【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の発明者らは、哺乳動物腫瘍である結腸直腸癌からHLAクラスIまたはII分子に直接結合するペプチドを単離し、特徴付けた。
【0032】
本発明が提供するペプチドは、腫瘍形成に関連する抗原に由来するものであり、かつMHC (HLA)クラスII分子に十分に結合してヒトの白血球の免疫応答、特にリンパ球、特にTリンパ球、特にCD4陽性Tリンパ球、特にCD4陽性Tリンパ球をもたらすTH1-型の免疫応答を起動する能力を有するものである。
【0033】
また、本発明は、腫瘍形成に関連する抗原に由来し、かつMHC(HLA)クラスI分子に十分に結合してヒトの白血球、特にリンパ球、特にTリンパ球、特にCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球の免疫応答を起動する能力を有するペプチドも提供し、かつまた、癌患者のワクチン接種として特に有用な2つのペプチドの組み合わせも提供する。
【0034】
本発明によると、その目的は、配列番号1〜配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列および/または配列番号1〜配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%相同性のある変異アミノ酸配列を含む少なくとも2つのペプチド、および/または配列番号1〜配列番号7のアミノ酸配列またはそれらの変異アミノ酸配列をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含む医薬組成物、ならびに薬学的に許容される担体とを提供することによって達成される。 本発明の医薬組成物は、配列番号8〜配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号8〜配列番号15 のアミノ酸配列と少なくとも80%相同性のある変異アミノ酸配列を含む少なくとも1つの追加的なペプチド、または配列番号8〜配列番号15もしくはこれらの変異アミノ酸配列をコードする核酸を含むポリヌクレオチドをさらに含む場合がある。 該ペプチドの全長は8〜100個のアミノ酸、好ましくは8〜30個のアミノ酸、最も好ましくは8〜16個のアミノ酸からなり得る。 該ペプチドは、非ペプチド結合も含む場合がある。
【0035】
以下に説明するように、本発明の基礎となるペプチドは全て、MHCクラスIまたはIIがある細胞によって提示されるものとして特定されたものである。したがって、これら特定のペプチドおよびその配列を含む他のペプチド (すなわち由来ペプチド)は全て、特定のT細胞応答を引き出すが、そのような応答がどの程度引き出されるかは、各ペプチドおよび各患者によって異なる場合がある。 例えば、該ペプチドの変異によって差異が生じる場合がある。 当業者であれば、具体的に本明細書で挙げる例およびそれらの例に伴う文献を参照し、各ペプチドによって誘発される応答の度合いを決定するために使用可能な方法をよく認識している。
【0036】
好ましくは、本発明の変異形は、本発明の対応するペプチドとT細胞の交差反応を誘発する。
【0037】
ペプチドのアミノ酸配列または該ペプチドをコードする核酸配列と変異形との相同性のパーセンテージは、当技術分野で周知のアルゴリズムを用いて計算することができる。本発明において、「相同性のある」という言葉は、2つのアミノ酸配列すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の一致の度合いを指す。 前述の「相同性」は、それらの配列にかけて最適な条件下で整合された2つの配列の比較によって決定される。 ここで比較されるアミノ酸または核酸配列に、それら2つの配列の最適な整合において追加または削除 (例えばギャップなど)がある場合がある。 そのような配列の相同性は、例えばClustalW アルゴリズム (Nucleic Acid Res., 22(22):4673 4680 (1994)を用いて整合させることによって計算することができる。 一般に市販されている配列分析ソフトウェア、より具体的には Vector NTI, GENETYX 、または公開データベースが提供する分析ツール(例:http://restools.sdsc.edu/biotools/biotools16.html )を使うこともできる。
【0038】
薬学的に許容される担体は周知であり、通常、その中に治療有効薬剤が処方される。 該担体は、一般に、該処方に薬理活性を一切提供しないが、化学的および/または生物的安定性、放出特性などを提供する場合がある。 処方例は、例えば、Alfonso R. Gennaro. Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition. Baltimore, MD: Lippincott Williams & Wilkins, 2000 に記載されており、生理食塩水、水、緩衝用水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸、デキストロースなどを含むが、これらに限定されない。 最近、患者への点滴に長年使われてきた特定の脂肪乳剤もペプチドの送達手段として有用であることがわかった。 そのような乳剤の2つの例は、Intralipid および Lipofundinとして市販されている周知の脂肪乳剤である。「Intralipid」は、Kabi Pharmacia (スウェーデン)の登録商標であり、米国特許第3,169,094号に開示されている点滴用脂肪乳剤である。「Lipofundin」は、B. Braun Melsungen(ドイツ)の登録商標である。 両方とも、脂肪として大豆油を含んでいる (1,000mlの蒸留水に100g (10%)または200g (20%))。 乳化剤としてIntralipidは卵黄リン脂質を使っており (蒸留水1リットル当たり12g)、Lipofundinは卵黄レシチンを使っている (蒸留水1リットル当たり12g)。 IntralipidとLipofundinの両方で、グリセロール (25 g/l)添加により等張性が得られる。
【0039】
該ペプチドは、腫瘍関連抗原、特に例えばタンパク質分解、血管形成、細胞成長、細胞周期制御、細胞分裂、転写調節、組織浸潤などにおける機能を持つ腫瘍関連抗原に由来する。
【0040】
表1: 本発明のペプチドおよび親タンパク質の機能
【表1】
【0041】
染色体20オープン・リーディング・フレーム42
C20orf42は、アクチン細胞骨格を血漿膜に付着させるプロセスおよびインテグリン媒介細胞プロセスに関与する限局性接着タンパク質である。 機能喪失変異の結果生じるC20orf42欠乏は、キンドラー症候群 (皮膚の水疱を特徴とする常染色体後退遺伝性皮膚症)、進行性皮膚萎縮、光過敏症のほか、ときとして発癌につながる (Herz, C, Aumailley, M, Schulte, C, Schlotzer-Schrehardt, U, Bruckner-Tuderman, L, and Has, C; Kindlin-1 is a phosphoprotein involved in regulation of polarity, proliferation, and motility of epidermal keratinocytes, J Biol Chem., 2006, 281, 36082-36090)。 最近、機能喪失変異の患者での重度の出血性大腸炎を伴う胃腸器官の症状が報告された (Sadler, E, Klausegger, A, Muss, W, Deinsberger, U, Pohla-Gubo, G, Laimer, M, Lanschuetzer, C, Bauer, JW, and Hintner, H; Novel KIND1 gene mutation in Kindler syndrome with severe gastrointestinal tract involvement, Arch. Dermatol., 2006, 142, 1619-1624)。
【0042】
癌の場合では、癌関連の設定での遺伝子発現を調査する研究の範囲内でC20orf42について説明されている。 C20orf42は結腸癌の70%および肺癌の60%で過剰発現していた (n=10)。 ノーザンブロットによる正常組織の発現は、神経筋組織に限定されていた (Weinstein, EJ, Bourner, M, Head, R, Zakeri, H, Bauer, C, and Mazzarella, R; URP1: a member of a novel family of PH and FERM domain-containing membrane-associated proteins is significantly over-expressed in lung and colon carcinomas, Biochim. Biophys. Acta, 2003, 1637, 207-216)。 さらに、C20orf42は、 TGF-βを媒介とする細胞移動および腫瘍浸潤に関わる遺伝子として特定されている (Kloeker, S, Major, MB, Calderwood, DA, Ginsberg, MH, Jones, DA, and Beckerle, MC; The Kindler syndrome protein is regulated by transforming growth factor-beta and involved in integrin-mediated adhesion, J. Biol. Chem., 2004, 279, 6824-6833)。
【0043】
NADPHオキシダーゼホモログ-1 (NOX1)
NOX1は、スーパーオキシド (O
2-)と過酸化水素 (H
2O
2)の活性酸素種の生成を触媒する成長因子応答酵素である。 その発現は元々、結腸、前立腺、子宮、増殖血管平滑筋細胞において認められた。 (Suh, Y. A. et al. Cell transformation by the superoxide-generating oxidase Mox1. Nature 1999, 401, 79-82)。その発現は、細胞増殖、血管形成、および細胞内シグナル伝達経路の活性化を含む数多くの生物学的応答に関係している (Harper, R. W., Xu, C., Soucek, K., Setiadi, H. and Eiserich, J. P. A reappraisal of the genomic organization of human Nox1 and its splice variants. Arch. Biochem. Biophys. 2005, 435, 323-330)。
【0044】
NOX1は結腸に高発現するが、結腸の生理または病理におけるその機能はいまだによく理解されていない。 正常組織では、NOX1の発現は回腸で低く、右結腸で中程度であり、左結腸で高い。 腺腫由来標本と、分化が十分または乏しい結腸腺癌標本との間に、NOX1の統計的差異はなかった。 NOX1は、腺窩および内腔表面の両方で、結腸上皮細胞に高発現した。 結論として、NOX1は結腸上皮に構成的に発現する酵素であり、腫瘍形成に直接関連するものではない (Szanto, I. et al. Expression of NOX1, a superoxide-generating NADPH oxidase, in colon cancer and inflammatory bowel disease. J Pathol. 2005, 207, 164-176)。
【0045】
免疫組織化学は、NOX1が粘膜表在細胞に構成的発現をしたことを示している。 腺腫およびよく分化された腺癌はNOX1の発現を上方調節した。 核因子 (NF)カッパBがNOX1を豊富に発現する腺腫および腺癌細胞で主に活性化されたことは、NOX1は結腸腫瘍にNFカッパB依存性の抗アポトーシス経路を刺激する可能性を示している (Fukuyama, M. et al.Overexpression of a novel superoxide-producing enzyme, NADPH oxidase 1, in adenoma and well differentiated adenocarcinoma of the human colon. Cancer Lett. 2005, 221, 97-104)。
【0046】
Wnt3a/βカテニンシグナルがNOX1発現を誘発するという記述がある(Petropoulos, H. & Skerjanc, I. S. Beta-catenin is essential and sufficient for skeletal myogenesis in P19 cells.J Biol Chem. 2002, 277, 15393-15399)。
【0047】
最近、活性酸素種(ROS)が、腫瘍細胞の様々な接着分子の発現を後に誘発する内皮アポトーシスを誘発することが示唆された。 このことは、ROSの生成に対処することによって、遠位での腫瘍再発を防ぐことが実現可能であることを示唆している。 (Ten, KM, van der Wal, JB, Sluiter, W, Hofland, LJ, Jeekel, J, Sonneveld, P, and van Eijck, CH; The role of superoxide anions in the development of distant tumour recurrence, 2006, Br.J Cancer, )。
【0048】
オルニチンデカルボキシラーゼ1 (ODC1)
ODC1は、オルニチンをプトレシンに触媒するポリアミン生合成経路の速度制限酵素である。 この酵素の活性レベルは成長を促進する刺激に応じて変化し、他の哺乳類タンパク質に比べて高い代謝率を示す。
【0049】
ポリアミン代謝は、上皮組織における発癌メカニズムの構成要素である。 ODC1の増加とともに正常細胞の成長が始まり、新生腫瘍細胞の成長が持続することはしばしばある。 ODC1阻害物質は、膀胱、胸、結腸、皮膚の発癌の実験モデルでの腫瘍形成を抑制する。 ODC1活性の過剰発現は、多くの癌でよく認識された特徴であり、ODC1はプロトオンコジーンと見なされている (Auvinen, M., Paasinen, A., Andersson, L. C. and Holtta, E. Ornithine decarboxylase activity is critical for cell transformation. Nature 1992, 360, 355-358)。
【0050】
大腸腺腫様ポリポーシス (APC)遺伝子での生殖細胞変異は、結腸癌で最も顕著な遺伝的素因である。 APC変異は遊離βカテニンレベルの大幅な増加を引き起こし、核の中に移動して配列に特異な転写因子であるリンパ球エンハンサー因子 (LEF)/T細胞因子 (Tcf)ファミリーとの複合体を形成する。 c-myc癌遺伝子は、Tcf標的遺伝子の1つである (He, T. C. et al. Identification of c-MYC as a target of the APC pathway (Science 281, 1509-1512 (1998). c-Myc RNA and protein are overexpressed in both early and late stages of colorectal tumorigenesis))。 ODCはc-Myc標的遺伝子である。
【0051】
APC機能の喪失は、ODC1の上方調節を引き起こす。 (Gerner, EW and Meyskens, FL, Jr., Polyamines and cancer: old molecules, new understanding, Nat. Rev. Cancer, 2004, 4, 781-792) また、過剰発現は結腸直腸癌で頻繁に観察されてきた(Hu, H. Y. et al. Ornithine decarboxylase gene is overexpressed in colorectal carcinoma, World J. Gastroenterol. 2005, 11, 2244-2248; Kitahara, O. et al. Alterations of gene expression during colorectal carcinogenesis revealed by cDNA microarrays after laser-capture microdissection of tumor tissues and normal epithelia; Cancer Res. 2001, 61, 3544-3549; Nemoto, T., Kubota, S., Ishida, H., Murata, N. and Hashimoto, D. Ornithine decarboxylase, mitogen-activated protein kinase and matrix metalloproteinase-2 expressions in human colon tumors. World J. Gastroenterol. 2005, 11, 3065-3069)。
【0052】
ODC1は、エンドスタチン抑制剤として作用して血管新生を促進する特性を有する (Nemoto, T., Hori, H., Yoshimoto, M., Seyama, Y. & Kubota, S. Overexpression of ornithine decarboxylase enhances endothelial proliferation by suppressing endostatin expression. Blood 2002, 99, 1478-1481)。
【0053】
ODC1とS-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ (ポリアミン生合成経路のもう1つの重要な酵素)のアデノウィルス・エンコーディング・アンチセンスRNAがCRC細胞株HT-29に感染すると、CCND1の下方調節と細胞周期停止が起きる。 さらに、βカテニンの核転座も阻害された (Gong, L, Jiang, C, Zhang, B, Hu, H, Wang, W, and Liu, X; Adenovirus-mediated Expression of Both Antisense Ornithine Decarboxylase and S-adenosylmethionine Decarboxylase Induces G(1) Arrest in HT-29 Cells, J Biochem. Mol. Biol, 2006, 39, 730-736)。 該アデノウィルスは、ヌードマウスに確立された腫瘍の腫瘍退縮も誘発した (Zhang, B, Liu, XX, Zhang, Y, Jiang, CY, Hu, HY, Gong, L, Liu, M, and Teng, QS; Polyamine depletion by ODC-AdoMetDC antisense adenovirus impairs human colorectal cancer growth and invasion in vitro and in vivo, 2006, J Gene Med, 8, 980-989)。
