【文献】
Yiru Sun,Noel C.Giebink,et.al,Management of singlet and triplet exciton for efficient white organic light -emiiting devices,NATURE,英国,Nature publishing,2006年 4月13日,V440,P908-912
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第二蛍光発光物質が、りん光発光物質から第二蛍光発光物質へと三重項励起子が一部移動する濃度でりん光増感蛍光層中に存在することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【背景技術】
【0003】
有機物質を利用したオプトエレクトロニクス装置は、さまざまな理由からますます魅力的になってきている。装置に使用される物質の多くは比較的安価であるため、有機オプトエレクトロニクス装置は無機装置に対して低コストとなり得るという利点がある。さらに、柔軟性など有機物質固有の特性により、フレキシブル基板上での製造など特殊な用途に応用することができる。有機オプトエレクトロニクス装置の例として、有機発光装置、有機フォトトランジスタ、有機光電池および有機光検出器がある。OLEDにおいて、有機物質は従来の物質に対して性能面で利点を有する可能性がある。例えば、有機発光層が放出する光の波長は、通常適当なドーパントで容易に調整されてよい。
【0004】
ここで“有機”とは、有機オプトエレクトロニクス装置の製造に使用することがある低分子有機物質だけでなく高分子物質も含む。“低分子”とは、高分子でない有機物質であるが、実際かなり大きな分子であってもよい。低分子は状況によっては繰り返し構造を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を使用する場合は“低分子”の分類から除外しない。また、低分子は高分子骨格のペンダント基または骨格の一部として高分子に組み込まれていてもよい。また、低分子は、デンドリマーの核部分として働くこともあり、核部分上に構築された一連の化学シェルから構成される。デンドリマーの核部分は、蛍光またはりん光低分子発光体である場合がある。デンドリマーは“低分子”である場合があり、現在OLED分野で使用されているものは低分子であると考えられる。一般的に、高分子が分子ごとに異なる可能性のある化学式および分子量を有するのに対し、低分子は単一分子量であり明確な化学式で表される。ここでは、“有機”は、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子置換ヒドロカルビル配位子の金属錯体を含む。
【0005】
OLEDは、装置に電圧が印加された時に発光する有機薄膜を利用する。OLEDはフラットパネル表示装置、照明、バックライトなどへの利用においてますます魅力的な技術となってきている。さまざまなOLED物質および構造が米国特許第5,844,363号明細書、米国特許第6,303,238号明細書および米国特許第5,707,745号明細書に記載されており、参照により全体がここに組み込まれる。
【0006】
OLEDは一般的に(必ずしもそうではない)、少なくとも一つの電極を通して発光することを意図しており、1つ以上の透明電極が、有機オプトエレクトロニクス装置に有用である場合がある。例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明電極物質は、底面電極として使用できる。米国特許第5,703,436号明細書および米国特許第5,707,745号明細書で公開されている透明上面電極もまた使用することができ、参照により全体がここに組み込まれる。底面電極からのみ発光するよう意図されている装置では、上面電極は透明である必要はなく、高電気伝導性を有する厚い反射金属層を含んでもよい。同様に、上面電極からのみ発光するよう意図されている装置では、底面電極は不透明性および/または反射性を有してもよい。電極が透明でなくてもよい場合、より厚い層を使用することで導電率が上がる可能性があり、反射電極を使用する場合、透明電極方向に光を反射させることで、もう一方の電極を通した発光量を増加させることができる。両方の電極を透明にして完全に透明な装置を製造することも可能である。側面発光のOLEDも製造することができ、その場合一方または両方の電極が不透明性または反射性を有する。
【0007】
ここで、“上面”とは基板から最も遠く、“底面”とは基板に最も近い場所を意味する。例えば、二つの電極を有する装置では、底面電極は基板に最も近い電極であり、通常最初に製造された電極である。底面電極は二面を有し、底部の表面は基板に最も近く、上部の表面は基板から離れている。第一層が第二層の“上部に堆積されている”と表されている場合、第一層は基板から離れて堆積されている。第一層が第二層と“物理的に接触している”と明記されていない限り、第一層と第二層の間にその他の層が存在することもある。例えば、間にいくつかの有機層が存在していても、カソードがアノードの“上部に積層されている”と表現されることもある。
【0008】
ここで、“溶液処理できる”とは、溶液または懸濁液形態において溶解、分散または輸送、および/または液体媒体から沈殿できることを意味する。
【0009】
ここで、および通常当業者には理解されているように、第一エネルギー準位が真空エネルギー準位に近い場合、第一“最高占有分子軌道”(HOMO)または“最低非占有分子軌道”(LUMO)エネルギー準位は、第二HOMOまたはLUMOエネルギー準位“より大きい”または“より高い”。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対してマイナスのエネルギーとして計測されるため、より高いHOMOエネルギー準位が絶対値の小さいIP(よりマイナスでないIP)に対応する。同様により高いLUMOエネルギー準位は絶対値の小さい(よりマイナスでないEA)電子親和力(EA)に対応する。真空準位が上部にある通常のエネルギー準位表では、ある物質のLUMOエネルギー準位は、同じ物質のHOMOエネルギー準位より高い。この形式の表の場合、“より高い”HOMOまたはLUMOエネルギー準位が“より低い”HOMOまたはLUMOエネルギー準位より上部にくる。
【0010】
白色有機発光装置(WOLED)は、フラットパネル表示装置および照明源などさまざまな用途に利用できるため関心を集めてきた。白色照明源の品質は、単純なセットのパラメータで完全に表すことができる。光源の色は、CIE色度座標xおよびy(CIE色度 1931 2°標準観測者)で表される。CIE座標は典型的に二次元プロットで表される。単色では、左下の青から始まり時計回りに光のスペクトルを通って右下の赤まで馬蹄形曲線を描く。与えられたエネルギーの光源のCIE座標およびスペクトル形状は、曲線の内部に収まる。全波長の光を均一に足し合わせると、白色または座標の中心(CIE xy座標、0.33、0.33)である中性点を示す。二つ以上の光源からの光を重ねると、それぞれの光源のCIE座標の加重平均強度によって表される色の光となる。したがって二つ以上の光源からの光を重ね合わせることで白色光を発生させることができる。
【0011】
照明に白色光源を使用する場合、光源のCIE座標に加えてCIE演色評価数(CRI)も考慮に入れる場合がある。CRIは、光源が照らし出す物体の色をどれくらいよく表しているかの指標である。与えられた光源が標準の光に対して完全に一致する場合、CRIは100となる。CRI値が少なくとも70あれば特定の利用に対しては許容できるが、好ましい白色源はおよそ80以上のCRIを有してよい。
【0012】
