特許第5746216号(P5746216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746216露出導電性グリッドを有する耐湿分性光電池デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746216
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】露出導電性グリッドを有する耐湿分性光電池デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20150618BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
   H01L31/04 262
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-549027(P2012-549027)
(86)(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公表番号】特表2013-517627(P2013-517627A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】US2011020979
(87)【国際公開番号】WO2011088114
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年11月20日
(31)【優先権主張番号】61/294,878
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】ポール アール.エロウェ
(72)【発明者】
【氏名】マーティー ダブリュ.ディグルート
(72)【発明者】
【氏名】マイケル イー.ミルズ
(72)【発明者】
【氏名】マット エー.ステンプキ
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第8921148(US,B2)
【文献】 特開2005−109360(JP,A)
【文献】 特表2008−533729(JP,A)
【文献】 特開2002−329880(JP,A)
【文献】 特開2008−274334(JP,A)
【文献】 特開2000−323733(JP,A)
【文献】 特開2005−317563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0301559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)光入射表面及び裏面を有し、そして少なくとも1つの光電池アブソーバを含む基材であって、前記アブソーバと前記光入射表面との間に配置された少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含む基材を提供し、かつ、該少なくとも1つの光電池アブソーバは厚さ5μm以下のカルコゲニド含有光電池アブソーバを含むものとすること、
b)前記透明導電性酸化物層上に誘電性バリア層を配置させること、
c)デバイス中のある位置を終端とする少なくとも1つのビアを前記誘電性バリア層に形成させ、該ビアが前記透明導電性酸化物層全体を通して貫通せずに、前記誘電性バリア層を通して前記透明導電性酸化物層に開放連通を提供するようにすること、及び、
d)前記透明導電性酸化物層に電気的に接続された電気接触部であって、前記ビア内に形成されたベース及び前記誘電性バリア層より上に突出したキャップを含む電気接触部を形成させ、かつ、該電気接触部のキャップは、少なくとも1つの方向で、該電気接触部のベースよりも広くすること、
の工程を含む、光電池デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記電気接触部と、前記ビア及び前記透明導電性酸化物層の少なくとも1つとの間に、ニッケルを含む導電性膜を配置させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電気接触部と、前記ビア及び前記透明導電性酸化物の少なくとも1つとの間に、接着向上性導電性膜を配置させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記デバイス中に少なくとも1つの追加のバリア層を取り込ませる工程をさらに含む、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
記透明導電性酸化物はインジウム、亜鉛、スズ及びアルミニウムのうちの少なくとも1つを含み、かつ、前記アブソーバと前記透明導電性酸化物との間にバッファー層を配置させる工程をさらに含む、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項6】
工程(b)は約100℃以下の温度で、少なくともケイ素及び窒素を含む誘電性層を形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記誘電性層は式SiO(式中、yは約0.05未満であり、zは約1.1〜約1.4の範囲にある)を有するケイ素化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記誘電性バリア層は厚さが約10〜約1000nmの範囲にある、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記電気接続部はAg、Al、Cu、Cr、Ni及びTiのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本非仮特許出願は、35U.S.C.