特許第5746114号(P5746114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746114内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746114
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20150618BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   E04G23/02 A
   E04F13/08 101S
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-176727(P2012-176727)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34814(P2014-34814A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】302027664
【氏名又は名称】株式会社ヤグチ技工
(74)【代理人】
【識別番号】100083633
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】矢口 信也
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144455(JP,A)
【文献】 特開平09−004171(JP,A)
【文献】 特開2006−348687(JP,A)
【文献】 特開2007−284937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体側のひび割れによって、ひび割れたタイル(1)を剥離して撤去するタイル貼り面のひび割れ修復時に於いて、少なくとも、予め擬似的に周囲と同化するように表面を着色すると共にその表面にマスキングテープ(11)を貼着し、且つ、可撓性を有したウレタン樹脂製のタイル(1)を弾性接着剤でタイル貼り面に所定枚数貼付け、目地用プライマーを前記目地部(2)の底面及び貼付けた前記タイル(1)の側面に塗布し、そのタイル(1)間に軟質の目地材を目地部(2)に充填させた後、前記マスキングテープ(11)を剥がして、タイルひび割れ修復を終了し、次いでタイル剥落防止及び防水工法が、イ)タイル貼り面の全面に対し、所定間隔で目地部(2)にマーキングし、そのマーキングした目地部(2)にアンカーピン(3)の穴を穿設する穴あけ工程。ロ)タイル貼り面の全面に、アクリルシリコン系樹脂を塗布する下塗り工程。ハ)下塗りの上に、剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第1回目の中塗りを行う第1塗膜形成工程。二)第1塗膜形成後、第1塗膜を突き抜いてアンカーピン(3)を目地部(2)に打込む塗膜固定工程。ホ)目地部(2)と同じ色の無機質の耐候性塗料でアンカーピン(3)の頭部に塗布する着色工程。へ)ナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第2回目の中塗りを行い、乾燥後、同様にして第3回目の中塗りを行う第2・第3塗膜形成工程。ト)透明なアクリル樹脂のトップコートで上塗りを行う仕上げ工程。少なくとも以上の工程を順次行うことを特徴とする内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法。
【請求項2】
前記マスキングテープ(11)に、前記タイル(1)の中間部に剥離用の折返し部(12)が設けられた請求項1記載の内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法。
【請求項3】
前記アンカーピン(3)がステンレス製であり、第1回目の中塗りにゴム鏝を用い、第2回目・3回目の中塗りに砂骨ローラーを用いた請求項1記載の内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイル貼り面のひび割れを周囲と同化させ、その後、繰返してタイルのひび割れが発生する恐れをなくすと共に、タイル貼り面全体を防水工事し、且つ、内外装面からタイルが剥落して落下させないための内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に外装仕上げ材としてタイル貼り仕上げの建物は、高級感あふれ、耐久性にも優れているので、近年多く見受けられる。