特許第5746243号(P5746243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746243TNFαインヒビターに対して不十分な反応を示す患者の自己免疫疾患治療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746243
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】TNFαインヒビターに対して不十分な反応を示す患者の自己免疫疾患治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20150618BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61P19/02
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-40359(P2013-40359)
(22)【出願日】2013年3月1日
(62)【分割の表示】特願2009-235927(P2009-235927)の分割
【原出願日】2004年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-151515(P2013-151515A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2013年3月28日
(31)【優先権主張番号】60/461,481
(32)【優先日】2003年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ベンユネス,マーク
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 特表平02−503143(JP,A)
【文献】 特開平06−205693(JP,A)
【文献】 Salvatore De Vita, et al.,Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis,Arthritis Rheum,2002年,Vol.46, No.8,p.2029-33
【文献】 EDWARDS,J.C. et al,B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders,Biochem Soc Trans,2002年,Vol.30, No.4,p.824-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/395
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 3/06
A61P 3/10
A61P 7/00
A61P 7/06
A61P 9/00
A61P 9/04
A61P 9/10
A61P 11/00
A61P 11/06
A61P 13/12
A61P 17/00
A61P 17/02
A61P 19/02
A61P 21/02
A61P 25/00
A61P 29/00
A61P 31/04
A61P 31/06
A61P 31/18
A61P 37/02
A61P 37/06
A61P 37/08
A61P 43/00
C07K 16/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFαインヒビターに対して不十分な応答を示す哺乳動物における慢性関節リウマチの骨浸食の進行の阻害剤であって、該阻害剤はリツキシマブを含み、2回の投与が行われ、各投与用量が1000mgのリツキシマブであり、前記2回の投与の第1投与が治療の第1日目及び第2投与が第15日目に行われる、阻害剤。
【請求項2】
前記TNFαインヒビターがエタネルセプト、インフリキシマブ及びアダリムマブから選択される、請求項に記載の阻害剤。
【請求項3】
哺乳動物がヒトである、請求項1又は2に記載の阻害剤。
【請求項4】
静注投与される、請求項1からの何れか一項に記載の阻害剤。
【請求項5】
メトトレキサート(MTX)と共に投与される、請求項1からの何れか一項に記載の阻害剤。
【請求項6】
副腎皮質ホルモンと共に投与される、請求項に記載の阻害剤。
【請求項7】
副腎皮質ホルモンがメチルプレドニゾロンおよびプレドニソンを含む、請求項に記載の阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、CD20などのB細胞表面上マーカーに結合するアンタゴニストを用いた治療法に関する。特に、本発明は、TNFαインヒビターに対して不十分な反応を示す哺乳動物の自己免疫疾患を治療するための該アンタゴニストの使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
リンパ球は、造血過程の間に骨髄において生産される多種ある白血球のうちの1つである。リンパ球の2つの主な分類は、Bリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)である。ここで特に対象とするリンパ球はB細胞である。
B細胞は骨髄内で成熟して、その細胞表面上に抗原結合抗体を発現する骨髄を放出する。天然のB細胞がその膜結合性抗体に特異的な抗原と初めて遭遇すると、細胞は速やかに分離し、その子孫はメモリーB細胞と「プラズマ細胞」と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。メモリーB細胞は長い寿命を持ち、本来の親細胞と同じ特異性を有する膜結合性抗体を発現し続ける。プラズマ細胞は、膜結合性抗体を発現する代わりに、分泌型抗体を産生する。分泌された抗体は、体液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0003】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも呼ばれる)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置するおよそ35kDの分子量の疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989);及びEinfeldら, EMBO J. 7(3):711-717(1988))。該抗原はまたB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に発現されるが(Andersonら, Blood 63(6):1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常なプラズマ細胞又は他の正常な組織上には見出されない(Tedderら, J. Immunol. 135(2):973-979 (1985))。CD20は分化及び細胞周期の開始の活性化過程における初期段階を調節し(上掲のTedderら)、おそらくはカルシウムイオンチャネルとして機能する(Tedderら, J. Cell. Biochem. 14D:195 (1990))。
【0004】
B細胞リンパ腫ではCD20が発現されるため、この抗原はこのようなリンパ腫の「標的とする(ターゲティング)」ための候補となりうる。基本的に標的とするとは以下のことを言う:B細胞のCD20表面上抗原特異的な抗体を患者に投与する。これらの抗CD20抗体は、正常及び悪性の何れのB細胞(表面上)のCD20抗原に特異的に結合する;CD20表面上抗原に結合する抗体は、腫瘍性B細胞を破壊及び減少に至らしめることができる。さらに、腫瘍を破壊する可能性を有する化学薬品または放射性標識は抗CD20抗体に結合させて、作用剤が腫瘍性B細胞特異的に「運ばれる」ようにすることができる。方法にかかわりなく、主たる目的は、腫瘍を破壊することである;特定の方法は、使用する特定の抗CD20抗体により測定することができ、ゆえに、CD20抗原を標的とする有用な方法はかなり異なる。
【0005】
CD19は、B細胞系の表面上に発現するもう一つの抗原である。CD20のように、CD19は、幹細胞段階からプラズマ細胞へ終末分化するまでの系統分化の間ずっと、細胞上にみられる。(Nadler, L. Lymphocyte Typing II 2: 3-37及びAppendix, Renling等.編集. (1986), Springer Verlag)。しかしながらCD20とは異なり、CD19に結合する抗体によって、CD19抗原の内部移行するが生じる。CD19抗原は、例えばHD237-CD19抗体(「B4」抗体とも呼称される)によって同定される(Kiesel等. Leukemia Research II, 12: 1119 (1987))。CD19抗原は、末梢血単核細胞の4−8%及び末梢血、脾臓、リンパ節又は扁桃腺から単離したB細胞の90%以上に存在する。CD19は、末梢血T細胞、単球又は顆粒球上には検出されない。実質的に、全ての非T細胞急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)及びB細胞リンパ腫は、抗体B4によって検出可能なCD19を発現する(Nadler等. J. Immunol. 131:244 (1983);及びNadler等. Progress in Hematology Vol. XII 187-206頁. Brown, E.編集. (1981), Grune & Stratton, Inc)。
【0006】
B細胞系統の細胞で発現される分化段階特有の抗原を認識する更なる抗体が同定された。それらの中には、CD21抗原に対するB2抗体;CD22抗原に対するB3抗体;及びCD10抗原(CALLAとも呼称)に対するJ5抗体がある 。1997年1月21日発行の米国特許第5595721号(Kaminski等.)を参照。
