特許第5746079号(P5746079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターナショナル レクティフィアー コーポレイションの特許一覧

特許5746079三次元電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュール
<>
  • 特許5746079-三次元電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュール 図000002
  • 特許5746079-三次元電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュール 図000003
  • 特許5746079-三次元電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュール 図000004
  • 特許5746079-三次元電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュール 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746079
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】三次元電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20150618BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H01L25/04 C
   H01L21/60 321E
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-71967(P2012-71967)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2012-228166(P2012-228166A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2012年6月15日
(31)【優先権主張番号】13/088,573
(32)【優先日】2011年4月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597161115
【氏名又は名称】インターナショナル レクティフィアー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】へニング エム ハウエンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ゴルゲリーノ
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−319562(JP,A)
【文献】 特表2004−526395(JP,A)
【文献】 特開2007−049810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側素子のエミッタおよびアノードノードを低電位側素子のコレクタおよびカソードノードに結合させる共通出力パッドと、
前記高電位側素子のコレクタを前記高電位側素子のカソードに接続する高電位側導電性クリップであって、電流が当該高電位側導電性クリップおよび高電位側電源パッドを介して別の電源モジュールの別の高電位側導電性クリップに流れるようにする高電位側導電性クリップと、
前記低電位側素子のエミッタを前記低電位側素子のアノードに接続する低電位側導電性クリップであって、電流が当該低電位側導電性クリップおよび低電位側電源パッドを介して前記別の電源モジュールの別の低電位側導電性クリップに流れるようにする低電位側導電性クリップとを備え
前記共通出力パッドが、基板表面上で前記高電位側電源パッドに横方向に隣接して設けられるボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項2】
前記ボンドワイヤレス電源モジュールがモータ駆動用インバータモジュールである、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項3】
前記高電位側素子が、ダイオードと並列にIGBTを備える、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項4】
前記低電位側素子が、ダイオードと並列にIGBTを備える、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項5】
前記共通出力パッドが前記高電位側導電性クリップおよび前記低電位側導電性クリップの下に設けられる、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項6】
前記高電位側導電性クリップが高電位側電源バスの一部である、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項7】
