(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スチレン系ポリマーは、前記ゴム変性ポリスチレンと、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの前記未水素化ブロックコポリマーと、から構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組成物。
前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を形成するプロセスはさらに、イソプロパノールを含む貧溶媒で酸化共重合反応混合物を沈殿させて前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を形成するステップを備え、前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、その合計質量に対して、1.5質量%未満の前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の組成物。
前記難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の組成物。
Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の20mm垂直燃焼試験に準拠して測定した難燃性能が、最大厚み1.5mmのサンプルでV−0等級であり、
また、以下の特性のうちの少なくとも2つを有することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の組成物:
ASTM D256−10に準拠し、温度−30℃〜−40℃、振り子エネルギー2.7J、衝撃速度3.5m/秒で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも150J/m;
ASTM D1238−10 手順Bに準拠し、温度300℃、滞留時間375秒、荷重5kgで測定したメルトマスフローレートが少なくとも5g/10分;および
ASTM D648−07に準拠し、厚みが3.2mmのサンプル、応力1.82MPaで測定した熱変形温度が少なくとも105℃。
【発明の概要】
【0003】
難燃性、衝撃強度、溶融流動性および耐熱性から選択された2つ以上の特性を良好にバランスさせ、その他の特性を実質的に低下させない剛体用組成物に対する要求は、組成物であって、特に明記されない限りその合計質量に対して、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーと、ポリ(アリーレンエーテル)ブロックおよび平均で約20〜約80個のシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックを含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物であって、約1〜約30質量%のシロキサン繰り返し単位と約70〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位とを含み、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含むモノマー混合物の酸化共重合ステップを備えたプロセスの生成物であり、質量平均分子量が少なくとも30,000原子質量単位であるポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を55超〜約95質量%と;ゴム変性ポリスチレン、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択されたスチレン系ポリマーを約1〜約40質量%と;有機リン酸エステルを含む難燃剤を約1〜約40質量%と、を含む組成物であって、ASTM D790−10に準拠し、温度23℃、厚み3.2mmのサンプルで測定した曲げ弾性率が少なくとも1500MPaの組成物によって満たされる。
【0004】
別の実施形態は、組成物であって、特に明記されない限りその合計質量に対して、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーと、下式の構造
【化1】
を有するアリーレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)ブロック、および平均で約20〜約80個のシロキサン繰り返し単位を含み、下式の構造
【化2】
(式中nは約30〜約60)を有するポリシロキサンブロックを含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物であって、約1〜約8質量%のシロキサン繰り返し単位と約92〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位とを含み、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含むモノマー混合物の酸化共重合ステップを備えたプロセスの生成物であり、質量平均分子量が少なくとも30,000原子質量単位であるポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を約67〜約87質量%と;アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーとこれらの混合物とから構成されるチレン系ポリマーを約5〜約17質量%と;レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはこれらの混合物を含む難燃剤を約8〜約15質量%と、を含む組成物である。
【0005】
別の実施形態は該組成物を含む射出成形物品である。
【0006】
これらおよびその他の実施形態について以下詳細に説明する。
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、それぞれ特定量のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物と、水素化ブロックコポリマーと、有機リン酸エステルを含む難燃剤と、を混合することにより、難燃性、衝撃強度、溶融流動性および耐熱性が良好にバランスされた成形用組成物が得られることを見出した。さらに、該組成物は、上記の好都合な特性間の良好なバランスに加えて、剛体物品での使用に理想的に適した必要な剛性度も有する。
【0008】
ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマー組成物を改質して、難燃性、衝撃強度、流動性および耐熱性のうちの1つを向上させることは一般に可能である。しかしながら、これらの特性のうちのいずれか1つを向上させると、典型的にはその他の特性が犠牲となる。例えば、難燃剤の量を増やして難燃性を向上させると、該組成物の衝撃強度および流動性は、典型的には悪影響を受ける。従って、後述の実施例で示すように、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を用いることによって、これらの特性の2つ以上を向上あるは維持させられることは驚くべきことである。従って、本発明のそれぞれ特定量のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物と、水素化ブロックコポリマーと、有機リン酸エステルを含む難燃剤と、の特定の組み合わせを用いることにより、重要で予期しない利点が得られる。