【0054】
ODC1の特異的かつ不可逆的阻害剤は2-ジフルオロメチルオルニチン (DMFO,エフロルニチン(Sanofi-Aventis))である。 これは、睡眠病 (トリパノソーマを原因とする)の治療薬として市販されており、また、脱毛クリームVaniqaの有効成分である。
癌に関しては、DMFOはすでに前臨床モデルに広範に用いられており、ポリアミンレベルの低減による有望な抗腫瘍効果を示している (Gerner, EW and Meyskens, FL, Jr.; Polyamines and cancer: old molecules, new understanding, Nat. Rev. Cancer, 2004, 4, 781-792)。 数種類の癌ですでに治験が終了しており、CRCでの治験が現在いくつか行われている。 しかし、これらの研究のほとんどは、特にCRC (腺腫様ポリープ)になりやすい患者に対する予防的な設定での、組み合わせによるアプローチである。 免疫原性ODCペプチドであるODC−001が先に特定されている (M. Diehl, PhD Thesis, University of Tubingen, 1998)。
【0055】
増殖性細胞核抗原 (PCNA)
PCNAは核の中に存在するもので、DNAポリメラーゼデルタの補因子である。 このエンコードされたタンパク質はホモトリマーとして作用し、DNA複製中のリーディング鎖合成のプロセッシビティの増加を助ける。 したがって、PCNAはあらゆる増殖性細胞、特に腫瘍細胞に発現するものであり、増殖を検知するためのマーカーとして用いられている。
【0056】
PCNA免疫組織化学分析により定義される腫瘍性および隣接の正常な粘膜での増殖指数は、結腸直腸癌患者の癌再発と低生存率の独立予測因子として周知である (al-Sheneber, IF, Shibata, HR, Sampalis, J, and Jothy, S; Prognostic significance of proliferating cell nuclear antigen expression in colorectal cancer, Cancer, 1993, 71, 1954-1959; Mayer, A, Takimoto, M, Fritz, E, Schellander, G, Kofler, K, and Ludwig, H; The prognostic significance of proliferating cell nuclear antigen, epidermal growth factor receptor, and mdr gene expression in colorectal cancer, Cancer, 1993, 71, 2454-2460; Nakamura, T, Tabuchi, Y, Nakae, S, Ohno, M, and Saitoh, Y; Serum carcinoembryonic antigen levels and proliferating cell nuclear antigen labeling index for patients with colorectal carcinoma. Correlation with tumor progression and survival, Cancer, 1996, 77, 1741-1746)。
【0057】
DNAトポイソメラーゼII (TOP2)
TOP2AおよびTOP2Bは、転座が起きているDNAのトポロジーを制御し改変する酵素であるDNAトポイソメラーゼのイソフォームをコードする。 この核酵素は、染色体凝縮、染色分体分離、およびDNAの転座と複製の間に生じるねじり応力の軽減のようなプロセスに関与する。2本鎖DNAの2本のストランドの過渡破壊と再結合を触媒するので、それらのストランドは互いに通り抜けができるようになり、したがって、DNAのトポロジーを改変することができる。この酵素の2つのイソフォームは、遺伝子複製イベントの可能な産物として存在する。α形をコードする遺伝子は染色体17に局在しており、β遺伝子は染色体3に局在している。
【0058】
TOP2Aは、いくつかの抗癌剤の標的であり、この遺伝子での様々な変異は薬品耐性の進行と関連している。
【0059】
TOP2A遺伝子は、乳癌で最もよく増幅される癌遺伝子であるHER-2癌遺伝子に隣接し、染色体位置17q12-q21にある遺伝子であり、HER-2の増幅を伴う原発性乳房腫瘍のほぼ90%で同等の頻度で増幅もしくは削除される (Jarvinen, TA and Liu, ET; Topoisomerase IIalpha gene (TOP2A) amplification and deletion in cancer--more common than anticipated, Cytopathology, 14, 309-313)。 さらに、TOP2Aの増幅は他の癌でも報告されている。 最近の実験的な数多くの大規模なマルチセンター治験により、TOP2Aの増幅 (および/または削除)が、一般に使用される細胞傷害性薬すなわちトポイソメラーゼII阻害剤 (アントラサイクリン等)に対する過敏症または耐性の両方の主原因である可能性があり、 Kellner, U, Sehested, M, Jensen, PB, Gieseler, F, and Rudolph, P; Culprit and victim -- DNA topoisomerase II, Lancet Oncol., 2002, 3, 235-243)、それはTOP2A遺伝子座での特定の遺伝子異常に依存することが示されている (Jarvinen, TA and Liu, ET; Simultaneous amplification of HER-2 (ERBB2) and topoisomerase IIalpha (TOP2A) genes--molecular basis for combination chemotherapy in cancer, Curr.Cancer Drug Targets., 2006, 6, 579-602)。
【0060】
TOP2Aなしには、DNAの複製も細胞分裂も不可能である。 このため、TOP2Aは、細胞殺傷の正確なメカニズムが未解明であるにもかかわらず、多くの抗腫瘍療法レジメンの主要な標的となっている(Kellner, U, Sehested, M, Jensen, PB, Gieseler, F, and Rudolph, P; Culprit and victim -- DNA topoisomerase II, Lancet Oncol., 2002, 3, 235-243)。 このアプローチの成功は自然耐性の進行によって制限され、また、薬品に誘発されるDNAの損傷が悪性度を高める可能性がある。
【0061】
TOP-001の第2の潜在タンパク質源であるTOP2Bは、腫瘍が頻繁に増幅する染色体部位としては知られていない3p24にあるため、癌研究でさほど注目されてこなかった。 しかし、TOP2BはTOP2Aに類似した一次構造であり、ほぼ同一の触媒特性を有する (Leontiou, C, Lightowlers, R, Lakey, JH, and Austin, CA; Kinetic analysis of human topoisomerase IIalpha and beta DNA binding by surface plasmon resonance, FEBS Lett., 2003, 554, 206-210)。 さらに別の研究で、両方のイソフォームが相互置換可能であることも示されている (Sakaguchi, A and Kikuchi, A; Functional compatibility between isoform alpha and beta of type II DNA topoisomerase, J Cell Sci., 2004, 117, 1047-1054)。
【0062】
本発明において、その発明者らは、HLAクラスI分子に十分結合する腫瘍関連ペプチドに、ヒトCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球が媒介する免疫応答を引き出す能力があることを裏付ける決定的証拠を提供し、かつ、本請求項のペプチドが、腫瘍細胞ペプチドームの選択的ペプチドに対してヒト免疫系の応答を起動するために適していることを実証する。
【0063】
同様に、HLAクラスII分子に十分結合する腫瘍関連ペプチド、特にヒトゲノムのHLA DR座によって遺伝的にエンコードされるHLAクラスIIの対立遺伝子に、ヒトCD4陽性T細胞により媒介される免疫応答を引き出す能力があることがわかった。 CD4陽性T細胞がヒト末梢血から単離されたことは、腫瘍細胞ペプチドームの選択的ペプチドに対するヒト免疫系のT細胞応答を起動するために該請求項のペプチドが適していることを実証している。 以下にペプチドTGFBI-004を例に挙げて説明するように、このHLA-DRと結合する腫瘍関連ペプチドはCD4陽性T細胞によって認識されることがわかった。
【0064】
ペプチドは化学合成が可能であり、製薬の有効医薬成分として使用可能であるので、本発明が提供する該ペプチドは免疫療法、好ましくは癌の免疫療法に使用可能である。
【0065】
別の態様において、該医薬組成物は、配列番号8〜配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むもしくは配列番号8〜配列番号15に少なくとも80%相同性のある変異アミノ酸配列を含む少なくとも1つの追加的ペプチド、もしくは配列番号8〜配列番号15またはその変異アミノ酸配列をコードする核酸を含むポリヌクレオチドをさらに有する。 配列番号8〜配列番号13および15のペプチドは、先に特定済みの免疫原性ペプチドであり、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子に結合する (表2を参照)。
【0066】
これらのペプチドは腎臓細胞癌 (RCC)患者の生体内でT細胞応答を引き出すことが示されている (H. Singh-Jasuja, S. Walter, T. Weinschenk, A. Mayer, P. Y. Dietrich, M. Staehler, A. Stenzl, S. Stevanovic, H. Rammensee, J. Frisch; Correlation of T-cell response, clinical activity and regulatory T-cell levels in renal cell carcinoma patients treated with IMA901, a novel multi-peptide vaccine; ASCO Meeting 2007 Poster # 3017; M. Staehler, A. Stenzl, P. Y. Dietrich, T. Eisen, A. Haferkamp, J. Beck, A. Mayer, S. Walter, H. Singh, J. Frisch, C. G. Stief; An open label study to evaluate the safety and immunogenicity of the peptide based cancer vaccine IMA901, ASCO meeting 2007; Poster # 3017)。 親タンパク質はRCCだけでなくCRCおよび他のタイプの癌でも過剰発現するので、これらのペプチドは他の腫瘍型を治療するワクチン、特に抗CRCワクチンにも有用である。
【0067】
表2: 本発明の組成物において有用なその他の免疫原性ペプチド
【表2】
【0068】
癌胎児性抗原に関係した細胞接着分子5
癌胎児性抗原(CEA = CEACAM5)は、180kDaで激しくグリコシル化された膜タンパク質であり、N末端 Ig V様の部位とC末端部位の間に挟まれた3つのC2 Ig様の反復単位から成り、グリコホスファチジルイノシトル結合部位を含む (Hegde, P, Qi, R, Gaspard, R, Abernathy, K, Dharap, S, Earle-Hughes, J, Gay, C, Nwokekeh, NU, Chen, T, Saeed, AI, Sharov, V, Lee, NH, Yeatman, TJ, and Quackenbush, J; Identification of tumour markers in models of human colorectal cancer using a 19,200-element complementary DNA microarray, Cancer Res., 2001, 61, 7792-7797)。
【0069】
癌胎児性抗原であるCEAは、胎児発育中に発現するが、低レベルでは成人の胃腸器官上皮にも発現する。 しかし、CEAは、胃腸器官癌、結腸直腸癌、膵臓癌の90%、非小細胞肺癌細胞の70%、乳癌の50%と、ヒト腫瘍に高い割合で過剰発現する(Thompson, JA, Grunert, F, and Zimmermann, W; Carcinoembryonic antigen gene family: molecular biology and clinical perspectives, J Clin Lab Anal., 5, 344-366 2005)。 CEAは腫瘍細胞で高発現し血清に分泌するため、腫瘍マーカーとして広く用いられてきた(Sikorska, H, Shuster, J, and Gold, P; Clinical applications of carcinoembryonic antigen, Cancer Detect.Prev., 12, 321-355 1988) また、結腸直腸癌監視の標準血清マーカーである(Locker, GY, Hamilton, S, Harris, J, Jessup, JM, Kemeny, N, Macdonald, JS, Somerfield, MR, Hayes, DF, and Bast, RC, Jr.; ASCO 2006 update of recommendations for the use of tumour markers in gastrointestinal cancer, J Clin Oncol, 24, 5313-5327, 2006)。
【0070】
CEAは腫瘍細胞で過剰発現するにもかかわらず、癌患者はこの抗原に対する免疫応答を通常示さない(Orefice, S, Fossati, G, Pietrojusti, E, and Bonfanti, G; Delayed cutaneous hypersensitivity reaction to carcinoembryonic antigen in cancer patients, Tumouri, 1982, 68, 473-475,)。 通常、CEAは身体に低レベルで発現しているので、免疫系はCEAに対して耐性を得るのが普通である。 しかし、一連のワクチン治験で、CEAの免疫原性が実証された (Sarobe, P, Huarte, E, Lasarte, JJ, and Borras-Cuesta, F; Carcinoembryonic antigen as a target to induce anti-tumour immune responses, Curr. Cancer Drug Targets., 2004, 4, 443-454)。 特に、結腸直腸癌 (CRC)で顕著であった (Mosolits, S, Ullenhag, G, and Mellstedt, H; Therapeutic vaccination in patients with gastrointestinal malignancies.A review of immunological and clinical results, Ann.Oncol., 2005, 16, 847-862)。 また、CEAは、この腫瘍型で試された中で最大数のワクチンプラットフォームを持つ腫瘍関連抗原 (TAA)である (von Mehren, M; Colorectal cancer vaccines: what we know and what we don't yet know, Semin. Oncol., 2005, 32, 76-84)。
【0071】
CEAのいくつかの細胞傷害性およびヘルパーT細胞エピトープの記述があり (Crosti, M, Longhi, R, Consogno, G, Melloni, G, Zannini, P, and Protti, MP; Identification of novel subdominant epitopes on the carcinoembryonic antigen recognized by CD4+ T-cells of lung cancer patients, J Immunol., 2006, 176, 5093-5099; Novellino, L, Castelli, C, and Parmiani, G; A listing of human tumour antigens recognized by T-cells: March 2004 update, Cancer Immunol.Immunother., 2004, 54, 187-207; Ruiz, M, Kobayashi, H, Lasarte, JJ, Prieto, J, Borras-Cuesta, F, Celis, E, and Sarobe, P; Identification and characterization of a T-helper peptide from carcinoembryonic antigen, Clin Cancer Res., 2004, 10, 2860-2867)、 CRCに対しペプチドを使用した様々なワクチン接種治験が可能となった (Babatz, J, Rollig, C, Lobel, B, Folprecht, G, Haack, M, Gunther, H, Kohne, CH, Ehninger, G, Schmitz, M, and Bornhauser, M; Induction of cellular immune responses against carcinoembryonic antigen in patients with metastatic tumours after vaccination with altered peptide ligand-loaded dendritic cells, Cancer Immunol.Immunother., 2006, 55, 268-276; Fong, L, Hou, Y, Rivas, A, Benike, C, Yuen, A, Fisher, GA, Davis, MM, and Engleman, EG; Altered peptide ligand vaccination with Flt3 ligand expanded dendritic cells for tumour immunotherapy, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 2001, 98, 8809-8814; Liu, KJ, Wang, CC, Chen, LT, Cheng, AL, Lin, DT, Wu, YC, Yu, WL, Hung, YM, Yang, HY, Juang, SH, and