(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746148
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】化学プロセスを実施するための方法およびプラント
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20150618BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20150618BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
C08J11/12
B09B3/00 302A
B09B3/00 303E
B01J19/00 301E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-510154(P2012-510154)
(86)(22)【出願日】2010年5月11日
(65)【公表番号】特表2012-526961(P2012-526961A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】EP2010002877
(87)【国際公開番号】WO2010130404
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年4月23日
(31)【優先権主張番号】P-388028
(32)【優先日】2009年5月14日
(33)【優先権主張国】PL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511273230
【氏名又は名称】ハンデレク、アダム
【氏名又は名称原語表記】Handerek, Adam
(73)【特許権者】
【識別番号】511273241
【氏名又は名称】シュリューター、ハルトビヒ
【氏名又は名称原語表記】Schlueter, Hartwig
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ハンデレク、アダム
【審査官】
原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−152278(JP,A)
【文献】
特公昭49−003803(JP,B1)
【文献】
特表平07−506145(JP,A)
【文献】
特表平10−502109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00−11/28
B01J 19/00−19/32
B09B 3/00
F27B 1/00−3/28,9/00−15/20
B29B 17/00
C10J 3/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、すなわち、
(a)原材料を加熱すること、および、
(b)低融点金属または低融点金属合金を用いて、溶融浴をタンクまたは反応器の中で製造することを、有する、解重合するための方法において、
(c)前記原材料は、ポリオレフィン系廃棄物であり、該原材料を、固体物質として前記タンクまたは前記反応器の下部の中で直接前記溶融浴に計量供給すること、
(d)前記ポリオレフィン系廃棄物の上昇を、前記溶融浴中の障壁または格子によって減速すること、および、
(e)誘導ヒータにより前記タンクまたは前記反応器の加熱を行うこと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記低融点金属または前記低融点金属合金を、前記タンクまたは前記反応器の中で加熱装置によって加熱することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低融点金属または前記低融点金属合金を、50℃と550℃の間の温度に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記原材料の密度が、前記低融点金属または前記低融点金属合金の密度よりも低いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
低融点金属または低融点金属合金からなる溶融浴を取り囲むためのタンクまたは反応器を有する、解重合するために設けられたプラントにおいて、
前記タンクまたは前記反応器は、下部に、ポリオレフィン系廃棄物である原材料を固体物質として直接前記溶融浴に計量供給するための供給装置を有し、
前記溶融浴中には、前記原材料の上昇を減速するバリア、格子または篩を有すること、および、
前記タンクまたは前記反応器は、シリンダ状の誘導ヒータを有し、前記シリンダ状の誘導ヒータは、前記タンクまたは前記反応器の高さに亘って、温度勾配を達成するために設計されていること、
を特徴とするプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料を加熱し、加熱された低融点金属または金属合金を用いて、溶融浴をタンクまたは反応器の中で製造してなる、化学プロセスを実施するための方法に関する。更に、本発明は、低融点金属または低融点金属合金からなる溶融浴を取り囲むためのタンクまたは反応器を有する、化学プロセスを実行するためのプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