§119(e)に基づいて、Eloweらにより2010年1月14日に出願された「露出導電性グリッドを有する耐湿分性光電池デバイス」(MOISTURE RESISTANT PHOTOVOLTAIC DEVICE WITH EXPOSED CONDUCTIVE GRID)という発明の名称である出願番号第61/294,878号の米国仮特許出願の優先権を主張する。その仮特許出願の全体を参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明は外部電気接続の形成を容易にする導電性収集グリッドを取り込んだタイプの光電池デバイスに関し、より詳細には、ヘテロ接合光電池デバイス、特に、このようなグリッドとデバイスの他の構成要素との間に改良された接着力を有し、その改良された接着力が改良された耐湿分性を有するデバイスを提供するのを助けるカルコゲン系光電池デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
n-型カルコゲニド組成物及び/又はp-型カルコゲニド組成物の両方は、ヘテロ接合光電池デバイスの成分中に取り込まれてきた。p-型カルコゲニド組成物はこれらのデバイスの光電池アブソーバ領域として使用されてきた。例示のp-型光電池活性カルコゲニド組成物は、しばしば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、インジウム(In)及び/又はガリウム(Ga)のうちの1つ以上の硫化物及び/又はセレン化物を含む。より典型的には、Cu、In及びGaの少なくとも2つ又はさらには3つすべてが存在する。このような材料はCIS、CIAS、CISS、CIGS及び/又はCIGSS組成物など呼ばれる(以下に、包括的にCIGS組成物と呼ぶ)。
【0004】
CIGS組成物をベースとするアブソーバは幾つかの利点を提供する。1つとして、これらの組成物は入射光を吸収するために非常に広い断面積を有する。このことは、非常に高い百分率の入射光が非常に薄いCIGSをベースとするアブソーバ層により捕獲されうることを意味する。たとえば、多くのデバイスにおいて、CIGSをベースとするアブソーバ層は厚さが約2μm〜約3μmの範囲にある。これらの薄い層により、これらの層を取り込むデバイスは可とう性となることができる。これはシリコンをベースとするアブソーバとは対照的である。シリコンをベースとするアブソーバは光捕獲のためにより低い断面積を有し、一般に、同一量の入射光を捕獲するために、ずっと厚くしなければならない。シリコンをベースとするアブソーバは剛性であって、可とう性でない傾向がある。
【0005】
n-型カルコゲニド組成物、特に少なくともカドミウムを取り込んだものは光電池デバイス中でバッファー層として使用されてきた。これらの材料は、一般に、n-型材料及びp-型材料との間の界面付近にp-n接合を形成するのを助けるのに有用なバンドギャップを有する。p-型材料と同様に、n-型カルコゲニド層は可とう性光電池デバイス中に使用されるのに十分に薄くすることができる。これらのカルコゲニド系光電池は、また、頻繁に、透明導電層及びウィンドー層などの他の層をも含む。
【0006】
ヘテロ接合光電池、特に、p−型及びn−型カルコゲニドをベースとするものは水感受性であり、多量でありすぎる水の存在下に過度に崩壊することがある。また、より薄い可とう性層は熱離層及び他の離層又は亀裂応力に弱い。離層及び亀裂はデバイス性能を害するだけでなく、得られる離層及び亀裂は水分浸入も悪化させることがある。それゆえ、使用可能寿命を向上させるために、デバイス構成要素間の強い接着力は離層、亀裂及び湿分浸入に抗するために重要である。
【0007】
ヘテロ接合光電池、特に、カルコゲニド系太陽電池を有害な湿分崩壊から保護するために、1層以上の密封バリア膜はデバイス上に堆積されうる。しかしながら、このようなバリア膜はデバイスの上部表面に対する低い接着性を示す傾向があるであろう。特に、バリア材料及び下層の透明導電性酸化物(TCO)材料及び/又は導電性収集グリッドの間の接着力は所望されるほど強くないことがある。さらに、グリッドと他の材料、たとえば、TCO組成物との間の接着力も低いことがある。これらの問題は、過度の離層又は連続密封バリア膜の破壊及び/又は開放経路をもたらし、水の浸入が非常に容易にカルコゲニド組成物に到達しうる。このことは、次いで、デバイス性能の低下をもたらし、究極的に破損をもたらすことができる。さらに、バリア膜は、通常、誘電性であるから、互いに相互接続する電池全体にわたって電気収集のための連続導電性パスを提供することは難題となる。
【0008】
シリコン系太陽電池の関係で、パッシベーションのために窒化ケイ素膜を使用することが知られている。しかしながら、シリコン系太陽電池はカルコゲニド系電池と比較して厚くかつずっと剛性である傾向がある。したがって、層間接着力はシリコン系太陽電池の関係ではあまり問題とならない。さらに、シリコン系太陽電池は良好な耐湿性を有し、そのため、湿分浸入はシリコン系太陽電池ではあまり問題にならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の要旨
本発明は透明導電性酸化物、導電性グリッド材料及び誘電性バリア層のうちの2つ以上の層の間の接着力を改良するための方策を提供する。結果として、その方策はカルコゲニド系太陽電池などのヘテロ接合太陽電池の製造に特に有用である。得られる電池は離層、破壊及び/又は湿分浸入に対して、より耐性である。本発明の方策により保護されたデバイスは向上された使用可能寿命を有することが期待される。驚くべきことに、本発明の発明者は、もしバリアが形成され、その後に、バリア内のビアにグリッドを適用するならば、バリアをグリッド上又はその周囲に形成する場合と比較して、構造は向上された耐湿分性を有するということを発見した。グリッド材料及び誘電性バリア材料が協働してデバイス上に密封シールを提供し、それにより、水浸入による損傷を含む環境条件により誘導される損傷に対して保護することができる程度に接着力は改良される。これにより、収集グリッドは誘電性バリア上に少なくとも部分的に露出され、デバイスに電気接続を形成することが容易になる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、