【0009】
一実施形態は、組成物であって、特に明記しない限りその合計質量に対して、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーと、ポリ(アリーレンエーテル)ブロックおよび平均で約20〜約80個のシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックを含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物であって、約1〜約30質量%のシロキサン繰り返し単位と約70〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位とを含み、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含むモノマー混合物の酸化共重合ステップを備えたプロセスの生成物であり、質量平均分子量が少なくとも30,000原子質量単位であるポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を55超〜約95質量%と;ゴム変性ポリスチレン、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択されたスチレン系ポリマーを約1〜約40質量%と;有機リン酸エステルを含む難燃剤を約1〜約40質量%と、を含む組成物であって、ASTM D790−10に準拠し、温度23℃、厚み3.2mmのサンプルで測定した曲げ弾性率が少なくとも1500MPaの組成物である。
【0010】
本組成物の重要な成分は、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーとポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーとを含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物である。簡略化のために、本明細書では、この成分を「反応生成物」とも呼ぶ。該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの混合物の酸化重合で合成される。この酸化重合によって、所望の生成物としてポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、副生成物としてポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーと、が生成される。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーからポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを分離するのは困難であり、またそれは不要である。従って、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの両方を含む「ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロック反応生成物」として本組成物中に取り込まれている。
【0011】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)ブロックとポリシロキサンブロックとを含む。該ポリ(アリーレンエーテル)ブロックは、一価フェノール重合の残基である。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)ブロックは、下式の構造
【化3】
(式中、各繰り返し単位に対し、Z
1はそれぞれ独立に、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシであり;Z
2はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシ)を有するアリーレンエーテル繰り返し単位を含む。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)ブロックは、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル繰り返し単位、すなわち下式の構造
【化4】
を有する繰り返し単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル繰り返し単位あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0012】
該ポリシロキサンブロックは、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの残基である。一部の実施形態では、該ポリシロキサンブロックは、下式の構造
【化5】
(式中、R
1とR
2はそれぞれ独立に、水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビル)を有する繰り返し単位を含み、さらに、下式の構造
【化6】
(式中、Yは、水素、C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシまたはハロゲンであり、R
3とR
4はそれぞれ独立に、水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビル)を有する末端単位を含む。一部の実施形態では、該ポリシロキサン繰り返し単位はジメチルシロキサン(−Si(CH
3)
2O−)単位を含む。一部の実施形態では、該ポリシロキサンブロックは下式の構造
【化7】
(式中、nは20〜60)を有する。
【0013】
該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、少なくとも1つのヒドロキシアリール末端基を含む。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンジブロックコポリマーが形成される一部の実施形態では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは単一のヒドロキシアリール末端基を有する。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンジブロックコポリマーおよびまたはポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサン−ポリ(アリーレンエーテル)トリブロックコポリマーが形成される他の実施形態では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは2つのヒドロキシアリール末端基を有する。また、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、3つ以上のヒドロキシアリール末端基を可能とし、対応する分枝鎖コポリマーの形成が可能な分枝鎖構造を有し得る。
【0014】