ポーランド特許出願P-372777には、プラスチック廃棄物の熱的脱重合法を実施するための反応器が発表されている。該反応器は、ターボミキサならびに一式の管状予熱器を有する。これらの環状予熱器は、長くて、狭くかつ平らな箱の中に交互に収容されており、かつ溶融した材料の表面の下に位置している。複数のヒータに、低融点金属、例えば、ウッド合金が供給されることは好ましい。ミキサと予熱器との間には、垂直の障壁が取り付けられており、該障壁は、予熱器を通る縦方向の貫流を保証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】P-372777
【0004】
前記工程では、溶融した材料の過熱が生じるかもしれない。このことによって、プラントの諸部分上では、除去し難い炭化沈殿物が生じる。更に、化学プロセス中に、集中的な撹拌過程が必要である。
【発明の概要】
【0005】
前記化学プロセスの実施を、より容易にかつ過熱および堆積の危険なしに可能にするという課題が、本発明の基礎になっている。
【0006】
上記課題は、本発明によれば、明細書の最初の部分に記載のタイプの方法を用いて、原材料を、
固体物質としてタンクまたは反応器の下部の中で直接溶融浴に計量供給することによって、解決される。
【0007】
低融点金属または金属合金は、少なくとも1つの、好ましくは電気式の加熱装置によって、直にタンクまたは反応器の中で、あるいは、溶融された合金がタンクまたは反応器に供給されるように、別個の容器の中で加熱される。
【0008】
タンクまたは反応器に供給された原材料は、固体材料とし
て、溶融浴に計量供給され
る。原材料は、好ましくは溶融浴よりも低い密度を有するので、原材料は、自動的に、溶融浴の中を上方へ移動し、所望のプロセスが行なわれる。計量供給後の原材料の自動的な上昇を、溶融浴中の障壁、螺旋状導管または格子によって減速することができる。
【0009】
溶融浴は、溶融した状態で、タンクまたは反応器の中で、50℃と1000℃との間の、好ましくは50℃と550℃との間の温度を有する。
【0010】
上記課題は、更に、タンクまたは反応器が、その下部に、原材料を
固体物質の形態で直接に溶融浴に計量供給するための供給装置を有することを特徴とする、明細書の最初の部分に記載されたプラントによって、解決される。
【0012】
固体物質の場合には、計量は、例えば計量用スクリューコンベヤによって、なされる。
【0013】
タンクまたは反応器は、下部に、加熱要素、好ましくは、電気式の加熱装置および特に好ましくは誘導ヒータを有してもよい。この場合、誘導ヒータは、反応器またはタンクのジャケットの周りにシリンダ状に延びていてもよい。誘導を、表皮効果を防ぐために、低い周波数で行なうことは好ましい。このような装置は、加熱が下からのみなされないように、溶融浴全体が、容積全体に亘って均等に加熱されるという利点を有する。その代わりに、タンクまたは反応器に、別個の容器の中で加熱された低融点金属または加熱された低融点の金属合金を供給してもよい。
【0014】
更に、タンクまたは反応器は、原材料の上昇を減速するために、障壁、螺旋状の導管または篩を有してもよい。
【0015】
本発明に係わるプロセスは、プロセスにおいて使用される原材料、素地および反応物を非常に効果的および効率的に加熱することができる。分離される汚染物質および沈積物、例えば炭化物を、容易に除去することができる。これらは、溶融された金属のまたは金属合金の表面に堆積され、あるいは、溶媒または水によって洗い流される。溶融された金属の洗浄を、高温で、液体状態で行なうことができるのは、タンクまたは反応器から排出される合金に水を通過させることによってである。
【0018】
本発明に係わる方法で実行することができるプロセスの例
は、プラスチック廃棄物、例えばポリオレフィンプラスチック
の熱触媒
による脱重合
である。これらの方法では、従来、直接にまたは加熱された反応器の壁を介して、加熱された液体と接触する加熱要素が用いられた。このことは、結果として、プラントの複数の過熱された要素上に、炭化物の形態の汚染物質が堆積することを伴う。作業プロセス中の混合過程の如何なる改良でも、炭化物が、加熱された表面に堆積することを阻止することができない。従って、一時的な作業休止が必要であって、作業休止中に、プラントを洗浄しなければならなかった。
【0019】
本発明によれば、方法は、化学的プロセスの任意の段階、例えば、物質の予備洗浄、物質の粉砕、溶融炉における物質の可塑化、固体物質の、液体状態への移転、主要生成物または副生成物である全種類の留分の除去、溶媒および化学プロセスに関連する他の物質の戻り、ならびに触媒の付加の段階および触媒の消費された留分の排出を含んでもよい。同様に、本発明によれば、プラントは、前記段階を実施するための、生成物に適した(typengerecht)セクションを有する。これらの段階は、生成物に適切であり、かつ一般的に知られている。本発明は、知られた方法の枠内における加熱過程の加熱の改善、および新たな加熱法を導入することによる従来のプラントの改善に関する。本発明に係わる方法で用いることができる温度は、50℃と1000℃または50℃と550℃の範囲にある。
