特許第5746247号(P5746247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746247
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】希土類がドープされた光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20150618BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20150618BHJP
   H01S 3/17 20060101ALI20150618BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20150618BHJP
   C03B 37/014 20060101ALI20150618BHJP
   C03B 37/027 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C03B37/018 C
   H01S3/067
   H01S3/17
   C03B37/012 Z
   C03B37/012 A
   C03B37/014 Z
   C03B37/027 Z
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-51494(P2013-51494)
(22)【出願日】2013年3月14日
(62)【分割の表示】特願2009-530384(P2009-530384)の分割
【原出願日】2007年9月24日
(65)【公開番号】特開2013-147421(P2013-147421A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】11/540,099
(32)【優先日】2006年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート グレイ
(72)【発明者】
【氏名】ドネル ティー ウォルトン
(72)【発明者】
【氏名】ジー ワン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス エイ ゼンテノ
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0088262(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0088261(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0158006(US,A1)
【文献】 特開平04−042819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを製造する方法であって、
(i) 150℃〜185℃の温度で、10L/分と15L/分の間の流量のガスによるYb蒸気供給を含むOVD法によって、1質量%より多くのYbを含むコアケインを形成し、
(ii) 前記コアケインを使用して、シリカスートを含有するガラスプリフォームを製造し、該シリカスートを含有するガラスプリフォームを固結して、全ガラスプリフォームを形成し、
(iii) 前記全ガラスプリフォームから光ファイバを線引きする、
各工程を有してなり、
前記光ファイバが、0.7を超えるスロープ効率を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガラスプリフォームが炉に対して12mm/分から18mm/分の速度で動かされている間に前記固結工程を行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
光ファイバを製造する方法であって、
(i) 150℃〜185℃の温度で、10L/分と15L/分の間の流量のガスによるYb蒸気供給を含むOVD法によって、1質量%より多くのYbを含むコアケインを形成し、
(ii) 前記コアケインをシリカ系層でオーバークラッドし、それによって、シリカ系層でオーバークラッドされたYbドープトコアを有するプリフォームを提供し、
(iii) 前記シリカ系層内に複数の縦方向の溝を提供し、それによって、溝付きプリフォームを形成し、
(iv) 前記溝付きプリフォームを、シリカスートでオーバークラッドされたシリカ系管内に挿入し、
(v) 前記溝の付いた区域に正圧を印加しながら前記スートを固結させ、それによって、複数の縦方向の孔を含むガラスプリフォームを形成し、
(vi) 前記複数の縦方向の孔を含む前記ガラスプリフォームをダウンドープされたシリカスートの層で取り囲むことによって、該ガラスプリフォームを使用し、
(vii) 前記ダウンドープされたシリカスートの層を含む前記ガラスプリフォームが炉に対して12mm/分から18mm/分の速度で動かされる間に、前記複数の縦方向の孔を維持しながら、該ガラスプリフォームを固結して、全ガラスプリフォームを形成し、
(viii) 前記孔に正圧を印加しながら、前記全ガラスプリフォームから光ファイバを線引きする、
各工程を有してなり、
前記光ファイバが、0.7を超えるスロープ効率を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記複数の縦方向の孔を含む前記ガラスプリフォームをダウンドープされたシリカスートの層で取り囲む前に、該ガラスプリフォームを非円形形状に機械加工する工程をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記Yb蒸気供給が、10L/分と12L/分の間の流量のガスにより行われることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記Yb蒸気供給が、165℃〜185℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記Yb蒸気供給が、170℃〜180℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記Yb蒸気供給が、170℃〜185℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記Yb蒸気供給が、173℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記光ファイバが、1150nmと1450nmとの間に位置する波長で5dB/km未満の、1380nmの波長で20dB/km未満の減衰を有することを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一部は、DARPAにより授与された契約番号第MDA972−02−3−004号の下で合衆国政府のサポートにより行われた。