前記高電位側導電性クリップが、前記共通出力パッドの上方に設けられる、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項8】
前記基板が銅直接接合(DBC)基板である、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項9】
前記低電位側導電性クリップが、前記共通出力パッドの上方に設けられる、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項10】
前記高電位側素子および前記低電位側素子が高電位側電源バスと低電位側電源バスとの間にハーフブリッジ接続される、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項11】
記低電位側電源パッドが、前記基板上に設けられる、請求項1に記載のボンドワイヤレス電源モジュール。
【請求項12】
それぞれが、高電位側素子のエミッタおよびアノードノードを低電位側素子のコレクタおよびカソードノードと結合させる共通出力パッドと、前記高電位側素子のコレクタを前記高電位側素子のカソードに接続させる高電位側導電性クリップと、前記低電位側素子のエミッタを前記低電位側素子のアノードに接続させる低電位側導電性クリップとを含むU相、V相、およびW相を備え、
前記U相の前記高電位側導電性クリップにより、電流が前記U相の前記高電位側導電性クリップおよび高電位側電源パッドを介して前記V相の前記高電位側導電性クリップに流れ、
前記U相の前記低電位側導電性クリップにより、電流が前記U相の前記低電位側導電性クリップおよび低電位側電源パッドを介して前記V相の前記低電位側導電性クリップに流れ
前記U相の前記共通出力パッドが、基板表面上で前記高電位側電源パッドに横方向に隣接して設けられるボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュール。
【請求項13】
前記V相の前記高電位側導電性クリップにより、電流が前記V相の前記高電位側導電性クリップおよび他の高電位側電源パッドを介して前記W相の前記高電位側導電性クリップに流れる、請求項12に記載のボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュール。
【請求項14】
前記V相の前記低電位側導電性クリップにより、電流が前記V相の前記低電位側導電性クリップおよび他の低電位側電源パッドを介して前記W相の前記低電位側導電性クリップに流れる、請求項12に記載のボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュール。
【請求項15】
前記高電位側素子が、ダイオードに並列なIGBTを含む、請求項12に記載のボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュール。
【請求項16】
前記低電位側素子が、ダイオードに並列なIGBTを含む、請求項12に記載のボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して半導体の分野に属する。より具体的には、本発明は半導体ダイのパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用インバータなどの電源モジュール、例えば三相インバータは、少なくとも1つの電源スイッチを含み、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)またはパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を電源スイッチとして用いることができる。例えば、電源モジュール内にIGBTダイを設け、環流ダイオードとして、ダイオードダイをIGBTダイに並列に接続することができる。たとえダイが高性能であっても、モータ駆動用インバータの性能はダイの接続方法により制限されうる。モータ駆動用インバータを接続する際には、例えば誘導性、電磁干渉(EMI)、および寄生成分が大きな問題となる。
【0003】
モータ駆動用インバータ電源モジュールの形成は、一般的に電源モジュールの基板上の導電線にダイをワイヤボンディングしてダイ間を接続することにより行う。モータ駆動用インバータが多数のダイを含む場合、モータ駆動用インバータの設計およびレイアウトは複雑になりがちである。例えば、三相モータ駆動用インバータは3つのIGBTダイを高電位側電源スイッチとして含み、さらに3つのIGBTダイを低電位側電源スイッチとして含み、またさらに各IGBTダイの環流ダイオードとして各々のIGBTダイに対応するダイオードダイを含みうる。このため、電源モジュール基板上における導電線の配線経路が長くなりがちであり、高誘導性の非対称な電流経路となる可能性があるため望ましくない。また、ダイ間を接続するために長い制御経路が必要であるため、導電線の幅を十分に広くすることが困難になる可能性がある。