一部の実施形態では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、平均で約20〜約80個の、具体的には約25〜約70個の、より具体的には約30〜約60個の、さらにより具体的には約35〜約50個の、さらにより具体的には約40〜約50個のシロキサン繰り返し単位を含む。該ポリシロキサンブロック中のシロキサン繰り返し単位の数は、本質的に共重合および単離条件によって影響されず、従って、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発原料中のシロキサン繰り返し単位の数に等しい。等しくないことが判明した場合、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1分子当たりのシロキサン繰り返し単位の平均数は、シロキサン繰り返し単位に関連する信号強度をヒドロキシアリール末端基に関連する信号強度と比較するNMR法によって決定できる。例えば、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンがオイゲノールキャップ化ポリジメチルシロキサンの場合、ジメチルシロキサン共鳴プロトンの積分とオイゲノールメトキシ基プロトンの積分とを比較するプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)法で、シロキサン繰り返し単位の平均数が求められる。
【0015】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の質量平均分子量は、少なくとも30,000原子質量単位である。該反応生成物の質量平均分子量は、例えば30,000〜約150,000原子質量単位であり得、具体的には約35,000〜約120,000原子質量単位であり得、より具体的には約40,000〜約90,000原子質量単位であり得、さらにより具体的には約45,000〜約70,000原子質量単位であり得る。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の数平均分子量は、約10,000〜約50,000原子質量単位であり、具体的には約10,000〜約30,000原子質量単位であり、より具体的には約14,000〜約24,000原子質量単位である。分子量決定のためのクロマトグラフ法の詳細については、後述の実施例で説明する。
【0016】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して少なくとも0.3dL/gである。一部の実施形態では、該固有粘度は0.3〜約0.5dL/gであり、具体的には0.31〜約0.5dL/gであり、より具体的には約0.35〜約0.47dL/gである。
【0017】
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンのブロックコポリマーへの組み込み効率を表すものの1つとして、いわゆるポリ(アリーレンエーテル)「尾部」基が低濃度であることが挙げられる。2,6−ジメチルフェノールの単独重合において、生成物分子の大部分は、線状生成物分子の一端が3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル「頭部」で末端化され、他端が2,6−ジメチルフェノキシ「尾部」で末端化された所謂、頭−尾構造を有する。従って、一価フェノールが2,6−ジメチルフェノールで構成される場合、該ポリ(アリーレンエーテル)尾部基は下式の構造
【化8】
(式中、環の3−、4−および5−位置は、水素原子で置換されている(すなわち、「2,6−ジメチルフェノキシ」は、二価の2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル基を包含しない))を有する。一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの共重合では、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンのブロックコポリマーへの取り込みによって、アリーレンエーテル「尾部」基の濃度は低減するであろう。従って、一部の実施形態では、該一価フェノールは、2,6−ジメチルフェノールから構成され、熱可塑性組成物は、該反応生成物の質量に対して、0.4質量%以下の、具体的には0.1〜0.4質量%の2,6−ジメチルフェノキシ基を含む。該2,6−ジメチルフェノキシ尾部末端基は、線状生成物分子の一端が3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル「頭部」で末端化され、他端が2,6−ジメチルフェノキシ「尾部」で末端化された頭−尾(ヒドロキシ一末端)構造を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)ホモポリマーの特徴を示す。従って、該熱可塑性組成物では、こうした単官能性ホモポリマーの濃度は低減され、所望のポリ(アリーレンエーテル)ポリシロキサンブロックコポリマーの濃度は上昇していることが、低濃度の2,6−ジメチルフェノキシ尾部末端基によって示されている。
【0018】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、それ自体が該一価フェノールの酸化生成物であり、ジフェノキノンから誘導された基をさらに含み得る。例えば、該一価フェノールが2,6−ジメチルフェノールの場合、ジフェノキノンは、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジフェノキノンである。該反応の形成相の間、ジフェノキノンは典型的には、頭−尾ポリ(アリーレンエーテル)の「尾部」末端に、対応するビフェニル基として取り込まれる。さらなる反応によって、該末端ビフェニル基は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖の内部ビフェニル基になり得る。一部の実施形態では、該一価フェノールは2,6−ジメチルフェノールから構成され、該熱可塑性組成物は、0.1〜2.0質量%の、具体的には1.1〜2.0質量%の2,6−ジメチル−4−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェノキシ(「ビフェニル」)基を含む。該ビフェニル基は、二官能性(頭−頭またはヒドロキシル−二末端化)構造にのみ存在する。従って、該反応生成物では、こうした二官能性ホモポリマーの濃度は低減され、所望のポリ(アリーレンエーテル)ポリシロキサンブロックコポリマーの濃度は上昇していることが、低濃度のビフェニル基によって示されている。
【0019】
該酸化共重合は、反応時間が110分以上で行われ得る。該反応時間は、酸素流開始から終了までの経過時間である。(簡略化のために、本明細書では、「酸素」または「酸素流」が繰り返して記載されるが、空気を含む任意の酸素含有ガスを酸素源として使用し得ることは理解されるであろう。)一部の実施形態では、該反応時間は110〜約300分であり、具体的には約140〜約250分であり、より具体的には約170〜約220分である。
【0020】
該酸化共重合は、モノマー添加完了から酸素流終了までの時間である「形成時間」を含み得る。一部の実施形態では、該反応時間は、約80〜約160分の形成時間を含む。一部の実施形態では、形成時間の少なくとも一部における反応温度は約40〜約60℃であり得、具体的には約45〜約55℃であり得る。
