【文献】
KURYKIN,REACTION OF TRANS-PERFLUORO-2-PENTENE WITH ALCOHOLATES,BULLETIN OF THE ACADEMY OF SCIENCES OF THE USSR, DIVISION OF CHEMICAL SCIENCE (ENGLISH TRANSLATION),1981年,V11,P2647-2650
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
本発明は、不飽和フルオロカーボンエーテルを含む新たな組成物およびかかる不飽和フルオロカーボンエーテルの製造方法を提供する。これらの組成物は、CFC化合物により以前使われていた多くの用途において有用性がある。本発明の組成物は、環境への影響がほとんど、または全くない、油、グリースまたは潤滑剤(特に、フッ素含有潤滑剤)を溶解する能力がある、不燃性である、乾燥または脱水方法に用いる界面活性剤化合物を溶解する能力があるという所望の特性の一部または全てを備えている。
【0004】
現在、様々な流体が熱伝達のために用いられている。熱伝達流体の好適性は適用プロセスによる。例えば、ある電子用途では、不活性で、高誘電強度を有し、毒性が低く、良好な環境特性および広い温度範囲にわたって良好な熱伝達特性を有する熱伝達流体が必要とされる。その他の用途では、正確な温度制御が必要とされるため、熱伝達流体は、全プロセス温度範囲について単相である必要があり、熱伝達流体特性は、予想できる必要がある。すなわち、組成が比較的一定のままであり、粘度、沸点等が予測でき、正確な温度を維持でき、機器を適切に設計できるようにする。
【0005】
半導体業界において、選択した特性を有する熱伝達流体を必要とするデバイスまたはプロセスは数多くある。熱伝達流体を用いて、熱を除去する、熱を加える、または温度を維持することができる。
【0006】
後述する半導体プロセスは、それぞれ、熱の除去された、または熱を加えたデバイスまたはワークピースを組み込むものである。熱の除去または添加のいずれかに関連する熱伝達は、広い温度範囲にわたって生じ得る。このように、いずれの場合においても、「運転員に優しい」他の属性を有する熱伝達流体が好ましくは用いられる。熱伝達流体を「運転者に優しい」ものとみなすようにするためには、熱伝達流体は、毒性および可燃性の低いものが好ましい。
【0007】
自動試験機器(ATE)について、機器を用いて、半導体ダイスの性能を試験する。ダイスは、半導体基板のウェハからカットされた個々の「チップ」である。ダイスは半導体製造工場から来るものであり、それらは、機能性要件およびプロセッサ速度要件に確実に適合するかどうかチェックされなければならない。試験を使って、性能要件に適合しないダイスから「既知の良品ダイス」(KGD)をソートする。この試験は、一般的に、約−80℃〜約100℃の範囲の温度で実施される。
【0008】
場合によっては、ダイスは、1つずつ試験され、個々のダイスはチャックに保持される。このチャックは、その設計の部品として、ダイスを冷却する手段を提供する。他の場合では、いくつかのダイスをチャックに保持し、連続的か、または平行して試験する。この状況では、チャックは、試験手順中いくつかのダイスを冷却する。
【0009】
また、高温条件下で性能特性を判断するために高温でダイスを試験できると有利である。この場合、室温を優に超えた温度で良好な熱伝達特性を有する冷却剤が有利である。
【0010】
場合によっては、ダイスは、非常に低温で試験される。例えば、相補型金属酸化物半導体(「CMOS」)デバイスは、特に、低温でより迅速に動作する。
【0011】
ATE機器の一部が、永久ロジックハードウェアの一部として「オンボードの(取り付けられた)」CMOSデバイスを用いる場合、ロジックハードウェアを低温に維持すると有利である可能性がある。
【0012】
従って、最大の多用途性をATEに与えるためには、熱伝達流体は、低温と高温の両方で良好に働き(すなわち、好ましくは、広い温度範囲にわたって良好な熱伝達特性を有し)、不活性で(すなわち、不燃性で、毒性が低く、化学反応性がない)、高誘電強度を有し、環境影響が低く、全動作温度範囲にわたって予測可能な熱伝達特性を有するのが好ましい。
【0013】
これら半導体用途に現在用いられている熱伝達流体としては、パーフルオロカーボン(PFC)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、パーフルオロアミン(PFA)、パーフルオロエーテル(PFE)、水/グリコール混合物、脱イオン水、シリコーン油および炭化水素油が挙げられる。しかしながら、これらの熱伝達流体はそれぞれいくつか欠点を有する。PFC、PFPE、PFAおよびPFEは、500年を超え、5,000年までという大気寿命値を示す恐れがある。さらに、これらの材料は、大きな地球温暖化係数(「GWP」)を示す恐れがある。GWPは、特定の統合計画対象期間にわたる1キログラムのCO2による温暖化に対する1キログラムの試料化合物の放出による統合温暖化係数である。水/グリコール混合物は、温度制限されている、すなわち、かかる混合物の典型的な低温限界は−40℃である。低温で、水/グリコール混合物はまた、比較的高粘度を示す。低温での高粘度は、高ポンプ能力をもたらす。脱イオン水は、0℃という低温限界を有する。シリコーン油および炭化水素油は典型的に可燃性である。
【0014】
電子デバイスからの熱の除去は、プロセッサ性能をさらに改善するのに最も重大な障害の1つになっている。これらのデバイスはより強力になってきているため、単位時間当たりに発生する熱の量は増える。従って、熱伝達の機構は、プロセッサ性能において重要な役割を果たす。熱伝達流体は、好ましくは、良好な熱伝達性能、良好な電気適合性(冷却板を用いるような「間接接触」用途で用いても)、同じく、低毒性、低可燃性(または不燃性)および低環境影響を有する。良好な電気適合性には、高誘電強度、高体積抵抗率および極性材料に対する乏しい溶解性を示す熱伝達流体候補が必要とされる。さらに、熱伝達流体候補は、良好な機械適合性を示さなければならない。すなわち、典型的な構築材料に悪影響を及ぼしてはならない。この用途において、熱伝達流体候補は、それらの物理特性が経時で安定していない場合には、不適格である。
【0015】
