特許第5746130号(P5746130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746130
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】触媒系
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/24 20060101AFI20150618BHJP
   C07C 67/38 20060101ALI20150618BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20150618BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150618BHJP
【FI】
   B01J31/24 Z
   C07C67/38
   C07C69/24
   !C07B61/00 300
【請求項の数】19
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2012-281721(P2012-281721)
(22)【出願日】2012年12月25日
(62)【分割の表示】特願2006-553662(P2006-553662)の分割
【原出願日】2005年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-63440(P2013-63440A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2012年12月25日
(31)【優先権主張番号】0403592.9
(32)【優先日】2004年2月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500460209
【氏名又は名称】ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】イーストハム、グラハム
(72)【発明者】
【氏名】ティンデール、ニール
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5350592(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系不飽和化合物のカルボニル化を触媒することが可能な触媒系であって、
a)パラジウム金属またはその化合物、
b)二座ホスフィン配位子、および
c)18℃の水溶液中で測定して4未満のpKaを有する酸
を組み合わせることにより得られ、
該配位子と該金属または該金属化合物中の金属との比は、5:1から750:1の範囲内であり、該酸は、該配位子に対して2:1を超えるmol過剰で存在
前記配位子は、以下の一般式(I):
【化1】
[式中、
Arは、任意に置換されていてもよいアリール部分を含み、これに利用可能な隣接する炭素原子の所でリン原子が結合している架橋基であり;
AおよびBはそれぞれ独立に、低級アルキレンを表し;
K、D、EおよびZは、アリール部分(Ar)の置換基であり、それぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27、C(O)SR27または−J−Q(CR13(R14)(R15)CR16(R17)(R18)(ここで、Jは低級アルキレンを表す)を表
すか;K、Z、DおよびEから選択される2個の隣接する基はそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、さらなるフェニル環を形成し、該フェニル環は、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27またはC(O)SR27から選択される1個または複数の置換基により任意に置換されていてもよく;
13からR18はそれぞれ独立に、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
19からR27はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
からR12はそれぞれ独立に、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
、QおよびQ(存在する場合)は、それぞれ独立に、リンを表し、
前記Hetは、4員から12員の環系を表し、該環は、窒素、酸素、イオウおよびこれらの混合物から選択される1個または複数のヘテロ原子を含有し、さらにこれらの環は、二重結合を含まないか1個または複数の二重結合を含み、非芳香族か、部分的に芳香族か、完全に芳香族であってよく、該環系は、単環式、二環式であるか、縮合していてよく;または、前記Hetは、N酸化物を表す。]
を有する、触媒系。
【請求項2】
および/またはQに結合している少なくとも1個の(CR)基、すなわち、CR、CR、CR、CR101112、CR131415またはCR161718は代わりに、基(Ad)で表すこともでき、この際:
Adはそれぞれ独立に、その3級炭素原子のうちのいずれか1つを介してリン原子に結合している任意に置換されていてもよいアダマンチルまたはコングレシル基を表し、該任意の置換は、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27またはC(O)SR27から選択される1個または複数の置換基によるか;Qおよび/またはQの一方または両方、あるいはQ(存在する場合)に結合している両方の(CR)基は、適切なQまたはQ(またはQ)と一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、式:
【化2】
の環系を形成し、
上式中、
49およびR54はそれぞれ独立に、水素、低級アルキルまたはアリールを表し;
50からR53は存在する場合、それぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
Yは、酸素、イオウまたはN−R55を表し、R55は存在する場合、水素、低級アルキルまたはアリールを表す、請求項に記載の触媒系。
【請求項3】
前記配位子は、
(Ad)(CR−A−(K,D)Ar(E,Z)−B−Q(Ad)(CR
と表され、上式中、Ar、A、B、K、D、EおよびZ、Q、QらびにRからR27は請求項と同様に定義され、
SおよびUは0、1または2であるが、ただし、S+U≧1であり;
TおよびVは0、1または2であるが、ただし、T+V≦3である、請求項またはに記載の触媒系。
【請求項4】
エチレン系不飽和化合物のカルボニル化を触媒することが可能な触媒系であって、
a)パラジウム金属またはその化合物、
b)二座ホスフィン配位子、および
c)18℃の水溶液中で測定して4未満のpKaを有する酸
を組み合わせることにより得られ、
該配位子と該金属または該金属化合物中の金属との比は、5:1から750:1の範囲内であり、該酸は、該配位子に対して2:1を超えるmol過剰で存在し、
前記配位子は、以下の一般式(III):
【化3】
[式中、
およびAは、それぞれ独立に、C−C10アルキレンを表し;
は、水素、C−C10アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29
−C(O)SR30、および−CFからなる群から選択され;
は、水素、C−C10アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、および−CFからなる群から選択され;
は、水素、C−C10アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、および−CFからなる群から選択され;
あるいは、DおよびEの両方は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されていてもよいフェニル環を形成し;
は、CR(R)(R)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、Xは、CR(R)(R)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、XおよびXはそれらが結合しているQと一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、もしくはXおよびXはそれらが結合しているQと一緒になって、式IIIaの環系:
【化4】
を形成し;
は、CR(R)(R)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、Xは、CR10(R11)(R12)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、XおよびXはそれらが結合しているQと一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、XおよびXはそれらが結合しているQと一緒になって、式IIIbの環系:
【化5】
を形成し、
およびQは、それぞれ独立に、リンを表し;
Mは、Cr、Fe、Co、Ru、もしくはOs、またはそれらの金属カチオンを表し;
は、任意に置換されていてもよいシクロペンタジエニル、インデニルまたはアリール基を表し;
は、水素、C−C10アルキル、アルキルアリール、ハロ、CO、P(R43)(R44)R45またはN(R46)(R47)R48からそれぞれ独立に選択される1個または複数の配位子を表し;
からR12は存在する場合、それぞれ独立に、水素、C−C10アルキル、アリール、ハロまたはHetを表し;
19からR30およびR43からR48は存在する場合、それぞれ独立に、水素、C−C10アルキル、アリールまたはHetを表し;
49、R54およびR55は存在する場合、それぞれ独立に、水素、C−C10アルキルまたはアリールを表し;
50からR53は存在する場合、それぞれ独立に、水素、C−C10アルキル、アリールまたはHetを表し;
およびYは存在する場合、それぞれ独立に、酸素、イオウまたはN−R55を表し;
n=0または1であり;
m=0から5であるが;
ただし、n=1である場合、mは0に等しく、nが0に等しい場合、mは0に等しくなく、
前記Hetは、4員から12員の環系を表し、該環は、窒素、酸素、イオウおよびこれらの混合物から選択される1個または複数のヘテロ原子を含有し、さらにこれらの環は、二重結合を含まないか1個または複数の二重結合を含み、非芳香族か、部分的に芳香族か、完全に芳香族であってよく、該環系は、単環式、二環式であるか、縮合していてよく;または、前記Hetは、N酸化物を表す。]
を有する、触媒系。
【請求項5】
アダマンチルは、非置換アダマンチル、または1個もしくは複数の非置換C−Cアルキル置換基で置換されているアダマンチル、またはそれらの組合せを表す、請求項のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項6】
2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基またはその誘導体
は、非置換の2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基、または1個もしくは複数の非置換C−Cアルキル置換基で置換されている2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基、またはその組合せを表す、請求項のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項7】
2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基またはその誘導体は、該2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基骨格中に1個もしくは複数の酸素原子を含む、請求項のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項8】
コングレシルは、非置換コングレシルを表す、請求項のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項9】
前記酸と前記配位子との比は、5:1から95:1の範囲内である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項10】
前記酸と前記金属とのモル比は、10:1から75000:1の範囲内である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項11】
前記パラジウムは、金属の形態である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項12】
前記触媒系は、液体反応媒質中に、液体担体に溶解されているポリマー分散剤を含み、該ポリマー分散剤は、触媒系の金属または金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を液体担体内で安定化させることが可能である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項13】
エチレン系不飽和化合物と、一酸化炭素およびヒドロキシル基含有化合物とを、請求項1〜12のいずれか一項に記載の触媒系の存在下で接触させる工程を含む、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する方法。
【請求項14】
エチレン系不飽和化合物のカルボニル化を1種または複数の非プロトン性溶剤中で行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
適切なエチレン系不飽和化合物には、C30までの、すなわち、2から30個の炭素原子を含み、直鎖または分枝鎖、環式または非環式または部分環式であってよく、二重結合が炭素鎖の任意の適切な位置を占めてよく、それらのすべての立体異性体も包含するエテン、プロペン、ヘキセン、ビニル化合物、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセンが含まれる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
エチレン系不飽和化合物は、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、トリイソブチレン、トリプロピレン、内部C14オレフィン、内部C15−C18オレフィン、1,5−シクロオクタジエン、シクロドデセン、ペンテン酸メチル、ペンテンニトリル、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−ペンタジエン、および1,3−ヘキサジエンから選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
1種または複数の反応成分と、請求項1〜12のいずれか一項に記載の触媒系とを含む反応媒質。
【請求項18】
媒質中に存在する遊離酸の量は、500ppmを上回る、請求項17に記載の反応媒質
【請求項19】
a)パラジウム金属またはその化合物、
b)二座ホスフィン配位子、および
c)18℃の水溶液中で測定して4未満のpKaを有する酸
を組み合わせることにより得られる系の、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する際の触媒としての使用方法であって
前記系が、請求項1〜12のいずれか一項に記載の触媒系である、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の触媒系、新規のカルボニル化反応媒質、および新規の触媒系を使用してエチレン系不飽和化合物をカルボニル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールまたは水と、VIII族金属、例えば、パラジウムと、ホスフィン配位子、例えばアルキルホスフィン、シクロアルキルホスフィン、アリールホスフィン、ピリジルホスフィンまたは二座ホスフィンとを含む触媒系の存在下で、一酸化炭素を使用して、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化することは、数多くの欧州特許および特許出願、例えば、特許文献1−13に記載されている。特に、特許文献11,12,13は、二座ホスフィン配位子が比較的迅速な反応速度の達成を可能にする触媒系をもたらすことを開示している。
【0003】
特許文献14は、アリール部分に位置する利用可能な隣接炭素原子を介してリン原子に結合している、任意に置換されていてもよいアリール部分の形態の架橋基を開示している。このような配位子は、比較的安定で、以前に開示されたものよりもかなり速い反応速度をもたらし、エチレンのカルボニル化に関して不純物をほとんどもたらさないか、全くもたらさない。上述の配位子中のリン原子はそれぞれさらに、2個の3級炭素原子に結合している。
【0004】
しかしながら、特許文献14に記載されているものなどの従来の金属触媒反応は、パラジウム化合物が還元されてパラジウム金属になるので、連続運転期間の経過に伴い触媒が失活化する傾向を有するという欠点を受けやすく、このことは、方法の採算性に寄与する。特許文献15は、反応媒質中でポリマー分散剤などの安定化化合物を使用して、触媒系から失われた金属の回収を改善することを介して、この問題に取り組んでいる。
【0005】
カルボニル化方法の間に適切な安定性を示し、比較的速い反応速度の達成を可能にする触媒系が開発されているが、未だ、改善された触媒系が必要とされている。相応して、本発明の目的は、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化するために改善された触媒を提供することである。
【0006】
非特許文献1は、例えばより多い配位子を加えることにより、配位子濃度を相対的に上昇させると、生産性に有害作用が生じることを示唆している。同様の結果が、非特許文献2および非特許文献3に報告されている。
【0007】
さらに、特許文献16には、ペンテンニトリルをカルボニル化する方法が記載されているが、比較的高い酸:パラジウム比には欠点が伴うことが教示されている。著者らは、酸の高濃度条件は腐食性で、酸およびオレフィン系化合物での4級化が原因でより高い配位子分解が起こるために、この欠点が生じると述べている。
【0008】
特許文献17は、ホスフィンベースの二座配位子を使用して、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する方法を開示している。しかしながら、この開示は、比較的低い酸レベルを使用して、低い酸:配位子値を生じさせることを対象としている。さらに、配位子:金属比も低い。特許文献18も同様に、低い酸:配位子、および配位子:金属比を開示している。
【0009】
特許文献19は、パラジウム化合物および二座リン配位子を含む触媒系を開示している
。しかしながら、1:1未満の酸:配位子比が教示されている。
最後に、特許文献16は、ペンテンニトリルをカルボニル化することによる5−シアノ吉相酸の調製法を開示している。この開示は、高い酸濃度を使用することの欠点を指摘しており、比較的低い酸レベルを使用することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0055875号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第04489472号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0106379号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0235864号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0274795号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0499329号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0386833号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0441447号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0489472号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0282142号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0227160号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0495547号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0495548号明細書
【特許文献14】国際公開第96/19434号パンフレット
【特許文献15】国際公開第01/10551号パンフレット
【特許文献16】国際公開第01/72697号パンフレット
【特許文献17】国際公開第01/68583号パンフレット
【特許文献18】国際公開第03/040159号パンフレット
【特許文献19】国際公開第98/45040号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Mol.Cat.A204−205(2003年)295−303頁
【非特許文献2】J.Mol.Cat.A.Chem.110(1996年)13−23頁
【非特許文献3】J.Mol.Cat.A.Chem.151(2000年)47−59頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、配位子、および酸のレベルが比較的高いが、上に挙げた先行技術の欠点を、少なくともある程度は処理および緩和した触媒系を確立することであり、このことは、本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、添付請求項に記載の触媒系、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する方法、反応媒質および使用方法が提供される。
本発明の好ましい形態は、従属請求項および以下の記載から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】酸対配位子モル比に対するTONを示すグラフ。
図2】反応器中に遊離で存在するメタンスルホン酸の量に対するTONを示すグラフ。
図3】メタンスルホン酸の量に対する溶液中のPd量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様では、本発明は、エチレン系不飽和化合物のカルボニル化を触媒することが可能な触媒系を提供し、この触媒系は、
a)VIB族もしくはVIIIB族の金属またはそれらの化合物、
b)二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子、好ましくは二座ホスフィン配位子、および
c)酸
を組み合わせることにより得られ、その際、該配位子は、該金属または該金属化合物中の該金属に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在し、該酸は、該配位子に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在する。
【0016】
通常、成分b)は、二座ホスフィン、アルシンまたはスチビンである。
適切には、触媒系の成分a)からc)をすべて、カルボニル化を行う予定の反応容器にその場で加えることができる。あるいは、成分a)からc)を任意の順序で連続して加え、触媒系を生じさせるか、何らかの特定の順序で、容器に直接に、または容器の外側で、次いで容器に加えることができる。例えば、初めに、酸成分c)を二座配位子成分b)に加えて、プロトン化配位子を生じさせ、次いで、このプロトン化配位子を、金属またはその化合物(成分a))に加えて、触媒系を生じさせることができる。あるいは、配位子成分b)と金属またはその化合物(成分a))とを混合して、キレート化金属化合物を生じさせ、次いで、酸(成分c))を加えることもできる。あるいは、任意の2種の成分を一緒に反応させて、中間成分を生じさせ、次いでこれを反応容器に加え、第3の成分を加えるか、または第3の成分と初めて反応させてから反応容器に加えるかすることができる。
【0017】
このように、本発明の対象は、二座配位子、および酸の相対モル濃度が、以前に認識されていたよりも過剰なレベルで存在しており、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する際にその触媒系を使用すると、意外で予期せぬ利点と、先行技術系の欠点の緩和または少なくとも多少の低減とをもたらす触媒系である。特に、本発明の触媒系を使用すると少なくとも、より系が安定し、反応速度が上昇し、エチレン系不飽和化合物のカルボニル化反応におけるターンオーバー数が改善される。
【0018】
上述のように、配位子は、配位子と金属との比(すなわち、成分b)と成分a)との比)が少なくとも2:1モル比であるような量で、触媒系またはその前駆体中に存在する。好ましくは、配位子と金属との比は、2:1モル比を上回り、さらに好ましくは、2:1から1000:1の範囲内、一層好ましくは2.5:1から1000:1の範囲内、特に好ましくは3:1から1000:1の範囲内、さらに特に好ましくは5:1から750:1の範囲内、さらに好ましくは7:1から1000:1の範囲内、特に8:1から900:1の範囲内、さらにより好ましくは10:1から500:1の範囲内、一層特に好ましくは20:1から400:1の範囲内、一層好ましくは50:1から250:1の範囲内、最も好ましくは50:1を超える範囲で、例えば、51:1以上、さらに特には51:1から250:1または1000:1である。あるいは、上述の比は、15:1から45:1、好ましくは20:1から40:1、さらに好ましくは25:1から35:1の範囲内であってよい。
【0019】
上述のように、酸は、酸と配位子との(すなわち成分c)と成分b)との)比が少なくとも2:1のモル比であるような量で触媒系またはその前駆体中に存在する。好ましくは、酸と配位子との比は、2:1モルを上回り、さらに好ましくは2:1から100:1の範囲内、一層好ましくは4:1から100:1の範囲内、特にさらに好ましくは5:1から95:1の範囲内、なおさらに好ましくは5:1から95:1の範囲内、まださらに好
ましくは5:1から75:1の範囲内、さらに好ましくは10:1から50:1の範囲内、さらに一層好ましくは20:1から40:1の範囲内、特にさらに好ましくは20:1を超え40:1までの範囲内(例えば、25:1から40:1または25:1から30:1未満)、さらに好ましくは、30:1を超え、適切には、上述の上限の範囲内(例えば、30:1から40:1または50:1など)、またはさらに好ましくは35:1を超え、なおさらに好ましくは37:1を超え、適切には上述の上限の範囲内である。このパラグラフに記載の各範囲を、上述に記載の各配位子:金属比、すなわち、成分b)と成分a)との比に関して使用することができる。
【0020】
「酸」とは、酸またはその塩を意味し、酸との言及は、相応に解釈されるべきである。上述の配位子と金属との比、および酸と配位子との比の範囲内で処理する利点は、金属のターンオーバー数(TON)が上昇することにより示されるように、触媒系の安定性が改善される点で明白である。触媒系の安定性が改善されることにより、カルボニル化反応スキームにおける金属の利用が最小限に維持される。
【0021】
理論に結びつけることを望むものではないが、上述の特定の比の範囲内で処理することにより、意外にも、触媒系の配位子成分が偶然の空気酸化(反応系への何らかの空気進入がある場合)に対して保護され、触媒系全体の安定性が改善されて、触媒系の金属成分の利用が最少に抑えられることが判明したと考えられる。さらに、反応の進行反応速度が驚くほど改善される。
【0022】
実際には、酸のレベルは、使用される特定の二座配位子で、酸のレベルがホスフィン、アルシンまたはスチビンが十分にプロトン化されるようなレベルであるべきである。したがって、改善効果を示すためには、配位子のレベルは、配位子:金属モル比で示して、最少レベルを上回るべきであり、酸のレベルは、酸:配位子モル比で示して、プロトン化を促進するために存在する配位子のレベルに関して最少レベルを上回るべきである。
【0023】