【0021】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、揮発性および不揮発性の混入物質を最小化する単離方法で、溶液から単離され得る。一部の実施形態では、該熱可塑性組成物中の全揮発性物質の量は、後述の実施例に記載の方法に準拠して測定して、例えば1質量%以下であり、具体的には0.2〜1質量%である。一部の実施形態では、該モノマー混合物は、金属(銅またはマンガンなど)を含む触媒の存在下で酸化共重合され、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、その質量に対して、100質量ppm以下の、具体的には5〜100質量ppmの、より具体的には10〜50質量ppmの、さらにより具体的には20〜50質量ppmの金属を含む。
【0022】
ある単離方法によって、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物が残余のヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発材料を本質的含まないことを確実なものにできる。言い換えれば、こうした単離方法によって、該反応生成物のポリシロキサン含量は本質的に、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーとポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーとから構成されることが確実になる。該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、共重合化反応終了後に、当分野で既知の溶液からのポリ(アリーレンエーテル)単離方法を用いて溶液から単離できる。該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノールなどの、1種または複数種のC
1−C
6アルカノールを少なくとも50質量%含む貧溶媒を用いた沈殿により単離できる。イソプロパノールは、未反応のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに対する良好の溶媒であるため、イソプロパノール含有貧溶媒の使用は好都合である。従って、イソプロパノール含有貧溶媒(例えば、イソプロパノール単独)を用いた沈殿およびまたは洗浄によって、単離生成物からヒドロキシアリール末端ポリシロキサンが実質的に除去される。従って、一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の形成プロセスは、イソプロパノール含有貧溶媒を用いた沈殿による単離ステップを備え、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、その合計質量に対して1.5質量%以下の、具体的には1質量%以下の、より具体的には0.5質量%以下の該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含む。
【0023】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン出発材料のうちの75質量%超をポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー内に取り込んでいる。具体的には、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー内に取り込まれたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの量は少なくとも80質量%であり得、より具体的には少なくとも85質量%であり得、さらにより具体的には少なくとも90質量%であり得、さらにより具体的には少なくとも95質量%であり得る。
【0024】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の調製、キャラクタリゼーションおよび特性に関するさらなる詳細は、Carilloらの米国特許出願公報第2009/0318635号および2011年6月27日出願の同時係属の同第13/169,137号に記載されている。
【0025】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、その合計質量に対して、約1〜約30質量%のシロキサン繰り返し単位と、約70〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含む。該シロキサン繰り返し単位はヒドロキシアリール末端ポリシロキサンから誘導され、該アリーレンエーテル繰り返し単位は一価フェノールから誘導されることは理解されるであろう。該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物が、例えば、イソプロパノール中の沈殿によって精製されるなどの一部の実施形態では、該シロキサン繰り返し単位は本質的に、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーに取り込まれたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの残基から構成される。
【0026】
一部の実施形態では、該反応生成物は、その合計質量に対して、約1〜約8質量%のシロキサン繰り返し単位と、約12〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含む。これらの範囲内で、シロキサン繰り返し単位の量は2〜7質量%であり得、具体的には3〜6質量%であり得、より具体的には4〜5質量%であり得;アリーレンエーテル繰り返し単位の量は93〜98質量%であり得、具体的には94〜97質量%であり得、より具体的には95〜96質量%であり得る。
【0027】
また、該熱可塑性組成物は、比較的少量の非常に低分子量種も含み得る。従って、一部の実施形態では、該熱可塑性組成物は、25質量%未満の、具体的には5〜25質量%の、より具体的には7〜21質量%の分子量が10,000原子質量単位未満の分子を含む。一部の実施形態では、分子量が10,000原子質量単位未満の分子は、平均で5〜10質量%の、具体的には6〜9質量%のシロキサン繰り返し単位を含む。
【0028】
同様に、該熱可塑性組成物は、比較的少量の非常に高分子量種も含み得る。従って、一部の実施形態では、該熱可塑性組成物は、25質量%未満の、具体的には5〜25質量%の、より具体的には7〜23質量%の分子量が100,000原子質量単位超の分子を含む。一部の実施形態では、分子量が100,000原子質量単位超の分子は、平均で3〜6質量%の、具体的には4〜5質量%のシロキサン繰り返し単位を含む。
【0029】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の非常に特定的な調製方法では、該一価フェノールは2,6−ジメチルフェノールであり;該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、35〜60個のジメチルシロキサン単位を含むオイゲノールキャップ化ポリジメチルシロキサンであり;該酸化共重合は、少なくとも90質量%の該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンと2〜20質量%の該一価フェノールとの存在下で開始され;該酸化共重合は反応時間170〜220分で行われ;該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、該一価フェノールと該キャップ化ポリシロキサンの合計質量の2〜7質量%を構成する。