Whang-Peng, J; Generation of carcinoembryonic antigen (CEA)-specific T-cell responses in HLA-A*0201 and HLA-A*2402 late-stage colorectal cancer patients after vaccination with dendritic cells loaded with CEA peptides, Clin Cancer Res., 2004, 10, 2645-2651; Matsuda, K, Tsunoda, T, Tanaka, H, Umano, Y, Tanimura, H, Nukaya, I, Takesako, K, and Yamaue, H; Enhancement of cytotoxic T-lymphocyte responses in patients with gastrointestinal malignancies following vaccination with CEA peptide-pulsed dendritic cells, Cancer Immunol. Immunother., 2004, 53, 609-616; Ueda, Y, Itoh, T, Nukaya, I, Kawashima, I, Okugawa, K, Yano, Y, Yamamoto, Y, Naitoh, K, Shimizu, K, Imura, K, Fuji, N, Fujiwara, H, Ochiai, T, Itoi, H, Sonoyama, T, Hagiwara, A, Takesako, K, and Yamagishi, H; Dendritic cell-based immunotherapy of cancer with carcinoembryonic antigen-derived, HLA-A24-restricted CTL epitope: Clinical outcomes of 18 patients with metastatic gastrointestinal or lung adenocarcinomas, Int. J Oncol., 2004, 24, 909-917; Weihrauch, MR, Ansen, S, Jurkiewicz, E, Geisen, C, Xia, Z, Anderson, KS, Gracien, E, Schmidt, M, Wittig, B, Diehl, V, Wolf, J, Bohlen, H, and Nadler, LM; Phase I/II combined chemoimmunotherapy with carcinoembryonic antigen-derived HLA-A2-restricted CAP-1 peptide and irinotecan, 5-fluorouracil, and leucovorin in patients with primary metastatic colorectal cancer, Clin Cancer Res., 2005, 11, 5993-6001)。これまでに行われたこれらおよび他の治験は、CEAワクチン接種の安全性と、この抗原に対する免疫応答の誘発の証拠を示している (von Mehren, M; Colorectal cancer vaccines: what we know and what we don't yet know, Semin.Oncol., 2005, 32, 76-84)。
【0072】
すでに、CEA-006の変異形は公開されている (Ruiz, M, Kobayashi, H, Lasarte, JJ, Prieto, J, Borras-Cuesta, F, Celis, E, and Sarobe, P; Identification and characterization of a T-helper peptide from carcinoembryonic antigen, Clin Cancer Res., 2004, 10, 2860-2867)。 CEA-005は、単一のアミノ酸交換がある変異形であり、中枢性免疫耐性を克服することが報告されている (Zaremba, S, Barzaga, E, Zhu, M, Soares, N, Tsang, KY, and Schlom, J; Identification of an enhancer agonist cytotoxic T lymphocyte peptide from human carcinoembryonic antigen, Cancer Res., 1997, 57, 4570-4577)。
【0073】
形質転換成長因子、β誘発性 (TGFBI)
TGFBIは、TGFβ誘発性遺伝子としてヒトの肺腺癌細胞株で最初に特定された。 分泌された細胞外基質タンパク質のエンコードをするもので、細胞接着と細胞外基質組成に作用すると考えられている。
【0074】
TGFBIは、結腸直腸癌で最も激しく発現上昇する遺伝子の1つであることが示されており、腺腫にも高レベルで発現する。 定量PCRの結果は、未精製腫瘍細胞と精製腫瘍上皮細胞の両方に高い上昇を示した。 したがって、in situのハイブリダイゼーション実験では、TGFBIが間質および上皮のどちらのコンパートメントでも多くの細胞型で発現することが明らかになった (Buckhaults, P, Rago, C, St, CB, Romans, KE, Saha, S, Zhang, L, Vogelstein, B, and Kinzler, KW; Secreted and cell surface genes expressed in benign and malignant colorectal tumours, Cancer Res., 2001, 61, 6996-7001)。
【0075】
結腸直腸癌の遺伝子発現を調査する研究のメタ分析では、TGFBIは、 (TGFBIの4つの研究で)繰り返し上方調節されると報告されているわずか9つの遺伝子の1つとして特定されている (Shih, W, Chetty, R, and Tsao, MS; Expression profiling by microarrays in colorectal cancer, Oncol.Rep., 2005, 13, 517-524)。
【0076】
ヒトの膵臓組織で、膵臓癌のTGFBI mRNAレベルは、正常な対照組織に比べ32.4倍増加した。 in situハイブリダイゼーション分析により、TGFBI mRNAは主に膵臓腫瘤内の癌細胞で発現することが明らかになった (Schneider, D, Kleeff, J, Berberat, PO, Zhu, Z, Korc, M, Friess, H, and Buchler, MW; Induction and expression of betaig-h3 in pancreatic cancer cells, Biochim.Biophys.Acta, 2002, 1588, 1-6)。
【0077】
TGFBIは血管形成促進遺伝子としてin vitroモデルで特定された。 加えて、いくつかの腫瘍にTGFBIの発現の劇的な強調が見られた。 TGFBIに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドがin vitroで遺伝子発現と上皮管形成の両方を遮断したことは、TGFBIが上皮細胞と基質の相互作用において重要な役割を果たしている可能性を示唆している (Aitkenhead, M, Wang, SJ, Nakatsu, MN, Mestas, J, Heard, C, and Hughes, CC; Identification of endothelial cell genes expressed in an in vitro model of angiogenesis: induction of ESM-1, (beta)ig-h3, and NrCAM, Microvasc. Res., 2002, 63, 159-171 )。
【0078】
ムチン1 (MUC1)
ムチンは高分子量の上皮糖タンパク質であり、トレオニン、セリン、プロリンの豊富なタンデムリピートペプチドにO-グリコシド結合したクラスター化されたオリゴ糖の含有量が高い。 ムチンは、構造的および機能的に異なる明確な2つのクラスに分けられる。 膜貫通ムチンと分泌型ゲル形成ムチンであり、MUC1は前者に属する。 結腸癌ムチンは、炭水化物の構造に違いがあり、診断および予後マーカーとして、また癌ワクチンの標的として研究されている。
【0079】
MUC1タンパク質の細胞外ドメインは、よく保存された20のアミノ酸リピートで作られており、実際の数は対立遺伝子によって異なり、25〜100である。 各タンデムリピートはグリコシル化潜在部位を5つ含み、トレオニンとセリンのダブレットの間に、様々な抗MUC1抗体により認識されるエピトープを含む免疫優勢部位がある (Taylor-Papadimitriou, J, Burchell, J, Miles, DW, and Dalziel, M; MUC1 and cancer, Biochim. Biophys. Acta, 1999, 1455, 301-313)。
【0080】
他のほとんどの上皮に比べ、結腸のMUC1はより激しくグリコシル化されているため、MUC1特異的抗体による免疫組織化学的染色に必要なMUC1タンパク質がマスクされる。 結腸直腸腺癌ではMUC1のグリコシル化がより少ないので、免疫検出が可能である。 異常にグリコシル化されたMUC1は新しい結合特性を与え、ある程度の分子特異性を持って接着分子との結合の媒介と遮断を同時に行うことができるので、腫瘍細胞の転移において二重の役割を果たすことができる (McDermott, KM, Crocker, PR, Harris, A, Burdick, MD, Hinoda, Y, Hayashi, T, Imai, K, and Hollingsworth, MA; Overexpression of MUC1 reconfigures the binding properties of tumor cells, Int. J Cancer, 2001, 94, 783-791)。
【0081】
免疫学的に検出されるMUC1が結腸癌で発現を増すことは予後の悪化と相関しており (Byrd, JC and Bresalier, RS; Mucins and mucin binding proteins in colorectal cancer, Cancer Metastasis Rev., 2004, 23, 77-99)、このことはMUC1の上方調節がCRCの進行に関与している可能性を示唆している。 転移のない結腸癌に比べ、転移のある結腸癌はMUC1を強く発現し (Nakamori, S, Ota, DM, Cleary, KR, Shirotani, K, and Irimura, T; MUC1 mucin expression as a marker of progression and metastasis of human colorectal carcinoma, Gastroenterology, 1994, 106, 353-361)、また、1つの研究で、肝臓が関与する全ての結腸直腸癌でMUC1の染色は陽性であった(Matsuda, K, Masaki, T, Watanabe, T, Kitayama, J, Nagawa, H, Muto, T, and Ajioka, Y; Clinical significance of MUC1 and MUC2 mucin and p53 protein expression in colorectal carcinoma, Jpn. J Clin Oncol., 2000, 30, 89-94)。 結腸直腸癌患者462人を対象とした最近の研究では、MUC1の発現が貧しい予後の独立予後マーカーとなることが発見された (Duncan, TJ, Watson, NF, Al-Attar, AH, Scholefield, JH, and Durrant, LG; The role of MUC1 and MUC3 in the biology and prognosis of colorectal cancer, World J Surg. Oncol, 2007, 5, 31)。
【0082】
CRCでの抗MUC1循環抗体には病態生理学的重要性がある。 抗MUC1抗体は、健康な被験者31人中5人 (16.1%)に検出され、結腸直腸癌患者56人中27人 (48.2%)に検出された (Nakamura, H, Hinoda, Y, Nakagawa, N, Makiguchi, Y, Itoh, F, Endo, T, and Imai, K; Detection of circulating anti-MUC1 mucin core protein antibodies in patients with colorectal cancer, J Gastroenterol., 1998, 33, 354-361)。
【0083】
抗体標的としての役割のほかに、MUC1は細胞傷害性T細胞の標的としても十分に確立されている。 いくつかのレポートは、卵巣腫、乳房腫、膵臓腫、多発性骨髄腫からの細胞傷害性のMHC非拘束T細胞が、タンデムリピートに局在するMUC1タンパク質コアのエピトープを認識できることを実証した (Apostolopoulos, V and McKenzie, IF; Cellular mucins: targets for immunotherapy, Crit Rev. Immunol., 1994, 14, 293-309; Finn, OJ, Jerome, KR, Henderson, RA, Pecher, G, Domenech, N, Magarian-Blander, J, and Barratt-Boyes, SM; MUC1 epithelial tumor mucin-based immunity and cancer vaccines, Immunol. Rev., 1995, 145, 61-89; Barnd, DL, Lan, MS, Metzgar, RS, and Finn, OJ; Specific, major histocompatibility complex-unrestricted recognition of tumor-associated mucins by human cytotoxic T cells, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 1989, 86, 7159-7163; Takahashi, T, Makiguchi, Y, Hinoda, Y, Kakiuchi, H, Nakagawa, N, Imai, K, and Yachi, A; Expression of MUC1 on myeloma cells and induction of HLA-unrestricted CTL against MUC1 from a multiple myeloma patient, J. Immunol., 1994, 153, 2102-2109; Noto, H, Takahashi, T, Makiguchi, Y, Hayashi, T, Hinoda, Y, and Imai, K; Cytotoxic T lymphocytes derived from bone marrow mononuclear cells of multiple myeloma patients recognize an underglycosylated form of MUC1 mucin, Int. Immunol., 1997, 9, 791-798)。 しかし、MUC1タンパク質に由来するHLA-A*02拘束T細胞エピトープも特定された (Apostolopoulos, V, Karanikas, V, Haurum, JS, and McKenzie, IF; Induction of HLA-A2-restricted CTLs to the mucin 1 human breast cancer antigen, J Immunol., 1997, 159, 5211-5218; Brossart, P, Heinrich, KS, Stuhler, G, Behnke, L, Reichardt, VL, Stevanovic, S, Muhm, A, Rammensee, HG, Kanz, L, and Brugger, W; Identification of HLA-A2-restricted T-cell epitopes derived from the MUC1 tumor antigen for broadly applicable vaccine therapies, Blood, 1999, 93, 4309-4317)。 それらのペプチドの1つはMUC-001である。これは、MUC1のタンデムリピート部位に由来する。 これらのMUC1ペプチドを使い、進行性乳癌または卵巣癌患者にペプチドパルス樹状細胞のワクチン接種を行い、生体内での細胞傷害性Tリンパ球応答の誘発に成功した(Brossart, P, Wirths, S, Stuhler, G, Reichardt, VL, Kanz, L, and Brugger, W; Induction of cytotoxic T-lymphocyte responses in vivo after vaccinations with peptide-pulsed dendritic cells, Blood, 2000, 96, 3102-3108; Wierecky, J, Mueller, M, and Brossart, P; Dendritic cell-based cancer immunotherapy targeting MUC1, Cancer Immunol. Immunother., 2005 Apr. 28: 288-94)。 さらに、そのようなワクチン接種は、腎細胞癌患者での臨床応答の誘発にも成功した (Wierecky, J, Muller, MR, Wirths, S, Halder-Oehler, E, Dorfel, D, Schmidt, SM, Hantschel, M, Brugger, W, Schroder, S, Horger, MS, Kanz, L, and Brossart, P; Immunologic and clinical responses after vaccinations with peptide-pulsed dendritic cells in metastatic renal cancer patients, Cancer Res., 2006, 66, 5910-5918)。
【0084】
