特許第5746417号(P5746417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746417
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ポールシュー
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20150618BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20150618BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20150618BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20150618BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H02K1/32 D
   H02K9/19 B
   H02K3/34 B
   H02K3/46 B
   H02K3/52 F
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-501565(P2014-501565)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-514902(P2014-514902A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012055350
(87)【国際公開番号】WO2012130814
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】102011006681.0
(32)【優先日】2011年4月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】レンショヴ、ゲルハルト
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0193256(US,A1)
【文献】 スイス国特許発明第00425984(CH,A)
【文献】 特開2007−259627(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/029743(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/142001(WO,A2)
【文献】 独国特許出願公開第102009025929(DE,A1)
【文献】 国際公開第2010/031881(WO,A1)
【文献】 実開昭59−030645(JP,U)
【文献】 実開昭59−126554(JP,U)
【文献】 特開平09−215240(JP,A)
【文献】 特開2004−208461(JP,A)
【文献】 実開昭63−105443(JP,U)
【文献】 特開2010−011686(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/156127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/19
H02K 3/34
H02K 3/46
H02K 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置のリングジェネレータのロータのポールシュー(500、600)であって、
・磁界を案内するための、及び該磁界を生成するための電流を案内するための巻線を受容するための、切欠を有するポールシューボディ(504、620)と、
・前記ポールシューボディ(504、620)を完全に又は部分的に包囲する前記ポールシュー(00、00)の冷却のための少なくとも1つの冷却体(101、201、301、401、501、701
を含み、
前記冷却体(101、201、301、401、501、701)が前記ポールシューボディ(504、620)と前記巻線の間に配設され、及び
前記冷却体(101、201、301、401、501、701)は、冷却システムに結合するための、前記ポールシューボディ(504、620)の前記切欠に配される少なくとも2つの接続部(102、202、302、402、502)を有する
ポールシュー。
【請求項2】
前記冷却体(101、201、301、401、501、701)は前記巻線を受容するための巻枠体(100)として構成されること
を特徴とする請求項1に記載のポールシュー。
【請求項3】
前記巻線に対し前記冷却体(101、201、301、401、501、701)を電気的に絶縁するための及び/又は前記巻線から前記冷却体(101、201、301、401、501、701)に熱を導くための絶縁手段をし、該絶縁手段は前記冷却体に配されかつ巻線を受容すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のポールシュー。
