(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
多くのヒンジ式の人工膝関節は、ヒンジ様の機能の関節を復元する機械的な手段を提供するのみである。他のヒンジ式の人工膝関節は、運動性のより正しい人工関節を提供するが、それらの人工関節は、関節に対する正常な運動性を復元するのに、残存する軟組織にほぼ依存している。ほとんどの場合、残存する軟組織は、手術の際に傷つけられたり、及び且つ/若しくは損失/除去されたりしている。したがって、軟組織は正常な運動性、特に前方/後方(A/P)への並進、または「ねじり定」(“screw-home”)位置への回転を含む正常な軸方向の回転を復元することに大きく寄与することはできない。さらに、人工関節の強制的な動きによって正常な運動性を復元すると、残存する軟組織が傷つけられることがある。
【0004】
軸方向の回転に対処する人工関節システムにおいて、現在のシステムは、プラットフォームを回転させることで回転に対処する。一般に、関節でつながった2つの人工関節(通常は脛骨の挿入部または構造部)のうちの1つは、回転自在にされている。これによって、軟組織は、より正常な方式で関節を回転できるようになる。しかしながら、大半の軟組織は傷つけられており、正常、若しくは正常に近い回転は再現できない。
【0005】
A/Pへの並進は、ほとんど対処されない動きである。A/Pへの並進に対処するそれらの人工関節においては、関節連接機構(通常は柱)、または脛骨側関節の幾何学形状に対するカム機構が、膝関節が屈曲するにつれて、脛骨を遠位大腿骨に対して前方に押すのに使用される。このA/Pへの並進の方法は、カムが大腿骨側の人工関節上にあり、柱が脛骨側の人工関節上にある、カム及び柱の方法の使用による人工膝関節全置換術(TKA)において一般的である。これは、後方または十字形の安定化された膝関節インプラントとして、一般に称される。これらのヒンジ式の膝関節は、一般に、(点及び/または線の接触を有するカム及び柱などの)狭い領域に力を集中し、それが摩耗を増し、インプラントの寿命を短縮し得る。
【0006】
特許文献1及び特許文献2では、A/Pへの並進が屈曲によって起こされるが、ヒンジ式の膝関節は、A/Pへの並進における一定の限界を制御及び/または維持しない。言い換えると、脛骨側の支持面に対する接触が維持されない場合、大腿骨は後方に屈曲及び並進可能である。したがって、A/Pへの並進が起こるとき、大腿骨側の構成要素は、脛骨側の構成要素との接触を維持しない。
及び
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当技術において、A/Pへの並進及び/または正常な軸方向の回転を含む運動性の正しい人工関節の必要がある。さらに、人工関節の摩耗を低減し、残存する軟組織に掛かる力を低減する、運動性の正しい人工関節の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、脛骨側の構成要素と大腿骨側の構成要素とを備えるヒンジ式の人工膝関節を提供する。脛骨側の構成要素は、脛骨に付随するように構成される。脛骨側の構成要素は、支持面を有する。大腿骨側の構成要素は、脛骨側の構成要素にヒンジ式に付随し、脛骨側の構成要素に対して回転するように構成される。大腿骨側の構成要素は、内側顆及び外側顆を備える。内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素の支持面上における軸方向の回転を引き起こすように構成された、矢状方向の湾曲面を有する。
【0010】
内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素の支持面上で回転するように構成された複数の偏心した矢状方向の湾曲面を有してもよい。
【0011】