電子または電気機器を冷却するために熱伝達流体として現在用いられている材料としては、PFC、PFPE、シリコーン油および炭化水素油が挙げられる。これらの熱伝達流体はそれぞれいくつか欠点を有する。PFCおよびPFPEは、環境残留性の恐れがある。シリコーン油および炭化水素油は、典型的に可燃性である。
【0016】
熱衝撃試験は、通常、約−65℃〜約150℃の範囲の温度で行われる。例えば、ミサイル発射により生じる熱変化をシミュレートするために、部品またはデバイスにおける温度の迅速な循環が必要とされることがある。熱衝撃試験は、特に、軍用ミサイルに用いる電子機器に必要とされる。多くの電子コンポーネントおよびアセンブリの熱衝撃試験に関する軍用規格はいくつかある。この試験では、部品または電子デバイス内で温度を即時に変化させる様々な手段を用いる。かかるデバイスの1つは、試験部品に熱衝撃を与えるために、部品が交互に浸漬される限界温度に維持される別個の容器に保持される1つまたは複数の液体熱伝達流体を用いる。典型的に、運転員は、コンポーネントまたはアセンブリを熱衝撃機器から出し入れする。従って、かかる用途に用いる熱伝達流体は、低毒性、低可燃性および低環境衝撃性を示すことが重要である。低毒性、低可燃性および低環境衝撃性に加えて、広い温度範囲にわたって液体である熱伝達流体が熱衝撃試験にとって最良である。
【0017】
液体/液体熱衝撃試験浴において熱伝達流体として現在用いられている材料としては、液体窒素、PFCおよびPFPEが挙げられる。これらの熱伝達流体はそれぞれいくつか欠点を有する。液体窒素系は、低温端で限定された温度選択性をもたらす。PFCおよびPFPEは環境残留性の恐れがある。
【0018】
恒温浴は、典型的に、広い温度範囲にわたって操作される。従って、望ましい熱伝達流体は、好ましくは、広い液体範囲および良好な低温熱伝達特性を有する。かかる特性を有する熱伝達流体によって、恒温浴について非常に広い操作範囲が可能となる。典型的に、たいていの試験流体は、広い温度限界について流体の交換を必要とする。また、良好な温度制御は、熱伝達流体の物理特性を正確に予測するには必須である。
【0019】
この用途に現在用いられている熱伝達流体としては、パーフルオロカーボン(PFC)、パーフルオロエーテル(PFPE)、水/グリコール混合物、脱イオン水、シリコーン油、炭化水素油および炭化水素アルコールが挙げられる。これらの熱伝達流体はそれぞれいくつか欠点を有する。PCFおよびPFPEは、環境残留性の恐れがある。水/グリコール混合物は、温度制限されている、すなわち、かかる混合物の典型的な低温限界は−40℃である。低温で、水/グリコール混合物はまた、比較的高粘度を示す。脱イオン水は、0℃という低温限界を有する。シリコーン油、炭化水素油および炭化水素アルコールは典型的に可燃性である。
【0020】
不活性流体を必要とする熱伝達処理については、フッ素化材料が用いられることが多い。フッ素化材料は、典型的に、低毒性を有し、皮膚に対して実質的に低刺激性であり、化学反応性がなく、不燃性で、高い誘電強度を有する。パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテルおよびハイドロフルオロエーテル等のフッ素化材料は、成層圏においてオゾン層を破壊しないというさらなる利点を与える。
【0021】
上述したとおり、パーフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテルおよびあるハイドロフルオロエーテルが熱伝達のために用いられている。
【0022】
パーフルオロカーボン(PFC)は、上述した用途に対していくつかの特性利点を示す。PFCは、高誘電強度および高体積抵抗率を有する。PFCは不燃性で、通常、構築材料と機械的適合性があり、限られた溶解性を示す。さらに、PFCは、通常、低毒性を示し、運転員に優しい。PFCは、狭い分子量分布を有する生成物を生成するやり方で製造される。しかしながら、それらは、1つ重大な欠点を示す。すなわち、長い環境残留性がある。
【0023】
パーフルオロポリエーテル(PFPE)は、PFCについて記載したのと同じ有利な属性を多く示す。それらはまた、同じ主な欠点、すなわち、長い環境残留性も有する。加えて、これらの材料を製造するために開発された方法は、一定しない分子量のため、性能にばらつきのある生成物を生成する。
【0024】
ハイドロフルオロエーテル(HFE)の1つであるハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)は、PFCと同じ有利な属性をいくつか示すが、2つの領域において大きく異なる。確実に、それらは、顕著に低い環境残留性を示し、数千年でなく、約数十年という大気寿命である。しかしながら、熱伝達流体として教示されたHFPEのいくつかは、広く異なる分子量の成分の混合物である。このように、それらの物理特性は、経時により変化する恐れがあり、性能を予測することを難しくさせている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一実施形態において、本明細書に開示されているのは、式CF
3(CF
2)
xCF=CFCF(OR)(CF
2)
yCF
3、CF
3(CF
2)
xC(OR)=CFCF
2(CF
2)
yCF
3、CF
3CF=CFCF(OR)(CF
2)
x(CF
2)
yCF
3、CF
3(CF
2)
xCF=C(OR)CF
2(CF
2)
yCF
3、またはこれらの混合物(式中、Rは、CH
3、C
2H
5、またはこれらの混合物のいずれかとすることができ、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する少なくとも1つの不飽和フルオロエーテルを含む熱を伝達するための組成物を用いる新規な方法、ならびに上記熱伝達組成物を含む熱を伝達するための機構およびデバイスである。不飽和フルオロエーテル化合物は、不活性、不燃性および環境的に受容される。不活性フルオロエーテル化合物は、液体範囲で低粘性を示し、広い温度範囲にわたって良好な熱伝達特性を有する。
【0029】
多くの態様および実施形態を上述してきたが、それらは例示に過ぎず、限定するものではない。本明細書を読めば、当業者であれば、発明の範囲から逸脱せずに、他の態様および実施形態が可能であることが理解される。実施形態のいずれか1つ以上のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかとなるであろう。