しかし、長期間に渡る紫外線,雨水,酸性ガス,地震などのさまざまな影響によりタイル面の汚れ,ひび割れ,浮き,剥離,目地部のエフロレッセンスの流出,コンクリートの中性化の進行,そして漏水によるさまざまな劣化現象が見られ、タイル貼り面の適切な補修処置は重要になってきている。このため、現在ではタイル貼り面に撥水性処理や汚れ防止程度の薄膜塗料などが塗布されている場合も多く見受けられるが、高い防水性能は望めなかった。この理由としてはタイル貼り面に透明な塗膜で、且つ厚膜で、更にクラック追従性に優れた防水材がなかったためと考えられる。しかもタイル貼り仕上げされたマンション等に於いては、建設後10年経過すると、地震による影響やコンクリートの収縮等により、躯体側にひび割れを生じ、且つ、タイル陶片までひび割れが発生し[図1(a)参照]、雨水がコンクリート内部まで浸入して白いエフロレッセンスを流出して汚れたものが多く見受けられる。
【0003】
この場合の外壁用タイル貼り面の割れ修復工法としては、一般にひび割れたタイル及び修復作業に必要な最小限のタイル陶片を剥離して撤去し、躯体側のひび割れにエポキシ樹脂などの注入材を注入してコンクリートの奥深くまで浸透させ、ひび割れを埋める工程が行われ、或いは、ひび割れに沿って深くUカットし、Uカットした溝にシーリング材を充填させる工程が行われていた[図1(b)参照]。そして注入材或いはシーリング材が固化後、新たなタイル陶片を、剥離した位置に貼付けるタイル貼り工程が行われ、前記タイル陶片間に目地材が埋められてタイル貼り面の割れ修復工法を終了していた。
【0004】
しかしながら、前記ひび割れを埋める工程或いはUカットした溝にシーリング材を充填させる工程が行われて新たにタイル陶片を貼付けて修復しても、躯体側が一度動いてひび割れた箇所は補強しても地震等で動き易いため、修復箇所のタイル陶片は極めてひび割れが発生し易く、タイル陶片の貼り替えを繰返さなければならなかった。このため、弾性を有した接着剤を使用する方法が施される場合もあるが、有効なひび割れ対策が施されたものがないのが現状である。
【0005】
一方、近年に於いて、地震時にタイル貼りした外壁面からタイルが剥離して落下する事故が頻繁に発生しているため、タイル剥落防止工法が多種提案されている。しかしながら、これらの提案は建築する際に、コンクリート打設面の形状を工夫して地震時にタイルの剥落防止を可能とするものであった。他方、建築済みのタイル貼り面の上から施工する外壁タイル剥落防止工法としては、浮きの発生した場所を確認し、そのタイルや石の中央に孔をあけ、孔内の清掃を行った後、アンカーピンをセットすると共にエポキシ樹脂の接着剤を注入して浮いた空間部に充填させる。そして、外壁タイルを洗い、下塗り(シーラー塗布)が行われ、1層目の剥落防止材を塗る。その後、2層目を塗り、上塗りが行われて仕上げられていた。
【0006】
しかしながら、後施工の前記タイル剥落防止工法はタイルや石の中央に孔をあける際、タイルや石が割れ易く、硬質のものに対しては非常に時間が掛かるものとなっていると共に見た目も悪いものとなっていた。また中央の孔からエポキシ樹脂の接着剤を注入して浮いた空間部に充填させると、タイルの周囲が浮き上がってしまうことがあり、見た目が悪いものとなっていた。更にアンカーピンによって壁側に固定されたタイルは、浮きの発生した場所の補修範囲の剥落防止が可能となっても、補修範囲以外のタイルの剥落の恐れが依然として解消されないものであった。従って、浮きの発生した場所の補修が完了した後に、外壁全面に剥落防止材を塗布する場合も見受けられるが、タイルの剥離強さは、始めに施工した際の壁側との固定状態によって決まり、タイルの貼着力だけが頼りとなり、地震時にタイルが壁側と剥離されると、タイルが個々に落下することはないが、タイル全体の落下或いはタイルの部分的な落下と共に固化した剥落防止材も一緒に落下してしまい、タイルの剥落を完全に防止することは難しいものであった。
【0007】
このため、タイル陶片を撤去せずに、ひび割れに沿って深くUカットし、Uカットした溝に柔軟なパテ材を充填させると共にタイル陶片を擬似的に周囲に同化させる工法が、本発明者によって特開2006−348687で「内外装用タイル貼り面の割れ修復工法」として提案したところである。また内外装用タイル貼り面の上から施工して、内外装用からタイルが剥落して落下させないための内外壁のタイル剥落防止工法としては、本発明者が特開2009−144455で提案したところである。尚、従来の工法に於いて、タイル剥落防止効果と防水効果が同時に得られる施工方法はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−348687号公報