a)光入射表面及び裏面を有し、そして少なくとも1つの光電池アブソーバ、好ましくはカルコゲニド含有光電池アブソーバを含む基材であって、アブソーバと光入射表面との間に配置された少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含む基材、
b)透明導電性酸化物層上に配置された誘電性バリア層、
c)誘電性バリア層に存在し、デバイス中のある位置を終端とする少なくとも1つのビアであって、該ビアが透明導電性酸化物層全体を通して貫通せずに、誘電性バリア層を通して透明導電性酸化物層に開放連通を提供するようになっている少なくとも1つのビア、及び、
d)透明導電性酸化物層に電気的に接続された電気接触部であって、ビア内に形成されたベース及び誘電性バリア層より上に突出したキャップを含む電気接触部、
を含む、光電池デバイスを提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、
a)光入射表面及び裏面を有し、そして少なくとも1つの光電池アブソーバ、好ましくはカルコゲニド含有光電池アブソーバを含む基材であって、アブソーバと光入射表面との間に配置された少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含む基材、
b)透明導電性酸化物層上に配置された誘電性バリア層、
c)誘電性バリア層に存在し、デバイス中のある位置を終端とする少なくとも1つのビアであって、該ビアが透明導電性酸化物層全体を通して貫通せずに、誘電性バリア層を通して透明導電性酸化物層に開放連通を提供するようになっている少なくとも1つのビア、及び、
d)透明導電性酸化物層に電気的に接続された電気接触部であって、ビア内に形成されたベース、及び、ビアの少なくとも一部よりも少なくとも1つの方向で広い、誘電性バリア層より上に突出したキャップを含む電気接触部、
を含む、光電池デバイスに関する。
【0012】
別の態様において、本発明は光電池デバイスの製造方法を提供する。その方法は、
a)光入射表面及び裏面を有し、そして少なくとも1つの光電池アブソーバ、好ましくはカルコゲニド含有光電池アブソーバを含む基材であって、アブソーバと光入射表面との間に配置された少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含む基材を提供すること、
b)透明導電性酸化物層上に誘電性バリア層を配置させること、
c) デバイス中のある位置を終端とする少なくとも1つのビアを誘電性バリア層に存在させ、該ビアが透明導電性酸化物層全体を通して貫通せずに、誘電性バリア層を通して透明導電性酸化物層に開放連通を提供するようにすること、及び、
d)透明導電性酸化物層に電気的に接続された電気接触部であって、ビア内に形成されたベース及び誘電性バリア層より上に突出したキャップを含む電気接触部を形成させること、
の工程を含む。
【0013】
図面の簡単な説明
本発明の上記及び他の利点ならびその達成方法は添付の図面と組み合わせて本発明の実施形態の以下の説明を参照することにより、より明らかになりそして発明自体がより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の原理による光電池デバイスの1つの実施形態の模式断面図である。
図2図2は本発明のサンプルの比較に対する湿分バリア品質を測定するための手段として光学濃度特性を含むグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
下記に示す本発明の実施形態は発明が以下の詳細な説明に開示されるまさにその形態に尽くされ又は限定されることを意図しない。むしろ、当業者が本発明の原理及び実施を評価しそして理解することができるように実施形態を選択しそして記載している。本明細書中に引用するすべての特許、係属中の特許出願、公開特許出願及び技術文献をすべての目的でそれぞれの全体を参照により本明細書中に取り込む。
【0016】
図1は本発明の光電池デバイス10の1つの実施形態を模式的に示す。デバイス10は望ましくは可とう性であり、それにより、デバイス10をある曲面を含む表面に取り付けることが可能になる。好ましい実施形態において、デバイス10は、25℃の温度で亀裂を生じることなく、50cm、好ましくは約40cm、より好ましくは約25cmの直径を有するマンドレルの周囲に包囲されるのに十分に可とう性である。デバイス10は光線16を受ける光入射表面12及び裏面14を含む。
【0017】
デバイス10は基材18を含み、その基材はカルコゲニド含有光電池アブソーバ領域20を含む。領域20は示すとおりの単一一体層であっても、又は、1層以上の層から形成されてもよい。領域20は光線16で表される光エネルギーを吸収し、その後、この光エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0018】
カルコゲニドアブソーバ領域20は、好ましくは、銅、インジウム及び/又はガリウムのうちの少なくとも1つを含む、IB−IIIBセレン化物、IB−IIIB硫化物及びIB−IIIBセレン化物−硫化物などの少なくとも1種のIB−IIIB−カルコゲニドを取り込む。多くの実施形態において、これらの材料は多結晶形態で存在する。有利には、これらの材料は光吸収のための優れた断面を示し、それにより、領域20を非常に薄くかつ可とう性とすることができる。例示の実施形態において、典型的なアブソーバ領域20は約1μm〜約5μm、好ましくは約2μm〜約3μmの範囲の厚さを有することができる。
【0019】
