(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記偏流部は、スピンドルの中心軸からカバー内面までの距離を、前記スリットと対応する位置での前記気流の上流側端部における距離より、前記スリットと対応する位置での前記気流の下流側端部における距離の方を大きく形成することにより構成されている請求項1に記載のリングを有する紡機。
前記偏流部は、前記カバーの前記スリットと対応する位置での前記気流の下流側端部に形成され、前記カバーの肉厚を、前記スリットに近い方の内面から前記スピンドルの中心軸までの距離が前記スリットに遠い方の内面から前記スピンドルの中心軸までの距離より大きくなるように変更して形成されている請求項1に記載のリングを有する紡機。
前記偏流部は、前記カバーの前記スリットと対応する位置での前記気流の上流側端部に取り付けられたフィンにより形成されている請求項1に記載のリングを有する紡機。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の紡機においては、機台運転中にリングレールの昇降運動を繰り返しながら次第にリングレールを上昇させて糸の巻き取りを行う、所謂フィリングビルディングで糸の巻き取りが行われる。
【0003】
リング精紡機の省動力化や高速化の課題のひとつに、高速で回転する管糸の空気攪拌に起因する空気摩擦動力損失の問題がある。
近年になって、工場でのリング精紡機のスピンドル回転数は25000rpmに及んでおり、このように高速で管糸が回転した場合、その周囲の気流は乱れて、管糸表面には回転数のおよそ2乗に比例した大きな空気摩擦モーメントが作用する。そのため、特に満管時にはその損失動力は精紡機全体の動力の数10%に達し、その改善が望まれている。
【0004】
この空気摩擦損失動力を減らす方法の一つに、管糸を内面が平滑な円筒状のカバーで覆う方法が知られている。自由空間中で管糸が回転した場合、その周囲には表面のせん断作用によって乱流境界層が発達し、乱れ領域は広い範囲にまで及ぶことになる。管糸をカバーで覆うと、管糸とカバー内壁間の気流が旋回し、そのとき半径方向の乱れがカバー内面で規制されるためエネルギの消散が緩和され、管糸表面に作用する摩擦応力は自由空間に比べ減少する。
【0005】
この摩擦応力低減効果については、カバーと管糸間の隙間が狭いほど、また、管糸長手方向全域にわたってカバーを設置する方が、管糸長手方向の一部の領域にカバーを設置する場合に比べて大きくなることが知られている。
【0006】
従来、ボビンの周囲と適宜の間隔を有して円筒状のセパレータをボビンと同軸に配置し、トラベラを案内するリング(リングホルダ)を、セパレータの内面に沿って上下動可能に、かつセパレータに形成された上下方向に延びるスリットを貫通する取り付け部材を介してリングレールに対して一体的に昇降可能に取り付けた防音装置が提案されている(特許文献1参照)。スリットはセパレータに取り付けられたテフロン(登録商標)片にて覆われており、取り付け部材はテフロン(登録商標)片の一部を押し拡げて移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のセパレータは、防音を目的として設けられているが、円筒状のセパレータがボビンの周囲と適宜の間隔を有して同軸に配置されているため、結果として空気摩擦損失動力を減らす効果がある。そして、ボビン(管糸)の回転に伴う随伴気流がセパレータに形成されたスリットから漏出しないように、スリットがテフロン(登録商標)片にて覆われている。しかし、リングホルダの取り付け部材は、テフロン(登録商標)片を押し拡げて移動するため、テフロン(登録商標)片の疲労が生じ易く、早期の交換が必要になる。また、取り付け部材がテフロン(登録商標)片を押し拡げた隙間からの漏洩流が生じ、セパレータ内の旋回流れを乱す虞もある。
【0009】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は管糸の回転に伴う空気摩擦損失動力を低減するカバーに設けられたスリットからの漏洩流を、スリットを覆う部材を設けることなく抑制して、紡機の動力損失を低減することができるリングを有する紡機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、リングレールに支持されて昇降するリング上を摺動するトラベラを介して糸の巻き取りを行うリングを有する紡機であって、機台フレームに支持され、スピンドルに挿入されている管糸