【特許文献2】特開2009−144455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はタイルひび割れを周囲と同化させ、その後、繰返してタイルのひび割れが発生する恐れをなくすと共に、軽くて脱落しにくく、且つ、防水効果も同時に得られる内外装用タイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり、タイル貼り面のひび割れ修復時に於いて、少なくとも、予め擬似的に周囲と同化するように表面を着色すると共にその表面にマスキングテープを貼着し、且つ、可撓性を有したウレタン樹脂製のタイルを弾性接着剤でタイル貼り面に所定枚数貼付け、目地用プライマーを目地部の底面及びタイルの側面に塗布し、そのタイル間に軟質の目地材を目地部に充填させた後、マスキングテープを剥がして、タイルひび割れ修復を終了し、次いでタイル剥落防止及び防水工法を行う。
【0011】
この時、イ)タイルの貼られた面の全面に対し、所定間隔で目地部にマーキングし、そのマーキングした目地部にアンカーピンの穴を穿設する。次にロ)タイル貼り面の全面に、アクリルシリコン系樹脂を塗布する下塗り工程を行う。またハ)下塗りの上に、剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第1回目の中塗りを行う第1塗膜形成工程を行う。そして、二)第1塗膜形成後、第1塗膜を突き抜いてアンカーピンを目地部に打込む塗膜固定工程を行う。又、ホ)目地部と同じ色の無機質の耐候性塗料でアンカーピンの頭部に塗布する着色工程を行う。更にへ)ナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第2回目の中塗りを行い、乾燥後、同様にして第3回目の中塗りをする第2・第3塗膜形成工程を行う。次にト)透明なアクリル樹脂のトップコートで上塗りをする仕上げ工程が行われると共に各工程を順次行うことを特徴とする内外装用タイル剥落防止及び防水工法と成す。この場合、前記マスキングテープに、タイルの中間部に剥離用の折返し部を設けたものを用いるのが良く、前記アンカーピンとしてステンレス製を用い、第1回目の中塗りにゴム鏝を用いると共に第2回目・第3回目の中塗りに砂骨ローラーを用いるのが好ましい。
【0012】
尚、本発明で言う「タイル」とは、外装や内装の仕上げ材として貼り面に取付けるものを指し、陶磁器製タイル以外に、レンガや石のブロック或いは板なども含まれるものとする。又、本発明で言う「砂骨ローラー」とは、塗膜を厚くゆず肌状態に塗る場合に使用する穴あきローラーを指す。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のように躯体側のひび割れによって、ひび割れたタイル(1)を剥離して撤去するタイル貼り面のひび割れ修復時に於いて、少なくとも、予め擬似的に周囲と同化するように表面を着色すると共にその表面にマスキングテープ(11)を貼着し、且つ、可撓性を有したウレタン樹脂製のタイル(1)を弾性を有した接着剤でタイル貼り面に所定枚数貼付け、目地用プライマーを目地部(2)の底面及びタイル(1)の側面に塗布し、そのタイル(1)間に軟質の目地材を目地部(2)に充填させた後、マスキングテープ(11)を剥がして、タイルひび割れ修復を終了することにより、躯体側が地震等でひび割れ修復箇所が動いて隙間を生じても、可撓性のタイル(1)や軟質な目地材が充填された目地部(2)は多少動く程度で済むものとなるため、該タイル(1)や目地部(2)の表面にひび割れを生じることはなくなる。従って、表面からは雨水が躯体側に浸透する恐れがないものとなり、従来の如きタイル陶片を繰返して貼り替えることがなくなり、維持管理が殆ど掛からないものとなるのである。また躯体側のひび割れ修復後、剥離した位置にタイル(1)を貼付け、タイル(1)間の目地部(2)に目地材を充填させる作業は従来と同様に行えると共に周囲のタイル陶片と同化できるものとなるのである。
【0014】
又、イ)タイル貼り面の全面に対し、所定間隔で目地部(2)にマーキングし、そのマーキングした目地部(2)にアンカーピン(3)の穴を穿設する穴あけ工程。ロ)タイル貼り面の全面に、アクリルシリコン系樹脂を塗布する下塗り工程。ハ)下塗りの上に、剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第1回目の中塗りを行う第1塗膜形成工程。二)第1塗膜形成後、第1塗膜を突き抜いてアンカーピン(3)を目地部(2)に打込む塗膜固定工程。 ホ)目地部(2)と同じ色の無機質の耐候性塗料でアンカーピン(3)の頭部に塗布する着色工程。へ)ナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第2回目の中塗りを行い、乾燥後、同様にして第3回目の中塗りを行う第2・第3塗膜形成工程。ト)透明なアクリル樹脂のトップコートで上塗りを行う仕上げ工程。少なくとも以上の工程が順次行われることにより、透明な膜で保護された状態となるため、修復以前のタイル壁面と殆ど変わらず、しかも見た目が良く、且つ、タイル貼り面の全面に対してタイル剥離防止効果と防水効果が同時に得られる施工方法となる。