りん光発光物質のみを有する白色OLEDは非常に効率的であるかもしれないが、現在のところその動作安定性は青色りん光成分の寿命により限界がある。蛍光発光物質のみを有する白色OLEDは、動作安定性には優れているかもしれないが、外部量子効率が通常全てりん光の白色OLEDの3分の1程度である。本発明では、白色OLEDの効率と寿命のバランスを改善するために、改良された装置構造においてりん光と蛍光の技術を融合させた。
【0013】
本発明では、りん光緑色および蛍光赤色、青色発光体をドープした導電性ホスト物質を使用した蛍光とりん光増感蛍光を組み合わせた白色有機発光装置(WOLED)を提供する。二つの蛍光ドーパントは単一のりん光ドーパントのみとともに使用されるが、発明した装置は原理的に100%の内部量子効率を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
蛍光有機発光装置は、スピン対称性を保持しなければならないため、内部量子効率(IQE)約25%程度と上限がある。りん光体の別の放射過程では、IQEは非常に高く100%近くを示している。しかし、長寿命の青色りん光ドーパントは達成できていないため、赤色、緑色および青色りん光ドーパントを使用した三色白色OLED(WOLED)は装置の寿命および応用の可能性に制限がある。さらに、りん光物質は有機系ではエネルギー準位が〜0.8eVとスピン非対称励起子(一重項)より低いスピン対称励起子(三重項)から発光するため、りん光発光物質のみを使用した装置では、交換相互作用エネルギーが事実上失われる。本発明では、青色発光にはより高エネルギーの一重項励起子を利用するために青色発光蛍光ドーパントを使用し、より低いエネルギー三重項励起子を利用するために赤色蛍光発光体と共ドープした緑色りん光発光体使用することで、この問題を克服している。赤色蛍光発光体からの発光は、共通の導電ホスト中で共ドープしたりん光体の存在により増感される。増感層を蛍光体で軽くドープすることで、緑色りん光体からの三重項の完全な移動以外は、赤色および緑色の混合発光となる。一重項捕獲青色蛍光体からの発光と組み合わせることで、目的の色のバランスを作り出すことができる。この方法では、さまざまな蛍光色素を高輝度およびりん光体構成の量子効率を維持したままWOLEDに使用することができる。本発明の装置では、IQEは100%近くとなる。
【0020】
通常OLEDは、アノードとカソードの間に配置され、電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流を流すと、アノードから正孔が、カソードから電子が有機層に注入される。注入された正孔と電子とはそれぞれ逆に帯電した電極に移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在すると、励起状態を有する局在電子と正孔のペア“励起子”が形成される。励起子が光電子放出機構を経由して緩和する時に光が放出される。励起子がエキシマーまたはエキシプレックス上に局在する場合もある。熱緩和などの非放射機構が起こることもあるが、一般的にこれは望ましくないと考えられている。
【0021】
初期のOLEDでは、米国特許第4,769,292号明細書で公開されているように、一重項状態から発光する(“蛍光”)発光分子が使用されており、参照により全体が組み込まれる。蛍光発光は通常10ナノ秒未満の時間で起こる。
【0022】
最近では、三重項状態から発光する(“りん光”)発光物質を使用したOLEDが実証されている。Baldo et al.,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”,Nature, vol.395, 151−154,1998;(“Baldo−I”)、Baldo et al., “Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence”,Appl. Phys. Lett., vol.75,No.1,4−6(1999)(“Baldo−II”)が参照により全体がここに組み込まれる。りん光は、スピン状態の変化が必要な遷移であるため“禁制”遷移として言及されており、量子力学によればそのような遷移は有利でないことが示されている。結果としてりん光発光には通常少なくとも10ナノ秒を越える時間を要し、多くの場合100ナノ秒以上を要する。りん光の自然放射寿命が長すぎると、三重項は非放射機構によって減衰し発光しないことがある。有機りん光体は、非常に低温で非共有電子対を持つヘテロ原子を含む分子においてよく観測される。2、2−ビピリジンはそのような分子の一つである。非放射減衰機構は通常温度に依存し、液体窒素温度でりん光を発光する有機材料は通常室温ではりん光を示さない。しかしBaldoが実証したように、この問題は室温でりん光発光するりん光化合物を選択することで解決されるかもしれない。代表的発光層には、米国特許第6,303,238号明細書、米国特許第6,310,360号明細書、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許出願公開第2002/0182441号明細書、米国特許出願公開第2003/0072964号明細書、国際公開第02/074015号で公開されているドープまたは非ドープしたりん光有機金属材料などが含まれる。
【0023】
一般に、OLEDにおける励起子は約3:1の割合(三重項約75%、一重項約25%)で形成されると考えられている。参照によりここに全体が組み込まれるAdachi、他の“Nearly 100% Internal Phosphorescent Efficiency In An Organic Light Emitting Device”J.Appl.Phys.,90,5048(2001)を参照されたい。三重項励起子が容易に一重項励起状態にエネルギー移動しない場合があるのに対して、多くの場合、一重項励起子は容易に“項間交差”を介して三重項励起状態にエネルギー移動する場合がある。結果として、理論的にはりん光OLEDにおいて100%の内部量子効率を達成することが可能である。蛍光装置では、通常三重項励起子のエネルギーは装置を加熱する非放射減衰過程で失われ、結果として内部量子効率はより低くなる。三重項励起状態から発光するりん光発光材料を利用したOLEDは、米国特許第6,303,238号明細書などで公開されており、参照によりここに全体が組み込まれる。
【0024】
りん光発光に先行して、三重項励起状態から発光減衰が起こる中間非三重項状態へと遷移してもよい。例えば、ランタニド元素に配位した有機分子においては、ランタニド金属上に局在した励起状態からりん光発光が起こる。しかし、これらの物質では、三重項励起状態から直接りん光発光するのではなく、ランタニド金属イオン上を中心とする原子励起状態から発光が起こる。ユーロピウムジケトナート錯体はこれらのタイプの化学種の一群である。
【0025】
三重項状態からのりん光発光は、有機分子を原子番号の大きい原子と、好ましくは結合を介して、近接近するよう制限することによって、蛍光発光より強くなり得る。この現象は重原子効果と呼ばれており、スピン軌道結合として知られている機構により起こる。このようなりん光発光遷移は、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)などの有機金属分子の金属配位子電荷移動(MLCT)励起状態から観測される場合がある。
【0026】
ここで、“三重項エネルギー”とは、所定の材料のりん光発光スペクトル中で確認される最も高いエネルギー形態に対応するエネルギーを指す。最も高いエネルギー形態とは、必ずしもりん光発光スペクトルの最大強度のピークである必要はなく、例えばピークの高エネルギー側の鮮明な肩の極大でもよい。
【0027】