及びアンチノードリングの周囲を覆うカバーを備えている。前記カバーには、前記リング
及び前記アンチノードリングが前記リングレールの昇降により前記カバーの内側を移動可能に、前記リングを前記リングレールに支持する支持部の移動を許容するスリットが形成されるとともに、前記管糸の回転時に前記カバー内の気流が前記スリットと対応する位置を通過する際に、前記カバーの内側へ向かうように偏向させる偏流部を備えている。
【0011】
この発明では、スピンドルと一体回転する管糸の周囲を覆うカバーが設けられているため、管糸の回転に伴う空気摩擦損失動力が低減する。また、リングをリングレールに支持する支持部がリングレールと共に昇降するのを許容するためにカバーに形成されたスリットから、管糸の回転に伴って管糸とカバー内面との間を旋回する気流が、偏流部の作用により、カバー外部へ漏洩することが防止又は抑制される。偏流部は、カバー内の気流がスリットと対応する位置を通過する際に、カバーの内側へ向かうように偏向させる機能を有し、スリットを覆わずに、気流がスリットからカバー外部へ漏洩することを防止又は抑制する。したがって、管糸の回転に伴う空気摩擦損失動力を低減するカバーに設けられたスリットからの漏洩流を、スリットを覆う部材を設けることなく抑制して、紡機の動力損失を低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記偏流部は、スピンドルの中心軸からカバー内面までの距離を、前記スリットと対応する位置での前記気流の上流側端部における距離より、前記スリットと対応する位置での前記気流の下流側端部における距離の方を大きく形成することにより構成されている。この発明では、管糸とカバー内面との間を旋回する気流は、スリットの近くを旋回する際、スリットと対応する位置での気流の下流側端部に連続するカバーの内面に衝突することで、カバー外部へ流出することが防止される。そして、偏流部は、カバーの形状を完全な円筒にスリットを形成したものではなく、スリットの近傍の形状を変更するという簡単な構造で構成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記偏流部は、前記カバーの前記スリットと対応する位置での前記気流の上流側端部に形成された屈曲部で形成されている。この発明では、偏流部の構造がより簡単になる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記偏流部は、前記カバーの前記スリットと対応する位置での前記気流の下流側端部に形成され、前記カバーの肉厚を、前記スリットに近い方の内面から前記スピンドルの中心軸までの距離が前記スリットに遠い方の内面から前記スピンドルの中心軸までの距離より大きくなるように変更して形成されている。この発明では、スリットを挟んだ部分におけるカバーの肉厚を変更することで偏流部が構成されるため、肉厚を厚くしても支障のないカバーに適している。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記偏流部は、前記カバーの前記スリットと対応する位置での前記気流の上流側端部に取り付けられたフィンにより形成されている。この発明では、カバーの形状は円筒のスリット近傍の形状を変更せずに、カバーと別に形成されたフィンをカバーに取り付けることにより、偏流部が構成される。したがって、カバーの形状を変更せずに、偏流部を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、管糸の回転に伴う空気摩擦損失動力を低減するカバーに設けられたスリットからの漏洩流を、スリットを覆う部材を設けることなく抑制して、紡機の動力損失を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をリング精紡機に具体化した一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、機台フレームを構成するスピンドルレール11にはスピンドル12が回転可能に支持され、図示しない駆動機構により回転されるようになっている。スピンドル12の上方には、ドラフトパート13(フロントローラのみ図示)が配設されている。