【0015】
請求項2のようにマスキングテープ(11)に、タイル(1)の中間部に剥離用の折返し部(12)が設けられることにより、誰にでも簡単にマスキングテープ(11)を剥離させることができ、且つ、タイル(1)の表面も作業中に汚れることなく、きれいに維持出来るものとなるため、後作業が簡単になる。
【0016】
請求項3に示すようにアンカーピン(3)にステンレス製を用いることにより、錆の発生が防げるので、長期間に渡って安定したタイル(1)の剥落防止効果が有効に働くものとなり、第1回目の中塗りにゴム鏝を用いることにより、表面に凹凸があってもその凹凸に対応して塗布することが簡単に出来るものとなる。第2回目・第3回目の中塗りに砂骨ローラーを用いることにより、厚く且つ均一できれいな塗布面が得られるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態のひび割れ修復工程を示す説明図である。
図2】本実施形態で用いるマスキングテープの使用状態を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態の剥落防止工法の要部を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態の要部断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態を示す図であり、この図番について説明する。(1)は内外装壁に貼着されたタイルであるが、貼着されたものとしては、タイルに限定されるものではなく、例えば、レンガや石板などでも良い。又、修復用のタイル(1)としては、可撓性を有したウレタン樹脂製のものを用い、且つ、該タイル(1)は撤去したタイル陶片と同形で且つ同じ大きさのものが良い。このタイル(1)には、擬似的に周囲と同化するように表面を着色させる。この時のタイル(1)の表面には、プライマー塗膜と、周囲のタイル陶片と同化するために調合された塗料で塗布した塗膜と、該塗膜の表面に塗布し形成する透明な防護膜とから成る多層膜が設けられている。この多層膜は本発明者が提案した特開2004−332280に於いて形成する多層膜と同じものを設ければ良い。更にタイル(1)の表面には、図2に示すように中間部に剥離用の折返し部(12)を設けたマスキングテープ(11)が貼着されている。この時の折返し部(12)の位置としては、図2(a)のように端部よりも少し中央寄りに設けるか、或いは図2(b)のように端部側に設けておくと、剥離し易いものとなる。又、前記タイル(1)の材質をウレタン樹脂とすることにより、表面に着色する塗料の密着性が極めて良いものとなると共に躯体のひび割れの挙動部に対し、追従性の良いものとなり、より一層タイル(1)のひび割れの防止が可能なものとなる。尚、前記タイル(1)の可撓性としては、弾力性を有するものが特に好ましい。
【0019】
(2)は修復したタイル(1)とタイル(1)との間に軟質の目地材を充填させた目地部である。(3)はステンレス製のアンカーピンであり、該アンカーピン(3)には、外径5mm前後で長さ30〜80mm前後のステンレス製筒状の鞘と、頭付きステンレス製棒状のピンとから成されているものを用いるのが良い。尚、前記ピンの先端は尖り部が設けられ、鞘内部にピンを挿入して行くと、鞘の下部が開く一体型のアンカーピン(3)を用いるのが好ましい。
【0020】
次に本発明のタイルひび割れ修復時に於けるタイル剥落防止及び防水工法を図面に基づいて説明する。先ず、タイルひび割れ修復を図1に示す工程に沿って行う。つまり、図1(a)のようにひび割れが生じた場合には、ひび割れたタイル(1)と、修復作業に必要な最小限のタイル(1)を図1(b)のように剥離して撤去させると共にひび割れに沿って深くUカットし、Uカットした溝にシーリング材を充填させる[図1(b)参照]。この時、躯体側のひび割れの修復時、Uカットせずに直接ひび割れから注入材を注入して、躯体側のコンクリートの奥深くまで注入材を浸透させておくのが良い。前記シーリング材が固化した後、タイル貼り面を平らにして躯体側のひび割れ修復を終了させる。そして、擬似的に周囲と同化するように表面が着色されると共に可撓性を有するタイル(1)を用意し、それを剥離した位置に、弾性を有した接着剤で貼付ける[図1(c)参照]。その後、目地用プライマーを目地部(2)の底面及び貼付けたタイル(1)の側面に塗布し、タイル(1)間に軟質の目地材を図1(d)に示す斜線部分のように注入して充填し、軟質の目地部(2)が形成される。そして、図2に示す折返し部(12)を指で摘まみ、それを引張ってマスキングテープ(11)をタイル(1)から剥がせば、タイル貼り面を清掃しなくても、その表面はきれいであるので、これで修復作業は完了するのである。