【0030】
後述する実施形態の詳細を記す前に、いくつかの用語を定義または明確化しておく。
【0031】
本明細書に記載された不飽和フルオロエーテル組成物は、通常、不活性である。さらに、本明細書に記載された組成物は、高誘電強度および低電気伝導性を有する。組成物は、さらに、熱的に安定である。
【0032】
一実施形態において、本発明の不飽和フルオロエーテルは、CF
3(CF
2)
xCF=CFCF(OR)(CF
2)
yCF
3、CF
3(CF
2)
xC(OR)=CFCF
2(CF
2)
yCF
3、CF
3CF=CFCF(OR)(CF
2)
x(CF
2)
yCF
3、CF
3(CF
2)
xCF=C(OR)CF
2(CF
2)
yCF
3、またはこれらの混合物(式中、Rは、CH
3、C
2H
5、またはこれらの混合物のいずれかとすることができ、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する少なくとも1つの不飽和フルオロエーテルを有する化合物を表わす。
【0033】
装置
特定の実施形態において、本発明は、熱伝達を必要とする装置を含む。装置は、熱伝達流体を用いてデバイスへ熱を伝達する、またはデバイスから熱を伝達するデバイスおよび機構を含む。かかる装置は、冷蔵システム、冷却システム、試験機器および機械加工機器を含む。
【0034】
本発明の装置としては、これらに限られるものではないが、半導体ダイスの性能を試験するための自動化試験機器に用いる試験ヘッド、アッシャー、ステッパ、エッチャー、PECVDツールにおいてシリコンウェハを保持するのに用いるウェハチャック、恒温浴および熱衝撃試験浴が例示される。
【0035】
デバイス
特定の実施形態において、本発明は、デバイスを含む。デバイスは、本明細書において、選択した温度で、冷却、加熱または維持すべきコンポーネント、ワークピース、アセンブリ等と定義される。かかるデバイスとしては、電気コンポーネント、機械コンポーネントおよび光学コンポーネントが挙げられる。本発明のデバイスとしては、マイクロプロセッサ、半導体デバイスを製造するのに用いるウェハ、出力制御半導体、配電スイッチギア、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージおよびアンパッケージ半導体デバイス、化学反応器、原子炉、燃料電池、レーザーおよびミサイルコンポーネントが例示されるが、これらに限られるものではない。
【0036】
熱伝達機構
特定の実施形態において、本発明は、熱を伝達する機構を含む。熱は、熱伝達媒体をデバイスと熱接触させて配置することにより伝達される。熱伝達機構は、デバイスと熱接触させて配置すると、熱をデバイスから除去する、またはデバイスを熱に与える、またはデバイスを選択した温度に維持する。熱の流れる方向(デバイスからの、またはデバイスへの)は、デバイスと熱伝達媒体間の相対温度により決まる。
【0037】
熱伝達機構は、本発明の熱伝達流体を含む。
【0038】
さらに、熱伝達機構は、熱伝達流体を管理するための設備を含んでいてもよく、これらに限られるものではないが、ポンプ、バルブ、流体閉じ込めシステム、圧力制御システム、凝縮器、熱交換器、熱源、ヒートシンク、冷蔵システム、能動温度制御システムおよび受動温度制御システムが挙げられる。ある実施形態において、ヒートシンクは、蒸気圧縮冷却システムを含む。
【0039】
好適な熱伝達機構としては、これらに限られるものではないが、PECVDツールにおける温度制御ウェハチャック、ダイ性能試験のための温度制御試験ヘッド、半導体プロセス機器内の温度制御ワークゾーン、熱衝撃試験浴液体容器および恒温浴が例示される。
【0040】
エッチャー、アッシャー、PECVDチャンバ、熱衝撃テスター等のあるシステムにおいて、望ましい操作上限温度は、150℃と高くすることができる。
【0041】
方法
本発明は、さらに、デバイスを提供する工程と、熱伝達流体を含む熱を伝達するための機構を提供する工程と、熱伝達流体を用いて、デバイスへ熱を伝達する、またはデバイスから熱を伝達する工程とを含み、熱伝達流体が、式CF
3(CF
2)
xCF=CFCF(OR)(CF
2)
yCF
3、CF
3(CF
2)
xC(OR)=CFCF
2(CF
2)
yCF
3、CF
3CF=CFCF(OR)(CF
2)
x(CF
2)
yCF
3、CF
3(CF
2)
xCF=C(OR)CF
2(CF
2)
yCF
3、またはこれらの混合物(式中、Rは、CH
3、C
2H
5、またはこれらの混合物のいずれかとすることができ、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する少なくとも1つの不飽和フルオロエーテルを含む。
【0042】
一実施形態において、本明細書に開示されている組成物は、パーフルオロアルケン、例えば、パーフルオロ−3−ヘプテン、パーフルオロ−2−ヘプテン、パーフルオロ−2−ヘキセン、パーフルオロ−3−ヘキセンまたはパーフルオロ−2−ペンテンを、強塩基を存在させて、アルコールと接触させることにより調製することができる。例えば、パーフルオロ−3−ヘプテンを、アルコール、例えば、メタノールまたはエタノールまたはこれらの混合物と、強塩基の水溶液を存在させて、反応させて、不飽和フルオロエーテルを生成することができる。以降、アルコールまたは「1つのアルコール」は、複数のアルコール、例えば、メタノールまたはエタノールおよびこれらの混合物を称するものとする。
【0043】
一実施形態において、パーフルオロ−3−ヘプテンとメタノールの反応からの生成物は、5−メトキシパーフルオロ−3−ヘプテン、3−メトキシパーフルオロ−3−ヘプテン、4−メトキシパーフルオロ−2−ヘプテンおよび3−メトキシパーフルオロ−2−ヘプテンを含む。
【0044】
一実施形態において、パーフルオロ−2−ペンテンとメタノールの反応からの生成物は、4−メトキシパーフルオロ−2−ペンテン、2−メトキシパーフルオロ−2−ペンテン、3−メトキシパーフルオロ−2−ペンテンおよび2−メトキシパーフルオロ−3−ペンテンを含む。
【0045】
一実施形態において、パーフルオロ−2−オクテンとメタノールの反応からの生成物は、シス−およびトランス−2−メトキシパーフルオロ−2−オクテンおよび2−メトキシパーフルオロ−3−オクテンを含む。