脛骨側の構成要素の支持面は、前方部分及び後方部分を有して構成される。支持面の後方部分は、大腿骨側の構成要素の内側顆及び外側顆を案内するように構成された部分を有する。大腿骨側の構成要素と脛骨側の構成要素との間の接触点は、前方/後方の方向に並進し、軸方向に回転する。
【0012】
ヒンジ式の膝関節は、心棒ヒンジピンをさらに備えてよい。心棒ヒンジピンは、内側顆と外側顆との間に横方向に配置される。偏心した矢状方向の湾曲面は、心棒ヒンジピンと一直線にならない回転の中心を有する。
【0013】
ヒンジ式の人工膝関節は、脛骨側の構成要素から大腿骨側の構成要素まで延在するように構成された柱をさらに備えてよい。柱の近位部分は、心棒ヒンジピンに付随するように構成される。
【0014】
内側顆の偏心した矢状方向の湾曲面の一部分の回転の中心は、外側顆の偏心した矢状方向の湾曲面の一部分の回転の中心と一直線にならなくてよい。内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の軸方向の回転を導く。
【0015】
内側顆の偏心した矢状方向の湾曲面の一部分の回転の中心は、外側顆の偏心した矢状方向の湾曲面の一部分の回転の中心と一直線になってもよく、このとき、内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の前方/後方への並進を導く。
【0016】
大腿骨側の構成要素の内側顆は、同一中心の矢状方向の湾曲面をさらに備えてもよい。内側顆の同一中心の矢状方向の湾曲面の回転の中心は、外側顆の偏心した矢状方向の湾曲面の一部分の回転の中心と一直線にならない。内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の軸方向の回転を導く。
【0017】
内側顆の第1の偏心した矢状方向の湾曲面の回転の中心は、外側顆の第1の偏心した矢状方向の湾曲面の回転の中心と整列されなくてもよい。第1の偏心した矢状方向の湾曲面が脛骨側の構成要素と接触するとき、内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の軸方向の回転、及び前方/後方への並進を導く。内側顆の第2の偏心した矢状方向の湾曲面の回転の中心は、外側顆の第2の偏心した矢状方向の湾曲面の回転の中心と一直線にされ、第2の偏心した矢状方向の湾曲面が脛骨側の構成要素に接触するとき、内側顆及び外側顆は、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の前方/後方への並進を導く。
【0018】
ヒンジ式の人工膝関節は、柱を受けるように構成されたスリーブを備えてよい。スリーブは、脛骨側の構成要素に対して大腿骨側の構成要素を軸方向に回転可能にするように構成される。
【0019】
本開示は、ある屈曲の範囲にわたってヒンジ式の膝関節を回転させる方法を提供する。本方法は、大腿骨側の構成要素を脛骨側の構成要素に固定的に付随する。ヒンジ式の膝関節が屈曲されるとき、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の軸方向の回転が引き起こされる。
【0020】
本方法は、ヒンジ式の膝関節が屈曲されるとき、脛骨側の構成要素に対する大腿骨側の構成要素の前方/後方の方向への並進を引き起こすステップをさらに含んでよい。
【0021】
並進を引き起こすステップと軸方向の回転を引き起こすステップとは、同時に起こってもよい。
【0022】
軸方向の回転を引き起こすステップは、人工膝関節の屈曲の範囲の一部分にわたって起こってよい。
【0023】
軸方向の回転を引き起こすステップは、人工膝関節の屈曲の範囲の第1部分及び人工膝関節の屈曲の範囲の第2部分にわたって起こってもよい。
【0024】
屈曲の範囲の第1部分は、屈曲の範囲の第2部分に隣接しなくてもよい。