このようなIB−IIIB−カルコゲニドの代表的な例は銅、インジウム及び/又はガリウムのうちの1つ以上をセレン及び/又は硫黄に加えて取り込む。ある実施形態は、銅及びインジウムの硫化物又はセレン化物を含む。さらなる実施形態は銅、インジウム及びガリウムのセレン化物又は硫化物を含む。特定の例は、限定するわけではないが、銅インジウムセレン化物、銅インジウムガリウムセレン化物、銅ガリウムセレン化物、銅インジウム硫化物、銅インジウムガリウム硫化物、銅ガリウムセレン化物、銅インジウム硫化物セレン化物、銅ガリウム硫化物セレン化物、銅インジウムアルミニウムセレン化物及び銅インジウムガリウム硫化物セレン化物(本明細書中、そのすべてはCIGSと呼ばれる)材料を含む。カルコゲニドアブソーバは、また、当該技術分野において知られているようにナトリウムなどの他の材料でドーピングされてよい。
【0020】
代表的な実施形態において、光電池特性を有するCIGS材料は式CuIn(1−x)GaSe(2−y)(式中、xは0〜1であり、yは0〜2である)により表すことができる。銅インジウムセレン化物及び銅インジウムガリウムセレン化物は好ましい。アブソーバ領域20は蒸発、スパッタリング、電着、スプレイ及び焼結などの1つ以上の種々の技術を用いて適切な方法によって形成されうる。1つの好ましい方法は1つ以上の適切なターゲットからの構成元素の同時蒸発であり、ここで、個々の構成元素は同時に又は順次にあるいはこれらの組み合わせで高温表面上で熱的に蒸発させて、領域20を形成する。堆積の後に、堆積された材料を1つ以上のさらなる処理に付して領域20を最終仕上することができる。多くの実施形態において、CIGS材料はp-型特性を有する。
【0021】
アブソーバ領域20に加えて、基材18は、また、1つ以上の他の構成要素を含むことができ、その構成要素は支持体22、裏側電気接触領域24、バッファー領域28及び透明導電性酸化物(TCO)領域30を含む。示しているとおり、これらの領域の各々は単一の一体層であっても、又は、1層以上の層から形成されてもよい。支持体22は剛性であっても、又は、可とう性であってもよいが、望ましくは、デバイス10が非平坦表面との組み合わせで使用される実施形態では可とう性である。支持体22は広範な材料から形成されうる。これらとしては、ガラス、石英、他のセラミック材料、ポリマー、金属、金属合金、金属間化合物組成、紙、織物又は不織布、これらの組み合わせなどを挙げることができる。ステンレススチールは好ましい。
【0022】
裏側電気接触領域24は外部回路にデバイス10を電気接続するための便利な方法を提供する。接触領域24は広い範囲の導電性材料から形成することができ、その材料はCu、Mo、Ag、Al、Cr、Ni、Ti、Ta、Nb、Wの1つ以上、これらの組み合わせなどを含む。Moを取り込んだ導電性組成物は例示の実施形態で使用されうる。裏側電気接触領域24は、また、支持体からアブソーバ領域20を分離して、支持体成分がアブソーバ層中に移行するのを最少限にすることも助ける。たとえば、裏側電気接触領域24はステンレススチール支持体22のFe及びNi成分がアブソーバ領域20中に移行するのをブロックするのを助けることができる。裏側電気接触領域24は、また、もし、アブソーバ領域20の形成にSeを使用するならば、Seに対する保護などにより支持体22を保護することもできる。
【0023】
任意の層(示していない)は、裏側電気接触領域24及び支持体22の間の接着力及び/又は裏側電気接触領域24及びアブソーバ領域20の間の接着力を向上させるのを助けるための現在知られている従来の実施又は今後開発される実施により裏面14に近接して使用されてよい。さらに、1つ以上のバリア層(示していない)も裏側電気接触領域24上に提供され、周囲からデバイス10を分離させるのを助け及び/又はデバイス10を電気的に分離させることができる。1つ以上の追加の層(示していない)は電池製造の間の基材のセレン化を防止するのを助けることを含む種々の理由から支持体22の裏面上に堆積されうる。このような1つ以上の層は、通常、モリブデンを含む。
【0024】
デバイス10は、カルコゲニド材料をベースとするときに、しばしば、ホモ接合構造を有するシリコン系半導体電池とは対照的に、ヘテロ接合構造を備えている。ヘテロ接合はアブソーバ領域20及びTCO領域30との間に形成でき、それはバッファー領域28によりバッファーされる。任意のウィンドー領域26も存在しうる。これらの領域の各々は単一の一体層として示しているが、示すように単一の一体層であっても、又は、1層以上の層から形成されてもよい。
【0025】
バッファー領域28は、一般に、アブソーバ領域20及びバッファー領域28の間の界面32付近にp-n接合を形成するのを助ける適切なバンドギャップを有するn-型半導体材料を含む。バッファー領域28のための適切なバンドギャップは、一般に、アブソーバ層が約1.0〜約1.6eVの範囲のバンドギャップを有するCIGS材料であるときには、約1.7eV〜約3.6eVの範囲にある。CdSはバンドギャップが約2.4eVである。例示のバッファー層の実施形態は、一般に、厚さが約10nm〜約200nmの範囲にあることができる。
【0026】
広範なn-型半導体材料はバッファー領域28を形成するために使用されうる。例示の材料として、カドミウム、亜鉛、鉛、インジウム、スズの1つ以上又はそれらの組み合わせなどのセレン化物、硫化物及び/又は酸化物であって、場合により、フッ素、ナトリウムの1つ以上、これらの組み合わせなどを含む材料でドーピングされたものが挙げられる。ある例示の実施形態において、バッファー領域28はカドミウム及び場合により亜鉛などの少なくとも1つの他の金属を含むセレン化物及び/又は硫化物である。他の例示の実施形態としては亜鉛の硫化物及び/又はセレン化物が挙げられる。追加の例示の実施形態は、フッ素などの材料によりドープされた、スズの酸化物を含むことができる。ケミカルバス堆積、部分電解質処理、蒸発、スパッタリング又は他の堆積技術などの幅広い方法はバッファー領域28を形成するのに使用されうる。
