(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給湯と暖房の状況によっては、給湯加熱運転と暖房加熱運転の双方を同時に行う事態が発生することがある。このような場合に、ヒートポンプの加熱能力を、給湯側と暖房側に適切に分配しなければ、給湯側または暖房側で吸熱量の不足を招いて、利用者の利便性を損なうおそれがある。給湯加熱運転と暖房加熱運転を同時に実行する際に、ヒートポンプの加熱能力を給湯側と暖房側に適切に分配することが可能な技術が期待されている。
【0005】
本明細書は上記課題を解決する技術を提供する。本明細書では、給湯加熱運転と暖房加熱運転を同時に実行する際に、ヒートポンプの加熱能力を給湯側と暖房側に適切に分配することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する給湯暖房システムは、自然環境から吸熱して給湯用熱媒および暖房用熱媒を加熱するヒートポンプと、給湯用熱媒を利用して給湯する給湯装置と、ヒートポンプによって加熱された給湯用熱媒の温度を検出する温度検出手段と、暖房用熱媒を利用して暖房する暖房装置と、ヒートポンプによって加熱される暖房用熱媒の流量を調整する流量調整手段を備えている。その給湯暖房システムは、給湯用熱媒をヒートポンプによって加熱する給湯加熱運転と、暖房用熱媒をヒートポンプによって加熱する暖房加熱運転を実行可能である。その給湯暖房システムは、給湯加熱運転と暖房加熱運転が同時に実行される場合に、温度検出手段で検出される給湯用熱媒の温度が沸上げ設定温度に近づくように、流量調整手段によって暖房用熱媒の流量を調整する。
【0007】
上記の給湯暖房システムでは、給湯加熱運転と暖房加熱運転が同時に実行される場合に、ヒートポンプによって加熱された後の給湯用熱媒の温度が沸上げ設定温度に近づくように、ヒートポンプによって加熱される暖房用熱媒の流量を調整する。一般に、給湯に関しては、利用者が望む温度で給湯することが重視される。上記の給湯暖房システムによれば、ヒートポンプによって加熱された後の給湯用熱媒の温度を低下させないように、ヒートポンプにおける暖房側の吸熱量を低減させて、給湯側の吸熱量を確保することができる。ヒートポンプの加熱能力を給湯側と暖房側に適切に分配することができる。
【0008】
上記の給湯暖房システムは、給湯装置が、給湯用熱媒を貯めるタンクを備えていることが好ましい。
【0009】
ヒートポンプの加熱能力を給湯側と暖房側に分配すると、ヒートポンプにおける給湯側の吸熱量が低減して、利用者の望んでいる流量で給湯を行うことが困難となる場合がある。しかしながら、上記の給湯暖房システムによれば、予め給湯用熱媒をヒートポンプによって沸上げ設定温度まで加熱し、加熱された給湯用熱媒をタンクに貯めておくことができる。利用者の望んでいる流量で給湯を行うことができる。
【0010】
上記の給湯暖房システムは、流量調整手段が、暖房装置とヒートポンプの間で循環する暖房用熱媒の流量を調整する調整弁を備えることが好ましい。
【0011】
上記の給湯暖房システムによれば、簡素な構成で、ヒートポンプによって加熱される暖房用熱媒の流量を調整することができる。
【0012】
上記の給湯暖房システムは、暖房装置からヒートポンプへ暖房用熱媒を送り、加熱された暖房用熱媒をヒートポンプから暖房装置へ戻す暖房加熱路と、ヒートポンプを介さずに暖房加熱路の上流端と下流端を接続するバイパス路を備えており、調整弁が暖房加熱路を流れる暖房用熱媒の流量を調整することが好ましい。
【0013】
