特許第5746280号(P5746280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746280新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物類、それから誘導される新規なポリエステルイミド前駆体及びポリエステルイミド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746280
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物類、それから誘導される新規なポリエステルイミド前駆体及びポリエステルイミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/16 20060101AFI20150618BHJP
   C07D 307/89 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C08G73/16
   C07D307/89 ZCSP
【請求項の数】6
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2013-154085(P2013-154085)
(22)【出願日】2013年7月25日
(62)【分割の表示】特願2008-555125(P2008-555125)の分割
【原出願日】2008年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-1394(P2014-1394A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2013年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2007-15803(P2007-15803)
(32)【優先日】2007年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 匡俊
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−070157(JP,A)
【文献】 特開2004−079826(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/113647(WO,A1)
【文献】 特開2006−336011(JP,A)
【文献】 特開平04−029986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物。
(式中、mが2であるp−ポリフェニレン基は、下記構造式から選択されるビフェニレン基を表す。)
【請求項2】
一般式(2)
で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体。
(式中、mが2であるp−ポリフェニレン基は、下記構造式から選択されるビフェニレン基を表し、Xは2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を表し、エステル基の結合位置はアミド結合に対してメタ位またはパラ位を表す。)

【請求項3】
固有粘度が0.1〜10.0dL/gの範囲である、請求項に記載のポリエステルイミド前駆体。
【請求項4】
一般式(3)
で表される反復単位を有するポリエステルイミド。
(式中、mが2であるp−ポリフェニレン基は、下記構造式から選択されるビフェニレン基を表し、Xは2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を表す。)
【請求項5】
請求項2又は3に記載のポリエステルイミド前駆体を、加熱あるいは脱水環化試薬を用いてイミド化反応させることを特徴とする、請求項に記載のポリエステルイミドの製造方法。
【請求項6】
請求項1記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物と芳香族及び/又は脂肪族ジアミンとを、溶媒中、高温下一段階で重縮合反応することを特徴とする、請求項に記載のポリエステルイミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルイミド樹脂等の耐熱樹脂の原料、エポキシ樹脂等の耐熱性硬化剤、或いは樹脂改質剤として有用な新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物類に関し、並びにそれから誘導される新規なポリエステルイミド前駆体及びポリエステルイミドに関する。
このような本発明のポリエステルイミドは、高いガラス転移温度、低い線熱膨張係数、低い吸水率、高い弾性率及び十分な靭性を併せ持つので、フレキシブルプリント配線(FPC)用基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にFPC及びTAB用基板材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つことから、FPC用基板、TAB用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに広く利用されている。ポリイミドはこれらの特性以外にも、製造方法の簡便さ、極めて高い膜純度、入手可能な種々のモノマーを用いた物性改良のしやすさといったことから、近年益々その重要性が高まっている。
【0003】
一方、電子機器の軽薄短小化が進むにつれてポリイミドへの要求特性も年々厳しさを増し、ハンダ耐熱性だけに留まらず、熱サイクルや吸湿に対するポリイミドフィルムの寸法安定性、透明性、金属箔との接着性等、複数の特性を同時に満足する多機能性ポリイミド材料が求められるようになってきている。
【0004】
また、近年、FPC用基板としてのポリイミドの需要が飛躍的に増加してきている。FPC用の原反(銅張積層板、FCCL)の構成は主に3つの様式に分類される。即ち、1)ポリイミドフィルムと銅箔とをエポキシ系接着剤等を用いて貼り付ける3層タイプ、2)銅箔にポリイミドワニスの塗付後乾燥又は、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)ワニスを塗布後、乾燥・イミド化するか、あるいは蒸着・スパッタ等によりポリイミドフィルム上に銅層を形成する無接着剤2層タイプ、3)接着層として熱可塑性ポリイミドを用いる擬似2層タイプが知られている。ポリイミドフィルムに高度な寸法安定性が要求される用途では接着剤を使用しない2層FCCLが有利である。寸法安定性は、熱膨張及び吸湿の両方に対して求められている。
【0005】
FPC基板としてのポリイミドは実装工程における様々な熱サイクルに曝されて寸法変化が起こる。これをできるだけ抑えるためには、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)が実装工程温度よりも高いことに加えて、Tg以下での線熱膨張係数ができるだけ低いことが望ましい。また、後述するようにポリイミド層の線熱膨張係数の制御は2層FCCL製造工程中に発生する残留応力の低減の観点からも極めて重要である。
【0006】
しかしながら、多くのポリイミドは有機溶媒に不溶で、ガラス転移温度以上でも溶融しないため、ポリイミドそのものを成型加工することは通常容易ではない。そのためポリイミドは一般に、無水ピロメリット酸(PMDA)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物と4,4'−オキシジアニリン(ODA)等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性有機溶媒中で等モル反応させて、先ず高重合度のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を重合し、このワニスを銅箔上に塗付し、250〜400℃で加熱脱水閉環(イミド化)して製膜される。