【請求項4】
前記冷却体(101、201、301、401、501、701)は冷却媒体を案内するために中空に構成されること
を特徴とする請求項1又は2に記載のポールシュー。
【請求項5】
前記冷却体(101、201、301、401、501、701)はアルミニウムで作成されること
を特徴とする請求項1又は2に記載のポールシュー。
【請求項6】
前記接続部の1つを介して冷却媒体が導入され、及び、その余の前記接続部(102、202、302、402、502)の1つを介して冷却媒体が排出されること
を特徴とする請求項1又は2に記載のポールシュー。
【請求項7】
ステータとロータとによって運動エネルギを電気エネルギに変換するためのリングジェネレータであって、
前記ステータ及び/又は前記ロータが請求項1〜6の何れかに記載のポールシュー(500、600)を少なくとも2つ有する
リングジェネレータ
【請求項8】
リングジェネレータは突状ポール機として構成され、前記ポールシュー(500、600)は突状ポール機において使用されるよう構成されること
を特徴とする請求項7に記載のリングジェネレータ
【請求項9】
前記少なくとも2つのポールシュー(500、600)は、各ポールシューが夫々の冷却体(101、201、301、401、501、701)の周囲に該冷却体(101、201、301、401、501、701)がポールシューボディ(504、620)と巻線の間に配置されるよう配置される巻線を有するよう、前記ロータ又は前記ステータに固定されること
を特徴とする請求項7又は8に記載のリングジェネレータ
【請求項10】
ポールシュー(500、600)を冷却するための及び請求項1〜6のいずれかに記載のポールシュー(500、600)と共に使用するためのポールシュー冷却体であって、
該ポールシュー冷却体(101、201、301、401、501、701)は剛な物体として構成され、かつ、ポールシュー(00、00)ないし該ポールシュー(00、00)の前記ポールシューボディ(504、620)に適合されている
ポールシュー冷却体。
【請求項11】
前記ポールシューボディ(504、620)を受容するための受容空間(103、203、303、403)を有すること
を特徴とする請求項10に記載のポールシュー冷却体。
【請求項12】
請求項7〜の何れかに記載のリングジェネレータを有する風力発電装置。
【請求項13】
請求項1〜の何れかに記載のポールシュー(500、600)の製造方法であって、以下の順序の工程:
1.前記ポールシュー(500、600)を冷却するために、冷却体(101、201、301、401、501、701)をポールシューボディ(504、620)に配置すること、
2.巻線を前記冷却体(101、201、301、401、501、701)に配置すること
を含み、
前記冷却体(101、201、301、401、501、701)は、該冷却体が前記ポールシューボディ(504、620)を完全に又は部分的に包囲しかつ該巻線と該ポールシューボディ(504、620)の間に配置されるよう、該ポールシューボディ(504、620)に配置される
製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の風力発電装置の運転方法であって、
前記リングジェネレータが、少なくとも1つのポールシュー冷却体(101、201、301、401、501、701)を介してポンピングされる冷却媒体によって冷却される
運転方法。
【請求項15】
前記冷却媒体は接続部(102、202、302、402、502)を介して熱交換装置に案内され、
該冷却媒体は該熱交換装置において冷却され、かつ、更なる接続部(102、202、302、402、502)を介して前記ポールシュー冷却体(101、201、301、401、501、701)にポンピングにより戻されること
を特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電流は励磁電流であること
を特徴とする請求項1に記載のポールシュー。
【請求項17】
前記冷却媒体は冷却液であること
を特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記冷却体(101、201、301、401、501)は、3つの部分体(106、206、306、406、506)を有し、これらの部分体は夫々、前記ポールシューボディ(504、620)の周囲に配されるベルト状で中空の剛な部材として構成されると共に、前記切欠において接続パイプの形態の前記接続部(102、202、302、402、502)に接続される案内チャンネルを夫々形成すること
を特徴とする請求項1に記載のポールシュー。
【請求項19】
前記冷却体(701)は、当該冷却体(701)において冷却媒体を案内するための案内チャンネル(730)を有する単一部材として構成され、前記切欠において接続パイプの形態の前記接続部(727)に接続されること