上記の給湯暖房システムによれば、調整弁によって暖房加熱路を流れる暖房用熱媒の流量を増減しても、増減した分の暖房用熱媒はバイパス路を流れるため、暖房用熱媒の全流量が変動しない。暖房用熱媒の全流量を変動させることなく、ヒートポンプによって加熱される暖房用熱媒の流量を調整することができる。なお、この構成の場合、調整弁は暖房加熱路内に設けてもよいし、暖房加熱路とバイパス路の上流側の分岐部に設けてもよいし、暖房加熱路とバイパス路の下流側の合流部に設けてもよい。
【0014】
上記の給湯暖房システムは、暖房装置が、燃料の燃焼によって暖房用熱媒を加熱する補助熱源機を備えることが好ましい。
【0015】
上記の給湯暖房システムによれば、ヒートポンプにおける暖房側の吸熱量の低減により、暖房に必要な熱量を賄うことができなくなった場合でも、補助熱源機によって不足する熱量を補うことができる。利用者の利便性を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書が開示する技術によれば、給湯加熱運転と暖房加熱運転を同時に実行する際に、ヒートポンプの加熱能力を給湯側と暖房側に適切に分配することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る給湯暖房システム2は、タンクユニット4と、ヒートポンプユニット6と、熱源機ユニット8と、制御装置100を備えている。
【0019】
ヒートポンプユニット6は、ヒートポンプ50と、給湯用水循環ポンプ22を備えている。ヒートポンプ50は、冷媒(例えばR410AといったHFC冷媒や、R744といったCO
2冷媒)を循環させるための冷媒循環路52と、空気熱交換器(蒸発器)54と、ファン56と、圧縮機62と、三流体熱交換器58と、膨張弁60と、冷媒バイパス路64と、開閉弁66を備えている。
【0020】
空気熱交換器54は、ファン56によって送風された外気と冷媒循環路52内の冷媒との間で熱交換させる。後で説明するように、空気熱交換器54には、膨張弁60を通過後の低圧低温の液体状態にある冷媒が供給される。空気熱交換器54は、冷媒と外気とを熱交換させることによって、冷媒を加熱する。冷媒は、加熱されることにより気化し、比較的高温で低圧の気体状態となる。
【0021】
圧縮機62には、空気熱交換器54を通過後の冷媒が供給される。即ち、圧縮機62には、比較的高温で低圧の気体状態の冷媒が供給される。圧縮機62によって冷媒が圧縮されることにより、冷媒は高温高圧の気体状態となる。圧縮機62は、圧縮後の高温高圧の気体状態の冷媒を、三流体熱交換器58に送り出す。
【0022】
三流体熱交換器58の冷媒循環路52には、圧縮機62から送り出された高温高圧の気体状態の冷媒が供給される。三流体熱交換器58は、冷媒循環路52内の冷媒と、後述のタンク水循環路20内の水(以下では給湯用水ともいう)との間で熱交換を行うことができる。さらに、三流体熱交換器58は、冷媒循環路52内の冷媒と、後述の第2暖房加熱路88内の水(以下では暖房用水ともいう)との間で熱交換を行うことができる。冷媒は、三流体熱交換器58での熱交換の結果、熱を奪われて凝縮する。これにより、冷媒は、比較的低温で高圧の液体状態となる。
【0023】
膨張弁60には、三流体熱交換器58を通過後の比較的低温で高圧の液体状態の冷媒が供給される。冷媒は、膨張弁60を通過することによって減圧され、低温低圧の液体状態となる。膨張弁60を通過した冷媒は、上記の通り、空気熱交換器54に送られる。
【0024】
冷媒バイパス路64は、一端が膨張弁60の上流側に接続され、他端が膨張弁60の下流側に接続されている。冷媒バイパス路64内には、開閉弁66が備えられている。
【0025】