ここで、“有機金属”とは、通常当業者に理解されており、Gray L. Miessler、 Donald A. Tarr, Prentice Hallの“無機化学”(第二版)(1998年)などで示されているものである。従って有機金属とは、金属に有機基が金属炭素結合している化合物のことを指す。この分類には、アミン、ハロゲン化物、擬似ハライド(CNなど)および同類のものの金属錯体などのヘテロ原子からの供与結合のみの配位化合物自体は含まれない。実際、有機金属化合物は、有機種への一つ以上の炭素金属結合に加えて、ヘテロ原子からの一つ以上の供与結合を通常含む。有機種への炭素金属結合とは、金属とフェニル、アルキル、アルケニルなどの有機基の炭素原子の直接結合を表し、CNやCOの炭素など“無機炭素”と金属との結合は含まない。
【0028】
図1は、有機発光装置100を表す。図は必ずしも原寸に比例して書かれたものではない。装置100は、基板110と、アノード115と、正孔注入層120と、正孔輸送層125と、電子ブロッキング層130と、発光層135と、正孔ブロッキング層140と、電子輸送層145と、電子注入層150と、保護層155と、カソード160とを含んでよい。カソード160は、第一導電層162と第二導電層164とを有する複合カソードである。装置100は説明した層を順に堆積して作製してもよい。
【0029】
基板110は、目的の構造性質を提供するあらゆる適当な基板であってよい。基板110は柔軟なものでも硬質なものでもよい。基板110は、透明、半透明、不透明でもよい。プラスチックおよびガラスは、好ましい硬質な基板材料の例である。プラスチックおよび金属箔は、好ましい柔軟な基板材料の例である。基板110は回路を容易に作製するために半導体材料であってもよい。例えば基板110は、基板上に順に堆積するOLEDを制御できるようその上に回路が作製されるシリコンウェーハでもよい。その他のものを使用してもよい。基板110の材料および厚さは、好ましい構造と光学特性が得られるよう選択してよい。
【0030】
アノード115は、正孔を有機層に輸送するために十分導電性のある適当なアノードでよい。アノード115の材料は約4eV超の仕事関数を有するものが好ましい(“高仕事関数材料”)。適切なアノード材料として、インジウムスズ酸化物(ITO)およびインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの導電性金属酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物(AlZnO)および金属などがある。アノード115(および基板110)は、ボトムエミッション型の装置を作成するために十分透明でよい。好ましい透明な基板とアノードの組み合わせは、商業用のガラスまたはプラスチック(基板)上にITO(アノード)を堆積させたものである。柔軟で透明な基板とアノードの組み合わせは、米国特許第5,844,363号明細書および米国特許第6,602,540 B2号明細書で公開されており、参照により全体がここに組み込まれる。アノード115は不透明性および/または反射性を有してもよい。反射性アノード115は、装置の上面からの発光量を増加するため上面発光装置に適している。アノード115の材料および厚さは、好ましい導電性能と光学特性が得られるよう選択してよい。アノード115が透明な場合、特定の材料にとって、所望の導電性を示すほどに十分厚く、その一方で所望の透明性を示すほどに十分薄いという厚さの範囲があるだろう。他のアノード材料および構造を使用してもよい。
【0031】
正孔輸送層125は、正孔を輸送できる材料を含んでよい。正孔輸送層130は、真性(非ドープ)層またはドープ層であってよい。導電性を高めるためにドープしてもよい。真性正孔輸送層の例として、α−NPDおよびTPDがある。P−ドープ正孔輸送層の例としては、モル比50:1でm−MTDATAにF
4−TCNQをドープしたものがあり、Forrest他による米国特許出願公開第2003/02309890号明細書で公開されており、参照により全体がここに組み込まれる。その他の正孔輸送層を使用してもよい。
【0032】
発光領域135は、少なくとも二つの発光層を含み、それぞれはアノード115とカソード160間に電流が流れると発光できる有機物質を含む。少なくとも一つの発光層は、可視スペクトルの高エネルギー部分(青色領域が好ましい)で発光する蛍光発光物質を含む。もう一方の発光層は、りん光発光物質および蛍光発光物質を含む。発光層は、電子、正孔および/または励起子を捕獲する可能性がある発光物質をドープした電子および/または正孔を輸送できるホスト物質を含み、励起子は光放射機構を経由して発光物質から緩和する。発光層は輸送と発光両方の特性を持った単一の物質を含んでよい。発光物質がドーパントか主要構成成分かにかかわらず、発光層は発光物質の発光を調整するドーパントなどの他の物質を含んでよい。発光領域135は、組み合わせて好ましい光のスペクトルを発光することができる複数個の発光物質を含んでよい。りん光発光物質の例としてIr(ppy)
3、蛍光発光物質の例としてDCMおよびDMQA、ホスト物質の例としてAlq
3、CBP、mCPがある。発光物質とホスト物質の例は、Thompson、他による米国特許第6,303,238号明細書で公開されており、参照により全体がここに組み込まれる。発光領域135にはさまざまな形で発光物質が含まれる。例えば、発光低分子は、高分子に組み込まれていてもよい。これは、別々の異なる分子種として低分子を高分子にドープする、共重合体を形成するように高分子の骨格に低分子を組み込む、または高分子上にペンダント基として低分子を結合させることで形成できる。他の発光層物質および構造を使用してもよい。例えば、低分子発光物質はデンドリマーの核として存在してもよい。
【0033】
多くの有用な発光物質には、金属中心と結合している一つ以上の配位子が含まれる。有機金属発光物質の光活性性能に直接寄与する場合、その配位子は“光活性”であると表現してよい。“光活性”を有する配位子は、金属と結合して光子放出時にそこから電子が移動するおよびそこへ電子が移動するエネルギー準位を与える可能性がある。その他の配位子は“補助的”であると表現してよい。補助配位子は、例えば光活性配位子のエネルギー準位をシフトさせることで分子の光活性を変更することがあるが、発光に関与するエネルギー準位を直接与えることはない。ある分子中で光活性な配位子は、他の分子中で補助配位子であることもある。これらの光活性と補助配位子の定義は、理論を限定することを意図していない。
【0034】
電子輸送層145は、電子を輸送することができる物質を含んでよい。電子輸送層145は真性(非ドープ)またはドープ層を含んでよい。導電率を向上させるためにドープしてもよい。Alq3は真性電子輸送層の一例である。Nドープ電子輸送層の例としては、Forrest、他により米国特許出願公開第203−02309890号明細書で公開されているBPhenにLiをモル比1:1でドープしたものがあり、参照により全体がここに組み込まれる。その他の電子輸送層を使用してもよい。
【0035】
電子輸送層の電荷輸送成分は、カソードから電子輸送層のLUMO(最低非占有分子軌道)エネルギー準位に効率的に電子を注入できるものを選択してよい。“電荷輸送成分”とは、実際に電子を輸送するLUMOエネルギー準位に関与する物質である。この成分は、基材またはドーパントでもよい。通常、有機物質のLUMOエネルギー準位は物質の電子親和力、カソードの電子注入効率はカソード物質の仕事関数によって特定してよい。このことから、電子輸送層および隣接したカソードの好ましい性質は、ETLの電荷輸送成分の電子親和力およびカソード物質の仕事関数の点から特定してよい。高い電子注入効率を得るためには、カソード物質の仕事関数が電子輸送層の電荷輸送成分の電子親和力より0.75eVを超えて高くない、好ましくは0.5eVを超えない範囲で高くないことが好ましい。電子が注入される層にも同様の理解が適用される。
【0036】
カソード160は、電子を伝導し、装置100の有機層に注入できる当業者に知られているいかなる適当な物質または物質の組み合わせでよい。カソード160は透明または不透明でよく、反射性を有するものでよい。金属および金属酸化物はカソード物質の適当な物質の例である。カソード160は、単層でもよく、複合構造を有してもよい。