【0030】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、その合計質量に対して、約8〜約30質量%のシロキサン繰り返し単位と、約70〜約92質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含む。これらの範囲内で、シロキサン繰り返し単位の量は約10〜約27質量%であり得、具体的には約12〜約24質量%であり得、より具体的には約14〜約22質量%であり得、さらにより具体的には約16〜約20質量%であり得;アリーレンエーテル繰り返し単位の量は約74〜約90質量%であり得、具体的には約76〜約88質量%であり得、より具体的には約78〜約86質量%であり得、さらにより具体的には約80〜約84質量%であり得る。
【0031】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、約15〜約25質量%のシロキサン繰り返し単位と、約75〜約85質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含む。15〜約25質量%の範囲内で、シロキサン繰り返し単位の量は約16〜約24質量%であり得、具体的には約17〜約22質量%であり得、より具体的には約18〜約20質量%であり得る。約75〜約85質量%の範囲内で、アリーレンエーテル繰り返し単位の量は約76〜約84質量%であり得、具体的には約78〜約83質量%であり得、より具体的には約80〜約82質量%であり得る。
【0032】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の非常に特定的な実施形態では、該一価フェノールは2,6−ジメチルフェノールであり;該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、約30〜約60個のジメチルシロキサン単位を含むオイゲノールキャップ化ポリジメチルシロキサンであり;該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、該一価フェノールと該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの合計質量の約10〜約28質量%を、具体的には約14〜約26質量%を、より具体的には約18〜約24質量%を構成し;該熱可塑性組成物では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの85質量%超が該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーに取り込まれており;該熱可塑性組成物は、該反応生成物の合計質量に対して、15〜約25質量%の、具体的には約16〜約24質量%の、より具体的には約17〜約22質量%の、さらにより具体的には約18〜約20質量%のシロキサン繰り返し単位と、約75〜85質量%の、具体的には約76〜約84質量%の、より具体的には約78〜約83質量%の、さらにより具体的には約80〜約82質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含み;該熱反応生成物の質量平均分子量は30,000〜150,000原子質量単位である。
【0033】
別の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、ポリ(アリーレンエーテル)と;ポリ(アリーレンエーテル)ブロックと、平均で約20〜約80個の、具体的には約25〜約70個の、より具体的には約30〜約60個の、さらにより具体的には約35〜約50個の、さらにより具体的には約40〜約50個のシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックと、を含むポリ(アリーレンエーテル)ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含み;該熱可塑性組成物は、該ポリ(アリーレンエーテル)と該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーとの合計質量に対して、8超〜約30質量%の、具体的には約10〜約27質量%の、より具体的には約12〜約24質量%の、さらにより具体的には約14〜約22質量%の、さらにより具体的には約16〜約20質量%のシロキサン繰り返し単位と、約70〜92質量%未満の、具体的には約74〜約90質量%の、より具体的には約77〜約88質量%の、さらにより具体的には約78〜86質量%の、さらにより具体的には約84〜約80質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含み;一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含むモノマー混合物を酸化共重合するステップを備えたプロセスの生成物であり、質量平均分子量は少なくとも30,000原子質量単位であり、具体的には約30,000〜約150,000原子質量単位であり、より具体的には約35,000〜約120,000原子質量単位であり、さらにより具体的には約40,000〜約90,000原子質量単位であり、さらにより具体的には約45,000〜約70,000原子質量単位である。
【0034】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、約15〜約25質量%のシロキサン繰り返し単位と、約75〜約85質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位と、を含む。15〜約25質量%の範囲内で、シロキサン繰り返し単位の量は約16〜約24質量%であり得、具体的には約17〜約22質量%であり得、より具体的には約18〜約20質量%であり得る。約75〜85質量%の範囲内で、アリーレンエーテル繰り返し単位の量は約76〜約84質量%であり得、具体的には約78〜約83質量%であり得、より具体的には約80〜約82質量%であり得る。これらの繰り返し単位量は、遊離ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを実質的に除去するイソプロパノール沈殿後の熱可塑性組成物に特に当てはまる。この実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、14質量%超のシロキサン繰り返し単位を含まないCarrilloの米国特許出願公報第2009/0318635A1号のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物とは区別される。