ヒートポンプ50において、開閉弁66を閉じた状態で、圧縮機62を作動させると、冷媒循環路52内の冷媒は、空気熱交換器54、圧縮機62、三流体熱交換器58、膨張弁60の順に循環する。この場合、三流体熱交換器58において、タンク水循環路20内の給湯用水、又は、第2暖房加熱路88内の暖房用水が加熱される。一方、開閉弁66を開いた状態で、圧縮機62を作動させると、冷媒循環路52内の冷媒は、空気熱交換器54、圧縮機62、三流体熱交換器58、冷媒バイパス路64の順に循環し、膨張弁60に流れない。このように開閉弁66を開いた状態での動作は、空気熱交換器54の除霜運転で用いられる。
【0026】
タンクユニット4は、タンク10を備えている。タンク10は、ヒートポンプ50によって加熱された給湯用水を貯える。本実施例の給湯用水は、水道水である。タンク10は、密閉型であり、断熱材によって外側が覆われている。タンク10内には満水まで給湯用水が貯留される。タンク10には、サーミスタ12、14、16、18がタンク10の高さ方向に略均等間隔で取り付けられている。各サーミスタ12、14、16、18は、その取付位置の給湯用水の温度を測定する。各サーミスタ12、14、16、18の検出温度から、タンク10の蓄熱状態を特定することができる。
【0027】
タンク水循環路20は、上流端がタンク10の下部に接続されており、ヒートポンプユニット6の三流体熱交換器58を通過して、下流端がタンク10の上部に接続されている。タンク水循環路20には、ヒートポンプユニット6の給湯用水循環ポンプ22が介装されている。ヒートポンプユニット6において、ヒートポンプ50を作動させて、給湯用水循環ポンプ22を駆動すると、タンク10の下部の給湯用水が三流体熱交換器58に送られて加熱され、加熱された給湯用水がタンク10の上部に戻される。タンク10の内部には、低温の給湯用水の層の上に高温の給湯用水の層が積み重なった温度成層が形成される。タンク水循環路20の三流体熱交換器58よりも下流側には、サーミスタ21が取り付けられている。サーミスタ21は、ヒートポンプ50からタンク10へ送られる給湯用水の温度を検出する。
【0028】
水道水導入路24は、上流端が給湯暖房システム2の外部の水道水供給源32に接続されている。水道水導入路24の下流側は、第1導入路24aと第2導入路24bに分岐している。第1導入路24aの下流端は、タンク10の下部に接続されている。第2導入路24bの下流端は、第1給湯路36の途中に接続されている。第1導入路24aには、逆止弁26が介装されている。第2導入路24bには、逆止弁28が介装されている。
【0029】
第1給湯路36は、上流端がタンク10の上部に接続されている。上述したように、第1給湯路36の途中には、水道水導入路24の第2導入路24bが接続されている。第1給湯路36と第2導入路24bの接続部には、混合弁30が介装されている。混合弁30は、タンク10の上部から第1給湯路36へ流入する高温の給湯用水の流量と、第2導入路24bから第1給湯路36へ流入する低温の水道水の流量の割合を調整する。第2導入路24bとの接続部より下流側の第1給湯路36は、熱源機ユニット8の給湯加熱路37を通過して、第2給湯路39へ接続している。第1給湯路36と第2給湯路39の間は、熱源機バイパス路33によって接続されている。熱源機バイパス路33にはバイパス弁34が介装されている。第2給湯路39の下流端は給湯栓38に接続されている。
【0030】
熱源機ユニット8は、シスターン70と、暖房用バーナ82と、給湯用バーナ81を備えている。シスターン70は、上部が開放されている容器であり、内部に暖房用水を貯留している。本実施例の暖房用水は例えば不凍液である。シスターン70には、暖房往路72の上流端が接続されている。暖房往路72には、暖房用水循環ポンプ74が介装されている。暖房用水循環ポンプ74を駆動すると、シスターン70内の暖房用水が暖房往路72に流れ込む。
【0031】