【0007】
この場合、残留応力は、高温でのイミド化反応後にポリイミド/金属基板積層体を室温へ冷却する過程で発生し、FCCLのカーリング、剥離、膜の割れ等、深刻な問題がしばしば起こる。
【0008】
そこで、熱応力低減の方策としては、絶縁膜であるポリイミド自身を低熱膨張化することが有効である。殆どのポリイミドでは線熱膨張係数が40〜100ppm/Kの範囲にあり、金属箔、例えば銅の線熱膨張係数17ppm/Kよりもはるかに大きいため、銅の値に近い、およそ20ppm/K以下を示す低熱膨張性ポリイミドの研究開発が行われている。
【0009】
現在、実用的な低熱膨張性ポリイミド材料としては、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンから形成されるポリイミドが最もよく知られている。このポリイミドフィルムは、膜厚や作製条件にもよるが、5〜10ppm/Kと非常に低い線熱膨張係数を示すことが知られている(例えば非特許文献1参照)が、低吸水性は示さない。
【0010】
一方、ポリイミドの寸法安定性は、熱サイクルだけでなく吸湿に対しても要求される。従来のポリイミドでは2〜3重量%も吸湿する。絶縁層の吸湿は、高密度配線や多層配線においては、寸法変化に伴う回路の位置ずれ、特に、導体層の剥離、ポリイミド/導体界面でのコロージョン、イオンマイグレーション、絶縁破壊等、電気特性の低下という問題を生じさせる可能性があり、改善すべき課題であった。そのため絶縁膜として使用するポリイミドの吸湿膨張係数はできるだけ低いことが好ましく、これを実現するためにはポリイミドが低吸水率であることが求められる。
【0011】
ポリイミドを低吸水率化するための分子設計として、例えばトリメリット酸無水物とヒドロキノンから誘導される下記式(4)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を用いてポリイミド骨格へエステル結合を導入することが有効であると報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【化1】
式(4)
【0012】
そのほか、いくつかの異なった構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物からのポリイミドも報告されている(例えば、特開平10−70157公報、特開平11−263785公報、特開2005−298623公報、特開2006−13419号公報参照)。
しかしながら、重合反応性や製膜加工性を保持したまま低線熱膨張係数(例えば、目標値として20ppm/K以下)、低吸水率(例えば、0.8%以下)、十分な膜靭性、ハンダ耐熱性、且つ金属箔、例えば銅箔との密着性等を満足する耐熱絶縁材料を得ることは分子設計上容易ではなく、FPC、TAB用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にFPC及びTAB用基板材料として要求される物性を満足する実用的な材料は今のところ殆ど知られていない。
【0013】
【非特許文献1】Macromolecules,29,7897(1996)
【非特許文献2】高分子討論会予稿集,53,4115(2004)
【特許文献3】特開平10−70157
【特許文献4】特開平11−263785
【特許文献5】特開2005−298623
【特許文献6】特開2006−13419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、高いガラス転移温度、金属箔と同等の低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、高い弾性率、十分な靭性且つ金属箔との十分な密着性を併せ持つ新規なポリエステルイミド及びその前駆体である新規なポリエステルイミド前駆体を提供することを目的とし、また、そのための原料である新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のポリイミド樹脂の状況に鑑み、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた結果、前記式(4)において、中央のフェニレン基の代わりに、更に芳香環を追加したp−ビフェニレン基、p−ターフェニレン基、p−クウォーターフェニレン基等(以下これらをp−ポリフェニレン基と総称する)を導入することで、目的の物性を保持したままで更に低吸水率化等の上記課題の解決が実現可能であること、また、ポリフェニレン基上にアルキル基等の疎水性置換基を導入することで更なる低吸水率化等の上記課題の解決が実現可能であることを見出した。しかしながら、このようなp−ポリフェニレン基と無水フタル酸残基をエステル基で連結したテトラカルボン酸二無水物及びそれらを用いて誘導されるポリエステルイミド前駆体及びポリエステルイミドは知られていない。
本発明者らは、下記一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンより得られる下記一般式(2)で表されるポリエステルイミド前駆体ワニスを、銅箔等の導体基板上に塗付・乾燥してフィルムとし、これを熱的に又脱水環化試薬等を用いてイミド化して形成した下記一般式(3)で表されるポリエステルイミドフィルムが、上記産業分野において極めて有益な材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち本発明は、下記の通りである。
1.一般式(1):
【化1】
一般式(1)
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物。
(式中、Rは各々独立して、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコキシル基を表し、nは1〜4の整数を示し、mは2の整数を示し、但し、Rの少なくとも一つはエステル基に対してオルソ位に置換している。)
2.一般式(1):
一般式(1)
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物。
(式中、p−ポリフェニレン基は下記構造式から選択されるビフェニレン基を表す。)
3. 一般式(2):
【化2】
一般式(2)
で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体。
(式中、Rは各々独立して、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコキシル基を表し、nは1〜4の整数を示し、mは2の整数を示し、Xは2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を表し、エステル基の結合位置は、アミド結合に対してメタ位またはパラ位を表し、但し、Rの少なくとも一つはエステル基に対してオルソ位に置換している。)
4.
固有粘度が0.1〜10.0dL/gの範囲である、3に記載のポリエステルイミド前駆体。
5.
一般式(3):
【化3】
一般式(3)
で表される反復単位を有するポリエステルイミド。
(式中、Rは各々独立して、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコキシル基を表し、nは1〜4の整数を示し、mは2の整数を示し、Xは2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を表し、但し、Rの少なくとも一つはエステル基に対してオルソ位に置換している。)
6.
3又は4に記載のポリエステルイミド前駆体を、加熱あるいは脱水環化試薬を用いてイミド化反応させることを特徴とする、請求項5に記載のポリエステルイミドの製造方法。
7.