【0021】
修復作業終了後、内外装用タイル貼り面の全面に、タイル剥落防止効果及び防水効果を同時に得るための施工を行う。この施工方法を図3図4に基づいて説明する。先ず始めに、タイル貼りの壁面全体に約50cm間隔で縦横にマスキングテープで図3の図中の黒丸で示すようにマーキングする。この時、水性マジックなどの筆記具を使用して、図3の図中の極細線にて目安線を引き、桝目を描く。その桝目の各交点の目地部(2)位置にマーキングしても良い。その後、各マーキング位置にドリルで図4(a)に示すような穴をあけるイ)穴あけ工程が行われる。この時の穴の深さは、アンカーピン(3)の鞘の長さよりも10mm以上深くするのが好ましい。このようにして全ての各マーキング位置に、上記同様にして穴を穿設しておく。
【0022】
穴加工後、アクリルシリコン系樹脂をタイル貼り面の全面に下塗りとしてシーラーを塗布するロ)下塗り工程が行われる。乾燥後、塗布したシーラーの上に、剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第1回目の中塗りを図4(b)のように塗布するハ)第1塗膜形成工程が行われる。この時、ナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂塗料としては、例えば発売元の株式会社ヤグチ技工の商品名プラチナコートを用いるのが好ましい。また前記シーラー塗布する下塗り作業はウールローラーで0.1〜0.15Kg/m塗布するのが好ましく、又、第1回目の中塗りとしては、ナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂をゴム鏝で0.4〜0.6Kg/m塗布するのが好ましい。このゴム鏝を用いることにより、タイル(1)に凹凸があっても均一に塗布することが可能となる。
【0023】
乾燥して第1塗膜が形成された後、第1塗膜を突き抜いてアンカーピン(3)を例えば、図3に示すAからDの穴に挿入すると共にアンカーピン(3)のピンの頭部を打込む二)塗膜固定工程が行われる。この場合、アンカーピン(3)の鞘の下部が拡張してアンカーピン(3)は固定される。またアンカーピン(3)のピンを打込むことによって、形成された第1塗膜の一部が図4(c)のようにアンカーピン(3)と一緒に穴へ引込まれ、第1塗膜が引張られた状態で壁面と固定されるのである。そして図3に示すように全ての穴にアンカーピン(3)を打込む。その後、打込まれたアンカーピン(3)のピンの頭部上面に、目地部(2)と同じ色の無機質の耐候性塗料で図4(d)に示すように塗布されるホ)着色工程を行う。
【0024】
次にナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂で第2回目の中塗りが図4(e)のように塗布される第2塗膜形成工程を行い、乾燥後、同様にして第3回目の中塗りを行うへ)第2・第3塗膜形成工程を行う。この場合、砂骨ローラーを用いて0.6〜0.8Kg/m塗布する。そして透明なアクリル樹脂のトップコートがウールローラーで縦方向と横方向1回ずつ合計で0.2〜0.3Kg/m塗布するト)仕上げ工程を行い、壁面全体のタイル剥落防止工程と防水工程は完了するのである[図4(f)参照]。尚、前記塗膜は乾燥すると透明になるので、この透明度を見て乾燥具合をチェックする。また第2塗膜と第3塗膜を分けずに1回で形成させると、透明度が悪くなってしまう。
【0025】
このように本実施形態の剥落防止材であるアクリル樹脂の透明塗膜は、第1塗膜がアンカーピン(3)によって穴内部に引込まれており、且つ、第2塗膜と第3塗膜は第1塗膜と一体化されているため、剥落防止用の塗膜がアンカーピン(3)を介して壁側としっかりと固定された状態となるため、地震時にタイル(1)の剥落はナイロン繊維入りの強度の強い塗膜によって防止出来るものとなると共にこの塗膜には高い防水性能が期待できるため、従来の如きタイル面のひび割れ,浮き,剥離,目地部のエフロレッセンスの流出,コンクリートの中性化の進行、そして漏水によるさまざまな劣化現象が殆ど防止可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 タイル
11 マスキングテープ
12 折返し部
2 目地部
3 アンカーピン
図1
図2
図3
図4