暖房往路72の下流端は、第1暖房加熱路73と、低温暖房循環路75に分岐している。低温暖房循環路75には、低温暖房機78が取り付けられる。本実施例の低温暖房機78は、例えば床暖房機である。低温暖房機78は、供給される暖房用水の熱を利用して暖房する。第1暖房加熱路73には、暖房用バーナ82が介装されている。暖房用バーナ82は、第1暖房加熱路73内の暖房用水を加熱する。第1暖房加熱路73の下流端は、高温暖房循環路77と追い焚き循環路79に分岐している。高温暖房循環路77には、高温暖房機76が取り付けられる。本実施例の高温暖房機76は、例えば浴室暖房乾燥機である。高温暖房機76は、供給される暖房用水の熱を利用して暖房する。低温暖房循環路75と高温暖房循環路77は、それぞれの下流端で合流して、第1暖房復路84の上流端へ接続している。
【0032】
第1暖房復路84の下流端は、タンクユニット4において、第2暖房加熱路88とHPバイパス路94に分岐している。第1暖房復路84の下流端には、暖房用水調整弁90が設けられている。暖房用水調整弁90は、その開度を変化させることによって、第1暖房復路84から第2暖房加熱路88へ流れる暖房用水の流量と、第1暖房復路84からHPバイパス路94へ流れる暖房用水の流量の割合を変化させることができる。本実施例の暖房用水調整弁90には、例えば三方弁が用いられる。第2暖房加熱路88は、ヒートポンプユニット6の三流体熱交換器58を通過して、第2暖房復路96の上流端へ接続している。HPバイパス路94は、ヒートポンプユニット6の三流体熱交換器58を通過することなく、第2暖房復路96の上流端へ接続している。第2暖房復路96は、下流端が熱源機ユニット8のシスターン70に接続している。
【0033】
追い焚き循環路79には、追い焚き熱動弁83と、追い焚き熱交換器97が介装されている。追い焚き熱動弁83は、追い焚き循環路79を開閉する。追い焚き熱交換器97では、追い焚き循環路79を流れる暖房用水と、浴槽水循環路91を流れる浴槽水の間で熱交換が行われる。追い焚き循環路79の下流端は、第2暖房復路96に接続している。
【0034】
浴槽水循環路91の上流端は、浴槽98の底部に接続している。浴槽水循環路91の下流端は、浴槽98の側部に接続している。浴槽水循環路91には、浴槽水循環ポンプ99が介装されている。浴槽水循環ポンプ99が駆動すると、浴槽98の底部から吸い出された浴槽水が、追い焚き熱交換器97を通過して、浴槽98の側部へ戻される。
【0035】
給湯加熱路37には、給湯用バーナ81が介装されている。給湯加熱路37の給湯用バーナ81よりも下流側から、浴槽注湯路40が分岐している。浴槽注湯路40には、浴槽注湯路40を開閉する注湯電磁弁42が介装されている。浴槽注湯路40の下流端は、浴槽水循環ポンプ99に接続している。
【0036】
タンクユニット4と熱源機ユニット8の間を接続する第1暖房復路84や、第2暖房復路96には、暖房用水の全流量が流れるため、これらの配管の圧力損失が問題となることがある。このため、これらの配管については、可能な限り大きな配管径のものを用いることが好ましい。また、これらの配管を並列に二重化することで、配管径の小さな配管を用いた場合でも、圧力損失を低減することができる。
【0037】
制御装置100は、タンクユニット4、ヒートポンプユニット6、熱源機ユニット8の各構成要素の動作を制御する。制御装置100は、現在時刻を取得する計時手段や、過去の運転実績を記憶する記憶手段等を備えている。
【0038】
(給湯暖房システムの動作)
次いで、本実施例の給湯暖房システム2の動作について説明する。以下では、給湯暖房システム2が実施する、給湯加熱運転、除霜運転、給湯運転、暖房加熱運転、湯はり運転および追い焚き運転について順に説明する。
【0039】
(給湯加熱運転)