好ましくは、酸は、酸と金属との(すなわち成分c)と成分a)との)モル比が少なくとも4:1、さらに好ましくは4:1から100000:1、一層好ましくは10:1から75000:1、よりさらに好ましくは20:1から50000:1、なおさらに好ましくは25:1から50000:1、なおさらに好ましくは30:1から50000:1、さらに一層好ましくは40:1から40000:1、なおさらに好ましくは100:1から25000:1、さらに好ましくは120:1から25000:1、さらに好ましくは140:1から25000:1、なおさらに好ましくは200:1から25000:1、さらに好ましくは550:1から20000:1または2000:1を超え20000:1までであるような量で、触媒系またはその前駆体中に存在する。あるいは、上述の比は、125:1から485:1、さらに好ましくは150:1から450:1、一層好ましくは175:1から425:1、なお一層好ましくは200:1から400:1、さらに好ましくは225:1から375:1の範囲内であってよい。このパラグラフに記載のこれらの範囲はそれぞれ、上述で開示した配位子と金属との比、すなわち、成分b)と成分a)との比の範囲および/または上述で開示した酸と配位子との比、すなわち成分c)と成分b)との比の範囲のそれぞれに関して使用することができる。
【0024】
疑義を回避するために、比および比範囲はすべて、下記でさらに詳細に記載される配位子実施形態のすべてに適用される。
本発明の1実施形態では、二座ホスフィン配位子は、一般式(I)を有する:
【0025】
【化1】
【0026】
[式中、
Arは、任意に置換されていてもよいアリール部分を含み、これに利用可能な隣接する炭素原子の所でリン原子が結合している架橋基であり;
AおよびBはそれぞれ独立に、低級アルキレンを表し;
K、D、EおよびZは、アリール部分(Ar)の置換基であり、それぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27、C(O)SR27または−J−Q3(CR13(R14)(R15)CR16(R17)(R18)(ここで、Jは低級アルキレンを表す)を表すか;K、Z、DおよびEから選択され
る2個の隣接する基はそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、さらなるフェニル環を形成し、これは、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27またはC(O)SR27から選択される1個または複数の置換基により任意に置換されていてもよく;
13からR18はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し、好ましくは、それぞれ独立に低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
19からR27はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
1からR12はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し、
好ましくはそれぞれ独立に、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
1、Q2およびQ3(存在する場合)は、それぞれ独立に、リン、ヒ素またはアンチモ
ンを表し、後者2種の場合には、ホスフィンまたはリンに関する上述の言及は、それに応じて修正されるが、好ましくはQ1およびQ2の両方はリンを表し、さらに好ましくはQ1
、Q2およびQ3はすべて(存在する場合)、リンを表す]。
【0027】
適切には、本発明の二座ホスフィンは好ましくは、VIB族またはVIIIB族金属もしくはその化合物、さらに好ましくは好ましいパラジウムに二座配位しうるべきである。
好ましくは、K、D、EまたはZが−J−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表す場合、K、D、EまたはZはそれぞれ、AまたはBが結合しているア
リール炭素と隣接するアリール炭素の所に位置するか、そのように隣接していなければ、それ自体J−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表す残りのK、
D、EまたはZ基に隣接している。
【0028】
この実施形態の範囲内の二座配位子の非限定的で具体的な例には、次のものが含まれる:1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス−(ジ−t−ペンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ナフタレン。しかしながら、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することな
く、他の二座配位子を考えることもできることは理解されるであろう。
【0029】
本明細書で使用する場合、「Ar」または「アリール」との用語には、フェニルおよびナフチルなどの5員から10員、好ましくは6員から10員の炭素環芳香族基が含まれ、これらの基は任意に、K、D、EまたはZに加えて、アリール、低級アルキル(これらのアルキル基自体も本明細書で定義されるように任意に置換されていてよいか、ターミネートされていてよい)、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27またはC(S)NR2526(ここで、R19からR27はそれぞれ独立に、水素、アリールまたは低級アルキル(このアルキル基自体も任意に置換されていてもよいし、本明細書で定義されるようにターミネートされていてもよい)を表す)から選択される1個または複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。さらに、アリール部分は、縮合多環式基、例えば、ナフタレン、ビフェニレンまたはインデンであってもよい。
【0030】
「VIB族またはVIIIB族の金属」との用語には、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Os、Ir、PtおよびPdなどの金属が含まれる。好ましくは、金属は、Ni、PtおよびPdから選択される。さらに好ましくは、金属はPdである。疑義を回避するために、VIB族またはVIIIB族金属と言えば、最新の周期表名称では6、8、9および10族を含むと解されるべきである。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「Het」との用語には4員から12員、好ましくは4員から10員の環系が含まれ、これらの環は、窒素、酸素、イオウおよびこれらの混合物から選択される1個または複数のヘテロ原子を含有し、さらにこれらの環は、1個または複数の二重結合を含んでもよいか、適切に、非芳香族か、部分的に芳香族か、完全に芳香族であってよい。環系は、単環式、二環式であるか、縮合していてよい。本明細書で同定されている各「Het」基は任意に、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、低級アルキル(このアルキル基自体も任意に置換されていてよいか、本明細書で定義されるようにターミネートされていてよい)、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27またはC(S)NR2526(ここで、R19からR27はそれぞれ独立に、水素、アリールまたは低級アルキル(このアルキル基自体も任意に置換されていてよいか、本明細書で定義されるようにターミネートされていてよい)を表す)から選択される1個または複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。したがって「Het」との用語には、任意に置換されていてもよいアゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリルおよびピペラジニルなどの基が含まれる。Hetでの置換は、Het環の炭素原子の所、または適切な場合には、1個または複数のヘテロ原子の所であってよい。
【0032】
「Het」基は、N酸化物の形態であってもよい。
本明細書中で使用する場合、「低級アルキル」との用語は、C1からC10アルキルを意
味し、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチル基が含まれる。他に記載のない限り、アルキル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合には、直鎖または分枝鎖であってよく、飽和または不飽和であってよく、環式、非環式または部分環式/非環式であってよく、かつ/またはハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27、C(S)NR2526、アリールまたはHet(ここで、R19からR27はそれぞれ独立に、水素、アリールまたは低級アルキル)から選択される1個または複数の置換基によって置換またはターミネートされていてもよく、かつ/または1個または複数の酸素
またはイオウ原子により、またはシラノまたはジアルキルシリコンにより中断されていてもよい。
【0033】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、K、
D、EおよびZが表してよく、それによってアリールおよびHetが任意に置換されていてもよい低級アルキル基またはアルキル基は、十分な数の炭素原子が存在する場合には、直鎖または分枝鎖であってよく、飽和または不飽和であってよく、環式、非環式または部分環式/非環式であってよく、かつ/または1個または複数の酸素またはイオウ原子により、またはシラノまたはジアルキルシリコンにより中断されていてもよく、および/またはハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27、C(S)NR2526、アリールまたはHet(ここで、R19からR27はそれぞれ独立に、水素、アリールまたは低級アルキルを表す)から選択される1個または複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0034】
同様に、本明細書で使用する場合、式Iの化合物中に存在するA、BおよびJ(存在する場合)が表す「低級アルキレン」との用語には、基の少なくとも2点で他の部分で結合していて、他の点では「低級アルキル」と同様に定義されるC1からC10基が含まれる。
【0035】
上述の基がそれにより置換されているか、ターミネートされるハロ基には、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが含まれる。
本明細書中の式の化合物がアルケニル基を含む場合、シス(E)およびトランス(Z)異性が生じることがある。本発明は、本明細書で定義されている式の化合物の個々の立体異性体および適切な場合には、その個々の互変異性形態を、それらの混合物と共にすべて含む。ジアステレオ異性体もしくはシスおよびトランス異性体の分離は、慣用の技術により、例えば、いずれか1式の化合物もしくはそれらの適切な塩または誘導体の立体異性体混合物の分別晶出、クロマトグラフィーまたはH.P.L.C.により達成することができる。いずれか1式の化合物の個々の鏡像異性体を、対応する光学的に純粋な中間体から調製することもできるし、適切なキラル支持体を使用する対応するラセミ体のH.P.L.C.または対応するラセミ体と適切な光学活性な酸または塩基とを適切に反応させることにより生じるジアステレオ異性体塩の分別晶出などによる分離により調製することもできる。
【0036】
立体異性体はすべて、本発明の方法の範囲内に包含される。
当業者であれば、式Iの化合物は、VIB族もしくはVIIIB族の金属またはその化合物と配位する配位子として機能して、本発明の触媒系をもたらしうることを理解するであろう。通常、VIB族もしくはVIIIB族金属またはその化合物は、式Iの化合物の1個または複数のリン、ヒ素および/またはアンチモン原子に配位する。
【0037】
好ましくは、R1からR18はそれぞれ独立に、低級アルキルまたはアリールを表す。さ
らに好ましくは、R1からR18はそれぞれ独立に、C1からC6アルキル、C1−C6アルキ
ルフェニル(ここでフェニル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい)またはフェニル(ここでフェニル基は本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい)を表す。さらに好ましくは、R1からR18はそれぞれ独立に、本明
細書に定義されているように任意に置換されていてもよいC1からC6アルキルを表す。さらに好ましくは、R1からR18はそれぞれ、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロ
ピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルなどの非置換のC1からC6アルキルを表す。
【0038】
あるいは、またはそれに加えて、R1からR3、R4からR6、R7からR9、R10からR12
、R13からR15またはR16からR18基は一緒になって、それぞれ独立に、1−ノルボルニルまたは1−ノルボルナジエニルを形成してもよい。複合基の他の例には、R1−R18
間で生じる環式構造が含まれる。あるいは、1個または複数の基は、配位子が結合している固相を表してもよい。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態では、R1、R4、R7、R10、R13およびR16はそれぞ
れ、本明細書で定義されるのと同様の低級アルキル、アリールまたはHet基を表し、R2、R5、R8、R11、R14およびR17はそれぞれ、本明細書で定義されるのと同様の低級
アルキル、アリールまたはHet基を表し、R3、R6、R9、R12、R15およびR18はそ
れぞれ、本明細書で定義されるのと同様の低級アルキル、アリールまたはHet基を表す。さらに好ましくは、R1、R4、R7、R10、R13およびR16はそれぞれ、メチル、エチ
ル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはシクロヘキシルなどのC1−C6アルキル、特に非置換C1−C6アルキルを表し;R2、R5、R8、R11、R14およびR17はそれぞれ独立に、上述と同様に定義さ
れるC1−C6アルキルを表し;R3、R6、R9、R12、R15およびR18はそれぞれ独立に
、上述と同様に定義されるC1−C6アルキルを表す。例えば、R1、R4、R7、R10、R13およびR16はそれぞれ、メチルを表し;R2、R5、R8、R11、R14およびR17はそれぞれ、エチルを表し;R3、R6、R9、R12、R15およびR18はそれぞれ、n−ブチルまた
はn−ペンチルを表す。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態では、R1からR18基はそれぞれ、本明細書で定義され
るのと同様の低級アルキル、アリールまたはHet基を表す。好ましくは、R1からR18
はそれぞれ、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルなどのC1−C6アルキル基、特に非置換C1−C6アルキルを表す。最も好ましくは、R1からR18はそれぞれ、メチル
を表す。
【0041】
式Iの化合物では好ましくは、Q1、Q2およびQ3(存在する場合)は、同じである。
最も好ましくは、Q1、Q2およびQ3(存在する場合)はそれぞれ、リンを表す。
好ましくは、式Iの化合物中、A、BおよびJ(存在する場合)はそれぞれ独立に、C1からC6アルキレンを表し、これらは本明細書で定義されているように、例えば低級アルキル基で置換されていてもよい。好ましくは、A、BおよびJ(存在する場合)が表す低級アルキレン基は、非置換である。A、BおよびJが独立に表す特に好ましい低級アルキレンは、−CH2−または−C24−である。最も好ましくは、A、BおよびJ(存在す
る場合)はそれぞれ、本明細書で定義されるのと同様の低級アルキレン、特に−CH2
を表す。
【0042】
好ましくは、式Iの化合物中、K、D、EまたはZが−J−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表さない場合、K、D、EまたはZは、水素、低級アル
キル、フェニルまたは低級アルキルフェニルを表す。さらに好ましくは、K、D、EまたはZは、水素、フェニル、C1−C6アルキルフェニルまたはC1−C6アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルを表す。最も好ましくは、K、D、EまたはZは、水素を表す。
【0043】
好ましくは、式Iの化合物中、K、D、EおよびZがそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成しない場合、K、D、EおよびZはそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、フェニルまたは低級アルキルフェニルを表す。さらに好ましくはK、D、EおよびZはそれぞれ独立に、水素、フェニル、C1−C6アルキルフェニルまたはC1−C6アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルを表す。さらに好ましくは、K、D、EおよびZは同じ置換基を表す。最も好
ましくは、これらは水素を表す。
【0044】
好ましくは、式Iの化合物中、K、D、EまたはZが−J−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表さず、K、D、EおよびZがそれらが結合しているア
リール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成しない場合、K、D、EおよびZはそれぞれ、本明細書で定義されるのと同様の水素、低級アルキル、アリールまたはHetから選択される同じ基を表し;特に、水素またはC1−C6アルキル(さらに好ましくは非置換のC1−C6アルキル)、特に水素を表す。
【0045】
好ましくは、式Iの化合物中、K、D、EおよびZのうちの2個がそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成する場合、このフェニル環は、アリール、低級アルキル(このアルキル基はそれ自体、本明細書で定義されるように置換またはターミネートされていてもよい)、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR27、C(O)SR27またはC(S)NR2526(ここで、R19からR27はそれぞれ独立に、水素または低級アルキル(このアルキル基はそれ自体、本明細書で定義されるように置換またはターミネートされていてもよい)から選択される1個または複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。さらに好ましくは、このフェニル環は、置換基によって置換されていない。すなわち、水素原子のみを有する。
【0046】
式Iの好ましい化合物には、式中、
AおよびBはそれぞれ独立に非置換のC1からC6アルキレンを表し;
K、D、EおよびZはそれぞれ独立に、水素、C1−C6アルキル、フェニル、C1−C6アルキルフェニルまたは−J−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18
を表し、ここで、Jは、非置換のC1からC6アルキレンを表すか;K、D、ZおよびEのうちの2個がそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成し、そのフェニル環は低級アルキル、フェニルまたは低級アルキルフェニルから選択される1個または複数の置換基により任意に置換されていてもよい;
ものが含まれる。
【0047】
1からR18はそれぞれ独立に、C1からC6アルキル、フェニルまたはC1からC6アル
キルフェニルを表す。
さらに好ましい式Iの化合物には、式中:
AおよびBは両方とも、−CH2−またはC24、特にCH2を表し;
K、D、EおよびZはそれぞれ独立に、水素、C1−C6アルキルフェニルまたはC1
6アルキルまたは−J−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表し、ここで、Jは、Aと同じであるか;K、D、EおよびZのうちの2個がそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、非置換のフェニル環を形成し;
1からR18はそれぞれ独立に、C1からC6アルキルを表す
ものが含まれる。
【0048】
さらに好ましい式Iの化合物には、式中:
1からR18は同じであり、それぞれC1からC6アルキル、特にメチルを表す
ものが含まれる。
【0049】
さらに好ましい式Iの化合物には、式中:
K、D、ZおよびEはそれぞれ独立に、水素またはC1−C6アルキルからなる群から選択され、特に、K、D、ZおよびEはそれぞれ、同じ基を表し、特に、K、D、ZおよびEはそれぞれ、水素を表すか;または
Kは、−CH2−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)を表し、D、
ZおよびEはそれぞれ独立に、水素またはC1からC6アルキルからなる群から選択され、特に、DおよびEは両方とも同じ基を表し、特に、D、ZおよびEは水素を表す
ものが含まれる。
【0050】
特に好ましい式Iの化合物には、式中:
1からR12はそれぞれ同じで、メチルを表し;
AおよびBは同じで、−CH2−を表し;
K、D、ZおよびEは同じで、水素を表す
ものが含まれる。
【0051】
さらに他の実施形態では、Q1および/またはQ2に結合している少なくとも1個の(CR)基、すなわちCR123、CR456、CR789またはCR1011
12は代わりに、基(Ad)で表すこともでき、この際:
Adはそれぞれ独立に、その3級炭素原子のうちのいずれか1つを介してリン原子に結合している任意に置換されていてもよいアダマンチルまたはコングレシル基を表し、任意の置換は、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27またはC(O)SR27から選択される1個または複数の置換基によるか;Q1および/
またはQ2の一方または両方、あるいはQ3(存在する場合)に結合している両方の(CR)基は、適切なQ1またはQ2(またはQ3)と一緒になって、任意に置換され
ていてもよい2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、式:
【0052】
【化2】
【0053】
の環系を形成し、
上式中、
49およびR54はそれぞれ独立に、水素、低級アルキルまたはアリールを表し;
50からR53は存在する場合、それぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
Yは、酸素、イオウまたはN−R55を表し、R55は存在する場合、水素、低級アルキルまたはアリールを表す。
【0054】
この実施形態では、式Iは、
(Ad)S(CR789T2−A−(K,D)Ar(E,Z)−B−Q1(Ad)u(CR123v
と表すことができ、上式中、Ar、A、B、K、D、EおよびZ、Q1、Q2およびQ3
らびにR1からR27は上述と同様に定義されるが、ただし、K、D、EおよびZは、−J
−Q3(CR13(R14)(R15))CR16(R17)(R18)の代わりに−J−Q3(Ad)w(CR13(R14)(R15xを表してもよく、Adは、上述と同様に定義され、
SおよびUは0、1または2であるが、ただし、S+U≧1であり;
TおよびVは0、1または2であるが、ただし、T+V≦3であり;
WおよびXは0、1または2である。
【0055】
少なくとも1個の(Ad)基が存在する本発明の実施形態にすべて等しく当てはまる上述で挙げたR1からR18、Q1からQ3、A、B、J(存在する場合)、K、D、Eまたは
Z、R19からR27での好ましい実施形態に加えて、以下も当てはまる。
【0056】
式Iのさらに好ましい化合物には、式中:
AおよびBは両方とも、−CH2−または−C24−、特に−CH2−を表し;
K、D、EおよびZはそれぞれ独立に、水素、C1−C6アルキルフェニルまたはC1
6アルキルまたは−J−Q3(Ad)w(CR13(R14)(R15))xを表し、ここで、Jは、Aと同様であるか;K、D、EおよびZのうちの2個がそれらが結合しているアリール環の炭素原子と一緒になって、非置換のフェニル環を形成し;
1からR3、R7からR9およびR13からR15(存在する場合)はそれぞれ独立に、C1
からC6アルキルを表し、Q1およびQ2に結合している(Ad)基の全数は、≧3である
、すなわち、S+U≧3であり、WおよびX=0、1または2である
ものが含まれる。
【0057】
式Iのさらに好ましい化合物には、式中:
1からR3、R7からR9およびR13からR15(存在する場合)は同じで、それぞれC1
からC6アルキル、特にメチルを表し、Q1およびQ2に結合している(Ad)基の全数は
、≧3である、すなわち、S+U≧3である
ものが含まれる。
【0058】
式Iのさらに好ましい化合物には、式中:
K、D、ZおよびEはそれぞれ独立に、水素またはC1からC6アルキルからなる群から選択され、特に、K、D、ZおよびEはそれぞれ、同じ基を表し、特に、K、D、ZおよびEは水素を表すか;または
Kは、−CH2−Q3(Ad)w(CR13(R14)(R15xを表し、D、ZおよびEはそれぞれ独立に、水素またはC1からC6アルキルからなる群から選択され、特に、DおよびEは両方、同じ基を表し、特に、D、ZおよびEは水素を表し、ここで、WおよびX=0、1または2である
ものが含まれる。
【0059】
式Iの特に好ましい化合物には、式中:
1からR3およびR7からR9はそれぞれ同じで、メチルを表し、Q1およびQ2に結合している(Ad)基の全数は、2である、すなわち、S+U=2であり;
AおよびBは同じで、−CH2−を表し;
K、D、ZおよびEは同じで、水素を表す
ものが含まれる。
【0060】
式Iの特に好ましい化合物には、Adが同じ位置でそれぞれQ1またはQ2に結合しているものが含まれる。好ましくは、S≧1およびU≧1であり、さらに好ましくはS=2およびU≧1またはその逆であり、最も好ましくはSおよびUは2であるが、この際、Sは、Q2に結合している(Ad)基の数であり、Uは、Q1に結合している(Ad)基の数である。
【0061】
この実施形態の範囲内の二座配位子の具体的ではあるが非限定的な例には、次のものが含まれる:1,2ビス(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2ビス(ジ−5−t−
ブチルアダマンタイルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2ビス(1−アダマンチルt−ブチル−ホスフィノメチル)ベンゼン、1,2ビス(ジ−1−ジアマンタンホスフィノメチル)ベンゼン、1−[(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ジ−tブチルホスフィノメチル)]ベンゼン、1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ジコングレシルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)−2−(ホスファ−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(ジアダマンチルホスフィノメチル)−2−(ホスファアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン、1−(t−ブチルアダマンチル)−2−(ジ−アダマンチル)−(ホスフィノメチル)ベンゼンおよび1−[(P−(2,2,6,6,−テトラ−メチルホスフィナン−4−オン)ホスフィノメチル)]−2−(ホスファ−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン。しかしながら、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、他の二座配位子も考えられることを理解されるであろう。
【0062】
さらに他の実施形態では、二座ホスフィン配位子は、一般式(III)を有する:
【0063】
【化3】
【0064】
[式中、
1およびA2ならびにA3、A4およびA5(存在する場合)は、それぞれ独立に、低級
アルキレンを表し;
1は、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19
−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF3また
は−A3−Q3(X5)X6からなる群から選択され;
1は、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19
−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF3また
は−A4−Q4(X7)X8からなる群から選択され;
1は、水素、低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19
−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF3また