リツキシマブ(rituximab)(リツキサン(RITUXAN)(登録商標))抗体は、一般的にCD20抗原に対する遺伝子的操作を施したキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは1998年4月7日に発行の米国特許第5736137号(Andersonら)において「C2B8」と呼ばれている抗体である。リツキサン(登録商標)は、再発性または低抵抗性の(refractory low-grade)または濾胞性の(follicular)、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療のためのものである。インビトロの作用機序の研究は、リツキサン(登録商標)がヒト補体に結合し補体依存性細胞障害性(CDC)を通してリンパB細胞系を溶解することを実証している(Reffら, Blood 83(2):435-445 (1994))。加えて、その抗体は抗体依存細胞性細胞障害性(ADCC)のアッセイにおいて有意な活性を有している。更に近年、リツキサン(登録商標)は、他の抗CD19抗体や抗CD20抗体にはない、トリチウム化したチミジン取り込みアッセイにおける抗増殖性効果を持つこと及び直接的にアポトーシスを誘導することが示唆されている(Maloney等. Blood 88(10):637a (1996))。また、リツキサン(登録商標)及び化学療法及び毒素間の相乗効果は、実験的に観察された。特に、リツキサン(登録商標)は、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞障害性効果に対するヒトB細胞リンパ腫細胞系の薬物抵抗性の感度を高める(Demidem等. Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997))。インビボ前臨床研究では、リツキサン(登録商標)が、おそらく補足及び細胞媒介過程において、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄からのB細胞を減少させることを示した (Reff 等. Blood 83(2):435-445 (1994))。
【0007】
CD20抗体に関する特許及び特許文献には、米国特許第5,776,456号、同第5,736,137号、同第6,399,061号、及び同第5,843,439号、の他にUS patent appln nos. US2002/0197255A1及びUS2003/0021781A1(Anderson等.);米国特許第6,455,043B1号及びWO00/09160(Grillo-Lopez, A.);WO00/27428(Grillo-Lopez and White);WO00/27433(Grillo-Lopez and Leonard);WO00/44788(Braslawsky等.);WO01/10462(Rastetter, W.);WO01/10461(Rastetter及びWhite);WO01/10460(White and Grillo-Lopez);US appln no. US2002/0006404及びWO02/04021(Hanna及びHariharan);US appln no. US2002/0012665A1及びWO01/74388(Hanna, N.);US appln no. US2002/0009444A1、及びWO01/80884(Grillo-Lopez, A.);WO01/97858(White, C.);US appln no. US2002/0128488A1及びWO02/34790(Reff, M.);WO02/060955(Braslawsky等.);WO2/096948(Braslawsky等.);WO02/079255(Reff及びDavies);米国特許第6,171,586B1号、及びWO98/56418(Lam等.);WO98/58964(Raju, S.);WO99/22764(Raju, S.);WO99/51642、米国特許第6,194,551B1号、米国特許第6,242,195B1号、米国特許第6,528,624B1号及び米国特許第6,538,124号(Idusogie等.);WO00/42072(Presta, L.);WO00/67796(Curd等.);WO01/03734(Grillo-Lopez等.);US appln no. US2002/0004587A1及びWO01/77342(Miller及びPresta);US appln no. US2002/0197256 (Grewal, I.);米国特許第6,090,365B1号、第6,287,537B1号、第6,015,542号、第5,843,398号、及び第5,595,721号(Kaminski等.);米国特許第5,500,362号、第5,677,180号、第5,721,108号、及び第6,120,767号(Robinson等.);米国特許第6,410,391B1号(Raubitschek等.);米国特許第6,224,866B1号及びWO00/20864(Barbera-Guillem, E.);WO01/13945(Barbera-Guillem, E.);WO00/67795(Goldenberg);WO00/74718(Goldenberg及びHansen); WO00/76542(Golay等.);WO01/72333(Wolin及びRosenblatt);米国特許第6,368,596B1号(Ghetie等.); US Appln no. US2002/0041847A1(Goldenberg, D.); US Appln no. US2003/0026801A1(Weiner及びHartmann); WO02/102312(Engleman, E.)が含まれ、これらのそれぞれは出典明記により特別にここに組み込まれる。また、米国特許第5,849,898号及びEP appln no. 330,191(Seed等.); 米国特許第4,861,579号及びEP332,865A2(Meyer及びWeiss);及びWO95/03770(Bhat等.)を参照。
【0008】
リツキシマブを用いた治療法に関する文献には:Perotta及びAbuel 「Response of chronic relapsing ITP of 10 years duration to Rituximab」 Abstract # 3360 Blood 10(1)(part 1-2): p. 88B (1998);Stashi等. 「Rituximab chimeric anti-CD20 monoclonal antibody treatment for adults with chronic idopathic thrombocytopenic purpura」 Blood 98(4):952-957 (2001);Matthews, R. 「Medical Heretics」 New Scientist (7 April, 2001);Leandro等. 「Clinical outcome in 22 patients with rheumatoid arthritis treated with B lymphocyte depletion」 Ann Rheum Dis 61:833-888 (2002);Leandro等. 「Lymphocyte depletion in thrumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response. Arthritis and Rheumatism 44(9): S370 (2001);Leandro等. 「An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus」, Arthritis & Rheumatism 46(1):2673-2677 (2002);Edwards and Cambridge 「Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes」 Rhematology 40:205-211 (2001);Edwards等. 「B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders」 Biochem. Soc. Trans. 30(4):824-828 (2002);Edwards等. 「Efficacy and safety of Rituximab, a B-cell targeted chimeric monoclonal antibody: A randomized, placebo controlled trial in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis and Rheumatism 46(9): S197 (2002);Levine and Pestronk 「IgM antibody-related polyneuropathies: B-cell depletion chemotherapy using Rituximab」 Neurology 52: 1701-1704 (1999);DeVita等. 「Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis」 Arthritis & Rheum 46:2029-2033 (2002);Hidashida等. 「Treatment of DMARD-Refractory rheumatoid arthritis with rituximab.」 Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; Ne Orleans, LA 2002;Tuscano, J. 「Successful treatment of Infliximab-refractory rheumatoid arthritis with rituximab」 Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002.が含まれる。
【0009】
リウマチ様関節炎(RA)は、病因が未知である自己免疫不全である。大部分のRA患者は疾患の慢性経過に悩まされ、治療を行っても、結果として進行性関節破壊、奇形、障害及びさらに早死になりうる。900万人以上の医師が診察し、RAにより1年につき250,000以上が入院する。RA治療の目的は、関節損傷の予防又は制御、機能の損失を予防すること、及び、疼痛を軽減することである。通常、RAの初期治療は、以下の薬剤の一つ以上の投与を伴う:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、糖質コルチコイド(関節注入による)及び低服用プレドニゾン。「Guidelines for the management of rheumatoid arthritis」 Arthritis & Rheumatism 46(2): 328-346 (February, 2002)を参照。新しくRAと診断された大多数の患者は、診断から3ヵ月以内に疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARD)により治療を始める。一般的に、RAで用いられるDMARDは、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、エタネルセプト(etanercept)、インフリキシマブ(経口及び皮下メトトレキサートに加えて)、アザチオプリン、D-ペニシラミン、ゴールド(Gold)(経口)、ゴールド(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌プロテインA免疫吸着である。