給湯加熱運転では、タンク10内の給湯用水をヒートポンプ50で加熱し、高温となった給湯用水をタンク10に戻す。給湯加熱運転を実行する際には、制御装置100は圧縮機62およびファン56を駆動してヒートポンプ50を作動させるとともに、給湯用水循環ポンプ22を駆動する。この際、ヒートポンプ50では、開閉弁66を閉じた状態で圧縮機62を駆動する。
【0040】
圧縮機62の駆動により、冷媒循環路52内の冷媒は、空気熱交換器54、圧縮機62、三流体熱交換器58、膨張弁60の順に循環する。この場合、三流体熱交換器58を通過する冷媒循環路52内の冷媒は、高温高圧の気体状態である。また、給湯用水循環ポンプ22の駆動により、タンク水循環路20内をタンク10内の給湯用水が循環する。即ち、タンク10の下部に存在する給湯用水がタンク水循環路20内に導入され、導入された給湯用水が三流体熱交換器58を通過する際に、冷媒循環路52内の冷媒の熱によって加熱され、加熱された給湯用水がタンク10の上部に戻される。この際、サーミスタ21で検出される給湯用水の温度が、沸上げ設定温度となるように、ヒートポンプ50の動作が制御される。これにより、タンク10に高温の給湯用水が貯められる。タンク10の内部が高温の給湯用水で満たされた満蓄状態となると、給湯加熱運転を終了する。
【0041】
(除霜運転)
除霜運転は、外気温が低い状況において、ヒートポンプ50の空気熱交換器54に付着した霜を除去するための運転である。制御装置100から除霜運転の開始が指示されると、ヒートポンプユニット6では、開閉弁66を開いた状態で、圧縮機62を駆動する。これにより、冷媒が高温のまま空気熱交換器54を通過して、空気熱交換器54に付着した霜を除去することができる。所定時間が経過して、空気熱交換器54に付着した霜が除去されると、制御装置100は除霜運転を終了する。
【0042】
(給湯運転)
給湯運転は、タンク10内の給湯用水を給湯栓38に供給する運転である。給湯運転は、上記の給湯加熱運転と並行して行うこともできる。給湯栓38が開かれると、水道水供給源32からの水圧によって、水道水導入路24(第1導入路24a)からタンク10の下部に水道水が流入する。同時に、タンク10上部の給湯用水が、第1給湯路36を介して給湯栓38に供給される。
【0043】
制御装置100は、タンク10から第1給湯路36に供給される給湯用水の温度が、給湯設定温度より高い場合には、混合弁30を駆動して第2導入路24bから第1給湯路36に水道水を導入する。従って、タンク10から供給された給湯用水と第2導入路24bから供給された水道水とが、第1給湯路36内で混合される。制御装置100は、給湯栓38に供給される給湯用水の温度が、給湯設定温度と一致するように、混合弁30の開度を調整する。一方、制御装置100は、タンク10から第1給湯路36に供給される給湯用水の温度が、給湯設定温度より低い場合には、給湯用バーナ81によって第1給湯路36を通過する水を加熱する。制御装置100は、給湯栓38に供給される給湯用水の温度が、給湯設定温度と一致するように、給湯用バーナ81の出力を制御する。
【0044】
(暖房加熱運転)
暖房加熱運転は、ヒートポンプ50によって暖房用水を加熱し、高温となった暖房用水を用いて低温暖房機78や高温暖房機76によって暖房する運転である。利用者によって暖房加熱運転の実行が指示されると、制御装置100は、暖房用水調整弁90の開度を低温暖房機78や高温暖房機76の負荷に応じて調整し、暖房用水循環ポンプ74を回転させる。さらに、制御装置100は、開閉弁66を閉じた状態で圧縮機62を駆動する。これによって、三流体熱交換器58で加熱された暖房用水が、シスターン70を経て、低温暖房機78や高温暖房機76に供給される。さらに、制御装置100は、必要に応じて暖房用バーナ82を作動する。これにより、高温暖房機76には、暖房用バーナ82での加熱によってさらに高温となった暖房用水が供給される。暖房運転においては、低温暖房機78に供給される暖房用水の温度が低温暖房設定温度となるように、また高温暖房機76に供給される暖房用水の温度が高温暖房設定温度となるように、暖房用水調整弁90の開度や、ヒートポンプ50の動作や、暖房用バーナ82の出力が調整される。