1記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物と芳香族及び/又は脂肪族ジアミンとを、溶媒中、高温下一段階で重縮合反応することを特徴とする、5に記載のポリエステルイミドの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アルキル基等の疎水性置換基を有していても良いポリフェニレン基のパラ位に各々フタル酸無水物残基がエステル結合した新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が提供される。また、このようなエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンより得られるポリエステルイミド前駆体及びポリエステルイミドが提供される。このような本発明のポリエステルイミドは 高いガラス転移温度、金属箔と同等の低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、高い弾性率、十分な靭性、且つ金属箔との十分な密着性を併せ持つので、FPC及びTAB用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレー用基板、有機ELディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にFPC及びTAB用基材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のポリエステルイミド前駆体ワニスを金属箔例えば銅箔上に該ポリエステルイミド前駆体ワニスを塗付、乾燥後、イミド化することで、金属層とポリエステルイミド樹脂層の積層板を得ることもできる。更に塩化第二鉄水溶液等のエッチング液を用いて金属層を所望する回路状にエッチングすることで、無接着剤型FPC基板を製造することができる。
本発明のポリエステルイミドをFPCやTAB用基材として適用するためには、得られたポリエステルイミドフィルムの線熱膨張係数は30ppm/K以下であることが好ましく、20ppm/K以下であることがより好ましい。また、吸水率は1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。ガラス転移温度はハンダ耐熱性の観点から300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。また5%重量減少温度は430℃以上であれば特に重大な問題は生じない。ポリエステルイミドフィルムの弾性率は特に制限はないが、弾性率が高いほどポリイミドフィルムを薄く設計できるというコスト上の観点から4GPa以上であることが望ましく、5GPa以上であることがより望ましい。フィルムの可撓性の指標として180°折曲試験により破断耐性があれば上記産業分野に適用可能であるが、破断伸びは高いほど適用範囲が広がるためより好ましい。
また、本発明のポリエステルイミド及びその前駆体には、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えることができる。
【0019】
ポリイミドを低熱膨張化するための分子設計としては、一般に主鎖骨格をできるだけ直線状で剛直にすることで内部回転により多様なコンホメーションをとりにくくする必要があることが知られている。しかし一方で、これによりポリマー鎖間の絡み合いが減少し、フィルムが脆弱化する恐れがある。また、ポリイミド骨格へのエーテル結合等の屈曲性構造単位の過大な導入は膜靭性の向上には大きく寄与するが、低熱膨張特性の発現を妨げる。
【0020】
そこで、本発明においては、テトラカルボン酸二無水物として、主鎖骨格をできるだけ直線状で剛直にするために、アルキル基等の疎水性置換基を有していても良いP−ポリフェニレン基とし、酸二無水物基とのエステル結合はエーテル結合に比べて内部回転障壁が高く、コンホメーション変化が比較的妨げられているため、剛直構造単位として振舞い、これをポリイミドの原料として用いるとポリイミド主鎖にある程度の柔軟さも付与し、可撓性のフィルムを与えることが期待できる。
【0021】
また、エステル結合はアミド結合やイミド結合よりも単位体積当たりの分極率が低いため、ポリイミドへのエステル結合の導入は低吸水率化にも有利である。
【0022】
従って、本発明の新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は下記一般式(1)で表される。
【化5】
一般式(1)
式中、Rは各々独立して、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコキシル基を表し、nは1〜4の整数を示し、mは2の整数を示し、但し、Rの少なくとも一つはエステル基に対してオルソ位に置換している。
炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基等を挙げる事ができる。
また、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコキシル基としては、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、2−メチルペントキシ基、ヘキシロキシ基等を挙げる事ができる。
【0023】
本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は下記一般式(5)で表されるジオール類、詳細にはP―ポリフェニレンジオール類とトリメリット酸類を用いてエステル化反応により製造することができる。
【化6】
一般式(5)
式中、R、n、m、は一般式(1)のそれと同じである。このようなジオールとしては、具体的には、m=2のジオール、例えば、
3,3'−ジメチル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
【化7】
式(6)
3,3'−ジエチル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
3,3'−ジイソプロピル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
3,3',5,5'−テトラメチル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
【化8】
式(7)
3,3',6,6'−テトラメチル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
【化9】
式(8)
3,3'―ジメチルー5,5'−ジt-ブチル−ビフェニル−4,4'−ジオール、
【化10】
式(9)
3,3'−ジメトキシ−ビフェニル−4,4'−ジオール、
3,3'−ジエトキシ−ビフェニル−4,4'−ジオール、
3,3'−ジプロポキシ−ビフェニル−4,4'−ジオール、
3,3',6,6'−テトラメトキシ−ビフェニル−4,4'−ジオール
m=3のジオール
4,4"−ジヒドロキシ−P−ターフェニル
【化11】
式(10)
4,4"−ジヒドロキシ−3−メチル−P−ターフェニル
【化12】
式(11)
4,4"−ジヒドロキシ−3−エチル−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3−n−プロピル−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3−イソプロピル−P−ターフェニル
【化13】
式(12)
4,4"−ジヒドロキシ−3,5−ジメチル−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3,3"−ジメチル−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3−メトキシ−P−ターフェニル
【化14】
式(13)
4,4"−ジヒドロキシ−3−エトキシ−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3−n−プロポキシ−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3,3"−ジメトキシ−P−ターフェニル
4,4"−ジヒドロキシ−3,5−ジメトキシ−P−ターフェニル
m=4のジオール
4,4'''−ジヒドロキシ−P−クオーターフェニル
【化15】
式(14)
4,4'''−ジヒドロキシ−3−メチル−P−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3−エチル−P−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3−n−プロピル−P−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,5−ジメチル−P−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジメチル−P−クオーターフェニル
【化16】
式(15)
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジエチル−p−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジ−n−プロピル−p−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジイソプロピル−p−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジメトキシ−P−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジエトキシ−p−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジ−n−プロポキシ−p−クオーターフェニル
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジイソプロポキシ−p−クオーターフェニル
などが挙げられる。
このようなP−ポリフェニレンジオールは、例えば特開2002−308808号公報、特開2005−145820号公報、特開2005−247809号公報などにその製造方法と共に開示されている。