RAの間、体内で腫瘍壊死因子α(TNFα)を産生するので、TNFαインヒビターがその疾患の治療に使用されていた。
【0010】
エタネルセプト(ENBREL(登録商標))は、活性なRAの治療のための米国で承認されている注射可能な薬剤である。エタネルセプトはTNFαと結合して及び関節及び血液から大部分のTNFαを取り除くように働き、それによって、TNFαが炎症及び慢性関節リウマチの他の症状を促進するのを防止する。エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に連結しているヒトの75kD(p75)腫瘍壊死因子レセプタ(TNFR)の細胞外リガンド結合部分からなる「イムノアドヘシン」融合タンパク質である。薬剤は、重い感染症及び敗血症、神経系疾患、例えば多発性硬化症(MS)を含むネガティブ副作用と関連していた。例としてwww.remicade-infliximab.com/pages/enbrel_embrel.htmlを参照。
インフリキシマブ(商品名REMICADE(登録商標)として販売)は、RA及びクローン病を治療するために処方される免疫抑制剤である。インフリキシマブは、TNFαと結合するキメラモノクローナル抗体であって、炎症をもたらすTNFαを標的として結合することによって身体の炎症を軽減する。インフリキシマブは、心不全及び、結核だけでなくMSに至る髄鞘脱落を含む感染症などの致命的反応との関連があった。
2002年12月に、Abbott Laboratoriesは、既にD2E7として知られている市場のアダリムマブ(adalimumab)(HUMIRATM)にFDAの認可を得た。アダリムマブは、TNFαと結合するヒトモノクローナル抗体であり、一以上の典型的な疾患を変更するDMARDに十分に反応を示さない中程度〜重度の活性なRAを有する成人患者の兆候及び症状を軽減し、構造的障害の進行を抑制することで認可されている。
【0011】
(発明の概要)
最初の態様では、本発明は、B細胞表面上のマーカーに結合するアンタゴニストの治療的有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、TNFαインヒビターに対して不十分な反応を示す哺乳動物の自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
例えば、本発明は、CD20に結合する抗体の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、TNFαインヒビターに対して不十分な反応を示す哺乳動物の関節リウマチを治療する方法を提供する。
また、本発明は、B細胞表面上のマーカーに結合するアンタゴニストの治療的有効量を自己免疫疾患の哺乳動物に投与することを含んでなる、感染症、心不全及び髄鞘脱落からなる群から選択したネガティブ副作用のリスクを軽減する方法を提供する。
【0012】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで目的とする「腫瘍壊死因子(TNFα)」は、Pennica等., Nature, 312:721 (1984)又はAggarwal等., JBC, 260:2345 (1985)に記載のアミノ酸配列を含むヒトTNFα分子を指す。
ここで言う「TNFαインヒビター」は、一般的にTNFαに結合してその活性をなくすことによって、いくらかTNFαの生物学的機能を阻害する作用剤である。ここで特に組み込まれるTNFインヒビターの例は、エタネルセプト(Etanercept)(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(Infliximab)(REMICADE(登録商標))及びアダリムマブ(Adalimumab)(HUMIRATM)である。
「TNFαインヒビターに対して不十分な反応」なる用語は、毒性及び/又は不十分な効果のために、TNFαインヒビターを用いた従来の又は現行の治療に十分な反応を示さないことを指す。不十分な反応は疑われる疾患を治療する際に臨床医の技術によって評価することができる。
【0013】
TNFαインヒビターによる従来の又は現行の治療から「毒性」を経験する哺乳動物は、それによる一以上のネガティブな副作用、例えば、感染(特に重症感染症)、鬱血性心不全、髄鞘脱落(多発性硬化症に至る)、過敏症、神経病上の現象、自己免疫、非ホジキン性リンパ腫、結核(TB)、自己抗体などを経験する。
「不十分な効果」を経験する哺乳動物は、TNFαインヒビターを用いた従来の又は現行の治療後に活性な疾患が続く。例えば、患者はTNFαインヒビターによる治療の1か月又は3か月後に活性な疾患を持つかもしれない。
「ネガティブな副作用のリスクを減少する」とは、B細胞表面上マーカーに結合するアンタゴニストを用いた治療の結果生じる副作用のリスクを、TNFαインヒビターを用いた治療にみられるよりも低い程度に低減することである。そのような副作用には、感染(重症感染症)、心不全及び髄鞘脱落(多発性硬化症)などが含まれる。
【0014】
ここで「B細胞表面上マーカー」とは、B細胞の表面上に発現する抗原であり、結合するべきアンタゴニストの標的となることができる。例示的B細胞表面上マーカーには、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86白血球表面上マーカーが含まれる。特に対象とするB細胞表面上マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織と比較してB細胞上に優先的に発現しており、B細胞前駆細胞及び成熟B細胞両方の細胞上に発現していてもよい。一実施態様では、マーカーは、幹細胞段階からプラズマ細胞になる終末分化直前の時期までの系統分化の間ずっとB細胞上にみられるCD20又はCD19のようなものである。ここで好ましいB細胞表面上マーカーはCD20である。
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面にみられる35kDa以下の非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は初期のプレB細胞発育中に発現し、プラズマ細胞分化まで残る。CD20は正常B細胞だけでなく悪性のB細胞上に存在する。CD20を指す文献中での他の名前には、「Bリンパ球限定抗原(B-lymphocyte-restricted antigen)」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例としてClark等. PNAS (USA) 82:1766 (1985)に記載されている。
【0015】
ここで言う「自己免疫疾患」とは、個体自身の組織から生じる、及び個体自身の組織に対する疾病又は疾患である。自己免疫疾患又は疾病の例には、限定するものではないが、関節炎(慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、骨関節症、乾癬の関節炎)、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮性表皮壊死症、全身性硬皮症及び硬化症、炎症性腸疾患と関連している反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー性症状、湿疹、喘息、T細胞浸潤及び慢性の炎症性反応を伴う症状、アテローム性動脈硬化症、自己免疫心筋炎、白血球癒着不全、全身エリテマトーデス(SLE)、若年型糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延過敏症と関連している免疫反応、結核、類肉腫症、ウェーゲナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎(ANCAを含む)、無形成性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血症、自己免疫溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性の溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴っている疾患、中枢神経系(CNS)炎症性疾患、多臓器損傷症候群、重症mysathenia、抗原抗体複合体媒介となられた疾患、反糸球基底膜疾患、反リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベシェ疾患、キャッスルマン病、グッドパスチャー症候群、Lambert-Eaton筋無力症候群、レーノーの症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、固体臓器移植拒否、移植片対宿主病(GVHD)、水疱性類天ぽうそう、天疱瘡、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター症候群、全身強直性症候群、巨細胞動脈炎、免疫複合体腎炎、IgAネフロパシ、IgM多発神経障害又はIgM媒介神経障害、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少、自己免疫性睾丸炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下;自己免疫甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性の甲状腺炎、原因不明の甲状腺機能低下、アジソン病、グレーブ病、自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)、インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)と称されるI型糖尿病及びシーハン症候群を含む自己免疫性内分泌疾患;自己免疫肝炎、リンパ系の間質性肺臓炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレー症候群、大血管性脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管性脈管炎(川崎病及び結節性多発性動脈炎を含む)、強直性脊椎炎、バージャー病(Berger’s disease)(IgAネフロパシ)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(Celiac sprue)(グルテン腸疾患)、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠状動脈疾患などが含まれる。
