(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746429
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】多電圧車載電源網を接続する装置および方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20150618BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20150618BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
H02J1/00 306B
H02J7/00 A
B60L1/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-515122(P2014-515122)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-519804(P2014-519804A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】EP2012059583
(87)【国際公開番号】WO2012171766
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2013年12月12日
(31)【優先権主張番号】102011077704.0
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012208520.3
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ヴァーレンタ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ピシュケ
(72)【発明者】
【氏名】ニルス ドレーゼ
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−259584(JP,A)
【文献】
特開2009−225647(JP,A)
【文献】
特表2008−522575(JP,A)
【文献】
特開2000−324807(JP,A)
【文献】
特開2007−285739(JP,A)
【文献】
特開2010−057290(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/023436(WO,A2)
【文献】
特表2013−502899(JP,A)
【文献】
特開2006−296148(JP,A)
【文献】
特開2000−209777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60R 16/00−17/02
H02H 9/02
H02J 1/00−1/16
7/00−7/36
H02M 1/00−3/44
H02P 9/00−9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車載電源網電圧(U1)を有する第1車載電源網(12)と、第2車載電源網電圧(U2)を有する第2車載電源網(14)と、を結合可能な少なくとも1つの直流電圧変換器(10)を含む、多電圧車載電源網を接続する装置において、
前記第2車載電源網(14)に給電するためのエネルギ蓄積器(38)を接続する前に、前記第2車載電源網電圧(U2)を上昇させるための少なくとも1つの充電手段(18)が設けられており、
前記充電手段(18)は、前記第2車載電源網電圧(U2)を少なくとも中間電圧(Uz)に上昇させ、
前記中間電圧(Uz)に達した後、前記直流電圧変換器(10)が前記第2車載電源網電圧(U2)をさらに電圧上昇させるために作動される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記充電手段(18)は、前記充電手段(18)が前記第2車載電源網(14)に存在する中間回路キャパシタンス(20)を充電することによって前記第2車載電源網電圧(U2)を上昇させる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記直流電圧変換器(10)と前記第2車載電源網(14)との間に少なくとも1つの保護素子(21)が配置されている、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記保護素子(21)は、逆方向に直列接続された2つの半導体スイッチを有する、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記充電手段(18)は、少なくとも部分的に前記保護素子(21)を介して、前記第2車載電源網(14)に充電電流(Ik)を供給する、