を特徴とする請求項1に記載のポールシュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の、とりわけ風力発電装置の発電機のロータのポールシューに関する。更に、本発明は、発電機、とりわけリングジェネレータ、並びにポールシュー冷却体及び風力発電装置に関する。更に、本発明は、ポールシューの製造方法及び風力発電装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポールシューは、一般的に、磁界を案内すること、及び、定義された形態の磁力線を湧出(形成)及び分配(配置)することのために役立つ。この場合、そのようなポールシューは高透磁率材料で作られる。電気機械では、例えば風力発電装置の発電機では、ポールシューは発電機のステータ及び/又はロータに設けられる。なお、ポールシューは、以下においては、渦電流の回避又は少なくとも低減するために互いに対し絶縁された多数の別個の薄層金属から構成されるポールシュー薄層積層体として理解される。この場合、そのようなポールシューは本質的にポールシューヘッドとポールシューボディから構成される。
【0003】
とりわけ、伝動機構を備えない風力発電装置の発電機の場合のようなゆっくりと回転する発電機の場合、大きな励磁電流、即ち励磁巻線の中を流れ、その際磁界を生成する電流が必要とされる。これにより励磁電力損が大きくなる。そのような発電機の出力を大きくする方策の1つは励磁電流を大きくすることである。その際に増大する損失エネルギを除去するために、発電機を冷却するための冷却システムが使用される。
【0004】
発電機の冷却は例えば文献DE 10 124 268 A1から知られている。この文献はリングジェネレータと該リングジェネレータを包囲する風力発電装置のゴンドラハウジングを有する風力発電装置に関するものであり、この場合、ゴンドラハウジングはリングジェネレータの領域において熱伝導性のハウジング部分を有し、リングジェネレータの外周部と熱伝導性のハウジング部分との間には予め設定された間隔が形成されており、かくして、熱エネルギは空気を介してないし空気によって伝達される。
【0005】
一般的に、発電機に対しては、空冷システム、水冷システム又は空水冷併用システムが知られている。そのような既知の方策は、部分的に冷却能力が低いことがあり、又は、発電機における構造上の変更のために極めて高価かつ大がかりになる。
【0006】
更なる技術水準として、上記のほか、一般的に以下の文献が参照される:CH 425 984 A、US 6 774 504 B1及びEP 0 793 870 B1。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 10 124 268 A1
【特許文献2】CH 425 984 A
【特許文献3】US 6 774 504 B1
【特許文献4】EP 0 793 870 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、本発明の課題は、上述の問題の少なくとも1つを解消し、少なくとも軽減することである。とりわけ、電気機械の、とりわけ風力発電装置の発電機のロータのポールシューの改善された冷却が可能にされるべきである。少なくとも、代替的方策が提案されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明により、請求項1に記載の電気機械のポールシューが提案される。
(形態1)上記の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、風力発電装置のリングジェネレータのロータのポールシューが提供される。このポールシューは、
・磁界を案内するための、及び該磁界を生成するための電流を案内するための巻線を受容するための、切欠を有するポールシューボディと、
・前記ポールシューボディを完全に又は部分的に包囲する前記ポールシューの冷却のための少なくとも1つの冷却体
を含み、
前記冷却体が前記ポールシューボディと前記巻線の間に配設され、及び
前記冷却体は、冷却システムに結合するための、前記ポールシューボディの前記切欠に配される少なくとも2つの接続部を有する
(形態2)上記のポールシューにおいて、前記冷却体は前記巻線を受容するための巻枠体として構成されることが好ましい。
(形態3)上記のポールシューにおいて、前記巻線に対し前記冷却体を電気的に絶縁するための及び/又は前記巻線から前記冷却体に熱を導くための絶縁手段、とりわけ絶縁シート、を有し、該絶縁手段は前記冷却体に配されかつ巻線を受容することが好ましい。
(形態4)上記のポールシューにおいて、前記冷却体は冷却媒体を案内するために中空に構成されることが好ましい。
(形態5)上記のポールシューにおいて、前記冷却体はアルミニウムで作成されることが好ましい。
(形態6)上記のポールシューにおいて、前記接続部の1つを介して冷却媒体が導入され、及び、その余の前記接続部の1つを介して該冷却媒体が排出されることが好ましい。