合衆国政府は、本発明の請求項のいくつかに特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、広く、高濃度で希土類がドープされた光ファイバに関し、詳しくは、ハイパワー光源または光ファイバレーザおよび光増幅器に使用するのに適した全ガラスの希土類ドープト二重クラッド型光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバは、その高容量と電気ノイズに対する耐性のために通信にとって本命の媒体となってきている。光増幅器およびファイバレーザの分野において、単一クラッド型希土類ドープト光ファイバが広く用いられてきた。この種のファイバは、ハイパワー光源(ここでは、光ポンプまたは単にポンプとも称される)から希土類ドープト光ファイバにマルチモード光を効率的に結合させることが難しいために、ハイパワーマルチモード光源を取り扱う能力が低い。
【0004】
この課題を解決し、ファイバレーザの出力パワーを増加させるために、当業者は、二重クラッド構造を持つ光ファイバ(ここでは、二重クラッド型光ファイバと称される)を利用している。二重クラッド型希土類ドープト光ファイバは、コア、コアを取り囲む内側クラッド層、および内側クラッド層を取り囲む外側クラッド層を有するファイバである。Ybがドープされたコアおよびこのコアを取り囲む2つのクラッド層を有する光ファイバが、例えば、特許文献1から4に開示されている。
【0005】
二重クラッド型光ファイバは、10から100ワットの光パワーを提供する光源を利用する必要のある用途において用いられてきた。何故ならば、二重クラッド型光ファイバは、単一クラッド型光ファイバよりも、ポンプにより提供される光パワーを維持/利用する効率がよいからである。この高効率は、光ポンプパワーのクラッドからコアへの結合をファイバが利用することによるものである。より詳しくは、希土類がドープされた二重クラッド型光ファイバは、光ポンプから内側クラッド中に光を受光し、次いで、光ファイバの長手方向に沿って、その光を、コアと内側クラッドとの界面を通して希土類ドープトコアに伝達する。それゆえ、光ファイバは、内側クラッドを通って伝搬したマルチモード光の大半を、このポンプ光を希土類がドープされたコアに結合させることによって、より長い波長でシングルモード出力に変換する。
【0006】
二重クラッド型光ファイバの内側クラッドは、外側クラッドよりも高い屈折率を有し、それゆえ、ポンプエネルギーは、内側クラッド内に閉じ込められ、コア中に再度向けられる。この光ファイバは、コア中に希土類ドーパントが存在するために光学的に活性であり、そのドーパントは、光ファイバが強力な光ポンプによってポンピングされたときに、より高い電子エネルギーレベルに励起され得る。クラッドのポンピングは、ファイバ増幅器内で利用できるか、またはそれを使用して、ハイパワーのシングルモードファイバポンプレーザを構築できる。
【0007】
二重クラッド型レーザにおいて、光ファイバの外側クラッドは、光ファイバのマルチモード内側クラッド内の光ポンプにより提供されるポンプ光を閉じ込める。光ファイバのコアのずっと小さい断面積は典型的に、シングルモードの出力信号中にレージング能力を提供するために、少なくとも1種類の希土類元素、例えば、ネオジムまたはイッテルビウムがドープされる。一般に、ネオジムまたはイッテルビウムがドープされた二重クラッド型ファイバは、単一横モードの出力(それぞれ、1060nmのネオジム4レベル遷移または1303nm〜1120nmのイッテルビウム4レベル遷移)を生成するために1つまたはいくつかのハイパワー広範ダイオードレーザ(800nmまたは915nmで)によりポンピングされる。それゆえ、従来の二重クラッド構成により、ポンプエネルギーを受けて、デバイスの長手方向に沿ってコアにポンプエネルギーを伝達するためのマルチモード内側クラッドを用いたファイバのポンピングが容易になる。二重クラッドレーザ出力は、カスケード式ラマンレーザをポンピングして、波長を、エルビウムをポンピングするのに適した1480nm辺りに変換するために使用しても差し支えない。
【0008】
全ガラスのYbドープト光ファイバが公知である。そのようなファイバの例が特許文献5に開示されている。しかしながら、開示されたファイバはハイパワー用途に適していない。何故ならば、このファイバは、外側クラッドの直径およびNAが比較的小さく、それゆえ、光ファイバの外側への光漏れのために結合効率が低いからである。すなわち、光の比較的大半は、光ファイバに進入せずに、失われる。これは、少量の光パワーしかファイバ中に結合する必要のない用途において問題ではないであろうが、そのようなファイバは、光源パワーが100ワット以上であるときのハイパワー用途にとっては効率的ではない。
【0009】
Ybドープト光ファイバは、Yb濃度が高く(1質量%以上)なるときに、高い量子効率(QE)および低い量子欠損(QE)を有するが、そのようなファイバのレーザ効率は、著しく低下する傾向にある。Ybが多量ドープされたファイバ(1質量%より多いYb)に関するレーザスロープ効率は一般に70%より低い。これにより、ファイバ中に実際的に使用できるYbドーパントの量は制限される。さらに、Ybドープトファイバレーザからのハイパワー(1kワットより大きい)出力は、誘導ラマン散乱(SRS)、誘導ブリルアン散乱(SBS)、および自己位相変調などの様々な非線形効果によって、達成しにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6477307号明細書
【特許文献2】米国特許第6483973号明細書
【特許文献3】米国特許第5966491号明細書
【特許文献4】米国特許第5949941号明細書
【特許文献5】米国特許第6411762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、高効率であり、かつ非線形効果が最小の、ハイパワー光増幅媒体として使用するための光ファイバを得ることが、進行中の開発分野となっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
定義:
以下の定義および用語法が当該技術分野において通常用いられる。
【0013】
屈折率プロファイル − 屈折率プロファイルは、ファイバの選択部分に亘る屈折率(Δ%)と光ファイバ半径(光ファイバの中心線から測定される)との間の関係である。
【0014】
複屈折 − 複屈折は、2つの偏光モードの有効屈折率間の差である。
【0015】