また、トリメリット酸類としては、具体的には、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロリド、トリメリット酸クロリド等が挙げられる。
従って、本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物としては、原料であるジオールの合成のしやすさ、ジオールを合成する際の原材料の入手の可否及び原料コスト、ジオール及びその誘導体の溶媒に対する溶解性等の観点から、好適に用いられるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0024】
【化17】
式(16)
【化18】
式(17)
【化19】
式(18)
【化20】
式(19)
【化21】
式(20)
【化22】
式(21)
【化23】
式(22)
【化24】
式(23)
【化25】
式(24)
【0025】
また、本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物においては、フッ素置換基は含有しない。分極率の低いフッ素置換基を含有する場合、それを原料としたポリイミドは低吸水率化に有効ではあるが、分子間力低下によるガラス転移温度の低下や金属箔との密着性低下の恐れがある。更に製造コストの点でも不利である。一方、本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物はフッ素基を一切含有せず、これをポリイミドの原料として用いることで低吸水性に加えてその他の要求特性を満足する従来にない耐熱絶縁材料を低コストで製造することができる。
【0026】
更に、本発明の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の特徴の一つは、分子内に疎水基として振舞う2〜4つのポリフェニレン基とこれを無水フタル酸残基と連結する2つのエステル基を含有し、これらが全てパラ結合している点である。これにより、極めて低い吸水率、金属箔と同等の低い線熱膨張係数及び高弾性率を同時に実現することが可能になる。該テトラカルボン酸二無水物中にメタ結合やオルト結合のような折れ曲がった結合を導入するのは好ましくない。さもないとポリマー主鎖の直線性が大きく低下し、低線熱膨張係数が得られなくなる恐れがある。
【0027】
一方、置換基Rの効果としては、本発明のテトラカルボン酸二無水物の原料である一般式(5)で表されるポリフェニレンジオール中の置換基Rは特に導入しなくても即ち全て水素原子でも大きな支障はないが、アルキル基やアルコキシル基等の嵩高疎水性置換基を導入することで、ジオールの溶媒への溶解性が向上する。従ってジオールへの置換基の導入は、本発明のテトラカルボン酸二無水物を合成するに際し、トリメリット酸類とのエステル化反応の際に、溶媒の選択の幅が広がるという点で有利である。更に置換基の効果により、エステル化反応で得られた本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンからポリエステルイミド前駆体を重合する際に該テトラカルボン酸二無水物モノマー及び生成するポリエステルイミド前駆体の重合溶媒溶解性が高まることで重合反応が速やかに進行すると同時に生成したポリエステルイミド前駆体が沈殿しにくくなり、ポリエステルイミド前駆体の重合度が増加しやすくなるといった利点もある。
【0028】
また、置換基Rの別の側面からの効果として、本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物において、置換基Rは、分子中に含有しなくても大きな支障はないが、適当な置換基を導入することで、ポリエステルイミドとした際にポリマー鎖間のパッキングが適度に乱され、フィルムの結晶化が妨害されて、結果として要求特性を保持したままで膜靭性が改善される場合があるので好ましい。
【0029】
その際、置換基Rとしてフェニル基等の非常に嵩高い置換基を導入すると、ポリエステルイミドの要求特性を著しく低下する恐れがあるために好ましくない。従って、好ましい置換基としては、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルコキシル基が挙げられるが、これらの中ではメチル基ないしメトキシ基がより好ましく、更にコストの観点等からメチル基がより好ましい。
【0030】
次に、本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜に適用することができる。一例として前記式(21)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。
先ず、原料ジオールとして、前記式(11)で示される4,4"−ジヒドロキシ−3−メチル−p−ターフェニル(以下、DHTP−Mと称する)を用い、これをトリメリット酸無水物類とエステル化反応を行う。
【0031】
この際、適用できる方法としては、具体的には例えば、DHTP−Mのヒドロキシ基とトリメリット酸無水物のカルボキシル基を高温で直接脱水反応させる方法、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水試薬を用いて脱水縮合させる方法、あるいはジオール(DHTP−M)をジアセテート化し、これとトリメリット酸無水物とを高温で反応させ脱酢酸してエステル化する方法(エステル交換法)、トリメリット酸無水物のカルボキシル基を酸ハライドに変換し、これとジオールとを脱酸剤(塩基)の存在下で反応させる方法(酸ハライド法)、トシルクロリド/N,N−ジメチルホルムアミド/ピリジン混合物を用いてトリメリット酸無水物中のカルボキシル基を活性化してエステル化する方法等が挙げられる。上述の方法の中でもエステル交換法や酸ハライド法が経済性、反応性の点で好ましく適用できる。
【0032】
次に、式(21)で表される本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の酸ハライド法による合成方法の一例について具体的に説明する。
先ず、トリメリット酸無水物クロリド(A mol)を溶媒に溶解し、セプタムキャップで密栓する。この溶液に、DHTP−M(0.5×A mol)及び適当量の塩基(脱酸剤)を同一溶媒に溶解したものをシリンジ又は滴下ロートにてゆっくりと滴下する。滴下終了後、反応混合物を24時間撹拌する。合成に用いた溶媒に対する目的物の溶解度が高い場合は、反応混合物からまず生成した塩酸塩を濾別し、濾液をエバポレーターで溶媒留去し、100〜200℃で24時間真空乾燥して粉末状の粗生成物を得る。目的物の溶解度が低い場合には、目的物と塩酸塩の混合物を濾別し、これを大量の水で洗浄して塩酸塩のみ溶解除去する。次に一部洗浄工程で一部加水分解を受けた粗生成物を100〜200℃で真空乾燥して閉環処理する。このようにして得られた粗生成物を適当な溶媒で再結晶、洗浄、加熱真空乾燥工程を経て重合に供することのできる高純度の式(21)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が得られる。
【0033】
このエステル化反応の際に使用可能な溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル等の非プロトン性溶媒、及びフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒が挙げられる。またこれらの溶媒を単独、あるいは2種類以上混合して用いてもよい。反応試薬の溶解性、留去のしやすさの観点からテトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンが好適に用いられる。
【0034】
上記エステル化反応温度は、通常、−10〜50℃の範囲で行われるが、より好ましくは0〜30℃で行われる。反応温度が50℃よりも高いと一部副反応が起こり、収率が低下する恐れがあり、好ましくない。
【0035】
該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得る反応は、通常、溶質濃度5〜50重量%の範囲で行われる。副反応の制御、沈殿の濾過工程を考慮して、好ましくは10〜40重量%の範囲で行われる。
【0036】
反応に用いる脱酸剤としては、脱酸剤として作用するものであれば特に限定されないが、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が用いられる。
【0037】
反応により生成した沈殿物は、脱酸剤としてピリジンを使用する場合、水溶性のピリジン塩酸塩を含んでいる。例えば溶媒としてテトラヒドロフランを用いた場合、ピリジン塩酸塩は殆どその溶媒に溶解しないため、反応溶液を濾過するだけで、塩酸塩をほぼ完全に分離することができる。通常、目的物の溶解度が高い場合、目的物は濾液中に溶解しているので、濾液から溶媒を留去し、適当な溶媒から再結晶するだけで高収率で十分高い純度の目的物が得られるが、痕跡量の塩素成分を分離除去するために、目的物をクロロホルムや酢酸エチル等に再溶解し、分液ロートを用いて有機層を水洗する方法や、沈殿物を単に十分水洗する方法を用いることも可能である。塩酸塩の除去は洗浄液を1%硝酸銀水溶液を用いて塩化銀の白色沈殿の生成の有無をもって、容易に判断することができる。水洗操作の際、該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物が一部加水分解を受けて、ジカルボン酸に変化するが、80〜250℃、好ましくは120〜200℃で真空乾燥することで、一部加水分解してジカルボン酸が生成しても容易に脱水閉環して酸無水物に戻すことができる。また有機酸の酸無水物と処理する方法も適用可能である。この際、使用可能な有機酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられるが、除去の容易さの点で無水酢酸が好適に用いられる。
【0038】
次に、本発明の今ひとつの発明として、上記一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物をモノマーとし、各種ジアミンと組み合わせて重合反応させて新規なポリエステルイミド前駆体を得る。次いでこれをイミド化することにより産業上極めて有用な新規なポリエステルイミドを得ることができる。該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の反応性、剛直性、疎水性、置換基の適度な立体的嵩高さという構造上の特徴から、イミド樹脂とした際に低線熱膨張係数、高弾性率、極めて低い吸水率、高ガラス転移温度、十分な膜靭性、金属箔との密着性という従来の材料では得ることのできなかった物性を有する材料とすることができる。