このようにして、モータ駆動用インバータの性能が損なわれかねない。さらに、モータ駆動用インバータの設置面積が広くなり、電力密度が低くなる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来技術に対し、その欠点および欠陥を克服し、改良型モータ駆動用インバータのような改良型電源モジュールを形成することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、三次元の電流経路制御を採用し、ボンドワイヤを用いない電源モジュール(以下、ボンドワイヤレス電源モジュールと呼ぶ)を開示する。本発明の電源モジュールは、実質的に添付した図面のうち少なくとも一図に示され、または図に関連して説明され、かつ特許請求の範囲においてより完全に規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態による三相モータ駆動用インバータ回路の例示的な回路図を示す。
図2】本発明の一実施形態による三相モータ駆動用電源モジュールに用いられる、基板上方の例示的な高電位側素子の断面図を示す。
図3A】本発明の一実施形態によるボンドワイヤレスの三相モータ駆動用電源モジュールの上面図を示す。
図3B】本発明の一実施形態によるボンドワイヤレスの三相モータ駆動用電源モジュールの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は三次元の電流経路制御を採用したボンドワイヤレス電源モジュールを得ることを目的とする。以下の説明は、この発明の実施に関する特定の情報を含む。当業者は、本出願において特定して説明された態様とは異なる態様で本発明を実施してもよいことを認識するであろう。また、本発明を不明瞭にしないよう、本発明の特定の詳細については、説明を一部省略する。本出願において記載されない特定の詳細は、当業者の知識の範囲内のものである。
【0008】
本出願の図面およびこれに付随する詳細な説明は、単に本発明の例示的な実施形態を示すためのものである。簡潔に保つため、本発明の原理を用いる本発明の他の実施形態は、本出願においては特に記載せず、図面にも特に示さない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態による三相モータ駆動用インバータ100(本出願においては、単に「モータ駆動用インバータ」とも呼ぶ)の例示的な回路図を示す。モータ駆動用インバータ100は、高電位側素子102a、102b、および102c、ならびに低電位側素子102d、102e、および102fを含み、これらは本明細書において素子102a〜102fのように単に素子とも呼ぶ。
【0010】
この実施形態において、素子102a〜102fはそれぞれ環流ダイオードを含み、この環流ダイオードは対応する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)に並列に接続される。例えば、高電位側素子102aはIGBT104aおよびダイオード106aを含み、高電位側素子102bはIGBT104bおよびダイオード106bを含み、高電位側素子102cはIGBT104cおよびダイオード106cを含み、低電位側素子102dはIGBT104dおよびダイオード106dを含み、低電位側素子102eはIGBT104eおよびダイオード106eを含み、低電位側素子102fはIGBT104fおよびダイオード106fを含む。素子102a〜102fはそれぞれIGBTを電源スイッチとして備えるが、実施形態によっては各素子102a〜102fはパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の他の素子を含みうる。例えば、ある実施形態においては、IGBT104aをMOSFETに置き換え、ダイオード106bをこのMOSFETの内蔵ダイオードとすることができる。また、ある実施形態においては、素子102a〜102fがダイオード106a〜106fを含まなくともよく、あるいはダイオード106a〜106f以外の電気素子を含んでもよい。
【0011】
モータ駆動用インバータ100は高電位側電源バス108および低電位側電源バス110を有する。高電位側電源バス108は高電位側電源電圧を高電位側電源バス108にわたって供給するための電源端子VH1およびVH4を備える。低電位側電源バス110は低電位側電源電圧を低電位側電源バス110に供給するための電源端子VL1およびVL4を備える。
【0012】
この実施形態において、モータ駆動用インバータ100はモータの制御に使用可能な三相モータ駆動用インバータである。図1において、モータ駆動用インバータ100のU相は素子102aおよび102dを含み、これらは出力端子Uoutが素子102aと102dの間に接続された状態で高電位側電源バス108と低電位側電源バス110の間にハーフブリッジ接続される。同様に、モータ駆動用インバータ100のV相は素子102bおよび102eを含み、これらは出力端子Voutが素子102bと102eの間に接続された状態で高電位側電源バス108と低電位側電源バス110の間にハーフブリッジ接続される。また、モータ駆動用インバータ100のW相は素子102cおよび102fを含み、これらは出力端子Woutが素子102cと102fの間に接続された状態で高電位側電源バス108と低電位側電源バス110の間にハーフブリッジ接続される。