(形態7)ステータとロータとによって運動エネルギを電気エネルギに変換するためのリングジェネレータであって、前記ステータ及び/又は前記ロータが上記形態1〜6の何れかのポールシューを少なくとも2つ有するリングジェネレータも有利に提供される。
(形態8)上記のリングジェネレータは突状ポール機として構成され、前記ポールシューは突状ポール機において使用されるよう構成されることが好ましい。
(形態9)上記のリングジェネレータにおいて、前記少なくとも2つのポールシューは、各ポールシューが夫々の冷却体の周囲に該冷却体がポールシューボディと巻線の間に配置されるよう配置される巻線を有するよう、前記ロータ又は前記ステータに固定されることが好ましい。
(形態10)ポールシューを冷却するための及び上記形態1〜6のいずれかのポールシューと共に使用するためのポールシュー冷却体であって、剛な物体として構成され、かつ、該ポールシューないし該ポールシューの前記ポールシューボディに適合されているポールシュー冷却体も有利に提供される。
(形態11)上記のポールシュー冷却体は、前記ポールシューボディを受容するための受容空間を有することが好ましい。
(形態12)上記形態7〜9の何れかのリングジェネレータを有する風力発電装置も有利に提供される。
(形態13)上記の課題を解決するために、本発明の第2の視点により、上記形態1〜6の何れかのポールシューの製造方法が提供される。この製造方法は、以下の順序の工程:
1.前記ポールシューを冷却するために、冷却体をポールシューボディに配置すること、
2.巻線を前記冷却体に配置すること
を含み、
前記冷却体は、該冷却体が前記ポールシューボディを完全に又は部分的に包囲しかつ該巻線と該ポールシューボディの間に配置されるよう、該ポールシューボディに配置される。
(形態14)上記形態12の風力発電装置の運転方法であって、前記リングジェネレータが、少なくとも1つのポールシュー冷却体を介してポンピングされる冷却媒体によって冷却される運転方法も有利に提供される。
(形態15)上記の運転方法において、前記冷却媒体は接続部を介して熱交換装置に案内され、
該冷却媒体は該熱交換装置において冷却され、かつ、更なる接続部を介して前記ポールシュー冷却体にポンピングにより戻されることが好ましい。
(形態16)上記形態1のポールシューにおいて、前記電流は励磁電流であることが好ましい。
(形態17)上記形態14の方法において、前記冷却媒体は冷却液であることが好ましい。
(形態18)上記形態1のポールシューにおいて、前記冷却体は、3つの部分体を有し、これらの部分体は夫々、前記ポールシューボディの周囲に配されるベルト状で中空の剛な部材として構成されると共に、前記切欠において接続パイプの形態の前記接続部に接続される案内チャンネルを夫々形成することが好ましい。
(形態19)上記形態1のポールシューにおいて、前記冷却体は、当該冷却体において冷却媒体を案内するための案内チャンネルを有する単一部材として構成され、前記切欠において接続パイプの形態の前記接続部に接続されることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電気機械の、とりわけ風力発電装置の発電機のロータのそのようなポールシューは、磁界を案内するための及び該磁界を生成するための電流、とりわけ励磁電流の案内のための巻線を受容するためのポールシューボディを有する。この場合、ポールシューボディは、ポールシューを冷却するための、ポールシュー冷却体と称されることもある少なくとも1つの冷却体によって完全に又は部分的に包囲される。冷却体はポールシューボディと巻線との間に配置される。この場合、巻線はポールシューの部分として構成されることも可能である。
【0011】
冷却体は、有利には、冷却体が巻線を受容し、かくして、冷却される、とりわけ水冷されるスプール体(Spulenkoerper)を形成するよう構成される。
【0012】
ポールシューボディはその際例えば薄層化されかつ鉄で作成される。これにより、ポールシュー内部の渦電流は回避又は少なくとも低減される。有利には、ポールシューボディは角(複数)に切欠き(面取り)が形成された直方体の形状に構成される。この切欠き(Aussparung)によって巻線の材料が節約される。例えば、風力発電装置の発電機のロータのポールシューの巻線の場合、とりわけ銅製の場合は、ポールシュー当りの材料の節約は最大で2kg又は3kgである得るが、場合によっては2kg又は3kgを超えることもあり得る。
【0013】
そのようなポールシューが例えば風力発電装置の発電機のロータに固定される場合、冷却システムを設けることによって、巻線に供給される励磁電流、従って発電機の出力は増大され得る。冷却体がポールシューボディと巻線との間に配されることによって、冷却体と熱源即ち巻線との間に緊密な熱接触が形成され、熱源が直接的に冷却される。従って、熱はポールシューが過熱する以前に除去され、かくして、巻線の過熱による破損は生じない。例えば渦電流損や鉄損によるもののような、ポールシューボディに発生する熱も同様にポールシューボディから冷却体に到達することができ、簡単な態様で除去することができる。
【0014】