【0016】
「アンタゴニスト」とは、B細胞表面上マーカーに結合することによって哺乳動物のB細胞を破壊又は枯渇させる、及び/又は一以上のB細胞機能を妨げる、例えば、B細胞に誘導される体液性反応を低減又は阻害する分子である。好ましくは、アンタゴニストは、それによって治療する哺乳動物のB細胞を枯渇する(すなわち、循環中のB細胞レベルを下げる)ことができる。そのような枯渇は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)、B細胞増殖の阻害及び/又はB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)等の多様な機能を介して達成されるであろう。本発明の範囲に包含されるアンタゴニストには、場合によって細胞障害性剤を抱合する又は細胞障害性剤と融合している、B細胞マーカーに結合する抗体、合成又は天然配列のペプチド及び小分子アンタゴニストが含まれる。好適なアンタゴニストは抗体を含む。
【0017】
「抗体依存性細胞障害活性」または「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 .PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
【0018】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
「Fcレセプター」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Hasら, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyerら, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0019】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
「成長阻害」」アンタゴニストは、アンタゴニストが結合する抗原を発現している細胞の増殖を阻害又は低減するものである。例えば、アンタゴニストはインビトロ及び/又はインビボでのB細胞の増殖を阻害又は低減しうる。
「アポトーシスを誘導する」アンタゴニストとは、標準的なアポトーシスアッセイにより測定できるようなB細胞などのプログラム細胞死、例えば、アネキシンVの結合、DNA断片化、細胞収縮、小胞体の肥大、細胞断片化、及び/又は膜小嚢の形成(アポトーシス体と呼称)を誘導するものである。
【0020】
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片の範囲にわたる。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0021】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0022】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0023】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。無傷の抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0024】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(V−V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0025】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0026】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似する重鎖および/または軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するまたは類似するものである(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
【0027】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0028】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
目的の抗原、例えば、B細胞表面上マーカーに「結合する」アンタゴニストとは、アンタゴニストが抗原発現細胞を標的とした治療剤として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。
【0029】
CD20抗原に結合する抗体の例には以下のものが含まれる:現在では「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5,736,137号、出典明記により特別にここに組み込まれる);「Y2B8」と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体(米国特許第5,736,137号、出典明記により特別にここに組み込まれる);場合によっては「131I-B1」抗体(BEXXARTM)を生成するために131Iで標識したマウスIgG2a「B1」(米国特許第5,595,721号、出典明記により特別にここに組み込まれる);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等. Blood 69(2):584-591 (1987));「キメラ2H7抗体」(米国特許第5,677,180号、出典明記により特別にここに組み込まれる);「ヒト化2H7 v16」(以下を参照);huMax−CD20(Genmab, Denmark);AME−133(Applied Molecular Evolution);及びInternational Leukocyte Typing Workshopより入手のモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentine等., Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, 440頁, Oxford University Press (1987))。
【0030】
CD19抗原に結合する抗体の例には、抗-CD19抗体(Hekman等. Cancer Immunol. Immunother. 32:364-372 (1991) 及び Vlasveld等. Cancer Immunol. Immunother. 40:37-47 (1995));及びB4抗体(Kiesel等. Leukemia Research II, 12: 1119 (1987))が含まれる。
ここで言う「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、一般的にCD20抗原に対する遺伝学的に操作したキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体を指し、米国特許第5,736,137号では「C2B8」と命名され、出典明記により特別にここに組み込まれる。抗体は、マウス軽鎖及び重鎖可変領域配列とヒト定常領域配列を含むIgGカッパイムノグロブリンである。リツキシマブはおよそ8.0nMのCD20抗原結合親和性を有する。
【0031】
単にここでの目的のために、「ヒト化2H7 v16」は以下に示す可変軽鎖及び可変重鎖配列を含む抗体を指す。
hu2H7 v16の可変軽鎖ドメイン
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKR (配列番号:1)
hu2H7 v16の可変重鎖ドメイン
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号:2)
【0032】
好ましくは、ヒト化2H7 v16は、軽鎖アミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号:3);
及び重鎖アミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号:4)
を含む。
【0033】
「単離された」アンタゴニストは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、アンタゴニストの診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、アンタゴニストは、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、アンタゴニストが95重量%より多くなるほど、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように充分な程度まで精製される。アンタゴニストの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離されたアンタゴニストには、組換え細胞内のインサイツのアンタゴニストが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたアンタゴニストは少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0034】
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「治療」とは、治療的処置及び予防又は防止手段の両方を意味する。治療の必要があるものには、既に羅患しているもの、並びに疾患又は疾病が予防されるべきものが含まれる。従って、哺乳動物は、疾患又は疾病を有すると診断されてもよく、又は疾患に罹りやすい又は敏感であると診断されていてもよい。
「治療的有効量」という用語は、疑われる自己免疫疾患を予防、寛解又は治療するのに効果的なアンタゴニストの量を意味する。
【0035】