【0046】
一実施形態において、強塩基は、アルコールと反応して、塩基とそのアルコールの配合によりアルコキシドを生成する塩基である。かかるアルコキシドを形成するのに用いることのできる塩基としては、アルキル金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0047】
一実施形態において、強塩基は、10重量%〜45重量%の濃度のアルカリ金属水酸化物を有する水溶液の形態で存在する。一実施形態において、アルコール1モル当たり、アルキル金属水酸化物1モルを用いて、アルコキシドを生成する。他の実施形態において、アルコール1モル当たり、アルキル金属水酸化物1.1モルを用いる。さらに他の実施形態において、アルコール1モル当たり、アルキル金属水酸化物約0.9モルを用いる。
【0048】
一実施形態において、パーフルオロアルケン1モル当たり、アルキル金属水酸化物1モルを用いる。他の実施形態において、パーフルオロアルケン1モル当たり、アルキル金属水酸化物約1.1モルを用いる。さらに他の実施形態において、パーフルオロアルケン1モル当たり、アルキル金属水酸化物約1.05モルを用いる。
【0049】
一実施形態において、アルキル金属水酸化物を、パーフルオロアルケンと配合してから、アルコールおよび水を、パーフルオロアルケンと塩基の混合物に添加すると、即時の発熱反応となる。他の実施形態において、アルキル金属水酸化物を水に溶解して、パーフルオロアルケンと混合する。アルコールの添加により、即時の発熱反応となって、不飽和フルオロエーテルが生成される。
【0050】
一実施形態において、アルコールは、パーフルオロアルケン、アルカリ金属水酸化物および水に一度で添加する。他の実施形態において、アルコールは、時間をかけて徐々に添加する。一実施形態において、アルコールは、1時間かけて添加する。他の実施形態において、アルコールは、2時間かけて添加する。さらに他の実施形態において、パーフルオロアルケン、アルカリ金属水酸化物およびアルコールは一緒に添加し、水は時間をかけて徐々に添加する。
【0051】
一実施形態において、パーフルオロアルケン、アルカリ金属水酸化物、アルコールおよび水は、全て、略室温で添加する。他の実施形態において、パーフルオロアルケンおよびアルカリ金属水酸化物の水溶液は、約50℃まで加熱し、アルコールは、時間をかけて徐々に添加する。
【0052】
一実施形態において、相間移動触媒は、パーフルオロアルケン、アルカリ金属水酸化物、アルコールおよび水の混合物に添加する。一実施形態において、相間移動触媒は、第4級アンモニウム塩である。一実施形態において、相間移動触媒は、Aliquat336である。一実施形態において、相間移動触媒の量は、アルカリ金属水酸化物の約1重量%〜約10重量%である。
【0053】
相間移動触媒は、イオンまたは中性とすることができ、クラウンエーテル、オニウム塩、クリプテート、ポリアルキレングリコール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される。所望の反応を行うには、有効量の相間移動触媒を用いるべきである。反応物質、プロセス条件および相間移動触媒を選択したら、かかる量は、わずかな実験で求めることができる。
【0054】
クラウンエーテルは、エーテル基がジメチレン結合により連結された環状分子である。化合物は、水酸化物のアルカリ金属イオンを「受ける」または保持することができ、それによって反応が促されるものと考えられる分子構造を形成する。特に有用なクラウンエーテルとしては、18−クラウン−6、特に、水酸化カリウムと配合したもの、15−クラウン−5、特に、水酸化ナトリウムと配合したもの、12−クラウン−4、特に、水酸化リチウムと配合したものが挙げられる。上記のクラウンエーテルの誘導体も有用であり、例えば、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8および12−クラウン−4である。アルカリ金属化合物に、特に、リチウムについて、特に有用なその他のポリエーテルは、許す範囲で参考文献として援用される米国特許第4,560,759号明細書に記載されている。クラウンエーテルに類似した、同じ目的に有用なその他の化合物は、酸素原子の1つ以上が、他の種類のドナー原子、特に、NまたはS、例えば、ヘキサメチル−[14]−4,11−ジエンN
4で置換されることにより異なる化合物である。
【0055】
オニウム塩としては、本発明のプロセスにおいて相間移動触媒として用いてよい第4級ホスホニウム塩および第4級アンモニウム塩が挙げられ、かかる化合物は、次式IおよびII:
R
1R
2R
3R
4P
(+)X’
(−)(I)
R
1R
2R
3R
4N
(+)X’
(−)(II)
で表わすことができ、式中、同一または異なっていてよいR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、X’はハロゲン原子である。これらの化合物の具体例としては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム(Aliquat336およびAdogen464という商標で市販)、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化トリフェニルメチルホスホニウムおよび塩化トリフェニルメチルホスホニウムが挙げられる。中でも、強塩基条件下で用いるには、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムが好ましい。この部類の化合物のその他の有用な化合物としては、高温安定性(例えば、約200℃まで)を示すものが挙げられ、4−ジアルキルアミノピリジニウム塩、例えば、塩化テトラフェニルアルソニウム、塩化ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン]イミニウムおよび塩化テトラトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムが含まれる。後者の2つの化合物はまた、熱濃水酸化ナトリウムの存在下で安定であるとも報告されており、特に有用となり得る。
【0056】
相間移動触媒として有用なポリアルキレングリコール化合物は、式R
6O(R
5O)
tR
7(III)により表わすことができ、式中、R