【0020】
本発明によれば、加熱された金属または加熱された金属合金の液状の(溶融した)状態が用いられる。例えば錐形の底面を有するシリンダ状の容器では、下部に、低融点合金を加熱する加熱要素、通常は、電気的な加熱要素があってもよい。その代わりに、壁部の高さに亘ってシリンダ状に延びているヒータ、特に、電気ヒータおよび好ましくは誘導ヒータを用いることができる。ヒータは、タンクまたは反応器のジャケットの周りにシリンダ状に周設されており、かつ、金属または金属合金の全容量を均等にまたは所定の温度勾配をもって加熱することができる利点を提供する。
【0021】
容器の下部には、原材料を容器に導入する際に用いる供給装置があ
る。
【0022】
原材料の密度は、合金の密度より遥かに低い。従って、原材料のための加熱時間を減速するために、従って、合金の中への物質の通過を減速するために、タンクにバリアを用いることは、適切である。高温での化学プロセスの持続時間は、温度の適切な選択によって決定されるだけでなく、溶融した金属のカラムの高さ、用いられるバリアの種類、ノズル開口部の寸法ならびに所定の単位時間に追加された物質の量によって決定される。
【0023】
本発明が、固体物質の供給
を可能にすることは有利である。例えば、オイルで汚染された砂を本発明により洗浄することが可能である。この場合、砂は、触媒作用を及ぼし、オイルの脱重合を支援する。それ故に、オイルを脱重合するために、および、必要な場合には、オイルを実用の留分または使用可能な物質に転換するためには、例えば450℃の溶融浴温度で十分である。砂の粒子は、乾燥した形態で、溶融浴の表面に収集し、かつ、そこから、容易な方法で、例えば、酸素を含まないガス流による吹き飛ばしによって、除去されることが可能である。
【0024】
固体物質の原材料を用いた本発明に係わる化学プロセスの他の実施の形態は、互いにしっかりと結合された材料であり得るプラスチックとアルミニウムとの分離である。これらの物質は、挽かれた形態で、スルースによって、例えばスライダによって溶融浴に計量導入される。この場合、プラスチックを、脱重合し、かつ、ガス状の形態で排出することができる。他方、アルミニウムを、固体物質の形態で溶融浴の表面に収集され、かつ、例えば吸引によって、除去することができる。
【0025】
本発明に係わる方法を、プラスチック粒子(Kunststoffteilen)の供給の際に、プラスチックがまだ脱重合されない温度範囲で、操作することができる。この場合、プラスチックを、液体形態で、溶融浴の表面で除去することができる。
【0026】
原材料と溶融浴との混合が、十分な形では自動的になされないときは、撹拌装置が設けられていてもよい。しかしながら、この場合に、ノズルによって押し込められた小さな気泡によって、撹拌効果を引き起こすことは好ましい。この場合、小さな気泡が、プロセスガスによって形成されることは好ましい。プロセスガスは、プラントにおいて生じる処理温度では、凝縮されず、従って、循環されない。炭化水素をプラントから出すことが望ましいと思われるときは、かようにして、例えばCO
2による洗浄を行なうことができる。
【0027】
本発明に係わる方法は、固体物質、例えば泥の効果的な乾燥に適切である。この場合、溶融浴の表面にある乾燥した砂を、容易な形で除去することができる。
【0028】
壁部にシリンダ状に形成されたヒータ、例えば、誘導ヒータを用いるとき、特にそのとき、例えばプラスチック粒子に制御下で作用することができるように、タンクまたは反応器で溶融浴の温度勾配を形成することは望ましい。
【0029】
更に、通常より複雑な反応を、複数のタンクまたは反応器の直列接続によって、溶融浴の種々の温度で実行することが可能である。かくして、例えば、水と、グリコールと、メタノールとの混合物を互いに分離することができる。第1の反応器では、溶融浴は、例えば72℃の温度を有することができる。このことによって、メタノールは蒸発し、かつ、グリコールと水の混合物が、溶融浴の表面から除去される。第2の反応器では、86℃の溶融浴温度を調整することができる。このことによって、グリコールが蒸発し、かつ、溶融浴の表面から、純水を除去することができる。
【0030】
温度制御のほかに、溶融浴における原材料の滞留時間の制御が、重要である。多くの場合、滞留時間を制御するためには、種々の網目サイズの篩の使用が有利である。篩は、この場合、規則的に、0.1mmと2mmの間の網目サイズを有してもよい。このことは、溶融浴に入れられかつ溶融浴中で緩慢に溶融する固体粒子の処理のために、有利である。減少する網目サイズを有する篩の使用によって保証されることができるのは、固体粒子が各々の篩の網目サイズを通過するほどに、固体粒子が溶融過程によって減少したときはじめて、固体粒子が、夫々、1段階分、上方に移動することができることである。従って、粒子が各々の篩に付着しているのは、前の篩より小さな網目サイズを有する次の篩に達するために、または溶融された形態では、溶融浴の表面に達するために、粒子が、更なる溶融によって、篩の網目を通過することができるまでである。