ここで治療補助剤として用いる「免疫抑制剤」という用語は、ここで治療される哺乳動物の免疫系を抑制または遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御または抑制する、MHC抗原を遮断する物質を含む。そのような薬剤の例として、2-アミノ-6-アリル-5-代替ピリミジン(米国特許第4,665,077号参照、開示されていることは出典明記によりここに組み込まれる);非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);アザチオプリン;シクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;グルタルアルデヒド (米国特許第4,120,649号に記載のように、MHC抗原を遮断する);MHC抗原およびMHCフラグメントに対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリンA;副腎皮質ステロイドなどのステロイド、例として、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及びデキサメタゾン;メトトレキサート(経口又は皮下);ヒドロキシクロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン、又は抗インターフェロン-γ、-β、又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子β抗体、抗インターロイキン2抗体、及び抗IL-2レセプター抗体を含むサイトカインレセプターアンタゴニスト;抗CD11a及び抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗-L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan-T 抗体、好ましくは、抗-CD3または抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開のWO90/08187)、ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトドルナーゼ(streptodornase);宿主由来のRNAまたはDNA;FK506;RS−61443;デオキシスペルグアニン(deoxyspergualin);ラパマイシン;T細胞レセプター (Cohen等, 米国特許第5,114,721号);T細胞レセプターフラグメント(Offner ら, Science 251:430-432 (1991);WO90/11294;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);及びWO 91/01133);及びT10B9等のT細胞レセプター抗体 (EP340,109)を含む。
【0036】
ここで使用する「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能阻害又は阻止、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を表す。この用語は、放射性同位体(例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、またはそれらの断片を含むことを意図する。
【0037】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM)のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)などの抗生物質;メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似物;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5−FU;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;オキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine):ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、カルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;カルミノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン(capecitabine);並びに製薬的に許容可能な塩類、酸類、又は上記何れかの誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(Fareston);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リュープリン(leuprolide)、及びゴセレリン;及び製薬的に許容可能な塩類、酸類又は上記何れかの誘導体が含まれる。
【0038】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;肝臓成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF);及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15等のインターロイキン(IL);腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0039】
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, :375-382, 615th Meeting, Belfast (1986)、及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267項, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
「リポソーム」とは、薬剤(例として、ここで開示したアンタゴニスト及び場合によっては化学療法剤)の哺乳動物への運搬に有用な多種の脂質、リン脂質及び/又は界面活性物質から構成される小胞体である。一般にリポソームの構成成分は、脂質の生物学的膜の配列に類似して、二層を形成している。
【0040】
II.アンタゴニストの製造
本発明の方法及び製造品は、B細胞表面上のマーカーに結合するアンタゴニストを使用又は取り込む。したがって、該アンタゴニストの製造方法をここに記載する。
アンタゴニストの製造又はスクリーニングのために用いるB細胞表面上のマーカーは、例として抗原又はその所望のエピトープを含む一部の可溶性形態であってもよい。あるいは又は更に、B細胞表面上のマーカーを細胞表面上に発現する細胞をアンタゴニストの製造又はスクリーニングに用いることができる。アンタゴニストの製造に有用なB細胞表面上のマーカーの他の形態は当業者に明らかである。好ましくは、B細胞表面上のマーカーはCD20抗原である。
【0041】
好ましいアンタゴニストが抗体の場合、抗体以外のアンタゴニストがここに取り込まれる。例えば、アンタゴニストは、場合によっては細胞障害性剤(例えば、ここに記載のもの)と融合又は結合(抱合)した小分子アンタゴニストを含んでもよい。抗原に結合する小分子を同定するために、ここで対象とするB細胞表面上のマーカーについて小分子ライブラリーをスクリーニングしてもよい。更に、小分子をその拮抗的特性及び/又は細胞障害性剤との結合についてスクリーニングしてもよい。
また、アンタゴニストは理論的な設計またはファージディスプレイにより製造したペプチドでもよい(例として1998年8月13日公開のWO98/35036を参照)。一実施態様では、選択した分子が、抗体のCDRに基づいて設計した「CDR模倣体」又は抗体類似体でもよい。該ペプチドはそれ自体で拮抗作用を持つが、場合によってはペプチドはその拮抗的性質を付加又は亢進するために細胞障害性剤に融合してもよい。
以下は、本発明に従って用いた抗体アンタゴニストの製造の例示的技術として記載する。
【0042】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0043】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、わずかながら存在する起こりうる天然に生じる突然変異体を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0044】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0045】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0046】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0047】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0048】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0049】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0050】
(iv)ヒト抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993);Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号、同5,589,369号及び同5,545,807号を参照されたい。
【0051】
別に、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13の大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
またヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5,567,610号及び同5,229,275号を参照)。
【0052】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。
【0053】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、B細胞表面上のマーカーの2つの異なるエピトープに結合しうる。他のこのような抗体では一方のB細胞マーカーと更に他方のB細胞表面上のマーカーが結合しうる。あるいは、抗B細胞マーカー結合アームは、B細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞マーカー結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