請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2車載電源網電圧(U2)が、前記中間電圧(Uz)に達した場合、前記保護素子(21)が閉じられる、
請求項3から5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
スイッチ(30)が設けられており、
前記スイッチ(30)は、前記第2車載電源網電圧(U2)が前記エネルギ蓄積器(38)の静止電圧(Ub)に等しい場合、前記エネルギ蓄積器(38)と前記第2車載電源網(14)とを接続する、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
第1車載電源網電圧(U1)を有する第1車載電源網(12)と、第2車載電源網電圧(U2)を有する第2車載電源網(14)と、を結合可能な少なくとも1つの直流電圧変換器(10)を含む、多電圧車載電源網を接続する方法において、
前記第2車載電源網(14)に給電するためにエネルギ蓄積器(38)を接続する前に、少なくとも1つの充電手段(18)により、前記第2車載電源網電圧(U2)を上昇させ、
前記第2車載電源網電圧(U2)が、前記第1車載電源網電圧(U1)よりも高い中間電圧(Uz)に達した場合、前記直流電圧変換器(10)および/または前記充電手段(18)によって前記第2車載電源網電圧(U2)をさらに上昇させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記充電手段(18)により、前記第2車載電源網電圧(U2)を上昇させるため、前記第2車載電源網(14)に設けられている中間回路キャパシタンス(20)を充電する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記充電手段(18)により、前記第2車載電源網電圧(U2)を所定の電圧(Ut)に上昇させ、前記所定の電圧(Ut)において前記第2車載電源網(14)に接続されている少なくとも1つの負荷(34)または前記第2車載電源網(14)それ自体が正常動作している否かを検査する、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記中間電圧(Uz)が前記第2車載電源網電圧(U2)に等しい場合、前記第2車載電源網(14)と前記直流電圧変換器(10)との間に設けられている少なくとも1つの保護素子(21)を駆動制御する、
請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記中間電圧(Uz)が前記第2車載電源網電圧(U2)に等しい場合、前記充電手段(18)を非アクティブ化する、
請求項8から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記直流電圧変換器(10)および/または前記充電手段(18)により、前記第2車載電源網(14)に接続可能な前記エネルギ蓄積器(38)の静止電圧(Ub)に前記第2車載電源網電圧(U2)を上昇させる、
請求項8から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2車載電源網電圧(U2)が前記エネルギ蓄積器(38)の前記静止電圧(Ub)に等しい場合、前記エネルギ蓄積器(38)と前記第2車載電源網(14)とを接続する、
請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の技術
本発明は、独立請求項に示した形態の多電圧車載電源網を接続する装置および方法を出発点とする。
【0002】
EP 1145416 B1からは、電気エネルギを変換するための変換器がすでに公知である。ここで提案されているのは、結合された複数のインダクタンスを使用することにより、チョークサイズを小さくできることである。ここでは、部分分岐の負荷電流が互いに補償され、チョークコイルの磁気的な負荷が発生しないように上記の結合される複数のチョークコイルを設計する。この場合には、個々の部分分岐間の差分電流だけが、磁場になるのである。
【0003】
本発明の課題は、回路構造が簡単でありかつ動作方法が簡単であるという特徴を有する、多電圧車載電源網を接続する装置および方法を提供することである。この課題は、独立請求項に記載した特徴的構成によって解決される。
【0004】
発明の利点
多電圧車載電源網を接続する本発明による装置および本発明による方法は、1次側電圧が2次側電圧を下回る場合であっても、殊に双方向チョーク式降圧コンバータのような直流電圧変換器の逆動作モードにおいても殊に簡単に手段により、1次側のエネルギ蓄積器を充電できるという利点を有する。ここではコストのかかる付加的な手段を省略することができる。相異なる車載電源網トポロジにおいても、本発明によれば、確実かつ高い信頼性で電流ピークなしに2つの車載電源網を互いに接続することができる。