従って、本発明の今ひとつの発明である新規なポリエステルイミド前駆体は、前記一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を用いて、これをジアミンと反応させることにより得られる。
通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重合反応性は、最終的に得られるポリエステルイミドフィルムの靭性に大きな影響を及ぼす。重合反応性が十分高くないと、高重合体が得られず、結果としてポリマー鎖同士の絡み合いが低くなり、ポリエステルイミドフィルムが脆弱になる恐れがある。本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物はジアミンに対し高い重合反応性を有するため、通常、そのような懸念がない。
また、本発明のポリエステルイミド前駆体の重合に用いられる今ひとつの原料であるジアミンについては、特に制限はないが、極めて剛直な構造のジアミン成分を用いた場合、本発明に係るポリエステルイミドフィルムは銅等の金属箔より低い線熱膨張係数を示すことがある。この場合、適当量の4,4'−オキシジアニリン等の屈曲性モノマーを共重合成分として併用することで、ポリエステルイミドフィルムの線熱膨張係数を金属箔の値に完全に一致させ、絶縁膜/金属箔積層体の反りを防止することができる。屈曲性モノマーの併用によりポリエステルイミドフィルムの靭性も大幅に改善することができる。
本発明の今ひとつの発明である新規なポリエステルイミド前駆体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、以下の方法により得ることができる。先ずジアミンを重合溶媒に溶解し、この溶液にジアミンと実質的に等モルの本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の、例えば粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、0〜100℃の範囲、好ましくは20〜60℃で0.5〜150時間好ましくは1〜48時間攪拌する。この際モノマー濃度は、通常、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜40重量%の範囲である。このようなモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリエステルイミド前駆体溶液を得ることができる。ポリエステルイミド前駆体の重合度が増加しすぎて、重合溶液が攪拌しにくくなった場合は、適宜同一溶媒で希釈することもできる。
【0039】
ポリエステルイミドフィルムの靭性の観点からポリエステルイミド前駆体の重合度はできるだけ高いことが望ましい。上記モノマー濃度範囲で重合を行うことによりポリマーの重合度が十分高く、モノマー及びポリマーの溶解性も十分確保することができる。上記範囲より低い濃度で重合を行うと、ポリエステルイミド前駆体の重合度が十分高くならない場合があり、また、上記モノマー濃度範囲より高濃度で重合を行うと、モノマーや生成するポリマーの溶解が不十分となる場合がある。また、脂肪族ジアミンを使用した場合、重合初期にしばしば塩形成が起こり、重合が妨害されるが、塩形成を抑制しつつできるだけ重合度を上げるためには、重合時のモノマー濃度を上記の好適な濃度範囲に管理する事が好ましい。
【0040】
従って、ポリエステルイミドフィルムの靭性及びワニスのハンドリングの観点から、ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は好ましくは0.1〜10.0dL/gの範囲であり、より好ましくは0.5〜5.0dL/gの範囲である。
【0041】
本発明のポリエステルイミド前駆体重合の際に使用可能なジアミンとしては、本発明に係るポリエステルイミドフィルムの要求特性及びポリエステルイミド前駆体の重合反応性を損なわないものであれば特に限定されないが、具体的には例えば、芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、2,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4'−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が挙げられ、
【0042】
また、脂肪族ジアミンとしては、鎖状脂肪族乃至脂環式ジアミンであり、脂環式ジアミンとしては例えば、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、鎖状脂肪族ジアミンとしては例えば、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
【0043】
また、ジアミンとしては、ポリエステルイミドフィルムの低熱膨張特性発現という観点から、剛直で直線的な構造を有するジアミン即ち、p−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4'−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−ターフェニレンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン等をジアミン成分として使用することが好ましい。この際、上記ジアミンの含有量は全ジアミン使用量の5〜100モル%、好ましくは30〜95モル%である。
【0044】
本発明のポリエステルイミド前駆体の重合に際し、ポリエステルイミド前駆体の重合反応性及びポリエステルイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の芳香族乃至脂肪族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用することができる。その際に使用可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、メチルハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物等が挙げられる。
【0045】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、脂環式のものとしては、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また、これらを2種類以上併用することもできる。
【0046】
本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物と併用する上記芳香族又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量は全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜95モル%、好ましくは1〜50モル%の範囲である。
【0047】
重合反応の際使用される溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーと生成するポリエステルイミド前駆体が溶解すれば問題はなく特にその構造には限定されない。具体的には例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく用いられる。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、0−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども添加して使用できる。
【0048】
本発明のポリエステルイミド前駆体はその重合溶液を、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し、粉末として単離することもできる。
【0049】
本発明の更に今ひとつの発明であるポリエステルイミド前駆体から誘導される新規なポリエステルイミドは、上記の方法で得られたポリエステルイミド前駆体を公知の方法を適宜用いて脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。この際ポリエステルイミドの使用可能な形態は、特に限定されるものではないが、例えば、フィルム、金属箔/ポリエステルイミドフィルム積層体、粉末、成型体及びワニスが挙げられる。
【0050】
先ず、本発明のポリエステルイミドのフィルムを製造する方法について例示すると、本発明のポリエステルイミド前駆体の重合溶液(ワニス)をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中200〜450℃、好ましくは250〜400℃で加熱することで本発明のポリエステルイミドのフィルムを製造することができる。加熱温度はイミド化の閉環反応を十分に行なうという観点から200℃以上、生成したポリエステルイミドフィルムの熱安定性の観点から450℃以下が好ましい。またイミド化は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中でイミド化を行っても差し支えない。
【0051】
また、イミド化反応は、熱処理に代えて、ポリエステルイミド前駆体フィルムをピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめポリエステルイミド前駆体ワニス中に投入・攪拌し、それを上記基板上に流延・乾燥することで、部分的にイミド化したポリエステルイミド前駆体フィルムを作製することもでき、これを更に上記のように熱処理することでポリエステルイミドフィルムが得られる。
【0052】