【0019】
リングレール14は、公知のリフティング機構により昇降されるようになっている。トラベラ15を案内するリング16は、その中心がスピンドル12と同軸状態で昇降可能に、リングレール14に支持部17を介して支持されている。
【0020】
リングレール14の上方には、各リング16に対応してアンチノードリング(バルーンコントロールリング)18がリングレール14と同期して昇降可能に設けられている。アンチノードリング18の上方には、各リング16に対応してラペット19に取り付けられたスネルワイヤ20が、リングレール14と同期して昇降可能に設けられている。リング16は、巻き取り運転中、スピンドル12に挿入されてスピンドル12と共に回転する管糸21と対応する位置を昇降し、アンチノードリング18は、巻き取り運転の途中までは管糸21の上部と対応する位置を昇降し、巻き取り運転の途中からは管糸21より上側位置を昇降する。また、スネルワイヤ20は常に管糸21より上方で昇降する。
【0021】
図1(a),(b)に示すように、スピンドルレール11には、スピンドル12に挿入されている管糸21の周囲を覆う略円筒状のカバー22が、支持部材23を介して支持されている。支持部材23は円筒部23aを有する。
図2に示すように、カバー22は、リングレール14の各スピンドル12と対応する位置に形成された孔14aを貫通した状態で、
図1(a)に示すように、その下端部が支持部材23の円筒部23aに、取り外し可能に嵌合固定されている。
【0022】
カバー22には、リング16がリングレール14の昇降に伴ってカバー22の内側を移動可能に、リング16をリングレール14に支持する支持部17の移動を許容するスリット24が形成されている。
図1(b)に示すように、スリット24の主要部、即ちカバー22の上端側及び下端側を除く部分は、その全長にわたって幅が一定で、好ましくは幅5〜10mmに形成されている。カバー22の上端の形状は、スリット24の上部にスネルワイヤ20からアンチノードリング18に至る糸Yが引っ掛かることがないように、滑らかな形状に形成されている。また、スピンドル12の周囲には、スピンドル12の駆動機構を構成するベルトや、糸継ぎ時にスピンドル12を停止させるブレーキ等が存在するため、支持部材23の円筒部23a及びカバー22の下端部にはこれ等との干渉を避ける切り欠きが設けられている。
【0023】
カバー22は、カバー22を取り外す際、リング16の支持部17やドラフトパート13から管糸21に繋がる糸Yがスリットと干渉せずに、カバー22をスムーズに操作者側の手元側に引き外せるように、スリット24が操作者と反対側となるように支持部材23の円筒部23aに嵌合固定されている。
【0024】
リング16の支持部17は、スリット幅より細く(薄く)形成され、リングレール14が昇降移動する際にカバー22とリング16とが接触しないようにリングレール14に取り付けられている。また、アンチノードリング18も、巻き取り運転の途中まではカバー22の上部内側を昇降するため、アンチノードリング18の支持部18aもスリット幅より細く形成されている。
【0025】
カバー22には、管糸21の回転時にカバー22内の気流がスリット24と対応する位置を通過する際に、カバー22の内側へ向かうように偏向させる偏流部25を備えている。この実施形態では、偏流部25は、
図3に示すように、スピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離を、スリット24と対応する位置での気流の上流側端部22aにおける距離L1より、スリット24と対応する位置での気流の下流側端部22bにおける距離L2の方を大きく形成することにより構成されている。この実施形態では、カバー22の中心軸と直交する断面の形状が渦巻の略一周分となる形状に、即ちスピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離が、カバー22の上流側端部22aから下流側端部22bに向かうにつれて次第に大きくなるように、カバー22が形成されている。
【0026】