は−A5−Q5(X9)X10からなる群から選択され;
あるいは、D1およびE1の両方は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されていてもよいフェニル環を形成し;
1は、CR1(R2)(R3)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、X2は、CR4
(R5)(R6)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、X1およびX2はそれらが結合しているQ2と一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリシクロ
[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、もしくはX1
よびX2はそれらが結合しているQ2と一緒になって、式IIIaの環系:
【0065】
【化4】
【0066】
を形成し;
3は、CR7(R8)(R9)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、X4は、CR10(R11)(R12)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、X3およびX4はそれら
が結合しているQ1と一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリシ
クロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、もしくはX3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系:
【0067】
【化5】
【0068】
を形成し、
5は、CR13(R14)(R15)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、X6は、CR16(R17)(R18)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、X5およびX6はそれらが結合しているQ3と一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリ
シクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、もしくはX5およびX6はそれらが結合しているQ3と一緒になって、式IIIcの環系:
【0069】
【化6】
【0070】
を形成し、
7は、CR31(R32)(R33)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、X8は、CR34(R35)(R36)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、X7およびX8はそれらが結合しているQ4と一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−トリ
シクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、もしくはX7およびX8はそれらが結合しているQ4と一緒になって、式IIIdの環系:
【0071】
【化7】
【0072】
を形成し、
9は、CR37(R38)(R39)、コングレシルまたはアダマンチルを表し、X10は、
CR40(R41)(R42)、コングレシルまたはアダマンチルを表すか、X9およびX10
それらが結合しているQ5と一緒になって、任意に置換されていてもよい2−ホスファ−
トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基またはその誘導体を形成するか、もしくはX9およびX10はそれらが結合しているQ5と一緒になって、式IIIeの環系:
【0073】
【化8】
【0074】
を形成し、
このさらなる実施形態では、
1およびQ2ならびにQ3、Q4およびQ5(存在する場合)は、それぞれ独立に、リン
、ヒ素またはアンチモンを表し;
Mは、VIB族またはVIIIB族金属またはそれらの金属カチオンを表し;
1は、任意に置換されていてもよいシクロペンタジエニル、インデニルまたはアリー
ル基を表し;
2は、水素、低級アルキル、アルキルアリール、ハロ、CO、P(R43)(R44)R45またはN(R46)(R47)R48からそれぞれ独立に選択される1個または複数の配位子
を表し;
1からR18およびR31からR42は存在する場合、それぞれ独立に、水素、低級アルキ
ル、アリール、ハロまたはHetを表し;
19からR30およびR43からR48は存在する場合、それぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
49、R54およびR55は存在する場合、それぞれ独立に、水素、低級アルキルまたはアリールを表し;
50からR53は存在する場合、それぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表し;
1、Y2、Y3、Y4およびY5は存在する場合、それぞれ独立に、酸素、イオウまたは
N−R55を表し;
n=0または1であり;
m=0から5であるが;
ただし、n=1である場合、mは0に等しく、nが0に等しい場合、mは0に等しくない]。
【0075】
好ましくは、式IIIの化合物中、K1が−A3−Q3(X5)X6を表し、E1が−A5
5(X9)X10を表す場合、D1は、−A4−Q4(X7)X8を表す。
好ましくは、この実施形態では、R1からR18およびR31からR42は存在する場合、そ
れぞれ独立に、水素、任意に置換されていてもよいC1からC6アルキル、C1−C6アルキルフェニル(ここで、このフェニル基は本明細書中の定義と同様に任意に置換されていてもよい)、トリフルオロメチルまたはフェニル(ここで、このフェニル基は本明細書中の定義と同様に任意に置換されていてもよい)を表す。さらに好ましくは、R1からR18
よびR31からR42は存在する場合、それぞれ独立に、水素、本明細書に定義されているように置換されていてもよいC1からC6アルキル、トリフルオロメチルまたは任意に置換されていてもよいフェニルを表す。さらに好ましくは、R1からR18およびR31からR42
存在する場合、それぞれ独立に、水素、非置換のC1からC6アルキルもしくは非置換のC1からC6アルキルまたはOR19(ここでR19は水素または非置換のC1からC6アルキルを表す)から選択される1個または複数の置換基で任意に置換されていてもよいフェニルを表す。さらに好ましくは、R1からR18およびR31からR42は存在する場合、それぞれ独
立に、水素もしくはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシル、特にメチルなどの非置換のC1からC6アルキルを表す。さらに好ましくは、R1からR18およびR31からR42
は存在する場合、それぞれ独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシル、特にメチルなどの非置換C1からC6アルキルを表す。
【0076】
あるいは、またはそれに加えて、R1からR3、R4からR6、R7からR9、R10からR12、R13からR15、R16からR18、R31からR33、R34からR36、R37からR39またはR40からR42のいずれか1つまたは複数は(存在する場合)、これらが結合している炭素原子と一緒になってそれぞれ、1−ノルボルニルまたは1−ノルボルナジエニルなどの環式ア
ルキル構造を形成してもよい。
【0077】
あるいは、またはそれに加えて、R1およびR2、R4およびR5、R7およびR8、R10およびR11、R13およびR14、R16およびR17、R31およびR32、R34およびR35、R37およびR38もしくはR40およびR41基は(存在する場合)、これらが結合している炭素原子と一緒になって独立に、環式アルキル構造、好ましくは、シクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのC5からC7環式アルキル構造を形成してもよく、R3、R6、R9、R12、R15、R18、R3 3、R36、R39およびR42は(存在する場合)それぞれ独立に、水素、上述で定義された低級アルキル、トリフルオロメチルまたはアリール、特に非置換のC1から
6アルキルおよび水素、特に非置換のC1からC6アルキルを表す。
【0078】
特に好ましい実施形態では、R1からR18およびR31からR42はそれぞれ存在する場合
、水素を表さない。適切には、このような配置手段Q1、Q2、Q3、Q4およびQ5は、そ
れぞれ水素原子を担持していないX1からX10の炭素原子に結合している。
【0079】
好ましくは、R1、R4、R7、R10、R13、R16、R31、R34、R37およびR40は(存
在する場合)それぞれ、本明細書の定義と同様の置換基を表し;R2、R5、R8、R11
14、R17、R32、R35、R38およびR41は(存在する場合)それぞれ、本明細書の定義と同様の置換基を表し;R3、R6、R9、R12、R15、R18、R33、R36、R39およびR42は(存在する場合)それぞれ、本明細書の定義と同様の置換基を表す。さらに好ましく
は、R1、R4、R7、R10、R13、R16、R31、R34、R37およびR40は(存在する場合
)それぞれ、C1−C6アルキル、特に非置換のC1−C6アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはシクロヘキシルまたはトリフルオロメチルを表し;R2、R5、R8、R11、R14、R17、R32、R35、R38およびR41は(存在する場合)それぞれ独立に、上述
と同様に定義されるC1−C6アルキルまたはトリフルオロメチルを表し;R3、R6、R9
、R12、R15、R18、R33、R36、R39およびR42は(存在する場合)それぞれ、上述と同様に定義されるC1−C6アルキルまたはトリフルオロメチルを表す。例えば、R1、R4、R7、R10、R13およびR16は(存在する場合)それぞれ、メチルを表し;R2、R5
8、R11、R14およびR17はそれぞれ、エチル(存在する場合)を表し;R3、R6、R9、R12、R15およびR18は(存在する場合)それぞれ、n−ブチルまたはn−ペンチルを表す。
【0080】
特に好ましい実施形態では、R1からR18およびR31からR42基はそれぞれ(存在する
場合)、本明細書に定義される置換基を表す。好ましくは、R1からR18およびR31から
42基は、C1−C6アルキル基、特に非置換のC1−C6アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルまたはトリフルオロメチルを表す。最も好ましくは、R1からR18およびR31からR42基はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチル
を表す。
【0081】
本明細書で使用する場合、アダマンチルとの用語は、1位または2位でQ1、Q2、Q3
、Q4およびQ5に結合していてもよいそれぞれアダマンチル基を意味する。トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシルは、適切にはQ1、Q2、Q3、Q4およびQ5が1個
または2個のトリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基の1位または2位に結合し得るアダマンチル基のための分類名である。好ましくは、Q1およびQ2ならびにQ3
、Q4およびQ5は存在する場合、1個または複数のアダマンチル基の3級炭素に結合している。適切には、アダマンチル基が非置換のアダマンチルを表す場合、Q1およびQ2ならびにQ3、Q4およびQ5は存在する場合、好ましくは、1個または複数のトリシクロ[3
.3.1.1.{3,7}]デシル基の1位に結合している。すなわち、アダマンチル基
の炭素原子は、水素原子を担持しない。
【0082】
アダマンチル基は任意選択で、水素原子の他に、低級アルキル、−OR19、−OC(O)R20、ハロ、ニトロ、−C(O)R21、−C(O)OR22、シアノ、アリール、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−CF3、−P(R56)R57、−PO(R58)(R59)、−PO32、−PO(OR60)(OR61)または−
SO362から選択される1個または複数の置換基を含み、ここで、R19、R20、R21
22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、低級アルキル、シアノおよびアリールは本明細書に定義され、R56からR62はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、アリールまたはHetを表す。
【0083】
適切には、アダマンチル基が上述と同様に定義される1個または複数の置換基で置換されている場合、特に好ましい置換基には、非置換のC1−C8アルキル、−OR19、−OC(O)R20、フェニル、−C(O)OR22、フルオロ、−SO3H、−N(R23)R24
−P(R56)R57、−C(O)N(R25)R26および−PO(R58)(R59)、−CF3
が含まれ、ここで、R19は、水素、非置換のC1−C8アルキルまたはフェニルを表し、R20、R22、R23、R24、R25、R26はそれぞれ独立に、水素または非置換のC1−C8アルキルを表し、R56からR53、R56はそれぞれ独立に、非置換のC1−C8アルキルまたはフェニルを表す。
【0084】
適切には、アダマンチル基は、水素原子の他に、上述で定義された10個までの置換基、好ましくは上述で定義された5個までの置換基、さらに好ましくは上述に定義した3個までの置換基を含んでもよい。適切には、アダマンチル基が水素原子の他に、本明細書に定義されている1個または複数の置換基を含む場合、好ましくは各置換基は同一である。好ましい置換基は、非置換のC1−C8アルキルおよびトリフルオロメチル、特に非置換のC1−C8アルキル、例えばメチルである。特に好ましいアダマンチル基は、水素原子のみを含む。すなわち、アダマンチル基は、置換されていない。
【0085】
好ましくは、1個よりも多いアダマンチル基が式IIIの化合物中に存在する場合、各アダマンチル基は同一である。
2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基とは、X1および
2とそれらが結合しているQ2との組合せにより生じる2−ホスファアダマンチル基、X3およびX4とそれらが結合しているQ1との組合せにより生じる2−ホスファアダマンチ
ル基、X5およびX6とそれらが結合しているQ3との組合せにより生じる2−ホスファア
ダマンチル基、X7およびX8とそれらが結合しているQ4との組合せにより生じる2−ホ
スファアダマンチル基ならびにX9およびX10とそれらが結合しているQ5との組合せにより生じる2−ホスファアダマンチル基を意味し、ここで、Q1、Q2、Q3、Q4およびQ5
は、その完全な部分をもたらすアダマンチル基の2位に位置し、Q1、Q2、Q3、Q4およびQ5はそれぞれリンを表す。
【0086】
2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基(本明細書中では、2−ホスファ−アダマンチル基とも称される)は任意選択で、水素原子の他に、1個または複数の置換基を含んでもよい。適切な置換基には、アダマンチル基に関して本明細書で定義した置換基が含まれる。特に好ましい置換基には、低級アルキル、特に非置換のC1−C8アルキル、特にメチル、トリフルオロメチル、−OR19(ここでR19は本明細書で定義される)、特に非置換のC1−C8アルキルまたはアリールおよび4−ドデシルフェニルが含まれる。2−ホスファ−アダマンチル基が1個よりも多い置換基を含む場合には、好ましくは、各置換基は同一である。
【0087】
好ましくは、2−ホスファアダマンチル基は、1、3、5または7位の1カ所または複
数カ所で、本明細書で定義されている置換基で置換されている。最も好ましくは、2−ホスファ−アダマンチル基は、1、3および5位のそれぞれで置換されている。適切には、このような配置手段である2−ホスファ−アダマンチル基のリン原子は、水素原子を有さないアダマンチルスケルトン中の炭素原子に結合している。さらに好ましくは、2−ホスファ−アダマンチル基は、1、3,5および7位のそれぞれで置換されている。2−ホスファ−アダマンチル基が1個よりも多い置換基を含む場合、好ましくは、各置換基は同一である。特に好ましい置換基は、非置換のC1−C8アルキルおよびトリフルオロメチル、特にメチルなどの非置換のC1−C8アルキルである。
【0088】
好ましくは、2−ホスファ−アダマンチル基は、2−ホスファ−アダマンチル骨格中に、2−リン原子以外の付加的なヘテロ原子を含む。適切な付加的なヘテロ原子には、酸素およびイオウ原子、特に酸素原子が含まれる。さらに好ましくは、2−ホスファ−アダマンチル基は、6、9および10位に1個または複数の付加的なヘテロ原子を含む。さらに好ましくは、2−ホスファ−アダマンチル基は、6、9および10位のそれぞれに付加的なヘテロ原子を含む。さらに好ましくは、2−ホスファ−アダマンチル基が2個またはそれ以上のヘテロ原子を2−ホスファ−アダマンチル骨格中に含む場合、付加的なヘテロ原子はそれぞれ同一である。本明細書に定義されている1個または複数の置換基で任意に置換されていてもよい特に好ましい2−ホスファ−アダマンチル基は、2−ホスファ−アダマンチル骨格の6、9および10位のそれぞれに酸素原子を含む。
【0089】
本明細書で定義される特に好ましい2−ホスファ−アダマンチル基には、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキソアダマンチル基、2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキソアダマンチル基、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキソアダマンチル基および2−ホスファ−1,3,5−トリ(トリフルオロメチル)−6,9,10−トリオキソアダマンチル基が含まれる。さらに好ましくは、2−ホスファ−アダマンチルは、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキソアダマンチル基または2−ホスファ−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキソアダマンチル基から選択される。
【0090】
好ましくは、1個よりも多い2−ホスファアダマンチル基が式IIIの化合物中に存在する場合、各2−ホスファ−アダマンチル基は同一である。
用語「2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デシル基」の本明細書の定義は、その基が式I中に存在する場合にも等しく当てはまるが、その場合には、式III中のX、すなわち、X1、X2、X3...X10は、式I中ではCR
すなわち、CR123、...CR161718と示される。
【0091】
本明細書で使用する場合、コングレシルとの用語は、それぞれQ1、Q2、Q3、Q4およびQ5に結合していてもよいコングレシル基(ジアマンチル基としても知られている)を
意味する。好ましくは、Q1およびQ2ならびにQ3、Q4およびQ5は存在する場合、コン
グレシル基の3級炭素原子のいずれかに結合している。適切には、コングレシル基が非置換である場合、Q1およびQ2ならびにQ3、Q4およびQ5は存在する場合、好ましくは、
1個または複数のコングレシル基の1位に結合している。
【0092】
コングレシル基は任意選択で、水素原子の他に、1個または複数の置換基を含んでもよい。適切な置換基には、アダマンチル基に関して本明細書中で定義された置換基が含まれる。特に好ましい置換基には、非置換のC1−C6アルキル基、特に、メチルおよびトリフルオロメチルが含まれる。さらに好ましくは、コングレシル基は、非置換であり、水素原子のみを含む。
【0093】
好ましくは、1個よりも多いコングレシル基が、式IIIの化合物中に存在する場合、各コングレシル基は同一である。
好ましくは、式IIIa、IIIb、IIIc、IIIdまたはIIIeの1個または複数の環系が式IIIの化合物中に存在する場合、R50からR53はそれぞれ独立に、低級アルキル、アリールまたはHetを表し、これらの基は、本明細書中で定義されているように置換および/またはターミネートされていてもよい。このような式IIIaからIIIeの環系の配置手段Q2、Q1、Q3、Q4およびQ5はそれぞれ、水素原子を担持してい
る炭素原子には結合していない。さらに好ましくは、R50からR53はそれぞれ独立に、任意に置換されていてもよいC1−C6アルキル、好ましくは非置換のC1−C6アルキル、非置換のC1−C6アルキルまたはOR19(ここでR19は非置換のC1−C6アルキルを表す)で任意に置換されていてもよいフェニルもしくはトリフルオロメチルを表す。さらに好ましくは、R50からR53はそれぞれ独立に、本明細書に定義される同じ基、特に非置換C1
−C6アルキル、特にメチルを表す。
【0094】
好ましくは、式IIIaからIIIeの1個または複数の環系が式IIIの化合物中に存在する場合、R49およびR54はそれぞれ独立に、任意に置換されていてもよいC1−C6アルキル、好ましくは非置換のC1−C6アルキル、非置換のC1−C6アルキルまたはOR19(ここでR19は非置換のC1−C6アルキルを表す)で任意に置換されていてもよいフェニル、トリフルオロメチルまたは水素を表す。さらに好ましくは、R49およびR54は、本明細書に定義される同じ基、特に水素を表す。
【0095】
好ましくは、式IIIaからIIIeのうちの1個または複数の環系が式IIIの化合物中に存在する場合、Y1からY5は同一である。さらに好ましくは、Y1からY5はそれぞれ、酸素を表す。好ましくは、式IIIaからIIIeの1個よりも多い環系が式IIIの化合物中に存在する場合、このような環系はそれぞれ、同一である。
【0096】
本発明の好ましい実施形態には、式中、
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はCR7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はアダマンチルを表し、X3はCR7(R8)(R9)を表し、X4はアダマンチルを表し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はコングレシルを表し、X3はCR7(R8)(R9)を表し、X4はコングレシルを表し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系または2−ホスファ−アダ
マンチル基を形成し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はアダマンチルを表し、X3およびX4はそれら
が結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系または2−ホスファ−アダマンチ
ル基を形成し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はコングレシルを表し、X3およびX4はそれら
が結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系または2−ホスファ−アダマンチ
ル基を形成し;
1からX4はそれぞれ独立に、アダマンチルを表し;
1からX4はそれぞれ独立に、コングレシルを表し;
1およびX2はそれぞれ独立に、アダマンチルを表し、X3およびX4はそれぞれ独立に、コングレシルを表し;
1およびX3はそれぞれ独立に、アダマンチルを表し、X2およびX4はそれぞれ独立に、コングレシルを表し;
1およびX2はそれぞれ独立に、アダマンチルを表し、X3は、CR7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し;
1およびX2はそれぞれ独立に、コングレシルを表し、X3は、CR7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し;
1およびX2はそれぞれ独立に、アダマンチルを表し、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系または2−ホスファ−アダマンチル基を形
成し;
1およびX2はそれぞれ独立に、コングレシルを表し、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系または2−ホスファ−アダマンチル基を形
成し;
1およびX2はそれらが結合しているQ2と一緒になって、式IIIaの環系を形成し
、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系を形成し

1およびX2はそれらが結合しているQ2と一緒になって、2−ホスファ−アダマンチ
ル基を形成し、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、2−ホスファ
−アダマンチル基を形成する
ものが含まれる。
【0097】
本発明の特に好ましい実施形態には、式中、
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はCR7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はアダマンチルを表し、X3はCR7(R8)(R9)を表し、X4はアダマンチルを表し;
1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はコングレシルを表し、X3はCR7(R8)(R9)を表し、X4はコングレシルを表し;
1からX4はそれぞれ独立に、アダマンチルを表し;
1からX4はそれぞれ独立に、コングレシルを表し;
1およびX2はそれらが結合しているQ2と一緒になって、式IIIaの環系を形成し
、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、式IIIbの環系を形成し

1およびX2はそれらが結合しているQ2と一緒になって、2−ホスファ−アダマンチ
ル基を形成し、X3およびX4はそれらが結合しているQ1と一緒になって、2−ホスファ
−アダマンチル基を形成する
ものが含まれる。
【0098】
式IIIの化合物中好ましくは、X1はX3と同一であり、X2はX4と同一である。さらに好ましくは、X1はX3と、さらに存在する場合にはX5、X7およびX9と同一であり、
2は、X4と、さらに存在する場合にはX6、X8およびX10と同一である。最も好ましくは、X1からX4は、同一である。最も好ましくは、X1からX4は、存在する場合にはX6
からX10と同一である。
【0099】
好ましくは、式IIIの化合物中、X1およびX2は同一の置換基を表し、X3およびX4は同一の置換基を表し、X5およびX6は(存在する場合)、同一の置換基を表し、X7
よびX8は(存在する場合)、同一の置換基を表し、X9およびX10は(存在する場合)、同一の置換基を表す。
【0100】
好ましくは、式IIIの化合物中、K1は、−A3−Q3(X5)X6、水素、低級アルキ
ル、−CF3、フェニルまたは低級アルキルフェニルを表す。さらに好ましくは、K1は−A3−Q3(X5)X6、水素、非置換のC1−C6アルキル、非置換のフェニル、トリフルオロメチルまたはC1−C6アルキルフェニルを表す。
【0101】
特に好ましい実施形態では、式IIIの化合物中のK1は、水素を表す。
1が水素を表さない別の実施形態では、K1は、−A3−Q3(X5)X6を表す。好ましくは、X5は、X3またはX1と同一であり、X6は、X2またはX4と同一である。さらに好ましくは、X5は、X3およびX1の両方と同一であり、X6は、X2およびX4の両方と同一である。さらに好ましくは、−A3−Q3(X5)X6は、−A1−Q2(X1)X2または−A2−Q1(X3)X4と同一である。
【0102】
最も好ましくは、−A3−Q3(X5)X6は、−A1−Q2(X1)X2および−A2−Q1(X3)X4の両方と同一である。
さらに好ましくは、K1は、式IIIの化合物中、水素である。
【0103】
好ましくは、式IIIの化合物中、D1は、−A4−Q4(X7)X8、水素、低級アルキ
ル、CF3、フェニルまたは低級アルキルフェニルを表し、E1は、−A5−Q5(X9)X10、水素、低級アルキル、CF3、フェニルまたは低級アルキルフェニルを表すか、D1
よびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素と一緒になって、任意に
置換されていてもよいフェニル環を形成する。さらに好ましくは、D1は、−A4−Q4
7)X8、水素、フェニル、C1−C6アルキルフェニル、非置換C1−C6アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルまたはCF3を表し;