【0025】
軸方向の回転を引き起こすステップは、ヒンジ式の膝関節が膝関節の屈曲の範囲にわたって通過する際に、異なる角速度で実施されてもよい。
【0026】
固定的に付随するステップは、スリーブ付きの柱のスリーブ部分とスリーブ付き柱の柱部分とが互いに対して軸方向に回転するように、スリーブ付きの柱を脛骨側のインサートに連結するステップを含んでよい。さらに、固定的に付随するステップは、軸方向のヒンジピンが大腿骨側の構成要素の内側顆を大腿骨側の構成要素の外側顆に横方向に連結するように、軸方向のヒンジピンをスリーブ付きの柱に固定するステップを含んでよい。
【0027】
本方法は、スリーブ付きの柱のスリーブ部分を脛骨側の構成要素内の軸部に固定するステップをさらに含んでよい。
【0028】
本方法は、ヒンジ式の膝関節が屈曲されるとき、スリーブ付きの柱のスリーブ部分をスリーブ付きの柱の柱部分に対して軸方向に移動させるステップをさらに含んでよい。
【0029】
したがって、A/Pへの並進及び/または正常な軸方向の回転を含む運動性の正しい人工関節が、本開示における構造体によって達成可能である。これらの運動性の正しい人工関節は、人工関節の摩耗を低減し、残存する軟組織に掛かる力を低減することができる。本発明のさらなる特徴、態様、及び利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造及び操作は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。
【0030】
本明細書に援用され、本明細書の一部を形成する添付の図面は、実施形態を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明する働きをする。
【発明を実施するための形態】
【0032】
同様の参照符号が同様の要素を示す添付の図面を参照して、
図1〜4は、ヒンジ式の膝関節の一実施形態の図を示す。
【0033】
ここで
図1を参照すると、
図1はヒンジ式の膝関節10の一実施形態の等角図である。ヒンジ式の膝関節10は、大腿骨側の構成要素14と、脛骨側の構成要素16と、ピンスリーブ18と、ピン20とを含む。脛骨側の構成要素16は、脛骨側のインサート24と脛骨側のベース部26とを含む。大腿骨側の構成要素14は、内側顆30と外側顆32とを含む。ピン20は、顆30及び32をスリーブ18に連結する。スリーブ18は、スリーブ付き柱(下述)によって脛骨側の構成要素に連結する。
【0034】
膝関節が屈曲するにつれて、大腿骨側の構成要素14は、脛骨側の構成要素16に対して回転する。大腿骨側の構成要素14は、ピン20を中心に回転する。大腿骨側の構成要素14の軸方向の回転及び前方/後方(A/P)への並進が、脛骨側のインサート24ならびに顆30及び32の形状によって生じる。ピン20が軸方向に回転可能であり、ヒンジ式の膝関節10の柱及びスリーブに対して軸方向に並進可能であるので、大腿骨側の構成要素14の軸方向の回転及び前方/後方(A/P)への並進が生じることができる。
【0035】
大腿骨側の構成要素14及び脛骨側の構成要素16は、大腿骨及び脛骨にそれぞれ連結される。軸部36が、大腿骨側の構成要素及び脛骨側の構成要素を骨に固定するように大腿骨及び脛骨に挿入される。これらの軸部の長さ及び厚さは、必要とされる固定、骨のサイズ、及び骨の骨髄内管のサイズに基づいて調整されてよい。
【0036】
ここで、
図2を参照すると、
図2は、
図1の実施形態の切欠図である。切欠図は、大腿骨側の両顆の間の矢状面において取られている。