【0027】
基材18は任意のウィンドー層を含むことができる。ウィンドー領域26はシャントに対する保護を助けることができる。ウィンドー領域26は、また、続いて行うTCO領域30の堆積の間にバッファー領域28を保護することができる。ウィンドー領域26は広範な材料から形成することができ、そしてしばしば、抵抗性透明酸化物、たとえば、Zn、In、Cd、Sn、これらの組み合わせなどの酸化物から形成される。例示のウィンドー材料は真性ZnOである。典型的なウィンドー領域26は厚さが約10nm〜約200nmの範囲にあることができ、好ましくは約50nm〜約150nmであり、より好ましくは約80nm〜約120nmである。
【0028】
TCO領域30はバッファー領域28と光入射表面12との間に配置され、そしてバッファー領域28に電気接続し、それにより、基材18のための上部導電性電極を提供する。多くの適切な実施形態において、TCO層は厚さが約10nm〜約1500nmの範囲にあり、好ましくは約150nm〜約200nmである。示すとおり、TCO領域30はウィンドー領域26と接触している。別の場合の例として、TCO領域30はバッファー領域28と直接接触してもよい。1つ以上の介在層は、接着性を促進する、電気特性を改善するなど、種々の理由のために、場合により挿入されてもよい。
【0029】
広範な透明導電性酸化物又はこれらの組み合わせはTCO領域30中に取り込まれてよい。例としては、フッ素ドープされた酸化スズ、酸化スズ、酸化インジウム、インジウムスズオキシド(ITO)、アルミニウムドープされた酸化亜鉛(AZO)、酸化亜鉛、これらの組み合わせなどが挙げられる。1つの例示の実施形態において、TCO領域30はインジウムスズオキシドである。TCO層は便利には、スパッタリング又は他の適切な堆積技術により形成される。
【0030】
誘電性バリア領域34及び導電性収集グリッド36は基材18上に配置される。グリッドは、望ましくは、ニッケル、銅、銀などの導電性金属など及び/又はそれらの組み合わせを少なくとも含む。1つの例示の実施形態において、グリッドはニッケル及び銀を含む二層構造を有する。これらの材料は透明でないので、それらは間隔を開けたラインからなるグリッドとして堆積され、それにより、グリッドは表面上に比較的に小さい設置面積を占める(たとえば、ある実施形態では、グリッドは光捕獲に関連する合計表面積の約5%以下、さらには約2%以下、又は、さらには約1%以下であり、それにより、光活性材料は入射光に暴露されうる)。示すとおり、領域34は単一層である。しかしながら、領域34は所望ならば、1つの層より多い層から形成されうる。
【0031】
デバイス10のこれらの構成要素を形成するための本発明の方法の概要として、バリア領域34の少なくとも一部はグリッド36の少なくとも一部の形成の前に形成される。好ましくは、少なくとも、バリア領域34の実質的にすべてはグリッド36が形成される前に形成される。TCO領域30中のTCO材料を露出させているビア38は領域34に提供される。次いで、グリッド36の少なくとも一部は、下層を保護するための密封包囲物を完成するように材料間の界面に接着向上膜(示していない)を場合により用いてビア38中に形成される。
【0032】
有利なことに、本発明の方法は、カルコゲニド系太陽電池デバイス、特に、可とう性CIGS系デバイスの関係で、バリア領域34とグリッド36との界面の接着品質を改良する。この方法は、バリア領域34とグリッド36との界面の接着力が改良される点で離層及び湿分浸入に対する保護の改良を提供する。結果としてデバイス寿命は長くなる。このことは驚くべきことである。というのは、もしグリッド36が最初に形成されるならば、離層及び水分浸入がずっと起こりやすくなるからである。さらに、グリッド36の部分を構成している接触部40は誘電性バリア層よりも上まで突出しているので、標準的な安価な技術を用いてデバイス10に電気接続を行うのが容易になる。好ましい実施形態におおいて、領域34より上方に突出している接触部の部分は下方にあるビア38よりも広い。このことは、電気接続を容易にするだけでなく、接触部40とバリア領域34との間の界面で迂曲経路を形成する。この迂曲経路により、デバイス10に水が浸入するのがさらに難しくなる。
【0033】
より詳細には、誘電性バリア領域34は、導電性グリッド36の要素を構成している電気接触部40を通して電気接触が望まれている箇所を除いて、周囲環境からTCO領域34を電気的に分離することを助けるために十分に低い誘電率を有する1種以上の適切な誘電性材料から形成される。多くの実施形態において、誘電性バリア領域34は2〜約120、好ましくは2〜約50、より好ましくは3〜10の誘電率を有する。さらに、誘電領域34は、望ましくは、水蒸気浸入に対するバリア保護を提供する。多くの実施形態において、誘電性バリア領域34は、水蒸気透過速度(WVTR)が10〜約10−5g/m-日の範囲にあることを特徴とするが、最も好ましくは5×10−4g/m-日未満である。材料のWVTRはASTM E96に記載される方法により、又は、カルシウム試験(Wolfら、Plasma Process and Polymers, 2007, 4, S185-S189)などの他の試験において決定されうる。
【0034】
誘電性バリア領域34は種々の材料から形成されうる。好ましくは、バリア領域34に使用される材料は無孔性である。本発明に有用なバリアコーティングは、好ましくは、約400nm〜約1300nmの透過波長範囲で≧80%の光透過率を示し、より好ましくは、同一の範囲で≧85%の透過率を示す。
【0035】