【0045】
(湯はり運転)
湯はり運転は浴槽98に湯はりをする運転である。利用者が湯はり運転の開始を指示すると、給湯暖房システム2は湯はり運転を開始する。湯はり運転においては、注湯電磁弁42を開く。注湯電磁弁42が開くと、水道水供給源32からの水圧によって、水道水導入路24(第1導入路24a)からタンク10の下部に水道水が流入する。同時に、タンク10上部の給湯用水が、第1給湯路36、給湯加熱路37、浴槽注湯路40、浴槽水循環路91を介して浴槽98に供給される。湯はり運転においては、給湯運転と同様にして、浴槽注湯路40に供給される水の温度を湯はり設定温度に調整する。浴槽98に供給される水の流量が湯はり設定水量に達すると、湯はり運転を終了する。なお、本実施例の給湯暖房システム2では、タンク10の容量は浴槽98への湯はり量よりも少ない。従って、湯はり運転の開始時においてタンク10が満蓄状態であった場合でも、湯はり運転の途中でタンク10は湯切れし、その後は湯はり運転と給湯加熱運転が並行して行われる。
【0046】
(追い焚き運転)
追い焚き運転は、浴槽98に貯められた浴槽水を追い焚きする運転である。利用者が追い焚き運転の開始を指示すると、給湯暖房システム2は追い焚き運転を開始する。追い焚き運転においては、浴槽水循環ポンプ99を駆動する。また、追い焚き熱動弁83を開いて、暖房用水循環ポンプ74を駆動する。これにより、浴槽98の底部から浴槽水が吸い出されて、追い焚き熱交換器97で暖房用水との熱交換によって加熱される。加熱された浴槽水は、浴槽98の側部へ戻される。追い焚き運転においては、暖房加熱運転と同様にして、ヒートポンプ50による暖房用水の加熱と、暖房用バーナ82による暖房用水の加熱が行われる。追い焚き運転は、暖房加熱運転の一態様ということもできる。
【0047】
(給湯加熱運転と暖房加熱運転の同時実行)
給湯暖房システム2において、給湯加熱運転と暖房加熱運転が同時に実行されると、ヒートポンプ50の三流体熱交換器58では、給湯用水の加熱と暖房用水の加熱が同時に行われる。このような場合、給湯側と暖房側へ、ヒートポンプ50の加熱能力を適切に分配する必要がある。給湯暖房システム2では、給湯加熱運転と暖房加熱運転が同時に実行されると、
図2に示すように、制御装置100が給湯側と暖房側への加熱能力の分配処理を行う。
【0048】
ステップS202では、給湯用水循環ポンプ22の回転数を調整して、タンク10からヒートポンプ50へ送られる給湯用水の流量を、定常流量から制限流量に低減する。定常流量は、給湯加熱運転のみを単独で実行する際の流量であり、制限流量は定常流量よりも低い流量である。本実施例では、制限流量は定常流量の半分に設定されている。タンク10からヒートポンプ50へ送られる給湯用水の流量を低減させることで、ヒートポンプ50からタンク10へ戻される給湯用水の温度を沸上げ設定温度に維持しつつ、給湯側での吸熱量を低減させ、暖房側の吸熱量を確保することができる。給湯側と暖房側でヒートポンプ50の加熱能力を適切に分配することができる。
【0049】
ステップS204では、給湯加熱運転が終了したか否かを判断する。給湯加熱運転が継続している場合(ステップS204でNOの場合)、処理はステップS206へ進む。
【0050】