本発明のポリエステルイミド前駆体の重合溶液をそのままあるいは同一の溶媒で適度に希釈した後150〜250℃に加熱することで、ポリイミド自体が用いた溶媒に溶解する場合、本発明のポリエステルイミドのワニスを容易に製造することができる。溶媒に不溶な場合は、結晶性のポリエステルイミド粉末を沈殿物として得ることができる。この際、イミド化の副生成物である水等を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ―ピコリン等の塩基を添加することができる。得られたワニスを大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリエステルイミドを粉末として単離することもできる。またポリエステルイミド粉末を上記重合溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。
【0053】
本発明のポリエステルイミドは、本発明のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中高温で反応させることにより、ポリエステルイミド前駆体を単離することなく、一段階で重合することができる。この際、反応溶液は反応促進の観点から、通常、130〜250℃の範囲、好ましくは150〜200℃の範囲に保持するとよい。また該ポリエステルイミドが、用いた溶媒に不溶な場合、ポリエステルイミドは沈殿として得られ、可溶な場合はポリエステルイミドワニスとして得られる。重合溶媒は特に限定されないが、使用可能な溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が例として挙げられるが、より好ましくはm−クレゾール等のフェノール系溶媒やNMP等のアミド系溶媒が用いられる。これらの溶媒にイミド化反応の副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加することができる。また、イミド化触媒としてγ―ピコリン等の塩基を添加することができる。得られたワニスを大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリエステルイミドを粉末として単離することができる。またポリエステルイミドが溶媒に可溶である場合はその粉末を上記溶媒に再溶解してポリエステルイミドワニスとすることができる。
【0054】
得られた上記ポリエステルイミドワニスを基板上に塗布し、通常、40〜400℃の範囲、好ましくは100〜350℃の範囲で乾燥するによってもポリエステルイミドフィルムを形成することができる。
【0055】
上記のように得られたポリエステルイミド粉末を通常、200〜500℃の範囲、好ましくは250〜450℃の範囲で加熱圧縮することでポリエステルイミドの成型体を作製することができる。
【0056】
更に、本発明のポリエステルイミド前駆体溶液中にN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドやトリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加・撹拌して通常、0〜150℃の範囲、好ましくは20〜100℃の範囲で反応させることにより、ポリエステルイミドの異性体であるポリエステルイソイミドが生成する。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリエステルイミド前駆体フィルムを浸漬することでも可能である。ポリエステルイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、通常、250〜450℃の範囲、好ましくは270〜400℃の範囲で熱処理することにより、ポリエステルイミドへ容易に変換することができる。
(実施例)
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300または日本分光社製FT−IR350)を用い、KBr法にてエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルを測定した。また透過法にてポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜(約5μm厚)の赤外線吸収スペクトルを測定した。
1H−NMRスペクトル>
日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中でエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを測定した。
<示差走査熱量分析(融点および融解曲線)>
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の融点および融解曲線(DSC曲線)は、ブルカーエイエックス社製示差走査熱量分析装置(DSC3100)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度2℃/分で測定した。融点が高く融解ピークがシャープであるほど、高純度であることを示す。
<固有粘度>
0.5重量%のポリエステルイミド前駆体溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリエステルイミドフィルム(20μm厚)のガラス転移温度を求めた。
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の線熱膨張係数を求めた。
<5%重量減少温度:Td5
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
<複屈折:Δn>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。この値が高いほど、ポリマー鎖の面内配向度が高いことを意味する。
<誘電率:εcal
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリエステルイミドフィルムの平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次式:εcal=1.1×nav2によりポリエステルイミドフィルムの誘電率(εcal)を算出した。
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥したポリエステルイミドフィルム(膜厚20〜30μm)を24℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。殆どの用途においてこの値が低いほど好ましい。
<引張弾性率(ヤング率)、破断強度、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−II)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、フィルムが破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほどフィルムの靭性が高いことを意味する。また破断強度は試験片が破断したときの応力から求めた。
<吸湿膨張係数:CHE>
ポリエステルイミドフィルム(5mm×20mm×膜厚20μm)を100℃で数時間真空乾燥後、これをブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)に速やかにセット(チャック間:15mm)して膜厚1μm当たり0.5gの静荷重を試験片にかけ、室温で乾燥窒素を1時間流した後、神栄社製精密湿度供給装置(SRG−1R−1)を用いて相対湿度(RH)80%のウエットガスをTMA4000装置内に導入して、室温における試験片の伸びより、ポリエステルイミドフィルムの吸湿膨張係数を求めた。この値が低いほど吸湿寸法安定性が高いことを意味する。
【0057】
[実施例1]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(21)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は以下のように合成した。ナスフラスコにトリメリット酸クロリド30mmolを入れ、無水テトラヒドロフランに溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した(溶質濃度:20重量%)。更に別のフラスコ中でDHTP−M(15mmol)を無水テトラヒドロフランに溶解し、これにピリジン60mmolを加えてセプタムシールし溶液Bを調製した(溶質濃度:20重量%)。
氷浴中で冷却、攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにて1時間かけて滴下し、その後テトラヒドロフランを追加して溶質濃度12重量%まで希釈し、室温で24時間攪拌した。反応終了後、白色沈殿物(目的物とピリジン塩酸塩の混合物)を濾別し、沈殿物を大量の水で洗浄してピリジン塩酸塩を溶解除去し、得られた淡黄色沈殿を150℃で24時間真空乾燥し、収率70%で生成物を得た。赤外吸収スペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする式(21)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。また、示差走査熱量曲線において297℃にシャープな融解ピーク示したことからこの生成物は高純度であることが示唆される。赤外吸収スペクトル、1H−NMRスペクトル、示差走査熱量曲線をそれぞれ図1、2、3に示す。
【0058】
[実施例2]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(16)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は以下のように合成した。ナスフラスコにトリメリット酸クロリド60mmolをいれ、無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)40mLに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した(溶質濃度:25重量%)。更に別のフラスコ中で式(6)で表されるジオール(OC−BPと称する)20mmolを無水DMF14mLに室温で溶解し(溶質濃度:25重量%)、これにピリジン180mmolを加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。