誘電性バリア領域34は広い範囲の厚さを有することができる。もし薄すぎると、電気絶縁性及び湿分浸入に対する保護性が所望されるほどに強くないことがある。厚すぎると、十分な追加の性能を提供することなく、過度に透明性が悪くなることがある。これらの配慮点をバランスさせると、バリア領域34の例示の実施形態は厚さが10nm〜約1000nmであることができ、好ましくは約10nm〜約250nmであり、より好ましくは約50nm〜約150nmである。
【0036】
誘電性バリア領域34は金属酸化物、炭化物、窒化物など又はそれらの組み合わせからなる群より選択されうる。1つの好ましい実施形態において、バリア材料はケイ素の酸化物及び/又は窒化物である。これらの実施形態は優れた誘電性及び湿分保護性を提供する。ある実施形態において、誘電性バリア領域34は、好ましくは、窒化ケイ素、又は、ケイ素、窒素及び酸素を含む材料(酸窒化ケイ素)から形成される。誘電性バリア領域34が2層以上の副次層から形成される他の実施形態において、第一の副次層は窒化ケイ素から形成されることができ、そして第二の副次層は酸窒化ケイ素から形成されることができる。2つ以上の副次層を使用するときには、ボトム層(すなわち、TCO層と接触している層)は窒化ケイ素であることが好ましい。
【0037】
窒化ケイ素の代表的な実施形態は式SiNにより表され、そして酸窒化ケイ素の代表的な実施形態は式SiOにより表され、ここで、xは約1.2〜約1.5の範囲にあり、好ましくは約1.3〜約1.4であり、yは好ましくは0を超え、約0.8までであり、好ましくは約0.1〜約0.5であり、zは約0.8〜約1.4の範囲にあり、好ましくは約1.0〜約1.3である。望ましくは、x、y及びzはバリア領域34、又は、適当なときには、その副次層の各々の屈折率が約1.80〜約3の範囲にあるように選択される。1つの適切な実施形態の例として、式SiN1.3である屈折率が2.03である窒化ケイ素は本発明の実施に適するであろう。
【0038】
誘電性バリア領域34は種々の方法でTCO領域30上に形成されうる。1つの代表的な方法によると、誘電性バリア領域34は、約200℃未満、好ましくは約150℃未満、より好ましくは約100℃未満で行う低温法により太陽電池上に堆積されうる。この関係での温度は堆積を行う表面での温度を指す。好ましくは、無機バリアはマグネトロンスパッタリングにより堆積される。好ましい窒化ケイ素層を形成しようとする場合に、誘電性バリア層は好ましくは、ケイ素ターゲット及び窒素とアルゴンガスとの混合物を用いて反応性マグネトロンスパッタリングにより堆積される。ガスフィード中の窒素のモル分率は、好ましくは0.1を超え、より好ましくは0.2を超え、そして好ましくは1.0未満であり、より好ましくは0.5未満である。堆積の前に、チャンバー内の適切なベース圧力は約1×10−8〜約1×10−5トルの範囲にある。スパッタリングを行う際の操作圧力は、望ましくは、約2ミリトル〜約10ミリトルの範囲にある。
【0039】
これらのスパッタリング条件を用いて誘電性バリア領域34を形成するときに、TCO領域30と誘電性バリア領域34との間の界面付近に介在性の比較的に薄い副次層(示していない)は望ましくは形成しているものと信じられる。誘電性バリア領域34のより厚い誘電性副次層(示していない)はその上方に形成する。走査型電子顕微鏡(SEM)分析に示されるコントラスト差に基づいて、介在性副次層は領域34のバルクと比較して、より低い密度を有するようであると信じられる。介在性副次層の元素組成の特性は領域34のバルクよりも大きな酸素含有分を有する傾向があるだろう。固執するつもりはないが、この介在性副次層の形成は領域34の環境バリア性にとって有利であることができ、また、膜形成の間の過剰電子及びイオン衝突により生じる格子欠陥の低減/治癒を促進することができるものと推論される。誘電性バリア領域34を堆積するために低温法を使用するこの方法は「METHOD OF FORMING A PROTECTIVE LAYER ON THIN-FILM PHOTOVOLTAIC ARTICLES AND ARTICLES MADE WITH SUCH LAYER」でDeGrootらの名義で2009年3月25日に出願された、弁護士整理番号第67695号である譲受人の同時係属出願(現在、US2010/0243046)にさらに記載されている。
【0040】
選択肢として、誘電性バリア領域34は他の方法によっても調製でき、その方法としては、限定するわけではないが、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、原子層堆積(ALD)及びその他を含む、当業者に知られた低温真空法が挙げられる。
【0041】
誘電性バリア領域34の好ましい実施形態は、約400nm〜約1300nmの透過波長範囲で≧80%の光透過率を示し、好ましくは、同一の範囲で≧85%の透過率を示す。さらに、誘電性バリア領域34の好ましい実施形態は1×10−2g/m−日未満の水蒸気透過速度を示すことができ、好ましくは5×10−4g/m−日未満である。誘電性バリア領域34は単一層として又は多層副次層として適用されてもよい。
【0042】
少なくとも1つのビア38は誘電性バリア領域34中に存在する。例示の目的で、2つのビアは示されている。ビア38は種々の方法で領域34において形成されうる。1つの選択肢によると、ビア38は下層構造の対応する領域をマスキングすることにより形成されうる。誘電性材料は、その後、下層構造の上に堆積でき、その後、マスキングは除去されて、誘電性バリア領域をとおしてビア38が現れる。ビア38は、誘電性バリア領域34が形成された後であるが、電気接触部40が形成される前に、誘電性バリア領域34の一部を除去することにより、堆積後形成されてもよい。材料除去はレーザアブレーション、マスクの存在下でのケミカルエッチング、フォトリトグラフィー、これらの組み合わせなどの種々の方法で行われてよい。ビア38が下記にさらに記載されるグリッド構成要素で充填されるときに、バリア領域34及びグリッド36は協働して、デバイス10上に密封包囲物を形成する。