【0035】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、分子量が10,000原子質量単位未満の分子を20質量%未満、具体的には18質量%未満、より具体的には16質量%未満、さらにより具体的には14質量%未満含む。一部の実施形態では、分子量が10,000原子質量単位未満の分子は、平均で約10〜約18質量%の、具体的には約12〜約16質量%のシロキサン繰り返し単位を含む。一部の実施形態では、該反応生成物は、分子量が100,000原子質量単位超の分子を26質量%未満、具体的には24質量%未満、より具体的には22質量%未満、さらにより具体的には20質量%未満含む。一部の実施形態では、分子量が100,000原子質量単位超の分子は、平均で約17〜約25質量%の、具体的には約19〜約23質量%のシロキサン繰り返し単位を含む。この段落で記載した限定は、該反応生成物がイソプロパノール沈殿によって単離された場合に当てはまり得る。
【0036】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、分子量が10,000原子質量単位未満の分子を20質量%未満、具体的には18質量%未満、より具体的には16質量%未満、さらにより具体的には14質量%未満含み、また熱可塑性組成物は、分子量が100,000原子質量単位超の分子を26質量%未満、具体的には24質量%未満、より具体的には22質量%未満、さらにより具体的には20質量%未満含む。
【0037】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー組成物の一部の実施形態では、分子量が10,000原子質量単位未満の分子は、平均で約10〜約18質量%の、具体的には約12〜約16質量%のシロキサン繰り返し単位を含み;分子量が100,000原子質量単位超の分子は、平均で約17〜約25質量%のシロキサン繰り返し単位を含む。
【0038】
該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの一部の実施形態では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、35〜約60個の、具体的には約40〜約50個のシロキサン繰り返し単位を含む。該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンがオイゲノールキャップ化ポリジメチルシロキサンの場合、ジメチルシロキサン共鳴プロトンの積分とオイゲノールメトキシ基プロトンの積分とを比較する
1H NMR法で、シロキサン繰り返し単位の平均数が求められる。該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、少なくとも1つのヒドロキシアリール末端基を含む。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンジブロックコポリマーが形成される一部の実施形態では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは単一のヒドロキシアリール末端基を有する。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンジブロックおよびまたはポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサントリブロックコポリマーが形成される他の実施形態では、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサは、2つのヒドロキシアリール末端基を有する。また、該ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、3つ以上のヒドロキシアリール末端基を可能にする分枝鎖構造を有し得る。
【0039】
一部の実施形態では、該組成物は、その合計質量に対して、55超〜約95質量%の、具体的には56〜約92質量%の、より具体的には58〜約89質量%の、さらにより具体的には60〜約86質量%の、さらにより具体的には約65〜約83質量%の該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む。一部の実施形態では、該組成物は、約67〜約87質量%の該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む。
【0040】
該組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物に加えて、ゴム変性ポリスチレン、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素化ブロックコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択されたスチレン系ポリマーを含む。
【0041】
該スチレン系コポリマーはゴム変性ポリスチレンであり得る。ゴム変性ポリスチレンは、ポリスチレンとポリブタジエンとを含む。ゴム変性ポリスチレンは、「耐衝撃性ポリスチレン」あるいは「HIPS」とも呼ばれる。一部の実施形態では、該ゴム変性ポリスチレンは、その質量に対して、80〜96質量%の、具体的には88〜94質量%のポリスチレンと、4〜20質量%の、具体的には6〜12質量%のポリブタジエンと、を含む。一部の実施形態では、該ゴム変性ポリスチレンの有効ゲル含量は10〜35%である。好適なゴム変性ポリスチレンは、例えば、SABIC Innovative Plastics社からHIPS3190として市販されている。
【0042】
該スチレン系コポリマーは、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーであり得る。簡略化のために、本明細書では、この成分を「水素化ブロックコポリマー」と呼ぶ。該水素化ブロックコポリマーでは、ポリ(アルケニル芳香族)含量が10〜90質量%であり、水素化ポリ(共役ジエン)含量が10〜90質量%であってもよい。一部の実施形態では、該ポリ(アルケニル芳香族)含量は10〜45質量%であり、具体的には20〜40質量%である。他の実施形態では、該ポリ(アルケニル芳香族)含量は45超〜90質量%であり、具体的には45〜80質量%である。該水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量は、40,000〜400,000原子質量単位であり得る。数平均分子量と質量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィによって、およびポリスチレン標準との比較に基づいて求めてもよい。一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量は200,000〜400,000原子質量単位であり、具体的には220,000〜350,000原子質量単位である。他の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量は、40,000〜200,000原子質量単位未満であり得、具体的には40,000〜180,000原子質量単位であり得、より具体的には40,000〜150,000原子質量単位であり得る。
【0043】
該水素化ブロックコポリマーの調製に用いるアルケニル芳香族モノマーは下式の構造
【化9】
(式中、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、C
1−C
8アルキル基またはC
2−C
8アルケニル基を表し;R