【0013】
モータ駆動用インバータ100はさらに高電位側ゲート端子GH1、GH2、およびGH3、ならびに低電位側ゲート端子GL1、GL2、およびGL3(本明細書においてはゲート端子GH1、GH2、GH3、GL1、GL2、およびGL3とも呼ぶ)を含み、各ゲート端子は、図1に示すようにそれぞれIGBT102a〜102fの対応するゲートに接続する。当該技術分野において周知であるように、ゲート端子GH1、GH2、GH3、GL1、GL2、およびGL3を用いてIGBT102a〜102fを選択的にオン(enable)/オフ(disable)することができる。
【0014】
図1はコレクタ/カソードノード114a、114b、114c、114d、114e、および114fならびにエミッタ/アノードノード112a、112b、112c、112d、112e、および112fを示す。コレクタ/カソードノード114a、114b、および114cはそれぞれ高電位側電源バス108に接続され、エミッタ/アノードノード112d、112e、および112fはそれぞれ低電位側電源バス110に接続される。また、図1に示すように、エミッタ/アノードノード112aはコレクタ/カソードノード114dに接続され、エミッタ/アノードノード112bはコレクタ/カソードノード114eに接続され、エミッタ/アノードノード112cはコレクタ/カソードノード114fに接続される。
【0015】
この実施形態では3相のモータ駆動用インバータであるが、他の実施形態においてはこれより多い、または少ない相のものであってもよい。さらにまた、実施形態によっては、三相インバータ100はモータ駆動用インバータ以外の回路であってもよい。
【0016】
モータ駆動用インバータ100は従来、基板上方のダイ間を電気的に接続することにより実装することができた。例えば、合計12個の個別のダイがIGBT102a〜102fおよびダイオード106a〜106fをそれぞれ含むことができた。たとえダイが高性能であっても、モータ駆動用インバータ100の性能はダイの接続方法により制限されうる。従来のアプローチでは、モータ駆動用インバータ100は、基板上に形成された導電線にダイをワイヤボンディングしてダイ間を接続することにより形成される。このため、従来のアプローチでは基板上で基本的に二次元の電流経路制御が採用される。しかしながら、従来のアプローチを用いると、図1に示すように、モータ駆動用インバータ100は多数のダイを含み、さらに、ダイへの、またはダイ間の接続部が多いため、モータ駆動用インバータ100の設計およびレイアウトは複雑になる。このため、基板上における導電線の配線経路が長くなってしまい、誘導性が高いのみならず非対称な電流経路となりうるため望ましくない。また、基板上に多数の導電線の経路制御があることにより、導電線を十分に太くすることが困難になる可能性がある。したがって、従来のアプローチを採用すると、モータ駆動用インバータ100の設置面積が広くなり、電力密度が低くなるうえに、性能が悪くなる可能性がある。
【0017】
次に図2を参照すると、図2は本発明の一実施形態による、基板216上方の例示的な高電位側素子202aの断面図を示す。図2において、高電位側素子202aは図1の高電位側素子102aに対応する。高電位側素子202aは、図1のIGBT104aおよびダイオード106aにそれぞれ対応するIGBTダイ204aおよびダイオードダイ206aを有する。高電位側素子202aはさらに高電位側導電性クリップ218a(本明細書において、導電性クリップ218aとも呼ぶ)を含む。
【0018】
図2は、基板216上方の高電位側素子202aと、基板216上に位置する高電位側電源パッドVH1およびVH2、高電位側ゲートパッドGH1、ならびに共通出力パッドUoutとを示す。高電位側電源パッドVH1およびVH2、高電位側ゲートパッドGH1、ならびに共通出力パッドUoutはそれぞれ銅などの導電性材料からなる。この実施形態において、高電位側電源パッドVH1およびVH2、高電位側ゲートパッドGH1、ならびに共通出力パッドUoutは銅直接接合(DBC:Direct Bonded Copper)基板の導電性のパッドからなる。基板216は、例えばセラミック、または他の基板材料からなる。また、実施形態によっては、絶縁性材料232および導電性材料234を導電性クリップ218a上方に備えることもできる。例えば、絶縁性材料232はセラミックからなり、導電性材料234は絶縁性材料232に接合された銅からなってもよい。これにより、IGBTダイ204aおよびダイオードダイ206aを上下両面から冷却することができる。なお、実施形態によっては絶縁性材料232および導電性材料234を含まない場合もある。
【0019】