【0005】
有利な1つの発展形態において、充電手段として少なくとも1つの電流源を設け、有利には定電流源を設ける。このような実現方式は、回路構造が殊に簡単になるという特徴を有する。
【0006】
有利な1つの発展形態において、充電手段として少なくとも1つの別の直流電圧変換器を設ける。このような直流電圧変換器がいずれにせよ設けられる応用に対しては殊に、この直流電圧変換器により、上記の充電機能を一緒にカバーすることができる。
【0007】
有利な1つの発展形態において、上記の充電手段には、充電電流を調整する調整手段が含まれており、有利にはツェナーダイオードが含まれている。これにより、殊に簡単かつコスト的に有利に都度の適用事例に適合させることができる。
【0008】
多電圧車載電源網を接続する本発明の方法には、第1車載電源網電圧を有する第1車載電源網と、第2車載電源網電圧を有する第2車載電源網とを結合可能な少なくとも1つの直流電圧変換器が含まれている。エネルギ蓄積器を第2車載電源網に接続する前に少なくとも1つの充電手段により、第2車載電源網に存在する中間回路キャパシタンスを中間電圧に充電する。
【0009】
有利な発展形態において、中間電圧に達した際、直流電圧変換器だけにより、または上記の充電手段と共に上記の中間回路キャパシタンスをさらに充電する。
【0010】
有利な1つの発展形態では、直流電圧変換器の出力電圧がほぼ上記の中間回路キャパシタンスの電圧に等しい場合、第2車載電源網と直流電圧変換器との間に設けられる少なくとも1つの保護素子を駆動制御する。この直流電圧変換器は、この電圧関係において、いわゆる逆動作モードで上記のエネルギ蓄積器の電圧レベルまで第2車載電源網の電圧をさらに上昇させる。
【0011】
有利な1つの発展形態において、直流電圧変換器の出力電圧が、中間回路キャパシタンスの電圧にほぼ等しい場合、上記の充電手段を非アクティブ化する。これにより、上記の直流電圧変換器だけを制御することによって殊に簡単に上記の電圧を上昇させることができる。
【0012】
有利な1つの発展形態において、上記の中間回路キャパシタンスは、直流電圧変換器だけによりまたは上記の充電手段と共に、上記のエネルギ蓄積器の静止電圧にほぼ等しい電圧に充電される。この結合は、障害となる電流ピークなしにほぼ同じ電圧レベルで行われる。
【0013】
有利な1つの発展形態において、上記の直流電圧変換器は、中間回路キャパシタンスの電圧を充電手段と並行して上昇させる。この充電手段の所期の遮断は、迅速な電圧上昇時には行わないことが可能である。
【0014】
上で説明した方法によってさらに、上記の充電中に充電手段を介して中間回路の診断を行うことができる。これにより、アースへの短絡があるか否かまたは漏れ電流があるかいなかを確定することができる。さらに上記の中間回路にどのキャパシタンス20があるかを求めることもできる。また第2車載電源網全体の診断も可能である。このためには、例えば20Vの既知かつクリティカルでない電圧に、中間回路における電圧を所期のように上昇させることができる。引き続いて相応のバスシステムを介して第2車載電源網のすべての制御装置およびコンポーネントに、これらも同様に例えば20Vのクリティカルでない電圧を測定するか否かを問い合わせる。クリティカルでない電圧が測定されてはじめて、上記の電圧をさらに上昇させて第2車載電源網をイネーブルする。
【0015】
別の有利な発展形態は、別の従属請求項から、また以下の説明から得られる。
【0016】
複数の実施例を図面に示し、以下これらの実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】いわゆるブースト回生システム用の第1の車載電源網トポロジを示す図である。
【
図2】直流電圧変換器を有する車載電源網トポロジ、および、スタータ回路と負荷車載電源網との間にデカップリング素子を有するDLCとして実施されたエネルギ蓄積器を示す図である。
【
図3】付加的な直流電圧変換器を有する実施例を示す図である。
【
図4】2つの車載電源網を接続するための回路技術的な実現方式を示す図である。
【
図5】2つの車載電源網を接続するための第1スタートシナリオの時間的な経過を示す線図である。
【
図6】2つの車載電源網を接続するための第2スタートシナリオの時間的な経過を示す線図である。
【0018】
実施例の説明
将来の多電圧車載電源網では、相異なる電圧状態U1,U2を有する相異なる車載電源網回路12,14間でエネルギ伝達を保証する直流電圧変換器ないしはDC/DCコンバータが使用される。一般的には、直流電圧変換器10は、ふつうは14Vである第1車載電源網電圧U1を有する古典的な負荷車載電源網(第1車載電源網12)と、例えば48Vまたは60Vである、第1車載電源網電圧U1よりも高い第2車載電源網電圧U2を有する別の車載電源網回路(第2車載電源網14)との間のインタフェースである。