【0054】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法がWO93/8829及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0055】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、WO94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5,731,168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0056】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロ抱合抗体」を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(WO91/00360、WO92/200373及びEP03089)等の用途が提案されてる。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4,676,980号に記されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は完全な抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0057】
最近の進歩により、大腸菌からFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは科学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役させて二重特異性抗体を形成する。従って、形成された二重特異性抗体は、ヒト乳腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の溶解活性を誘発すると同時に、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞へ結合することが可能であった。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelnyら, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
【0058】
III.アンタゴニストのコンジュゲート(結合)と他の修飾
ここでの方法に用いる又は製造品に内包されるアンタゴニストは場合によって細胞障害性剤と結合させる。
そのようなアンタゴニスト-細胞障害性剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は前述している。
また、アンタゴニストと一つ以上の小分子毒素のコンジュゲート、例えばカリケアミシン(calicheamicin)、マイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコテン(trichothene)及びCC1065もここにおいて考慮される。本発明の一実施態様では、アンタゴニストは、一つ以上のマイタンシン(maytansine)分子(例えば、抗体分子当たり約1から約10のマイタンシン分子)と共役している。マイタンシンは、例えばMay−SH3へ還元されるMay−SS−Meへ変換され、修飾アンタゴニスト(Chariら,Cancer Research 52:127-131(1992))と反応してマイタンシノイド(maytansinoids)−アンタゴニストコンジュゲートを生じる。
【0059】
あるいは、アンタゴニストは、一つ以上のカリケアマイシン(calicheamicin)分子を包含する。抗体のカリケアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度で、二重鎖DNAの割れ目を作ることができる。使用されるであろうカリケアマイシンの構造類似体は、限定されるものではないが、γ、α、α、N−アセチルγ、PSAG及びθ(Hinmanら, Cancer Research 53:3336-3342(1993)及びLodeら,Cancer Research 58:2925-2928(1998))を含む。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232を参照のこと。
【0060】
本発明は、更に、抗体と核酸分解性活性(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)を有する化合物との間に形成される免疫コンジュゲートについて考慮する。
種々の放射性核種が放射性コンジュゲートアンタゴニストの生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射線各種が含まれる。
アンタゴニストと細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシインミジル1-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開94/11026号を参照されたい。
【0061】
リンカーは、細胞内で細胞毒性薬剤を放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。
あるいは、アンタゴニスト及び細胞障害性剤を含んでなる融合タンパク質を、例えば組み換え技術又はペプチド合成で製造してもよい。
他の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)にアンタゴニストがコンジュゲートされ得、ここで、アンタゴニスト-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄化(clearing)剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
また、本発明のアンタゴニストを、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えばWO88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
そのようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
【0062】
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。アンタゴニスト-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、アンタゴニストに共有的に結合させることができる。あるいは、本発明のアンタゴニストの少なくとも結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(例えばNeubergerら, Nature 312:604-608(1984)参照。
【0063】
抗体の他の修飾がここで検討される。例えば、アンタゴニストは、様々な非タンパク質性(nonproteinaceous)のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーの1つに結合させてもよい。
また、ここで開示するアンタゴニストはリポソームとして製剤化してもよい。アンタゴニストを含むリポソームは、Epstein等., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang等., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);U.S. Pat. Nos. 4,485,045及び4,544,545;及び1997年10月23日に公開のWO97/38731等に記載されているような当分野において公知の方法によって調製する。循環時間が長いリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、フォスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導体ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。所望の直径を有するリポソームを回収するために、リポソームを規定のサイズの孔のフィルターに通す。本発明の抗体のFab’断片を、ジスルフィド相互反応を介してMartin等. J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載のようにリポソームと抱合させることができる。場合によっては、化学療法剤をリポソーム内に内包させる。Gabizon等. J. National Cancer Inst.81(19)1484 (1989)を参照。
【0064】
ここで記載のタンパク質又はペプチドアンタゴニストのアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、アンタゴニストの結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。アンタゴニストのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をアンタゴニスト核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、アンタゴニストのアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化など、アンタゴニストの翻訳後過程を変更しうる。
突然変異のための好ましい位置にあるアンタゴニストの残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリペプチドアニリン)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現されたアンタゴニスト変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0065】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つアンタゴニスト又は細胞障害ポリペプチドに融合したアンタゴニストを含む。アンタゴニスト分子の他の挿入変異体は、アンタゴニストの血清半減期を向上させる酵素(ADEPT)又はポリペプチドのアンタゴニストのN-又はC-末端への融合物を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、アンタゴニスト分子において少なくとも一つのアミノ酸残基に異なる残基が挿入されている。抗体アンタゴニストの置換突然変異について最も関心ある部位は高度可変領域を含むが、FR交互変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。これらの置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「例示的置換」と名前を付けた又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