図2において、IGBTダイ204aはダイオードダイ206aに並列に接続されている。導電性クリップ218aは、高電位側素子202aのコレクタ220aを高電位側素子202aのカソード224aに接続する。この実施形態において、導電性クリップ218aはIGBTダイ204aの上面を介してコレクタ220aに電気的に接続され、ダイオードダイ206aの上面を介してカソード224aに電気的に接続される。導電性クリップ218aは銅などの金属または他の導電性材料で形成することができ、図1の高電位側電源バス108に対応する高電位側電源バスの一部である。共通出力パッドUoutは高電位側素子202aのエミッタ222aと高電位側素子202aのアノード226aとを電気的に接続する。共通出力パッドUoutは、IGBTダイ204aの下面を介してエミッタ202aに電気的に接続され、ダイオードダイ206aの下面を介してアノード226aに電気的に接続される。こうして、共通出力パッドUout図1のエミッタ/アノードノード112aに対応する高電位側素子202aのエミッタ/アノードノードを接続する。図2には示さないが、共通出力パッドUoutは、高電位側素子202aのエミッタ/アノードノードを、図1における低電位側素子102dのコレクタ/カソードノード114dに対応する低電位側素子のコレクタ/カソードノードに結合する。
【0020】
また図2に示すように、高電位側ゲートパッドGH1図1の高電位側ゲート端子GH1に対応しうる。高電位側ゲートパッドGH1は高電位側素子202aのゲート228aに電気的に接続する。より詳しくは、高電位側ゲートパッドGH1はIGBTダイ204aの下面を介してゲート228aに電気的に接続される。
【0021】
図2において、導電性クリップ218aは高電位側電源パッドVH1とVH2とを接続している。より詳しくは、導電性クリップ218aは脚部230aを介して高電位側電源パッドVH1に電気的に接続し、導電性クリップ218aは脚部230bを介して高電位側電源パッドVH2に電気的に接続する。このため、導電性クリップ218aおよび高電位側電源パッドVH1およびVH2は、電流が導電性クリップ218aに流れるような電流経路236をもつ。この実施形態においては、共通出力パッドUout、IGBTダイ204a、ダイオードダイ206a、および高電位側ゲート電極GH1の上方で電流を導電性クリップ218aに流すことができる。こうして、電流経路236は、基板216の上方で三次元的に経路制御される。またこの実施形態において、導電性クリップ218aにより、電流が導電性クリップ218aを経由して、図2に示されない、高電位側電源パッドVH2に電気的に接続する別の電源モジュールの別の高電位側導電性クリップに流れる。電流経路236を設けることにより、基板216の上方で多数のダイが接続されていても、モータ駆動用インバータ100のような回路の設計およびレイアウトを大幅に簡素化することができる。
【0022】
この実施形態において、高電位側素子202aは、図1のIGBT104aおよびダイオード106aをそれぞれ別個のダイ(すなわちIGBTダイ204aおよびダイオードダイ206a)として実装する。しかしながら実施形態によっては、ダイオード106aはIGBT104aと単一のダイ上にモノリシック集積される。一実施形態において、ダイオードダイ106aは単一ダイの後方に形成される。この単一ダイは図2のIGBTダイ204aおよびダイオードダイ206aと同様に接続される。さらに上述したように、実施形態によってはIGBT104aをMOSFETに置き換える。この場合、高電位側素子202aはダイオード106aに並列のMOSFETを備えることができる。このように、実施形態によってはIGBTダイ204aをIGBTダイ204aと同様に接続されるMOSFETダイに置き換えることができる。一実施形態において、ダイオード106aはMOSFETの内蔵ダイオードであってもよい。別の実施形態において、ダイオード106aは内蔵ダイオードではなく、MOSFETと単一ダイ上にモノリシック集積される。この単一ダイは図2のIGBTダイ204aおよびダイオードダイ206aと同様に接続することができる。
【0023】
図2は、図1の高電位側素子102aに対応する高電位側素子202aを図示したものであるが、高電位側素子102bおよび102cも高電位側素子102aと同様であるため、簡略化のため図2では図示および説明を省略する。同様に、低電位側素子102d、102e、および102fも簡略化のため図示および説明を省略する。
【0024】