細長い滑らかな回転体に円筒カバーをかぶせた場合は、隙間と空気摩擦動力の関係は、隙間が大きくなるほど動力が大きくなり、隙間を狭くしていくと動力は小さくなり、隙間を1mm以下とごく狭くした場合には、粘性によるせん断力が増加し、空気摩擦動力が上昇することが分かっている。しかし、管糸21の場合は、その表面に毛羽が存在するため、空気摩擦モーメントは滑らかな面の回転体の場合より大きくなり、また、隙間が狭くなると、具体的には10mmを下回るようになると、毛羽がカバーに接触するようになって糸品質の低下を招き、また動力も増加する。したがって、カバー22の内径の適値は、毛羽と接触しない範囲で小径を選択することが理想的であるが、管糸21とカバー22との間にはリング16が介在するため、理想的な径は選択できず、カバー22の内径がリング16の外径よりも僅かに大きな径となるように選択する。
【0027】
なお、スピンドル12の周囲には、スピンドル12の駆動機構を構成するベルトや、糸継ぎ時にスピンドル12を停止させるブレーキ等が存在するため、支持部材23の円筒部23aにはこれ等との干渉を避ける切り欠きが設けられている。
【0028】
次に前記のように構成されたリング精紡機の作用を説明する。
紡機が巻き取り運転を行うと、ドラフトパート13から送出された糸Yが、スネルワイヤ20、アンチノードリング18及びトラベラ15を経てボビンBに巻き取られて管糸21が形成される。所謂フィリングビルディングで巻き取りを行うため、巻き取り運転中、リングレール14は昇降運動を繰り返しながら次第に上昇する。そして、スピンドル12と一体に回転する管糸21の回転数は、20000〜25000rpmとなる。
【0029】
管糸21がこのような高速で回転すると、カバー22がない場合は、その周囲の気流が乱れて、動力損失が大きくなる。しかし、管糸21の周囲を覆う略円筒状のカバー22を設けることにより、管糸21とカバー22内面との間の気流が旋回し、管糸21の表面に作用する摩擦応力はカバー22がない場合に比べて減少する。
【0030】
リング精紡機では、リング16がリングレール14と共に管糸21の周囲に沿って昇降して巻き取りを行うため、リング16をリングレール14に支持する支持部17の通過を許容するスリット24をカバー22に形成する必要がある。しかし、単に円筒状のカバー22にスリット24を形成した構成では、
図4(b)に示すように、管糸21の回転に伴う旋回気流の一部が、カバー22の上流側端部22aでカバー22の内面から剥離して下流側端部22bに衝突して、カバー22の外部へ分岐して漏洩流となってスリット24からカバー22の外部に漏洩する。気流の衝突、漏洩が生じると、隙間内の旋回気流の乱れが増し、空気摩擦モーメントが増加する。
【0031】
しかし、この実施形態では、カバー22には、管糸21の回転時にカバー22内の気流がスリット24と対応する位置を通過する際に、カバー22の内側へ向かうように偏向させる偏流部25を備えている。そして、偏流部25は、スリット24と対応する位置のカバー22の上流側端部22aにおけるスピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離L1より、カバー22の下流側端部22bにおけるスピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離L2の方を大きく形成することにより構成されている。そのため、
図4(a)に示すように、管糸21の回転に伴う旋回気流の一部が、スリット24と対応する位置のカバー22の上流側端部22aでカバー22の内面から剥離しても、下流側端部22bに衝突することが回避され、カバー22の外部へ分岐して漏洩流となることが防止あるいは大きく抑制される。
【0032】
図5にカバー22の動力低減効果の比較を、基準となるカバー無しの空気摩擦動力損失を100%とした場合に対する割合で示す。なお、
図5において、aはスリット及び偏流部を有するカバー、bはスリットを有し偏流部が無いカバー、cはスリットが無い円筒カバー、dはカバー無しの試験結果を示す。
【0033】
紡出条件は、スピンドル回転数:25000rpm、管糸径:Φ30.5、カバー内径:Φ52、糸種:綿100%で行った。
図5に示すように、cのスリット無しの円筒カバーでは、回転数や毛羽長さ、糸番手にもよるが、満管糸において30〜40%の動力改善が行われる。また、bのスリット付きで偏流部の無いカバーでは、dのカバー無しに比べれば動力が大幅に改善されるが、cのスリット無しの円筒カバーには及ばない。及ばない原因は、スリット部における気流の衝突、漏洩にある。これを減じるために偏流部を設けたaのカバーでは、cのスリット無しの円筒カバーには僅かに及ばないが、ほぼ同等の動力低減効果が得られた。