【0031】
本発明に係わる方法では、種々の低融点金属および合金、例えば、ガリウムおよびインジウムを有する合金(溶融温度47℃)、ウッド合金(溶融温度70℃)、リポウィツ合金(溶融温度80℃)、ニュートン合金(溶融温度96℃)、リヒテンベルク合金(溶融温度92℃)を用いることができる。
【0032】
以下、図示した実施の形態を参照して、本発明を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】液状の原材料のための本発明のモデルプラントを示す。
【
図2】固体原材料の使用のための、
図1に示すプラントの変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示したプラントは、プラスチック廃棄物、例えばポリオレフィンプラスチックを熱触媒で脱重合するためのプラントである。このプラントは、溶融装置201および湿式反応器301を有する。湿式反応器の中には、複数の開口部を有するノズル2がある。ノズルの開口部を介して、溶融した原材料、すなわちポリエチレンおよびポリプロピレンPEおよびPPからなる廃棄物が運ばれる。
【0035】
反応器には、電気的な加熱要素1によって加熱される低融点金属合金3が充填されている。反応器には、プラスチックの液滴の、反応器の表面に沿った貫流を低速にするバリア4がある。更に、プラントは、乾式反応器302と、炭化水素の蒸気用のヒータ303と、排出タンク304と、合金用の排出タンク305と、腹水器401と、腹水タンク402と、腹水定量ポンプ403と、CO
2タンクとを有する。プラントの前記構成部分は知られており、かつ、このタイプのプラントの中で用いられる。主要な改良は、原材料(プロセス中に消費される物質)すなわちポリオレフィン廃棄物が加熱されてなる湿式反応器301の、その新たな構造にある。
【0036】
排出タンク305では、合金の洗浄を、液体洗浄または約100℃への温度調整によって行なうことができる。
【0037】
例
ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる残留物を含むプラスチック廃棄物を熱触媒で脱重合するためのプラントでは、液状の低融点の合金がウッド合金であってなる反応が行なわれた。まず溶融された廃棄物を、反応器の下部に収容されたておりかつ直径0.5ないし1mmの開口部を有するノズルを介して、先へ送った。反応器にあってかつウッド合金からなる浴を、400℃と420℃との間の温度に保った。
【0038】
図2は、固体物質を原材料として処理するために、湿式反応器301の代わりに、
図1に示したプラントに用いることができる湿式反応器311の変形例を示す。従って、反応器311の底部に、水平方向に位置している計量用スクリューコンベヤ11が設けられている。電気モータ12は、シリンダ状のハウジングジャケット14によって取り囲まれているスクリュースピンドル13を駆動する。ハウジングジャケット14の表面にある開口部へ、注入用ホッパ15が嵌め込まれている。注入用ホッパによって、粒状の固体物質が、計量用スクリューポンプ11に供給されることができる。反応器311の底部にある出口開口部16を通って、かくして前方へ送られた固体物質が、低融点合金が充填されている反応器311の内部に達する。固体物質は、金属合金よりも低い比重を有するので、金属合金の中で上昇する。固体物質は加熱される。このことによって、化学的または物理的な転換プロセスが生じることが可能である。化学的な転換プロセスの際にガスが発生するとき、反応器301の上壁においてガスが、ガス出口17を通って排出されることができる。反応器の上壁の下方には、固体物質19用の側方出口18がある。固体物質を、溶融物3上で、出口フラップ20を介して、反応器311から取り出すことができる。
【0039】
固体物質19は、汚染された形態で注入用開口部16を介して反応器311の溶融物3 に達する砂であってもよい。有機成分は、溶融物の高温による影響によって最小限化され、かつ、ガスに変換される。該ガスは、ガス出口17を通って反応器311から導き出される。溶融物の表面に沿って、砂粒が、固体物質19として集まり、かつ、洗浄された形態で、反応器311から排出される。
【0040】
固体物質19が、脱重合されることが意図されるプラスチック粒質物であるとき、該固体物質を、低融点合金3による熱作用によって、制御下で変換することができる。このことにとって有利であるのは、反応器311の中には、複数の篩装置21が上下に設けられていることである。該篩装置が、一方では、障害物4として、固体物質19が溶融物3の中を通過する時間を延長することができ、他方では、特に、プラスチックの転換の際に、所定の転換段のための滞留時間の自動制御を引き起こすのは、篩装置が、上に向かって益々小さくなる網目サイズをもって、形成されている場合である。入口開口部16を通って、溶融物3に入り込み、かつ、下方の篩21の網目サイズより大きい寸法を有する粒質物は、粒子が、転換によって、第1の篩21を通り抜けることができる程度に縮小するまで、最下の篩21の下方に留まる。次の篩21の手前で、粒子は、以下のときまで、すなわち、該篩の網目サイズを通り抜けるように、粒子が、同様に、十分に縮小するまで、捕らえられている。残りの篩21も、同様に作用する。反応器のこのような使用の場合に可能であるのは、プラスチック粒質物等の形態の固体物質が、入口開口部16を通って導かれ、溶融浴3の表面には、固体物質19はもはや達せず、例えば流体層が浮かんでいて、そのとき、流体層は、側方の出口18を通って同様に除去されることができることである。