次に図3Aおよび3Bを参照すると、図3Aおよび3Bは、本発明の一実施形態によるボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュール300(本明細書において「モータ駆動用インバータモジュール」または「三相モータ駆動用電源モジュール」等とも呼ぶ)の上面図を示す。図3Aおよび3Bは、図2の基板216に対応する基板316を示す。図3Aにおいて、基板316上方の高電位側素子302a、302b、および302cならびに低電位側素子302d、302e、および302fは、それぞれ図1の高電位側素子102a、102b、および102cならびに低電位側素子102d、102e、および102fに対応する。このため、図3Bにおいて、IGBTダイ304a、304b、304c、304d、304e、および304fは、それぞれ図1のIGBT104a、104b、104c、104d、104e、および104fに対応し、ダイオードダイ306a、306b、306c、306d、306e、および306fは、それぞれ図1のダイオード106a、106b、106c、106d、106e、および106fに対応する。したがって、各IGBTダイ304a、304b、304c、304d、304e、および304fは、それぞれダイオードダイ306a、306b、306c、306d、306e、および306fのうちの一つに並列に接続される。
【0025】
図3Aおよび3Bにおいて、三相モータ駆動用インバータモジュール300はU相、V相、およびW相を含む。U相は、高電位側および低電位側素子302aおよび302dならびに導電性クリップ318aおよび318dを備えた電源モジュールを含む。V相は、高電位側および低電位側素子302bおよび302eならびに導電性クリップ318bおよび318eを備えた電源モジュールを含む。W相は、高電位側および低電位側素子302cおよび302fならびに導電性クリップ318cおよび318fを備えた電源モジュールを含む。この実施形態では三相モータ駆動用インバータモジュールであるが、別の実施形態ではこれより多い、または少ない相のものであってもよい。さらにまた、実施形態によっては、電源モジュール300をモータ駆動用インバータ以外の回路で構成することもできる。
【0026】
図3Aおよび3Bにおいて、高電位側素子302aは図2の高電位側素子202aに対応する。より詳しくは、図3Aおよび3Bの断面2―2は、図2に示す断面図に対応する。そのため、高電位側導電性クリップ318aは図2の高電位側導電性クリップ218aに対応する。さらに、高電位側電源パッドVH1およびVH2、高電位側ゲートパッドGH1、ならびに共通出力パッドUoutは、それぞれ図2の高電位側電源パッドVH1およびVH2、高電位側ゲートパッドGH1、ならびに共通出力パッドUoutに対応する。また、電流経路336は図2の電流経路236に対応する。なお、図3Aおよび3Bにおいては、図2に示した任意に設けることができる絶縁性材料232および導電性材料234に対応する構成要素を図示しない。
【0027】
図3Bは三相モータ駆動用インバータモジュール300の透過平面図を示し、基板316上の高電位側ゲートパッドGH1、GH2、およびGH3、低電位側ゲートパッドGL1、GL2、およびGL3、高電位側電源パッドVH1、VH2、VH3、およびVH4、低電位側電源パッドVL1、VL2、VL3、およびVL4、ならびに共通出力パッドUout、Vout、およびWoutのレイアウトを示す。例えば、高電位側電源パッドVH1およびVH2は、図3Bの導電性クリップ318aと重なる領域において、それぞれ導電性クリップ318aの下に位置し、これに電気的に接続される。図2において、これらの電気接続は、それぞれ脚部230aおよび230bにより容易となっている。
【0028】
図3Bはまた、図2の導電性クリップ318aの下に位置し、図2のIGBTダイ204aおよびダイオードダイ206aに対応するIGBTダイ304aおよびダイオードダイ306aを示す。高電位側ゲートパッドGH1は、図3BのIGBTダイ302aと重なる領域において、IGBTダイ302aの下に位置し、これに電気的に接続される。図2において、この電気接続はIGBTダイ204aの下面を介したゲート228aに対するものとして示される。同様に、共通出力パッドUout図3BのIGBTダイ302aおよびダイオードダイ206aと重なる領域において、IGBTダイ304aおよびダイオードダイ306aの下に位置し、これらに電気的に接続される。図2において、これらの電気接続はIGBTダイ204aおよびダイオードダイ206aの下面を介したそれぞれエミッタ222aおよびアノード226aへのものとして示される。
【0029】
この実施形態において、高電位側素子302bは高電位側素子302aと同様である。例えば、高電位側素子302bは高電位側ゲートパッドGH2、高電位側電源パッドVH2およびVH3、ならびに共通出力パッドVoutに接続されるが、これは図2、3A、および3Bにおける高電位側ゲートパッドGH1、高電位側電源パッドVH1およびVH2、ならびに共通出力パッドUoutにそれぞれ接続される高電位側素子302aについて図示および説明されるのと同様である。そのため、例えば導電性クリップ318aは高電位側電源パッドVH2を介して導電性クリップ318bに電気的に接続される。さらに、導電性クリップ318bにより、共通出力パッドVoutの上方で電流を導電性クリップ318bに流すことができる。
【0030】