【0019】
考えられ得る多数の車載電源網アーキテクチャを代表するのは、例えば、
図1〜3に手短に説明する車載電源網アーキテクチャである。
【0020】
図1には、回生機能付きジェネレータ34(RSG)および並列接続されたエネルギ蓄積器38を有するいわゆるブースト回生システムが示されている。このエネルギ蓄積器は、例えば、リチウムイオンバッテリのような例えば48Vハイパワー蓄積器である。ジェネレータ34およびエネルギ蓄積器38は、第2車載電源網電圧U2を有する第2車載電源網14の構成部分である。例えば約12ないしは14Vの第1車載電源網電圧U1を有する第1車載電源網12には、アース接続されたスタータ36と、並列接続された負荷40と、同様に並列接続されたバッテリ32とが含まれている。アース接続された直流電圧変換器10は、第1車載電源網12と、第1車載電源網電圧U1よりも高く、例えば48Vまたは60Vのオーダの第2車載電源網電圧U2を有する第2車載電源網14とを接続する。ジェネレータ38は、例えば制動時に電気エネルギを車載電源網14に供給するいわゆるブースト回生システムとすることが可能である。
【0021】
図2には、いわゆるスタート・ストップ・コースティング(SSC Start-Stop-Coasting)用の負荷車載電源網とスタータ回路との間のデカップリング素子およびDC/DC−DLCモジュールが示されている。第1車載電源網12ではスタータ36とバッテリ32とが並列接続されており、スイッチのような分離手段17を介して第2車載電源網14からデカップリング可能である。第2車載電源網14ではジェネレータ34と負荷40とがアースに向かって並列接続されている。第2車載電源網14の第2車載電源網電圧U2は、直流電圧変換器10の2次側SEKに供給されるのに対し、直流電圧変換器10の1次側PRは、コンデンサ15を介してアースに接続されている。コンデンサ15は、エネルギ蓄積器として使用され、例えば2重層コンデンサ(DLC)として構成される。
【0022】
図3に示したトポロジでは、直流電圧変換器10により、第1車載電源網12と第2車載電源網14とが結合される。第1車載電源網12ではバッテリ32と負荷40とがアースに接続されている。第2車載電源網14では、キャパシタンス20がアースに接続されている。直流電圧変換器10に並列な別の直流電圧変換器19により、2つの車載電源網12,14が接続される。
【0023】
図4には、第1保護素子21および第2保護素子22および充電手段18を有する直流電圧変換器10の例として、双方向チョーク式降圧コンバータの典型的な回路技術的構造が示されている。直流電圧変換器10は、n相の双方向チョーク式降圧コンバータとして実施されている。さらに高圧側HSにおいてn個のMOSFET HS1〜HSnが並列接続されている。これらのドレイン端子は同じ電位にあり、端子HSを介して直流電圧変換器10から引き出されている。各MOSFET HS1〜HSnには、別のMOSFET LS1〜LSnが直列に配置されている。これらのソース端子は同じ電位にあり、端子LSを介して引き出され、第2保護素子22を介し、端子KL31を経由してアース24に接続されている。直列接続されているMOSFET HS1,LS1;HSn,LSn間では、上記の電位が、1つずつのチョークを介し、その後まとめられて、いわゆる端子KL30を介して第1車載電源網12に電気的に接触接続している。
【0024】
1次側では、直流電圧変換器10の端子HSと、第2車載電源網14との間に第1保護素子21が配置されている。第1保護素子21の出力側は、端子KL60として引き出されている。第2車載電源網14の公称電圧ないしは第2車載電源網電圧U2は、第1車載電源網電圧U1よりも高い、例えば60Vの公称電圧を有する。第2車載電源網14では、ジェネレータ34およびエネルギ蓄積器38(例えばバッテリ)がアースに向かって並列接続されている。エネルギ蓄積器38には電圧Ubが印加されている。エネルギ蓄積器38は、スイッチ30を介して第2車載電源網14に接続可能である。概略的に書き込んだ第2車載電源網14の中間回路キャパシタンス20は、第2車載電源網14に接続された例えばジェネレータ34などの電気ユニットないしは負荷のキャパシタンスによって生じる。
【0025】
直流電圧変換器10のアース路には第2保護素子22が設けられている。保護素子21,22は例示的には半導体スイッチ、リレーなどのスイッチ手段として構成される。この実施例においてこのスイッチ手段は、例えばMOSFETのような逆並列に接続された2つの半導体スイッチである。これにより、エラー時における第1車載電源網12および第2車載電源網14間の不所望の電流の流れを確実に回避することができ、ここでこの電流は、例えば直流電圧変換器10のMOSFETの内在的なダイオードを介して発生し得る電流である。保護素子21,22内に書き込まれた抵抗は、対称化に使用され、有利には高抵抗に実施される。