【0066】
表1
【0067】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr、
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro; 及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
アンタゴニストの適切な配置の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、アンタゴニストにシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特にここでのアンタゴニストは抗体断片、例としてFv断片である)。
【0068】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異である。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
アンタゴニストのアミノ酸変異の他の型は、アンタゴニストの元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、アンタゴニストに見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又はアンタゴニストに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0069】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
アンタゴニストへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元のアンタゴニストの配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
アンタゴニストのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製されたアンタゴニストの変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0070】
エフェクター機能、例えばアンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を向上させるために、本発明のアンタゴニストを修飾することが望ましい。このことは、抗体アンタゴニストのFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。代わりにまたは加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上および/または補体媒介性細胞障害および抗体依存性細胞障害(ADCC)を増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗腫瘍活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff ら Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。または、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体媒介性溶解およびADCC能を亢進した。StevensonらAnti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
アンタゴニストの血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているようにアンタゴニスト(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込む方法がある。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを表す。
【0071】
IV.治療的剤形
本発明に関連して使用されるアンタゴニストの治療的剤形は、所望の純度を有するアンタゴニストを選択的に薬剤的許容可能な担体、賦形剤、安定剤と混合して凍結乾燥の剤形または液状溶液の形態の貯蔵に適するものである(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)又はトゥイーン(TWEEN)(商品名)、プルロニクス(PLURONICS)(商品名)、及びポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0072】
例示的抗CD20抗体の剤形はWO98/56418に記載されており、参考としてここに組み込まれる。この公報は、2−8度で2年間の最小限の貯蔵期間を持つように、リツキシマブ40mg/mL、25mM酢酸塩、150mMロレハロース、0.9%ベンジルアルコール、pH 5.0の0.02%ポリソルベート20を含む液状複数回用量の剤形である。目的の他の抗CD20剤形は、リツキシマブ10mg/mL、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベート80、および注入用の滅菌水を含むpH 6.5のものである。さらに、
凍結乾燥剤形はWO97/04801に記載されるように、皮下的投与に適する。そのような凍結乾燥剤形は適当な希釈剤で高いタンパク質濃度に再編成されるかもしれない、また再編成された剤形はここで治療される哺乳動物に皮下注射されうる。
【0073】
また、ここでの剤形は治療を特異的に示すために必要な一以上の活性化合物、好ましくはお互い負に作用しない相補的活性を持つものを含みうる。例として、さらに細胞障害性剤、化学療法剤、サイトカインまたは免疫抑制剤(例として、シクロスポリンまたはT細胞結合抗体、例としてLFA-1に結合するもの等のT細胞作用性のもの)を提供することが望まれる。そのような他剤の有効量は剤形に存在するアンタゴニスト量、疾患または疾病または治療の型、および上述した他の因子に依存する。これらは一般に同じ用量およびここに示した投与経路またはここで用いられる用量の1〜99%量で用いられる。
また、活性成分は、例としてコアセルべーション技術または界面重合化により調製したマイクロカプセル、例として、個々のコロイド状のドラッグデリバリーシステム(例として、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタサイクリン)マイクロカプセル中に包まれているかもしれない。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0074】
持続性徐放剤が調製される。持続性徐放剤の好適な例は、アンタゴニストを含む固形疎水性ポリマーの準透過性基質を含むものであり、基質は、造形品、例としてフィルム、またはマイクロカプセルの形である。持続性徐放基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号), L-グルタミン酸およびエチルLグルタミン酸の共重合体、非分解性のエチレンビニール酢酸塩、分解性の乳酸グリコール酸共重合体、例としてLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体およびロイプロリド酢酸塩で構成された注入可能ミクロスフェア)、およびポリD-(-)-3ヒドロキシブチリン酸を含む。
インビボ投与に用いる剤形は無菌でなければならない。これは滅菌濾過膜を通す濾過によって容易く達成できる。
【0075】
V.アンタゴニストを用いた治療
本発明は、TNFαインヒビターを用いたこれまでの又は現行の治療に十分な反応を示さない、自己免疫疾患を有する又は疑われる哺乳動物、特にヒトのサブ集団の治療に関する。一般に、ここで治療される哺乳動物は、一つ以上のTNFα-インヒビター、例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標)) 又はアダリムマブ(HUMIRATM)を用いた一つ以上の治療の後に、毒性及び/又は不十分な効果のためにTNFαインヒビターを用いたこれまでの又は現行の治療に十分な反応を示さないことが経験されるとして同定される。しかしながら、本発明は、このようなTNFα-インヒビターを用いた従来の治療手段に限るものではない;例えば、患者はTNFαインヒビターを用いた治療を始める前にその毒性、例えば心臓毒性を経験する傾向があると考えられうる、または、患者は、TNFα-インヒビターを用いた治療に応じそうにないと決定されうる。
ここで治療される多様な自己免疫疾患は、上の定義部分に記載する。ここで好適な適応症は、慢性関節リウマチ、乾癬の関節炎又はクローン病である。
【0076】
一般に、ここで治療される哺乳動物は、B細胞悪性腫瘍に罹患していない。
ここで考えられる本発明の一実施態様によれば、治療的方法は、TNFα-インヒビターを用いた治療と関連しているネガティブな副作用(例えば感染症、心不全及び髄鞘脱落)を減らすであろう。
B細胞表面上マーカーに結合するアンタゴニストを含んでなる組成物は、調製され、調薬されて、良好な臨床に合う様式で投与される。この文脈における考慮のための要素には、治療される特定の疾患又は疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患または疾患の原因、薬剤を運搬する部位、投与の方法、投与の日程計画、及び開業医の知りうる他の因子が含まれる。投与されるアンタゴニストの治療上有効量は、このようなことを考慮して調整される。
【0077】
一般的な計画として、用量当たりの非経口的に投与されるアンタゴニストの治療上有効量は、患者の体重量にして1日当たり約0.1〜20mg/kgの範囲、アンタゴニストの一般的初期投与範囲は約2〜10mg/kgの範囲である。
好適なアンタゴニストは、細胞障害性剤を抱合していない抗体、例としてリツキサン(登録商標などの抗体である。非抱合の抗体の好適な用量は、例えば、約20mg/m〜約1000mg/mの範囲である。一実施態様では、抗体の用量はリツキサン(登録商標)に対して推奨されている用量とは異なる。例えば、約20mg/m〜約250mg/mの範囲、例えば約50mg/m〜約200mg/mの範囲の用量である場合に、抗体を実質的に375mg/mより少ない用量で一回以上患者に投与してもよい。