また、高電位側素子302cは高電位側素子302aおよび302bと同様である。例えば、高電位側素子302cは高電位側ゲートパッドGH3、高電位側電源パッドVH3およびVH4、ならびに共通出力パッドWoutに接続されるが、これは図2、3A、および3Bにおける高電位側ゲートパッドGH1、高電位側電源パッドVH1およびVH2、ならびに共通出力パッドUoutにそれぞれ接続される高電位側素子302aについて図示および説明されるのと同様である。そのため、例えば導電性クリップ318bは高電位側電源パッドVH3を介して導電性クリップ318cに電気的に接続される。さらに、導電性クリップ318cにより、共通出力パッドWoutの上方で電流を導電性クリップ318cに流すことができる。
【0031】
またこの実施形態において、低電位側素子302dは低電位側ゲートパッドGL1、低電位側電源パッドVL1およびVL2、ならびに共通出力パッドUoutに接続されるが、これは図2、3A、および3Bにおける高電位側ゲートパッドGH1、高電位側電源パッドVH1およびVH2、ならびに共通出力パッドUoutにそれぞれ接続される高電位側素子302aについて図示および説明されるのと同様である。そのため、導電性クリップ318dにより、共通出力パッドUoutの上方で電流を導電性クリップ318dに流すことができる。しかしながら、低電位側素子302dは、共通出力パッドUoutが、高電位側素子302aについて説明されるようにエミッタ/アノードノードではなく低電位側素子302dのコレクタ/カソードノードに電気的に接続されている。このコレクタ/カソードノードは図1のコレクタ/カソードノード114dに対応する。また、導電性クリップ318dは低電位側素子302dのエミッタを低電位側素子302dのアノードに接続しているが、これは高電位側素子302aのコレクタを高電位側素子302aのカソードに接続する導電性クリップ318aと対照的である。実施形態によっては、上記接続は、共通出力パッドUoutをIGBTダイ304dおよびダイオードダイ306dのそれぞれの下面を介して低電位側素子302dのコレクタおよびカソードに接続し、導電性クリップ318dをIGBTダイ304dおよびダイオードダイ306dのそれぞれの上面を介して低電位側素子302dのエミッタおよびアノードに接続することにより実現される。このように、共通出力パッドUoutは高電位側素子302aのエミッタ/アノードノードを低電位側素子302dのコレクタ/カソードノードに結合し、高電位側および低電位側導電性クリップ318aおよび318dの下に位置する。
【0032】
さらに、この実施形態において、低電位側素子302eおよび302fはいずれも低電位側素子302dと同様である。例えば、低電位側素子302eは低電位側ゲートパッドGL2、低電位側電源パッドVL2およびVL3、ならびに共通出力パッドVoutに接続されるが、これは低電位側ゲートパッドGL1、低電位側電源パッドVL1およびVL2、ならびに共通出力パッドUoutのそれぞれに接続される低電位側素子302dについて説明されるのと同様である。このため、例えば、導電性クリップ318dは低電位側電源パッドVL2を介して導電性クリップ318eに電気的に接続される。さらに、導電性クリップ318eにより、共通出力パッドVoutの上方で電流が導電性クリップ318eに流れる。
【0033】
また、低電位側素子302fは低電位側ゲートパッドGL3、低電位側電源パッドVL3およびVL4、ならびに共通出力パッドWoutに接続されるが、これは低電位側ゲートパッドGL1、低電位側電源パッドVL1およびVL2、ならびに共通出力パッドUoutのそれぞれに接続される低電位側素子302dについて説明されるのと同様である。このため、例えば導電性クリップ318eは低電位側電源パッドVL3を介して導電性クリップ318fに電気的に接続される。さらに、導電性クリップ318fにより、共通出力パッドWoutの上方で電流が導電性クリップ318fに流れる。
【0034】
共通出力パッドUout、Vout、およびWoutはそれぞれ図1の出力端子Uout、Vout、およびWoutに対応しうる。このため、三相モータ駆動用インバータモジュール300では、共通出力パッドUoutにより高電位側素子302aのエミッタ/アノードノードが低電位側素子302dのコレクタ/カソードノードに結合される。該エミッタ/アノードノードは、図1のエミッタ/アノードノード112aに対応し、該コレクタ/カソードノードは同図のコレクタ/カソードノード114dに対応しうる。また、共通出力パッドVoutにより高電位側素子302bのエミッタ/アノードノードが低電位側素子302eのコレクタ/カソードノードに結合される。該エミッタ/アノードノードは図1のエミッタ/アノードノード112cに対応し、該コレクタ/カソードノードは同図のコレクタ/カソードノード114eに対応しうる。さらに、共通出力パッドWoutにより高電位側素子302cのエミッタ/アノードノードが低電位側素子302fのコレクタ/カソードノードに結合される。該エミッタ/アノードノードは図1のエミッタ/アノードノード112cに対応し、該コレクタ/カソードノードは同図のコレクタ/カソードノード114fに対応する。この実施形態において、各共通出力パッドUout、Vout、およびWoutは基板316上で近接するパッドであり、実施形態によってはそれぞれ銅直接接合(DBC)基板からなる近接するパッドであってもよい。