結腸直腸癌での免疫反応性MUC1の上方調節は、ほとんどがmRNA過剰発現に基づくものではなく、むしろ、グリコシル化の低減によって、特にMUC1のタンデムリピート部位で抗体認識のためのエピトープがむき出されることによるものであった。 このグリコシル化の低減は、同時に、腫瘍細胞での改変した抗原処理 (正常細胞ではグリコシル化によって防がれている)によるT細胞エピトープの生成の機会を提供する。 このメカニズムによって、mRNAの過剰発現が強くないにもかかわらず腫瘍関連T細胞エピトープとして優れたMUC-001の特徴が解明される可能性がある。 グリコシル化の改変が実際に抗原処理に影響する可能性を裏付ける一部の証拠は、特異的に腫瘍糖型を認識する受容体を介して実際に結腸直腸癌でのMUC1のグリコシル化の変化が検出可能であるという最近の観察によるものである (Saeland, E, van Vliet, SJ, Backstrom, M, van, dB, V, Geijtenbeek, TB, Meijer, GA, and van, KY; 2006, The C-type lectin MGL expressed by dendritic cells detects glycan changes on MUC1 in colon carcinoma, Cancer Immunol.Immunother., 2007, 56(8): 1225-36)。 抗原提示細胞による腫瘍糖型の特異的摂取および処理は、自然の状態で (免疫付与をせずに)乳癌患者 (Rentzsch, C, Kayser, S, Stumm, S, Watermann, I, Walter, S, Stevanovic, S, Wallwiener, D, and Guckel, B; Evaluation of pre-existent immunity in patients with primary breast cancer: molecular and cellular assays to quantify antigen-specific T lymphocytes in peripheral blood mononuclear cells, Clin Cancer Res., 2003, 9, 4376-4386) および結腸直腸癌患者 (Dittmann, J, Keller-Matschke, K, Weinschenk, T, Kratt, T, Heck, T, Becker, HD, Stevanovic, S, Rammensee, HG, and Gouttefangeas, C; CD8+ T-cell response against MUC1-derived peptides in gastrointestinal cancer survivors, Cancer Immunol. Immunother., 2005, 54, 750-758)でMUC-001特異性のT細胞が観察されたという事実の説明にもなり得る。 これらの患者で、自己免疫効果は報告されていない。 このことは、特異的T細胞を誘発する腫瘍関連ペプチドとしてのMUC-001の天然の役割を実証し、かつ、mRNAレベルでMUC1抗原の過剰発現が検出できなくともMUC-001の投与が安全と見なされる可能性を示唆する。
【0085】
Metプロトオンコジーン (肝細胞成長因子受容体) (c-Met)
METプロトオンコジーンタンパク質産物は、肝細胞成長因子受容体である。 細胞の増殖、運動性、接着、浸潤に関わるシグナル伝達経路を活性化するチロシンキナーゼドメインを含有する (Trusolino, L and Comoglio, PM; Scatter-factor and semaphorin receptors: cell signalling for invasive growth, Nat. Rev. Cancer, 2002, 2, 289-300)。
【0086】
様々な腫瘍型での研究は、HGF/c-Met自己分泌ループ、活性点変異、TPR-Met融合タンパク質、およびc-Metからαおよびβ鎖への開裂の失敗を含む、c-Met活性化のいくつかのメカニズムを実証した (Di Renzo, MF, Olivero, M, Martone, T, Maffe, A, Maggiora, P, Stefani, AD, Valente, G, Giordano, S, Cortesina, G, and Comoglio, PM; Somatic mutations of the MET oncogene are selected during metastatic spread of human HNSC carcinomas, Oncogene, 2000, 19, 1547-1555; Ebert, M, Yokoyama, M, Friess, H, Buchler, MW, and Korc, M; Coexpression of the c-met proto-oncogene and hepatocyte growth factor in human pancreatic cancer, Cancer Res., 1994, 54, 5775-5778; Mondino, A, Giordano, S, and Comoglio, PM; Defective posttranslational processing activates the tyrosine kinase encoded by the MET proto-oncogene (hepatocyte growth factor receptor), Mol. Cell Biol., 1991, 11, 6084-6092; Olivero, M, Valente, G, Bardelli, A, Longati, P, Ferrero, N, Cracco, C, Terrone, C, Rocca-Rossetti, S, Comoglio, PM, and Di Renzo, MF; Novel mutation in the ATP-binding site of the MET oncogene tyrosine kinase in a HPRCC family, Int. J Cancer, 1999, 82, 640-643; Park, M, Dean, M, Cooper, CS, Schmidt, M, O'Brien, SJ, Blair, DG, and Vande Woude, GF; Mechanism of met oncogene activation, Cell, 1986, 45, 895-904; Park, WS, Dong, SM, Kim, SY, Na, EY, Shin, MS, Pi, JH, Kim, BJ, Bae, JH, Hong, YK, Lee, KS, Lee, SH, Yoo, NJ, Jang, JJ, Pack, S, Zhuang, Z, Schmidt, L, Zbar, B, and Lee, JY; 1999, Somatic mutations in the kinase domain of the Met/hepatocyte growth factor receptor gene in childhood hepatocellular carcinomas, Cancer Res., 59, 307-310; Rahimi, N, Tremblay, E, McAdam, L, Park, M, Schwall, R, and Elliott, B; 1996, Identification of a hepatocyte growth factor autocrine loop in a murine mammary carcinoma, Cell Growth Differ., 7, 263-270;Schmidt, L, Duh, FM, Chen, F, Kishida, T, Glenn, G, Choyke, P, Scherer, SW, Zhuang, Z, Lubensky, I, Dean, M, Allikmets, R, Chidambaram, A, Bergerheim, UR, Feltis, JT, Casadevall, C, Zamarron, A, Bernues, M, Richard, S, Lips, CJ, Walther, MM, Tsui, LC, Geil, L, Orcutt, ML, Stackhouse, T, Lipan, J, Slife, L, Brauch, H, Decker, J, Niehans, G, Hughson, MD, Moch, H, Storkel, S, Lerman, MI, Linehan, WM, and Zbar, B; 1997, Germline and somatic mutations in the tyrosine kinase domain of the MET proto-oncogene in papillary renal carcinomas, Nat.Genet., 16, 68-73; Schmidt, L, Junker, K, Weirich, G, Glenn, G, Choyke, P, Lubensky, I, Zhuang, Z, Jeffers, M, Vande, WG, Neumann, H, Walther, M, Linehan, WM, and Zbar, B; 1998, Two North American families with hereditary papillary renal carcinoma and identical novel mutations in the MET proto-oncogene, Cancer Res., 58, 1719-1722)。 機構的には、c-Met過剰発現は発癌Ki-ras変異と協力して、生体内の結腸癌細胞の腫瘍原性を強化する (Long, IS, Han, K, Li, M, Shirasawa, S, Sasazuki, T, Johnston, M, and Tsao, MS; Met receptor overexpression and oncogenic Ki-ras mutation cooperate to enhance tumorigenicity of colon cancer cells in vivo, Mol.Cancer Res., 2003, 1, 393-401)。
【0087】
興味深いことに、METシグナルと、結腸癌で頻繁に上方調節されるWnt/βカテニン経路との相互作用の証拠がいくつかある。 METはプロスタグランジンE2 (PGE2)により活性化され得るもので、PGE2で活性されたc-Metはβカテニンと関連してそのチロシンリン酸化反応を増すことによって結腸癌細胞の浸潤を誘発する (Pai, R, Nakamura, T, Moon, WS, and Tarnawski, AS; Prostaglandins promote colon cancer cell invasion; signaling by cross-talk between two distinct growth factor receptors, FASEB J, 2003, 17, 1640-1647)。 最近、METとβカテニンの相互活性について説明され、結腸直腸腫瘍形成において重要な役割を果たすこれら2つの物質間のポジティブなフィードバックループが得られた (Rasola, A, Fassetta, M, De, BF, D'Alessandro, L, Gramaglia, D, Di Renzo, MF, and Comoglio, PM; A positive feedback loop between hepatocyte growth factor receptor and beta-catenin sustains colorectal cancer cell invasive growth, Oncogene, 2007, 26, 1078-1087)。
【0088】
原発CRC腫瘍でのmRNA発現レベル (n=36)は、早期ステージ浸潤および部分的転移の重要な予測マーカーであり、結腸癌のステージと直接相関する (Takeuchi, H, Bilchik, A, Saha, S, Turner, R, Wiese, D, Tanaka, M, Kuo, C, Wang, HJ, and Hoon, DS; c-MET expression level in primary colon cancer: a predictor of tumor invasion and lymph node metastases, Clin Cancer Res., 2003, 9, 1480-1488)。 130のCRC標本でのc-Met発現の別の分析で、原発CRCの69%に過剰発現 (T/N > 2.0)が見られ、血管浸潤を伴うCRC (P = 0.04)および進行ステージ (P = 0.04)のCRCに有意に高いc-Metレベルが示されたことは、ヒトのCRCの進行および転移におけるc-Metの役割を裏付けている (Zeng, Z, Weiser, MR, D'Alessio, M, Grace, A, Shia, J, and Paty, PB; Immunoblot analysis of c-Met expression in human colorectal cancer: overexpression is associated with advanced stage cancer, Clin Exp. Metastasis, 2004, 21, 409-417)。 別の研究では、隣接の正常粘膜に比べ結腸腺癌60例の69%に2倍以上、48%に10倍以上のc-Met mRNAの上昇が示された (Kammula, US, Kuntz, EJ, Francone, TD, Zeng, Z, Shia, J, Landmann, RG, Paty, PB, and Weiser, MR; Molecular co-expression of the c-Met oncogene and hepatocyte growth factor in primary colon cancer predicts tumor stage and clinical outcome, Cancer Lett., 2007, 248, 219-228)。 したがって、c-Metシグナルの上昇は、CRC早期ステージでよく発生するが、進行および転移ステージでは発現がさらに高まる。
【0089】
サイクリンD1(CCND1)
CCND1は、非常によく保存されるサイクリンファミリーに属する。サイクリンファミリーの特徴は、細胞周期全体を通してタンパク質量に劇的な周期性があることである。 サイクリンはCDKキナーゼの調節剤として機能する。 サイクリンによって異なる明確な発現と分解のパターンは、各分裂イベントの時間整合に寄与する。 このサイクリンは、細胞周期のG1/S遷移に必要な活性を提供するCDK4またはCDK6との複合体を形成し、また、それらの調節サブユニットとして機能する。 細胞周期の進行を改変するこの遺伝子の変異、増幅、過剰発現は、様々な腫瘍に頻繁に観察されており、腫瘍形成に寄与する可能性がある (Fu, M, Wang, C, LI, Z, Sakamaki, T, and Pestell, RG; Minireview: Cyclin D1: normal and abnormal functions, Endocrinology, 2004, 145, 5439-5447)。
【0090】
A/G共有の単一ヌクレオチド多型 (A870G)は、2つの特異なmRNAイソフォームaおよびbを生む。交互にスプライスされたイソフォームbは、肺癌、結腸癌、および他のタイプの癌を含む腫瘍の発生率の増加に関係する短縮タンパク質をコードする (Fu, M, Wang, C, LI, Z, Sakamaki, T, and Pestell, RG; Minireview: Cyclin D1: normal and abnormal functions, Endocrinology, 2004, 145, 5439-5447)。
【0091】
結腸直腸癌では、mRNAおよびタンパク質レベルでのCCND1の過剰発現は頻繁に記述されている (Sutter, T, Doi, S, Carnevale, KA, Arber, N, and Weinstein, IB; Expression of cyclins D1 and E in human colon adenocarcinomas, J Med, 1997, 28, 285-309; Mermelshtein, A, Gerson, A, Walfisch, S, Delgado, B, Shechter-Maor, G, Delgado, J, Fich, A, and Gheber, L; Expression of D-type cyclins in colon cancer and in cell lines from colon carcinomas, Br. J Cancer, 2005, 93, 338-345; Balcerczak, E, Pasz-Walczak, G, Kumor, P, Panczyk, M, Kordek, R, Wierzbicki, R, and Mirowski, M; Cyclin D1 protein and CCND1 gene expression in colorectal cancer, Eur.J Surg.Oncol., 2005, 31, 721-726; Bondi, J, Husdal, A, Bukholm, G, Nesland, JM, Bakka, A, and Bukholm, IR; Expression and gene amplification of primary (A, B1, D1, D3, and E) and secondary (C and H) cyclins in colon adenocarcinomas and correlation with patient outcome, J Clin Pathol., 2005, 58, 509-514; Perez, R, Wu, N, Klipfel, AA, and Beart, RW, Jr.; A better cell cycle target for gene therapy of colorectal cancer: cyclin G, J Gastrointest. Surg., 2003, 7, 884-889; Wong, NA, Morris, RG, McCondochie, A, Bader, S, Jodrell, DI, and Harrison, DJ; Cyclin D1 overexpression in colorectal carcinoma in vivo is dependent on beta-catenin protein dysregulation, but not k-ras mutation, J Pathol., 2002, 197, 128-135; McKay, JA, Douglas, JJ, Ross, VG, Curran, S, Murray, GI, Cassidy, J, and McLeod, HL; Cyclin D1 protein expression and gene polymorphism in colorectal cancer. Aberdeen Colorectal Initiative, Int.J Cancer, 2000, 88, 77-81; Bartkova, J, Lukas, J, Strauss, M, and Bartek, J; The PRAD-1/cyclin D1 oncogene product accumulates aberrantly in a subset of colorectal carcinomas, Int. J Cancer, 1994, 58, 568-573)。