本発明のポールシューの好ましい一実施形態では、冷却体は巻枠体(Wickelkoerper)として構成される。この場合、巻枠体は有利にはポールシューボディに適合され、ポールシューボディに外嵌される。巻枠体には巻線が配される。かくして、冷却体はポールシューボディと巻線との間に配置され、熱源の熱が直接的に除去されることができる。その代わりに、巻枠体ないし冷却体が、巻線とポールシューボディとの間に配置されることも可能であろう。
【0015】
有利には、ポールシューは、冷却体を巻線に対し電気的に絶縁するために及び/又は熱を巻線から冷却体に導くために、電気的絶縁手段を有する。電気的絶縁手段は例えば絶縁シート、マイカディスク又はセラミック小板を含み得る。絶縁のために、例えば、不動態皮膜としても知られている、アルミニウム酸化物のような酸化物からなる電気的絶縁層も考慮に値する。更に、絶縁のために、例えば銅線の絶縁塗料のような、塗料の形態の層も考慮に値する。
【0016】
本発明のポールシューの好ましい一実施形態では、冷却体は冷却媒体を案内するために中空に構成される。冷却媒体としては、とりわけ冷却液が使用される。そのような冷却液は例えば水を含み得る。これは、一様な熱輸送が保証されかつ大量の熱が運び去られるという利点を有する。そのような冷却液は例えばグリコールのような凍結防止手段(凍結防止剤)を有すると有利である。これによって、冷却液が電気機械の停止状態においても凍結されないことが保証される。
【0017】
その代わりに、冷却媒体は気体の形態であること又は少なくとも部分的に固体状物質ないし物質混合物(組成物)を有すること、或いは例えばゲルとして構成されることも可能である。
【0018】
本発明の一実施形態により、冷却体がアルミニウムで作成されることが提案される。アルミニウムは、良好な熱伝導金属でありかつそのため損失熱を熱伝導によって熱を発生する構造要素即ち巻線から除去することができるという利点を有する。或いは、冷却体は、同様に良好な熱伝導金属である銅で作成することも可能であろう。
【0019】
有利には、冷却体は、冷却システムが冷却体と共に冷却回路を構成することができるように、冷却システムに接続するための少なくとも2つの接続部(Anschlussstellen)を有する。この場合、これらの接続部の1つを介して所定のないし前記の(特定の)冷却媒体が導入され、また、他の接続部の1つを介して冷却媒体が排出される。かくして、熱源の温度より低い初温度を有する冷却媒体が冷却体に流れ、より高温の媒体からより低温の媒体即ち冷却媒体への熱通過(移動)が起きる。その後、加熱された冷却媒体は排出され、冷却後新たに冷却回路に供される。この場合、冷却は、例えば排出されるべき熱を周囲に放出する熱交換装置(Rueckkuehler)によって行われる。そのような熱交換装置は、例えば風力発電装置の場合、風力発電装置のゴンドラ(ナセル)の内部又は側に設けられる。
【0020】
ポールシューボディがその角(複数)に切欠き(面取り部)を備える場合、既に上述したように、冷却体の接続部はこれらの切欠きにないしこれらの切欠きの2つに配される(嵌合する)ことが可能であり、かくして、空間を効率的に利用することが可能になる。
【0021】
本発明に応じ、ポールシューは突状ポール機(ないし突状磁極機:Schenkelpolmaschine, salient pole machine)、とりわけリングジェネレータ(Ringgenerator)で使用するために構成されている。そのような突状ポール機は、低回転数用に構成された交流同期機であり、例えば風力発電装置の場合、発電機として使用される。リングジェネレータは、エアギャップに沿ってリング状に配置された多数のロータポール及びステータポールによって特徴づけられる。この多数のポールによって、例えば30、40の、とりわけ48、50又はそれ以上のロータポールが設置可能であるが、発電機が毎分30、20、15回転未満、とりわけ毎分10回転未満で回転する極めて緩慢に回転する運転が可能になる。
【0022】
有利には、本発明は、ステータとロータとによって運動エネルギを電気エネルギに変換するための発電機、とりわけリングジェネレータを含む。この場合、ステータ及び/又はロータは少なくとも2つの本発明のポールシューを有する。そのようなリングジェネレータ、例えば風力発電装置のリングジェネレータの場合、磁界の生成はロータに配されたポールシューを介して実行される。これらのポールシューが直接的に冷却される場合、大きな励磁電流によって生成される損失電力が取り去られることによって、風力発電装置の出力は増大され、ないし、所定の増大が可能にされる。他方、風力発電装置の寿命は、良好な冷却によって、従って高温が回避されることによって、長くされることが可能になる。周囲空気による冷却の代わりに液体冷却を利用することによって、周囲空気による負荷(悪影響)を回避することができる。湿気や汚染は風力発電装置から遠くに留めることが可能である。
【0023】
有利には、ロータ又はステータの少なくとも2つのポールシューは、夫々、冷却体がポールシューボディと巻線との間に配されるよう対応する冷却体の周囲に配される巻線を有する。
