【実施例】
【0025】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0026】
(基紙)
針葉樹(N)材30質量%、広葉樹(L)材70質量%のパルプ配合となるよう混合したパルプを濾水度400mlCSFになるよう叩解後、アルキルケテンダイマーエマルジョンを対パルプ0.2質量%、カチオン化デンプンを対パルプ0.9質量%添加し、紙料スラリーを調製し、坪量160g/m
2となるよう長網抄紙機にて抄造を行った。なお、サイズプレスにおいて、ポリアクリルアミド(PAM)系表面紙力剤1質量部、酸化デンプン1質量部の2質量%水溶液を絶乾付着量1.5g/m
2となるよう付着させて基紙を得た。
【0027】
(実施例1)
ロッドバーコーターにて基紙にポリビニルアルコール水溶液(固形分7質量%、型番:PVA117、株式会社クラレ製)を塗布し、絶乾固形量が1.0g/m
2の下塗り層を得た。この下塗り層にロッドバーコーターにてシリコーン水溶液(固形分0.7質量%、型番:KM−3951、信越化学工業製)を塗布し、絶乾固形量が0.08g/m
2の剥離層を得た。さらに、逆面に水を塗工してカール矯正を施し、実施例1の工程紙を得た。
【0028】
(実施例2)
実施例1において、下塗り層のポリビニルアルコールの絶乾固形量を0.3g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、実施例2の工程紙を得た。
【0029】
(実施例3)
実施例1において、下塗り層のポリビニルアルコールの絶乾固形量を2.0g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、実施例3の工程紙を得た。
【0030】
(実施例4)
実施例1において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.02g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、実施例4の工程紙を得た。
【0031】
(実施例5)
実施例1において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.20g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、実施例5の工程紙を得た。
【0032】
(実施例6)
実施例2において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.02g/m
2に変更した以外は実施例2と同様に実施し、実施例6の工程紙を得た。
【0033】
(実施例7)
実施例2において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.20g/m
2に変更した以外は実施例2と同様に実施し、実施例7の工程紙を得た。
【0034】
(実施例8)
実施例3において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.02g/m
2に変更した以外は実施例3と同様に実施し、実施例8の工程紙を得た。
【0035】
(実施例9)
実施例3において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.20g/m
2に変更した以外は実施例3と同様に実施し、実施例9の工程紙を得た。
【0036】
(実施例10)
実施例1において、下塗り層のポリビニルアルコールの絶乾固形量を0.6g/m
2、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.04g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、実施例10の工程紙を得た。
【0037】
(比較例1)
実施例1において、下塗り層のポリビニルアルコールの絶乾固形量を0.2g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、比較例1の工程紙を得た。
【0038】
(比較例2)
実施例1において、下塗り層のポリビニルアルコールの絶乾固形量を2.3g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に実施し、比較例2の工程紙を得た。
【0039】
(比較例3)
比較例1において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.30g/m
2に変更した以外は比較例1と同様に実施し、比較例3の工程紙を得た。
【0040】
(比較例4)
比較例2において、剥離層のシリコーンの絶乾固形量を0.02g/m
2に変更した以外は比較例2と同様に実施し、比較例4の工程紙を得た。
【0041】
(比較例5)
ロッドバーコーターにて基紙にポリビニルアルコール水溶液(固形分10質量%、型番:PVA117、株式会社クラレ製)100質量部、シリコーン水溶液(固形分40質量%、型番:KM−3951、信越化学工業製)5質量部、水45質量部を混合攪拌した8質量%水溶液を塗布し、絶乾固形量が1.0g/m
2の塗工層を得た。さらに、逆面に水を塗工してカール矯正を施し、比較例5の工程紙を得た。
【0042】
実施例1〜10及び比較例1〜5の工程紙の評価結果を表1に示す。なお、表1中の評価項目は以下の方法で評価した。
【0043】
<カールの評価>
23℃、相対湿度50%環境下においた工程紙を、200℃乾燥器で2分間保持した直後、カール(A4サイズにカットして平らな台上に置き、紙端が台上から反った高さ(単位:mm)で表記する。剥離加工面側に反る場合をプラス、逆をマイナスで表す。:表中「カール」と記載)を以下に示す。カールは、製品の変形などの品質問題に加え、剥離作業性の低下といった操業性の低下を招くことから、±20mm以下が好ましい。