半径 − ファイバの各セグメントの半径は一般に、使用される材料の屈折率が異なる組成を持つようになる点に関して定義される。例えば、中央コアは、セグメントの最初の点が中心線上にあるので、ゼロの内側半径を有する。中央コアセグメントの外側半径は、導波路の中心線から、正のデルタを有する中央コアの屈折率の最後の点まで引かれた半径である。中心線から離れた最初の点を有するセグメントに関しては、導波路の中心線から最初の屈折率の点の位置までの半径が、そのセグメントの内側半径である。同様に、導波路からそのセグメントの最後の屈折率の点の位置までの半径が、そのセグメントの外側半径である。例えば、中央コアを取り囲むダウンドープされた環状セグメントは、その環状セグメントとクラッドとの間の界面に位置する外側半径を有するであろう。
【0016】
相対屈折率パーセントΔ% − Δ%という語句は、等式:
Δ%=100×(ni2−nc2)/2ni2
により定義される屈折率の相対的尺度であり、ここで、niは、iと示される屈折率プロファイルセグメントの最大屈折率であり、参照屈折率であるncは、クラッド層の屈折率にとられる。そのセグメントの全ての点が、クラッドに対して測定された関連屈折率を有する。
【0017】
レーザスロープ効率 − スロープ効率は、ポンプ波長(例えば、約976nm)での入力(吸収された)ポンプパワーに亘るレージング波長(例えば、1マイクロメートル)での出力パワーの比により定義される。
【0018】
本発明によると、光ファイバは、
(i) 第1の屈折率n1を有するシリカ系の希土類ドープトコアであって、1質量%より多く希土類ドーパントを含み、1150nmと1450nmとの間に位置する波長で5dB/km未満の、1380nm近くの波長で20dB/km未満の減衰を、0.7(70%)を超えるスロープ効率を有するコア、および
(ii) コアを取り囲み、n1>n2である第2の屈折率n2を有する、少なくとも1つのシリカ系クラッド、
を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光ファイバの利点の1つは、非常に高い利得を生成する能力、すなわち、(i)高効率(0.7(70%)を超えるレーザスロープ効率)、および(ii)低いコア減衰(すなわち、低損失)を有しながら、ハイパワーレーザまたは光増幅器に使用できる能力である。ハイパワーレーザまたは光増幅器は、SBS閾値を、例えば、2または3倍以上、上昇させながら、希土類ドーパントの濃度がより低いファイバと比較して、このファイバの使用する長さをより短くできる。本発明の光ファイバの別の利点は、高利得ファイバおよびSPファイバの両方として機能するので、利得ファイバおよび単一偏波ファイバを共に接続する必要がなくなり、それによって、2つのファイバを共に接続することに関連する作業と費用をなくしながら、接続損失、ファイバ長さ全体を減少させる。さらに、本発明による光ファイバの高いYb濃度により、有利なことに、使用するファイバの長さを短くすることができ、それゆえ、SRS、SBSおよびSPMなどの非線形効果の影響を著しく減少させることができる。
【0020】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかであるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、ここに記載された発明を実施することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明のファイバのある実施の形態の断面図
図1B】本発明の別の実施の形態の断面図
図2】ファイバの断面に亘る、本発明の例示の光ファイバの屈折率プロファイルを示すグラフ
図3】ファイバの断面に亘る、本発明の例示の別の光ファイバの屈折率プロファイルを示すグラフ
図4図1Aおよび1Bの光ファイバの例示のコア組成を示すグラフ
図5A】MCVD法により製造されたYbドープト光ファイバの受動的コア損失対波長を示すグラフ
図5B】本発明のある実施の形態によるOVD法による図1Bの光ファイバの受動的コア損失対波長を示すグラフ
図6図1Bの光ファイバに関する出力パワー対実施したポンプパワーのグラフ
図7】ファイバ長を減少させることによってSBS閾値パワーを上昇させる実例を示すグラフ
図8】AlCl3供給機構を示す概略図
図9】アルゴンガス供給(下側の曲線)および加熱ヘリウムガス供給(上側の曲線)から得られるプリフォーム内のAl23濃度を示すグラフ
図10】コアの光ファイバプリフォーム内のYb23およびAl23濃度を示すグラフ
図11】コアのスートプリフォームの形成を示す概略図
図12】スートプリフォームのガラスプリフォームへの固結を示す概略図
図13】例示のファイバの内側クラッドのバックグラウンド損失を示すグラフ
図14図1Aおよび1Bのファイバを製造するために用いられるコアケインを示す斜視図
図15図1Aおよび1Bのファイバを製造するために用いられるコア・クラッドケインを示す斜視図
図16図1Aおよび1Bのファイバを製造するために用いられる溝付きケインを示す斜視図
図17図16の溝付きケインが挿入されたガラス管を示す断面図
図18図1Aおよび1Bのファイバを製造するために用いられる例示の固結プロセスを示す概略図
図19図1Aおよび1Bのファイバを製造するために用いられる再線引き塔を示す概略図
図20】シリカスートを有するシリカ管オーバークラッドを含むプリフォームサブアセンブリを示す断面図
図21】(必要に応じて)機械加工されたコア/内側クラッドブランクを示す断面図
図22】コア/内側クラッドブランクが、図21に示すように必要に応じて機械加工され、シリカ系の外側クラッド材料でオーバークラッドされた後の固結済みブランクを示す断面図
図23図1Aおよび1Bのファイバを製造するために用いられる、ファイバを線引きするプロセスを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、その実施例が添付の図面に示されている、本発明の現在好ましい実施の形態を詳しく参照する。可能であればいつでも、同じまたは同様の部品を参照するために、図面を通じて同じ参照番号が用いられる。本発明による二重クラッド型単一偏波光ファイバのある実施の形態が、概略的に図1Aに示されており、概して全てを通じて参照番号10により指定されている。図1Aに示された光ファイバ10は、第1の屈折率n1を有するYbが多量ドープされたシリカ系コア12;およびコア12を取り囲み、n1>n2となるように第2の屈折率n2を有する第1のシリカ系クラッド14を備えている。コア12中のYb濃度は1質量%より大きい。保護コーティング18(図示せず)がクラッド14を取り囲む。
【0023】