【0092】
このことは、CCND1が結腸直腸癌で頻繁に上方調節されるβカテニンTCF/LEF経路の標的遺伝子であるという周知の事実によって説明できる (Shtutman, M, Zhurinsky, J, Simcha, I, Albanese, C, D'Amico, M, Pestell, R, and Ben-Ze'ev, A; The cyclin D1 gene is a target of the beta-catenin/LEF-1 pathway, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 1999, 96, 5522-5527; Tetsu, O and McCormick, F; Beta-catenin regulates expression of cyclin D1 in colon carcinoma cells, Nature, 1999, 398, 422-426)。
【0093】
CCND1の強発現は、高腫瘍グレード、転移、および生存率低下と関係づけられた (Balcerczak, E, Pasz-Walczak, G, Kumor, P, Panczyk, M, Kordek, R, Wierzbicki, R, and Mirowski, M; Cyclin D1 protein and CCND1 gene expression in colorectal cancer, Eur. J Surg. Oncol., 2005, 31, 721-726; Bahnassy, AA, Zekri, AR, El-Houssini, S, El-Shehaby, AM, Mahmoud, MR, Abdallah, S, and El-Serafi, M; Cyclin A and cyclin D1 as significant prognostic markers in colorectal cancer patients, BMC. Gastroenterol., 2004, 4, 22; McKay, JA, Douglas, JJ, Ross, VG, Curran, S, Murray, GI, Cassidy, J, and McLeod, HL; Cyclin D1 protein expression and gene polymorphism in colorectal cancer. Aberdeen Colorectal Initiative, Int. J Cancer, 2000, 88, 77-81; Maeda, K, Chung, Y, Kang, S, Ogawa, M, Onoda, N, Nishiguchi, Y, Ikehara, T, Nakata, B, Okuno, M, and Sowa, M; Cyclin D1 overexpression and prognosis in colorectal adenocarcinoma, Oncology, 1998, 55, 145-151)。
【0094】
マトリックスメタロペプチダーゼ7 (マトリリシン、子宮) (MMP7)
マトリックスメタロプロティナーゼ (MMP)は、構造的に関係する亜鉛依存型プロティナーゼを含む大きなファミリーであり、通常、細胞外基質の構成要素を分解する能力があるとされている。 腫瘍での発現増加を示す個々のMMPがすでに特定されており、ほとんどの腫瘍はMMP活性の強化を示している (Curran, S and Murray, GI; 1999, Matrix metalloproteinases in tumour invasion and metastasis, J Pathol., 189, 300-308; Curran, S and Murray, GI; 2000, Matrix metalloproteinases: molecular aspects of their roles in tumour invasion and metastasis, Eur.J Cancer, 36, 1621-1630)。
【0095】
基底膜および細胞外基質は悪性浸潤に対する2つの物理的障害であり、MMPによるこれらの分解は腫瘍の進行と転移拡散において重要な役割を果たす (Johnsen, M, Lund, LR, Romer, J, Almholt, K, and Dano, K; 1998, Cancer invasion and tissue remodeling: common themes in proteolytic matrix degradation, Curr.Opin.Cell Biol., 10, 667-671; Nelson, AR, Fingleton, B, Rothenberg, ML, and Matrisian, LM; 2000, Matrix metalloproteinases: biologic activity and clinical implications, J Clin Oncol., 18, 1135-1149; Wang, FQ, So, J, Reierstad, S, and Fishman, DA; 2005, Matrilysin (MMP-7) promotes invasion of ovarian cancer cells by activation of progelatinase, Int.J Cancer, 114, 19-31)。 この機能とは別に、腫瘍の発育と進行におけるMMPの関わり (アポトーシス、細胞増殖、細胞分化における役割を含む)が現在議論されている。 これらの機能は、MMPを媒介とした非基質タンパク質のタンパク質分解およびそれらの酵素活性とは別の作用と関係している (Egeblad, M and Werb, Z; 2002, New functions for the matrix metalloproteinases in cancer progression, Nat.Rev.Cancer, 2, 161-174; Leeman, MF, Curran, S, and Murray, GI; 2003, New insights into the roles of matrix metalloproteinases in colorectal cancer development and progression, J.Pathol., 201, 528-534)。
【0096】
最近の研究は、いくつかのマトリックスメタロプロティナーゼ、特にマトリリシン (MMP7)が、結腸直腸癌の発育に関わる特異な分子遺伝・シグナル伝達経路と相互作用することを示している。 具体的には、マトリリシンは結腸直腸腫瘍形成の早期ステージでβカテニンシグナル伝達経路によって活性化される (Brabletz, T, Jung, A, Dag, S, Hlubek, F, and Kirchner, T; 1999, beta-catenin regulates the expression of the matrix metalloproteinase-7 in human colorectal cancer, Am.J Pathol., 155, 1033-1038; Leeman, MF, Curran, S, and Murray, GI; 2003, New insights into the roles of matrix metalloproteinases in colorectal cancer development and progression, J.Pathol., 201, 528-534; Zucker, S and Vacirca, J; 2004, Role of matrix metalloproteinases (MMPs) in colorectal cancer, Cancer Metastasis Rev., 23, 101-117)。
【0097】
MMP7 は、良性および悪性の両方の結腸直腸腫瘍に過剰発現する。 (Ishikawa, T, Ichikawa, Y, Mitsuhashi, M, Momiyama, N, Chishima, T, Tanaka, K, Yamaoka, H, Miyazakic, K, Nagashima, Y, Akitaya, T, and Shimada, H; 1996, Matrilysin is associated with progression of colorectal tumor, Cancer Lett., 107, 5-10; McDonnell, S, Navre, M, Coffey, RJ, Jr., and Matrisian, LM; 1991, Expression and localization of the matrix metalloproteinase pump-1 (MMP-7) in human gastric and colon carcinomas, Mol.Carcinog., 4, 527-533; Miyazaki, K, Hattori, Y, Umenishi, F, Yasumitsu, H, and Umeda, M; 1990, Purification and characterization of extracellular matrix-degrading metalloproteinase, matrin (pump-1), secreted from human rectal carcinoma cell line, Cancer Res., 50, 7758-7764; Nagashima, Y, Hasegawa, S, Koshikawa, N, Taki, A, Ichikawa, Y, Kitamura, H, Misugi, K, Kihira, Y, Matuo, Y, Yasumitsu, H, and Miyazaki, K; 1997, Expression of matrilysin in vascular endothelial cells adjacent to matrilysin-producing tumors, Int.J Cancer, 72, 441-445; Newell, KJ, Witty, JP, Rodgers, WH, and Matrisian, LM; 1994, Expression and localization of matrix-degrading metalloproteinases during colorectal tumorigenesis, Mol.Carcinog., 10, 199-206; Yoshimoto, M, Itoh, F, Yamamoto, H, Hinoda, Y, Imai, K, and Yachi, A; 1993, Expression of MMP-7(PUMP-1) mRNA in human colorectal cancers, Int.J Cancer, 54, 614-618)。 MMP7は、腫瘍細胞によって実際に分泌される数少ないMMPの1つである (Overall, CM and Kleifeld, O; 2006, Tumour microenvironment - opinion: validating matrix metalloproteinases as drug targets and anti-targets for cancer therapy, Nat.Rev.Cancer, 6, 227-239)。さらに、MMP7 mRNA発現レベルは、CRCの進行段階と相関する (Ishikawa, T, Ichikawa, Y, Mitsuhashi, M, Momiyama, N, Chishima, T, Tanaka, K, Yamaoka, H, Miyazakic, K, Nagashima, Y, Akitaya, T, and Shimada, H; 1996, Matrilysin is associated with progression of colorectal tumor, Cancer Lett., 107, 5-10; Mori, M, Barnard, GF, Mimori, K, Ueo, H, Akiyoshi, T, and Sugimachi, K; 1995, Overexpression of matrix metalloproteinase-7 mRNA in human colon carcinomas, Cancer, 75, 1516-1519)。 MMP7はCRCの転移においても重要な役割を果たす (Adachi, Y, Yamamoto, H, Itoh, F, Hinoda, Y, Okada, Y, and Imai, K; 1999, Contribution of matrilysin (MMP-7) to the metastatic pathway of human colorectal cancers, Gut, 45, 252-258; Mori, M, Barnard, GF, Mimori, K, Ueo, H, Akiyoshi, T, and Sugimachi, K; 1995, Overexpression of matrix metalloproteinase-7 mRNA in human colon carcinomas, Cancer, 75, 1516-1519)。
【0098】
高MMP7血清レベルは、予後の貧しい進行性結腸直腸癌患者 (Maurel, J, Nadal, C, Garcia-Albeniz, X, Gallego, R, Carcereny, E, Almendro, V, Marmol, M, Gallardo, E, Maria, AJ, Longaron, R, Martinez-Fernandez, A, Molina, R, Castells, A, and Gascon, P; 2007, Serum matrix metalloproteinase 7 levels identifies poor prognosis advanced colorectal cancer patients, Int.J Cancer, Published Online: 8 May 2007 )およびCRC患者での過剰発現と関連付けられているほか、生存率の低減とも関連付けられており、腫細胞の開裂Fasによる免疫学的監視からの逃避を促進すると言われている (Wang, WS, Chen, PM, Wang, HS, Liang, WY, and Su, Y; 2006, Matrix metalloproteinase-7 increases resistance to Fas-mediated apoptosis and is a poor prognostic factor of patients with colorectal carcinoma, Carcinogenesis, 27, 1113-1120)。
【0099】
本発明のタンパク質は、様々なタイプの癌において、腫瘍特異的免疫応答の標的となる可能性がある。
【0100】
B型肝炎ウィルスコア抗原ペプチドHBV-001は、内因性ヒト腫瘍関連抗原に由来するものではなく、B型肝炎ウィルスコア抗原に由来する。 第1に、それはTUMAPによって誘発されるT細胞応答の強度の定量的比較を可能にするので、抗腫瘍応答を引き出す能力に関する重要な結論を可能にする。 第2に、患者にT細胞応答が欠如している場合に、重要な正の対照として機能する。 そして第3に、患者の免疫能力ステータスについての結論も可能にする。
【0101】
B型肝炎ウィルス (HBV)感染は、肝臓病の原因として最も多いものの1つであり、世界中で約3億5千万人の人が感染している (Rehermann, B and Nascimbeni, M; Immunology of hepatitis B virus and hepatitis C virus infection, Nat.Rev.Immunol., 2005, 5, 215-229)。 容易に水平感染も垂直感染もし、肝硬変および肝細胞癌に至る場合のある慢性病の可能性を与えるHBVは、世界の多くの国の公衆衛生制度に大きな影響を与えている。 HBVゲノムは、(Previsani, N and Lavanchy, D; 2002, Hepatitis B, (Epidemic and Pandemic Alert and Response, World Health Organization, Geneva, 2002)) 部分的な環状二本鎖DNAを有する。 HBVゲノムは、コアタンパク質HBc および他のタンパク質と共にHBVビリオンに凝集して、脂質と表面タンパク質ファミリーHBを含む外側の包み (外膜タンパク質とも呼ばれる)に取り囲まれたヌクレオカプシドを形成している。 HBc およびHBsに関連する抗原決定基は、各々HbcAgおよびHbsAgである。 これらの抗原は血清学的応答すなわち患者の血液における抗体応答に関連し、HBV感染の診断にとり臨床上最も有用な抗原抗体システムに含まれる。 HBcは、HBV感染の前歴がない全ての人にとり新規の外来抗原となる。 免疫原性ペプチドはこの抗原で周知であるので、 (Bertoletti, A, Chisari, FV, Penna, A, Guilhot, S, Galati, L, Missale, G, Fowler, P, Schlicht, HJ, Vitiello, A, Chesnut, RC, and .; 1993, Definition of a minimal optimal cytotoxic T-cell epitope within the hepatitis B virus nucleocapsid protein, J.Virol., 67, 2376-2380;Livingston, BD, Crimi, C, Grey, H, Ishioka, G, Chisari, FV, Fikes, J, Grey, H, Chesnut, RW, and Sette, A; 1997, The hepatitis B virus-specific CTL responses induced in humans by lipopeptide vaccination are comparable to those elicited by acute viral infection, J.Immunol., 159, 1383-1392)IMA内のHbcAgからの10個のアミノ酸からなるペプチドを選択した。 次に、HBcペプチドに特異なCTLを誘導して患者の免疫能力マーカーとして用い、ワクチン接種に成功した。
【0102】
この医薬組成物は、効果を増すための追加的ペプチドおよび/または賦形剤をさらに含むが、これについて以下にさらに説明する。
【0103】
本発明者らが言う、与えられたアミノ酸配列の「変異アミノ酸配列」とは、例えば、1または2のアミノ酸残基の側鎖が改変しており (例えば、それらが別の天然生成アミノ酸残基の側鎖または他の何らかの側鎖で置換されており)、該ペプチドが該与えられたアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じようにHLA分子に結合可能であることを意味する。 例えば、ペプチドを修飾することにより、該ペプチドがHLA-Aまたは-DRのような適切なMHC分子と相互作用し結合する能力を改善しないまでも少なくとも維持することができ、かつ、本発明の態様の中で定義するようなアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する細胞を認識して殺すことができる活性CTLを該ペプチドが生成する能力を改善しないまでも少なくとも維持することができる。 該データベースから得られるように、HLA-A結合ペプチドの特定の位置は、通常、HLA結合溝の結合モチーフに適合するコア配列を形成するアンカー残基である。