図2は、スリーブ18内のピン20を示す。スリーブ18は、柱42を囲む柱スリーブ40に付随する。柱42は、脛骨側のベース部26に付随されており、脛骨側のベース部26に非対称的に付随してもよい。柱スリーブ40は、軸方向に回転可能であり、柱42に対して軸方向に並進可能である。スリーブ18(及びピン20)は、軸方向に回転でき、脛骨側の構成要素16に対して軸方向に並進できる。回転及び並進によって、大腿骨側の構成要素14が軸方向に回転し、A/P方向に並進できるようになる。A/Pへの並進は、回転の中心がピン20の外側にある湾曲を有する顆の表面によって達成されてよい。膝関節が伸張しすぎないように、大腿骨側の構成要素14が回転するにつれて、ブッシュ46が過度の伸張を止める。
【0037】
ここで、
図3を参照すると、
図3は、
図1の実施形態の側面図である。ピン20は、膝関節10の中央に対して後方に配置される。顆32の湾曲50は、ピン20である、大腿骨側の構成要素14の回転の中心に対して偏心している。膝関節が屈曲するにつれて、脛骨側の構成要素16に対して、ピン20が軸方向に回転し、軸方向に並進する。
【0038】
ここで、
図4を参照すると、
図4は、
図3の実施形態の切欠図である。切欠図は、
図2の切欠図と同じ矢状面に沿って取られている。この切欠図は、ヒンジ式の膝関節10の柱スリーブ40及び柱42を示す。柱スリーブ40を柱42にロックするように、ねじ56が柱受け58を柱に固定する。すると、柱42を引き離すことなく、柱スリーブ40及びピンスリーブ18が回転し、軸方向に並進できる。
【0039】
ここで、
図5〜8を参照すると、これらの図は、ヒンジ式の膝関節70の別の実施形態の図を示す。ここで
図5を参照すると、
図5は、ヒンジ式の膝関節70の一実施形態の等角図である。ヒンジ式の膝関節70は、大腿骨側の構成要素74と、脛骨側の構成要素76と、ピンスリーブ78と、ピン80とを含む。脛骨側の構成要素76は、脛骨側のインサート84と脛骨側のベース部86とを含む。大腿骨側の構成要素74は、内側顆90と外側顆92とを含む。ピン80は、顆90及び92をスリーブ78に連結する。スリーブ78は、スリーブ付きの柱によって脛骨側の構成要素に連結する。
【0040】
膝関節が屈曲するにつれて、大腿骨側の構成要素74が、脛骨側の構成要素76に対して回転する。大腿骨側の構成要素74は、ピン80を中心に回転する。大腿骨側の構成要素74の軸方向の回転及び前方/後方(A/P)への並進が、脛骨側のインサート84ならびに顆90及び92の形状によって起こされる。ピン80が軸方向に回転可能であり、ヒンジ式の膝関節70の柱及びスリーブに対して軸方向に並進可能であるので、大腿骨側の構成要素74の軸方向の回転及び前方/後方(A/P)への並進が起こることができる。
【0041】
大腿骨側の構成要素74及び脛骨側の構成要素76は、大腿骨及び脛骨にそれぞれ連結される。軸部96が、大腿骨側の構成要素及び脛骨側の構成要素を骨に固定するように大腿骨及び脛骨に挿入される。これらの軸部の長さ及び厚さは、必要とされる固定、骨のサイズ、及び骨の骨髄内管のサイズに基づいて調整されてよい。
【0042】
ここで、
図6を参照すると、
図6は
図5の実施形態の切欠図である。切欠図は、大腿骨側の両顆の間の矢状面において取られている。
図6は、スリーブ78内のピン80を示す。スリーブ78は、柱スリーブ102に挿入された柱100に付随される。柱スリーブ102は、脛骨側のベース部86に付随される。柱100は、軸方向に回転可能であり、柱スリーブ102に対して軸方向に並進可能である。ピンスリーブ78(及びしたがってピン80)が、軸方向に回転でき、脛骨側の構成要素76に対して軸方向に並進できる。回転及び並進によって、大腿骨側の構成要素74が軸方向に回転し、A/P方向に並進できるようになる。A/Pへの並進は、回転の中心がピン80の外側にある湾曲を有する顆の表面によって達成可能である。膝関節が伸張しすぎないように、大腿骨側の構成要素74が回転するにつれて、ブッシュ106が過度の伸張を止める。
【0043】
ここで、
図7を参照すると、
図7は、