【0026】
直流電圧変換器10は、いわゆる端子KL30を介して第1車載電源網12に接続されており、この第1車載電源網は、例えば12/14Vの大きさの第1車載電源網電圧U1を有する。第1車載電源網12には、例えばスタータ36と、エネルギ蓄積器32と、負荷40とが接続されている。
【0027】
図4では、第2車載電源網14の中間回路キャパシタンス20を充電するための充電手段18が設けられている。例えば、充電手段18は定電流源として構成されている。このため、第1スイッチ26を使用することができ、このスイッチ手段は、例えば、この実施例ではNPNトランジスタであるトランジスタとして実施することができる。第1スイッチ手段26を介して、この実施例ではPNPトランジスタとして実施されている第2スイッチ手段28のベースが駆動制御される。第1トランジスタ26のコレクタは、抵抗27を介して、第2トランジスタ28のベースに接続されている。第2トランジスタ28のコレクタには、定電流Ikの形態の所望の充電電流が設定される。定電流Ikは、第1保護素子21に供給され、しかも例えばMOSFETのような逆並列接続された2つのパワー半導体の間に供給される。電流設定手段としてのツェナーダイオード30は、第2トランジスタ28のベースに接続されており、また別の抵抗29を介して第2トランジスタ28のエミッタに接続されている。ツェナーダイオード30および別の抵抗29はさらに、導電的に直流電圧変換器10の出力部ないしは第1保護素子21の入力部に接続されている。ツェナーダイオード30は、例えば約1Aのオーダで変動し得る定電流Ikを設定するため、電流帰還結合される。
【0028】
択一的な充電手段18’として別の直流電圧変換器19を第1車載電源網12と、(ダイオードを介して接続される)第1保護素子21との間に設けることができ、この直流電圧変換器そのものは、第1保護素子21の直列接続される2つのMOSFET間に導電的に接続される。
【0029】
第2車載電源網14の中間回路キャパシタンス20を充電するための充電手段18の回路は、本発明の回路の重要な核心部分であり、以下ではこの回路を
図5に示した典型的なスタートシナリオに基づいて説明する。
【0030】
このシステムの静止状態において、2つの保護素子21,22ならびに第2車載電源網14のエネルギ蓄積器38用のスイッチ30は開いている。これによって第2車載電源網14は、ボルトフリーに接続されている。
【0031】
システムスタート時にはまず直流電圧変換器10の第2保護素子22が閉じられ、これによって直流電圧変換器10はアース24に接続される。つぎのステップでは、スイッチ30を閉じる前に第2車載電源網14における電圧状態を第2車載電源網14のエネルギ蓄積器38の静止電圧に適合させ、これによって第2車載電源網14に接続されている複数のコンポーネント34によって生じるキャパシタンス20(これらのコンポーネントのキャパシタンスの総和によって中間回路キャパシタンス20が形成される)にエネルギ蓄積器38を接続した際に電流ピークが発生しないようにする。第2車載電源網14の中間回路キャパシタンス20を充電するために充電手段18の回路を挿入することにより、スイッチング可能な定電流源の機能が得られる。
【0032】
中間回路キャパシタンス20の充電は、
図5に示したように3つのフェーズに分けられる。すなわち、
フェーズ1:第1スイッチ手段26を駆動制御することにより、定電流源として作用する充電手段18をスイッチオンする。これによって定電流Ikが流れる。この電流は、第1保護素子21の上側のMOSFETの内在的なダイオードを介し、端子KL60を経由して第2車載電源網14に流れる。
【0033】
これによって第2車載電源網電圧U2が上昇し、ひいては中間回路キャパシタンス20の電圧も0Vからちょうど第1車載電源網電圧U1(例えば12V,KL30における電圧)に上昇するため、中間回路キャパシタンス20が充電される。第1保護素子21はまだ開かれたままである。直流電圧変換器10の出力部HSにおける電圧U
HSは、例えば12Vの第1車載電源網電圧U1の一定の電圧レベルにとどまる。第2車載電源網電圧U2を直流電圧変換器10の出力部HSにおける電圧U
HSに近づけた後、フェーズ1からフェーズ2に変わる。
【0034】
フェーズ2:直流電圧変換器10は、第1保護素子21がまだ開いているうちに動作させられ、直流電圧変換器10の出力部HSにおける電圧U
HSは、例えば約25Vの中間電圧U
Zまで制御されて上昇させられる。このために中間電圧U
Zに達するまで例えば電圧U