5は、アルキレン基であり、同一または異なっていてよいR
6およびR
7は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、tは、少なくとも2の整数である。かかる化合物としては、例えば、グリコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ジイソプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびテトラメチレングリコール、モノアルキルエーテル、例えば、かかるグリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピルおよびモノブチルエーテル、ジアルキルエーテル、例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびペンタエチレングリコールジメチルエーテル、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、ならびにポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(平均分子量約300)ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール(平均分子量約300)ジブチルエーテルおよびポリエチレングリコール(平均分子量約400)ジメチルエーテルが挙げられる。中でも、R
6およびR
7の両方がアルキル基、アリール基またはアラルキル基である化合物が好ましい。
【0057】
クリプテートは、相間移動触媒として存在させるのに有用な化合物の他の部類である。橋頭構造を、適切な間隔のあいたドナー原子を含有する鎖により結合することにより形成された3次元ポリ大環状キレート化剤がある。例えば、二環式分子は、窒素橋頭を、(−−OCH
2CH
2−−)基の鎖により結合することから、2.2.2−クリプテート(4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ−(8.8.8)ヘキサコサン、cryptand222およびKryptofix222)として得られる。ブリッジのドナー原子は全てO、NまたはSであってよい、または化合物は、ブリッジストランドが、かかるドナー原子の組み合わせを含有する混合ドナー大員環であってよい。
【0058】
上述したグループの1つの組み合わせ、2つ以上のグループからの組み合わせまたは混合、例えば、クラウンエーテルとオニウム、あるいは3つ以上のグループからの組み合わせまたは混合、例えば、第4級ホスホニウム塩、第4級アンモニウム塩、クラウンエーテルおよびポリアルキレングリコールの相間移動触媒も有用であろう。
【0059】
一実施形態において、数時間後、反応混合物は周囲温度まで冷やして、分液漏斗に注ぐ。有機下層を、無機塩を含有する水性層から分離する。有機層を乾燥させたら、蒸留によりさらに精製することができる。一実施形態において、有機層は、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。他の実施形態において、有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。パーフルオロヘプテンエーテルの調製の一実施形態において、アリルおよびビニルパーフルオロアルケンアルキルエーテルの混合物を含むメチルまたはエチルエーテルを調製するのに応じて、108℃〜122℃の蒸留物から留分を集める。
【0060】
本明細書で用いる「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「持つ」、「持っている」またはその他変形の用語は、非排他的な包括をカバーするものである。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、それらの要素に必ずしも限定されず、明示的にリストされていない、またはかかるプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素も含まれていてよい。さらに、明示的にそれには反するとした場合を除き、「または」は、包括的なまたはであり、排他的なまたはでない。例えば、条件AまたはBを満足するのは次のうちのいずれかである。Aが真(または存在する)でBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)でBが真(または存在する)、およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0061】
単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および成分を記載するために使用される。これは、単に便宜上のために、かつ本発明の一般的な意味を与えるために使用される。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、他の意味であることが明白でない限り、単数形には複数形も含まれる。
【0062】
元素周期表の列に対応する属数は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,第81版(2000−2001年)にある「新表記」規則を用いている。
【0063】
別記しない限り、本明細書で用いる科学技術用語は全て、本発明の属する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書に記載されたものと同様または等価の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験に用いることができるが、好適な方法および材料は後述する。本明細書で言及した出版物、特許出願、特許およびその他参考文献は全て、別記しない限り、その全内容が、参考文献として組み込まれる。不一致がある場合には、定義を含め本明細書が支配する。また、材料、方法および実施例は例示のためのみであり、限定しようとするものではない。
【実施例】
【0064】
本明細書に記載した概念を、以下の実施例でさらに説明していく。それらは、請求項に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
実施例1