図5の実施形態の側面図である。ピン80は、膝関節70の中央に対して後方に配置される。顆92の湾曲110は、ピン80である、大腿骨側の構成要素74の回転の中心に対して偏心している。膝関節が屈曲するにつれて、脛骨側の構成要素76に対して、ピン80が軸方向に回転し、軸方向に並進する。
【0044】
ここで、
図8を参照すると、
図8は、
図7の実施形態の切欠図である。切欠図は、
図6の切欠図と同じ矢状面に沿って取られる。この切欠図は、ヒンジ式の膝関節70の柱100及び柱スリーブ102を示す。柱100が柱スリーブ102に挿入されるとき、大腿骨側の構成要素74が、脛骨側の構成要素76に対して一直線にされ、適所に保持されるように、柱100の拡大された部分106が、柱100を大腿骨側の構成要素74に固定する。すると、大腿骨側の構成要素74を脛骨側のベース部76から引き離すことなく、柱100及びピンスリーブ78が、軸方向に回転及び並進できる。
【0045】
ここで、
図9及び10を参照すると、これらの図は、脛骨側のインサート120の図を示す。
図9は脛骨側のインサート120の一実施形態の等角図であり、
図10は
図9の脛骨側のインサート120の上面図である。脛骨側のインサート120は、脛骨側のベース部または大腿骨側の構成要素のいずれかから柱を受ける柱穴124を含む。支持面128上の案内線126は、大腿骨側の構成要素が脛骨側のインサート120に関節でつながる線を示す。大腿骨側の構成要素がインサート120上で回転するにつれて、線126上の位置が後方に移動する。脛骨側のインサート120の後方部分は、大腿骨側の構成要素を軸方向に回転させ、後方に並進させるように傾斜する。顆の湾曲と併せて、脛骨側のインサート120が、大腿骨側の構成要素のA/Pへの並進及び軸方向の回転を引き起こす。
【0046】
ここで、
図11を参照して、
図11は、ヒンジ式の膝関節の大腿骨側の構成要素130の一実施形態の側面図である。顆131の湾曲は、回転の第1中心134を有する第1の遠位部分132と、ピン穴140と同一中心の回転の第2中心138を有する第2の後方部分136と、回転の第3中心144を有する第3の近位部分142とを含む。回転の中心134及び144は、ピン穴140に対して偏心している。膝関節が回転するにつれて、大腿骨側の構成要素130と脛骨側のインサートとの間の接触点が、大腿骨側の構成要素130に対して直角であり、その湾曲部分の回転の中心と一直線にされた力を発生する。接触点が湾曲の遠位部分内にある間、この直角の力は回転の中心134の方へ向く。遠位部分132と後方部分136との間の界接面では、この直角の力は、回転の中心134及び138と同一線上にある。同様に、後方部分136と近位部分142との間の界接面では、この直角の力は、回転の中心138及び144と同一線上にある。したがって、回転中に接触点が跳び上がることなく、スムーズに動く。
【0047】
湾曲部が偏心していることによって、接触点における横方向の力が、軸方向の回転及びA/Pへの並進を制御できるようになる。力が脛骨側及び大腿骨側の表面に対して直角であるので、接触点における反力が、A/Pへの動き及び軸方向の回転を引き起こす。ヒンジ式の膝関節のピン、スリーブ及び柱によって、大腿骨側の構成要素130が脛骨側の構成要素に対して並進及び回転できるようになる。
【0048】
ここで、
図12〜23を参照して、これらの図は、異なる角度に屈曲したヒンジ式の膝関節の一実施形態の側面図及び等角図を示す。
図12及び13は、それぞれ、伸張時のヒンジ式の膝関節の一実施形態の側面図及び等角図である。ピン軸に対して前方にある接触点150は、大腿骨側の構成要素152と脛骨側の構成要素154との間の接触点である。大腿骨側の構成要素を後ろに押そうとする接触反力があるように、脛骨側の構成要素は、接触点150において遠位後方に傾斜している。