HSを線形に上昇させる。つぎにこの電圧U
HSは中間電圧U
Zのレベルにとどまる。充電手段18の定電流源はスイッチオンされたままであるため、中間回路キャパシタンス20における電圧ないしは第2車載電源網電圧U2は一緒に緩慢に変化する。第2車載電源網電圧U2が、中間電圧Uzのレベルに止まっている電圧U
HSに達すると、フェーズ2は終了する。充電手段18により、第2車載電源網電圧U2の電圧レベルは、第1車載電源網電圧U1を上回って上昇する。これにより、直流電圧変換器10は、第2車載電源網電圧U2の電圧をさらに高めるために直接使用できる。なぜならば、いまや1次電圧は、直流電圧変換器10の2次電圧を下回らないからである。したがって充電手段18は、電圧蓄積器として使用される中間回路キャパシタンス20と共に、第2車載電源網電圧U2を所望の電圧に所期のように増大させるのに使用されるのである。必要な場合には、付加的なユニットによって適当な電圧蓄積器が第2車載電源網14に設けられる。
【0035】
フェーズ3:出力部HSにおける電圧U
HSと、第2車載電源網電圧U2とが近づけられると直ちに第1保護回路21が閉じられる。同時に充電手段18の定電流源も遮断される。直流電圧変換器10は、ここではアクティブな逆動作モードにある。この直流電圧変換器は、中間回路キャパシタンス20を充電することにより、エネルギ蓄積器38の静止電圧Ubに第2車載電源網電圧U2を上昇させる。第2車載電源網14のエネルギ蓄積器38の静止電圧Ubと、第2車載電源網電圧U2との間の電圧が一致すると直ちに(フェーズ3の終了)、障害なしにエネルギ蓄積器32のスイッチ30を閉じることができる。このシステムはここで動作準備完了状態になる。
【0036】
図6に示した択一的な充電方法は、例えば25Vをやや上回る中間電圧Uzに達した場合にも充電手段18がアクティブなままである点が
図5に示したものと異なる。この時点以降、充電手段18および直流電圧変換器10は並行して中間回路キャパシタンス20を充電する。中間回路キャパシタンス20における第2車載電源網電圧U2が、エネルギ蓄積器38の静止電圧Ubに達した後、スイッチ30を閉じることができ、ひいてはエネルギ蓄積器38を接続することができる。
【0037】
ここで重要であるのは、複数ステップの充電コンセプトが実現されることである。第1フェーズでは、第1車載電源網14の中間回路キャパシタンス20が中間電圧Uzに充電される。この中間電圧Uzは、この中間電圧Uz以降、直流電圧変換器10が中間回路キャパシタンス20をさらに充電できるように選択される。端子KL30における第1車載電源網電圧U1の近くの中間電圧Uzが得られた場合、直流電圧変換器10はスイッチオンされる。直流電圧変換器10の出力部における電圧U
HSは、この時点以降、例えばランプ状に、制御されてさらに上昇させられる。直流電圧変換器10によって端子HSに出力される電流は、(第1保護手段21の下側のMOSFETの内在的なダイオードを遮断して)充電手段18に流れ、また充電手段18の充電電流Ikによって制限されて、上側のMOSFETの内在的なダイオードおよび端子KL60を介して第2車載電源網14とに流れる。
【0038】
定電流源18はスイッチオンされたままであるため、中間回路キャパシタンス20における電圧、第2車載電源網電圧U2は一緒に緩慢に変化させられる。中間回路キャパシタンス20における電圧U2が、直流電圧変換器10における電圧U
HSに達すると、第1保護素子21ないしはそのスイッチ手段を閉じることができ、すなわち2つのMOSFETは導通されて、端子HSと端子KL60とが接続される。これにより、補償電流がまったく流れないかまたは極めてわずかしか流れないことが補償される。
図5によれば、定電流源18はここで遮断される。直流電圧変換器10は、アクティブな逆動作モードにあり、第2車載電源網14におけるエネルギ蓄積器38の静止電圧Ubに第2車載電源網電圧U2を上昇させる。第2車載電源網電圧U2と、静止電圧Ubとの間で電圧が一致すると直ちにスイッチ30を閉じることによってエネルギ蓄積器38を第2車載電源網14に接続することができる。上記のシステムは、ここで通常動作モードに対する準備が整うのである。
【0039】
択一的には
図5に示した実施例において、第2車載電源網電圧U2を、中間電圧Uzではなくすぐに目標電圧Ubに上昇させることができる。この場合にはフェーズ3は省略されることになる。
【0040】
この複数ステップの駆動制御は殊に有利である。なぜならば、第2車載電源網電圧をさらに増大させている間に、直流電圧変換器のいずれにせよ設けられている監視機能を用いることができるからである。この際には直流電圧変換器10の出力部HLにおける電圧、電流また電圧上昇も監視することができ、場合によってエラー診断および保護機能に使用することもできる。
【0041】