【0034】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)リング精紡機は、リングレール14に支持されて昇降するリング16上を摺動するトラベラ15を介して糸Yの巻き取りを行う紡機である。そして、機台フレームを構成するスピンドルレール11に支持され、スピンドル12に挿入されている管糸21の周囲を覆うカバー22を備えている。カバー22には、リング16がリングレール14の昇降によりカバー22の内側を移動可能に、リング16をリングレール14に支持する支持部17の移動を許容するスリット24が形成されるとともに、管糸21の回転時にカバー22内の気流がスリット24と対応する位置を通過する際に、カバー22の内側へ向かうように偏向させる偏流部25を備えている。したがって、管糸21の回転に伴う空気摩擦損失動力を低減するカバー22に設けられたスリット24からの漏洩流を、スリット24を覆う部材を設けることなく抑制して、紡機の動力損失を低減することができる。
【0035】
(2)偏流部25は、スピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離を、スリット24と対応する位置での気流の上流側端部22aにおける距離L1より、スリット24と対応する位置での気流の下流側端部22bにおける距離L2の方を大きく形成することにより構成されている。したがって、管糸21とカバー22内面との間を旋回する気流は、スリット24の近くを旋回する際、スリット24と対応する位置での気流の下流側端部22bに連続するカバー22の内面に衝突することで、カバー22外部へ流出することが防止される。そして、偏流部25は、カバー22の形状を完全な円筒にスリット24を形成したものではなく、スリット24の近傍の形状を変更するという簡単な構造で構成することができる。
【0036】
(3)カバー22は、カバー22の中心軸と直交する断面の形状が渦巻の略一周分となる形状に、即ちスピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離が、カバー22の上流側端部22aから下流側端部22bに向かうにつれて次第に大きくなるように形成されている。したがって、管糸21とカバー22内面との間を旋回する気流は、スリット24と対応する位置において、カバー22の内側へ向かうように円滑に偏向が行われる。
【0037】
(4)カバー22は、機台フレーム、この実施形態ではスピンドルレール11に、取り外し可能に固定されている。したがって、ドッフイング時、糸継ぎ時、清掃時等にカバー22を取り外した状態で作業を行うことにより、それらの作業を行い易くなる。
【0038】
(5)カバー22は、スリット24が作業者(操作者)に対して反対側に位置するようにスピンドルレール11に支持されている。したがって、ドラフトパート13からトラベラ15を経て管糸21に繋がる糸Yや、リング16の支持部17がスリット24に接触することなくカバー22をスムーズに作業者側の手元に引き外すことができる。
【0039】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図6(a)に示すように、カバー22の上流側端部22aにカバー22の内側へ向かって延びる屈曲部26を形成して偏流部25を構成してもよい。この場合、スピンドル12の中心軸Oからカバー22内面までの距離は、屈曲部26を除いて同じに形成されている。この場合も、スリット24と対応する位置での気流の上流側端部22aにおける距離L1より、スリット24と対応する位置での気流の下流側端部22bにおける距離L2の方が大きくなる。そのため、管糸21の回転に伴う旋回気流の一部が、スリット24と対応する位置でのカバー22の上流側端部22aでカバー22の内面から剥離しても、下流側端部22bに衝突することが回避され、カバー22の外部へ分岐して漏洩流となることが防止あるいは大きく抑制される。また、この実施形態では、前記実施形態に比べて、カバー22の構造が簡単になる。
【0040】
○