図13は、伸張時の大腿骨側の構成要素152の位置を示す。
【0049】
ここで
図14及び15を参照すると、
図14及び15は、それぞれ、20度の屈曲時の
図12のヒンジ式の膝関節の側面図及び等角図である。膝関節が屈曲するにつれて、接触点150は後方に動く。さらに、
図15に示すように、大腿骨側の構成要素152は、脛骨側の構成要素154に対して回転している。軸方向の回転は、内側顆及び外側顆における反力によって生じられるモーメントの差によって起こされる。
【0050】
ここで
図16及び17を参照すると、
図16及び17は、それぞれ、40度の屈曲時の
図12のヒンジ式の膝関節の側面図及び等角図である。接触点150が後方に移動し、大腿骨側の構成要素が軸方向にさらに回転している。膝関節が回転するにつれて、接触点のこの変化が大腿骨側の構成要素のA/Pへの並進を示す。膝関節の屈曲の初期の動きの大部分は軸方向の回転であるが、いくらかのA/Pへの並進が生じる。この「後退」及び回転は、正常な関節の運動と同様である。これらの動きは、脛骨側及び大腿骨側の構成要素の形状によって生じる。これが、そうでなければ大腿骨側の構成要素のこれらの動きを強要しようとするであろう、膝蓋骨に掛かる剪断力を最小にする。膝蓋骨における剪断力の発生は、疼痛または補綴部の破損を引き起こし得る。
【0051】
図11を参照して述べられた遠位の偏心部分から後方の同一中心の部分まで顆の湾曲が変化するにつれて、接触力150がピン穴の中央を通って導かれる。
【0052】
ここで、
図18及び19を参照すると、
図18及び19は、それぞれ、90度の屈曲時の
図12のヒンジ式の膝関節の側面図及び等角図である。同一中心の部分にわたってさらに屈曲する一方で、A/Pへの並進及び軸方向の回転が止まる。顆の後方部分の湾曲の中心がピン穴と同一中心であるため、ピン穴の中央までの距離は一定のままとなる。
【0053】
ここで、
図20及び21を参照すると、
図20及び21は、それぞれ、120度の屈曲時の
図12のヒンジ式の膝関節の側面図及び等角図である。
図11を参照して述べられた湾曲の後方の同一中心部分から近位の偏心部分まで顆の湾曲が変化するにつれて、接触力150がピン穴の中央を通って導かれる。接触力150がピン穴の中央の後方へ移動するにつれて、接触点からピン穴の中央までの距離が短くなる。
【0054】
ここで、
図22及び23を参照すると、
図22及び23は、それぞれ、150度の屈曲時の
図12のヒンジ式の膝関節の側面図及び等角図である。ヒンジ式の膝関節がさらに回転するにつれて、接触力は、概ね、A/Pへの並進を生じ、軸方向の回転はほとんど生じない。これもやはり、正常な膝関節の運動と概ね一致する。本実施形態は、脛骨側及び大腿骨側の構成要素154及び152の表面の特徴によるA/Pへの並進及び軸方向の回転を説明してきたが、他の実施形態は、他のやり方でこれらの動きを達成してもよい。
【0055】
さらなる実施形態は、概ね、大腿骨側の構成要素と脛骨側の構成要素との間の横方向の力を制御しようとする。たとえば、両顆の間の横方向の力の差が動きを生じてもよい。さらに、一方の側に掛かる横方向の力を小さくまたはゼロに保つ一方で、他方の側に掛かる力を制御することで、軸方向の回転が制御できる。さらなる回転には、軸方向の回転を増加させるために、力は反対方向であってよい。回転はモーメントによって制御されるので、回転を制御する別の方法は、モーメントアームを制御することである。
【0056】
別の実施形態は、横方向の心棒ヒンジピンに直角をなす面とは異なるように、対応する大腿骨側の関節表面の脛骨側関節との接触点を生じてもよい。概ね、この面は、内側/外側及び/または外側/内側の方向にわたって延在する。膝関節が膝関節の動作範囲にわたって動くにつれて、対応するインサートの関節の幾何学的形状が平行のままとなるか、または同じ面とは異なるように、関節の動作範囲の全体、一部及び/または様々な範囲にわたる軸方向の回転を生じる。