本発明による二重クラッド型単一偏波光ファイバの別の実施の形態が概略的に図1Bに示されている。図1Bに示された光ファイバ10は、第1の屈折率n1を有する、希土類がドープされた細長いシリカ系コア12;コア12を取り囲み、n1>n2となるように第2の屈折率n2を有する第1のシリカ系クラッド14(内側クラッド);および第1のクラッドを取り囲み、第3の屈折率n3を有する、随意的なシリカ系外側クラッド16を備えている。この実施の形態において、内側クラッド14は、このファイバに単一偏波または偏波保持特性を提供するために、好ましくはコア12の正反対の側に位置し、ファイバ10の長手方向に亘りコア12に沿って延在する、少なくとも2つの空気孔24,26を含む。空気孔24,26は、図1Bに示された線A−Aに沿って内側クラッド14の有効屈折率を減少させ、このファイバの単一偏波特性を向上させるかまたは可能にする。この空気孔24,26は随意的であり、それらがないと、ファイバ10は、活性(すなわち、利得)ファイバとして働くが、単一偏波または偏波保持特性を示さない。コア12、内側クラッド14および外側クラッド16は、ガラスから作られている。保護コーティング18が外側クラッド16を取り囲んでいる。上述したように、ファイバ10が、クラッド14を1つしか持たないように設計されている場合、保護コーティング18はクラッド14を取り囲む。しかしながら、二重クラッド型ファイバ構造が好ましい。何故ならば、その構造により、希土類ファイバコア12のより効率的なポンピングが可能になるからである。外側コーティング18は、例えば、典型的に、より軟らかい第1コーティングおよび第1コーティング上に施されるより堅い第2コーティングを含む有機コーティングであってよい。
【0024】
この実施の形態において、シリカ系コア12にはYbがドープされている。コア12はまた、少なくとも1種類の屈折率上昇ドーパントを含んでもよい。外側クラッド16はさらに、n2>n3となるように、屈折率低下ドーパントを含むことが好ましい。内側クラッドの直径DINは、少なくとも125μmであることが好ましく、少なくとも200μmがより好ましい。内側クラッドの直径DINが少なくとも225μmであることがさらにより好ましく、少なくとも250μmが最も好ましい。本出願の出願人等は、光ファイバの厚い内側クラッド14および全ガラス構造が相乗作用して、光ファイバを高エネルギー源に結合させることが可能になり、光ファイバを損傷せずにハイパワーをコアに結合させ、その一方で、2つの空気孔によりこのファイバが単一偏波ファイバになる。空気孔のサイズは、ファイバコアの所望のサイズ(短径)に応じて、様々であってよいが、直径が7から20μmであることが好ましい。
【0025】
外側クラッド16は比較的薄く、その壁厚は80μm未満、好ましくは約5μmおよび35μmの間であることが好ましい。外側クラッド16の壁厚が約10μmから25μmであることが最も好ましい。ファイバコア12の直径DCが約5μmから20μmであり、内側クラッドの直径DINが約125μmから2000μm、より好ましくは約125μmから1500μmであることが好ましい。DINが約125μmから350μmであることがさらにより好ましい。外側クラッドの直径(DOUT)が約145から2100μmであることが好ましく、約145から500μmがより好ましい。内側クラッド14が円形断面を持たない場合、DINは、内側クラッドの断面の一方の側から、その断面の反対に位置する側までの最も小さい距離として定義される。外側クラッド16は円形でなくてもよいことにも留意されたい。外側クラッド16が円形ではない場合、DOUTは、外側クラッドの断面の一方の側から、その断面の反対に位置する側までの最も小さい距離として定義される。内側クラッド14の断面積が、コア12の断面積より少なくとも200倍大きいことが好ましい。
【0026】
この実施の形態によれば、ファイバのコア12は、質量パーセントで表して、
希土類 1質量%を超える、
Al 0.5から15質量%、
Ge 0.1から15質量%、
F 0から1質量%、
を含有する。
【0027】
ファイバコア12中の希土類ドーパントYbは、1質量%を超える高活性イオン濃度を有するが、それでもまだ、0.7(70%)を超える、好ましくは0.75(75%)を超える、さらにより好ましくは0.8(80%)を超える、最も好ましくは0.85(85%)を超えるスロープ効率の、レージング作用のための高効率利得を可能にする。スロープ効率は、976nm辺りのポンプ波長で入力(吸収)ポンプパワーに亘り約1マイクロメートルのレージング波長での出力パワーの比である。コア12中の希土類ドーパントの量が1.05から3質量%であることが好ましい。屈折率上昇剤として、リンを加えてもよい。しかしながら、リンが多すぎる(10%以上)と、誘導ラマン散乱/欠陥の形成により非線形性が与えられ、これはレージング作用を阻害するかもしれない。クラスタ分離剤として、アルミニウムをコアに加えてもよい(例えば、好ましくはAl対Ybが3:1から5:1の比率で、Ybをクラスタ分離する)。コア12は、屈折率上昇ドーパントであるゲルマニウム、および/または屈折率低下ドーパント並びにクラスタ分離剤であるフッ素を含んでもよい。
【0028】
コア12の好ましい組成範囲は、質量パーセントで表して、
希土類 1.05から2質量%、
P 0から2質量%、
Al 2から10質量%、
Ge 3から15質量%、および
F 0.1から0.5質量%、
である。Ybドープトコア12は、1.03〜1.11マイクロメートル範囲でレーザ用に使用できる。
【0029】
高NAを提供するために、内側クラッド14は5質量%から30質量%のGeを含有することが好ましい。内側クラッドが5質量%から20質量%のGeを含有することがさらにより好ましい。5質量%から10質量%のGeが、多くの用途にとってうまく作用することに留意されたい。
【0030】
外側クラッド16の屈折率低下ドーパントが、質量パーセントで表して、以下の量でフッ素および/またはホウ素を含むことが好ましい:
F 0.5から5質量%、
B 0.5から20質量%
外側クラッド16に関するドーパントの量は、内側クラッドのNAが0.15から0.5となるように選択されることが好ましい。しかしながら、外側クラッド16がBおよび/またはFの少なくとも一方を含有することが好ましい。Bの量が少なくとも3質量%であることが好ましい。外側クラッド16中に8質量%より多いBと共に、1質量%より多いFを有することが好ましく、2質量%より多いFがより好ましい。外側クラッド16が5質量%未満のF、および15質量%未満のBを有することが好ましい。BおよびFの量は、Fが2から4質量%、Bが3から15質量%であることがさらにより好ましい。
【0031】
光ファイバの内側クラッド14は非円形であってもよい。非円形の内側クラッド14の利点は、非円形形状によって、光ポンプパワーのコア12中への吸収が改善されることである。細長いコア12は、内側クラッドの幾何学中心に位置していても、または内側クラッドの幾何学中心から外れていてもよい。