実施例1は、メタノールと、パーフルオロ−3−ヘプテンとの反応を示すものである。
【0066】
250mLの三つ口RBフラスコを、オーバーヘッドメカニカルスターラー、還流冷却器および熱電対さやと50mLの添加漏斗を備えたクライゼンと共にセットアップした。200g(125mL、約0.57モル)のパーフルオロ−3−ヘプテンおよび37.7g(0.67モル)の粉末KOHをフラスコに添加した。18.3g(0.57モル)のメタノールを添加漏斗により徐々に添加した。小さな発熱反応があった。30分攪拌後、少量の水(約20mL)を冷却器から添加したところ、温度が60〜70℃まで上がった大きな発熱反応があった。
【0067】
2時間攪拌後、反応混合物を、真空(100mmHg)下で、ドライアイスで冷やしたフラスコへフラッシュ蒸留した。粗蒸留物を、250mLの分液漏斗で、水からさらに分離して、硫酸マグネシウムで乾燥した。スピンバンド蒸留により、主に、54〜74℃で沸騰する前留分約60mLが得られた。95℃で始まるが、主に、108〜114℃で沸騰する第2の生成物留分(約40mL)を集めた。第2の留分を、GC−MSにより分析したところ、大半が、アリルとビニルメチルパーフルオロヘプテンエーテルの混合物で構成されていた。約14%の飽和メチルモノヒドロフルオロヘプタンエーテル生成物もまた、混合物の一部であった。残りのパーフルオロ−3−ヘプテンは、蒸留混合物の約1%を構成していた。
【0068】
実施例2
実施例2は、メタノールと、パーフルオロ−3−ヘプテンとの反応を示すものである。
【0069】
メタノールと、パーフルオロ−3−ヘプテンとの第2の反応は、実施例1と実質的に同様のやり方で行った。200g(125mL、約0.57モル)のパーフルオロ−3−ヘプテン、35.3g(0.63モル)の粉末KOH、20mLの水および約約1gのAliquat(登録商標)336をフラスコに添加した。メタノールの添加により、温度が60〜70℃まで上がった即時の大きな発熱反応があった。添加後、攪拌および60〜70℃までの加熱を2時間続けた。略周囲温度まで冷やした後、反応混合物を分液漏斗に注いだ。水性上層に残る大量の沈殿塩があった。下層(約120mL)を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0070】
実施例3
メタノールとパーフルオロ−3−ヘプテンとの反応
メタノールと、パーフルオロ−3−ヘプテンとの第3の反応は、実施例1と実質的に同様のやり方で行った。200g(125mL、約0.57モル)のパーフルオロ−3−ヘプテン、78.3g(0.63モル)の45%水性KOHおよび1gのAliquat(登録商標)336を500mLのフラスコに添加した。メタノールの添加により、温度が60〜70℃まで上がった即時の大きな発熱反応があった。添加後、攪拌および60〜70℃までの加熱を2時間続けた。略周囲温度まで冷やした後、反応混合物を分液漏斗に注いだ。水性層に残る沈殿塩はなかった。下層(約120mL)を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0071】
実施例4
メチルパーフルオロヘプテンエーテルの蒸留
実施例2および3からの粗メチルパーフルオロヘプテンエーテル生成物を結合し、ろ過し、スピンバンドにより蒸留した。第1の留分18mLを、54〜74℃で集めた。中間の留分4mLを、74℃〜106℃で集めた。108℃〜114℃で主に蒸留された106℃で始まる主留分180mLを集めた。スチルポット留分35mLが残った。これは、後のGC−MSにより、高メタノール付加生成物から主になることが確認された。0.1%未満のパーフルオロヘプテンが主留分に残った。25mLの試料を単蒸留により再蒸留した。観察された蒸気温度範囲は107〜112℃であった。観察されたスチルポット温度範囲は110〜112℃であった。キャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定した粘度は−31℃で2.72センチストークスであった。
【0072】
実施例5
メタノールとパーフルオロ−2−ペンテンとの反応
1Lの三つ口RBフラスコを、オーバーヘッドメカニカルスターラー、水氷還流冷却器、マントルヒーターおよび熱電対さやと125mLの添加漏斗を備えたクライゼンと共にセットアップした。382g(約240mL、約1.53モル)のパーフルオロ−2−ペンテンおよび219g(1.76モル)の水性45%KOHおよび約1gのAliquat(登録商標)336をフラスコに添加した。53.8g(1.68モル)のメタノールを添加漏斗により徐々に添加した。反応混合物を還流させる発熱反応があった。反応温度を、約24℃から60℃まで、メタノール添加中、徐々に上げた。添加後、攪拌を2時間続けた。略周囲温度まで冷却した後、反応混合物を、分液漏斗へ注ぎ、2層を0.5時間にわたって徐々に分離した。下層(約240mL)を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0073】
実施例6
メチルパーフルオロペンテンエーテルの蒸留
実施例5からの粗メチルパーフルオロペンテンエーテル生成物をろ過し、スピンバンドにより蒸留した。第1の留分6mLを、50〜69℃で集めた。71℃〜78℃で主に蒸留された69℃で始まる主留分190mLを集めた。スチルポット留分38mLが残った。これは、後のGC−MSにより、少量の飽和メチルモノヒドロフルオロペンタンエーテルと高メタノール付加生成物とからなることが確認された。主留分をGC−MSにより分析したところ、大半が、アリルおよびビニルメチルパーフルオロペンテンエーテルの混合物を含んでいた。約8.4%の飽和メチルモノヒドロフルオロペンタンエーテル生成物も混合物の一部であった。残渣パーフルオロ−2−ペンテンは、約0.03%の蒸留混合物を含んでいた。
【0074】
25mLの試料を単蒸留により再蒸留した。観察された蒸気温度範囲は、72〜77℃であった。観察されたスチルポット温度範囲は、73〜77℃であった。キャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定した粘度は−31℃で0.97センチストークスであった。メチルパーフルオロペンテンおよびパーフルオロヘプテンエーテルのいくつかの選択した物理特性を表1に挙げてある。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例7