【0044】
<透気度の評価>
Japan Tappi 紙パルプ試験方法 No.5(王研式)に準じて測定した。
【0045】
<剥離適性の評価>
各工程紙上に塩化ビニル(塩ビ)ペーストを塗布、200℃×2分の熱処理により硬化させた。得られた塩ビシートをテンシロン剥離試験機で剥離(300mm/min)し、工程紙の剥離面と塩ビゾルの剥離面の表面状態(面質)を目視にて次の通り評価した。
◎:工程紙の剥離面が塩ビシート面に剥ぎ取られず、塩ビシート面質が良好である。
○:工程紙の剥離面に毛羽立ちや凹凸が僅かに見られるが、塩ビシート面質が良好である。
△:重剥離で工程紙の剥離面が剥ぎ取られる。又は、軽剥離で、塩ビシート面質にムラが見られるが、実使用可能なレベル。
×:重剥離で工程紙が材破するか、剥離できない。又は、軽剥離で、塩ビシート面質にムラが見られ、使用不可なレベル。
【0046】
<剥離性の繰り返し(耐久性)評価>
一度、剥離した工程紙に再度、塩ビペーストを塗布し200℃×2分の熱処理により硬化させて、塩ビシートをテンシロン剥離試験機で剥離し、繰り返し耐久性を最大5回まで確認した。繰り返し耐久性は、経済性から4回以上が好ましい。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1:良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0049】
実施例2:2回目以降の剥離が強めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。5回目の繰り返し使用で、工程紙の剥離面に毛羽立ちや凹凸が僅かに見られたが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0050】
実施例3:初回の剥離が軽めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。カールが見られたが、剥離作業性は実用上問題なかった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0051】
実施例4:剥離が強めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。5回繰り返し使用で、工程紙の剥離表面に毛羽立ちが僅かに見られたが、実使用上問題はなかった。
【0052】
実施例5:初回使用の剥離が軽めになり、塩ビシートの表面に面質ムラが多少見られたが、実用上問題は見られなかった。剥離作業性も良好であった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0053】
実施例6:剥離が強めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。4回繰り返し使用で重剥離のため、工程紙の剥離面が剥ぎ取られたが、実使用可能なレベルであった。
【0054】
実施例7:初回使用の剥離が軽めになり、塩ビシートの表面に面質ムラが多少見られたが、実用上問題は見られなかった。剥離作業性も良好であった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0055】
実施例8:良好な面質の塩ビシートが得られた。カールが見られたが、剥離作業性は実用上問題なかった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0056】
実施例9:2回目使用までの剥離が軽めになり、塩ビシートの表面に面質ムラが多少見られたが、実用上問題は見られなかった。カールが見られたが、剥離作業性は実用上問題なかった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0057】
実施例10:良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。5回繰り返し使用したが、工程紙としての性能の劣化は認められなかった。
【0058】
比較例1:初回は剥離が強めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。2回目の使用で剥離が強過ぎて、工程紙の材破が見られた。
【0059】
比較例2:剥離が軽めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性はカールが大きく、作業性に支障がでるレベルで、複数回使用ができなかった。
【0060】
比較例3:剥離が部分的に軽めとなり、塩ビシートの表面に面質ムラが見られ問題となるレベルであった。複数回使用ができなかった。
【0061】
比較例4:剥離が軽めになったが、良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性はカールが大きく、作業性に支障がでるレベルで、複数回使用ができなかった。
【0062】
比較例5:初回は良好な面質の塩ビシートが得られた。剥離作業性も良好であった。2回目の使用で剥離が強過ぎて、工程紙の材破が見られた。
【0063】
表1より、実施例1〜10の工程紙は、剥離強度が安定し、収縮やカールのない複数回繰り返し使用可能な特性を示すことがわかる。一方、比較例1〜5の工程紙は、剥離強度やカールに問題があり、4回以上繰り返し使用ができない。
【0064】
以上説明したように、本発明の工程紙は、200〜230℃の熱処理工程を伴う塩化ビニル系樹脂シートの製造において、剥離強度が安定し、収縮やカールのない複数回繰り返し使用可能な特性を有しており、従来品に比べ商品価値を一層高めることになる。