【0035】
またこの実施形態において、高電位側導電性クリップ318aは高電位側素子302aのコレクタを高電位側素子302aのカソードに接続しており、これにより高電位側導電性クリップ318aを介して電流が高電位側素子302bおよび低電位側素子302eを含む別の電源モジュールの高電位側導電性クリップ318bに流れる。同様に、高電位側導電性クリップ318bが高電位側素子302bのコレクタを高電位側素子302bのカソードに接続させることにより、高電位側導電性クリップ318bを介して電流が高電位側素子302cおよび低電位側素子302fを含む別の電源モジュールの高電位側導電性クリップ318cに流れる。このようにして、電流経路336を、図1の高電位側電源バス108の高電位側電源端子VH1およびVH4のそれぞれに対応しうる高電位側電源パッドVH1から高電位側電源パッドVH4に延ばすことができる。そのため、各高電位側導電性クリップ302a、302b、および302cは、低インダクタンスで幅の広い電流経路をもつ高電位側電源バスの一部でありうる。
【0036】
また三相モータ駆動用インバータモジュール300では、低電位側導電性クリップ318dが低電位側素子318dのエミッタを低電位側素子318dのアノードに接続させることにより、低電位側導電性クリップ318dを介して電流が高電位側素子302bおよび低電位側素子302eを含む該別の電源モジュールの低電位側導電性クリップ318eに流れる。さらに、低電位側導電性クリップ318eが低電位側素子318eのエミッタを低電位側素子318eのアノードに接続させることにより低電位側導電性クリップ318eを介して電流が高電位側素子302cおよび低電位側素子302fを含む該別の電源モジュールの低電位側導電性クリップ318fに流れる。これにより、電流経路338を、図1の低電位側電源バス110の低電位側電源端子VL1およびVL4のそれぞれに対応しうる低電位側電源パッドVL1から低電位側電源パッドVL4に延ばすことができる。そのため、各低電位側導電性クリップ302d、302e、および302Fは低インダクタンスで幅の広い電流経路をもつ高電位側電源バスの一部でありうる。
【0037】
こうして、三相モータ駆動用インバータモジュール300のU相として、素子302aおよび302dを高電位側と低電位側の電源バスの間でハーフブリッジ接続することができる。また、三相モータ駆動用インバータモジュール300のV相として、素子302bおよび302eを高電位側と低電位側の電源バスの間でハーフブリッジ接続することができる。さらに、三相モータ駆動用インバータモジュール300のW相として、素子302cおよび302fを高電位側と低電位側の電源バスの間でハーフブリッジ接続することができる。
【0038】
したがって、上述のように、図1図3Bの実施形態において、本発明はボンドワイヤレスの三相モータ駆動用インバータモジュールのようなボンドワイヤレス電源モジュールを提供することができる。本発明の様々な実施形態は、高電位側素子のコレクタを高電位側素子のカソードに接続する高電位側導電性クリップ、および低電位側素子のエミッタを低電位側素子のアノードに接続する低電位側導電性クリップを含む。先に説明したように、該高電位側および低電位側導電性クリップのそれぞれにより、別の電源モジュールの別の高電位側および低電位側導電性クリップのそれぞれに、三次元的に電流を流すことができる。例えば、電源モジュールの共通出力パッドの上方で電流を流すことができる。こうして、電源モジュールはボンドワイヤを用いることなく形成することができ、多数のダイが接続され、かつダイへのまたはダイ間の接続部が多い場合であっても大幅に簡素化することができる。さらに、導電性のパッドを用いて、幅が広く、左右対称であり、かつ誘導性の低い電流経路を提供することができる。その結果、電源モジュールの設置面積を縮小し電力密度を上げるとともに、性能を高めることができる。
【0039】
本発明の上記の説明から、さまざまな手法を用いて、本発明の範囲を逸脱することなく本発明の概念を実施することができることは明らかである。また、特定の実施形態を特に取り上げて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく形態および細部を変更することができることを理解するであろう。すなわち、上記の実施形態は、あらゆる点において例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと考えるべきである。また、本発明は、本明細書において記載した特定の実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの再構成、変更、および代替が可能であることも理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B