エタノールとパーフルオロ−3−ヘプテンとの反応
250mLの三つ口RBフラスコを、オーバーヘッドメカニカルスターラー、還流冷却器、マントルヒーターおよび熱電対さやと50mLの添加漏斗を備えたクライゼンと共にセットアップした。40g(0.32モル)の水性KOHおよび100g(0.29モル)のパーフルオロ−3−ヘプテンをフラスコに添加した。混合物を攪拌しながら、50℃まで加熱した。その温度で、16.4g(0.36モル)のエタノールを添加漏斗により徐々に添加した。発熱反応が生じ、反応混合物の温度が約70℃まで上がった。エタノール添加後、反応混合物をさらに1時間加熱して、温度を70℃またはその近くに維持した。1時間後加熱を止め、反応物を攪拌しながら、略周囲温度まで冷やした。反応混合物を分液漏斗へ注いだ。下層(約120mL)を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0077】
実施例8:
エチルパーフルオロヘプテンエーテルの蒸留
実施例7からの粗エチルパーフルオロヘプテンエーテル生成物を、ろ過し、スピンバンドにより蒸留した。第1の留分7.5gを、約70〜72℃で集めた。120℃〜122℃で主に蒸留された110℃で始まる主留分73.5gを集めた。スチルポット留分5.2gが残った。主留分のGC−MSによれば、約62.8%のアリルエチルパーフルオロヘプテンエーテル、約29.7%のビニルエチルパーフルオロヘプテンエーテル、7.2%のエチルモノヒドロパーフルオロヘプタンエーテルおよび0.3%のパーフルオロ−3−ヘプテンからなることが示された。
【0078】
実施例9
エタノールとパーフルオロ−3−ヘプテンとの反応
エタノールとパーフルオロ−3−ヘプテンとの第2の反応を、26.3g(0.57モル)のエタノールを用い、エタノール添加前に、反応物を加熱しなかった以外は、実施例7と実質的に同じやり方で行った。メタノールの添加により、温度が60〜70℃まで上がった即時の大きな発熱反応があった。添加後、攪拌および60〜70℃までの加熱を2時間続けた。略周囲温度まで冷やした後、反応混合物を分液漏斗に注いだ。下層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0079】
実施例10
エチルパーフルオロヘプテンエーテルの蒸留
実施例9からの粗エチルパーフルオロヘプテンエーテル生成物および実施例8からの蒸留生成物を、結合し、ろ過し、スピンバンドにより蒸留した。123℃まで、118℃で始まる主留分を集めた。GC−MSによれば、60.0%のアリルエチルパーフルオロヘプテンエーテル、33.1%のビニルエチルパーフルオロヘプテンエーテル、6.4%のエチルモノヒドロパーフルオロヘプタンエーテル、0.4%の未知のものおよび0.05%のパーフルオロ−3−ヘプテンからなることが示された。
【0080】
実施例11
メタノールとパーフルオロ−2−オクテンとの反応
250mLの三つ口RBフラスコを、オーバーヘッドメカニカルスターラー、還流冷却器、マントルヒーター、熱電対さやを備えたクライゼン、および25ccガラスシリンジおよびシリンジポンプに接続されたPFAフルオロポリマー可撓性ニードルと共にセットアップした。64.6g(162ミリモル)のパーフルオロ−2−オクテン、5.18g(162ミリモル)のメタノールおよび0.5gのAliquat(登録商標)336をフラスコに添加した。400rpmの攪拌により、45%水性KOH溶液(20.15g、162ミリモル)を、シリンジポンプにより、0.5mL/分で徐々に添加した。反応は発熱で、反応温度は約50℃まで上がった。KOH添加完了後、外部加熱を2時間行って加熱し、内容物を約85℃に維持した。反応物を略周囲温度まで冷やし、粗生成物(下層、64.7g)を50mL漏斗で分離した。粗生成物のガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)によれば、組成は、6.3%のパーフルオロ−2−オクテン、92.3%の不飽和および飽和エーテルおよび1.4%の高メタノール付加物であることが示された。
【0081】
実施例12
メチルパーフルオロオクテンエーテルの蒸留
実施例11からの粗生成物を、硫酸マグネシウムで乾燥し、250mLのスチルポットへ、ポリプロピレンろ布を用いてろ過した。粗生成物を、小スピンバンドカラムを用いて、手動のバルブ制御により蒸留した。第1の留分約5mLを、85℃〜115℃で集めてから、115℃で始まるが、130℃まで即時に上昇し、133℃〜135℃で主に沸騰する主留分(48.7g)を集めた。GC/MSによれば、主留分は、主として不飽和エーテルといくらかの飽和エーテルの98.2%混合物であったことが示された。1.8%が、パーフルオロ−2−オクテンであった。
1H NMRによれば、飽和エーテル含量は4.0%であった。
19F NMRによれば、不飽和エーテルは、主に、トランス−2−メトキシ−パーフルオロ−2−オクテン(44.8%)、2−メトキシ−パーフルオロ−3−オクテン(34.5%)およびシス−2−メトキシ−パーフルオロ−2−オクテン(5.9%)であった。
【0082】
実施例13
熱伝達流体としてのMPHEの使用
Risshi CS1500−UL−2K冷却器を利用することにより、MPHEの熱伝達特性を示した。流体を、冷却器に配置し、−50℃、−30℃および20℃の温度で試験した。各設定点での平衡30分後、冷却材および熱伝達流体の温度を表2に示すとおり記録した。さらに、市販の熱伝達流体であるGalden(登録商標)HT−110についてのデータを得た。両方の熱伝達流体共、同じ沸点を有している。
【0083】
【表2】
【0084】
ΔT
1は、冷媒出口と熱伝達流体出口間の温度差であり、冷媒から熱伝達流体へ有効に熱を伝達する能力の重要な指標である。温度ギャップは小さい方が好ましい。MPHEが、市販の流体と同じほど、またはそれより良く機能することが示された。
【0085】
記録されたポンプ能力によれば、MPHE流体は、HT−110より使う力が少なく、流体を循環するのに、MPHEをよりエネルギー効率の良いものとさせていることが分かる。
【0086】
実施例14
粘度