【0057】
別の実施形態では、横方向のヒンジピンの位置に対する内側または外側の大腿骨側の顆の関節表面の同一中心の矢状方向の湾曲があってよく、反対側の大腿骨側の顆の関節表面がヒンジピンの位置に対して矢状方向に偏心した湾曲を有してよい。これが、脛骨側の関節との接触を、動作範囲の少なくとも一部にわたって、内側/外側または外側/内側に移動する。脛骨側の関節表面は、大腿骨側の湾曲と一致し、関節の動作範囲の全体、一部及び/または様々な範囲にわたる軸方向の回転を引き起こす。
【0058】
代替として、横方向のヒンジピンの位置に対する内側または外側の顆の関節表面の同一中心の矢状方向の湾曲と、ヒンジピンの位置に対して矢状方向に偏心した湾曲を有する反対側の顆の関節表面とが、動きを生じてもよい。脛骨側の関節表面は、大腿骨側の湾曲に一致し、対応する偏心した内側または外側の区画が、複数の屈曲角度及びその対応する接触点の動きに対する所定の経路たどる。脛骨側の柱/スリーブの軸を中心とした軸方向の回転の周囲のこれらの接触点と対応する同一中心の内側または外側の区画との半径方向の並進は、複数の屈曲角度及び脛骨側の柱/スリーブの軸を中心とした軸方向の回転の周囲のその対応する接触点の動きに対する所定の経路をたどる。これが、関節の動作範囲の全体、一部及び/または様々な範囲にわたる軸方向の回転を引き起こす。
【0059】
別の実施形態は、大腿骨側の人工関節の内側及び外側の関節の両方の顆部分に、横方向の心棒ピン位置に対して偏心した矢状方向の湾曲を備えた大腿骨側の人工関節を含む。大腿骨側の関節の偏心した接触点が並進するにつれて傾斜する及び/または下に傾く、対応する関節の幾何学的形状を備えた脛骨側のインサートが、内側/外側及び/または外側/内側の方向に移動し、関節の動作範囲の全体、一部及び/または様々な範囲にわたる軸方向の回転を引き起こす。
【0060】
別の実施形態では、横方向のヒンジピンの位置に対する内側または外側の顆の関節表面の同一中心の矢状方向の湾曲と、ヒンジピンの位置に対して矢状方向に偏心した湾曲を有する反対側の顆の関節表面とがあってよい。脛骨側の関節表面は大腿骨側の湾曲と一致し、対応する偏心した内側または外側の区画が、複数の屈曲角度、及びその対応する接触点の動き、及び脛骨側の柱/スリーブの軸を中心とした軸方向の回転の周囲のこれらの接触点の半径方向の並進に対する所定の経路をたどる。対応する同一中心の内側または外側の区画は、複数の屈曲角度及び脛骨側の柱/スリーブの軸を中心とした軸方向の回転の周囲のその対応する接触点の動きに対して所定の傾斜する及び/または下に傾く経路をたどり、それが、関節の動作範囲の全体、一部及び/または様々な範囲にわたる軸方向の回転を引き起こす。
【0061】
代替として、大腿骨側の人工関節が、大腿骨側の人工関節の内側及び外側の関節の両方の顆部分に、横方向のピン位置に対して同一中心の矢状方向の湾曲を有してよい。傾斜する及び/または下に傾く、対応する関節の幾何学的形状を備えた脛骨側のインサートが、大腿骨側の関節表面に対する軸方向の回転経路を形成する。並進/回転の自由によって、横方向のピンが大腿骨側の人工関節を回転及び並進することができるようになる。
【0062】
ここで、
図24〜41を参照すると、図は、異なる角度に屈曲したヒンジ式の膝関節の一実施形態の側面図、等角図、及び上面図を示す。
図24〜26は、それぞれ、伸張時のヒンジ式の膝関節の一実施形態の側面図、等角図、及び上面図である。大腿骨側の構成要素180は、脛骨側の構成要素184に対してピン182を中心に回転する。接触領域200は、脛骨側のインサート186が大腿骨側の構成要素180と接触し得る領域を示す。
図24〜41の接触領域200は、大腿骨側の構成要素180が、脛骨側のインサート186に沿ってどのように回転及び並進をするかを示す。