1は、−A5−Q5(X9)X10、水素、フェニル、C1−C6アルキルフェニル、非置換C1−C6アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルまたはCF3を表すか;D1およびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニル環
の炭素原子と一緒になって、フェニル、C1−C6アルキルフェニル、非置換C1−C6アルキルまたはCF3から選択される1個または複数の基で任意に置換されていてもよいフェ
ニル環を形成する。
【0104】
適切には、D1およびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒になって、任意に置換されていてもよいフェニル環を形成し、金属Mまたはそのカチオンは、インデニル環系に結合している。
【0105】
特に好ましい実施形態では、式IIIの化合物中のD1は、水素を表す。
1が水素を表さない別の実施形態では、D1は、−A4−Q4(X7)X8を表す。好ましくは、X8は、X4またはX2と同一であり、X7は、X1またはX3と同一である。さらに好ましくは、X8は、X4およびX2の両方と同一であり、X7は、X1およびX3の両方と同一である。さらに一層好ましくは、−A4−Q4(X7)X8は、−A1−Q2(X1)X2または−A2−Q1(X3)X4と同一である。最も好ましくは、−A4−Q4(X7)X8は、存在する場合には−A2−Q1(X3)X4および−A3−Q3(X5)X6の両方と同一である。
【0106】
特に好ましい実施形態では、式IIIの化合物中のE1は、水素を表す。
1が水素を表さない別の実施形態では、E1は、−A4−Q5(X9)X10を表す。好ま
しくは、X10は、X4またはX2と同一であり、X9は、X1またはX3と同一である。さら
に好ましくは、X10は、X4およびX2の両方と同一であり、X9は、X1およびX3の両方
と同一である。さらに一層好ましくは、−A5−Q5(X9)X10は、−A1−Q2(X1)X2または−A2−Q1(X3)X4と同一である。さらに好ましくは、−A5−Q5(X9)X10は、存在する場合には−A1−Q2(X1)X2および−A2−Q1(X3)X4と、存在する場合には、−A3−Q3(X5)X6および−A4−Q4(X7)X8との両方である。
【0107】
好ましくは、式IIIの化合物中、式中のD1およびE1が、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に任意に置換されていてもよいフェニル環を形成しない場合、K1、D1およびE1は同一の置換基を表す。
【0108】
他の好ましい実施形態では、D1およびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニ
ル環の炭素と一緒に、非置換のフェニル環を形成する。
式IIIの化合物の特に好ましい実施形態には、式中:
1、D1およびE1は、本明細書の定義と同一の置換基を表し、特に、K1、D1および
1は、水素を表し;
1は、水素を表し、D1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環
の炭素と一緒になって、非置換のフェニル環を形成し;
1は、本明細書で定義されている−A3−Q3(X5)X6を表し、D1およびE1は両方
とも、Hを表し;
1は、本明細書で定義されている−A3−Q3(X5)X6を表し、D1およびE1はそれ
らが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
1は、−A3−Q3(X5)X6を表し、D1は、−A4−Q4(X7)X8を表し、E1は、
−A5−Q5(X9)X10を表す
ものが含まれる。
【0109】
式IIIの特に好ましい化合物には、D1およびE1が両方とも、水素を表すか、D1
よびE1がそれらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換の
フェニル環を形成するもの、特に、D1およびE1が両方とも、水素を表す化合物が含まれる。
【0110】
好ましくは、式IIIの化合物中、A1およびA2ならびにA3、A4およびA5(存在す
る場合)は、それぞれ独立に、本明細書で定義されているように、例えば低級アルキル基で任意に置換されていてもよいC1からC6アルキレンを表す。適切には、A1およびA2ならびにA3、A4およびA5(存在する場合)は、キラル炭素原子を含みうる。好ましくは
、A1からA5が表しうる低級アルキレン基は、非置換である。独立にA1からA5が表しうる特に好ましい低級アルキレンは、−CH2−または−C24−である。さらに好ましく
は、A1およびA2ならびにA3、A4およびA5(存在する場合)はそれぞれ、本明細書で
定義される同じ低級アルキレン、特に−CH2−を表す。
【0111】
式IIIの化合物では、好ましくは、Q1およびQ2ならびにQ3、Q4およびQ5(存在
する場合)は、同じである。さらに好ましくは、Q1およびQ2ならびにQ3、Q4およびQ5(存在する場合)は、リンを表す。
【0112】
当業者であれば、式IIIの化合物は、本発明の触媒系を形成する際に、VIB族もしくはVIIIB族金属またはその化合物と配位する配位子として機能しうることを理解されるであろう。通常、VIB族もしくはVIIIB族金属またはその化合物は、式IIIの化合物の1個または複数のリン、ヒ素および/またはアンチモン原子に配位する。式IIIの化合物は一般には、「メタロセン」とも称されうることは理解されるであろう。
【0113】
適切には、n=1であり、L1が任意に置換されていてもよいシクロペンタジエニルま
たはインデニル基を表す場合、式IIIの化合物は、2個のシクロペンタジエニル環、2個のインデニル環もしくは1個のインデニルおよび1個のシクロペンタジエニル環を含んでもよい(これらの環系はそれぞれ、本明細書に記載されているように任意に置換されていてもよい)。このような化合物は、金属Mまたはその金属カチオンが、2個の環系にサンドウィッチされているので、「サンドウィッチ化合物」とも称される。個々のシクロペンタジエニルおよび/またはインデニル環系は、相互に実質的に共平面であってよいか、相互に傾斜していてもよい(一般には、ベントメタロセン(bent metallocene)と称される)。
【0114】
あるいは、n=1であり、L1がアリールを表す場合、本発明の化合物は、1個のシク
ロペンタジエニルまたは1個のインデニル環(これらの環系はそれぞれ、本明細書に記載されているように任意に置換されていてもよい)および本明細書に定義されているように任意に置換されていてもよい1個のアリール環を含んでもよい。適切には、n=1であり、L1がアリールを表す場合、本明細書に定義されているような式IIIの化合物の金属
Mは通常、金属カチオンの形態である。
【0115】
本発明の特に好ましい実施形態では、式IIIの化合物中、n=1であり、L1は本明
細書と同様に定義され、m=0である。
好ましくは、式IIIの化合物中、n=1であり、L1は、シクロペンタジエニル、イ
ンデニルまたはアリール環を表し、ここで、これらの環はそれぞれ、水素、低級アルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24、−C(O)N(R25)R26、−C(S)(R27)R28、−SR29、−C(O)SR30、−CF3またはフェロセニル(これは、L1が表しうるシクロペンタジエニル、インデニルまたはアリール環がフェロセニル基のシクロペンタジエニル環に直接結合していることを意味する)から選択される1個または複数の置換基で任意に置換されていてもよく、ここで、R19からR30は本明細書で定義されるのと同様である。さらに好ましくは、L1が表しうるシクロペンタジエニル、インデニルまたはアリール環が置
換されている場合、これらは好ましくは、非置換のC1−C6アルキル、ハロ、シアノ、−OR19、−OC(O)R20、−C(O)R21、−C(O)OR22、−N(R23)R24から選択される1個または複数の置換基で置換されており、ここで、R19、R20、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立に、水素またはC1−C6アルキルを表す。さらに好ましくは、L1が表しうるシクロペンタジエニル、インデニルまたはアリール環が置換されて
いる場合、これらは好ましくは、非置換のC1−C6アルキルから選択される1個または複数の置換基で置換されている。
【0116】
好ましくは、n=1である場合、L1は、本明細書に定義されているように任意に置換
されていてもよいシクロペンタジエニル、インデニル、フェニルまたはナフチルを表す。好ましくは、シクロペンタジエニル、インデニル、フェニルまたはナフチル基は非置換である。さらに好ましくは、L1は、シクロペンタジエニル、インデニルまたはフェニルを
表し、これらの環はそれぞれ、非置換である。最も好ましくは、L1は、非置換のシクロ
ペンタジエニルを表す。
【0117】
あるいは、n=0である場合、本発明の化合物は、シクロペンタジエニルまたはインデニル環のみを含む(これらの環系はそれぞれ、本明細書の記載と同様に任意に置換されていてもよい)。このような化合物は、「ハーフサンドウィッチ化合物」とも称される。好ましくは、n=0である場合、mは1から5を表して、式IIIの化合物の金属Mは、18の電子数を有する。言い換えると、式IIIの化合物の金属Mが鉄である場合、配位子L2により与えられる電子の総数は、通常、5個である。
【0118】
本発明の特に好ましい他の実施形態では、式IIIの化合物中、n=0であり、L2
本明細書と同様に定義され、m=3または4、特に3である。
好ましくは、式IIIの化合物中、nが0に等しく、mが0に等しくない場合、L2
、1個または複数の配位子を表し、これらはそれぞれ独立に、低級アルキル、ハロ、−CO、−P(R43)(R44)R45または−N(R46)(R47)R48から選択される。
【0119】
さらに好ましくは、L2は、非置換のC1からC4アルキル、ハロ、特にクロロ、−CO
、−P(R43)(R44)R45または−N(R46)(R47)R48からそれぞれ独立に選択される1個または複数の配位子を表し、ここで、R43からR48は独立に、水素、非置換のC1からC6アルキルまたはアリール、例えばフェニルから選択される。
【0120】
適切には、式IIIの化合物中の金属Mまたはその金属カチオンは通常、シクロペンタジエニル環、存在する場合にはインデニル環のシクロペンタジエニル部分、存在する場合にはアリール環および/または存在する場合には配位子L2に結合している。通常、シク
ロペンタジエニル環またはインデニル環のシクロペンタジエニル部分は、金属とペンタハプト結合形態を示すが;シクロペンタジエニル環またはインデニル環のシクロペンタジエニル部分と金属との他の結合形態、例えば、トリハプト配位も、本発明の範囲内に包含される。
【0121】
さらに好ましくは、式IIIの化合物中、n=1、m=0であり、L1は、本明細書に
定義され、特に非置換のシクロペンタジエニルである。
好ましくは、Mは、VIB族またはVIIIB族金属を表す。言い換えると、金属Mの全電子数は、18である。
【0122】
好ましくは、式IIIの化合物中、Mは、Cr、Mo、Fe、CoまたはRuもしくはこれらの金属カチオンを表す。さらに好ましくは、Mは、Cr、Fe、CoまたはRuもしくはこれらの金属カチオンを表す。最も好ましくは、Mは、VIIIB族金属またはこれらの金属カチオンから選択される。特に好ましいVIIIB族金属は、Feである。本明細書に定義されているような金属Mは、カチオンの形態であってもよく、好ましくはこれは、本明細書で定義されているL1および/またはL2との配位により、残留電荷を実質的に有さない。
【0123】
式IIIの特に好ましい化合物には、式中:
(1)X1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はC
7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、ここで、R1からR12
はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはトリフルオロメチルを表し、特に、R1からR12は同一であり、特に、R1からR12はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、D1およびE1は同じで、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し

1およびQ2は両方とも、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(2)X1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はC
7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、K1は−CH2−Q3
5)X6を表し、ここで、X5はCR13(R14)(R15)を表し、X6はCR16(R17)(R18)を表し、ここで、R1からR18はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6アルキルまた
はトリフルオロメチルを表し、特に、R1からR18は同一であり、特に、R1からR18はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は同じで、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(3)X1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はC
7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、K1は−CH2−Q3
5)X6を表し、ここで、X5はCR13(R14)(R15)を表し、X6はCR16(R17)(R18)を表し、ここで、R1からR18はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6アルキルまた
はトリフルオロメチルを表し、特に、R1からR18はそれぞれ同一であり、特に、R1からR18はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(4)X1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はC
7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、ここで、R1からR12
はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはトリフルオロメチルを表し、特に、R1からR12はそれぞれ同一であり、特に、R1からR12はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じで、−CH2−を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
1は水素またはC1−C6アルキル、特に水素を表し;
1およびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(5)X1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はC
7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、E1は−CH2−Q5
9)X10を表し、ここで、X9はCR37(R38)(R39)を表し、X10はCR40(R41)(R42)を表し;R1からR12およびR37からR42はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6
アルキルまたはトリフルオロメチルを表し、特に、R1からR12およびR37からR42はそ
れぞれ同一であり、特に、R1からR12およびR37からR42はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ5はそれぞれ、リンを表し;
1およびK1は同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(6)X1はCR1(R2)(R3)を表し、X2はCR4(R5)(R6)を表し、X3はC
7(R8)(R9)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、K1は−CH2−Q3
5)X6を表し、ここで、X5はCR13(R14)(R15)を表し、X6はCR16(R17)(R18)を表し;D1は−CH2−Q4(X7)X8を表し、ここで、X7は、CR31(R32)(R33)を表し、X8は、CR34(R35)(R36)を表し;E1は、−CH2−Q5(X9)X10を表し、ここで、X9は、CR37(R38)(R39)を表し、X10は、CR40(R41)(R42)を表し;R1からR18およびR31からR42はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6アル
キルまたはトリフルオロメチルを表し、特に、R1からR18およびR31からR42はそれぞ
れ同一であり、特に、R1からR18およびR31からR42はそれぞれ、非置換のC1−C6
ルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2、Q3、Q4およびQ5はそれぞれ、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(7)X1、X2、X3およびX4は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1からX4は同じアダマンチル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、D1およびE1は同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を
表し;
1およびQ2は両方ともリンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(8)X1、X2、X3およびX4は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1からX4は同じアダマンチル基を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は独立にアダマンチル
を表し、特に、X1からX6は同じアダマンチル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(9)X1、X2、X3およびX4は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1からX4は同じアダマンチル基を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は独立にアダマンチル
を表し、特に、X1からX6は同じアダマンチル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(10)X1、X2、X3およびX4は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1からX4は同じアダマンチル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
1は、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(11)X1、X2、X3およびX4は独立に、アダマンチルを表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は独立に、アダマンチ
ルを表し;
1は、−CH2−Q4(X7)X8を表し、ここで、X7およびX8は独立に、アダマンチ
ルを表し;
1は、−CH2−Q5(X9)X10を表し、ここで、X9およびX10は独立に、アダマン
チルを表し、ここで、X1からX10は同じアダマンチル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2、Q3、Q4およびQ5はそれぞれ、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(12)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、2−ホスファ−アダマ
ンチルを表し;
3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを
表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、D1およびE1は同じで、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し

1およびQ2は両方とも、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(13)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、2−ホスファ−アダマ
ンチルを表し;
3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを
表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は、それらが結合して
いるQ3と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は同じで、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(14)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、2−ホスファ−アダマ
ンチルを表し;
3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを
表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は、それらが結合して
いるQ3と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(15)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、2−ホスファ−アダマ
ンチルを表し;
3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを
表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
1は、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(16)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、2−ホスファ−アダマ
ンチルを表し;
3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、2−ホスファ−アダマンチルを
表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は、それらが結合して
いるQ3と一緒に、2−ホスファアダマンチルを表し;
1は、−CH2−Q4(X7)X8を表し、ここで、X7およびX8は、それらが結合して
いるQ4と一緒に、2−ホスファアダマンチルを表し;
1は、−CH2−Q5(X9)X10を表し、ここで、X9およびX10は、それらが結合し
ているQ5と一緒に、2−ホスファアダマンチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2、Q3、Q4およびQ5はそれぞれ、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(17)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、式IIIaの環系を形
成し、X3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、式IIIbの環系を形成し
、ここで、Y1およびY2は両方とも、酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1
−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、D1、E1は同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し

1およびQ2は両方とも、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニル(p
ucと称される)を表し、m=0であるもの
(18)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、式IIIaの環系を形
成し、X3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、式IIIbの環系を形成し
、ここで、Y1およびY2は両方とも、酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1
−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は、それらが結合して
いるQ3と一緒に、式IIIcの環系を形成し、ここで、Y3は酸素を表し、R50からR53は独立に、水素、非置換のC1−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54
は水素を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は同じで、水素またはC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(19)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、式IIIaの環系を形
成し、X3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、式IIIbの環系を形成し
、ここで、Y1およびY2は両方とも、酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1
−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は、それらが結合して
いるQ3と一緒に、式IIIcの環系を形成し、ここで、Y3は酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素
を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(20)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、式IIIaの環系を形
成し、X3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、式IIIbの環系を形成し
、ここで、Y1およびY2は両方とも、酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1
−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
1は、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
1およびE1はそれらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(21)X1およびX2は、それらが結合しているQ2と一緒に、式IIIaの環系を形
成し、X3およびX4は、それらが結合しているQ1と一緒に、式IIIbの環系を形成し
、ここで、Y1およびY2は両方とも、酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1
−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は、それらが結合して
いるQ3と一緒に、式IIIcの環系を形成し、ここで、Y3は酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素
を表し;
1は、−CH2−Q4(X7)X8を表し、ここで、X7およびX8は、それらが結合して
いるQ4と一緒に、式IIIcの環系を形成し、ここで、Y3は酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水素
を表し;
1は、−CH2−Q5(X9)X10を表し、ここで、X9およびX10は、それらが結合し