図1は、薄い金属層162および厚い導電性を有する金属酸化物層164を有する複合カソード160を表す。複合カソードの厚い層164に好ましい物質にはITO、IZOおよびその他当業者の間で知られている物質が含まれる。米国特許第5,703,436号明細書、米国特許第5,707,745号明細書、米国特許第6,548,956B2号明細書および米国特許第6,576,134B2号明細書では、透明性、導電性、スパッタリング蒸着したITO層で覆われたMg:Agなどの金属の薄い層を有する複合カソードを含むカソードの例が公開されており、参照によりここに全体が組み込まれる。単層カソード160、複合カソードの薄い金属層162またはその他の部分であるかどうかにかかわらず、下位有機層と接触するカソード160の部分は、仕事関数が約4eV未満(“低仕事関数物質”)を有する物質でできていることが好ましい。他のカソード物質および構造を使用してもよい。
【0037】
発光層からの電荷キャリア(電子または正孔)および/または励起子数を減少させるために、ブロッキング層を使用してもよい。電子ブロッキング層130は、発光層135から正孔輸送層125へ移動する電子をブロックするために発光層135と正孔輸送層125間に配置されてよい。同様に、正孔ブロッキング層140は、発光層135から電子輸送層145へ移動する正孔をブロックするために発光層135と電子輸送層145間に配置されてよい。発光層から拡散する励起子をブロックするために、ブロッキング層を使用してもよい。ブロッキング層の理論および使用については、米国特許第6,097,147号明細書およびForrest、他による米国特許出願公開第2003/02309890号明細書でより詳細に説明されており、参照により全体がここに組み込まれる。
【0038】
本明細書において、および当業者には理解されているように“ブロッキング層”とは、電荷キャリアおよび/または励起子を完全にブロックする必要はないが、装置内の電荷キャリアおよび/または励起子の輸送を顕著に抑制する障壁を与える層を意味する。装置にそのようなブロッキング層が存在すると、ブロッキング層の存在しない類似した装置と比較して実質的に高い効率が得られる可能性がある。また、ブロッキング層は、発光をOLEDの目的の範囲内に限定するために使用できる。
【0039】
通常注入層は、電極または有機層などのある層から隣接する有機層への電荷キャリアの注入を改善する可能性のある物質を含む。注入層は電荷輸送の機能を果たすこともある。装置100において、正孔注入層120はアノード115から正孔輸送層125への正孔の注入を改善するいかなる物質でもよい。CuPcは、ITOアノード115およびその他アノードからの正孔注入層として使用される物質の例である。装置100において、電子注入層150は電子輸送層145への電子の注入を改善するいかなる物質でもよい。LiF/Alは、隣接層から電子輸送層への電子注入層として使用してよい物質の例である。その他の物質および物質の組み合わせを注入層として使用してもよい。特定の装置の構成に応じて、注入層は装置100に表されている場所と違う場所に配置されていてもよい。注入層の更なる例は、Lu、他による米国特許出願公開第09/931,948号明細書に公開されており、参照により全体がここに組み込まれる。正孔注入層は、スピンコートポリマー(例、PEDOT:PSS)などの溶液堆積物質を含んでよく、または蒸着低分子物質(例、CuPcまたはMTDATA)でもよい。
【0040】
正孔注入層(HIL)は、アノードから正孔注入物質への効率的な正孔注入を提供するために、アノード表面を平坦化または湿潤させる。正孔注入層は、ここで相対イオン化ポテンシャル(IP)エネルギーで定義されているように、HILの片側に隣接するアノード層およびHILのもう一方側に隣接する正孔輸送層と有利に調和するHOMO(最高占有分子軌道)エネルギー準位を有する電荷輸送成分を含んでよい。“電荷輸送成分”とは、実際に正孔を輸送するHOMOエネルギー準位に関与する物質である。この成分はHILの基材またはドーパントである可能性がある。ドープしたHILを使用する場合、ドーパントはその電気的性質、ホストは湿潤性、柔軟性、靭性などの形態的性質によって選択される。HIL物質の好ましい性質は、正孔がアノードからHIL物質に効率的に注入されるものである。特に、HILの電荷輸送成分は、アノード物質のIPより最高で約0.7eVの範囲で大きいIPを有することが好ましい。電荷輸送成分がアノード物質のIPより最高で約0.5eVの範囲で大きければさらに好ましい。正孔が注入されるいかなる層にも同様の理解が適用される。HIL物質はさらに、通常の正孔輸送物質の正孔伝導率より十分低い正孔伝導率を有し得るという点において、OLEDの正孔輸送層に典型的に使用される通常の正孔輸送物質と区別される。本発明のHILの厚さは、アノード表面を平坦化または湿潤させるのに十分な厚さを有してよい。例えば、10nm程度の厚さのHILは滑らかなアノード表面であれば許容されるかもしれない。しかしアノード表面は非常に粗い傾向があり、HILの厚さは50nmまでが好ましい場合もある。
【0041】
その後の製造過程で下位層を保護するために保護層を使用してもよい。例えば、金属または金属酸化物上部電極を製造する過程で有機層が損傷を受けることがあり、そのような損傷を軽減または除外するために保護層を使用してもよい。装置100では、カソード160を製造する過程で、保護層155が下位有機層への損傷を軽減し得る。保護層は、装置100の作業電圧を顕著に増大させないよう、輸送するキャリアの種(装置100においては電子)に関して高キャリア移動度を有することが好ましい。CuPc、BCPおよびさまざまな金属フタロシアニンは、保護層に使用してよい物質の例である。その他の物質または物質の組み合わせを使用してもよい。保護層155の厚さは、有機保護層160の堆積後の製造過程で下位層に損傷がほぼまたは全く発生しないために十分厚いが、装置100の作業電圧を顕著に増大させない程度であることが好ましい。保護層155は導電性を向上させるためにドープしてもよい。例えば、CuPcまたはBCP保護層160はLiでドープしてもよい。保護層に関して、Lu、他による米国特許出願第09/931,948号明細書でより詳細に説明されており、参照により全体がここに組み込まれる。
【0042】
図2は逆型OLEDを表す。装置は、基板210と、カソード215と、発光層220と、正孔輸送層225と、アノード230とを含む。装置200は、記載される層を順に堆積して製造してよい。最も一般的OLEDの構成は、カソードがアノードの上部に配置されているが、装置200ではカソード215がアノード230の下部に配置されているため、“逆型”OLEDと言ってよい。装置100に対して記載されるものと類似の物質を装置200の対応する層に使用してもよい。
図2は、装置100の構造から省略できる層の一例を示す。
【0043】
図1および2に描写されている単純な層構造は、例を限定するものではなく、発明の実施形態は、その他さまざまな構造と関連して使用してよいと理解される。記載されている特定の物質および構造は実際の例であり、その他の物質および構造を使用してもよい。記載されたさまざまな層を異なる方法で組み合わせることで機能的OLEDが達成される可能性があり、また、設計、性能および費用を考慮して、層を完全に除外してもよい。特に記載されていないその他の層を含んでもよい。特に記載されていない物質を使用してもよい。ここで与えられている例の多くでは、単一の物質を含むいくつかの層について説明されているが、ホストとドーパントの混合などの物質の組み合わせ、またはより広い意味での混合物も使用してよいと理解される。層はいくつかの副層を含むこともある。ここでいくつかの層に与えられている名称は、厳密に限定されるものではない。例えば、装置200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し発光層220に注入するものであり、正孔輸送層または正孔注入層と表現されるかもしれない。一実施形態では、OLEDはカソードとアノード間に配置された“有機層”を有すると記載されている場合がある。この有機層は、例として