【0063】
ここで、
図27〜29を参照すると、
図27〜29は、それぞれ、20度の屈曲時の
図27のヒンジ式の膝関節の側面図、等角図、及び上面図である。大腿骨側の構成要素180は、脛骨側の構成要素184に対してピン182を中心にさらに回転する。接触領域200、特に外側の接触領域は、後退されている。外側の接触面積の後退は、脛骨側の構成要素184に対する大腿骨側の構成要素180の軸方向の回転に一致する。
【0064】
ここで、
図30〜32を参照すると、
図30〜32は、それぞれ、40度の屈曲時の
図27のヒンジ式の膝関節の側面図、等角図、及び上面図である。大腿骨側の構成要素180は、脛骨側の構成要素184に対してピン182を中心にさらに回転する。接触領域200は、さらに後退されており、外側の接触面積は、内側顆に対してやはりさらに後方に並進されている。これが、さらなる軸方向の回転に一致する。
【0065】
ここで、
図33〜35を参照すると、
図33〜35は、それぞれ、90度の屈曲時の
図27のヒンジ式の膝関節の側面図、等角図、及び上面図である。大腿骨側の構成要素180は、脛骨側の構成要素184に対してピン182を中心にさらに回転する。40度から90度までの屈曲では、回転が湾曲の同一中心の部分にわたって続くので、回転及び並進は最小にされる。
【0066】
ここで、
図36〜38を参照すると、
図36〜38は、それぞれ、120度の屈曲時の
図27のヒンジ式の膝関節の側面図、等角図、及び上面図である。大腿骨側の構成要素180は、脛骨側の構成要素184に対してピン182を中心にさらに回転する。40度から90度の間の屈曲と同様に、90度から120度の屈曲では、回転が湾曲の同一中心の部分にわたって続くので、回転及び並進は最小にされる。
【0067】
ここで、
図39〜41を参照すると、
図39〜41は、それぞれ、150度の屈曲時の
図27のヒンジ式の膝関節の側面図、等角図、及び上面図を示す。大腿骨側の構成要素180は、脛骨側の構成要素184に対してピン182を中心にさらに回転する。120度から150度までさらに屈曲するにつれて、接触領域200は並進し、軸方向の回転はほとんど有さない。
【0068】
したがって、膝関節が屈曲するにつれて、回転によって、膝蓋骨内に力を発生させることなく、膝蓋骨が膝蓋骨の溝に沿って滑動できるようになる。さらに、自然の動きに近い動きによって、ヒンジ式の膝関節は、軟組織に力を発生させない。これが、手術によって
当初損傷を受ける軟組織を保護する助けとなり得る。さらに、いくらかの軟組織は手術時に除去され、したがって、残存している軟組織は、任務を完了するためにより激しく働かなければならない。軟組織に掛かる力を低減することによって、手術後の軟組織の腫張、疼痛、及び追加のストレスを低減できる。
【0069】
前述の内容を鑑みて、本発明の複数の利点が達成及び到達されることが理解されるであろう。
【0070】
本実施形態は、それによって、他の当業者が様々な実施形態において、及び様々な修正例によって、考えられる特定の使用に適するように本発明を最もよく利用できるようにするために、本発明の原理及びその実用的な用途を最もよく説明するように選択及び説明されている。
【0071】
本明細書において説明され例示された構造体及び方法において、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正例が行われ得るため、前述の説明に含まれる、または添付の図面に示されるすべての事項は、限定するよりもむしろ例示的なものとして解釈されるべきことが意図される。したがって、本発明の広さ及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、本明細書に添付される以下の請求項及びその均等物のみに従って定義されるべきである。