ているQ5と一緒に、式IIIeの環系を形成し、ここで、Y5は酸素を表し、R50からR53は独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはCF3から選択され、R49およびR54は水
素を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2、Q3、Q4およびQ5はそれぞれ、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(22)X1、X2、X3およびX4は独立に、コングレシルを表し、特にX1からX4は同じコングレシル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、D1およびE1は、同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素
を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(23)X1、X2、X3およびX4は独立に、コングレシルを表し、特にX1からX4は同じコングレシル基を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は独立に、コングレシ
ルを表し、特にX1からX6は、同じコングレシル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3それぞれ、リンを表し;
1およびE1は、同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(24)X1、X2、X3およびX4は独立に、コングレシルを表し、特にX1からX4は同じコングレシル基を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は独立に、コングレシ
ルを表し、特にX1からX6は、同じコングレシル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3それぞれ、リンを表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(25)X1、X2、X3およびX4は独立に、コングレシルを表し、特にX1からX4は同じコングレシル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
1は、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(26)X1、X2、X3およびX4は独立に、コングレシルを表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5およびX6は独立に、コングレシ
ル表し;
1は、−CH2−Q4(X7)X8を表し、ここで、X7およびX8は独立に、コングレシ
ルを表し;
1は、−CH2−Q5(X9)X10を表し、ここで、X9およびX10は独立に、コングレ
シルを表し、ここで、X1からX10は同じコングレシル基を表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2、Q3、Q4およびQ5はそれぞれ、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(27)X1およびX3は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1およびX3は同じアダマンチル基を表し;
2は、CR4(R5)(R6)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、ここで、
4、R5、R6、R10、R11およびR12はそれぞれ独立に、C1−C6アルキルまたはトリ
フルオロメチルを表し、特に、R4からR6およびR10からR12はそれぞれ同じで、特に、R4からR6およびR10からR12はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、D1およびE1は、同じであり、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素
を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(28)X1およびX3は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1およびX3は同じアダマンチル基を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5はアダマンチルを表し、特に、X1、X3およびX5は同じアダマンチル基を表し;
2は、CR4(R5)(R6)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、X6はCR16(R1 7)(R18)を表し、ここで、R4からR6、R10からR12およびR16からR18
それぞれ独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはトリフルオロメチルを表し、特に、R4からR6、R10からR12およびR16からR18はそれぞれ同じで、特に、R4からR6、R10からR12およびR16からR18はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は同じであって、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(29)X1およびX3は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1およびX3は同じアダマンチル基を表し;
1は、−CH2−Q3(X5)X6を表し、ここで、X5はアダマンチルを表し、特に、X1、X3およびX5は同じアダマンチル基を表し;
2は、CR4(R5)(R6)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、X6はCR16(R17)(R18)を表し、ここで、R4からR6、R10からR12およびR16からR18はそれぞれ独立に、非置換のC1−C6アルキルまたはトリフルオロメチルを表し、特に、R4
からR6、R10からR12およびR16からR18はそれぞれ同じで、特に、R4からR6、R10
からR12およびR16からR18はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し;
1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1、Q2およびQ3はそれぞれ、リンを表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
(30)X1およびX3は独立に、アダマンチルを表し、特に、X1およびX3は同じアダマンチル基を表し;
2は、CR4(R5)(R6)を表し、X4はCR10(R11)(R12)を表し、ここで、
4、R5、R6、R10、R11およびR12はそれぞれ独立に、C1−C6アルキルまたはトリ
フルオロメチルを表し、特に、R4からR6、R10からR12はそれぞれ同じで、特に、R4
からR6およびR10からR12はそれぞれ、非置換のC1−C6アルキル、特にメチルを表し

1およびA2は同じであり、−CH2−を表し;
1およびQ2は両方とも、リンを表し;
1は、水素または非置換のC1−C6アルキル、特に水素を表し;
1およびE1は、それらが結合しているシクロペンタジエニル環の炭素原子と一緒に、
非置換のフェニル環を形成し;
MはFeを表し;
n=1であり、L1はシクロペンタジエニル、特に非置換のシクロペンタジエニルを表
し、m=0であるもの
が含まれる。
【0124】
この実施形態での二座配位子の非限定的で具体的な例には、次のものが含まれる:1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1−ヒドロキシメチル−2−ジメチルアミノメチルフェロセン、1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1−ヒドロキシメチル−2,3−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン、1,2,3−トリス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジシクロヘキシルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジ−イソ−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジシクロペンチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジエチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジメチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−(ジ−(1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファ−アダマンチルメチル))フェロセン、1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン−ビスメチルヨウ化物、1,2−ビス(ジヒドロキシメチルホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス(ジホスフィノメチル)フェロセン、1,2−ビス−α,α−(P−(2,2,6,6,−テトラメチルホスフィナン−4−オン))ジメチルフェロセン、および1,2−ビス−(ジ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファ−アダマンチルメチル))ベンゼン。しかしながら、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、他の二座配位子も考えられることを理解されるであろう。
【0125】
さらなる態様では、本発明は、エチレン系不飽和化合物のカルボニル化を触媒することが可能な触媒系を提供するが、この触媒系は:
a)VIB族もしくはVIIIB族の金属またはそれらの化合物、
b)二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子、好ましくは二座ホスフィン配位子、および
c)酸
を含み、その際、該配位子は、該金属または該金属化合物中の該金属に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在し、該酸は、該配位子に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在する。
【0126】
疑義を回避するため、上述の形態および実施形態はすべて、この態様に等しく当てはめることができることを述べる。
さらなる態様では、本発明は、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する方法を提供するが、これは、本発明の第1の態様で定義されているような本発明で定義されている触媒系の存在下で、エチレン系不飽和化合物と一酸化炭素およびヒドロキシル基含有化合物とを接触させることを含む。好ましくは、この方法は、上述の工程を含む液相連続法である。しかしながら、この方法を好ましくは連続的に運転するが、バッチ運転も可能である。
【0127】
さらなる態様では、本発明は、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する方法を提供し、これは、触媒系の存在下で、エチレン系不飽和化合物と一酸化炭素およびヒドロキシル基含有化合物とを接触させることを含み、この触媒系は、
a)VIB族もしくはVIIIB族の金属またはそれらの化合物、
b)二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子、好ましくは二座ホスフィン配位
子、および
c)酸
を含み、その際、該配位子は、該金属または該金属化合物中の該金属に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在し、該酸は、該配位子に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在する。
【0128】
適切には、ヒドロキシル基含有化合物には、水またはヒドロキシル官能基を有する有機分子が含まれる。好ましくは、ヒドロキシル官能基を有する有機分子は、分枝鎖でも直鎖でもよく、アルカノール、特にアリールアルカノールを含むC1−C30アルカノールを包
含し、これらは、本明細書で定義されているような低級アルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)R2526、SR27、C(O)SR28から選択される1個または複数の置換基で任意に置換されていてもよい。特に好ましいアルカノールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、イソ−ブタノール、t−ブチルアルコール、n−ブタノール、フェノールおよびクロロカプリルアルコールなどのC1−C8アルカノールである。モノアルカノールが特に好ましいが、好ましくはジオールなどのジオクタオール、トリオール、テトラオールから選択されるポリアルカノールおよび糖を使用することもできる。通常、このようなポリアルカノールは、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリトリトール、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)エタン、ナノース(nannose)、ソルベース、ガラクトースおよび他の糖から選択される。好ましい糖には、スクロース、フルクトースおよびグルコースが含まれる。特に好ましいアルカノールは、メタノールおよびエタノールである。最も好ましいアルカノールは、メタノールである。
【0129】
アルコールの量は、厳密ではない。通常、量は、カルボニル化されるべきエチレン系不飽和化合物の量に対して過剰に使用される。したがって、アルコールは、反応溶剤としても役立つが、望ましくは、別の溶剤を使用することもできる。
【0130】
反応の最終生成物は少なくとも部分的に、使用されたヒドロキシル基含有化合物の源により決定されることは理解されるであろう。ヒドロキシル基含有化合物として水が使用された場合には、最終生成物は、対応するカルボン酸であり、アルカノールが使用されると、対応するエステルが生じる。
【0131】
本発明の方法を、権利を請求されている範囲を上回るか、下回るモル比をもたらす成分を有する触媒系を用いて開始することもできるが、このような比は、反応経過の間に権利を請求されている上述の範囲内の値へと進む。
【0132】
触媒系内の成分を有効なレベルに維持するために、数種または全種の成分のさらなる量を加えて、触媒系に存在するこのような成分のレベルを本発明経過の間に変えることもできることは、勿論理解されるであろう。数種の触媒系の成分は、反応経過の間に系から除去されうるので、実際の触媒系内でのレベルを維持するために、レベルを補充する必要があることもある。
【0133】
上述のように、当業者であれば、本明細書に記載のホスフィンは、VIB族またはVIIIB族金属または化合物と、さらに存在する酸と配位して、錯体を形成する配位子として機能しうることは理解されるであろう。この錯体が、本発明において有効な触媒の役を果たし、したがって、本明細書に定義されている触媒系の役を果たす。
【0134】
したがって、さらなる態様では、本発明は、エチレン系不飽和化合物のカルボニル化を触媒することが可能な錯体を提供し、この錯体は、
a)VIB族もしくはVIIIB族の金属またはそれらの化合物、
b)二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子、好ましくは二座ホスフィン配位子、および
c)酸
を組み合わせることにより得られ、その際、該配位子は、該金属または該金属化合物中の該金属に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在し、該酸は、該配位子に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在する。
【0135】
さらに他の態様では、本発明は、上述で定義された上述の錯体の存在下で、エチレン系不飽和化合物を、一酸化炭素およびヒドロキシル基含有化合物を用いてカルボニル化する方法を提供する。
【0136】
本発明による方法では、一酸化炭素を、純粋な形態で使用することもできるし、窒素、二酸化炭素またはアルゴンなどの希ガスなどの不活性ガスで希釈することもできる。通常は5%容量未満の少量の水素が存在してもよい。
【0137】
エチレン系不飽和化合物とヒドロキシル基含有化合物との比(容量/容量)は、広い範囲で変動してよく、適切には、1:0.1から1:10、好ましくは2:1から1:2であり、さらに、ヒドロキシル基含有化合物が反応溶剤でもある場合には、ヒドロキシル基含有化合物の大規模な過剰まで、例えば、ヒドロキシル基含有化合物の50:1過剰までである。
【0138】
エチレン系不飽和化合物と一酸化炭素とのモル比は好ましくは、1:1から100:1、さらに好ましくは1:1を上回り、さらに好ましくは少なくとも3:1、特に、3:1から50:1、さらに好ましくは、3:1から15:1の範囲である。
【0139】
エチレン系不飽和化合物のカルボニル化方法で使用される本発明の触媒の量は、厳密ではない。好ましくは、VIBまたはVIIIB族金属の量がエチレン系不飽和化合物1モル当たり10−7から10−1、さらに好ましくはエチレン系不飽和化合物1モル当たり10−6から10−2、さらに好ましくは10−5から10−2モルの範囲内であると、良好な結果を得ることができる。好ましくは、不飽和化合物に対する式Iまたは式IIIの二座化合物の量は、エチレン系不飽和化合物1モル当たり10−7から10−1、さらに好ましくは10−6から10−2、さらに好ましくは10−5から10−2の範囲内である。
【0140】
適切には、本発明に必須ではないが、本明細書で定義されているエチレン系不飽和化合物のカルボニル化を、1種または複数の非プロトン溶剤中で行うことができる。適切な溶剤には、例えばメチルブチルケトンなどのケトン;例えばアニソール(メチルフェニルエーテル)、2,5,8−トリオオキサノナン(ジグリム)、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびジエチレングリコールのジメチルエーテルなどのエーテル;例えば、酢酸メチル、アジピン酸ジメチル、安息香酸メチル、フタル酸ジメチルおよびブチロラクトンなどのエステル;例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミドなどのアミド;例えばジメチルスルホキシド、ジ−イソプロピルスルフォン、スルホラン(テトラヒドロチオフェン−2,2−ジオキシド)、2−メチルスルホラン、ジエチルスルホン、テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシドおよび2−メチル−4−エチルスルホランなどのスルホキシドおよびスルホン;そのような化合物のハロ変異体を含む芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン;そのような
化合物のハロ変異体を含むアルカン、例えば、ヘキサン、ヘプタン、2,2,3−トリメチルペンタン、塩化メチレンおよび四塩化炭素;ニトリル、例えばベンゾニトリルおよびアセトニトリルが含まれる。
【0141】
298.15Kおよび1×105Nm−2で50未満、さらに好ましくは3から8の範囲の値である誘電率を有する非プロトン性溶剤が非常に適している。本明細書中、所定の溶剤に関する誘電率を、誘電体としての物質を備えたコンデンサーの容量と誘電体の代わりに真空を備えた同じコンデンサーの容量との比を表す通常の意味で使用する。一般的な有機液体の誘電率の値は通常、Handbook of Chemistry and Physics、第76版、デビッド アール ライドら(David R.Lide et al)編、CRCプレス(CRC press)発行(1995年)などの参照文献で見ることができ、通常は、約20℃または25℃の温度で、すなわち約293.15Kまたは298.15Kおよび大気圧、すなわち約1×105Nm−2で算出されているか、算出された換算係数を使用して、その温度および圧力に容易に変換することができる。特定の化合物に関して文献データを利用することができない場合には、確立されている物理化学的方法を使用して、誘電率を容易に測定することができる。
【0142】
例えば、アニソールの誘電率は、4.3(294.2Kで)であり、ジエチルエーテルでは、4.3(293.2Kで)であり、スルホランでは、43.4(303.2Kで)であり、ペンタン酸メチルでは、5.0(293.2Kで)であり、ジフェニルエーテルでは、3.7(283.2Kで)であり、アジピン酸ジメチルでは、6.8(293.2Kで)であり、テトラヒドロフランでは、7.5(295.2Kで)であり、ノナン酸メチルでは、3.9(293.2Kで)である。好ましい溶剤は、アニソールである。
【0143】
ヒドロキシル基含有化合物がアルカノールである場合、反応により、非プロトン性溶剤が生じるが、それというのも、エチレン系不飽和化合物、一酸化炭素およびアルカノールのエステルカルボニル化生成物は、非プロトン性溶剤であるためである。
【0144】
方法を、非プロトン性溶剤過剰で、すなわち、非プロトン性溶剤とヒドロキシル基含有化合物との少なくとも1:1の比(v/v)で実施することができる。好ましくは、この比は、1:1から10:1、さらに好ましくは1:1から5:1の範囲である。さらに好ましくは、比(v/v)は、1.5:1から3:1の範囲である。
【0145】
上述にもかかわらず、反応を、外部から加えられた非プロトン性溶剤、すなわち反応自体により生じたのではない非プロトン溶剤の不在下に実施することが好ましい。
本発明の触媒化合物は、「不均一系」触媒としても、「均一系」触媒としても作用しうる。
【0146】
「均一系」触媒との用語は、支持されてなく、好ましくは本明細書に記載の適切な溶剤中で、カルボニル化反応の反応成分(例えばエチレン系不飽和化合物、ヒドロキシル含有化合物および一酸化炭素)とその場で単に混合されるか、生じる触媒、すなわち本発明の化合物を意味している。
【0147】
「不均一系」触媒との用語は、支持体に支持されている触媒、すなわち本発明の化合物を意味する。
したがって、さらなる態様では、本発明は、本明細書で定義されているエチレン系不飽和化合物のカルボニル化方法を提供するが、この際、この方法を、支持体、好ましくは不溶性支持体を含む触媒を用いて実施する。
【0148】
好ましくは、支持体は、ポリオレフィン、ポリスチレンなどのポリマーまたはジビニル
ベンゼンコポリマーなどのポリスチレンコポリマーもしくは当業者に知られている他の適切なポリマーまたはコポリマー;官能化シリカ、シリコーンまたはシリコーンゴムなどのシリコーン誘導体;または例えば無機酸化物および無機塩化物などの他の多孔性粒子材料を包含する。
【0149】
好ましくは、支持体は、10から700m2/gの範囲の表面積、0.1から4.0c
c/gの範囲の全空孔容量および10から500μmの範囲の平均粒径を有する多孔性シリカである。さらに好ましくは、表面積は、50から500m2/gの範囲内であり、空
孔容量は、0.5から2.5cc/gの範囲内であり、平均粒径は、20から200μmの範囲内である。さらに望ましくは、表面積は、100から400m2/gの範囲内であ
り、空孔容量は、0.8から3.0cc/gの範囲内であり、平均粒径は、30から100μmの範囲内である。通常の多孔性支持体料の平均空孔サイズは、10から1000Åの範囲である。好ましくは、平均空孔直径50から500Å、さらに望ましくは75から350Åを有する支持体を使用する。100℃から800℃の温度で、約3から24時間、シリカを脱水することが、特に望ましい。
【0150】
適切には、支持体は、柔軟か、硬い支持体であってよく、不溶性支持体は、当業者によく知られている技術により本発明の方法の化合物でコーティングおよび/または含浸されている。
【0151】
あるいは、本発明の方法の化合物を、任意選択で共有結合を介して不溶性支持体の表面に固定するが、この配置は、化合物と不溶性支持体との間にスペースを設けるための二官能性スペーサー分子を含んでもよい。
【0152】
式IまたはIIIの化合物に存在する官能基、例えば、アリール部分の置換基K、D、ZおよびE(またはK1、D1およびE1)と支持体に存在するか、それに予め挿入されて
いる相補的反応基との反応を促進することにより、本発明の化合物を不溶性支持体の表面に固定することができる。支持体の反応基と本発明の化合物の相補的置換基との組合せにより、本発明の化合物および支持体がエーテル、エステル、アミド、アミン、尿素、ケト基などの結合を介して結合している不均一系触媒が生じる。
【0153】
本発明の方法の化合物と支持体とを結合させるための反応条件の選択は、エチレン系不飽和化合物および支持体の群に左右される。例えば、カルボジイミド、1,1’−カルボニルジイミダゾールなどの反応試薬ならびに混合無水物の使用、還元的アミノ化などの方法を使用することができる。
【0154】
他の態様では、本発明は、支持体に触媒が結合している本発明の態様の方法の使用を提供する。
簡便には、本明細書に定義されているVIBまたはVIIIB族金属またはそれらの化合物を、上述のヒドロキシル基含有化合物または非プロトン性溶剤のいずれかなどの適切な溶剤に溶かし(特に好ましい溶剤は、特定のカルボニル化反応のエステルまたは酸生成物、例えば、エチレンカルボニル化ではプロピオン酸メチルであろう)、続いて、本明細書に定義されている式IまたはIIIの化合物および酸と混合することにより、本発明の方法を実施することができる。
【0155】
一酸化炭素を、反応中で不活性な他のガスの存在下で使用することもできる。このようなガスの例には、水素、窒素、二酸化炭素およびアルゴンなどの希ガスが含まれる。
式IまたはIIIの化合物と組み合わせることができる適切なVIBまたはVIIIB族金属またはその化合物には、コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、白金、クロム、モリブデンおよびタングステンが含まれ、好ましくは、コバルト、ニッケル、パラジ
ウム、ロジウムおよび白金が含まれる。好ましくは、成分a)は、VIIIB族金属またはそれらの化合物である。好ましくは、金属は、パラジウムなどのVIIIB族金属である。好ましくは、VIIIB族金属は、パラジウムまたはその化合物である。したがって、成分a)は好ましくは、パラジウムまたはその化合物である。このようなVIBまたはVIIIB族金属の適切な化合物には、このような金属と、硝酸;硫酸;酢酸およびプロピオン酸などの低級アルカン(C12まで)酸;メタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸および2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸;スルホン化イオン交換樹脂;過塩素酸などの過ハロゲン酸;トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸;オルトリン酸;ベンゼンホスホン酸などのホスホン酸;ならびにルイス酸とブレンステッド酸との相互作用に由来する酸との塩またはこれらに由来する弱配位アニオンを有する化合物が含まれる。適切なアニオンを提供しうる他の源には、ハロゲン化されていてもよいホウ酸テトラフェニル誘導体、例えば、ホウ酸ペルフルオロテトラフェニルが含まれる。加えて、0価パラジウム錯体、特に、不安定な配位子、例えばトリフェニルホスフィンもしくはジベンジリデンアセトンまたはスチレンなどのアルケンを伴うもの、例えば、トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを使用することもできる。しかしながら、上述のものなどのアニオンの他の源が存在する場合にも、上述の触媒系には、酸が存在する。
【0156】
したがって、酸は、18℃で水溶液中で測定して、4未満、さらに好ましくは3未満、最も好ましくは2未満のpKaを有する酸から選択される。適切な酸には、上述で挙げた酸が含まれる。好ましくは、酸は、カルボン酸ではなく、さらに好ましくは、酸は、スルホン酸であるか、過塩素酸、リン酸、メチルホスホン酸、硫酸およびスルホン酸からなるリストから選択されるものなどの数種の他の非カルボン酸であり、さらに好ましくは、水溶液中18℃で測定して、2未満のpKaを有するスルホン酸または他の非カルボン酸(上述のリストから選択される)、一層好ましくは、水溶液中18℃で測定して2未満のpKaを有するスルホン酸であり、さらに一層好ましくは、酸は、次のスルホン酸:メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、t−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸および2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸からなるリストから選択され、最も好ましくは、酸は、メタンスルホン酸である。