【0032】
光ファイバコア12は、図1Bに示されるように、楕円形であることが好ましいが、円形(図1A参照)であっても、または他の細長い形状を有していてもよい。図1Bに示されるように、少なくとも2つの(随意的な)空気孔24,26が、コアに隣接し、内側クラッド14内に少なくとも部分的に位置している。細長い(楕円形)コア12は、空気孔24,26と共に、このファイバを単一偏波(SP)ファイバにする。楕円形コア12のアスペクト比(長径の短径に対する比)は、少なくとも1.5:1であることが好ましく、2:1と10:1の間であることがより好ましい。何故ならば、これらのアスペクト比により、コア12の複屈折が改善されるからである。円形コアを有し、空気孔を持たないファイバは、レーザまたは増幅器ファイバとして使用するのに適しているが、単一偏波は示さない。
【0033】
コアデルタは、1%Δ未満、好ましくは0.5%Δ未満である。コア12の開口数NAは、0.05(ハイパワーレーザ用途について)と0.25(低パワー用途について)の間である。コア12の開口数NAは、(n12−n221/2として定義され、ここで、n1はコア12の屈折率であり、n2は内側クラッド14の屈折率である。
【0034】
シリカ系内側クラッド14は、図1Aに示されるように(コアが中心から外れて位置することが好ましい)、円形外周、または非円形外周を有していてよい。内側クラッド14の開口数NAは、(n22−n321/2として定義され、ここで、n3は外側クラッド16の屈折率である。内側クラッドは、0.15と0.45の間の開口数NAを有することが好ましく、0.3と0.4の間がより好ましい。
【0035】
一般に、ファイバレーザまたは増幅器において使用できる二重クラッド型構造体は、2つのクラッドを含む。第1の(内側)マルチモードクラッドは、マルチモードポンピングコアとして機能する。内側クラッド14はコア12に隣接し、第2の(外側)クラッド16は第1のすなわち内側クラッド14を取り囲む。コア12は、コアレージング波長でシングルモードまたはマルチモードのいずれであってもよい。内側クラッド14は、入力(ポンピング)光に関して高い開口数NAを有する導波路としての機能を果たす。すなわち、内側クラッドは励起キャビティ(pump cavity)としての機能を果たす。内側クラッドの直径が大きいほど、より多くのポンプ光が光源から内側クラッド中に結合される。第1のマルチモード内側クラッドの断面(DINは内側クラッドの短い方の寸法である)は、所望の形状、例えば、ポンプ源の近距離形状(near-field shape)に適合した形状を有するように、もしくは光源から内側クラッドへの(ポンプ)光の結合効率を増加させる任意の他の形状を有するように設計されていてもよい。内側クラッドの開口数は、レーザダイオードなどの光源の出力を捕捉するのに十分に高くなければならない。半導体レーザ技術における最近の進歩により、光源内に組み込まれた中間ファイバに結合された個々のまたはアレイ化された広域レーザダイオードを利用した光源の形成が導かれた。この光源の出力パワーは、中間ファイバの出力端において976nmで150ワットより大きい。中間ファイバの直径および光源のNAは、それぞれ、200μmおよび0.22NAである。しかしながら、本発明を用いて、Ybが多量ドープされた(1質量%より多いYb)、単一クラッド型シリカ系ファイバを製造してもよい。
【0036】
次いで、この光源からの光は、高NAおよび大開口レンズを介して、二重クラッド型光ファイバに結合される。この手法により、85〜90%の結合効率が得られる。
【実施例】
【0037】
本発明を、以下の実施例によりさらに明確にする。
【0038】
実施例1
図2および3は、図1Bの例示の光ファイバの相対屈折率プロファイルを概略的に示している。より詳しくは、図2および3は、コアの中心から測定された距離に対する光ファイバの屈折率のパーセントデルタ(純粋なシリカの屈折率に対する)を示している。図2は、例えば、図1Bに示されたファイバの線Y−Yに沿った、空気孔を含まない領域に亘りとられた屈折率プロファイルを概略的に示している。図3は、同じファイバであるが、空気孔24を含む領域(例えば、図1Bに示されたファイバの線A−Aに沿った)に亘りとられた屈折率プロファイルを概略的に示している。
【0039】
図4は、図1Aおよび1Bに示された光ファイバの例示のコア組成を示している。Ybドープトファイバコア12は、1μmより大きい波長に関してシングルモードである。光ファイバ10は、コア12に関して比較的低いNA(約0.065)を、内側クラッド14に関して高いNA(0.30)を有する。(NAは、(ni2−ni+121/2により定義される。)この内側クラッドのNAは、ポンプ源のNAより高く、90%以上のポンプ光に関する高い結合効率が可能になることが好ましい。小さなコアのNA(0.065)により、大きなコアサイズ(直径が10.5マイクロメートル)で、1μmでのシングルモード動作が可能になる。ファイバをさらに曲げることによって、50μmに高いコアサイズについて、シングルモード動作がさらに達成できる。コアNAがより高い(例えば、0.13)場合、コアの直径は、シングルモードであるために、実質的により小さく(例えば、約5マイクロメートル)なければならないであろう。コアの直径がより大きく、コアNAがより低いことにより、コア12が、高輝度出力についてシングルモードのままであることができる一方で、コアが、内側クラッドからより多くのポンプパワーを得ることが可能になり、また非線形効果からの減少した影響により、ファイバパワー取扱能力が増加する。この例示の光ファイバのコアに関する特定の組成は:コア12:1.2質量%のYb23;3質量%のAl23;12質量%のGeO2;0.2質量%のF;内側クラッド14:8.5質量%のGeO2;内側クラッド16:8質量%のBおよび2.7質量%のF。
【0040】
MCVDプロセスにより製造されたYbドープトファイバ(約1.0質量%)の受動的損失が図5Aに示されている。MCVDファイバプロセスにより製造された典型的な高Ybドープトファイバは、いくつかの例示の高不飽和吸収により明示された、重大なレーザ効率問題を被る。不飽和吸収は、ポンピング波長により異なることが分かっており、最悪は、976nmでのYb吸収ピークにポンピングされる。このことは、ファイバコア中に存在する不純物および/または欠陥色中心のせいであろう。これらの不純物および欠陥は、一般に、Yb溶液ドープトMCVDファイバ中に存在し、図5Aに示されるような高いバックグラウンド損失に関連している。より詳しくは、図5Aは、約1150nmの波長で約20dB/kmの損失を、1200nmと1350nmの間の波長範囲で約10dB/km以上の損失を、OHバンド(約1400nm)で40dBを超える損失を示している。