【0104】
T細胞受容体との相互作用に必須ではないアミノ酸残基を、組み込まれてもT細胞反応性に実質的に影響せず、関係MHCとの結合も削除しない別のアミノ酸と置換することによって修飾することができる。 したがって、与えられた条件とは無関係に、本発明のペプチドとしては、与えられたアミノ酸配列またはそれらの一部または変異形を含む任意のペプチド (本発明者らがこう言う場合、オリゴペプチドまたはポリペプチドを含む)が可能である。
【0105】
MHCクラスIIが提示するペプチドに関しさらに周知のように、これらのペプチドは「コア配列」からなるものであり、該コア配列は、その機能を妨害しない (すなわち該ペプチドと該T細胞との相互作用に無関係とされる)特定のHLA特異的アミノ酸モチーフ、および選択的にN-および/またはC-末端伸張を有する。 該N-および/またはC-末端伸張は、例えば、各々1個から10個のアミノ酸を全長とすることができる。 これらのペプチドを、MHCクラスII分子を負荷するために直接使うこと、または以下に説明するように、その配列をクローンしてベクターにすることができる。これらのペプチドは細胞内のより大きいペプチドの処理から得られる最終産物を形成するので、より長いペプチドを使うこともできる。 本発明のペプチドとして任意のサイズが可能であるが、通常、それらのペプチドの分子量は100,000未満であり、好ましくは50,000未満であり、さらに好ましくは10,000未満であり、通常約5,000である。アミノ酸残基の数に関しては、本発明のペプチドは1,000残基未満であり、好ましくは500残基未満であり、より好ましくは100残基未満である。 したがって、本発明は、ペプチドおよびその変異形の組成物も提供するものであり、該ペプチドまたは変異形の全長は8から100個のアミノ酸、好ましくは8から30個のアミノ酸、最も好ましくは8から16個、すなわち8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15 または16 個のアミノ酸である。
【0106】
したがって、本発明のペプチドとT細胞との交差反応を誘発する変異形は、しばしば、長さ変異形である。
【0107】
約12個のアミノ酸残基より長いペプチドを直接用いてMHCクラスII分子を結合する場合、コアHLA結合部を挟む残基は、該ペプチドが該MHCクラスII分子結合溝と特異的に結合する能力または該ペプチドを該CTLに提示する能力に実質的に影響を与えないことが好ましい。 しかし、すでに上述したように、より大きいペプチドを使用できることが評価される。特にポリヌクレオチドによってエンコードされる場合はそうであって、その理由は、より大きいペプチドは適切な抗原提示細胞によってフラグメント化できるからである。
【0108】
また、MHCクラスIエピトープ (通常、長さは8から10個のアミノ酸であるが)を、実際に該エピトープを含む、より長いペプチドまたはタンパク質から処理されるペプチドによって生成することも可能である。 MHCクラスIIエピトープの場合と同様に、その結合部を挟む残基が、該MHCクラスI分子の結合溝に特異的に結合する能力または該ペプチドを該CTLに提示する能力に実質的に影響を与えないこと、およびタンパク分解切断のための場所をマスクしないことが好ましい。
【0109】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異形も提供するものであり、その全長は8から100個のアミノ酸、好ましくは8から30個のアミノ酸、最も好ましくは8から16個、すなわち8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15 または16個 のアミノ酸である。
【0110】
当然、本発明のペプチドまたは変異形は、ヒト主要組織適合性複合体 (MHC)クラスIまたはIIの分子と結合する能力を持つであろう。 当該技術分野で周知の方法により、MHC複合体とのペプチドまたは変異形の結合を試験することが可能であり、例えば、以下に本発明の実施例に記述されている方法や、異なるMHCクラスII対立遺伝子の文献に記述されている方法がある (例:Vogt AB, Kropshofer H, Kalbacher H, Kalbus M, Rammensee HG, Coligan JE, Martin R; Ligand motifs of HLA-DRB5*0101 and DRB1*1501 molecules delineated from self-peptides; J Immunol. 1994; 153(4):1665-1673; Malcherek G, Gnau V, Stevanovic S, Rammensee HG, Jung G, Melms A; Analysis of allele-specific contact sites of natural HLA-DR17 ligands; J Immunol. 1994; 153(3):1141-1149; Manici S, Sturniolo T, Imro MA, Hammer J, Sinigaglia F, Noppen C, Spagnoli G, Mazzi B, Bellone M, Dellabona P, Protti MP; Melanoma cells present a MAGE-3 epitope to CD4(+) cytotoxic T cells in association with histocompatibility leukocyte antigen DR11; J Exp Med. 1999; 189(5): 871-876; Hammer J, Gallazzi F, Bono E, Karr RW, Guenot J, Valsasnini P, Nagy ZA, Sinigaglia F; Peptide binding specificity of HLA-DR4 molecules: correlation with rheumatoid arthritis association; .J Exp Med. 1995 181(5):1847-1855; Tompkins SM, Rota PA, Moore JC, Jensen PE; A europium fluoroimmunoassay for measuring binding of antigen to class II MHC glycoproteins; J Immunol Methods. 1993;163(2): 209-216; Boyton RJ, Lohmann T, Londei M, Kalbacher H, Halder T, Frater AJ, Douek DC, Leslie DG, Flavell RA, Altmann DM; Glutamic acid decarboxylase T lymphocyte responses associated with susceptibility or resistance to type I diabetes: analysis in disease discordant human twins, non-obese diabetic mice and HLA-DQ transgenic mice; Int Immunol. 1998 (12):1765-1776)。
【0111】
該ペプチドの、MHC分子のエピトープとして機能する形成部分では必ずしもない追加的なN-および/またはC-末端位のアミノ酸ストレッチであっても、本発明のペプチドを細胞に効果的に導入するために重要となる可能性がある場合がある。 本発明の1実施形態において、本発明のペプチドは、例えば、NCBI, GenBank登録番号X00497に由来するような、HLA-DR抗原関連不変鎖 (下記「Ii」のp33)のN-末端アミノ酸80個を有する融合タンパク質である (Strubin, M., Mach, B. and Long, E.O. The completesequence of the mRNA for the HLA-DR-associated invariant chain reveals a polypeptide with an unusual transmembrane polarity EMBO J. 3 (4), 869-872 (1984))。
【0112】
好ましくは医薬組成物であり、そのペプチドは8から100個のアミノ酸、好ましくは8から30個のアミノ酸、最も好ましくは8から16個のアミノ酸を全長として有する。
【0113】
加えて、より強力な免疫応答を引き出すために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するよう、該ペプチドまたは変異形をさらに修飾することができる。 そのようなペプチド配列の最適化の方法は当業者に周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入を含む。
【0114】
したがって、本発明の別の態様により、医薬組成物を提供し、この医薬組成物において、その少なくとも1つのペプチドまたは変異形は非ペプチド結合を含む。
【0115】
逆ペプチド結合におけるアミノ酸残基は、ペプチド(-CO-NH-)により結合されておらず、そのペプチド結合は逆になっている。 そのようなレトロ-インバースペプチド模倣薬は、当業者に周知の方法を用いて作ることができ、例えば、ここに参照として組み込むMeziere et al (1997) J. Immunol. 159, 3230-3237に記述されている方法がある。 このアプローチには、バックボーンが関与する変更を含むが側鎖の配向は関与しない擬ペプチドの作成が関与する。 Meziereら(1997) は、MHCおよびTヘルパー細胞応答にこれら擬ペプチドが有用であることを示している。 CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含むレトロ-インバースペプチドは、タンパク質分解に対する抵抗力がはるかに強い。
【0116】
非ペプチド結合とは、例えば、-CH
2-NH、-CH
2S-、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-COCH
2-、 -CH(OH)CH
2-、-CH
2SO-である。 米国特許第4,897,445号は、ポリペプチド鎖にある非ペプチド結合 (-CH
2-NH)の固相合成の方法を提供しており、これには標準的手順により合成するポリペプチドと、アミノアルデヒドとアミノ酸をNaCNBH
3存在下で反応させて合成する非ペプチド結合が関与する。
【0117】
上述の本発明の配列を有するペプチドは、例えばそれらペプチドの安定性、バイオアベイラビリティ、および/またはアフィニティを強めるために、それらのアミノ末端および/またはカルボキシ末端にある追加的な化学基と合成できる。 例えば、該ペプチドのアミノ末端に、カルボベンゾキシル基、ダンジル基、またはt-ブチルオキシカルボニル基のような疎水性の基を加えることができる。 同様に、該ペプチドのアミノ末端に、アセチル基または9−フルオレニルメトキシーカルボニル基を置くことができる。 加えて、例えば前記の疎水性の基であるt-ブチルオキシカルボニル基またはアミド基を該ペプチドのカルボキシ末端に加えることができる。
【0118】
さらに、本発明の全てのペプチドは、それらの立体配置を変えるように合成することができる。 例えば、該ペプチドの1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基のD-異性体を、通常のL-異性体の代わりに使用することができる。 またさらに、本発明のペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基を、周知の非天然アミノ酸残基の1つと置換することができる。 これらのような改変は、本発明のペプチドの安定性、バイオアベイラビリティ、および/または結合作用を増す働きをすることができる。
【0119】
同様に、該ペプチドの合成の前または後に特定のアミノ酸を反応することにより、本発明のペプチドまたは変異形を化学修飾することができる。 そのような修飾の例は当該技術分野で周知であり、例えば、この参照によりここに組み込まれるR. Lundblad, Chemical Reagents for Protein Modification, 3rd ed. CRC Press, 2005に要約されている。 アミノ酸の化学修飾として、アシル化、アミジン化、リシンのピリドキシル化、還元的アルキル化、2, 4, 6-トリニトロベンゼンスルホン酸 (TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンゼン化、カルボキシル基のアミド修飾および過ギ酸によるスルフィドリル修飾、システインからシステイン酸への酸化、水銀誘導体の生成、他のチオール化合物との混合ジスルフィドの生成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドとのカルボキシメチル化、およびアルカリpHでのシアン酸塩とのカルバモイル化による修飾を含むが、これらに限定されない。 これに関し、当業者は、Current Protocols In Protein Science, Eds. Coligan et al. (John Wiley & Sons NY 1995-2000) により、 タンパク質の化学修飾に関するより広範な方法論を参照できる。
【0120】
要約すると、例えばタンパク質のアルギニン残基の修飾は、フェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンのような隣接ジカルボニル化合物の反応に基づく付加物の形成であることが多い。 別の例は、メチルグリコサルとアルギニン残基の反応である。 システインは、リシンおよびヒスチジンのような他の求核的部位の同時修飾なしに修飾することができる。 そのため、システインの修飾には多数の試薬を利用可能である。 具体的な試薬の情報は、Pierce Chemical Company、Sigma-Aldrich、および他のウェブサイトに提供されている。
【0121】
タンパク質におけるジスルフィド結合の選択的還元もよく行われる。 ジスルフィド結合は、バイオ医薬の熱処理の間に形成および酸化することができる。
【0122】
WoodwardのReagent K を用いて、特定のグルタミン酸残基を修飾することができる。 N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N'-エチルカルボジイミドを用いて、リシン残基とグルタミン酸残基の間に分子内クロスリンクを形成することができる。
【0123】
例えば、ジエチルピロカルボナートは、タンパク質内のヒスチジル残基を修飾する試薬である。 ヒスチジンも、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを用いて修飾することができる。
【0124】
リシン残基と他のαアミノ基の反応は、例えば、ペプチドと表面の結合またはタンパク質/ペプチドのクロスリンクに有用である。 リシンはポリ (エチレン)グリコールが付着する部位であり、タンパク質の糖化における修飾の主要部位である。
【0125】
タンパク質のメチオニン残基は、例えばヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、クロルアミンTで修飾することができる。
【0126】
テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾルは、チロシル残基の修飾に用いることができる。 ジチロシンの形成によるクロスリンクは、過酸化水素/銅イオンによって達成できる。
【0127】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシンイミド 、2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロマイドまたは 3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドル (BPNS-スカトール)が使用された。
【0128】
PEGで治療用タンパク質およびペプチドを適切に修飾するには、しばしば、循環半減期の延長が伴い、ヒドロゲルの調製には、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびホルムアルデヒドによるタンパク質のクロスリンクが用いられる。免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、しばしば、シアン酸カリウムによるカルバミル化によって達成される。
【0129】
一般に、ペプチドおよび変異形 (少なくともアミノ酸残基間にペプチドリンクを含むもの)は、Lu et al (1981) J. Org. Chem. 46, 3433およびその参照が開示するように、例えば固相ペプチド合成のFmoc-ポリアミド形態を使って合成できる。
【0130】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えばアセトニトリル/水傾斜分離を使う逆相高速液体クロマトグラフィーのような手法の1つもしくは組み合わせによって行うことができる。
【0131】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出 (CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析、高速原子衝撃 (FAB)質量分析、MALDIおよびESI-Q-TOF 質量分析を用いて行うことができる。
【0132】
本発明のさらに別の態様は、本発明のペプチドまたは変異形をコードする核酸 (例えばポリヌクレオチド)を提供する。 該ポリヌクレオチドとしては、例えば、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、単鎖および/または二本鎖、または天然または安定形のポリヌクレオチド、例えばホスホロチオアートバックボーンを有するポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせが可能であり、該ペプチドをコーディングするポリヌクレオチドである限り、イントロンの含有は不可欠ではない。 当然、天然に生じるペプチド結合によって結合された天然に生じるアミノ酸残基を含むペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされる。 本発明のまたさらに別の態様は、本発明によるポリペプチドを発現する能力のある発現ベクターを提供する。 異なる細胞型の発現ベクターは当該技術分野で周知であり、特別な実験をせずに選択することができる。
【0133】