【0024】
更に、本発明に基づき、ポールシューを冷却するための及び本発明のポールシューと共に使用するためのポールシュー冷却体が提案される。そのようなポールシュー冷却体は、剛な(堅固な)物体として構成され、かつ、ポールシュー、とりわけポールシューのポールシューボディに適合される。そのため、ポールシュー冷却体は、例えば複数の異なる寸法又は形状のようなポールシューの複数の異なる実施形態のために使用することができる。この場合、ポールシュー自体は、構造上変更されないか又は僅かしか変更されない。ポールシューボディは冷却体及び絶縁シートを配した後に巻線を配し、電気機械に設けることができる。冷却回路のための接続部材(複数)及びそれと接続された冷却システムのみが、他の冷却手段を備えない又は備えた発電機と比べた異なる構造形態をもたらす。
【0025】
本発明の一実施形態により、ポールシュー冷却体(なお、ここでも単純化のため単に冷却体と称する)がポールシューボディを受容するための受容空間を有するか又は形成することが提案される。受容空間は、ここでは、冷却体の形状によって画成される空間として理解されるものであり、ポールシュー冷却体によって包囲されるべきポールシューボディの少なくとも一部を受容するために設けられる。かくして、有利には剛な物体として構成される冷却体は、多大な労力を要することなく、例えばポールシューボディに外嵌することができる。
【0026】
更に、本発明により、本発明の発電機を有する風力発電装置が提案される。この場合、必要な(不可避の)熱出力は冷却システムによって除去することができ、かくして、出力(電力)は増大されることができる。
【0027】
更に、本発明により、本発明のポールシューの製造方法が提案される。有利には、そのような方法は、以下の工程を含む:
1.まず、ポールシューを冷却するために、所定のないし前記(特定の)冷却体が所定のないし前記(特定の)ポールシューボディに配される。これは、例えば、ポールシューボディに外嵌することによって実行することができる。
2.次いで、所定のないし前記(特定の)巻線が冷却体に配される。この場合、
冷却体は、該冷却体がポールシューボディを完全に又は部分的に包囲しかつ巻線とポールシューボディの間に配置されるよう、ポールシューボディに配される。かくして、ポールシューの一般的製造方法が冷却体の配置のみによって補完される。
【0028】
その代わりに、巻線が冷却体に配され、次いで、冷却体が当該冷却体に既に配された巻線と共にポールシューボディに外嵌されることが提案される。
【0029】
更に、本発明の風力発電装置の運転方法が提案される。この場合、発電機は少なくとも1つのポールシュー冷却体を介してポンピングされる冷却媒体、とりわけ冷却液によって冷却される。有利には、風力発電装置を運転する際、発電機を冷却するための媒体は、所定のないし前記(特定の)接続部を介して熱交換装置(Rueckkuehler)に案内される。この熱交換装置は風力発電装置のゴンドラ(ナセル)の中又は側に、有利には少なくともゴンドラの外周部に設けられる。そのような熱交換装置は例えば空気流に晒され、必要な熱排出を保証するために十分に大きな表面を有する。かくして、冷却媒体は熱交換装置において冷却されることができ、所定のないし前記(特定の)更なる接続部を介してポールシュー冷却体にポンピングによって戻されることができ、更に、ポールシューの損失熱を除去することができる。
【0030】
以下に本発明の実施例の幾つかを添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のポールシュー冷却体の一例を有する巻枠体の一例。
図2】ポールシュー冷却体の一実施例。
図3】ポールシュー冷却体の更なる一実施例。
図4】更なる一実施形態に基づくポールシュー冷却体の接続(結合)領域の一例。
図5】更なる一実施形態に基づくポールシューのポールシューボディを有するポールシュー冷却体の一例。
図6】本発明のポールシューの一実施例。
図7】更なる一実施例に基づくポールシューの一断面。
【実施例】
【0032】
図1は、ポールシュー冷却体101として構成された冷却体、2つの接続部102及び受容空間103を有するポールシューのための巻枠体100を示す。図示の状態では、接続部102を介して互いに結合される3つの部分体から構成されるポールシュー冷却体101は既に巻枠体100に備えられている(組み込まれている)。ポールシューボディを受容するために、受容空間103が形成されている。冷却体101は受容空間103を取り囲んでおり、かくして、ポールシューボディの挿入後はポールシューボディも完全に取り囲むため、一様な冷却が保証される。
【0033】
冷却媒体、有利には水を冷却体101内にポンピングで導入し、再び排出可能にするために、冷却体101に2つの接続部102が設けられる。これらの接続部102の一方を介して、冷却媒体は例えば熱交換装置に案内され、そこで冷却される。そして、第2の接続部102を介して、冷却媒体はポンピングにより冷却体101に戻される。