上で説明した方法によってさらに、充電中に充電手段を介して中間回路の診断を行う可能性も得られる。
【0042】
したがって例えば、アースへの短絡があるか否かまたは漏れ電流の有無を確認することができる。さらに中間回路にどのようなキャパシタンス20が設けられているかを求めることもできる。また例えば中間回路における電圧および/または電流経過の評価に基づいて第2車載電源網全体を診断することも可能である。このためには、例えば20Vの、既知かつクリティカルでない電圧Utに、中間回路における第2車載電源網電圧U2を所期のように上昇させることができる。引き続いて第2車載電源網14におけるすべての制御装置およびコンポーネントにまたは所定の制御装置およびコンポーネントだけに、相応するバスシステムを介して、これらも例えば20Vのクリティカルでない電圧Utを測定するか否かを問い合わせる。このクリティカルでない電圧が測定されてはじめて、第2車載電源網電圧U2をさらに上昇させて第2車載電源網14をイネーブルする。場合によっては、上記のクリティカルでない電圧Utと中間電圧Uzとが一致することも可能である。
【0043】
回路コストが少なくまた効率が良好であることにより、上記のような車載電源網アーキテクチャでは一般的に、
図4に略示したように双方向チョーク式降圧コンバータが、直流電圧変換器10として使用される。ここでは2つのスイッチ手段によってそれぞれ双方向に駆動制御可能でありかつシーケンシャルに駆動制御されるn個のチョークを有するn相の直流電圧変換器10を使用することができる。しかしながら装置および方法の使用はこれに制限されない。上記のチョーク式降圧コンバータは、原理的な制限により、高い方の電圧状態(1次側)から低い方の電圧状態(2次側)にしかエネルギを伝送することができない。双方向のチョーク式降圧コンバータの場合、逆方向ないしは逆動作モードにおいて、択一的に2次側の低い方の電圧状態から1次側の高い方の電圧状態に変換できるが、いずれの場合にも1次電圧は2次電圧を下回ってはならない。充電手段18,18’を設けることにより、これが確実に達成される。
【0044】
端子KL60における電位(第2車載電源網電圧U2)が、直流電圧変換器10の端子KL30の電位(第1車載電源網電圧U1)と異なる場合、詳しく示していない上側のハーフブリッジトランジスタの内在的なダイオードは導通するため、2つの車載電源網12,14間でKL30からKL60に向かって、制御されていない電流の流れが設定されることになる。この電流の流れを阻止するため、直流電圧変換器10の端子KL60回路において保護素子21が必要であり、この保護素子は、例えばリレーまたは逆並列半導体スイッチとして実施することができる。一般的にはスイッチ素子として、2つの逆並列半導体スイッチからなるバック・ツー・バックの組み合わせが使用され、これにより、付加的に、第1スイッチ手段26が短絡した場合に、2つの車載電源網12,14間に(端子KL60からKL30に向かって)制御されない電流が流れることを阻止することができる。
【0045】
車両の停止状態において、安全上の理由からスイッチ30を開くことにより、第2車載電源網14は、第2車載電源網14のエネルギ蓄積器38から切り離され、ひいてはボルトフリーに切り換えられる。エネルギ蓄積器38を再度接続する前には、第2車載電源網14に設けられている中間回路キャパシタンス20(例えばジェネレータ34の中間回路キャパシタンス20)により、スイッチ30を閉じる前にまず第2車載電源網電圧U2を制御して上昇させなければならない。
【0046】
例えば
図2の車載電源網において(高い方の電圧状態の)2重層コンデンサDLCに関連して双方向チョーク式降圧コンバータ10を使用する際にも、コンデンサ15を0V(完全な放電状態)から出発して充電するする必要がある(例えば、最初の運転、スタータバッテリ32を取り外した比較的長い停止フェーズ後の自動車の再運転)。上記のチョーク式変換器(ここでは逆動作モード−昇圧コンバータ)はこれができないため、電圧0Vから第1車載電源網電圧U1以上にコンデンサ15を充電するためにも上記の充電手段18を設けることができる。
【0047】
上記の装置および方法の目標は、簡単な回路手段により、1次側電圧が2次側電圧以下である場合であっても、例えば双方向降圧コンバータとして実施される直流電圧変換器10が、逆動作モードにおいて(2次側が1次側に向かって)1次側のエネルギ蓄積器32の充電を行えるようにすることである。この場合には別のコンポーネントにおいて必要な付加的な手段は省略することができ、ひいてはコスト上の利点が得られるのである。
【0048】
上記の装置および方法は、殊に自動車の多電圧車載電源網12,14を結合するのに適している。なぜならば、このような自動車においてはますます多くのハイパワー負荷が使用されるからである。しかしながらその使用はこれには制限されない。