一般に、DNAはプラスミドのような発現ベクターに、正しい配向で、発現のために正しいリーディングフレームで挿入される。 必要であれば、望ましい宿主によって認識される適切な転写・翻訳調節管理ヌクレオチド配列にDNAをリンクすることができるが、そのような管理機能は一般に発現ベクターに入っている。 次に、標準的手法によって該ベクターを宿主に導入する。
これについては、Sambrook et al (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを参照することができる。
【0134】
しかし、本発明の特に好ましい実施形態において、該医薬組成物は、配列番号1〜配列番号15のアミノ酸配列を含む少なくとも2つのペプチドを有する。
【0135】
該ワクチンに含まれる核ペプチドの最適な量および最適な用量のレジメンは、特別な実験をしなくとも当業者であれば決定することができる。 例えば、該ペプチドまたはその変異形は、静脈 (i.v.)注射、皮下 (s.c.)注射、皮内 (i.d.)注射、腹膜内 (i.p.)注射、筋内 (i.m.)注射として調製することができる。 ペプチド注射の好ましい投与経路はs.c.、i.d.、i.p.、i.m.、i.v. である。DNA注射の好ましい投与経路は、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、 i.v.である。例えば、1〜500mg、50 μg〜1.5 mg、好ましくは125 μg〜500 μgのペプチドまたはDNAを投与することができ、用量は各ペプチドまたはDNAに依存する。 この範囲の用量はこれまでの治験で用いられ、成功している (Brunsvig PF, Aamdal S, Gjertsen MK, Kvalheim G, Markowski-Grimsrud CJ, Sve I, Dyrhaug M, Trachsel S, Muller M, Eriksen JA, Gaudernack G; Telomerase peptide vaccination: a phase I/II study in patients with non-small cell lung cancer; Cancer Immunol Immunother. 2006; 55(12):1553-1564; M. Staehler, A. Stenzl, P. Y. Dietrich, T. Eisen, A. Haferkamp, J. Beck, A. Mayer, S. Walter, H. Singh, J. Frisch, C. G. Stief; An open label study to evaluate the safety and immunogenicity of the peptide based cancer vaccine IMA901, ASCO meeting 2007; Abstract No 3017)。
【0136】
本発明の医薬組成物をコンパイルすることにより、該組成物に存在するペプチドの選択、数、および/または量を、組織、癌、および/または患者に特異のものにすることができる。 例えば、与えられた患者の組織のタンパク質の発現パターンによってペプチドの正しい選択を導くことにより、副作用を避けることができる。 この選択は、治療を受ける患者に特定の癌のタイプおよび該疾病の状態、それまでの治療レジメン、患者の免疫ステータス、および当然、患者のHLAハプロ型に依存する場合がある。 さらに、本発明によるワクチンは、特定の患者の個人的な必要に応じて個別の構成要素を含むことができる。 例としては、特定の患者の、関係TAAの発現、個人のアレルギーまたはその他の治療による副作用、一連の初期治療計画後の2次的治療の調整に応じた異なるペプチドの量である。
【0137】
CRCのワクチンとして用いられる組成物の場合、例えば、正常組織に親タンパク質が高い量で発現されるペプチドは回避されるか、もしくは本発明の組成物に低量で存在する。 一方、患者の腫瘍が特定のタンパク質を高い量で発現することがわかっている場合、この癌の治療のための各医薬組成物は高い量で存在できる、および/またはこの特定のタンパク質または経路に特異な複数のペプチドを含むことができる。
当業者であれば、in vitroでのT細胞形成、それらの効能、および全体的な提示、特定のペプチドに対する特定のT細胞の増殖、アフィニティ、拡大、およびT細胞の機能性を、例えばIFN-γ 生成の分析によって試験することによって、免疫原性ペプチドの好ましい組み合わせを選択することができる (下記の例も参照のこと)。 通常、次に、最も効率的なペプチドを、上述の目的のためにワクチンとして組み合わせる。
【0138】
適切なワクチンは、好ましくは1〜20個のペプチド、より好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の異なるペプチド、さらに好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の異なるペプチド、最も好ましくは14個の異なるペプチドを含有する。 癌のワクチンとして用いられる該ペプチドの長さは、任意の適切なペプチドでよい。 具体的には、適切な9-merのペプチドまたは適切な7-mer または8-mer または10-mer または11-mer のペプチドまたは12-mer 、13-mer 、14-mer または15-mer のペプチドとすることができる。 より長いペプチドも適切である場合があり、添付の表1および2に記述されているように、MHCクラスIペプチドには9-merまたは10-merのペプチドが好ましく、MHCクラスIIペプチドには12-から15-merが好ましい。
【0139】
該ペプチドは腫瘍または癌ワクチンを構成する。 該腫瘍または癌ワクチンは、患者に直接にその疾病器官または全身に投与すること、または患者からの細胞またはヒト細胞株に生体外適用したものを該患者に投与すること、またはin vitroで用いて患者の免疫細胞からのサブポピュレーションを選択して再び該患者に投与することができる。
【0140】
該ペプチドは実質的に純粋であること、または免疫刺激性アジュバント (下記参照)と組み合わせること、または免疫刺激性サイトカインと組み合わせて使うこと、または適切な送達系 (例えばリポソーム)と共に投与することができる。 該ペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン (KLH)またはマンナンのような適切な担体と接合することもできる (WO 95/18145号およびLongenecker et al (1993) Ann. NY Acad. Sci. 690,276-291を参照)。 該ペプチドをタグ付けすること、または融合タンパク質にすること、またはハイブリッド分子にすることもできる。 本発明においてその配列が与えられているペプチドは、CD4またはCD8 CTLを刺激することが期待される。 しかし、反対のCDに対して陽性のT細胞が助けを提供する方が刺激の効率は高まる。 したがって、CD4 CTLを刺激するMHCクラスIIエピトープの場合、その融合パートナーまたはハイブリッド分子のセクションが、CD8陽性T細胞を刺激するエピトープを適切に提供する。 一方、CD8 CTLを刺激するMHCクラスIエピトープの場合は、その融合パートナーまたはハイブリッド分子のセクションが、CD4陽性T細胞を刺激するエピトープを適切に提供する。 CD4およびCD8刺激性エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で特定するものを含む。
【0141】
免疫応答を引き出すために、通常は、該組成物の免疫原性を高める賦形剤を含める必要がある。 したがって、本発明の好ましい実施形態の医薬組成物は、少なくとも1つの適切なアジュバントをさらに有する。
アジュバントは、抗原に対する免疫応答 (例えばCTLおよびヘルパーT (TH)細胞が媒介する免疫応答)を非特異的に強化または促進する物質であるので、本発明の薬剤にとって有用と考えられる。 限定はしないが、適切なアジュバントは、1018 ISS、アルミニウム塩、アンプリヴァックス、AS15、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタナイドIMS 1312、モンタナイドISA 206、モンタナイドISA 50V、モンタナイドISA-51、OK-432、 OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel(R)ベクターシステム、PLG微粒子、レジキモド、SRL172、ウィロソームおよび他のウィルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、Aquila のQS21スティミュロン (Aquila Biotech, Worcester, MA, USA) (サポニン由来物質)、 マイコバクテリア抽出物、および合成細菌細胞壁模倣物、および他の専有アジュバント (RibiのDetox、Quil、またはSuperfosなど) である。 フロイント不完全またはGM-CSFのようなアジュバントが好ましい。 樹状細胞に特異ないくつかの免疫学的アジュバント (例えばMF59)およびそれらの製剤についてはすでに記述がある (Dupuis M, Murphy TJ, Higgins D, Ugozzoli M, van Nest G, Ott G, McDonald DM; Dendritic cells internalize vaccine adjuvant after intramuscular injection; Cell Immunol. 1998; 186(1):18-27; Allison AC; The mode of action of immunological adjuvants; Dev Biol Stand. 1998; 92:3-11)。 また、サイトカインを使うこともできる。 いくつかのサイトカインは、樹状細胞がTリンパ球に対し効果的な抗原提示細胞に成熟する過程を加速するとして (例えばGM-CSF、IL-1、IL-4) (米国特許第5,849,589号 (この参照によりその全文が組み込まれる))、また、免疫アジュバントとして作用するとして (例えばIL-12) (Gabrilovich DI, Cunningham HT, Carbone DP; IL-12 and mutant P53 peptide-pulsed dendritic cells for the specific immunotherapy of cancer; J Immunother Emphasis Tumor Immunol. 1996 (6):414-418)、リンパ球組織 (例えばTNF-α)への樹状細胞の移動に与える影響と直接リンクされているものがある。
【0142】
CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドもワクチン設定におけるアジュバントの効果を高めるという報告がある。 理論に束縛されず、CpGオリゴヌクレオチドはトール様受容体 (TLR) (主にTLR9)を介して生来の (非適応の)免疫系を活性化する作用を持つ。 CpGが起動するTLR9活性は、予防ワクチンおよび治療ワクチンの両方で、ペプチドまたはタンパク質抗原、生のウィルスおよび殺傷されたィルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、および多糖共役体を含む様々な抗原に対する体液性および細胞性の抗原特異的応答を高める。 より重要なのは、たとえCD4T細胞の助けがなくても、それが樹状細胞の成熟と分化を増進し、TH1 細胞の活性および細胞傷害性Tリンパ球 (CTL)の生成を増進することである。 TLR9の刺激によって誘導されるTH1バイアスは、TH2バイアスを通常促進するミョウバンまたはフロイント不完全アジュバント (IFA)のようなワクチンアジュバントが存在していても維持される。 CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと共処方または併投与するか、もしくは微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションまたは類似の処方にすることによって、さらに高いアジュバント活性を示すものであり、比較的弱い抗原の場合に強い応答を誘発するには特に必要である。 それらは、免疫応答も加速するものであり、いくつかの実験では、CpGのない全用量ワクチンに匹敵する抗体応答が、約二桁低減した抗原用量で得られた(Arthur M. Krieg, Therapeutic potential of Toll-like receptor 9 activation, Nature Reviews, Drug Discovery, 2006, 5, 471-484)。 米国特許第6,406,705号B1は、CpGオリゴヌクレオチドと非核酸アジュバントと抗原との組み合わせによって抗原特異的免疫応答を誘発することについて記述している。 市販のCpG TLR9拮抗薬であるMologen (ドイツBerlin市)のdSLIM (double Stem Loop Immunomodulator)は、本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である。 RNA結合TLR7、TLR8、および/またはTLR9のようなその他のTLR結合分子を使用することもできる。
【0143】
限定するものでないが、有用なアジュバントのその他の例としては、化学修飾CpGs (例えばCpR、Idera)、ポリ (I:C) (例えばポリI:C12U)、非CpG細菌DNAまたはRNA、およびイミダゾキノリン、シクロホスファミド、スニチニブ、ビバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブ、SC58175を含み、これらは治療薬および/またはアジュバントとして作用することができる。 本発明のコンテクストにおいて有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は、当業者であれば特別な実験をせずに容易に決定できる。
【0144】
好ましいアジュバントはdSLIM、BCG、OK432、イミキモド、PeviTer、および JuvImmuneである。
【0145】
本発明の医薬組成物の好ましい実施形態において、該アジュバントは、グラニュロサイトマクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF、サルグラモスティム)のようなコロニー刺激因子を含む群から選択される。
【0146】
本発明の医薬組成物の好ましい実施形態において、該アジュバントはイミキモドである。
【0147】
この組成物は、皮下、皮内、筋内のような非経口投与または経口投与に用いられる。 このための該ペプチドおよび選択的他の分子は、薬学的に許容される好ましくは水性の担体に溶解または懸濁される。 加えて、該組成物は、緩衝剤、結合剤、爆破剤、希釈剤、香味料、潤滑剤のような賦形剤などを含むことができる。 該ペプチドは、また、サイトカインのような免疫刺激性物質と共に投与することもできる。 そのような組成物に使用可能な賦形剤の広範なリストは、例えば、A. Kibbe, Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3. Ed. 2000, American Pharmaceutical Association and pharmaceutical pressから得られる。 該組成物は、腫瘍または癌、好ましくはCRCの予防および/または療法として用いることができる。
【0148】
細胞傷害性T細胞 (CTL)は、MHC分子と結合したペプチド形状抗原を認識し、そのままの外来抗原自体は認識しない。 該MHC分子自体は、抗原提示細胞の細胞表面にある。 したがって、CTLの活性化は、ペプチド抗原の三量体複合体とMHC分子とAPCの存在下でのみ可能である。 したがって、ペプチドだけを用いてCTLを活性化するのではなく、各MHC分子と共にAPCも追加的に加えることによって免疫応答は増進される。
【0149】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は少なくとも1つの抗原提示細胞を追加的に含む。
【0150】
該抗原提示細胞 (または刺激細胞)は、通常、MHCクラスIまたはII分子をその表面に有し、1実施形態においては、その選択された抗原を有する該MHCクラスIまたはII分子をそれ自体に負荷することは実質的に不可能である。 下記に詳細に述べるように、該MHCクラスIまたはII分子に、その選択された抗原をin vitroで容易に負荷することができる。
【0151】
好ましくは、該哺乳動物細胞はTAPペプチドトランスポーターのレベルまたは機能が欠如しているか、または低下している。 該TAPペプチドトランスポーターが欠如する適切な細胞は、T2、RMA-S、およびドロソフィラ細胞である。 TAPは抗原処理を伴うトランスポーターである。
【0152】
該不完全細胞株T2負荷ヒトペプチドは、American Type Culture Collection (ATCC), 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, USAから、カタログ番号CRL1992として入手可能である。該ドロソフィラ細胞株シュナイダー株2は、ATCCからカタログ番号CRL19863として入手可能である。該マウスRMA細胞株についての記述はKarre and Ljunggren (1985) J. Exp. Med. 162, 1745にある。これらの細胞株をAPCとして用いることは可能であり、TAPが欠如しているので、MHCクラスIによって提示されるほぼ全てのペプチドは、これら細胞株の空のMHCクラスI分子を外的に負荷するために使われる、精査下のペプチドであり、したがって、全ての効果は該使用ペプチドに明らかに起因する。
【0153】
好ましくは、該抗原提示細胞は樹状細胞である。適切には、該樹状細胞は、抗原ペプチドをパルスした自己樹状細胞である。 該抗原ペプチドは、適切なT細胞応答を引き出す任意の適切な抗原ペプチドでよい。 腫瘍関連抗原からのペプチドをパルスした自己樹状細胞を用いるT細胞療法については、Murphy et al (1996) The Prostate 29, 371-380 and Tjua et al (1997) The Prostate 32, 272-278に開示されている。
【0154】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの抗原提示細胞を含む該医薬組成物は、例えば実施例4の方法によって、該ペプチドでパルスされる、または該ペプチドを負荷される。
【0155】
あるいは、該抗原提示細胞は、該ペプチドをコードする発現コンストラクトを有する。該ポリヌクレオチドは、適切な任意のポリヌクレオチドでよく、ペプチドの提示および免疫力の導入が得られるよう樹状細胞を形質導入する能力のあるものが好ましい。