【0034】
図示の巻枠体100はポールシューのポールシューボディに上から(外側から)嵌め込まれる。冷却体101上には、不図示の絶縁手段が配され、その上に更に巻線が配される。そして、そのように構成されたポールシューは電気機械の相応の部位に配することができる。
【0035】
図2は剛な(堅固な)冷却体201を示す。該冷却体201は同様に剛な(堅固な)3つの部分体206を含む。冷却体201はポールシューボディを受容するための受容空間203を画成する。3つの部分冷却体は、夫々、剛で、取り囲むように(U字状に方向転換するように)延在しかつ中空のベルトに類似し、その内部を水が冷却液として案内可能にされた要素を形成する。ポールシューボディが受容空間203内に嵌め込まれると、冷却体201はポールシューボディをほぼ完全に取り囲むため、一様な冷却が保証される。
【0036】
更に、図2には、2つの接続部202が示されている。これらによって、冷却媒体は冷却体201に導入又は排出されることができる。
【0037】
図3は、3つの部分体303を有する冷却体301の更なる一実施形態を示す。この冷却体もポールシューボディを受容するための受容空間303と冷却媒体の供給又は排出のための2つの接続部302を有する。図2の冷却体201と図3の冷却体301との間の実質的相違は受容されるべきポールシューないしポールシューのポールシューボディの寸法である。
【0038】
図4には、接続部402に取り付けられた3つの部分体406から構成された冷却体401の部分断面が示されている。リング(パイプ)状の接続部402の内部には、中空に構成された部分体406への結合部(Verbindungsstellen)405が見出される。これによって、冷却媒体は接続部402の1つから結合部405を介して冷却体401にポンピングされ、該冷却体401内を流動し、熱を取り去ることができる。2つの接続部402の他方によって、冷却媒体は結合部405を介して再び排出される。
【0039】
更に、図4には、ポールシューボディを受容するための受容空間403が部分的に示されている。
【0040】
図5には、ポールシューの一例のポールシューボディ504が示されている。更に、ポールシューボディ504を取り囲む3つの部分体506を有する冷却体501が見出される。この例では、ポールシューボディ504は例えば鉄のような高透磁率の材料で作成されている。更に、ポールシューボディ504はポールシューの内部における渦電流を回避ないし低減するために積層体として構成されている。ポールシューボディ504は、個々の角507が面取りされた直方体の形状に構成されている。これらの面取りされた角の領域において、冷却回路に冷却体を接続するための接続部材を設けることができる。
【0041】
更に、冷却媒体を熱交換装置に又は熱交換装置から案内するための2つの接続部502が見出される。
【0042】
ポールシューは、同様に、冷却体501に配される不図示の巻線を含むことができる。かくして、ポールシューは電気機械、例えば風力発電装置の発電機のロータに組み込まれることが可能である。
【0043】
図6は本発明のポールシュー600の一実施形態を示す。この場合、ポールシュー600はポールシューヘッド610の領域において矢印形(ないしT字形)に構成されている。図示のポールシューヘッド610とポールシューボディ620は両者併せてポールシュー600を形成する。有利なことに、ポールシュー600は互いに絶縁された複数の別個の薄層金属から作成されている。このため、ポールシュー600はポールシュー薄層積層体とも称される。
【0044】
図示のポールシューボディ620には、ポールシューボディ620を完全に又は部分的に取り囲む本発明の不図示のポールシュー冷却体が配される。この冷却体には、該冷却体への狭い熱接触部を介して直接的に冷却される巻線が配される。
【0045】
図7はポールシューの一例のポールシューボディ704を示す。更に、部分体に分けられておらず、一体のものとして構成された冷却体701が見出される。冷却体701はポールシューボディ704を実質的に3つの側部から包囲する。ポールシューボディ704の断面は、それぞれ切欠き部(凹部)717を有する2つの角領域707を示す。これら2つの切欠き部717の一方には、冷却体701を冷却回路に接続するために、冷却体701の結合のために接続パイプの形態の接続部材727が備えられている。他方の切欠き部の領域には、相応の接続部材はまだ欠けており(配されておらず)、冷却体701内で冷却媒体を案内するために構成された複数の案内チャンネル730が見出される。この場合も、完成時には、切欠き部717の一方に配され、それによって少なくとも部分的にポールシューボディ704に組み込まれるそのような接続部材727が設けられるべきである。冷却体はこの場合、場合によっては絶縁が施されて、巻線を受容し、それによって冷却されるスプール体(Spulenkoerper)を形成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7