【0157】
上述のように、本発明の触媒系は、均一系または不均一系で使用することができる。好ましくは、触媒系を均一系で使用する。
本発明の触媒系を好ましくは、1種または複数の反応成分または適切な溶剤の使用により生じうる液相中で構成する。
【0158】
反応で使用されるエチレン系不飽和化合物の量とヒドロキシル提供化合物の量とのモル比は、厳密ではなく、幅広い範囲で、例えば0.001:1から100:1モル/モルまで変動してよい。
【0159】
本発明の配位子を使用するカルボニル化反応の生成物を、任意の適切な手段により、他の成分から分離することができる。しかしながら、著しく少ない副産物しか生じないので、生成物の当初分離の後にさらに精製する必要性が低いことが、本方法の利点であり、このことは、通常は著しく高い選択性によって証明され得る。他の利点は、触媒系を含む他の成分を、新規の触媒を最少量補充すれば、さらなる反応に再利用および/または再使用することができることである。
【0160】
好ましくは、カルボニル化を−10から150℃、さらに好ましくは0℃から140℃
、さらに一層好ましくは15℃から140℃、最も好ましくは20℃から120℃の温度で実施する。特に好ましい温度は、80℃から120℃の間で選択される温度である。有利には、カルボニル化を、中温で実施することができ、室温(20℃)で反応を実施することができることは、特に有利である。
【0161】
好ましくは、低温カルボニル化を運転する場合、カルボニル化を、−30℃から49℃、さらに好ましくは−10℃から45℃、さらにより好ましくは0℃から45℃、さらに一層好ましくは10℃から45℃、最も好ましくは15℃から45℃で実施する。15から35℃の範囲が、特に好ましい。
【0162】
好ましくは、カルボニル化を0.80×105N.m−2−90×105N.m−2、さらに好ましくは1×105N.m−2−65×105N.m−2、最も好ましくは1−30×105N.m−2のCO分圧で実施する。5から20×105N.m−2のCO分圧が特に好ましい。
【0163】
好ましくは、低圧カルボニル化も考えられる。好ましくは、低圧カルボニル化を運転する場合には、カルボニル化を0.1から5×105N.m−2、さらに好ましくは0.2から2×105N.m−2、最も好ましくは0.5から1.5×105N.m−2のCO分圧で実施する。
【0164】
エチレン系不飽和化合物は、上述の「アリール」基に関して上述で定義された基で任意に置換されていてもよいし、非置換であってもよい。特に適切な置換基には、アルキルおよびアリール基、さらに、ハリド、イオウ、リン、酸素および窒素などのヘテロ原子を含む基が含まれる。置換基の例には、クロリド、ブロミド、ヨージドおよびヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオールまたはチオアルコキシ基が含まれる。適切なエチレン系不飽和化合物には、直鎖または分枝鎖、環式または非環式または部分環式であってよく、二重結合が炭素鎖のどの適切な位置を占めてもよく、その立体異性体のすべてを含むC30までの、すなわち炭素原子2から30個を有するエテン、プロペン、ヘキセン、酢酸ビニルなどのビニル化合物、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセンなどが含まれる。
【0165】
さらに、不飽和化合物は、1個または複数の不飽和結合を有してもよく、したがって例えば、エチレン系不飽和化合物の範囲は、ジエンにまで及ぶ。不飽和結合は、中間でも末端でもよいが、本発明の触媒系は、内部オレフィンの変換において特に有利である。
【0166】
エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、例えばオクテ−2−エン、オクテ−3−エン、オクテ−4−エン、デセンおよびドデセン、トリイソブチレン、トリプロピレン、内部C14オレフィンおよび内部C15−C18オレフィン、1,5−シクロオクタジエン、シクロドデセン、ペンテン酸メチルおよびペンテンニトリル、例えばペンテ−2−エンニトリルなどの、1分子当たり2から22個の炭素原子を有するオレフィンが、特に好ましい。
【0167】
エチレン系不飽和化合物は好ましくは、1分子当たり1から3個の炭素−炭素二重結合を有するアルケンである。適切なジエンの非限定的な例には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、特に1,3−ブタジエンが含まれる。
【0168】
不飽和化合物の他の好ましいカテゴリーは、カルボン酸の不飽和エステルおよび不飽和カルボン酸のエステルからなる。例えば、出発原料は、酢酸またはプロパン酸などのカル
ボン酸のビニルエステルであってよいし、アクリル酸またはメタクリル酸のメチルまたはエチルエステルなどの不飽和酸のアルキルエステルであってよい。
【0169】
不飽和化合物の他の好ましいカテゴリーは、通常はカルボニル化を拒否するシクロアルカジエンからなる。例えば、ポリマー反応においてモノマーとして後で使用することができるジエステル、ジアミドまたは二酸を得るためには、出発原料は、ジシクロペンタジエンまたはノルボルナジエンであってよい。
【0170】
触媒系と共に、安定化化合物を使用することも、触媒系から失われていく金属の回収を改善する際に有利でありうる。触媒系を液体反応媒質中で使用する場合には、このような安定化化合物は、VIまたはVIIIB族金属の回収を促進しうる。
【0171】
したがって好ましくは、触媒系は、液体反応媒質中に、液体担体に溶解したポリマー分散剤を含み、この際、上述のポリマー分散剤は、触媒系のVIまたはVIIIB族金属または金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を液体担体内で安定化しうる。
【0172】
液体反応媒質は、反応のための溶剤であってもよいし、1種または複数の反応成分または反応生成物自体を含んでもよい。液体の形態の反応成分および反応生成物は、溶剤または液体希釈剤と混合しうるか、それに溶解しうる。
【0173】
ポリマー分散剤は、液体反応媒質中に可溶性であるが、反応動態または熱伝達に障害となるほど、反応媒質の粘度を著しく上昇させるべきではない。温度および圧力の反応条件下での液体媒質への分散剤の可溶性は、金属粒子上への分散剤分子の吸着を著しく阻止する程、高くあるべきではない。
【0174】
触媒分解の結果として生じる金属粒子が、液体反応媒質中に懸濁した状態で保持され、再生のために、および任意にさらなる量の触媒を製造する際の再利用のために、液体と一緒に反応器から排出されるように、ポリマー分散剤は、上述のVIまたはVIIIB族金属または金属化合物の粒子のコロイド懸濁液を液体反応媒質内で安定化させることが可能である。金属粒子は通常、例えば5−100nm平均粒径の範囲のコロイド寸法を有するが、場合によっては、より大きな粒子も生じうる。ポリマー分散剤の一部は、金属粒子の表面に吸着する一方で、残りの分散剤分子は、少なくとも部分的に、液体反応媒質に溶媒和化したままであり、このことにより、分散しているVIまたはVIIIB族金属粒子が安定化されて、反応器の壁面か反応器のデッドスペースに沈着しないように、さらに、粒子の衝突により成長しうるか、場合によって凝固しうる金属粒子の凝集物を生じないようになる。適切な分散剤が存在する場合にも、粒子の多少の凝集は生じうるが、分散剤タイプおよび濃度を最適化すれば、このような凝集は、比較的低いレベルであるはずであり、凝集物はゆっくりとしか生じないので、攪拌により、これらを破壊し、粒子を再分散させることができる。
【0175】
ポリマー分散剤は、ホモポリマーもしくはグラフトコポリマーおよびスターポリマーなどのポリマーを含むコポリマーを含んでもよい。
好ましくは、ポリマー分散剤は、上述のVIまたはVIIIB族金属または金属化合物のコロイド懸濁液を実質的に安定化させるために十分な酸性または塩基性官能性を有する。
【0176】
実質的に安定化させるとは、溶液相からのVIまたはVIIIB族金属の沈殿が実質的に回避されることを意味する。
このための特に好ましい分散剤には、カルボン酸、スルホン酸、アミンおよびアミドを含む酸性または塩基性ポリマー、例えば、ポリアクリレートまたは複素環、特に窒素複素
環、ポリビニルピロリドンなどの置換ポリビニルポリマーもしくは上述のコポリマーが含まれる。
【0177】
ポリマー分散剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミン、ポリグリシン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ−L−ロイシン、ポリ−L−メチオニン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−セリン、ポリ−L−チロシン、ポリ(ビニルベンゼンスルホン酸)およびポリ(ビニルスルホン酸)から選択することができる。
【0178】
好ましくは、ポリマー分散剤は、ポリマー骨格に懸垂しているか、ポリマー内に位置する酸性または塩基性部分を含む。好ましくは、酸性部分は、6.0未満、さらに好ましくは5.0未満、最も好ましくは4.5未満の解離定数(pKa)を有する。好ましくは、塩基性部分は、6.0未満、さらに好ましくは5.0未満、最も好ましくは4.5未満のpKである塩基解離定数を有し、ここで、pKは、希釈水溶液中、25℃で測定される。
【0179】
適切なポリマー分散剤は、反応条件下に反応媒質中に可溶性であることに加えて、少なくとも1個の酸性または塩基性部分をポリマー骨格内に、または懸垂基として含む。ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリアクリル酸(PAA)などのポリアクリレートなどの酸およびアミド部分を含むポリマーが特に適していることが判明した。本発明での使用に適しているポリマーの分子量は、反応媒質の性質およびそれへのポリマーの可溶性に左右される。通常、平均分子量は100000未満であることが判明した。好ましくは、平均分子量は、1000−200000、さらに好ましくは5000−100000、最も好ましくは10000−40000の範囲内であり、例えば、PVPを使用する場合には、Mwは好ましくは、10000−80000、さらに好ましくは20000−60000の範囲であり、PAAの場合には、1000−10000の範囲である。
【0180】
反応媒質内での分散剤の有効濃度は、使用される各反応/触媒系に関して決定されるべきである。
分散したVIまたはVIIIB族金属を、例えば濾過により反応器から除去される液体流から回収して、次いで、処分するか、触媒または他の用途として再使用するために処理することができる。連続法では、液体流を外部熱交換機を介して循環させることができるが、このような場合には、これらの循環装置中に、パラジウム粒子のためのフィルターを設置することが便利である。
【0181】
好ましくは、ポリマー:金属質量比はg/gで、1:1から1000:1、さらに好ましくは1:1から400:1、最も好ましくは1:1から200:1である。好ましくは、ポリマー:金属質量比はg/gで、1000まで、最も好ましくは400まで、さらに好ましくは200までである。
【0182】
他の態様では、1種または複数の反応成分と、上述で定義したような少なくとも1種のVIB族またはVIIIB族の金属または金属化合物、二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子、および酸を組み合わせることにより得られるか、それらを含む触媒系とを含む反応媒質を提供し、その際、該配位子は、該金属または該金属化合物中の該金属に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在し、該酸は、該配位子に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在する。
【0183】
好ましくは、上述の反応媒質は、液相反応媒質、さらに好ましくは、液相連続系反応系である。好ましくは、上述の反応媒質中で、ホスフィン配位子と直接組み合わされない酸である、媒質中に存在する遊離の酸の量は、500ppmを超え、さらに好ましくは10
00ppmを超え、最も好ましくは2000ppmを超える。
【0184】
他の態様では、本発明は、本明細書に定義されているように成分a)、b)およびc)を好ましくは比で組み合わせることを含む、本発明の触媒系を調製する方法を提供する。さらに他の態様では、本発明は、エチレン系不飽和化合物をカルボニル化する際の、好ましくは、エチレン系不飽和化合物を液相カルボニル化する際の、さらに好ましくは、エチレン系不飽和化合物を液相連続系カルボニル化する際の触媒としての、
a)VIB族もしくはVIIIB族の金属またはそれらの化合物、
b)二座ホスフィン、アルシンまたはスチビン配位子、好ましくは二座ホスフィン配位子、および
c)酸
を含むか、これらを組み合わせることにより得られる系の使用を提供し、この際、該配位子は、該金属または該金属化合物中の該金属に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在し、該酸は、該配位子に対して少なくとも2:1のmol過剰で存在する。
【0185】
疑義を回避するために、上述の形態はそれぞれすべて、そのような形態が、特定の態様と矛盾したり、相互に除外し合わない限り、本明細書に記載の本発明の様々な態様のいずれか、またはすべてに等しく適用することができる。
【0186】
本明細書に記載の文献はすべて、本明細書に援用される。
次の実施例で、本発明をさらに詳述する。これらの実施例は、上述で示されている広範な開示に該当する特定の材料の詳述と見なされるべきであり、広い開示を制限するものと見なされるべきではない。
【実施例1】
【0187】
1,2−ビス(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの調製
【0188】
【化9】
【0189】
方法1
この配位子の調製を次のように実施した。
1.1 (1−Ad)2P(O)Clの調製
三塩化リン(83cm3、0.98モル)をカニューレを介して、塩化アルミニウム(
25.0g、0.19モル)およびアダマンタン(27.2g、0.20モル)の組合せに迅速に加えると、黄褐色の懸濁液が生じる。反応物を環流まで加熱した。10分後に、黄−オレンジ色の懸濁液が生じた。反応物を全部で6時間環流させた。大気圧での蒸留により(BP75℃)、過剰のPCl3を除去した。周囲温度まで冷却すると、オレンジ色
の固体が生じた。クロロホルム(250cm3)を加えると、オレンジ色の懸濁液が生じ
、これを、0℃まで冷却させた。水(150cm3)を徐々に加えた:初めは、懸濁液粘
度が上昇したが、水をすべて加えると、粘度は低くなった。この点から、反応は、Arの雰囲気下ではもはや維持されなかった。懸濁液をブフナー濾過して、黄−オレンジ色の固体不純物を除去した。濾液は、2種の相系を含んだ。分離漏斗を使用して、下方の相を分離し、MgSO4上で乾燥させ、ブフナー濾過した。回転蒸発を介して、揮発性物質を除
去し、最終的に真空中で乾燥させると、オフホワイト色の粉末が生じた。収率35.0g、99%。31P NMR:δ=85ppm、純度99%。FW=352.85。
【0190】
1.2 (1−Ad)2PHの調製
LiAlH4(2.54g、67.0mmol)を90分かけて、(1−Ad)2P(O)Cl(10.00g、28.3mmol)の冷却THF(120cm3)溶液(−10
℃)に加えた。反応物を放置して、周囲温度まで加温し、次いで、20時間攪拌した。グレー色の懸濁液を−10℃まで冷却した。HCl(水溶液、脱ガス水50cm3中の濃H
Cl5cm3)を、シリンジを介してゆっくりと加えると(反応の発熱により、初めは非
常にゆっくりと)、下方の相に多少の固体物質を伴う2相系が得られた。さらなるHCl(濃HCl−5cm3)を加えて、層の分離を改善した。上方の相を、平先カニューレを
介して除去し、MgSO4上で乾燥させ、カニューレを介して濾過した。揮発性物質を真
空除去すると、生成物が白色の粉末として得られ、グローブボックス中で単離した。収量6.00g、70%。31P NMR:δ=17ppm、純度100%。FW=302.44。
【0191】
1.3 (1−Ad)2PClの調製
Ad2PH(10.5g、34.7mmol)およびDBU(6.12cm3、40.9mmol)からなるトルエン(250cm3)溶液を−10℃に冷却した。ホスゲン溶液
(30.0cm3、56.7mmol)をカニューレを介して、徐々に加え、メスシリン
ダーを介して移した。このことにより、かなり粘稠性の淡黄色の懸濁液が得られた。さらなるトルエン(100cm3)をカニューレを介して加えて、粘度を低下させ、攪拌を容
易にした。反応物をカニューレを介して濾過すると、黄色の濾液が得られた。残留物を、さらなるトルエン(2×100cm3)で洗浄し、洗浄液を元の濾液と合わせた。揮発性
物質を真空除去すると、淡黄色の固体が得られ、これを、ペンタン(2×30cm3、洗
浄液はほぼ無色)で洗浄した。生成物を真空乾燥させ、グローブボックス中でレモンイエロー色の粉末として単離した。収量7.84g、67%、31P NMR:δ=139ppm、純度99+%、FW=336.88。
【0192】
1.4 1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの調製
1.4.1 ジ−ソジオ−オルト−キシレン(DISOD)の調製
BuLi(ヘキサン中2.5M、11.28cm3、28.2mmol)を、シリン
ジを介して、NaOBu(粉砕物、2.71g、28.2mmol)、o−キシレン(1.15cm3、9.4mmol)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジ
アミン(TMEDA)(4.26cm3、28.2mmol)からなる攪拌されているヘ
プタン(100cm3)懸濁液に15分かけて加えた。反応物を60℃で2時間加熱し、
次いで、放置して、冷却/沈殿させると、明るいオレンジ色の固体(DISOD)および淡黄色の溶液が得られた。溶液をカニューレ濾過により除去し、固体をさらなるヘプタン(50cm3)で洗浄し、真空乾燥させた。想定収率90%、8.47mmol。
【0193】
1.4.2 ジ−ソジオ−オルト−キシレンと2当量(1−Ad)2PClとの反応
DISOD(8.47mmol)のEt2O(100cm3)懸濁液を−78℃で調製した。Ad2PCl(5.70g、16.9mmol)のEt2O(120cm3)懸濁液を
−78℃で迅速に攪拌し、大口径のカニューレを介してDISOD懸濁液に加えた。反応物を放置して、周囲温度まで加温し、18時間攪拌すると、淡黄色の混濁溶液が得られた。水(脱ガス、100cm3)を、カニューレを介して加えると、この物質の低い可溶性
により存在する大量の白色の固体(生成物)を伴う2相系が得られた。上相(Et2O)
をカニューレを介して除去した。ジクロロメタン(200cm3)を使用して、水性相中
の固体を抽出すると、2種の澄明な相が生じた。下相(CH2Cl2)を、カニューレを介して除去し、元のEt2O相と合わせた。揮発性物質を真空除去すると、やや粘稠性な固
体が得られた。摩擦しながら、固体をペンタン(200cm3)で洗浄し、洗浄液を、カ
ニューレ濾過を介して除去した。白色の固体を真空乾燥させ、グローブボックス中で脆い白色の粉末として単離した。収量3.5g、59%。FW=707.01。
【0194】
31P{1H}NMRデータ:−δ24ppm。
1H NMRデータ:−(400MHz,CDCl3,298K)δ7.59−7.50(m,2H,Ar−H)、7.09−6.99(m,2H,Ar−H)、3.01(d,4H,2PH=3.2Hz,CH2)、2.07−1.57(m,60H,C1015)ppm。
【0195】
13C{1H}NMRデータ:−(100MHz,CDCl3,298K)δ139.4(dd,JPC=10.7Hz,JPC=2.3Hz,Ar−C)、131.0(d,JPC=16.8Hz,Ar−C)、125.0(s,Ar−C)、41.1(d,2PC
=10.7Hz,Ad−C2)、37.2(s,Ad−C4)、36.9(d,1PC
22.9Hz,Ad−C1)、28.8(d,3PC=7.6Hz,Ad−C3)、22
.0(dd,1PC=22.9Hz,4PC=3.1Hz,CH2)。
【実施例2】
【0196】
1,2ビス(ジアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの調製(方法2)
2.1 塩化ジ−1−アダマンチルホスフィンを、実施例1.1の方法に従い調製した。
【0197】
2.2 ジ−1−アダマンチルホスフィンを、実施例1.2の方法に従い調製した。
2.3 (ジ−1−アダマンチルホスフィン)トリヒドロホウ素
ボラン(THF)付加生成物(10cm3、10mmol)を、ジ−1−アダマンチル
ホスフィン(1.36g、4.5mmol)の攪拌THF(30cm3)溶液に加えた。
さらに5時間攪拌すると、やや混濁した溶液が得られた。次いで、揮発性物質を真空除去すると、生成物が純白の固体として得られた。収量:1.39g、98%、純度99%。FW:315.25。31P NMR:δ41ppm(d、JPB64Hz)。
【0198】
2.4 secBuliでの脱プロトン化およびααジクロロo−キシレンとの反応を介しての1,2ビス(ジ−1−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの合成
ジ−1−アダマンチルホスフィントリヒドロホウ素(5g、15.8mmol)の攪拌されている冷却(−78℃)THF溶液(60cm3)に、secBuli(12.3c
3、16.6mmol)を徐々に加えたが(シリンジを介して)、添加がすべて終わる
と、溶液は、顕著な黄色の呈色を示した。溶液を−78℃で30分間攪拌し、次いで放置
して、室温まで加温し、さらに120分間攪拌した。次いで、溶液を−78℃まで冷却し、ααジクロロo−キシレンのTHF溶液(20cm3)を、カニューレを介して加えた
。次いで、溶液を放置して室温まで加温し、15時間攪拌した。次いで、揮発性物質を真空除去した。LiClおよび過剰の有機物質は、脱保護手順の間に除去されるので、さらなる後処理は必要ない。収率:100%、純度85%。
【0199】
31P{1H}NMR(CDCl3,298K)δ(d,br)41ppm。
11B{1H}NMR δ−43ppm(d,JBP 44Hz)
1H NMR(CDCl3,298K)δ7.8−7.50ppm(m,br Ar−H)、δ7.49−7.00ppm(m,br Ar−H)、δ3.3ppm(d,CH2
)、δ2.2−1.2ppm(m,C1015
2.5 HBF4O(ME)2を用いての1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの脱保護を介しての1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの合成
テトラフルオロホウ酸ジメチルエーテル錯体(5当量、12.5mmol、1.5cm3)を、1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼン(ジクロ
ロメタン70cm3)の攪拌されている冷却(0℃)溶液にシリンジを介して徐々に加え
た。溶液を0℃で1時間攪拌し、次いで放置して、周囲温度に加温し、さらに12時間攪拌した。次いで、反応混合物を冷却(0℃)飽和溶液(脱ガス)NaHCO3溶液(5×
過剰のNaHCO3)に加え、50分間激しく攪拌した。次いで、有機相をジエチルエー
テル2×30cm3部で抽出し、DCM抽出物に加えた。次いで、有機層を脱ガス水2×
30cm3部で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。次いで、揮発性物質を真空除去した。
【0200】
31P{1H}NMR;δ26.4ppm(s)。
1 NMR(CDCl3,298K)δ7.54ppm(q,Ar−H,JHH 3.4Hz)、7.0ppm(q,Ar−H,JHH 3.4Hz)、3.0ppm(d,br CH2)1.6−2.1ppm(m,br C1015)。
【実施例3】
【0201】
1,2ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン(方法2)の調製
【0202】
【化10】
【0203】
3.1 塩化ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィン酸を実施例2.1の方法に従い調製したが、ただし、アダマンタンの代わりに1,3−ジメチルアダマンタン21.7g(0.132モル)およびAlCl3(18.5g、0.14モル)を使用
した。収量23.5g、FW:409.08。31P NMR:δ:87ppm(s)。
【0204】
3.2 ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィンを上述の実施例2.2に従い調製したが、ただし、塩化ジ−1−アダマンチルホスホン酸の代わりに、塩化ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィン酸25.0gを使用した。収量15.7g、FW:358.58、31P NMR:δ:15.7ppm(s)。
【0205】
3.3 ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィン}トリヒドロホウ素を上述の実施例2.3に従い調製したが、ただし、ジ−1−アダマンチルホスフィンの代わりに、ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィン10.0gを使用した。収量9.5g、31P NMR:δ:40.5ppm(br)。
【0206】
3.4 secBuliでの脱プロトン化およびααジクロロo−キシレンとの反応を介しての1,2−ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチル(ボラン)メチル)ベンゼンの合成を上述の実施例2.4に従い調製したが、ただし、ジ−1−アダマンチルホスフィントリヒドロホウ素の代わりに、等モル量のジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィントリヒドロホウ素を使用した。
【0207】
3.5 HBF4O(ME)2を用いての1,2−ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの脱保護を介しての1,2−ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの合成を、上述の1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼン(実施例2.5)に従い調製したが、ただし、1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの代わりに、等モル量の1,2−ビス(ジ−3,5−ジメチルアダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンを使用した。
【実施例4】
【0208】
1,2−ビス(ジ−5−t−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの調製(方法2)
【0209】
【化11】
【0210】
4.1 塩化ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン酸を上述の塩化ジ−1−アダマンチルホスフィン酸に従い調製したが、ただし、アダマンタンの代わりにt−ブチルアダマンタン25.37g(0.132モル)およびAlCl3(18.5gg、
0.14モル)を使用した。収量22.6g、FW:464.98。31P NMR:δ:87ppm(s)。
【0211】
4.2.1 ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィンを、上述のジ−1−アダマンチルホスフィンに従い調製したが、ただし、塩化ジ−1−アダマンチルホスフィン酸の代わりに、塩化ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン酸13.5gを使用した。収量9.4g、FW:414.48。31P NMR:δ:18.62ppm(s)。
【0212】
4.2.2 ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン)トリヒドロホウ素を上述のジ−1−アダマンチルホスフィンに従い調製したが、ただし、ジ−1−アダマンチルホスフィンの代わりに、ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン10.0gを使用した。収量9.5g、31P NMR:δ:41.6ppm(br)。
【0213】