便利なことに、本発明の核酸はウィルスポリヌクレオチドまたはウィルスとして組成することができる。 例えば、アデノウィルス形質導入樹状細胞は、MUC1関連の抗原特異的抗腫瘍免疫力の導入を示した (Gong et al (1997) Gene Ther. 4, 1023-1028)。 同様に、アデノウィルスを使用した系を使うことができる (例えばWan et al (1997) Hum. Gene Ther. 8, 1355-1363を参照)。 レトロウィルス系を使うこともできる (Specht et al (1997) J. Exp. Med. 186, 1213-1221 and Szabolcs et al (1997) )。血液粒子媒介による樹状細胞へのトランスファーも使うことができる (Tuting et al (1997) Eur. J. Immunol. 27, 2702-2707)。また、RNAを使うこともできる (Ashley et al (1997) J. Exp. Med. 186, 1177 1182)。
【0156】
一般に、本発明の核酸を含む本発明の医薬組成物は、本発明のペプチドを含む医薬組成物と同様の方法で投与すること、すなわち静脈内、動脈内、腹膜内、筋内、皮内、腫瘍内、経口、経皮、経鼻腔、経口腔、経直腸、経膣投与、または吸入または局所投与することができる。
【0157】
回避のメカニズムにより、腫瘍はしばしば治療薬に対する耐性を得る。この薬品耐性は治療中に生じ、転移および再発腫瘍として現れる場合がある。 そのような薬品耐性を避けるために、一般に腫瘍の治療は薬品の組み合わせによって行われ、多くの場合、無病期間後の転移および腫瘍再発には異なる組み合わせが要求される。 したがって、本発明の1つの態様において、該医薬組成物は第2の抗癌剤と併せて投与される。 該第2の薬剤は、本発明の医薬組成物の前または後、またはそれと同時に投与することができる。 同時投与は、例えば、化学特性に適合性があるならば本発明の医薬組成物を該第2の抗癌剤と混合して行うことができる。 同時投与の別の方法は、例えば本発明の医薬組成物を注射し、第2の抗癌剤を例えば経口投与することにより、同日に該組成物と抗癌剤を独立の投与経路で投与することである。 該医薬組成物と第2の抗癌剤を、異なる日に同じ治療コース内で投与、および/または別々の治療コース内で投与してもよい。
【0158】
本発明の別の態様は、患者の癌を治療または予防する方法を提供するものであり、この方法は、任意の1つの本発明の医薬組成物を治療効果のある量で該患者に投与する工程を有する。
【0159】
治療効果のある量とは、免疫応答の誘発、特に、CTLのサブポピュレーションの活性化に十分な量である。 当業者であれば、本明細書の実施例に提供されているような標準的な免疫学的方法を用いて、効果のある量を容易に決定することができる。 該医薬組成物の特定量の効果を監視する別の方法は、治療した腫瘍の成長および/または再発を観察することである。
【0160】
本発明の特に好ましい実施形態において、該医薬組成物は抗癌ワクチンとして用いられる。
【0161】
ペプチドまたはペプチドエンコーディング核酸を含む組成物は、腫瘍または癌ワクチンを構成することもできる。 該腫瘍または癌ワクチンは、該患者に直接にその疾病器官または全身的に投与すること、または患者からの細胞またはヒト細胞株に生体外適用したものを該患者に投与すること、またはin vitroで用いて患者の免疫細胞からのサブポピュレーションを選択して再び該患者に投与することができる。
【0162】
本発明の組成物は、癌を治療する方法として、またはワクチンとして使用することができる。 該癌は、口腔、咽頭の癌、消化管癌、結腸、直腸、肛門の癌、気道癌、乳癌、子宮、膣、外陰の癌、子宮体、卵巣の癌、男性生殖管癌、尿道癌、骨および軟組織の癌、カポジ肉腫、皮膚メラノーマ、眼メラノーマ、非メラノーマ眼癌、脳、中枢神経系の癌、甲状腺および他の内分泌腺の癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫であり、好ましくは腎臓癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、脳癌、GISTまたはグリア芽腫である。
【0163】
本発明の治療またはワクチン方法の最も好ましい実施形態において、該ワクチンは結腸直腸癌治療のためのマルチペプチド腫瘍ワクチンである。 好ましくは、該ワクチンは、原発結腸直腸癌細胞にありすでに特定されている配列番号1〜配列番号15から選択される腫瘍関連ペプチド一式を有する。 この一式はHLAクラスIおよびクラスIIペプチドを含む。 該ペプチド一式は、皮内投与の効能を試験するための免疫マーカーとなる正の対照ペプチドとして使われるHBVコア抗原のようなペプチドも少なくとも1つ含むことができる。 特定の1実施形態において、該ワクチンは、各ペプチドが約1500μg〜約75 μg、好ましくは約1000 μg〜約750 μg、より好ましくは 約500μg〜約600μg、最も好ましくは約578μgであるペプチド (配列番号1〜配列番号15による)14個から成り、それらのペプチドは全て、HPLCおよびイオン交換クロマトグラフィーによって精製される、白色からオフホワイト色の粉末である。 このリオフィリセートを好ましくは炭酸水素ナトリウムに溶解し、構成後30分以内に常温で皮内注射して用いる。 本発明によると、ペプチドの好ましい量は500μl 溶液中に約0.1〜100mg、好ましくは約0.1〜1mg、最も好ましくは約300μg〜800 μg の間で変動することができる。 ここで、「約」という言葉は、特に述べない限り、与えられた値の+/- 10パーセントを意味する。 当業者であれば、例えば患者個人の免疫ステータスおよび/または特定のタイプの癌で提示されるTUMAPの量のようないくつかの因子に基づき、使用するペプチドの実際量を調整することができるであろう。 本発明のペプチドは、リオフィリセート以外の他の適切な形状 (滅菌液等)として提供してもよい。
【0164】
本発明によるペプチドおよび/または核酸を有する本発明の医薬組成物は、各対応するペプチドまたは抗原に関連する腺腫または癌疾病の患者に投与される。 これにより、T細胞を媒介とする免疫応答が起動される
【0165】
好ましくは本発明の医薬組成物であって、この本発明の医薬組成物のペプチド (特に腫瘍関連のペプチド)または核酸、または該組成物に存在する本発明の発現ベクターの量は、組織、癌、および/または患者に特異的である。
【0166】
本発明の別の実施形態において、該ワクチンは核酸ワクチンである。 ポリペプチドをコードするDNAワクチンのような核酸ワクチンの接種がT細胞応答を引き出すことは周知である。 該腫瘍または癌ワクチンは、該患者に直接にその疾病器官または全身的に投与すること、または患者からの細胞またはヒト細胞株に生体外適用したものを該患者に投与すること、またはin vitroで用いて患者の免疫細胞からのサブポピュレーションを選択して再び該患者に投与することができる。 該核酸をin vitroで細胞に投与する場合、インターロイキンー2またはGM-CSFのような免疫刺激性サイトカインを共発現するよう、該細胞の移入が有用である場合がある。 該核酸は実質的に純粋であること、または免疫刺激性アジュバントと組み合わせること、または免疫刺激性サイトカインと組み合わせて使うこと、または適切な送達系 (例えばリポソーム)と共に投与することができる。 該核酸ワクチンは、上記ペプチドワクチンに関して記述したようなアジュバントと共に投与してもよい。 好ましくは、該核酸ワクチンをアジュバントなしに投与する。
【0167】
該ポリヌクレオチドは、実質的に純粋である、または適切なベクターまたは送達系に含まれている場合がある。 適切なベクターおよび送達系として含まれるのは、アデノウィルス、ワクシニアウィルス、レトロウィルス、ヘルペスウィルス、アデノ関連ウィルス、または複数のウィルスの要素を含むハイブリッドに基づく系のような、ウィルス性のものである。 非ウィルス送達系として含まれるのは、DNA送達技術分野で周知のカチオン性脂質およびカチオン性ポリマーである。 「遺伝子銃」のような物理的送達も使用することができる。 該ペプチド、または該核酸によってエンコードされるペプチドは、融合タンパク質の場合があり、例えばCD4陽性T細胞を刺激する破傷風トキソイドからのエピトープとの融合タンパク質である。
【0168】
適切には、該患者に投与される全てのペプチドは滅菌されていて発熱物質がない。 裸のDNAは筋内、皮内、皮下注射により投与することができる。 便利なことに、該核酸ワクチンは任意の核酸送達手段を有することができる。 好ましくはDNAである該核酸は、リポソームにて送達することも、ウィルスベクター送達系の一部として送達することもできる。 DNAワクチンのような核酸ワクチンは筋肉に投与するのが好ましく、ペプチドワクチンはs.c.または i.d.にて投与するのが好ましい。該ワクチンを皮内に投与するのも好ましい。
【0169】
樹状細胞のようなプロフェッショナル抗原提示細胞による核酸の摂取、およびエンコードされたポリペプチドの発現は、免疫応答のプライミングのメカニズムである可能性がある。しかし、樹状細胞は移入されない可能性があるとはいえ、組織内の移入された細胞から発現ペプチドを取り込むことができるので、なお重要である (「クロスプライミング」。例:Thomas AM, Santarsiero LM, Lutz ER, Armstrong TD, Chen YC, Huang LQ, Laheru DA, Goggins M, Hruban RH, Jaffee EM. Mesothelin-specific CD8(+) T cell responses provide evidence of in vivo cross-priming by antigen-presenting cells in vaccinated pancreatic cancer patients. J Exp Med. 2004 Aug 2;200(3):297-306)。
【0170】
ポリヌクレオチドを媒介とする癌免疫療法についてはConry et al (1996) Seminars in Oncology 23, 135-147; Condon et al (1996) Nature Medicine 2, 1122-1127; Gong et al (1997) Nature Medicine 3, 558-561; Zhai et al (1996) J. Immunol. 156, 700-710; Graham et al (1996) Int J. Cancer 65, 664-670; and Burchell et al (1996) 309-313 In: Breast Cancer, Advances in biology and therapeutics, Calvo et al (eds), John Libbey Eurotextに記述されており、 これら全ては参照によりその全文がここに組み込まれる。
【0171】
注射部位、標的化ベクターおよび送達系の使用、または患者からの特異的細胞集団の選択的精製によって、該ワクチンの標的を、例えば抗原提示細胞のような特異的細胞集団とすること、および該ペプチドまたは核酸を生体外投与することも有用である可能性がある (例えば、Zhou et al (1995) Blood 86, 3295-3301; Roth et al (1996) Scand. J. Immunology 43, 646-651に記述されているように、樹状細胞をソートすることができる)。 例えば、標的化ベクターは、適切な場所での抗原の発現を方向づける組織または腫瘍特異的プロモーターを有することができる。
【0172】
最後になるが、本発明のワクチンは、治療を受ける患者に特定の癌のタイプおよび該疾病の状態、それまでの治療レジメン、患者の免疫ステータス、および当然、患者のHLAハプロ型に依存する場合がある。 さらに、本発明によるワクチンは、特定の患者の個人的な必要に応じて個別の構成要素を含むことができる。 例としては、特定の患者の、関係TAAの発現、個人のアレルギーまたはその他の治療による副作用、一連の初期治療計画後の2次的治療の調整に応じた異なるペプチドの量である。
【0173】
本発明のペプチドは癌治療に有用なだけでなく、診断にも有用である。 該ペプチドはグリア芽腫から生成されるものであり、これらのペプチドは正常組織には存在しないことが特定されているので、これらのペプチドを用いて癌の存在を診断することができる。
【0174】
病理学者は、組織生検での本発明のペプチドの存在を癌の診断の助けとすることができる。 病理学者は、抗体を使って行う本発明の特定のペプチドの検出、質量分析、または当該技術分野で周知の他の方法によって、該組織が悪性か、炎症または総じて罹患しているかを知ることができる。 本発明のペプチドのグループの存在によって、罹患組織の分類または下位分類が可能になる。
【0175】
罹患組織標本にある本発明のペプチドの検出は、作用のメカニズムにTリンパ球が関わることがわかっている場合または予期される場合は特に、その免疫系が関わる療法の恩恵についての決断を可能にする。 MHC発現の喪失はよく理解されているメカニズムであり、これによって悪性細胞は免疫監視を逃れる。 したがって、本発明のペプチドの存在は、被分析細胞によってこのメカニズムが利用されていないことを示す。
【0176】
本発明のペプチドは、本発明のペプチドに対するリンパ球応答の分析に用いることができ、例えば、本発明のペプチド、またはMHC分子との複合体である本発明のペプチドに対するT細胞応答または抗体応答を分析することができる。 これらのリンパ球応答を、さらなる治療工程を決定するための予後マーカーとして用いることができる。 これらの応答は、例えばタンパク質、核酸、自己物質、リンパ球免疫伝達のワクチン接種など異なる手段によってリンパ球応答を誘発しようとする免疫療法アプローチで、代理マーカーとして用いることもできる。 遺伝子療法という設定では、副作用の評価において本発明のペプチドに対するリンパ球応答を考慮することができる。 リンパ球応答の監視は、移植療法後のフォローアップ検査でも、例えば移植片対宿主および宿主対移植片の病気の検出などに有用である可能性がある。
【0177】
本発明のペプチドは、MHC/ペプチド複合体に対し特異的な抗体の生成および発育に用いることができる。 これらを療法に用いて、罹患組織を標的として毒素または放射性物質を当てることができる。 これらの抗体の別の使い方として、PETのような画像法のために、罹患組織に対する放射性核種を標的としてこれらの抗体を当てることができる。 この使用方法は、小さな転移の検出または罹患組織のサイズおよび正確な位置を決定するための助けとなり得る。 加えて、該ペプチドは、病理学者が行う生検標本に基づく癌の診断の検証に用いることができる。
【0178】
本発明のさらに別の態様において、本発明はキットに関するものであり、このキットは、 (a)上述の医薬組成物を溶液形状または凍結乾燥形状で包含する容器と、 (b)選択的に、該凍結乾燥製剤用の希釈剤または再構成液を包含する第2の容器と、 (c)選択的に、 (i)該溶液の使用または (ii)該凍結乾燥製剤の再構成および/または使用に関する説明書とを有する。 該キットは、1もしくはそれ以上の(iii)緩衝剤、(iv) 希釈剤、 (v) フィルター、 (vi) 針、または (v) シリンジをさらに有する。 該容器は、好ましくは瓶、バイアル瓶、シリンジ、または試験管であり、多用途容器でよい。 該医薬組成物は、好ましくは乾燥凍結される。
【0179】
本発明のキットは、好ましくは、本発明の乾燥凍結製剤およびその再構成および/または使用に関する説明書を、適切な容器内に有する。 適切な容器として含まれるのは、例えば、瓶、バイアル瓶 (例えばデュアルチャンババイアル)、シリンジ (デュアルチャンパシリンジなど)、および試験管である。 該容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料から形成することができる。 好ましくは、該キットおよび/または容器は、該容器上にある、あるいは該容器に伴う、再構成および/または使用の方法を示す説明書を包含する。 例えば、そのラベルは、該乾燥凍結製剤を再構成して上記のペプチド濃度にするという説明を示すことができる。 該ラベルは、さらに、該製剤が皮下注射に有用であるもしくは皮下注射のためのものであるという説明を示すことができる。
【0180】
該製剤の容器は、繰り返し投与 (例えば2〜6回の投与)に使うことができる多用途バイアル瓶でもよい。 該キットは、さらに、適切な希釈剤 (例えば重曹溶液)を有する第2の容器を有することができる。
【0181】
該希釈剤と該凍結乾燥製剤を混合して作られる再構成された製剤の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15 mg/mL/ペプチド (=75μg) であり、好ましくは3 mg/mL/ペプチド (=1500μg)以下である。 該キットは、さらに、商業的観点およびユーザーの観点から見て望ましいその他の材料 (その他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、およびパッケージに挿入される使用説明書を含む)を含むことができる。
【0182】
本発明のキットは、他の構成要素 (例えば他の化合物またはこれら他の化合物の医薬組成物)と共に、もしくはそれらなしに、本発明の医薬組成物の製剤を包含する単一の容器を有すること、または各構成要素によって別の容器を有することができる。
【0183】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物 (アジュバント (例えばGM-CSF)、化学療法薬剤、天然生成物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管形成剤または血管形成阻害剤、アポトーシス誘発剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の併投与との組み合わせとして使用するためにパッケージされた本発明の処方を含む。 該キットの構成要素は、予め複合体として作られたもの、もしくは、患者に投与するまで各構成要素が異なる別々の容器に入ったものが可能である。 該キットの構成要素は、1もしくはそれ以上の液体溶液として提供することができ、好ましくは水溶液であり、より好ましくは滅菌水溶液である。 該キットの構成要素は、固体として提供することも可能であり、好ましくは別の異なる容器にて提供される適切な溶剤をそれに加えて液体に変換することができる。
【0184】
療法キットの容器としては、バイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、もしくは固体または液体を密封する他の任意の手段が可能である。 通常、複数の構成要素がある場合、別々に投薬できるように、該キットは第2のバイアルまたはその他の容器を包含する。 該キットは、薬学的に許容される液体用の別の容器も包含することができる。 好ましくは、治療キットは、該キットの構成要素である本発明の薬剤を投与することを可能にする器具 (例えば1もしくはそれ以上の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を包含する。
【0185】
本発明の医薬組成物は、経口 (経腸)、経鼻腔、経眼、皮下、皮内、筋内、静脈内、または経皮のような任意の許容される経路によって該ペプチドを投与するのに適したものである。 好ましくは該投与は皮下投与であり、最も好ましくは皮内投与である。投与は注入ポンプによって行うことができる。
【0186】
本明細書に開示および記述される本発明の特徴は、記載されている各々の組み合わせによって使用可能なだけでなく、本発明の意図する範囲内で単独に用いることもできるものと理解すべきである。 本発明の目的上、本明細書に含まれる全ての参考文献は、参照によりその全文がここに組み込まれる。