手方向に垂直な断面の形状は、中心角が90°の扇形であることが好ましい。
【0100】
次に、円柱状のハニカムユニット11’の集合体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0101】
外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0102】
次に、外周コート層用ペーストが塗布された円柱状のハニカムユニット11’の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10’を作製する。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類
及び量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0103】
なお、ハニカム構造体10及び10’は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【実施例】
【0104】
本実施例において、部は質量部を意味する。
【0105】
[実施例1]
比表面積が535m
2/g、外表面積が40m
2/g、二次粒子の平均粒径が3μmのβ型ゼオライトを硝酸鉄水溶液中に浸漬してイオン交換した。ICPS−8100(島津製作所社製)を用いて、ICP発光分析することにより、β型ゼオライトの鉄イオンによりイオン交換されているイオン交換量を測定したところ、3.6質量%であった。
【0106】
得られたβ型ゼオライト2800部、ベーマイト72質量%と酢酸及び水28質量%の混合物1120部、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維270部、メチルセルロース380部、オレイン酸310部及びイオン交換水2400部を混合混練して、原料ペースト1を作製した。
【0107】
次に、押出成形機を用いて、原料ペースト1を押出成形して、正四角柱状のハニカム成形体を作製した。そして、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、ハニカム成形体を110℃で10分間乾燥させた後、400℃で5時間脱脂した。次に、
脱脂したハニカム成形体を700℃で2時間焼成して、ハニカムユニット11’を作製した。ハニカムユニット11’は、一辺が38mm、長さが150mmの正四角柱状であり、貫通孔11aの密度が65個/cm
2、隔壁11bの厚さが0.28mmであった。
【0108】
次に、平均繊維径が0.5μm、平均繊維長が15μmのアルミナ繊維を767部、シリカガラスを2500部、カルボキシメチルセルロースを17部、固形分30質量%のシリカゾルを600部、ポリビニルアルコールを167部、界面活性剤を167部及びアルミナバルーンを17部、混合混練して、接着層用ペーストを作製した。
【0109】
ハニカムユニット11’の両端部を除く外周面に、接着層13の厚さが2.0mmになるように接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11’を16個接着させ、150℃で10分間乾燥固化した。次に、ダイヤモンドカッターを用いて、長手方向に垂直な断面が略点対称になるように円柱状に切削加工して、ハニカムユニット11’の集合体を作製した。
【0110】
さらに、ハニカムユニット11’の集合体の両端部を除く外周面に、外周コート層12の厚さが1.0mmになるように接着層用ペーストを塗布した後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、接着層用ペーストを150℃で10分間乾燥固化し、400℃で2時間脱脂して、直径が160mm、長さが150mmの円柱状のハニカム構造体10’を作製した。
【0111】
[実施例2]
比表面積が538m
2/g、外表面積が52m
2/g、二次粒子の平均粒径が3μmのβ型ゼオライトを用いて、ゼオライトのイオン交換量を4.7質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10’を作製した。
【0112】
[実施例3]
ゼオライトのイオン交換量を4.7質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10’を作製した。
【0113】
[比較例1]
比表面積が521m
2/g、外表面積が35m
2/g、二次粒子の平均粒径が3μmのβ型ゼオライトを用いて、ゼオライトのイオン交換量を3.3質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。
【0114】
[比較例2]
比表面積が507m
2/g、外表面積が20m
2/g、二次粒子の平均粒径が3μmのβ型ゼオライトを用いて、ゼオライトのイオン交換量を4.6質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。
【0115】
[ゼオライトの比表面積及び外表面積の測定]
自動比表面積/細孔分布測定装置トライスター3000(島津製作所社製)を用いて、相対圧P/P
0に対する吸着量V[cm
3(STP)・g
−1]のプロット、即ち、窒素吸脱着等温線を作成し、BET一点法及びt−プロット法を用いて、比表面積及び外表面積を求めた。具体的には、比表面積は、相対圧P/P
0に対するP/V(P
0−P)[g・cm
3(STP)
−1]のプロット、即ち、BETプロットから求め、外表面積は、吸着層の厚さt[nm]に対するP/V(P
0−P)[g・cm
3(STP)
−1]のプロット、即ち、t−プロットから求めた。
【0116】
[NOxの浄化率の評価]
実施例1〜3及び比較例1、2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、一辺が30mm、長さが30mmの正四角柱状の試料を切り出した。
【0117】
試料に、200℃の模擬ガスを空間速度(SV)35000/hで流しながら、触媒評価装置SIGU−2000(堀場製作所社製)を用いて、試料から流出するNOxの流出量を測定し、式
(NOxの流入量−NOxの流出量)/(NOxの流入量)×100
で表されるNOxの浄化率[%]を算出した。なお、模擬ガスの構成成分は、一酸化窒素210ppm、二酸化窒素70ppm、アンモニア420ppm、酸素14%、水10%、窒素(balance)である。
【0118】
表1に、試料のNOxの浄化率の評価結果及びβ型ゼオライトの特性、即ち、比表面積S
1、外表面積S
2、イオン交換量M及びM×(S
2/S
1)を示す。
【0119】
【表1】
表1より、実施例1〜3のハニカムユニット11’から切り出された試料は、NOxの浄化率が49〜50%であり、200℃におけるNOxの浄化性能が優れることがわかる。
【0120】
一方、比較例1、2のハニカムユニットから切り出された試料は、NOxの浄化率がそれぞれ35%、27%であり、200℃におけるNOxの浄化性能が劣る。これは、比表面積S
1に対する外表面積S
2の比S
2/S
1が小さくなる、即ち、ゼオライトの表面に存在する細孔が多くなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなったためであると考えられる。
【0121】
なお、表1における試料のNOxの浄化率の評価結果から、試料を切り出す前の実施例1〜3のハニカムユニット11’及びハニカム構造体10’においても、200℃におけるNOxの浄化性能が優れると考えられる。