4.2.3 secBuliでの脱プロトン化およびααジクロロo−キシレンとの反応を介しての1,2−ビス(ジ−5−t−ブチルアダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの合成を上述の1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスホル)ボラン(メチル)ベンゼンに従い調製したが、ただし、ジ−1−アダマンチルホスフィントリヒドロホウ素の代わりに、等モル量のジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィントリヒ
ドロホウ素を使用した。
【0214】
4.3 HBF4O(ME)2を用いての1,2−ビス(ジ−4−t−ブチルアダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの脱保護を介しての1,2−ビス(ジ−5−t−ブチルアダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンの合成を、上述の1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンに従い調製したが、ただし、1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの代わりに、等モル量の1,2−ビス(ジ−5−t−ブチルアダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンを使用した。
【実施例5】
【0215】
1,2−ビス(1−アダマンチルt−ブチル−ホスフィノメチル)ベンゼンの調製(方法2)
5.1 二塩化1−アダマンチルホスホン酸
この化合物を、オラーら(Olah et al)(J.Org.Chem.1990、55巻、1224−1227頁)の方法に従い合成した。
【0216】
5.2 1−アダマンチルホスフィン
LiAlH4(3.5g、74mmol)を、二塩化1−アダマンチルホスホン酸(1
5g、59mmol)の冷THF(250cm3)溶液(0℃)に2時間かけて加えた。
次いで、反応物を放置して周囲温度まで加温し、20時間攪拌した。次いで、灰色の懸濁液を冷却し(0℃)、HCl(75cm3、1M)を、シリンジを介して徐々に加えると
、下相に多少の固体が存在する2相系が生じた。次いで、濃HCl(8cm3、11M)
を加えて、2層の分離を改善した。(上の)THF相を、カニューレを介して除去し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。カニューレで濾過した後に、揮発性物質を真空除去すると、生成物が得られた。
【0217】
5.3 (1−アダマンチル−t−ブチルホスフィン)トリヒドロホウ素
nBuLi(20cm3、32mmol、1.6M溶液)を1時間かけて、1−アダマ
ンチルホスフィン(5.0g、30mmol)の冷THF(100cm3)溶液に加えた
。溶液を放置して、室温まで加温し、さらに2時間攪拌した。溶液を0℃まで再び冷却し、塩化t−ブチル(2.78g、30mmol)を加え、攪拌を室温でさらに16時間継続した。ボラン(THF)付加生成物(30cm3、30mmol)を加えることにより
、物質をボラン付加生成物として単離し、続いて、溶剤を除去した。物質を、異性体混合物である白色の固体として単離した。
【0218】
5.4 secBuliでの脱プロトン化およびααジクロロo−キシレンとの反応を介しての1,2−ビス(1−アダマンチル−t−ブチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの合成
この合成を上述の1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンに従い調製したが、ただし、ジ−1−アダマンチルホスフィントリヒドロホウ素の代わりに、等モル量の1−アダマンチル−t−ブチル(ホスフィン)トリヒドロホウ素を使用した。
【0219】
5.5 HBF4O(ME)2を用いての1,2−ビス(1−アダマンチル−t−ブチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの脱保護を介しての1,2−ビス(1−アダマンチル−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンの合成
上述の1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスホリノメチル)ベンゼンに従い、ただし、1,2−ビス)(ジ−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの代わりに、等モル量の1,2−ビス(1−アダマンチル−t−ブチルホスホル(ボラン)メチル)ベン
ゼンを使用した。
【実施例6】
【0220】
1,2−ビス(ジ−1−ジアマンタンホスフィノメチル)ベンゼンの調製。ジアマンタン=コングレッサン
【0221】
【化12】
【0222】
6.1 ジアマンタン
タマラら(Tamara et al.)著、Organic Syntheses、CV6、378の方法に従い、これを合成した。
【0223】
6.2 塩化ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン酸
塩化ジ−1−アダマンチルホスフィン酸に従い調製したが、ただし、ジアマンタン20.0g(0.106モル)およびAlCl3(16.0g、0.12モル)を使用した。
収量25.5g、FW:456.5。31P NMR:δ:87ppm(s)。
【0224】
6.3 ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン
ジ−1−アダマンチルホスフィンに従い調製したが、塩化ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン酸25.0gを使用した。収量14.0g、FW:406。31P NMR:δ:16.5ppm(s)。
【0225】
6.4 ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン}トリヒドロホウ素
ジ−1−アダマンチルホスフィントリヒドロホウ素に従い調製したが、ただし、ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン15.0gを使用した。収量14.5g、31P NMR:δ:42.1ppm(br)。
【0226】
6.5 secBuliでの脱プロトン化およびααジクロロo−キシレンとの反応を介しての1,2−ビス(ジアマンタンホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの合成
1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンに従い調製したが、ただし、ジ−1−アダマンチルホスフィントリヒドロホウ素の代わりに、等モル量のジアマンタンホスフィントリヒドロホウ素を使用した。
【0227】
6.6 HBF4O(ME)2を用いての1,2−ビス(ジアマンタン(ボラン)メチル)ベンゼンの脱保護を介しての1,2−ビス(ジアマンタンホスフィノメチル)ベンゼンの合成
1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスホリノメチル)ベンゼンに従い調製したが、ただし、1,2−ビス(ジ−アダマンチルホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンの代わりに、等モル量の1,2−ビスジアマンチン(diamantine)ホスホル(ボラン)メチル)ベンゼンを使用した。
【実施例7】
【0228】
1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンの調製
【0229】
【化13】
【0230】
この配位子の調製を、実施例18に従い国際公開第99/47528号パンフレットに開示されている方法で実施した。
【実施例8】
【0231】
比較例
1,3−ビス(ジアダマンチルホスフィノ)プロパンの調製
1,3−ビス−(ジ−1−アダマンチルホスフィノ)プロパンの調製(2)
8.1 (1−Ad)2PLiの調製
BuLi(ヘキサン中2.5M、42.02cm3、105.1mmol)を、シリ
ンジを介してAd2PH(10.59g、35.0mmol)のTHF(150cm3)攪拌溶液に滴加した。このことにより、穏やかな発熱反応下に、溶液が黄色へと暗色化し、大量の黄色の固体が沈殿した。反応物を周囲温度で3時間攪拌した。揮発性物質を真空除去すると、非常に淡いオレンジ色の固体が得られた。この固体をペンタン(2×50cm3)で洗浄して、過剰のBuLiを除去すると、白色の粉末が単離され(洗浄液はオレ
ンジ色)、これを、真空乾燥させた。先行するNMR実験をもとに、この工程での収率は、定量的と推測された。
【0232】
8.2 1,3−ジブロモプロパンと2当量の(1−Ad)2PLiとの反応
1,3−ジブロモプロパン(脱ガス、1.78cm3、17.5mmol)を、Ad2
Li(35.0mmol、上述と同様に調製)の攪拌THF(150cm3)懸濁液にシ
リンジを介して滴加した。初めに黄色の溶液が生じ、次いで、大量の白色の固体が急に生じた(生成物)。揮発性物質を真空除去し、カニューレを介してジクロロメタン(300cm3)を加えると、混濁溶液が生じた。水(脱ガス、100cm3)を加えると、混濁が消えて、2相系が生じた。カニューレ濾過を介して、下相を除去した。揮発性物質を真空除去すると、白色の粉末が得られ、これを、ペンタン(100cm3)で洗浄し、乾燥さ
せ、グローブボックス中で単離した。収量6.45g、57%。31P NMR:δ=24ppm、純度95+%。FW=644.94。
【実施例9】
【0233】
1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセンの調製
窒素下、25℃の温度で、n−ブチルリチウム(アルドリッチ(Aldrich)、ヘキサン中2.5モル、24ml、54mmol)を(ジメチルアミノメチル)フェロセン(アルドリッチ、13.13g、10.69ml、48.97mmol)のジエチルエーテル(80ml)溶液に加え、この反応混合物を4時間攪拌した。次いで、ドライアイス/アセトン浴中で、生じた赤色の溶液を約−70℃に冷却し、Eschenmosers塩(ICH2NMe2)(アルドリッチ、10g、54mmol)を加える。反応物を放置して、室温まで加温し、一晩攪拌する。
【0234】
生じた溶液を、過剰の水酸化ナトリウム水溶液でクエンチし、生じた生成物をジエチルエーテル(3×80ml)で抽出し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、セライトで濾過し、揮発性物質を真空除去すると、粗製の表題化合物が淡オレンジ色の結晶固体として得られる。−17℃に冷却しながら、粗製生成物を石油エーテルから再結晶させ、再結晶した生成物を冷ガソリンで洗浄すると、表題の化合物が淡オレンジ色の固体(13.2g、74%)として得られた。昇華により、化合物をさらに精製すると、表題の化合物(融点74℃)8.5g(52%)を得ることができる。
【0235】
1H NMR(250MHz;CDCl3):δ4.23(brd,2H);4.11−4.10(t,1H);4.04(s,5H);3.43、3.38、3.23、3.18(AB 四重線,2H);2.22(s,6H)。
【0236】
13C NMR(63MHz;CDCl3):δ83.81;70.40;69.25;
66.84;57.35;45.23。
元素分析:実測値:C 63.7%;H 8.9%;N 9.5%
計算値:C 64.0%;H 8.1%;N 9.4%
【実施例10】
【0237】
1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
ジ−t−ブチルホスフィン(アルドリッチ、0.616ml、3.33mmol)を、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(実施例9、0.5g、1.66mmol)の無水酢酸(100ml)溶液に窒素下に加え、生じた混合物を80℃で72時間攪拌する。無水酢酸を約70℃で真空除去すると、粗製の表題生成物がオレンジ/黄色の固体として得られる。この粗製生成物を−17℃に冷却しながらエタノールから再結晶させ、濾過し、濾液を冷エタノールで洗浄すると、表題の化合物が淡黄色の固体として得られた(0.365g、44%、84℃)。
【0238】
1H NMR(250MHz;CDCl3):δ4.4(2H,d,J=2Hz);3.95(5H,s);3.75(1H,t,2Hz);2.8(2H,dd,12Hz,2Hz);2.6(2H,dd,12Hz,2Hz);1.1(36H,m)。
【0239】
13C NMR(63MHz;CDCl3):δ86.73(d,5.46Hz);70
.08(d,4.41Hz);69.4665(s);63.75(s);31.80(d,2Hz);31.45(d,1.98Hz);29.89(d,1.88Hz)。
【0240】
31P NMR(101MHz;CDCl3):δ15.00ppm。
元素分析:実測値:C:66.79%;H:9.57%
計算値:C:66.93%;H:9.63%
【実施例11】
【0241】
1−ヒドロキシメチル−2−ジメチルアミノメチルフェロセンの調製
n−ブチルリチウム(アルドリッチ、ジエチルエーテル中1.6モル、5.14ml、8.24mmol)をアルゴン下に、1−ジメチルアミノメチルフェロセン(アルドリッチ、1.0g、4.12mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に加える。反応物を3時間攪拌すると、これは、赤っぽい色を示す。次いで、溶液をドライアイス/アセトン浴中で冷却し、か焼パラホルムアルデヒド(0.247g、2倍過剰)を加え、生じた混合物を室温で一晩攪拌する。次いで、反応物を水でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出し、MgSO4上で乾燥させ、セライトで濾過する。溶剤を真空除去すると、粗製の
表題化合物が得られる。粗製生成物を、中性アルミナカラムに施与し、これを、ガソリン/ジエチルエーテル(比9:1)で溶離して、出発原料、1−ジメチルアミノメチルフェロセンを除去する。次いで、カラムを実質的に純粋な酢酸エチルで溶離して、表題の化合物を溶離する。酢酸エチルを真空除去すると、表題の化合物がオレンジ色のオイル/結晶塊として得られる。
【0242】
1H NMR(250MHz;CDCl3)δ2.131(s,6H)、δ2.735(d,1H,12.512Hz)、δ3.853(d,1H,12.512Hz)、δ3.984(dd,1H,2.156Hz)、δ4.035(s,5H)、δ4.060(dd,1H,2.136Hz)δ4.071(d,1H,12.207.Hz)、δ4.154(m,1H)、δ4.73(d,1H,12.207Hz)。
【0243】
13C NMR(61MHz;CDCl3)δ7.688、δ84.519、δ70.6
15、δ68.871、δ68.447、δ65.369、δ60.077、δ58.318、δ44.414
COSY 2D 1H NMR
4.071ppmでの部分的に不明瞭な二重項および4.73ppmでの二重項へのそのカップリングが確認された。
【0244】
赤外線スペクトル(CHCl3)(約0.06g/0.8mL)。
2953.8cm−1、2860.6cm−1、2826.0cm−1、2783.4c
−1、1104.9cm−1
【実施例12】
【0245】
1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
ジ−t−ブチルホスフィン(アルドリッチ、0.54ml、2.93mmol)を無水酢酸(15ml)および無水酢酸(0.753mmol)中の1−ヒドロキシメチル−2−ジメチルアミノメチルフェロセン(実施例11、0.2g、0.753mmol)の溶液にアルゴン下に加え、生じた混合物を80℃で72時間攪拌する。無水酢酸を約70℃で真空除去すると、粗製の表題生成物がオレンジ/黄色の固体として得られる。粗製生成物を−17℃に冷却しながらエタノールから再結晶させ、濾過し、濾液を冷エタノールで洗浄すると、表題の化合物がオレンジ色の固体として得られる(0.23g)。
【0246】
1H NMR(250MHz;CDCl3)δ4.351(d,2H,2Hz)、δ4.022(s,5H)、δ3.827(t,1H,2Hz)、δ2.858(ddd,2H,JHH 15.869Hz,JHP1 3.320Hz,JHP2 1.831Hz)、δ2.679(dd,2H,JHH 15.869Hz,JHP 2.441Hz)、δ1.166(d,18H,12.817Hz)、δ1.123(d,18H,12.512Hz)
FTIR(クロロホルム,NaClプレート)
1104.1cm−1、2863cm−1、2896.0cm−1、2940.0cm−1、2951.8cm−1
31P NMR(101MHz;CDCl3):δ15.00ppm。
【0247】
元素分析:実測値:C:66.5%;H:9.6%
計算値:C:66.9%;H:9.6%
【実施例13】
【0248】
1−ヒドロキシメチル−2,3−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセンの調製
アルゴン下に、1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン(実施例9、0.70g、2.32mmol)の攪拌ジエチルエーテル(15cm3)溶液に、1.2当量
のn−ブチルリチウム(アルドリッチ、1.75mL、ジエチルエーテル中1.6M)を加え、この混合物を3時間攪拌すると、赤色の溶液が得られる。反応混合物をドライアイス/アセトン浴中で冷却し、か焼パラホルムアルデヒドを2:1の過剰で加え、生じた混合物を室温で一晩攪拌する。混合物を水でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出する。エーテル抽出物をMgSO4上で乾燥させ、セライトで濾過し、溶剤を真空除去すると、表
題の化合物がオレンジ色のオイルとして得られ(0.7g、2.12mmol、91%)、これは、冷却すると部分的に結晶化する。
【0249】
1H NMR(250MHz;CDCl3)δ2.133(s,6H)、δ2.171(s,6H)、δ2.910(d,1H,12.817Hz)、δ2.998(d,1H,12.512Hz)、δ3.425(d,1H,12.817Hz)、δ3.812(d,1H,12.512Hz)、δ3.962(s,5H)、δ3.99(d,1H,12.207Hz)(δ3.962にある大きなcp環ピークのため一部不明瞭)、δ4.068(d,1H,δ2.136Hz)、δ4.125)d,1H,δ2.136Hz)、δ4.747(d,1H,12.207Hz)
13C NMR(60MHz;CDCl3)δ44.529、δ45.244、δ55.
798、δ57.906、δ60.271、δ67.944、δ68.277、δ69.612、δ84.850、δ88.322
赤外線スペクトル(CDCl3/薄膜NaClプレート)
3380.6cm−1(br)、2955.7cm−1(m)、2862.6cm−1
2825.9cm−1(m)、2774.3cm−1(m)、1353.5cm−1(m)
、1104.9cm−1(m)、1038.9cm−1(m)、1006.8cm−1(s

元素分析:実測値:C:62.3%;H:7.8%;N:8.8%
計算値:C:61.8%;H:7.9%;N:8.5%
【実施例14】
【0250】
1,2,3−トリス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
ジ−t−ブチルホスフィン(アルドリッチ、2.60mL、13.98mmol)および無水酢酸(0.24mL、2.33mmol)をアルゴン下に、1−ヒドロキシメチル−2,3−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン(実施例13、0.70g、2.12mmolの酢酸(無水酢酸から新たに蒸留、25cm3)溶液に加える。次いで、溶
液を80℃で7日間攪拌するが、その間に溶液は暗いオレンジ色になる。次いで、溶剤を真空除去し、−17℃に冷却しながら、環流エタノールから一晩再結晶させると、表題の化合物が黄/オレンジ色の粉末として得られる(0.43g、0.7mmol、31%)。
【0251】
1H NMR(250MHz,CDCl3)δ1.12(dd−三重線類似,36H,12.1Hz)、δ1.26(d,18H,10.7Hz)、δ2.68(d,2H,17.7Hz)、δ2.95(s,2H)、δ3.07、(m,2H)、δ4.01(s,5H)δ4.33(s,2H)
赤外線スペクトル(CHCl3/薄膜NaClプレート)
1365.5cm−1、1470.3cm−1、2357.1cm−1、2862.8c
−1、2896.7cm−1、2939.1cm−1
【実施例15】
【0252】
1,2−ビス−(ジシクロヘキシルホスフィノメチル)フェロセンの調製
表題の化合物を実施例10の手順に従い、ジシクロヘキシルホスフィン(ストレム(Strem)48 High Street Orwell、Royston、英国所在、SG8 5QW、659mg、3.33mmol)、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(0.5g、1.66mmol)および無水酢酸(100ml)を使用して調製した。収量0.421g。
【実施例16】
【0253】
1,2−ビス−(ジ−イソ−ブチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
表題の化合物を、実施例10の手順に従い、ジ−イソ−ブチルホスフィン(ストレム、486mg、3.33mmol)、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(0.5g、1.66mmol)および無水酢酸(100ml)を使用して調製した。収量0.372g。
【実施例17】
【0254】
1,2−ビス−(ジシクロペンチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
表題の化合物を、実施例10の手順に従い、ジシクロペンチルホスフィン(ストレム、566mg、3.33mmol)、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(0.5g、1.66mmol)および無水酢酸(100ml)を使用して調製した。収量0.432g。
【実施例18】
【0255】
1,2−ビス−(ジエチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
表題の化合物を、実施例10の手順に従い、ジエチルホスフィン(ストレム、299mg、3.33mmol)、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(0.5g、1.66mmol)および無水酢酸(100ml)を使用して調製した。収量0.254g。
【実施例19】
【0256】
1,2−ビス−(ジ−イソプロピルホスフィノメチル)フェロセンの調製
表題の化合物を、実施例10の手順に従い、ジ−イソ−プロピルホスフィン(デジタルスペシャリティケミカルズ(Digital Speciality Chemicals)、392mg、3.33mmol)、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(0.5g、1.66mmol)および無水酢酸(100ml)を使用して調製した。収量0.262g。
【実施例20】
【0257】
1,2−ビス−(ジメチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
表題の化合物を、実施例10の手順に従い、ジメチルホスフィン(デジタルスペシャリティケミカルズ(Digital Speciality Chemicals)、206mg、3.33mmol)、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(0.5g、1.66mmol)および無水酢酸(100ml)を使用して調製した。収量0.285g。
【実施例21】
【0258】
1,2−ビス−(ジアダマンチルホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
ジ−アダマンチルホスフィン(ジェイ アール ゲールリッチ(J.R.Goerlich)、アール シュムッツラー(R.Schmutzler)著;Phosphorus Sulphur and Silicon;1995、102、211−215頁に従い調製、20.0g、0.066モル)を窒素下に、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(実施例9、10g、0.033モル)の無水酢酸(100ml)溶液に加え、生じた混合物を80℃で72時間攪拌する。オレンジ黄色の沈殿物が生じ、これを濾過し、約70℃で真空乾燥させると、表題の化合物がオレンジ色/黄色の固体として得られる。表題の化合物は、一連の有機溶剤に不溶性であるので、過剰のメタンスルホン酸を粗製生成物のメタノールスラリーに加えて、ビス−メタンスルホン酸塩に変換することにより精製する。このことにより、生成物塩が完全に溶解し、次いでこれを、真空中でメタノールを除去することにより単離し、続いて、エーテルで洗浄し、乾燥させると、表題の化合物が淡黄色の固体として得られた(14.0g、54%)。
【0259】
1H NMR(250MHz;CD3CN):δ4.57(2H,d,J=2Hz);4.35(5H,s);4.27(1H,t,2Hz);3.34(4H,br);2.6(6H,br,);2.35−2.18(18H br);2.16−2.0(18H,br);1.92−1.72(24H,br)。
【0260】
31P NMR(101MHz;CD3CN):δ26.58ppm。
元素分析:実測値:C:64.15%;H:7.88% 計算値:C:64.29%;H:7.94%
【実施例22】
【0261】
1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
この配位子の調製を次のように実施した:
22.1 (1−Ad)2P(O)Clの調製
塩化ジ−1−アダマンチルホスフィンを、実施例1.1の方法に従い調製した。
【0262】
22.2 (1−Ad)2PHの調製
ジ−1−アダマンチルホスフィンを、実施例1.2の方法に従い調製した。
22.3 1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
表題の化合物を、実施例21に例示されている手順に従い調製した。
【実施例23】
【0263】
1,2−ビス(ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
23.1 塩化ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィン酸
実施例3.1の方法に従い調製した。
【0264】
23.2 ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィン
実施例3.2の方法に従い調製した。
23.3 1,2−ビス(ジ−1−(3,5−ジメチルアダマンチル)ホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネート
表題の化合物を、実施例21に例示されている手順に従い調製したが、ただし、ジ−アダマンチルホスフィンの代わりに、ジ−1−2(3,5−ジメチル−アダマンチル)ホスフィン(23.69g、0.066モル)を使用した。収量15g。
【実施例24】
【0265】
1,2−ビス(ジ−1−(5−t−ブチル−アダマンチル)ホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
24.1 塩化ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン酸
上述の実施例4.1に従い調製した。
【0266】
24.2 ジ−1−(5−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン
上述の実施例4.2に従い調製した。
24.3 1,2−ビス(ジ−1−(4−t−ブチル−アダマンチル)ホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネート
表題の化合物を、実施例21に例示されている手順に従い調製したが、ただし、ジ−アダマンチルホスフィンの代わりに、ジ−1−(4−t−ブチルアダマンチル)ホスフィン(27.39g、0.066モル)を使用した。収量14.52g。
【実施例25】
【0267】
1,2−ビス−(1−アダマンチルt−ブチルホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
25.1 二塩化1−アダマンチルホスホン酸