例示的処方計画には、週当たり375mg/m×4;又は1000mg×2(例えば、第1日目及び15日目)を含む。
【0078】
更に、一以上の抗体の初期投与に続いて、初期投与の抗体用量(mg/m)を超える抗体の引き続き投与量(mg/m)で一回以上投与してもよい。例えば、初期用量が、約20mg/m〜約250mg/mの範囲(例として、約50mg/m〜約200mg/m)であり、引き続く用量が約250mg/m〜約1000mg/mの範囲である。
しかしながら、上記したようなアンタゴニストの提案した量は、多くの治療的選択に従う。上記のように、適切な用量及び日程計画を選択する際の鍵となる要素は、得られた結果である。例えば、相対的により高い用量は、まず最初に進行中の及び急性疾患の治療に必要とされるかもしれない。最も効果的な結果を得るために、疾病又は疾患に応じて、できるだけ疾病又は疾患の最初の徴候、診断、出現または発症に近づくように、又は疾病又は疾患の緩解期となるようにアンタゴニストを投与する。
アンタゴニストは、非経口的、皮下、腹膜内、肺内、鼻腔内、必要であれば局所の免疫抑制性治療のため、病巣内投与を含む好適な方法で投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、皮下投与を含む。加えて、アンタゴニストは、例えばアンタゴニストの用量を減少させたパルス注入によって、好適に投与してもよい。好ましくは、投薬は、短期間の投与か長期間の投与かによって、注入、最も好ましくは静脈内又は皮下注入により行われる。
【0079】
他の合成物、例えばここで言うアンタゴニストを有する細胞障害性剤、化学療法剤、免疫抑制剤及び/又はサイトカインを投与してもよい。併用投与は、別々の製剤又は単一の製薬製剤を使用して、同時投与、及び、何れの順序での連続的な投与を含み、好ましくは、両方の(または全ての)活性剤が同時に生物学的活性を示す期間があるものである。RA及び他の自己免疫疾病のために、アンタゴニスト(例えばCD20抗体)は任意の一以上の疾患を変更する抗リウマチ剤(DMARD)、例えばヒドロキシクロロキン (hydroxycloroquine)、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド 、アザチオプリン、D-ペニシラミン、ゴールド(Gold)(経口)、ゴールド(Gold)(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌プロテインA免疫吸着;静脈免疫グロブリン(IVIG);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);糖質コルチコイド(例えば関節注入を介する);副腎皮質ホルモン(例えばメチルプレドニゾロン及び/又はプレドニゾン);葉酸などを併用する。好ましくは、TNFα-インヒビターは、CD20アンタゴニストを用いた治療の期間の間に、哺乳動物に投与されない。
【0080】
タンパク質アンタゴニストの患者への投与を除いて、本出願は、遺伝子治療によるアンタゴニストの投与を熟慮する。アンタゴニストをコード化する核酸のこのような投与は、「アンタゴニストの治療上有効量を投与する」という発現によって包含される。細胞内抗体を生成することを目的とした遺伝子治療の使用に関する1996年3月14日公開のWO96/07321を参照。
核酸(場合によって、ベクターに含まれる)を患者の細胞に入れるには主に2つのアプローチがある;インビボ及びエクスビボである。インビボ運搬のために、通常アンタゴニストが必要である部位に、直接核酸を注入する。エクスビボ治療のために、患者の細胞を取り出し、核酸を単離した細胞に導入し、変更された細胞を直接患者に投与する、又は例えば、患者の体内に埋め込まれる多孔性の膜に被包する(例として米国特許第4,892,538号及び同第5,283,187号を参照)。核酸を生きた細胞に導入するための有用な多種の技術がある。技術は、核酸がインビトロ培養された細胞に移入するか、又は意図した宿主のインビボ細胞に移入するかどうかによって、異なる。インビトロの哺乳動物細胞への核酸の移入に適切な技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿方法などの使用を含む遺伝子のエクスビボ運搬のための一般的に用いられるベクターは、レトロウイルスである。
【0081】
現在好適なインビボでの核酸移入技術は、ウイルスベクター(例として、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ随伴ウイルス)及び脂質ベースのシステム(遺伝子の脂質介在移入のために有用な脂質は、例えばDOTMA,DOPE及びDC-Cholである)による形質移入を含む。ある状況では、核酸供給源に標的細胞を標的とする作用物質、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンドなどを与えることが望ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスと関連している細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、循環内で内部移行を行うタンパク質に対する抗体、細胞内局在を標的として細胞内半減期を延長するタンパク質をターゲティング及び/又は取り込み促進のために用いてもよい。例として、Wu等., J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987);及びWagner等., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414 (1990)に、レセプター媒介性エンドサイトーシスの技術が記載されている。現在知られている遺伝子作製及び遺伝子治療のプロトコールの考察には、Anderson等., Science 256:808-813 (1992)を参照。また、WO 93/25673及びここに挙げた文献も参照のこと。
更に、以下の限定的でない実施例により本発明を詳述する。本明細書中のすべての引例に開示されていることは出典明記によりここに組み込まれる。
【0082】
実施例1
一以上のTNFα-インヒビター治療に十分な反応を示さない活性な慢性関節リウマチ患者は、B細胞表面上の抗原(CD20)に結合する抗体によって治療する。
この実施例による治療の候補には、毒性又は不十分な効果(エタネルセプトを25mgで週に2回を3か月以上、又はインフリキシマブ3mg/kg以上で少なくとも4回の注入)のために、エタネルセプト、インフリキシマブ及び/又はアダリムマブを用いた治療に十分反応しない経験をした人々を含む。
ふるい分け及び無作為化のために、患者は、はれた関節計数(SJC)8以上(関節数66)及び圧痛のある関節計数(TJC)8以上(関節数68);何れもCRP1.5mg/dl(15mg/L以上)又はESR28mm/h以上;及び/又は慢性関節リウマチに起因している明確な浸食を有する少なくとも一つの関節のX線撮影所見を有し、中心読出部位(central reading site)(手のDIP関節を除いて、手、手首又は足の何れかの関節を考慮する)により決定する。
治療に用いたCD20抗体は、リツキシマブ(Genentech, Inc.より販売)又はヒト化2H7v16である。
【0083】
患者は、CD20抗体の治療的有効量、例えば、第1及び15日目に1000mg静注又は週当たり375mg/m静注×4で治療する。
また、患者に、CD20抗体の注入30分前にメチルプレドニゾロン100mg静注、及び第2−7日目にプレドニゾン60mg経口、第8−14日目に30mg経口、16日目から基本用量に戻るという副腎皮質ホルモン療法と共に、付随するMTX(経口につき(p.o.)または非経口につき10−25mg/週)を投与してもよい。また、患者に、単回用量又は分けた1日用量の何れの方法ででも葉酸(5mg/週)を投与してもよい。患者は、治療期間中自然発生する副腎皮質ホルモン(10mg/d以下のプレドニゾン又は等価物)を受け続ける。
主たるエンドポイントは、グループ差を比較してリウマチ因子及び領域について調製するために、Cochran-Mantel-Haenszel(CMH)検査を用いて第24週にACR20反応をもつ患者の割合としてもよい。
【0084】
潜在的な第二のエンドポイントは以下を含む:
1.第24週にACR50及び70反応を有する患者の割合。主たるエンドポイントのために特定されるように、分析してもよい。
2.第24週目までのスクリーニングからの疾患活性スコア(DAS)の変化。これらは、基本のDAS、リウマチ因子及び治療をモデルの条件として有するANOVAモデルを用いて評価してもよい。
3.第24週での分類別のDAS応答者(EULAR反応)。リウマチ因子について調整したCMH試験を用いて評価してもよい。
4.ACRコアセット(SJC、TJC、患者の及び医師のグローバル評価、HAQ、疼痛、CRP及びESR)のスクリーニングからの変化。これらのパラメータについて記述統計学を報告してもよい。
5.SF−36のスクリーニングからの変化。8つの領域スコア及び精神的及び物理的な成分スコアについて記述統計学を報告してもよい。加えて、精神的及び物理的な成分スコアを、更に分類及び分析してもよい。
6.変更された鋭いX線撮影総スコア(Sharp radiographic total score)、浸食スコア(erosion score)及び関節空間限定スコア(joint space narrowing score)の変化。これらは連続的又は分類別の方法論を用いて適当に分析してもよい。
【0085】
試験的エンドポイント及び分析は以下を含む:
第8、12、16、20、24週及びそれ以降にわたるDAS反応の変化及びACR(20/50/70及びACR n)を、二元又は連続した繰り返し計測モデルを用いて適当に評価するであろう。第24週及びそれ以降に侵食性の進行がない患者の割合を含む試験的なX線撮影分析を評価してもよい。
更に、試験的エンドポイント(例えば、明らかな臨床反応、疾患のない期間)を延長した観察期間の一部として記述的に分析するであろう。
FACIT−F作業(FACIT-F fatigue)のスクリーニングからの変化を記述統計学によって分析するであろう。
上述のようなTNFαインヒビターに十分な反応を示さない患者のCD20抗体を用いたRA治療は、上記したエンドポイントの何れか一つに従って有益な臨床反応となるであろう。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]