【0041】
OVDプロセスにより製造される二重クラッド型ファイバは、高効率でハイパワーのファイバレーザ装置に使用するのに特に適している。図4および5Bは、図1Bの光ファイバに相当する。より詳しくは、図5Bは、低い受動的損失、例えば、図1BのファイバのYbドープトコア中で達成される1.5dB/kmを示している。コアの受動的損失(バックグラウンド損失とも称される)は、Ybなどの活性ドーパントからの吸収効果なしでのコア材料からの固有の損失である。より詳しくは、図5Bは、本発明のある実施の形態による高Ybドープトファイバの低損失特徴を示している。このファイバは、図5AのYbドープトMCVDファイバにおける一般に10dB/kmの最小損失よりもずっと低い約1.5dB/kmの最小損失を有する。図5Bに相当するOVDファイバにおけるOHレベルは、1380nmで約1dB/kmであり、MCVDファイバにおける約40dB/kmのOHレベルよりもずっと低い(図5A参照)。MCVDファイバにおける高いバックグラウンド損失は、高不純物および/または欠陥色中心の含有量を示している。MCVDファイバにおいて、これらと高水レベルが合わさり、飽和不能な吸収として見られるエネルギー漏れチャンネルを形成することによって、ファイバの低レーザQEのきっかけになり得る。
【0042】
図6は、高Yb濃度(1.2質量%)のOVD製造シングルモードファイバからの約86%のレーザスロープ効率の高効率動作を示している。より詳しくは、図6は、出力パワー(ワット)対吸収入力(ポンプ)パワー(ワット)のグラフである。光ポンプ波長は976nmである。出力波長は1μmが中心である。光ポンプは、ファイバに結合した半導体レーザダイオードバー(Ga−As/InGaAs)である。この光ポンプからの出力を、図1Bの二重クラッド型光ファイバの内側クラッド14中に送り込んだ。我々の知る限りでは、図6に示された効率は、これまでに公表されたどのYbドープトファイバの中でも最高の内である。それゆえ、このOVD製ファイバは、その高いYb濃度にもかかわらず、妥協のないレーザ効率を提供し、より短いファイバ長をファイバレーザに効果的に使用できるようにする。このファイバは、良好なパワー取扱能力を有し、100ワットを超える光(ポンプ)出力を提供する光源でうまく動作する。この実施例の光ファイバ10は、約8dB/m(コア/内側クラッドの比が30/400であるとき)までの単位長さ当たりの吸収(内側クラッド中でポンプパワーを送るときの)を有する。図1Bの光ファイバは、コア12のサイズ(短径に沿った)に応じて、20nmから40nmの単一偏波を有する。
【0043】
Yb蒸気ドーピングOVDプロセスにより実現された高効率の高Yb濃度のファイバにより、ファイバ非線形プロセスのパワー閾値を上昇させるために、より短いファイバ長さが実際的に使用可能になる。図7は、閾値パワー(W)対ファイバ長のグラフである。この図は、ファイバ長が減少すると、SBS閾値パワーが上昇することを示している。例えば、約10メートルかそこらの本発明の現在の二重クラッド型ファイバ設計からファイバ長を5メールまで短くすると(高Ybドーピングにより可能になる)、SBS閾値パワーが3倍より大きく上昇する。
【0044】
ファイバを製造するためのプロセス
図1Aおよび1Bのファイバは、外付け(OVD)法により製造される。OVD法は、スートプリフォームを製造するために、所望の蒸気成分(シリカおよび所望のドーパントを含む)を火炎中で酸素と反応させて、心棒上にスート粒子を堆積させることによって、光ファイバを製造する方式である。次いで、心棒を取り外した後、このスートプリフォームを、高温炉内で中実ガラスに固結させる。コア/内側クラッド/外側クラッドの組成物は、スートプリフォーム形成プロセスにおいて各層について異なる蒸気成分を使用することによって得られる。最初に、コアプリフォームを生成し、次いで固結させ、その後、コア/内側クラッドプリフォームの生成および固結を行い、さらにその後、外側クラッド外付け法と別の固結工程を行う。次いで、最終的なプリフォームを公知のファイバ線引き法によって、単一または二重クラッド型単一偏波光ファイバ10に線引きする。
【0045】
より詳しくは、以下の工程を利用して、図1Bの希土類がドープされた二重クラッド型単一偏波ファイバを製造する。
【0046】
1.コアケインの形成 コアケインを最初に形成する。コアは、例えば、標準的なOVD法により製造する。コア材料を、付着堆積工程中に心棒上に堆積させる。ファイバコアケインを製造するのに使用される蒸気前駆体材料の例には、Yb(fod)3、AlCl3、SiF4、SiCl4、GeCl4およびホウ酸トリエチルがある。Ybに加えてか、またはYbの代わりのいずれかで、他の希土類材料を使用してもよい。コア堆積プロセス中、均一なAlCl3気相供給を行った。これは、図8に概略的に示されているAlCl3供給のための搬送ガス30として加熱された不活性ヘリウム(アルゴンガスの代わり)を使用することによって行った。固体のAlCl3が蒸気(気)相に変わるときに、多量の熱が消費される。ヘリウムガスは、高い熱伝導率を有し、AlCl3に熱を効果的に伝達し、AlCl3の蒸気圧を一定に維持する。ヘリウムガスが150℃から180℃の範囲内の温度で提供されることが好ましい。図8に示されるように、加熱されたヘリウムガスは、Heガスヒータ32によって、AlCl3含有容器52を収容しているオーブン50に提供される。比較的高いヘリウムガスの温度は、AlCl3含有容器52を約140℃〜160℃の一定温度に維持するのに役立つ。この実施例の光ファイバを製造するために、ヘリウムガスをヒータ32により168℃に加熱し、容器52の温度を145℃に一定に維持した。容器の温度が高いと、プリフォーム中のAlの濃度が高くなる。その上、ヘリウムガスの流量も、コアドーピングプロセス中ずっと、最も均一な供給のために調節した。この実施例において、供給には、10%の流量勾配(リットル/分)が用いられる。(コアとクラッドの全ての他のドーパントについて、その後の通過に流量を増加させた)加熱されたヘリウムガスは、AlCl3蒸気を、加熱ガスライン54を介して火炎バーナ(ガスバーナ)56に搬送する。この実施例のコアプリフォームを製造するために、100回通過させるコア堆積プロセスは、1.2リットル/分(1回目の通過)で始め、1.65リットル/分(100回目の通過後)で終わらせ、スートプリフォームコアにおいて約2mmから3mmの厚さが得られた。加熱ヘリウムに基づくAlCl3供給は、ファイバコアを形成するためだけではなく、その層に均一にAlをドーピングすることが望ましい場合、他のファイバ層(例えば、クラッド)にAlをドーピングするために、使用してもよい。さらに、加熱ヘリウム支援供給は、これも吸熱性(すなわち、熱吸収性)である、AlCl3以外の材料に用いてもよい。AlCl3のヘリウムガス供給の代わりアルゴンガス供給を用いてもよいが、AlCl3のヘリウムガス供給により、Al23濃度の均一性がより良好になる(図9参照)。Al23の存在は、コア内の希土類ドーパントのクラスタ分離に役立つので、Al23はコア層中に均一に分布されることが好ましい。これにより、消失効果が減少することによって、高レーザ/増幅器効率が得られる。この供給プロセスは、比較的高い屈折率(すなわち、シリカより高い)を有するファイバ層が必要とされるときに、Alドープト(例えば、Geを置換するために)伝送ファイバ(すなわち、コア中に希土類ドーパントを含まないファイバ)に使用することができる。