熱伝達流体の粘度は、循環するのに粘性流体だと相当費用のかかる冷たい温度では特に、重要である。MPHEの粘度を、−30℃〜+30℃で測定した。キャノン−フェンスケ粘度計を、約20℃を超える温度については25番を、20℃以下の温度については50番を用いてMPHE粘度を測定した。測定範囲外の粘度情報を得るためのモデルを開発した。データを表3に示す。市販の熱伝達流体HT−110との比較も示してある。HT−110の粘度は、製造業者の技術文献から得た。
【0087】
【表3】
【0088】
粘度データによれば、MPHEは、同じ温度で、HT−110より低い粘度であることが分かり、改善されている。
【0089】
概要または実施例に上述した動作の全てが必要ではないこと、特定の動作の一部が必要ない場合もあること、そして1つ以上のさらなる動作を、記載したものに加えて行うことができることを記しておく。さらに、動作を示した順番は、必ずしも、それらを行う順番ではない。
【0090】
前述の明細書において、特定の実施形態を参照して、概念を説明してきた。しかしながら、当業者には、以下の請求項に規定された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行えることは明らかである。従って、明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示とみなすべきであり、かかる修正は全て、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0091】
利点、その他長所および問題解決策を、特定の実施形態に関して上述してきた。しかしながら、利点、長所、問題解決策、および利点、長所または解決策のいずれかが生じる、またはより顕著となる任意の特徴は、いずれか、または全ての請求項の重要な、必要な、または必須の特徴と解釈されるべきでない。
【0092】
特定の特徴は、明確にするために、個別の実施形態で記載された特定の特徴は、単一の実施形態の組み合わせで提供されてもよいものと考えるべきである。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態で記載された様々な特徴も、個別に、または任意のサブコンビネーションで提供されてもよい。さらに、範囲で記した値の参照には、その範囲内のありとあらゆる値が含まれる。
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1. a.デバイスを提供する工程と、
b.熱伝達流体を用いて、デバイスへ熱を伝達する、またはデバイスから熱を伝達する工程とを含み、前記熱伝達流体が、式
CF3(CF2)xCF=CFCF(OR)(CF2)yCF3、
CF3(CF2)xC(OR)=CFCF2(CF2)yCF3、
CF3CF=CFCF(OR)(CF2)x(CF2)yCF3、
CF3(CF2)xCF=C(OR)CF2(CF2)yCF3、またはこれらの混合物(式中、Rは、CH3、C2H5、またはこれらの混合物のいずれかとすることができ、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する少なくとも1つの不飽和フルオロエーテルを含む、熱を伝達するための方法。
2. 前記不飽和フルオロエーテルが、式CF3(CF2)xCF=CFCF(OR)(CF2)yCF3(式中、Rは、CH3、C2H5またはこれらの混合物であり、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する化合物を含む前記1.に記載の方法。
3. 式CF3(CF2)xC(OR)=CFCF2(CF2)yCF3(式中、Rは、CH3、C2H5またはこれらの混合物であり、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する化合物をさらに含む前記2.に記載の方法。
4. 前記不飽和フルオロエーテルが、式CF3(CF2)xC(OR)=CFCF2(CF2)yCF3(式中、Rは、CH3、C2H5またはこれらの混合物であり、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する化合物を含む前記1.に記載の方法。
5. 前記不飽和フルオロエーテルが、式CF3CF=CFCF(OR)(CF2)x(CF2)yCF3(式中、Rは、CH3、C2H5またはこれらの混合物であり、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する化合物を含む前記1.に記載の方法。
6. 前記不飽和フルオロエーテルが、式CF3(CF2)xCF=C(OR)CF2(CF2)yCF3(式中、Rは、CH3、C2H5またはこれらの混合物であり、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する化合物を含む前記1.に記載の方法。
7. 前記不飽和フルオロエーテルが、−31℃で100センチストークス未満の粘度を有する前記1.に記載の方法。
8. 前記不飽和フルオロエーテルが、−31℃で20センチストークス未満の粘度を有する前記1.に記載の方法。
9. a.デバイスと、
b.熱伝達流体を用いて、デバイスへ熱を伝達する、またはデバイスから熱を伝達する機構とを含み、前記熱伝達流体が、式
CF3(CF2)xCF=CFCF(OR)(CF2)yCF3、
CF3(CF2)xC(OR)=CFCF2(CF2)yCF3、
CF3CF=CFCF(OR)(CF2)x(CF2)yCF3、
CF3(CF2)xCF=C(OR)CF2(CF2)yCF3、またはこれらの混合物(式中、Rは、CH3、C2H5、またはこれらの混合物のいずれかとすることができ、xおよびyは、独立に、0、1、2または3であり、x+y=0、1、2または3である)を有する少なくとも1つの不飽和フルオロエーテルを含む、熱伝達を必要とする装置。
10. 前記デバイスが加熱される前記9.に記載の装置。
11. 前記デバイスが冷却される前記9.に記載の装置。
12. 前記デバイスが選択した温度に維持される前記9.に記載の装置。
13. 前記デバイスが、マイクロプロセッサ、半導体デバイスを製造するのに用いるウェハ、出力制御半導体、配電スイッチギア、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージおよびアンパッケージ半導体デバイス、化学反応器、原子炉、燃料電池、レーザーおよびミサイルコンポーネントである、前記9.に記載の装置。