【0041】
反応器311は、
図2に示した実施の形態では、ヒーティングロッドまたは加熱コイルによって直接加熱されるではなく、断熱性のシリンダ状のジャケット壁部22を有する。ジャケット壁部は、巻回された電気式の誘導ヒータ23の周りに設けられている。溶融物3を加熱するための誘導ヒータ23の使用は、反応器301,311の底部領域に設けられた、直熱型の、電気的な加熱要素1の使用に比べて、所定の温度分布が調整可能であるという利点を有する。本発明によれば、反応器311の下方領域で、例えば150℃の温度を調整することは有利であり得る。それ故に、反応器に供給された原材料が、溶融浴3中の第1の段で、穏やかに加熱される。第1の段の上にある段には、次に、200℃の溶融浴温度を誘電ヒータ23によって調整することができる。反応器311の高さの半分より多い範囲を覆うように延びている上方領域には、図示した実施の形態では、400℃の温度が誘導ヒータ23によって調整される。このような温度成層が、底部に設けられておりかつ溶融物3に直接作用する加熱要素1によって実現されないことは明らかである。何故ならば、この場合、熱が対流作用によって分配されねばならず、かつ、電気式の加熱要素1では、温度が最大だからである。
【0042】
誘導ヒータ23によって、かくして、種々の使用例にとって、異なった温度分布を調整することができる。温度分布によって、所望の化学的および/または転換を最適に制御することができる。
ここで、出願当初の特許請求の範囲の記載事項を付記する。
[条項1] 化学的工程を行なうための方法であって、原材料を加熱し、低融点金属または金属合金を用いて、溶融浴をタンクまたは反応器の中で製造する方法において、
前記原材料を、前記タンクまたは前記反応器の下部の中で直接前記溶融浴に計量供給することを特徴とする方法。
[条項2] 前記低融点金属または前記低融点金属合金を、前記タンクまたは前記反応器の中で加熱装置によって加熱することを特徴とする条項1に記載の方法。
[条項3] 前記低融点金属または前記低融点金属合金を、50℃と1000℃の間の温度に加熱することを特徴とする条項1または2に記載の方法。
[条項4] 前記原材料を、液体状態で、正圧で、前記タンクまたは前記反応器に計量供給することを特徴とする条項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
[条項5] 前記原材料を、固体物質として、前記タンクまたは前記反応器に計量供給することを特徴とする条項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
[条項6] 前記原材料の密度が、前記低融点金属または前記低融点金属合金の密度よりも低いことを特徴とする条項4または5に記載の方法。
[条項7] 前記溶融浴を通る前記原材料の自動流れを、障壁、螺旋状導管または格子によって減速することを特徴する条項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
[条項8] 低融点金属または低融点金属合金からなる溶融浴を取り囲むためのタンクまたは反応器を有する、化学プロセスを実行するためのプラントにおいて、
前記タンクまたは前記反応器は、前記溶融浴に計量供給するための供給装置を有することを特徴とするプラント。
[条項9] 前記供給装置は、液状の原材料を正圧下で前記溶融浴に計量供給するために用いられるノズル装置を有することを特徴とする条項8に記載のプラント。
[条項10] 前記供給装置は、固体の原材料を計量供給するために設けられていることを特徴とする条項8に記載のプラント。
[条項11] 前記タンクまたは前記反応器は、下部に、加熱要素を有することを特徴とする条項8ないし10のいずれか1項に記載のプラント。
[条項12] 前記タンクまたは前記反応器の壁部は、シリンダ状の加熱要素を有することを特徴とする条項8ないし10のいずれか1項に記載のプラント。
[条項13] 前記タンクまたは前記反応器は、シリンダ状の誘導ヒータを有することを特徴とする条項12に記載のプラント。
[条項14] 前記シリンダ状の誘導ヒータは、前記タンクまたは前記反応器の高さに亘って、温度勾配を達成するために設計されていることを特徴とする条項12または13に記載のプラント。
[条項15] 前記反応器は、減速させるバリア、格子あるいは篩または螺旋状の導管を有することを特徴とする条項9ないし14のいずれか1項に記載のプラント。
【符号の説明】
【0043】
1 加熱要素
3 金属合金
4 バリア
301 湿式反応器
302 乾式反応器
303 ヒータ
305 排出タンク