氷浴中で冷却、攪拌しながら溶液Aに溶液Bをシリンジにて滴下し、その後室温で12時間攪拌した。反応終了後、黄色沈殿物(目的物とピリジン塩酸塩の混合物)を濾別し、沈殿物を大量の水で洗浄してピリジン塩酸塩を溶解除去し、得られた黄色沈殿を160℃で12時間真空乾燥し、収率80%で粗生成物を得た。純度を更に上げるため無水1,4−ジオキサンで再結晶し、析出した沈殿を濾別し、160℃で12時間真空乾燥して生成物を得た。赤外吸収スペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする式(16)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。また、示差走査熱量曲線において251℃にシャープな融解ピーク示したことからこの生成物は高純度であることが示唆された。赤外吸収スペクトル、1H−NMRスペクトル、示差走査熱量曲線をそれぞれ図6に示す。
【0059】
[実施例3]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(18)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は以下のように合成した。ナスフラスコにトリメリット酸クロリド20mmolをいれ、無水THFに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した(溶質濃度:15重量%)。更に別のフラスコ中で式(8)で表されるジオール(TMP−BPと称する)10mmolを無水THFに室温で溶解し(溶質濃度:15重量%)、これにピリジン30mmolを加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。
氷浴中で冷却、攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにて滴下し、その後室温で12時間攪拌した。反応終了後、白色沈殿物(ピリジン塩酸塩)を濾別後、濾液をエバポレーターで濃縮してそれを大量の水中に滴下した。析出した沈殿物を水でよく洗浄してピリジン塩酸塩を溶解除去し、得られた黄色沈殿を80℃で12時間真空乾燥し、粗生成物を得た。純度を更に上げるため無水酢酸で再結晶し、析出した沈殿を濾別し、トルエンで洗浄後80℃で12時間真空乾燥して生成物を得た。赤外吸収スペクトルより、得られた生成物は目的とする式(18)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。赤外吸収スペクトルを図7に示す。
【0060】
[実施例4]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(20)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は以下のように合成した。ナスフラスコにトリメリット酸クロリド15mmolをいれ、無水DMF30mLに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した(溶質濃度:10重量%)。更に別のフラスコ中で式(10)で表されるジオール(DHTPと称する)5mmolを無水DMF13mLに50℃で加熱溶解し(溶質濃度:10重量%)、これにピリジン30mmolを加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。
室温で攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにて滴下し、その後DMF20mLを追加して希釈し、室温で24時間攪拌した。反応終了後、黄色沈殿物(目的物とピリジン塩酸塩の混合物)を濾別し、DMFで洗浄した。沈殿物を更に大量の水で洗浄してピリジン塩酸塩を溶解除去し、得られた黄色沈殿を180℃で12時間真空乾燥し、収率80%で生成物を得た。赤外吸収スペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする式(20)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。また、示差走査熱量曲線において337℃にシャープな融解ピーク示したことからこの生成物は高純度であることが示唆された。赤外吸収スペクトル、1H−NMRスペクトルをそれぞれ図9に示す。
【0061】
[実施例5]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
式(24)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は以下のように合成した。ナスフラスコにトリメリット酸クロリド40mmolをいれ、無水DMF36mLに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した(溶質濃度:20重量%)。更に別のフラスコ中で式(15)で表されるジオール(DHQP−TMと称する)20mmolを無水DMF70mLに80℃で加熱溶解し(溶質濃度:10重量%)、室温に戻した後ピリジン120mmolを加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。
室温で攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにて滴下し、その後DMF20mLを追加して希釈し、室温で24時間攪拌した。反応終了後、黄色沈殿物(目的物とピリジン塩酸塩の混合物)を濾別し、DMFで洗浄した。沈殿物を更に大量の水で洗浄してピリジン塩酸塩を溶解除去し、得られた黄色沈殿を180℃で12時間真空乾燥し、収率70%で粗生成物を得た。純度を更に上げるためγ−ブチロラクトンで再結晶し、析出した沈殿を濾別して無水THFで洗浄後、200℃で12時間真空乾燥して生成物を得た。赤外吸収スペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする式(24)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。また、示差走査熱量曲線において302℃にシャープな融解ピーク示したことからこの生成物は高純度であることが示唆された。赤外吸収スペクトル、1H−NMRスペクトル、示差走査熱量曲線をそれぞれ図12に示す。
【0062】
[実施例6]
<ポリエステルイミド前駆体の重合、イミド化およびポリエステルイミドフィルム特性の評価>
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン(以下PDAと称する)5mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解した後、この溶液に実施例1で得られた式(21)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物粉末5mmolを徐々に加えた(全モノマー濃度:20重量%)。溶液粘度の増加に伴い、同一の溶媒を徐々に加え最終的に全モノマー濃度12重量%まで希釈した。48時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。このポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、高い溶液貯蔵安定を示した。NMP中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は1.72dL/gであり、高重合体であった。このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して得たポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上、減圧下200℃で1時間更に350℃で1時間熱イミド化を行った後、残留応力を除去するために基板から剥がして355℃で1時間、熱処理を行い、膜厚20μmの淡黄色の透明なポリエステルイミドフィルムを得た。このポリエステルイミドフィルムは180°折曲げ試験によっても破断せず、可撓性を示した。また如何なる有機溶媒に対しても全く溶解性を示さなかった。このポリエステルイミドフィルムについて動的粘弾性測定を行った結果、438℃にガラス転移点(動的粘弾性曲線における損失ピークより決定)が観測されたが、熱可塑性は殆ど見られなかった。このようにこのポリエステルイミドフィルムは極めて高い寸法安定性を有している。
また線熱膨張係数は7.3ppm/Kと極めて低い線熱膨張係数を示した。これは、非常に大きな複屈折値(Δn=0.17)から判断して、ポリエステルイミド鎖の高度な面内配向によるものと考えられる。平均屈折率より見積もった誘電率は3.25であり、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなる代表的な全芳香族低熱膨張性ポリイミドの誘電率(3.5)より低い値であった。またガラス転移温度は438℃と極めて高く、5%重量減少温度も窒素中で479℃、空気中で451℃と高いことから十分高い耐熱性を有していることがわかる。また本発明のポリエステルイミドフィルムは吸水率が0.88%と極めて低いことが特徴的である。機械的特性は引張弾性率(ヤング率)7.66GPa、破断強度0.16GPa、破断伸び3.6%であった。
このようにこのポリエステルイミドは極めて低い線熱膨張係数、非常に低い吸水率、高い熱安定性および比較的低い誘電率を示した。表1に物性値をまとめる。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図14にそれぞれ示す。
【0063】
[実施例7]
ジアミン成分としてPDAの代わりに4−アミノフェニル−4'−アミノベンゾエート(以下APABと称する)を用いた以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。従来にない極めて低い吸水率(0.38%)に加え、低い線熱膨張係数、高い熱安定性、比較的低い誘電率および十分な膜靭性を示した。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図16にそれぞれ示す。
【0064】
[実施例8]
ジアミン成分としてPDAの代わりに2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBと称する)を用いた以外は実施例6と同様の方法に従ってポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。比較的低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、高い熱安定性、比較的低い誘電率および十分な膜靭性を示した。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図18にそれぞれ示す。