図1および2に対して記載したように単層、または異なる有機物質の多層を含んでよい。
【0044】
Friend、他による米国特許第5,247,190号明細書で公開され、参照により全体がここに組み込まれる高分子物質を含むOLED(PLED)など、特に記載されていない構造および物質も使用してよい。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDも使用してよい。OLEDは積み重ねることができ、その例はForrest、他による米国特許第5,707,745号明細書で公開されており、参照により全体がここに組み込まれる。OLEDの構造は
図1および2で描写されている単純な層構造から逸脱してもよい。例えば、参照により全体がここに組み込まれるForrest、他による米国特許第6,091,195号明細書に記載されているメサ構造および/またはBulovic、他による米国特許第5,834,893号明細書に記載され、ピット構造などのように、基板は光取り出し効率を向上させるために傾斜のある反射表面を含んでもよい。
【0045】
特定されていなければ、いくつかの実施形態における層はあらゆる適切な方法で堆積してよい。有機層の場合、好ましい方法は、米国特許第6,013,982号明細書、米国特許第6,087,196号明細書に記載されており参照により全体がここに組み込まれる熱蒸発、インクジェット、Forrest、他により米国特許第6,337,102号明細書に記載されており参照により全体がここに組み込まれる有機気相堆積法(OVPD)、米国特許出願公開第10/233,470号明細書に記載されており参照により全体がここに組み込まれる有機蒸気ジェットプリント法(OVJP)などを含む。その他適切な堆積方法は、スピンコートおよびその他溶液ベースの方法を含む。溶液ベースの方法は、窒素または不活性雰囲気で実施されることが好ましい。その他の層では、好ましい方法は熱蒸発を含む。好ましいパターン形成法は、スルーマスク堆積、米国特許第6,294,398号明細書、米国特許第6,468,819号明細書に記載され、参照により全体がここに組み込まれる冷間圧接法、およびインクジェット法およびOVJPなどの堆積方法に関連するパターン形成を含む。その他の方法を使用してもよい。堆積させる物質は、特定の堆積方法と適合するように修飾してもよい。例えば、分岐の有無にかかわらず、できれば少なくとも3つの炭素を含むアルキル基およびアリール基などの置換基を、低分子中において、溶解される能力を増大させるために使用してよい。20以上の炭素を含む置換基を使用してもよいが、3から20の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は再結晶の傾向が低い場合があるため、非対称構造を有する物質のほうが対称構造を有する物質より高い溶解機能を有する場合がある。デンドリマー置換基を低分子が溶解される能力を増大させるために使用してよい。
【0046】
ここで示される分子は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、さまざまな異なる方法で置換してよい。例えば、三つの二座配位子を有する化合物に置換基を加え、置換基を加えた後に、一つ以上の二座配位子を結合させ、例として四座配位子または六座配位子などを形成させてもよい。その他の結合が形成されてもよい。当業者に理解されている“キレート効果”のため、結合していない同様の化合物と比較するとこの種の結合は安定性を向上させる可能性があると考えられている。
【0047】
本発明の実施形態にしたがって製造される装置は、フラットパネル表示装置、コンピュータのモニター、テレビ、広告掲示板、内外照明用ライト、および/または信号、ヘッドアップ表示装置、透明表示装置、フレキシブル表示装置、レーザープリンター、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、デジタルカメラ、カムコーダー、ファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁、劇場またはスタジアムスクリーンまたは標示を含むさまざまな消費者製品に組み込んでよい。本発明に従って製造される装置を制御するために、パッシブマトリックス型およびアクティブマトリックス型を含むさまざまな制御機構を使用してよい。多くの装置は、18℃から30℃の人間の適温範囲、より望ましくは室温(20℃から25℃)の範囲で使用されるように設計されている。
【0048】
ここで記載されている物質および構造は、OLED以外の装置で応用してよい。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などのその他オプトエレクトロニック装置もこれらの物質および構造を採用してよい。より一般的に、有機トランジスタなどの有機装置は、これらの物質および構造を採用してよい。
【0049】
本発明の装置は、ホスト物質中のドーパントとして、第一蛍光発光物質を有する蛍光層とホスト物質中のドーパントとして第二蛍光発光物質およびりん光発光物質を含むりん光増感蛍光層とを含む発光領域を有する。好ましい実施形態において、第一蛍光発光物質は青色発光物質であり、りん光増感蛍光層は緑色発光りん光物質および赤色発光蛍光物質を有する。第二(赤色)蛍光ドーパントからの発光は、りん光増感発光層の共通のホスト中の共ドープされたりん光物質の存在により増感される。第二蛍光発光物質で軽く増感層をドープすることで、りん光物質からの三重項の移動が完全な場合以外は、りん光増感層の二つの発光物質からの混合発光となる。好ましい実施形態では、混合発光はそれぞれ蛍光発光体およびりん光発光体からの赤色発光および緑色発光の混合である。一重項捕獲青色蛍光体からの発光と組み合わせることで好ましい白色バランスが得られる。本方法では、高輝度および量子効率を維持しつつさまざまな蛍光色素をWOLEDに使用できる。
【0050】
本発明の装置は、発生した励起子の一重項部分を捕獲するために第一蛍光発光体(通常青色発光体)、発生した励起子の三重項部分のためにりん光発光体を利用する。白色装置では、本発明の装置は青色蛍光物質を緑色りん光発光物質と赤色蛍光物質と組み合わせることで、高電力効率、安定したカラーバランスおよび100%の量子効率の可能性を生み出す。蛍光発光物質上の一重項エネルギーのみを独占的に保持すると同時に、エネルギー移動の二つのモードが明確に異なるために、三重項エネルギーのほとんどはりん光発光物質へと導かれる。加えて、一重項励起子からの交換エネルギー損失を除くことで、りん光発光体のみの装置と比較して最大約20%近く電力効率を向上させることができる。本装置の構造は、一重項および三重項励起子がそれぞれ独立した経路で捕獲され、両種のホストからドーパントへの移動が別々にほぼ共鳴するよう最適化される結果、内部量子効率を維持しつつエネルギー損失を最小化するという点で特有である。
【0051】
最適な効率を有する装置のためには、蛍光層がほぼすべての一重項励起子を捕獲し、りん光増感蛍光層がほぼすべての三重項励起子を捕獲することが好ましい。励起子は、電荷トラップおよびドーパント上での直接励起子形成の組み合わせを通してドーパント物質上(例、蛍光層の蛍光ドーパントおよびりん光増感層のりん光ドーパント)に配置され、デクスターおよび/またはフォースター機構を経由してホストからドーパントへと移動する。従って、最適な装置のためには、約90%以上、好ましくは約95%以上の一重項励起子が蛍光層に活用され、約90%以上、好ましくは約95%以上の三重項励起子がりん光増感蛍光層に活用されることが好ましい。
【0052】