ステップS206では、暖房加熱運転が終了したか否かを判断する。暖房加熱運転が継続している場合(ステップS206でNOの場合)、処理はステップS208へ進む。
【0051】
ステップS208では、サーミスタ21で検出される給湯用水の温度が沸上げ設定温度を下回るか否かを判断する。暖房側での吸熱量が小さく、ヒートポンプ50の加熱能力で給湯側と暖房側の双方の吸熱量を賄うことができる場合には、サーミスタ21で検出される給湯用水の温度は沸上げ設定温度に維持される。しかしながら、暖房側の吸熱量が大きく、それに伴って給湯側の吸熱量が不足すると、サーミスタ21で検出される給湯用水の温度は沸上げ設定温度を下回るようになってしまう。ステップS208においてサーミスタ21で検出される給湯用水の温度が沸上げ設定温度を下回る場合(YESの場合)、処理はステップS210へ進む。サーミスタ21で検出される給湯用水の温度が沸上げ設定温度以上の場合(NOの場合)、処理はステップS204へ戻る。
【0052】
ステップS210では、暖房用水調整弁90の開度を調整して、ヒートポンプ50に送られる暖房用水の流量を低減させる。これによって、ヒートポンプ50において、暖房側の吸熱量を低減させて、給湯側の吸熱量を確保することができる。サーミスタ21で検出される給湯用水の温度を、沸上げ設定温度に近づけることができる。言い換えると、ステップS208とステップS210によって、サーミスタ21で検出される給湯用水の温度が沸上げ設定温度に維持されるように、暖房用水調整弁90の開度が調整される。
【0053】
ステップS204で給湯加熱運転が終了している場合(YESの場合)、処理はステップS214へ進む。ステップS214では、ステップS210で暖房用水調整弁90の開度を調整している場合には、調整前の開度まで暖房用水調整弁90を復帰させる。ステップS214の実行後、給湯側と暖房側への加熱能力の分配処理は終了し、その後は通常の暖房加熱運転を行う。
【0054】
ステップS206で暖房加熱運転が終了している場合(YESの場合)、処理はステップS212へ進む。ステップS212では、ステップS202で調整した給湯用水循環ポンプ22の回転数を、給湯加熱運転のみを単独で実行する場合の回転数に復帰させる。ステップS212の実行後、給湯側と暖房側への加熱能力の分配処理は終了し、その後は通常の給湯加熱運転を行う。
【0055】
なお、上記では給湯加熱運転と暖房加熱運転が同時に実行された場合の、給湯側と暖房側への加熱能力の分配処理について説明したが、給湯加熱運転の実行中に暖房加熱運転の開始が予測される場合に、ステップS202の給湯用水循環ポンプ22の回転数調整処理を前もって行う構成としてもよい。暖房加熱運転の開始は、例えば過去の運転実績から暖房加熱運転の開始予定時刻を推定して予測することもできるし、外気温を検出して外気温が低い場合に暖房加熱運転が開始されるものとして予測することもできる。このような構成とすると、暖房加熱運転が実際に開始された時点で、すでに給湯側の吸熱量が制限されているので、暖房側の吸熱量が一時的に不足する事態を防ぐことができる。
【0056】
(給湯加熱運転のスケジューリング)
給湯暖房システム2では、利用者の要求に応じて給湯運転や湯はり運転を行う前に、給湯加熱運転を実行してタンク10を満蓄状態としておくことが好ましい。そこで、本実施例の給湯暖房システム2では、単位期間(例えば一日)の開始時点で、制御装置100が
図3に示すような給湯加熱運転のスケジューリング処理を行う。
【0057】