【0047】
図10に示されるように、AlCl3の加熱ヘリウム供給により、プリフォームコア全体に亘りYbとAlが非常に均一に分布し、それにより、ファイバコア12内のYbとAlの濃度が均一になる。より詳しくは、コア中のAl23濃度の結果として生じる変動は、特に3質量%を超える最大Al23濃度について、2質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.25質量%未満である。また、任意の所定のファイバ層(例えば、コア、クラッドなど)中のAl23濃度の最大質量%対最小質量%の比が、特に3質量%を超える最大Al23濃度について、2:1未満、好ましくは1.5:1未満、より好ましくは1.2:1未満、さらにより好ましくは1.1:1未満であることも好ましい。
【0048】
Yb蒸気供給は、15slpm(標準リットル毎分)まで、好ましくは10〜12slpmの流量でアルゴンガスにより搬送され、150〜185℃、好ましくは165〜185℃、より好ましくは170〜180℃の温度範囲において有機金属Yb(fod)3を加熱することによって行われ、約1.01質量%から3質量%のYb23濃度を有するスートプリフォームコアが得られる。この実施例の光ファイバ10を製造するために、173℃のYb(fod)3含有容器温度を用いて、1質量%より大きいYb23濃度を達成した。他の材料の供給は、100℃未満の温度で従来の酸素供給により行われる。
【0049】
より詳しくは、本発明のある実施の形態によれば、Yb(fod)3、AlCl3、SiF4、SiCl4およびGeCl4がガスバーナ56に供給される(図11参照)。ガスバーナ56は、約2000℃の温度で動作する。各コア(またはクラッド)段階に関して供給される所定の量の様々な気相材料は、バーナ56に供給される酸素により搬送され、バーナ火炎58内で反応し、ここで、所望のガラススート粒子が形成される。次いで、スート粒子は、熱泳動機構によって、回転している心棒59またはコアケイン60上に堆積して、指定のスートプリフォーム62が得られ、これは、Ybドープトシングルモードコアを有する単一偏波ファイバを製造するのに用いられる。
【0050】
コアスートプリフォーム層が付着堆積され、スートプリフォーム62が室温まで冷却された後、心棒59がコアスートプリフォーム62の中心から取り外される。次いで、コアスートプリフォーム62が固結(中実ガラスに緻密にされる)されて、中実ガラスプリフォーム62aとなり、これがコアケイン62bに線引きされる(図12および14参照)。
【0051】
本願の出願人等は、固結中の高温および高速下方供給速度を適切に選択すると、得られる中実ガラスプリフォームにおける結晶形成が少なくなり、これにより、受動的(バックグラウンド)損失が非常に低い光ファイバが得られ、Alドープトブランクに関連する従来の二重再線引きプロセスが省かれることを発見した。より詳しくは、スートプリフォーム62は、得られるファイバコアのバックグラウンド損失が、1280nmの波長で、8dB/km未満、好ましくは3dB/km未満となるように、結晶化を十分に最小にするような速度と温度で炉に対して下方供給される。図12に示されるように、「コア」スートプリフォーム62は、高温(1400℃から1600℃)炉64内で中実ガラスプリフォーム62aに固結される。固結中の炉の温度が1500℃から1600℃であることが好ましく、1530℃から1580℃がより好ましい。この実施の形態の光ファイバ10を製造するために、1550℃の炉の温度を使用した。1500℃未満の温度について、プリフォームガラスは結晶を形成し、結晶化の量は、炉の温度が1530℃より高くなると、著しく減少することが分かった。炉内にある間、スートプリフォーム62は、7mm/分以上の速度で炉64に対して動かされる(例えば、下方供給される)。この速度が12mm/分から18mm/分であることが好ましい。スートプリフォームを下方供給する代わりに、スートプリフォームを定位置に保持し、代わりに炉を動かしてもよいことに留意されたい。それゆえ、スートプリフォームが炉に対して動かされることを明記することによって、本願の出願人等は、スートプリフォームと炉との間のどのような相対運動も網羅することを意図している。一般に、炉の温度が高いほど、炉とスートプリフォームとの間の相対運動の速度を速くすることが推奨される。
【0052】
上述した高固結温度および高下方供給速度により、得られる光ファイバ10は、8dB/km未満のコアのバックグラウンド損失を有する。より詳しくは、光ファイバは、5dB/km未満のコアのバックグラウンド損失を示す。この実施例において、コアのバックグラウンド損失は、3dB/km未満である。コアのバックグラウンド損失は、外側クラッドのない(シングルモード)光ファイバを製造し、このファイバのバックグラウンド損失を測定することによって測定した。
【0053】
コアスートプリフォーム62は、クラッド形成プロセスが完了した後に、0.06から0.1%のコアデルタを有するファイバを製造するのに十分な量のGeを有する。コアスートプリフォーム62を上述したように固結した後、これはコアケイン62bに線引きされる。コアケイン62bは、長さ1メートル、直径約8mmであることが好ましい。コアケイン62bが図14に概略的に示されている。
【0054】
2.第1のクラッドブランクの形成 コアケイン62bをシリカスートでオーバークラッドして、コア/クラッド(スート)ブランク(ここでは、第1のクラッドブランク63と称される)を形成する。次いで、第1のクラッドブランクを固結して、ケイン63aを形成する。第1のクラッドブランク63は、0.4から0.6のコア対第1のクラッドの直径の比を有する。ケイン63aは、直径約42mmである。ケイン63aが、図15に概略的に示されている。
【0055】
あるいは、コアケイン62aの周りにシリカスリーブを配置することによるスリーブ付けプロセスを用いて、ケイン63aを形成してもよい。
【0056】