本発明は、効率的白色発光または多色発光OLEDを提供する。白色発光装置では、発光物質の混合発光により装置から白色発光が得られる。好ましい白色発光装置のためには、装置からの混合発光が、X=0.37±0.07、Y=0.37±0.07の範囲のCIEを有するよう二つ以上の発光ドーパントを選択する。さらに好ましくは、CIE座標X=0.35±0.05、Y=0.35±0.05、さらに好ましくは、CIE座標X=0.33±0.02、Y=0.33±0.02である。“多色”とは、それぞれが異なる発光スペクトルを有する二つ以上の異なる発光物質に由来する装置からの発光を意味する。特定の照明への応用では高CRI値であること好ましいが、本発明の装置はその他の色を与える光源の生成に使用してもよい。好ましい実施形態では、本発明の装置は少なくとも約6%の外部量子効率を達成することが可能である。
【0053】
CRIは、光源が照射する物体の色をどれくらいよく表示しているかの指標を与えるため、照明用白色発光装置では、演色評価数(CRI)が重要となり得る。本発明の好ましい白色発光装置は、CRI値が少なくとも約75、好ましくは少なくとも約80、さらに好ましくは少なくとも約85である。
【0054】
発光領域は、青色蛍光発光物質などの多層を含むことがあり、りん光増感層の発光体は発光領域内で他の層にドープされる。再結合は、ホストマトリックス中または蛍光ドーパント上で主に起こる。どちらの場合でも一重項励起子は蛍光ドーパントで捕捉されそこから放射される。三重項励起子はホストマトリックスを通って蛍光ドーパントへと拡散され、そこで捕捉および放射またはさらに共ドープ蛍光ドーパントへとさらに輸送される。
【0055】
本発明の一実施形態では、発光領域は二つの隣接した発光層と、蛍光発光層と、りん光増感りん光/蛍光発光層とを含む。本実施形態による装置の代表的構造は
図9Aに示されている。蛍光層は蛍光機構(例、一重項励起子の減衰)を経由して発光する物質、好ましくは可視スペクトルの青色部分を含む。好ましい実施形態では、蛍光層はさらに蛍光発光物質がドープされるホスト物質を含む。りん光増感りん光/蛍光層は、一つ以上のりん光発光物質および蛍光発光物質を含み、前記物質はホスト物質中に共ドーパントとして存在する。りん光物質は、発光領域内の同じ層または別々の層に存在してよい。
【0056】
もう一つの好ましい実施形態では、発光領域はりん光増感りん光/蛍光層または、二つの蛍光層に挟まれた層を含む。本実施形態による代表的装置構造は
図9Bおよび10Bに示されている。二つの蛍光体のみの層は、好ましい実施形態では同一の蛍光発光物質が両蛍光層にドープされるが、同一の蛍光発光物質または異なる蛍光発光物質を含んでよい。りん光増感りん光/蛍光層は、ホスト物質中にドーパントとして存在する一つ以上のりん光発光物質と、蛍光発光物質とを含む。二つのりん光発光物質を使用するとき、二つのりん光物質は同一の層に共ドープ、または別々の層にドープされてよく、そのうち少なくとも一つはさらに共ドープした蛍光発光物質を含む。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、蛍光のみの層はりん光増感りん光/蛍光層からスペーサー層で分離されている。本実施形態による装置の代表的構造は、
図9Bおよび10Bに示されている。蛍光のみ/りん光ドープ界面を横切る直接エネルギー移動は、全ての励起子が蛍光層内より低エネルギーのりん光体から発光しないよう働く。スペーサー層は直接励起子移動を抑制し、またはさらに高エネルギーホストがこの抑制を助けるがデクスター(トンネル現象)輸送を排除する程度に厚くないエネルギー障壁を与える。スペーサー層は、バッファーとして働き、一重項の隣接するりん光層への直接移動を防ぐ。一重項の寿命は非常に短いため、蛍光ドープ層とりん光ドープ層間にスペーサーを配置することで一重項の過半数は、その後三重項へと効率的に項間交差が起こるりん光ドーパント一重項状態に容易に移動することなく、蛍光ドーパント分子上に局在する。スペーサー層は、一重項がフォースター機構を経由して移動するのを防ぐのに十分厚い(すなわちスペーサーの厚さががフォースター半径(〜30Å)より大きい)ことが好ましい。またスペーサー層は三重項励起子がりん光層に到達できる程度に薄いことが好ましい。好ましい実施形態では、スペーサー層は約15Å〜200Åであり、特に好ましい実施形態では、スペーサー層は約20Åから150Åである。スペーサー層は、蛍光および/またはりん光増感層のホストと同一の物質からなることが好ましい。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、蛍光のみの層およびりん光増感層のホスト物質は同一の物質である。蛍光のみの層とりん光増感層を分離するスペーサー層を有する本発明の実施形態において、スペーサー層もホスト物質からなることが好ましい。これにより最適な性能が得られ、移動のエネルギー障壁を排除することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、装置の発光領域は、発光領域が以下の構造を有する層を含む。
蛍光層/りん光増感層
蛍光層/スペーサー/りん光増感層
蛍光層/スペーサー/りん光増感層/蛍光層
蛍光層/りん光増感層/スペーサー/蛍光層
蛍光層/スペーサー/りん光増感層/スペーサー/蛍光層
【0060】
発光領域のそれぞれの構造において、発光領域に直接隣接する層が励起子および伝導する逆の電荷をブロックすることが好ましい。
【0061】
好ましい実施形態において、発明の装置は、一つまたは複数の蛍光層において再結合が主に起こるように設計する。さらに好ましくは、再結合の範囲が蛍光層および隣接する輸送層(HTLまたはETL)またはブロッキング層の界面となるように装置を設計する。正孔および電子の再結合により生成した一重項励起子は、蛍光発光物質に捕捉されそこから発光する。蛍光層の厚さおよび層中の蛍光発光物質濃度は、一重項励起子が蛍光発光物質で完全に捕捉されるように調節する。蛍光ドーパントの三重項は、三重項励起子が蛍光ドーパントで捕捉されない程度に十分高エネルギーでなければならない。従って、本発明の好ましい実施形態では、再結合の約50%以上が一つまたは複数の蛍光層で起こり、特に好ましい実施形態では、再結合の70%以上が一つまたは複数の蛍光層で起こる。
【0062】
再結合の範囲は、多層装置において、一つまたは複数の層(例えば、ホスト物質、HTL、ETL、および/またはブロッキング層)で使用される物質、およびさまざまな層の厚さを調節することで調節される。さらには、再結合は異種物質から成る層間の界面に局在し得る。従って、再結合は発光領域と隣接する一つまたは複数の層(例えば、HTL、ETL、ブロッキング層、他)の間の界面近傍に局在し得る。
【0063】
再結合によって生じる三重項励起子は、蛍光層の再結合範囲からりん光増感発光層へと拡散する。三重項励起子は、りん光ドープ領域へと拡散し捕捉される。りん光増感層の蛍光ドーパントからの発光は、共通のホスト中において共ドープしたりん光物質の存在により増感される。蛍光発光物質でりん光増感層を軽くドープすることにより、りん光物質からの三重項の移動が完全な場合以外は、りん光増感層の二つの発光物質からの混合発光となる。物質を適切に選択することで、それぞれのドーパントは高効率で発光し、装置として高い全体効率が達成できる。さらに、りん光増感発光層のりん光ドーパントおよび蛍光ドーパントからの混合色発光は、ドーパント物質、それぞれりん光および蛍光ドーパントの濃度の選択により調節することができる。りん光ドーパント濃度は、原則的に全ての三重項励起子を捕獲する程度に十分高いことが好ましい。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、蛍光のみの層の蛍光発光物質は、青色発光蛍光物質である。今まで、OLEDにおいてりん光青色発光はほとんどの場合乏しい安定動作性を示してきた。OLEDでは、蛍光青色発光体が高効率であり優れた動作寿命を有するものとして選択される。