【0043】
示すとおり、少なくとも1つのビア38は表面12から底部44まで延在し、グリッド構成要素を形成させる前にはTCO領域30を露出させている。示すとおり、少なくとも1つのビア38の底部44は表面44の近傍を終端としている。他の実施形態(示していない)において、底部44はビア38がTCO領域30中に入っているが、それを貫通していないような位置とすることができる。これにより、電気接触部40をTCO層に電気接続させることができる。デバイス10がこの構成を有する少なくとも1つのビア38を含むかぎり、デバイス10中により浅く又は深く侵入している他のビアを所望ならば用いてよい。しかしながら、より好ましくは、領域34に形成されたビアの少なくとも過半、好ましくは実質的にすべてはTCO領域30を又はTCO領域30内を終端としている。
【0044】
導電性グリッド36の少なくとも一部を構成している電気接触部40はビア38中に形成され、そしてTCO領域30に電気接続される。デバイス10中のより深い別の層でなく、TCO領域30に電気接続された少なくとも1つの接触部40を提供することは多くの利点を提供する。まず、接触部40の側面を沿ってデバイス10中に水が浸入することができる範囲において、接触部40はTCO領域34の深さまでしか延在していない。このため、カルコゲニドをベースとするアブソーバ領域20などのデバイス10のより深い層は水の浸入から保護されている。本発明のある実施形態において、ビア38の部分及びそのビア中に形成されている接触部40のみがTCO層の深さまで延在しそしてさらに不覚には延在しておらず、一方、他のビア及び接触部はデバイス10中でより深く又はより浅く延在していることができる。しかしながら、より好ましくは、ビア38及び接触部40の少なくとも実質的にすべてはTCO領域30全体にわたって貫通せずに、TCO領域30まで延在している。
【0045】
各接触部40はビア内のベース48及び誘電性バリア領域34の光入射表面12より上に突出しているキャップ50を含む。突出しているキャップ50により、グリッド36への電気接続を容易に行える。本実施形態に示すとおり、キャップ50の少なくとも一部は下方にあるビア38の少なくとも一部よりも少なくとも1つの方向で広い。これにより、迂曲経路が形性され、その迂曲経路は水の浸入を実質的に最少限にし、さらには実質的に排除する。ベース48及びキャップ50は示されるとおりに一体で形成されても、又は、2つ以上の構成要素から形成されてもよい。
【0046】
キャップ50は広い範囲の厚さを有することができる。例示の実施形態において、キャップ50は厚さが約0.05μm〜約50μmの範囲にあり、好ましくは約0.1μm〜約25μmであり、より好ましくは約1.0μm〜約10μmである。
【0047】
電気接触部40は広い範囲の導電性材料から形成されてよいが、最も望ましくは、1種以上の金属、合金又は金属間化合物組成から形成される。例示の接触材料としては、Ag、Al、Cu、Cr、Ni、Tiの1つ以上、これらの組み合わせなどが挙げられる。Agを含む接触部40は好ましい。
【0048】
接触部40とビア38の壁との界面の接着品質を改良するために、任意の接着向上性膜56をこの界面のすべて又は一部に使用してよい。図1に示すとおり、膜56はビア38の実質的にすべてをライニングする。膜56の使用により、デバイス10を離層、水による攻撃又は他の劣化に対してさらにより強健にすることを助ける。典型的な実施形態において、膜56は厚さが約10nm〜約500nmの範囲にあり、好ましくは約25nm〜約250nmであり、より好ましくは約50nm〜約100nmである。膜56は広範な材料から形成されうる。膜56の好ましい実施形態はNiなどの導電性金属構成成分を含む。膜56は接触部40の堆積前にビア38中に形成される。
【0049】
任意領域(示していない)はデバイス10をさらに保護することを助けるために誘電性バリア領域34の上に1つ以上の追加のバリア層を含んでよい。多くの実施形態において、これらの追加のバリア層は、存在するならば、所望の電気接続がグリッド36に対してなされた後にデバイス10中に取り込まれる。もし、任意領域を用いるならば、キャップ50の上部表面58も接着向上性膜(示していない)によりコーティングされうる。この上部膜は膜56において使用されるものと同一の材料から形成されうるが、また、このような上部膜が導電性である必要がないかぎり広範な材料から形成されうる。このような上部膜が誘電性又は他の絶縁性材料から形成されようとするならば、上部膜は電気接触がグリッド36になされた後に形成されうる。又は、上部膜は、所望の電気接続を行うために利用可能な適当なビアを残すようにして、電気接続を行う前に形成されうる。
【0050】
このましい態様において、誘電性バリア領域34の少なくとも一部はグリッド36の少なくとも一部が形成される前にデバイス10中に取り込まれる。誘電性バリア領域34が最初に形成される場合に、接触部40とバリア領域34との界面は離層、亀裂及び水の浸入に対して非常に強健である。任意の膜56を用いるときに、特に、Niが膜56の一部を構成し、好ましくはモル基準で任意の膜56の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも約90%を構成し、特に、接触部40が銀を含むときに、界面の品質は大きく向上される。対照的に、接触部40とバリア領域34との界面は、グリッド36全体がバリア領域34より前に完全に形成されるときに、あまり強健でなくなる。
【実施例】
【0051】
ここで、本発明を以下の例示の実施例を参照して説明する。
例1