3.溝付きケインの形成 ケイン63aは、光ファイバ10のコア12と第1のクラッド層14に対応する部分112,114を含む。ケイン63aは、長さが約1メートルで、直径が約8mmであることが好ましい。次いで、溝54をケイン63aの正反対の縦側面に幅約6.4mm、深さ約8から10mm切り込み、それによって、溝付きケイン63Bを形成する(図16参照)。溝の深さは、第1のクラッド層の厚さに依存するが、図16に示されるように、その底部が部分112(ファイバコア12に相当する)と実質的に隣接するようなものであるべきである。溝付きケイン63Bは、どのような研削残留物も取り除くために約30分間に亘りHFエッチングされ、次いで、適切なサイズのケイン(約8mmの外径)に再線引きされる。
【0057】
次いで、溝付きの再線引きされたケイン63Bは、図17に示されるように、シリカスート67がオーバークラッドされた(例えば、約800〜1000グラム)1メートル長のシリカ管またはスリーブ65中に挿入されて、プリフォームサブアセンブリ70が形成される。スリーブ65上のシリカスート67のオーバークラッドは、外付け(OVD)法により製造されることが好ましい。例示のシリカ管65は、約8.8mmの内径、およびシリカスート67の層を支持する約11.8mmの外径を有する。スートを担持しているシリカ管は、エッチングされ再線引きされたケイン63Bの管65中への挿入前に、化学溶剤またはアルコール(例えば、IPA)により、外側と内側の両方が洗浄される。必要であれば、プリフォームサブアセンブリ70内の2つの孔24,26をHFでさらにエッチングして、それらの孔を拡大してもよい。
【0058】
次いで、図17のプリフォームサブアセンブリ70を図18に示されるような従来の固結プロセスにしたがって、Cl2の雰囲気中の固結炉64内で最初に乾燥させ、次いで、He含有雰囲気中の固結炉内で固結して、固結済みプリフォーム70Aを製造することによって、固結する。次いで、固結済みプリフォーム70Aを、図19に示されるように、再線引き塔74中に挿入する。好ましい下方供給速度は約7mm/分である。加熱素子75によりプリフォーム70Aに熱を加え、このプリフォームを張力印加ホイール76によって、約7〜8mmの直径のケイン78へと下方に線引きする。再線引きプロセス(プリフォームからより小さい直径のケインへの線引き)が行われている間に、孔24,26を閉じなくするのに十分な正圧(約1psi(約6.9kPa))をその孔に印加する。この正圧は、中心コアがわずかに細長くなるのに十分であってもよい。使用される正圧は、他の要因の中でも、線引き温度、ガラスの粘度、および線引き速度の関数である。
【0059】
今では楕円形状の中心コア112および空気孔24,26を有するこのケイン78は、図20に示されるように、約1000グラムのシリカスート67Aでオーバークラッドされた1メートル長のシリカ管65A中に再度挿入されて、プリフォームサブアセンブリ70Bが形成される。このプリフォームサブアセンブリ70Bは、これまでと同じ様式で固結されて、固結済みブランク70Cが形成される。この固結済みブランク70Cは、光ファイバ10のコアと内側クラッド部分の基部を形成する。
【0060】
次いで、固結済みブランク70Cは、必要であれば、所望の形状に機械加工される。内側クラッド層における円対称を壊すことによって、ポンプ光の吸収効率が向上する。機械加工されたコア/内側クラッドのブランク70Dが図21に概略的に示されている。機械加工済みブランク70Dを、例えば、屈折率低下ドーパントを含むSiO2によって再度オーバークラッドし、次いで、固結済みブランク71に固結した。固結済みブランク71のダウンドープされたシリカ層116は、光ファイバ10の第2の、すなわち外側クラッド16を形成する。図22は、例示の固結済みブランク71を概略的に示している。オーバークラッドにホウ素を使用する場合、固結をフッ素雰囲気中で行うことが好ましい。この実施例において、屈折率低下ドーパントはBおよびFである。
【0061】
より詳しくは、バーナに供給されるホウ酸トリエチルおよびSiCl4を用いることによって、B23およびSiO2を、研削したガラスプリフォーム上に気相成長させて、B23およびSiO2スート層を形成した。次いで、固結炉に供給されたSiF4ガスを使用することによって、B23ドープトシリカスート層で被覆されたブランク(すなわち、機械加工または研削されたガラスプリフォーム)を、固結工程中にフッ素ドープした。この第2の固結工程中、固結炉は、1300℃〜1400℃の温度範囲で動作される。これらの固結温度で、フッ素は、ホウ素/シリカスート層中に拡散するが、その下にあるガラス相中には浸透しない。この実施例の光ファイバは、拡散により適切なフッ素ドーピングを促進するように、1350℃の固結温度を使用することによって製造した。この実施例において、プリフォームの第3の層(外側クラッド)は、第2の層(内側クラッド)の形状と似た形状を有する。
【0062】
次いで、固結済みブランク71を、図23に示したように、線引き炉80内のハンドル81から吊り下げ、ファイバ82をそこから線引きする。線引き中、前記孔にわずかな正圧(約1psi(約6.9kPa)以上)を印加して、それらが閉じないようにする。これにより、コアが(より)楕円形状になる。図1Aおよび1Bに示された例示のファイバにおいて、0.1psi(約690Pa)未満の正圧を用いた。線引き速度は約1m/秒であった。得られたファイバは、楕円形状のコアおよび2つの空気孔を有している。
【0063】
中心コアの所望のアスペクト比を達成するために、コアの楕円化は、再線引き工程、線引き工程、またはその組合せのいずれで行ってもよいことが認識されよう。いずれの場合にせよ、楕円化が生じるように、プリフォーム(およびファイバ)の孔に正圧が印加される。
【0064】
本発明の範囲から逸脱せずに、本発明の改変および変更を行ってもよいことが当業者には明白である。例えば、ステップインデックス型構造が示されているが、他のグレーデッドインデックス型構造を用いてもよい。さらに、ファイバプロファイルに環状構造を同様に加えてもよく、その構造は許容されるように機能するであろう。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に含まれる条件で、包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0065】
10 光ファイバ
12 コア
14 内側クラッド
16 外側クラッド
18 保護コーティング
24,26 空気孔
30 搬送ガス
32 ヒータ
56 バーナ
59 心棒
62 スートプリフォーム
70 プリフォームサブアセンブリ
71 固結済みブランク
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23