好ましい蛍光青色発光体は、9,10−ジ(2−ナフチルアントラセン)、ペリレン、フェニレンおよびフルオレンなどの多環芳香族化合物、特に好ましい蛍光青色発光体には4,4’−(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’ビフェニルを含む。(K.O.Cheon、J.Shinar、J.Appl.Phys. 81,1738(2002)、C.Hosokawa, H. Tokailin, H. Higashi, T. Kusumoto, J. Appl. Phys. 78, 5831(1995)を参照されたく、参照により全体がここに組み込まれる。)好ましい蛍光青色発光体は、C.H.Chen、J.Shi、C.W.Tangによる“Recent Developments in Molecular Organic Electroluminescent Materials”Macromol. Symp. 125, pp. 1−48(1997)およびそこでの引用文献、L.S.Hung、C.H.Chenによる“Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices”Mat.Sci and Eng. R, 39(2002), pp. 143−222およびそこでの引用文献に掲載されており、参照により全体がここに組み込まれる。その他の好ましい蛍光青色発光体は、同時係属出願11/097352、2005年4月出願の“Arylpyrene Compounds,”に記載されているアリルピレンを含み、参照により全体がここに組み込まれる。その他の好ましい青色蛍光発光体は、米国特許第5,121,029号明細書、米国特許第5,130,603号明細書に記載されているアニレンビニレン化合物を含み、参照により全体がここに組み込まれる。蛍光青色発光物質は、約1%から約15%の濃度でホスト物質中にドープされることが好ましい。蛍光層は約50Åから約200Åの厚さを有することが好ましい。
【0065】
白色発光装置において、白色光の緑色−赤色(G−R)成分は、りん光増感層の蛍光発光物質を共ドープしたりん光発光物質によって提供される。G−R発光物質はスペクトルの合計が緑から赤の範囲をカバーするよう選択する。この方法では、励起子約25%が蛍光青色物質から青色光を生成し、残りの75%の励起子は発光スペクトルのG−R部分に使用される。これは、典型的な白色OLEDスペクトルにおける青色とG−Rとの大体の比率である。白色OLEDへの本手法により、駆動電圧が上昇するため安定したカラーバランスを提供する可能性があり、装置の安定性も向上する可能性がある。向上した安定性は、単一装置中で高寿命G−R発光りん光発光物質と高寿命蛍光青色発光物質を併用することで得られる。
【0066】
好ましいりん光緑色発光体は、Baldo, M.A., Thompson, M.E & Forrest, S.R.による“High efficiency fluorescent organic light−emitting devices using a phosphorescent sensitizer”, Nature 403, 750−753 (2000)および米国特許第6,830,828号明細書中に含まれているはずであり、参照により全体がここに組み込まれる。りん光緑色発光物質は約2%から約20%の濃度でホスト物質中にドープされていることが好ましい。
【0067】
蛍光赤色発光物質は、米国特許第5,989,737号明細書、米国特許第4769292号明細書、米国特許第5,908,581号明細書および米国特許第5,935,720号明細書に含まれているはずであり、参照により全体がここに組み込まれる。好ましい赤色蛍光物質は、4−(ジシアノメチレン)−2メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランおよび−jユロリジル誘導体などの)DCM/DCJ分類の赤色発光体、およびキナクリドンを含む。りん光増感発光層において、共ドープしたりん光発光物質が存在することで、発光のための蛍光発光物質が増感される。従って、この蛍光発光物質は非常に低濃度で存在してよい。通常、赤色発光ドーパントは電荷捕捉サイトとして働くため、電荷の移動性が減少し結果として作動電圧が上昇する。りん光増感WOLEDでは、赤色ドーパントは少ししかドープされていないため、蛍光体上で大幅に電荷が捕捉されるのを防ぐ。さらに、蛍光ホストの一重項および三重項状態から青色りん光体を励起するのに必要な非常に高いエネルギーによって引き起こされる交換エネルギー損失を排除することで、電力効率は全てりん光ドープした発光領域に見込まれる以上に向上する。好ましい実施形態では、りん光増感層の蛍光発光物質は約1%未満、好ましくは約0.5%未満、さらに好ましくは約0.1%未満の濃度で存在する。
【0068】
ここに記載されるさまざまな実施形態はほんの一例であり、発明の範囲を限定するものではないと理解されたい。例えば、ここに記載される多くの物質および構造は、本発明の精神から逸脱することなく他の物質および構造で置換してよい。本発明の動作を説明するさまざまな理論は限定する意図ではないと理解されたい。例えば、電荷移動に関する理論は限定を意図するものではない。
【0069】
ここで使用される略記は以下物質を意味する。
CBP:4,4’−N,N−ジカルバゾールビフェニル
m−MTDATA:4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
Alq3:8−トリス−ヒドリキシキノリンアルミニウム
Bphen:4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
n−BPhen:n−ドープBPhen(リチウムドープ)
F4−TCNQ:テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン
p−MTDATA:p−ドープm−MTDATA(F4−TCNQドープ)
Ir(ppy)3:トリス(2−フェニルピリジン)−イリジウム(Irppy)
Ir(ppz)3:トリス(1−フェニル)
BCP:2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
TAZ:3−フェニル−4−(1’ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール
CuPc:フタロシアニン銅
ITO:酸化インジウムスズ
NPD:N,N’−ジフェニル−N−N’−ジ(1−ナフチル)−ベンジジン
TPD:N,N’−ジフェニル−N−N’−ジ(3−トリル)ベンジジン
BAlq:ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)4−フェニルフェノレートアルミニウム(III)
mCP:1,3−ジカルバゾール−ベンゼン
DCM:4−(シアノエチレン)−6−(4−ジメチルアミノスチリル−2−メチル)−4H−ピラン
DMQA:N,N’−ジメチルキナクリドン
PEDOT:PSS: ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の水分散液
DCJTB:4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)
BCzVBi:4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル
【0070】
ここで本発明の特定の代表的実施形態について記載し、そのような実施形態がどのようにして作成され得るのかをそこに含む。特定の方法、物質、条件、プロセスパラメーター、器具などは、必ずしも発明の範囲を限定するものではないと理解される。
【0071】
WOLEDは、150nm厚、〜20ohm/sq酸化インジウムスズ(ITO)アノード層でプレコートしたガラス基板上に成長させた。有機層を堆積させる前に、ITOコーティングは、洗浄溶液および溶媒で脱脂した後UVとオゾンのフラックスに5分間暴露した。有機多層構造は、ベースプレッシャーが〜10