ソーダライムガラスの1”×1”片の上に、アルミニウムのスパッタリング蒸着薄膜(約30nm)を含む基材を調製し、次いで、130nmの厚さのインジウムスズオキシド(ITO)層を調製した。100mm直径の5mm厚さのITOセラミックターゲット(90wt%In、10wt%Sn0)から慣用のRFマグネトロンスパッタリングチャンバーを用い、質量流量コントローラを用いて制御されたアルゴン(14sccm)及び酸素(2sccm)のガス流を用い、操作ガス圧力2.8mTorrを達成させて、インジウムスズオキシド(ITO)膜を調製した。堆積の間に基材温度を150℃に維持した。Kaptonテープ(1mm×5mm)のストリップをサンプルのある領域をマスキングするために適用した。178nmの厚さの窒化ケイ素の層をITO及びテープ上にスパッタリング蒸着した。窒化ケイ素はホウ素でドープしたシリコンターゲット及び50:50Ar:N ガス比を用いて反応性スパッタリングにより堆積した。堆積の間の圧力は4.0mTorrに制御し、出力は140Wに設定し、そしてチャンバー平板は回転モードであった。基材に対するターゲットの距離は75mmであった。窒化ケイ素膜の堆積速度は約40Å/分であった。堆積の前に、システムをベース圧力9×10−6Torrにポンプで減圧した。その後、テープを注意深く取り除き、窒化ケイ素の下の裸のITO層を露出させた。露出したITOよりも若干大きい長方形表面(ボイド)を除いて、全体のサンプルを被覆するようにマスクを適用した。
【0052】
合計の厚さが約1600nmであるNi及び、次いで、Agの層をマスク上に順次に蒸着し、それにより、露出したITOを完全に覆った導電性グリッドを堆積した。Ni及びAg層はDenton Explorer 14システムで電子ビーム蒸着により順次に堆積される。蒸着の前に、チャンバーベース圧力を<2×10−6Torrに減圧した。すべての堆積を9.0kVで行ったが、電流値はNi及びAgにつき、それぞれ0.130及び0.042アンペアであった。堆積速度をプロセス中、Maxtek 260石英結晶堆積コントローラを用いて、Ni及びAgにつき、それぞれ2.0Å/s及び15.0Å/sに制御した。Niショット (99.9999%、International Advanced Materialsから入手)を7cc アルミニウムるつぼから蒸着し、Agペレット(99.9999%、Alfa Aesar) を7ccモリブデンるつぼから蒸着した。
【0053】
得られた構造の断面画像(FIB−SEM)は窒化ケイ素層をオーバーラップしている Ni/Agグリッド、ならびに、窒化ケイ素がなく、接触がITOとNi/Agグリッド接触部との間に直接的になされる領域ではITOを示している。この視覚試験の際に、接触部は窒化ケイ素に強固に結合されていた。
【0054】
例2
3つのソーダライムガラスの1”×1”片の上に、アルミニウムの薄膜(約30nm)をスパッタリング蒸着した。Kaptonテープ(1mm×5mm)のストリップを各サンプルのある領域をマスキングするために適用した。150nmの厚さの窒化ケイ素の層を、各サンプルにつき、例1に記載した条件と同一の条件を用いてアルミニウム及びテープ上にスパッタリング蒸着した。その後、テープのストリップを注意深く取り除き、窒化ケイ素の下の裸のアルミニウム層を露出させた。各サンプルにつき、露出したアルミニウムよりも若干大きい長方形表面を除いて、全体の基材を被覆するようにマスクを適用した。合計の厚さが約1600nmであるNi、次いでAgの層を例1に記載した条件を用いてマスク上に蒸着し、それにより、露出したアルミニウムを完全に覆った導電性グリッドを堆積した。
【0055】
その後、サンプルを加速暴露試験のために115℃/100%相対湿度及び12psigで圧力容器内に入れた。光学濃度データを図2に示す。データは3つのサンプルの性能の平均値を示す。アルミニウムフィルムの光学濃度を測定し、水との反応による酸化アルミニウムの酸化の度合いを決定する。より透明な酸化アルミニウム層の形成は光学濃度の減少をもたらす。図2に示すプロットにおいて、調製されたサンプルからの光学濃度データ(「本発明」と識別する)を標準手順により調製したサンプルのものと比較する。標準サンプルは「本発明」のサンプルと同様の構成を含んだが、Ni/AgグリッドをITO層の上に直接的に堆積し、次いで、ITO/グリッド構造の上に窒化ケイ素を堆積させた。結果は、本発明の原理を実施したときに達成される、湿分バリア性能の有意な改良を示す。
【0056】
例3
ソーダライムガラスの1”×1”(約2.5cm×2.5cm)片の上に、アルミニウムの薄膜(約30nm)をスパッタリング蒸着し、次いで、130nmの厚さのインジウムスズオキシド(ITO)層をスパッタリング蒸着した。Kaptonテープ(各1mm×5mm)の2つのストリップをサンプルの2つの明確な領域をマスキングするために適用した。150nmの厚さの窒化ケイ素の層をITO及び両方のテープストリップの上に例1に記載したのと同一のチャンバー及び条件を用いてスパッタリング蒸着した。その後、ストリップを注意深く取り除き、窒化ケイ素の下の裸のITO層を露出させた。1つの露出したITO領域よりも若干大きい1つの長方形表面を除いて、全体のサンプルを被覆するようにマスクを適用した。合計の厚さが1600nmであるNi、次いでAgの順次の層をマスク上に例1に記載した条件下に蒸着し、それにより、1つのITOの露出領域を完全に覆った導電性グリッドを堆積した。
【0057】
導電性測定はITO層とNi/Agグリッドとの間の導電性を維持することを示す。
電気接続 抵抗率
グリッド−グリッド 0.5(<1)Ω・cm
ITO−ITO 5.3〜6.3Ω・cm
グリッド−SiNx 導電性無し
グリッド−ITO 3.8〜4.5Ω・cm
【0058】
本発明の他の実施形態は本明細書を考慮したときに、又は、本明細書中に開示された発明を実施することにより当業者に明らかであろう。本明細書中に記載された原理及び実施形態に対する種々の省略、改変及び変更は以下の特許請求の範囲により示される発明の真の範囲及び精神から逸脱することなく当業者によってなされることができる。
図1
図2