この化合物を、オラーら(J.Org.Chem.1990、55、1224−1227頁)の方法に従い合成した。
【0268】
25.2 1−アダマンチルホスフィン
LiAlH4(3.5g、74mmol)を2時間かけて、二塩化1−アダマンチルホ
スホン酸(15g、59mmol)の冷THF(250cm3)溶液(0℃)に加えた。
次いで、反応物を放置して、周囲温度まで加温し、20時間攪拌した。次いで、灰色の懸濁液を冷却し(0℃)、HCl(75cm3、1M)を、シリンジを介して徐々に加える
と、下相に多少の固体が存在する2相系が得られた。次いで、濃HCl(8cm3、11
M)を加えて、2層の分離を改善した。(上の)THF相を、カニューレを介して除去し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。カニューレを介して濾過した後に、揮発性物質を真空除去すると、生成物が得られた。
【0269】
25.3 1−アダマンチルt−ブチルホスフィン
nBuLi(20cm3、32mmol、1.6M溶液)を1時間かけて、1−アダマ
ンチルホスフィン(5.0g、30mmol)の冷THF(100cm3)溶液に加えた
。この溶液を放置して、室温まで加温し、さらに2時間攪拌した。溶液を0℃に再冷却し、塩化t−ブチル(2.78g、30mmol)を加え、攪拌を、室温でさらに16時間継続した。反応混合物を水でクエンチし、水相をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空蒸発させると、表題の化合物が得られた。
【0270】
25.4 1,2−ビス−(−1−アダマンチルt−ブチル−ホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネート
表題の化合物を、実施例21に例示されている手順に従い調製したが、ただし、ジ−アダマンチルホスフィンの代わりに、1−アダマンチルt−ブチルホスフィン(14.78g、0.066モル)を使用した。収率9.80g。
【実施例26】
【0271】
1,2−ビス−(ジ−1−ジアマンチルホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネートの調製
26.1 ジアマンタン
これを、タマラら(Tamara et al.)著、Organic Syntheses、CV6、378頁の方法に従い合成した。
【0272】
26.2 塩化ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン酸
実施例1.1の塩化ジ−1−アダマンチルホスフィン酸に従い、ただし、ジアマンタン20.0g(0.106モル)およびAlCl3(16.0g、0.12モル)を使用し
て調製した。収量25.5g、FW:456.5、31P NMR:δ:87ppm(s)。
【0273】
26.3 ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン
実施例1.2のジ−1−アダマンチルホスフィンに従い、ただし、塩化ジ−1−(ジアマンタン)ホスフィン酸25.0gを使用して調製した。収量14.0g、FW:406、31P NMR:δ:16.5ppm(s)。
【0274】
26.4 1,2−ビス−(ジ−1−ジアマンチルホスフィノメチル)フェロセン−ビス−メタンスルホネート
表題の化合物を、実施例21に例示されている手順に従い調製したが、ただし、ジ−アダマンチルホスフィンの代わりに、ジ−1−ジアマンタンホスフィン(26.79g、0.066モル)を使用した。収量12.5g。
【実施例27】
【0275】
1,2−ビス−(ジ−(1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファ−アダマンチルメチル))フェロセンの調製
1,3,5,7−テトラメチル−2,4,8−トリオキサ−6−ホスファ−アダマンタン(サイテック(Cytec)から入手、14.0g、0.066モル)を窒素下に、1,2−ビス(ジメチルアミノメチル)フェロセン(実施例9、10g、0.033モル)の無水酢酸(100ml)溶液に加え、生じた混合物を80℃で72時間攪拌する。無水酢酸を約70℃で真空除去すると、粗製の表題生成物がオレンジ/黄色の固体として得られた。これを、温メタノールで洗浄すると、生成物がオレンジ色の固体としての異性体混合物として得られる(12.0g、58%)。
【0276】
1H NMR(250MHz;CDCl3):δ4.25−3.95(8H,br,m);3.46(4H,br);1.57−2.0(8H,br,m);1.43−1.23(24H,br m)。
【0277】
31P NMR(101MHz;CDCl3):δ−27.41(br)、−29.01
(s)、−33.9(br)ppm。
元素分析:実測値:C:57.80%;H:7.35% 計算値:C:57.87%;H:7.40%
【実施例28】
【0278】
ヨウ化1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン−ビスメチルの調製
ヨウ化メチル(23.28g、0.164モル)を、1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン(実施例9、20g、0.082モル)の脱ガスメタノール(100ml)溶液に加え、混合物を室温で窒素雰囲気下に24時間攪拌した。生じた沈殿物を濾過により除去し、エーテルで洗浄し、乾燥させると、表題の化合物が得られた(43.0g)。
【0279】
元素分析:実測値:C:36.8%;H:5.1%;N、4.8%
計算値:C:37.0%;H:5.2%;N、4.8%
13C NMR(D2O):δ53.27、δ53.21、δ53.15、δ64.68
、δ71.77、δ73.24、δ74.13、δ74.95
【実施例29】
【0280】
1,2−ビス(ジヒドロキシメチルホスフィノメチル)フェロセンの調製
水酸化カリウム(8.52g、0.152モル)を、塩化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム(アルドリッチ、80%w/wの水溶液38.54g、0.162モル)の脱ガスメタノール(40ml)溶液に加え、窒素雰囲気下に室温で1時間攪拌する。生じた混合物を、窒素下に室温で攪拌しながら、ヨウ化1,2−ビス−(ジメチルアミノメチル)フェロセン−ビス−メチル(実施例28、19.98g、52.2mmol)の脱ガスメタノール(40ml)溶液に滴加する。生じた混合物を窒素下に20時間環流させ、溶剤を真空除去すると、赤色の沈殿物が生じる。水(30ml)、ジエチルエーテル(85ml)およびトリエチルアミン(35ml)を沈殿物に加え、溶液を室温で1時間攪拌する。水性層を除去し、ジエチルエーテルで再抽出する(2×30ml)。合わせたエーテル抽出物を水(3×20ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過する。エーテルを真空除去すると、粗製の表題化合物(14.33g、収率94%)が微結晶性のオレンジ色の固体として得られる。石油エーテルを加え、冷却しながら、この粗製生成物を、温ジクロロメタン/メタノール溶液から再結晶させると、表題の化合物が黄−オレンジ色の結晶として得られる(10.69g、収率70%)。
【0281】
元素分析:実測値:C:48.44%;H:4.12%;N、0.0%
計算値:C:48.24%;H:4.02%;N、0.0%
1H NMR:δ1.75(s,br)、δ2.70(dd,2H,J2HH 14.2Hz,J2HP 6.6Hz)、δ2.85(dd,2H,J2HH 14.2Hz,J2
HP 7.9Hz)、δ3.71(t,1H,JHH 2.44Hz)、δ3.58(s,5H)、δ3.98(d,2H,JHH 2.40Hz)、4.06(m,8H)。
【0282】
1H{31P}NMR:δ1.75(s,br)、δ2.70(d,14.3Hz)、δ
2.85(d,14.3Hz)、δ4.04(m,1H)、δ4.06(s,8H)、δ4.08(s,5H)、δ4.1(m,2H)
13C NMR:δ23.7(d,J1PC 15.6Hz)、δ63.0(d,J1PC
15.6Hz)、δ66.0(s)、δ67.2(d,J3PC 9.2Hz)、δ6
9.6(s)、δ82.6(d,J2PC 14.7Hz)
31P NMR:δ−14.7
赤外線スペクトル(CHCl3/薄膜NaClプレート)
3337.8cm−1(st、br)、他のピーク1104cm−1、2929.0cm−1、3603.7cm−1、3683.7cm−1
【実施例30】
【0283】
1,2−ビス(ジホスフィノメチル)フェロセンの調製
1,2−ビス(ジヒドロキシメチルホスフィノメチル)フェロセン(実施例29、5.45g、13.70mmol)およびメタ重亜硫酸ナトリウム(5.21g、27.4mmol)を、蒸留水(60ml)および石油エーテル(60ml)からなる2相溶剤系に加える。混合物を空気中で3時間環流させる。生じた混合物を冷却し、攪拌し、水性層を除去する。有機層を蒸留水で洗浄し、有機溶剤を真空除去すると、表題の化合物がオレンジ色の結晶固体として得られる(2.66g、収率70%)。
【0284】
元素分析:実測値:C:51.65%;H:5.75%
計算値:C:51.80%、H:5.76%
1H NMR(250MHz;CDCl3):δ2.7−2.8(m,4H)、δ3.17(m,2H)、δ3.18(m,2H)、δ4.04(t,1H,J=2.54Hz)、δ4.09(d,5H,JHP 0.4Hz)、δ4.13(d,2H,J=2.54Hz)
31P NMR(101MHz;CDCl3):δ130.0(t,JHP 193.0
Hz)
13C NMR(60MHz;CDCl3):δ12.9、δ65.6、δ67.3、δ
69.4、δ86.9
13C DEPT NMR(CDCl3):δ12.9(CH2)、δ65.6(CH)、δ67.3(CH)、δ69.40(5×CH)
FTIR(クロロホルム,NaClプレート):2298.5cm−1(強い)
質量スペクトル:実測値 m/z:278.0088;計算値 m/z 278.0077
【実施例31】
【0285】
1,2−ビス−α,α−(P−(2,2,6,6−テトラメチルホスフィナン−4−オン))ジメチルフェロセンの調製
【0286】
【化14】
【0287】
2,6−ジメチル−2,5−ヘプタジエン−4−オン(14.6g、0.106モル)を1,2−ビス−(ジホスフィノメチル)フェロセン(実施例30、14.7g、0.053モル)に加え、この混合物を窒素下に120℃で20時間加熱する。反応混合物を冷却し、濾過により粗製表題化合物を除去し、ペンテン(20ml)で洗浄し、真空乾燥させると、表題の化合物が黄−オレンジ色の固体として得られる(24.9g、収率85%)。表題の化合物を31P NMRおよび質量スペクトルにより同定した。
【0288】
1H NMR(250MHz;CDCl3):d 4.32(1H,br);4.08(5H,br);4.02(1H,br);3.94(1H br);2.84(4H,br);1.8−2.5(8H,br);1.05−1.4(24H,br,)。
【0289】
31P NMR(101MHz;CDCl3):s 4.15ppm。
元素分析:実測値:C:64.26%;H:7.88%
計算値:C:65.03%;H:7.94%
【実施例32】
【0290】
1,2−ビス−(ジ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファ−アダマンチルメチル))ベンゼンの調製
この配位子の調製を、国際公開第03/070370号パンフレットに開示されている方法で、その実施例4に従い実施した。
【実施例33】
【0291】
本発明の化合物により触媒される、エチレン、一酸化炭素およびメタノールからのプロパン酸メチルの調製
条件1
配位子:パラジウム比=5.2:1、酸:パラジウム比=160:1および酸:配位子比=30:1。
【0292】
条件2
配位子:パラジウム比=5.2:1、酸:パラジウム比=480:1および酸:配位子比=90:1。
【0293】
2リットル容量の機械攪拌されるオートクレーブ(ハステロイ)を真空にし、次いで、トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.44×10−5モル)、実施例10
の1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセン(7.61×10−5
モル)およびメタンスルホン酸(条件1では2.30×10−3モル、条件2では6.9
0×10−3モル)のプロパン酸メチル/メタノール(プロパン酸メチル70重量%)溶
液を充填した。オートクレーブを100℃に加熱し、この温度になったら、エチレン(8×105Nm−2)を溶剤の蒸気圧の頂点で加え、直ちに、溶剤蒸気圧を上回る10×105Nm−2に設定されている圧力調節バルブを介して、一酸化炭素およびエチレン(2×105Nm−2)の等モル混合物を系に加えた。適切には、反応器中でのエチレンと一酸化炭素とのモル比は、約9:1である。反応器の温度を100℃に維持し、反応の進行に伴い、圧力調節Tescomバルブを介して、付加的な一酸化炭素およびエチレンを加えた(等モルベースで)。触媒沈殿は観察されなかった。
【0294】
1時間当たりパラジウム1モル当たりのプロパン酸メチル(MeP)のモルで測定される反応初速度およびパラジウム1モル当たりのプロパン酸メチルのモルで測定されるターンオーバー数を触媒で決定した。単位時間当たり消費されるガスの量(速度)および反応の間に消費されるガスの総量を分析することにより、これを達成することができるが、この際、理想気体動態およびプロパン酸メチルへの100%選択率を仮定する。
【0295】
表1は、最大初速度および1時間後のターンオーバー数(TON)の両方に関して、バッチ工程でホスフィン配位子濃度(および金属濃度)に対して相対酸濃度を高めることの効果を示しており、ここで、反応初速度は、1時間当たりパラジウム1モル当たりのプロパン酸メチル(MeP)のモルで測定されており、TONは、パラジウム1モル当たりのプロパン酸メチルのモルとして測定されている。TONおよび最大初速度の両方に関して
、条件1から条件2へと、すなわち、一定の配位子:パラジウム値で、酸:パラジウムおよび酸:配位子比の両方を上昇させると、値は著しく上昇した。
【0296】
【表1】
【0297】
【実施例34】
【0298】
Pd(OAc)2(22mg、0.1mmol)および個々のホスフィン配位子(0.
5mmol)を不活性雰囲気グローブボックス中で500mL三頸丸底フラスコに計り分けた。取り出して、脱ガスMeOH300mlを加え、混合物を1時間攪拌した。この溶液に、メタンスルホン酸(640μl、10mmol)を加えた。触媒溶液の重量を計った。オートクレーブに、この溶液を充填し、攪拌しながら100Cに加熱した(蒸気圧3.0barg)。CO/エチレン(1:1)ガス混合物をオートクレーブに導入すること
により、反応を開始させた。オートクレーブの全圧を、TESCOM(9.8bar)により制御した。このことにより、エチレンとCOとの9:1比が生じた。温度および圧力を3時間保持し、その期間の間、これらの値を記録した。
【0299】
ガスを単離し、ユニットを室温まで冷却した。放圧されたユニットを空にし、溶液の最終重量を計った。
配位子1=1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、
配位子2=1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)フェロセン、
配位子3=1,2−ビス(ジアダマンチルホスフィノメチル)フェロセン、
配位子4=1,2−ビス(ジホスファアダマンチルホスフィノメチル)フェロセン、
配位子5=国際公開第03/040159号パンフレット(その実施例1)と同様に調製された1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)2−メチレンプロパン(比較)。
【0300】
結果を、下記の表に示す。
【0301】
【表2】
【0302】
【表3】
【0303】
【表4】
【0304】
【表5】
【0305】
【表6】
【0306】
配位子1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)2−メチレンプロパン(配位子5)では、過剰な酸を伴っても、伴わなくても、付加的な配位子は、触媒性能の低下をもたらす。低い配位子、および酸の最適な条件、例えば、運転番号3および4は、研究された条件下で最高の触媒生産性をもたらす。低い酸比で過剰の配位子を加える場合と同様に、運転番号1においてのような高い酸比で過剰の配位子を加えると、性能が著しく低下する。
【0307】
次の2つの表は、配位子1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンに関するデータを含む。データを80Cで集めたので、速度およびターンオーバー数は、すでに示したデータよりも低い。しかしながら、データは、一定の酸:配位子レベルで、配位子:Pd比の上昇は、初速度およびTON値のかなりの上昇をもたらすことを示している。このデータは、予備形成触媒[(L−L)Pd(dba)(詳細に関しては下記参照)]を使用し、過剰の配位子をプロトン化塩として加える。実験の詳細を、下記に示す。
【0308】
【表7】
【0309】
【表8】
【0310】
パラジウムのモル数は、L2Pd(dba)のモル数に等しい。
これらの実施例に記載されている作業を、2L容量のオートクレーブ中で実施した。各試験で、L2Pd(dba)触媒10mgおよびプロトン化ホスフィン32mg(4当量
)または72mg(9当量)を調製フラスコに、窒素パージされたグローブボックス内で加えた。次いで、メタノールおよびプロパン酸メチル50:50重量%を含む共沸生成物175mlならびにプロパン酸メチル125mLを脱ガスし、フラスコに加えると、反応溶液が生じたが、これは、プロパン酸メチル70重量%に近かった。必要量のメタンスルホン酸を加えた後に、溶液を真空オートクレーブに移し、真空下に80℃に加熱した。この期間の間も、その後もずっと、オートクレーブを−1000r.p.mで攪拌した。この温度に達したら、エチレンを加えることにより系の全圧を9バールまで(−1バールの蒸気圧基線から)高め、次いで、全圧が−11バールであり、ヘッドスペースC24/CO比が9:1になるように、1:1C24/COの2バールを補充した。この後、系内の圧力を一定に保持するために必要な速度で、1:1ガスのみを系に供給した。反応速度および触媒TONを、供給レザバーからのガス除去速度から算出するが、この際、理想気体動態およびプロパン酸メチルへの100%選択率を仮定した。
【0311】
1,2−ビス(ジ−1−アダマンチルホスフィノメチル)ベンゼンパラジウム(dba)の調製
THF(100cm3)を、配位子(2.05g、2.90mmol)およびパラジウ
ムdba(1.61g、2.90mmol[Pd])の組合せに加えると、深い赤−オレンジ色の混濁溶液が得られた。反応物を3時間攪拌した。反応物をカニューレを介して濾過すると、深い赤−オレンジ色の濾液および少量の[Pd]残留物が得られた。揮発性物質を真空除去すると、深赤色の粉末固体が得られた。ペンタン(50cm3)をカニュー
レを介して加え、スパチュラを用いて摩擦すると、オレンジ色の粉末が分離した。琥珀色のペンタン洗浄液をカニューレ濾過を介して除去し、固体を−10℃のEt2O(3×5
0cm3)で洗浄した。生じたオレンジ色の粉末を真空乾燥させ、グローブボックス中で
単離した。収量2.68g、88%、31P NMR:δ=46、42ppm(比1:1)、実質的にリン純粋。FW=1047.73。
【0312】
1,3−ビス−(ジ−1−アダマンチルホスフィノ)プロパンパラジウム(dba)の調製
上述と同様であるが、ただし、配位子(1.96g、3.04mmol)およびパラジウムdba(1.69g、3.04mmol[Pd])をTHF(70cm3)中で使用
した。3時間後に、深い赤−オレンジ色の溶液が、かなり混濁して生じた;付加的なTHF50cm3を加えて、生成物をさらに溶かした。反応物を上述のように後処理したが、
ただし、Et2O洗浄を、周囲温度で行った。固体をグローブボックス中でオレンジ色の
粉末として単離した。収量2.08g、69%。31P NMR:δ=42、38ppm(比1:1、ノイズ多い)。FW=985.66。
【0313】
2Pd(dba)錯体の調製に関する詳細については、ジー アール イーサム(G
.R.Eastham)によりUniversity of Durhamに提出された学位論文「Studies on the Palladium Catalysed Methoxycarbonylation of Ethene」(1998)も参照されたい。
【実施例35】
【0314】
本発明の化合物により触媒される、エチレン、一酸化炭素およびメタノールからのプロパン酸メチルの調製
例示の連続法は、触媒系の存在下で、一酸化炭素、エチレンおよびメタノールの精製流を液相で反応させて、所望の生成物であるプロパン酸メチルを生じさせることに関するものであった。
【0315】
反応を、100℃および圧力12barで反応容器中で実施した。
触媒系は、パラジウム塩、ホスフィン配位子、および酸である3種の成分からなる。組み合わせて一緒にし、反応混合物中に溶かすと、3種の触媒成分は、反応触媒すなわち触媒系、均一系触媒を構成し、これは、溶解している反応成分を、液相中で生成物であるプロパン酸メチルに変換した。
【0316】
連続運転の間、触媒は、一定の速度ではあるが徐々に分解するので、新たな触媒を加えることにより交換するか、生成物プロパン酸メチルの生成速度は、遅くなった。
反応容器は、攪拌機、さらに、反応器の上部ヘッドスペース部分に集まった未反応ガスを再循環させる手段を備えていた。エチレンおよび一酸化炭素の混合物からなる、反応容器ヘッドスペースからの未反応ガスを連続的に、供給パイプを介して底部から反応器に戻して、ガスが、反応混合物を連続的に通過するようにした。
【0317】
反応容器に供給したら、攪拌機によりガスを分散させて、微細な気泡にした。こうして、エチレンおよび一酸化炭素を反応混合物に溶かした。
新規のエチレンおよび一酸化炭素ガスを、再循環ガスに加えて、反応で使用された2種のガスの量を補充する。新規のメタノールも、反応溶液に連続的に加えて、反応で使用されたメタノールを補充した。
【0318】
反応容器は、パラジウム塩、ホスフィン配位子、およびスルホン酸である均一系触媒の3種の成分と共に大部分の液体反応混合物を保持した。
生成物のプロパン酸メチルを回収するために、反応混合物の流れを、反応器の外側へ、蒸留カラムに連続的に流した。
【0319】
一段「フラッシュ」タイプの蒸留カラムである蒸留カラムは、反応混合物のプロパン酸メチルおよびメタノール成分のフラクションを不揮発性溶解触媒成分から分離する手段を備えていた。これは、フラッシュカラムを通過する際に、反応混合物フラクションを蒸発させることにより達成された。フラッシュカラムの通過後も液体として留まり、まだ有用な触媒成分を含む反応混合物の部分を、反応容器に戻して、触媒成分を、進行中の反応に加えることができるようにした。
【0320】
プロパン酸メチル生成物をメタノールを含まないようにする必要がある場合には、第2の蒸留カラムが必要があった。この場合、プロパン酸メチルおよびメタノールの混合物であるフラッシュカラムからの蒸気流を、第2の蒸留カラムに入れると、そこで、純粋なプロパン酸メチルがより重い生成物として生じるので、これを、カラムの底部から取り出した。メタノールおよびプロパン酸メチルの低沸点混合物は、軽い生成物として生じたので、MeP生成カラムの頂部から連続的に除去した。この工程で可能な限り有効にメタノールを使用するために、メタノールおよびプロパン酸メチルからなる低沸点混合物を、反応容器に連続的に戻した。
【0321】
連続的な反応ユニットを始動させた後、プロパン酸メチルの所望の生成速度が達成されたら、触媒成分の供給速度を徐々に低下させる工程に取りかかった。
プロパン酸メチルの生成速度を維持するために、損失速度を補充する速度で、分解により失われたパラジウム触媒成分を新規のパラジウムに連続的に取り替える。
【0322】
このことにより、反応容器のヘッドスペース内の一酸化炭素およびエチレンの一定濃度により示されるように、触媒成分の持続的な濃度がプロパン酸メチルの所定の発生速度に関して一定で、フローシート反応速度を維持することができる状況が生じた。これは、平衡点と称されたが、それというのも、これらの条件下では、パラジウム分解速度は、新規パラジウムの添加速度に正確に釣り合うためであった。
【0323】
平衡点条件下での新規パラジウム触媒成分の添加速度から、パラジウムターンオーバー数(TON)を算出した。これは、1時間当たり分解工程により消費されるパラジウムの各モルに対して、1時間当たり生じるプロパン酸メチルのモル数と定義される。
【0324】
対照条件の予め決定されたセットで、一定の速度に達したら、変数すべての瞬時値を記録し、代表データとして使用すると、その時点で使用されていた条件下での方法の性能が分る。
【0325】
パラジウムターンオーバー数に対する、反応混合物中に存在するホスフィン配位子、および酸レベルの効果に関するデータを集めるために、反応混合物中の配位子、および酸のバックグラウンドレベルを除き、すべての変数を一定に保持した。専用タンクおよびポンプ系を介して、これらの化合物を反応容器に少量加えることにより、これらのレベルを変化させた。次いで、添加の後に、触媒溶液供給速度を慎重に調節して、平衡点を再び生じさせた。
【0326】
実験の意図は、平衡点データの新たなセットをそれぞれ集めた後に、系を、前の条件セットに戻して、次の実験条件セットに移す前に性能のドリフトをチェックすることであった。
【0327】
こうして、結果の比較セットを作成したが、これは、ホスフィン配位子のバックグラウンドレベルおよび酸レベルの変化により生じた触媒安定への変化を明白に示していた。
反応器への供給物中でのパラジウムの量は、ターンオーバー数の結果の算出にとって重要である。触媒供給タンクへと移す前に、触媒の各バッチをパラジウム含分に関して分析することにより、系に供給される新規触媒の速度に対する保障が得られた。触媒供給系の一部であるビュレットでのレベル低下のタイミングから、実際の触媒供給速度を決定することにより、さらなる保障が得られた。
【0328】
表9は、酸:配位子比および配位子:金属比を高めた場合のパラジウムターンオーバー数(TON)に対する効果を示している。
この実施例では、使用された酸は、メタンスルホン酸であり、二座ホスフィン配位子は、1,2−ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンであり、パラジウム化合物は、トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムであった。
【0329】
【表9】
【0330】
添付の図面の図1−3で、他の傾向を見ることができる。
図1は、酸対配位子モル比に対するTONを示す。酸対配位子比が約10超に上昇すると、この特別な触媒系では、TONが大きく上昇することが明らかである。
【0331】
図2は、反応器中に遊離で存在するメタンスルホン酸の量に対するTONを示す。酸のレベルが上昇すると、この特別な触媒系では、TONが大きく上昇することが明らかである。
【0332】
図3は、メタンスルホン酸の量に対する溶液中のPd量を示す。酸のレベルが上昇すると、この特別な触媒系では、溶液中のPdの量が低下する一方で、反応速度は一定なままであることが明らかである。したがって、これらの高い酸レベルで処理すると、パラジウムレベルが低下しても、反応速度を維持することができる。触媒系のパラジウム成分の相対コストを考慮すると、利点は明白である。
【0333】
いくつかの好ましい実施形態を示し、記載したが、本発明の範囲から逸脱することなく、添付の請求項に定義されているように、様々な変化および変更を行うことができることは、当業者であれば、理解されるであろう。
【0334】
本出願に関連して本明細書と同時かそれに先行して提出され、本明細書と共に公共で閲覧可能なすべての論文および文献に、注意が向けられており、このようなすべての論文および文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0335】
本出願に開示されているすべての形態(添付の請求項、要約書および図面をすべて含む)および/または開示されている方法または方式の工程はすべて、このような形態および/または工程の少なくとも複数が相互に排除し合う組合せを除き、あらゆる組合せで組み合わせることができる。
【0336】
本出願に開示されている各形態(添付の請求項、要約書および図面をすべて含む)は、他に特に記載されていない限り、同様、同等または類似の目的に役立つ別の形態に代えることができる。したがって、他に記載のない限り、開示されている各形態は、同等または類似の形態の一般的なシリーズの単なる1例である。
【0337】
本発明は、上述の実施形態の詳細には制限されない。本発明は、本明細書中(添付の請求項、要約書および図面をすべて含む)に開示されている形態の新規の1形態または新規の組合せに、もしくは開示されている方法または方式の工程の新規の1工程または新規の組合せに及ぶ。
図1
図2
図3