−7Torrの真空蒸発チャンバに入れる前に、温度勾配真空昇華を繰り返すことにより事前に精製した物質を使用して、真空を破ることなく1−5Å/秒のレートで堆積させた。発光領域のドープ層は、発光ドーパントとCBPを共堆積させることで成長させた。発光領域のドーパント濃度は、堆積の間に真空内で変形できる開口部付きマスクを使用して変化させた。発光領域は、30mm厚のBphen励起子ブロッキング層で覆った。最後に、50nm厚のAlカソードは、複数の直径1.0nmの開口部付のMoシャドウマスクを通して堆積させた。カソード堆積のマスキングは、水および酸素1ppm未満の超高純度窒素充填グローブボックス内で有機層を堆積させた後に完成された。電流−電圧および外部量子効率の測定は、標準の工程に続いて半導体パラメータ解析(HP4156C)および校正済みSi光ダイオード(Hamamatsu S3584−08)を使用して実施された。S.R.Forrest、D.D.C.Bradley、M.E.Thompson、Adv.Mater.15、1043(2003)
[実施例1]
【0072】
緑色および赤色のみをドープした発光領域を採用するあるOLEDにおいて、50nm厚のNPDを成長させた後、CBP中でさまざまな濃度でDCJTBと共ドープした8%Ir(ppy)
3を含む15nm厚の緑色−赤色発光層を積層させ、30nm厚のBphen励起子ブロッキング層で覆った。DCJTB濃度に応じたエネルギー移動を測定するために、青色ドープ層が欠如したりん光増感発光領域を使用した。
図4に表されるように、DCJTB濃度とともに赤色発光が増大する。0.05%および0.1%のDCJTBを有する装置では、緑色と赤色強度の均衡がとれている。これらの外部量子効率のピークは、Ir(ppy)
3のみの緑色りん光装置に匹敵し、増感処理は無損失であることがわかる。しかし、DCJTBを0.15%ドープすると、外部量子効率は減少し、特定の電流における装置の作動電圧は増加する。このことから、純蛍光ドープOLEDでは典型的なように、DCJTB濃度が高くなると電荷補足が励起子生成の主要な経路となることが示唆される。
[実施例2]
【0073】
WOLEDは、発光領域が10nm厚の蛍光青色部(CBP中で10%BCzVBiをドープ)、2nm厚の非ドープCBPスペーサー、CBP中で0.08%DCJTBを共ドープしたIr(ppy)
3を含む15nm厚の緑色および赤色発光層、2nm厚の第二非ドープCBPスペーサー、および10nm厚の第二青色蛍光部を含むこと以外は上記と同様に準備された。発光領域は、上記と同様に30nm厚のBphen層で覆われた。
【0074】
WOLEDの構造を
図3に表す。両蛍光およびりん光ドーパントの導電ホストは、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)である。二つの分離された青色蛍光発光層は、BCzVBiでドープされ、りん光増感発光層は、それぞれ緑色および赤色発光を生成させるためにIr(ppy)
3とDCJTBをCBP中で共ドープしたものを含む。この立体障害蛍光色素は、増感剤から蛍光色素の三重項状態への移動を飛び越すことで損失を減少させる場合がある。青色蛍光発光層と4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)電子輸送および励起子ブロッキング層(ETL)との間の界面、および青色蛍光層の反対側とNPDを含む正孔輸送層(HTL)との間の界面で励起子の形成が起こる。蛍光領域とEMLの中心部においてりん光ドープされたCBPの範囲との間にスペーサーを形成するために、非ドープCBP領域が挿入される。スペーサーは、青色蛍光体上に形成された一重項励起子がよりエネルギーの低い緑色および赤色りん光体へと移動するのを防ぐ。しかし、特徴的に長い拡散期間を有する(>100nm)CBP三重項は、空間的に離れたりん光ドープ部へと移動する。
【0075】
実験例1の結果に基づいて、りん光増感WOLEDは、CBP中で0.08%DCJTBおよび濃度を0%から8%まで変化させたIr(ppy)
3で成長させ、青色蛍光ドープ猟奇およびEMLの端部に付随のスペーサーを含むよう調製した。WOLEDの効率およびエレクトロルミネッセンススペクトルは、それぞれ
図5および
図6に表されている。Ir(ppy)
3濃度が2%から8%へと増加すると、外部量子効率および電力効率がそれぞれ7.6±1%(21.9cd/A)から8.5±1%(22.0cd/A)、14.2±1lm/Wから18.1±2lm/Wへと増加する。4π立体角における輝度800cd/m
2の表面で測定された8%Ir(ppy)
3増感装置の全外部量子効率および電力効率は、それぞれη
ext,tot=13.1±1.0%、η
p,tot=20.2±2.0lm/Wである。
【0076】
Ir(ppy)
3増感剤が存在しなければ、純蛍光装置で予測されるように効率は3.2±0.3%、3.9±0.4lm/Wへと急降下する。
図6からわかるように、DCJTBからの赤色発光はIr(ppy)
3の濃度の増加にともなって増加する。実際に、8%Ir(ppy)
3では、発光領域端部の青色ドープ部分に起因する三重項励起子は、CBPスペーサーからの拡散を介して効率的に輸送され、りん光増感剤により赤色蛍光色素へと輸送される。青色ドーパントからDCJTBまたはIr(ppy)
3への直接三重項移動、または電荷捕捉によるこれら低エネルギードーパントの励起の可能性は、定量されていないが、以前報告されたF/P装置では、この電子捕捉部分は25%程度であることが確認されている。Giebink他によって本手法は白色発光スペクトルを最適化するために使用できることが示されているが、本手法は全体的装置効率を多少減少させる。
【0077】
発光スペクトルの電流密度への依存度は、
図7に示されている。1から100mA/cm
2においてELスペクトルには微少な変化しか確認されず、均衡したキャリア注入が起こっていることが示唆される。電流密度1、10および100における演色評価数(CRI)および国際照明委員会(CIE)座標は、それぞれ79、および(0.39,0.42)、(0.38,0.42)および(0.37,0.41)である。
図8は、8%Ir(ppy)
3を有するWOLEDのELの過渡減衰を表す。DCJTB固有の過渡寿命は、〜1nsであり、(M.A.Baldo, M.E.Thompson, S.R.Forrest, Nature 403, 750. (2000))DCJTBが
図7に示されているIr(ppy)
3の応答と同一の応答をしていることは、Ir(ppy)
3からの励起子移動を介してDCJTBが励起されていることを示唆している。
【0078】
要約すると、青色および赤色蛍光ドーパントと組み合わせたりん光増感剤を採用する高効率白色OLEDを実証した。赤色蛍光および緑色りん光発光体/増感剤濃度を変化させることで、青色ドーパント自身によってCBPホストに起因するほぼ全ての一重項が捕獲されながら、EML端部の青色ドープ部分からりん光増感剤Ir(ppy)
3を介するDCJTBへの効率的三重項移動が得られる。WOLEDは、拡張されたキャリア再結合部分を有し、高輝度での高外部量子効率へとつながる。8%Ir(ppy)
3を有するWOLEDでは、装置は輝度800cd/m2において最大前方方向の外部量子効率ηext=8.5±1%、全量子効率η
ext,tot=13.1±1%を達成する。これは、CRI79において全電力効率η
p,tot=20.2±2lm/Wに対応する。これらの結果から、りん光増感WOLEDは、単一のりん光ドーパントのみを使用することで室内用高輝度光源を達成するための単純で高効率な(IQE100%)手段の構成要素となることが実証される。
【0079】
本発明は、特定の例および好ましい実施形態に対して説明されているが、本発明はこれらの例および実施形態に限定されるものではないと理解されたい。従って請求する本発明は、当業者には明らかなように、ここで説明される特定の例および好ましい実施形態からの変形も含む。