【0065】
[実施例9]
ジアミン成分としてPDAの代わりに、APABと4,4'−オキシジアニリン(以下ODAと称する)を併用した以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体の共重合体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。この時のAPABと4,4'−オキシジアニリンの使用モル比は85:15である。物性値を表1に示す。低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、高い熱安定性、比較的低い誘電率および十分な膜靭性を示した。得られたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図20にそれぞれ示す。
【0066】
[実施例10]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物として式(21)で表される化合物を用いる代わりに、実施例2で得られた式(16)で表される化合物を使用した以外は、実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。実施例6に記載したポリエステルイミドと同様に優れた膜物性を示した。ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図22に示す。
【0067】
[実施例11]
ジアミン成分としてPDAを用いる代わりにAPAB、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物として式(21)で表される化合物を用いる代わりに実施例2で得られた式(16)で表される化合物を使用した以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。実施例7に記載したポリエステルイミドと同様に優れた膜物性を示した。ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図24に示す。
【0068】
[実施例12]
ジアミン成分としてPDAを用いる代わりにAPABとODAを併用し、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物として式(21)で表される化合物を用いる代わりに実施例2で得られた式(16)で表される化合物を使用した以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合した。この時のAPABとODAのモル比は70:30である。その後、実施例6と同様の方法で製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。上記のポリエステルイミドと同様に優れた膜物性を示した。ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図26に示す。
【0069】
[実施例13]
ジアミン成分としてPDAを用いる代わりにPDAとODAを併用し、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物として式(21)で表される化合物を用いる代わりに実施例5で得られた式(24)で表される化合物を使用した以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合した。この時のPDAとODAのモル比は70:30である。その後、実施例6と同様の方法で製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。上記のポリエステルイミドと同様に優れた膜物性を示した。ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図28に示す。
【0070】
[実施例14]
ジアミン成分としてPDAを用いる代わりにAPABとODAを併用し、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物として式(21)で表される化合物を用いる代わりに実施例5で得られた式(24)で表される化合物を用いた以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合した。この時のAPABとODAのモル比は70:30である。その後、実施例6と同様の方法で製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、物性評価した。物性値を表1に示す。上記のポリエステルイミドと同様に優れた膜物性を示した。ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図30に示す。
【0071】
[比較例1]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物として式(21)で表される化合物を用いる代わりに式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用した以外は実施例6と同様の方法に従って、ポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性を評価した。物性値を表1に示す。吸水率は本発明のポリエステルイミドフィルムの値より高い値であった。これは疎水性基として働くフェニレン基の含有率がより低いためである。
【0072】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】実施例1に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。
図2】実施例1に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルである。
図3】実施例1に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の示差走査熱量曲線である。
図4】実施例2に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。
図5】実施例2に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトである。
図6】実施例2に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の示差走査熱量曲線である。
図7】実施例3に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。
図8】実施例4に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。
図9】実施例4に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルである。
図10】実施例5に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。
図11】実施例5に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルである。
図12】実施例5に記載のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の示差走査熱量曲線である。
図13】実施例6に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図14】実施例6に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図15】実施例7に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図16】実施例7に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図17】実施例8に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図18】実施例8に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図19】実施例9に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図20】実施例9に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図21】実施例10に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図22】実施例10に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図23】実施例11に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図24】実施例11に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図25】実施例12に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図26】実施例12に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図27】実施例13に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図28】実施例13に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図29】実施例14に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図30】実施例14に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
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図29
図30