ステップS302では、給湯加熱運転の終了予定時刻を決定する。本実施例の給湯暖房システム2では、給湯運転(または湯はり運転)の開始予定時刻までに給湯加熱運転が終了するように、給湯加熱運転の終了予定時刻を決定する。給湯運転(または湯はり運転)の開始予定時刻は、例えば過去の運転実績に基づいて推定することができる。あるいは、リモコン等によって利用者が湯はり設定時刻を設定している場合には、湯はり設定時刻から湯はり運転の所要時間だけ遡った時刻を、湯はり運転の開始予定時刻とすることもできる。
【0058】
ステップS304では、給湯加熱運転の所要時間を計算する。給湯加熱運転の所要時間は、タンク10の容量と、沸上げ設定温度と、ヒートポンプ50の加熱能力に基づいて計算することができる。ステップS304では、給湯加熱運転が単独で実行されるものとして、すなわちヒートポンプ50の加熱能力を全て給湯側での吸熱に使用できるものとして、給湯加熱運転の所要時間を計算する。ステップS302とステップS304により、給湯加熱運転の実行予定時間が特定される。
【0059】
ステップS306では、給湯加熱運転の実行予定時間において、暖房加熱運転の実行が予測されるか否かを判断する。暖房加熱運転が実行される時間帯は、例えば過去の運転実績に基づいて推定することができる。給湯加熱運転の実行予定時間において、暖房加熱運転の実行が予測される場合(ステップS306でYESの場合)には、処理はステップS308へ進む。給湯加熱運転の実行予定時間において、暖房加熱運転の実行が予測されない場合(ステップS306でNOの場合)には、処理はステップS310へ進む。
【0060】
ステップS308では、給湯加熱運転の所要時間を再度計算し直す。ステップS304とは異なり、ステップS308では、給湯加熱運転と暖房加熱運転が同時に実行されるものとして、すなわちヒートポンプ50の加熱能力が給湯側と暖房側で分配されるものとして、給湯加熱運転の所要時間を計算する。本実施例の給湯暖房システム2の場合は、ヒートポンプ50の加熱能力の半分が給湯側に分配されるものとして、給湯加熱運転の所要時間を計算する。ステップS308の後、処理はステップS310へ進む。
【0061】
ステップS310では、ステップS302で決定された給湯加熱運転の終了予定時刻と、ステップS304またはステップS308で計算された給湯加熱運転の所要時間に基づいて、給湯加熱運転の開始時刻を決定する。
【0062】
本実施例の給湯暖房システム2では、給湯加熱運転の開始時刻を決定する際に、給湯加熱運転と暖房加熱運転の同時実行が予測される場合には、ヒートポンプ50において給湯側の吸熱量が低減した場合の給湯加熱運転の所要時間を算出して、給湯加熱運転の開始時刻を決定する。このような構成とすることによって、実際に給湯加熱運転を実行中に暖房加熱運転が実行された場合でも、終了予定時刻までに給湯加熱運転を確実に終了することができる。利用者の利便性を確保することができる。
【0063】
上記の実施例では、三流体熱交換器58において、ヒートポンプユニット6の冷媒と給湯用水との熱交換と、ヒートポンプユニット6の冷媒と暖房用水との熱交換の双方を行う構成について説明した。これとは異なり、三流体熱交換器58の代わりに通常の液/液熱交換器を2つ用意し、一方の熱交換器でヒートポンプユニット6の冷媒と給湯用水との熱交換を行い、他方の熱交換器で、ヒートポンプユニット6の冷媒と暖房用水との熱交換を行う構成としてもよい。
【0064】
上記の実施例では、タンク10に貯められた給湯用水が給湯栓38や浴槽98に直接供給される構成、すなわち給湯用水として水道水などの上水を用いる構成について説明した。これとは異なり、タンク10に貯める給湯用水として不凍液などを用いて、タンク10に貯められた給湯用水と水道水との熱交換によって水道水を加熱し、高温となった水道水を給湯栓38や浴槽98に供給する構成としてもよい。
【0065】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。