図6(b)に示すように、スリット24と対応する位置でのカバー22の下流側端部22bの肉厚を、スリット24に近い方の内面からスピンドル12の中心軸Oまでの距離L3が、スリット24に遠い方の内面からスピンドル12の中心軸Oまでの距離L4より大きくなるように形成して偏流部25を構成してもよい。この場合も、前記実施形態と同様に、カバー22の上流側端部22aでカバー22の内面から剥離しても、下流側端部22bに衝突することが回避され、カバー22の外部へ分岐して漏洩流となることが防止あるいは大きく抑制される。この構成は、カバー22の材質の関係で、肉厚が厚い材質の場合に適している。
【0041】
○
図7(a)に示すように、カバー22本体の形状はスリット24を有する円筒状とし、カバー22のスリット24と対応する位置の上流側端部22aに偏流用のフィン27を取り付けて偏流部25を構成してもよい。この場合も、前記実施形態と同様に、カバー22の上流側端部22aでカバー22の内面から剥離しても、下流側端部22bに衝突することが回避され、カバー22の外部へ分岐して漏洩流となることが防止あるいは大きく抑制される。
【0042】
○
図7(b)に示すように、カバー22のスリット24を気流の旋回方向の下流側に向かって斜めに延びる形状に形成して、偏流部25を構成してもよい。この実施形態の場合も、
図6(b)に示す実施形態と同様に、カバー22の肉厚が厚い材質の場合に適している。
【0043】
○ カバー22のスリット24と対応する位置での気流の上流側端部22aにおける内面からスピンドル12の中心軸Oまでの距離より、スリット24と対応する位置での気流の下流側端部22bにおける内面からスピンドル12の中心軸Oまでの距離の方が徐々に大きくなる曲面部を設けてもよい。この場合、屈曲部26を設ける場合に比べて、気流の偏向が円滑に行われる。
【0044】
○ カバー22をスピンドルレール11に取り外し可能に支持する構造は、カバー22の下端部を支持部材23の円筒部23aに嵌合する構成に限らない。例えば、
図8(a),(b)に示すように、スピンドルレール11上に先端の尖った複数本(例えば2本)の支柱28を立設する。また、カバー22の外面下部に、支柱28を挿入可能な孔29aを有する取り付け部29を形成し、孔29aに支柱28が挿入された状態でカバー22を支持するようにしてもよい。
【0045】
○ また、巻き取り運転中、カバー22は移動せず、スピンドル12の回転に伴う空気反力と機台振動の影響以外は外力が作用しない。したがって、その支持には複雑な部材を必要とせず、前述の構造に限らない。例えば、磁石による固定、ニューマ装置の負圧を利用する方法、ばね押さえによる支持等が利用でき、カバー22の着脱に必要な操作力がわずかで済むという利点がある。また、着脱を自動化する場合も、比較的簡単な機構となるという利点もある。
【0046】
○ カバー22は管糸21のほぼ全長を覆う状態に支持され、リングレール14にリング16を支持する支持部17がリングレール14と一体に昇降するのを許容するスリット24を有する構造で、かつ偏流部25を備えていればよく、カバー22は機台フレームに固定されている必要はない。例えば、
図8(c),(d)に示すように、スリット24を斜めに延びるように形成し、カバー22はスピンドルレール11に対する所定位置に、軸受30及び支持部材31を介して回動可能に支持する。そして、リングレール14の昇降に対応してリング16の支持部17がスリット24に沿って摺動することにより、カバー22が回動してリング16が昇降する構成としてもよい。なお、軸受30としてはメタル軸受が使用され、支持部17が軸受30及び支持部材31と干渉しないように、軸受30及び支持部材31には支持部17の昇降範囲に切り欠き30a,31aが設けられている。
【0047】
○ カバー22は必ずしも取り外し可能に支持する必要はない。しかし、取り外し可能に支持した方が、ドッフイング時、糸継ぎ時、清掃時等に作業を行い易くなる。
○ カバー22はスピンドルレール11に限らず、スピンドルレール11以外の機台フレームの箇所にブラケットを介して支持するようにしてもよい。
【0048】
○ リング精紡機に限らず、リングを有する紡機、例えば、リング撚糸機に適用してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0049】
(1)請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記カバーは、前記スリットが機台の外側に向くように配置されている。