7およびR
11はそれぞれ独立に、水素原子、C
1−C
8アルキル基、塩素原子または臭素原子を表し;R
8、R
9およびR
10はそれぞれ独立に、水素原子、C
1−C
8アルキル基またはC
2−C
8アルケニル基を表し、あるいはR
8およびR
9は中央の芳香環と共にナフチル基を形成し、あるいはR
9およびR
10は中央の芳香環と共にナフチル基を形成する)を有し得る。具体的には、アルケニル芳香族モノマーは、例えば、スチレン、p−クロロスチレンなどのクロロスチレン、およびα−メチルスチレンやp−メチルスチレンなどのメチルスチレンである。一部の実施形態では、該アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0044】
該水素化ブロックコポリマーの調製に用いる共役ジエンはC
4−C
20共役ジエンであり得る。好適な共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、該共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンあるいはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、該共役ジエンは1,3−ブタジエンから構成される。
【0045】
該水素化ブロックコポリマーは、(A)アルケニル芳香族化合物から誘導された少なくとも1つのブロックと、(B)共役ジエンから誘導された少なくとも1つのブロックと、を含み、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基含量が水素化によって少なくとも部分的に低減されたコポリマーである。一部の実施形態では、(B)ブロック中の脂肪族不飽和は少なくとも50%、具体的には少なくとも70%低減されている。ブロック(A)と(B)の配置としては、リニア構造、グラフト構造、および分枝鎖の有無に拘わらないラジアルテレブロック構造がある。リニアブロックコポリマーには、傾斜型リニア構造および非傾斜型リニア構造がある。一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは傾斜型リニア構造を有する。一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは非傾斜型リニア構造を有する。一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族モノマーがランダムに取り込まれたBブロックを含む。リニアブロックコポリマー構造には、ジブロック(A−Bブロック)構造、トリブロック(A−B−AブロックまたはB−A−Bブロック)構造、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)構造、ペンタブロック(A−B−A−B−AブロックあるいはB−A−B−A−Bブロック)構造、およびA−Bが合計で6個以上含まれたリニア構造などがあり、ここで、各Aブロックの分子量は、他のAブロックのそれと同じであっても異なっていてもよく、各Bブロックの分子量は、他のBブロックのそれと同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマーまたはこれらの組み合わせである。
【0046】
一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、該アルケニル芳香族化合物と共役ジエン以外のモノマーの残基を含まない。一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、該アルケニル芳香族化合物と共役ジエンから誘導されたブロックから構成される。該ブロックコポリマーは、これらで形成されたグラフト、あるいは他の任意のモノマーで形成されたグラフトを含まない。また、該ブロックコポリマーは炭素原子と水素原子から構成され、従って、ヘテロ原子を含まない。
【0047】
一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、無水マレイン酸などの1つまたは複数の酸官能化剤の残基を含む。
【0048】
一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。
【0049】
一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。
【0050】
一部の実施形態では、該水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーと、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーと、を含む。
【0051】
水素化ブロックコポリマーの調製方法は当分野で既知であり、多くの水素化ブロックコポリマーが市販されている。市販の水素化ブロックコポリマーの例としては、Kraton Polymers社からKRATON G1701およびG1702として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマー;Kraton Polymers社からKRATON G1641、G1650、G1651、G1654、G1657、G1726、G4609、G4610、GRP−6598、RP−6924、MD−6932M、MD−6933およびMD−6939として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Polymers社からKRATON RP−6935およびRP−6936として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレ(S−EB/S−S)トリブロックコポリマー;Kraton Polymers社からKRATON G1730として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Polymers社からKRATON G1901、G−1924およびMD−6684として販売されている無水マレイン酸−グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Polymers社からKRATON MD−6670として販売されている無水マレイン酸−グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成ケミカルズ(株)からTUFTEC H1043として販売されている、ポリスチレン含量が67質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成ケミカルズ(株)からTUFTEC H1051として販売されている、ポリスチレン含量が42質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成ケミカルズ(株)からTUFTEC P1000およびP2000として販売されているポリスチレン−ポリ(ブタジエン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成ケミカルズ(株)からS.O.E.−SS L601として販売されているポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリスチレンブロックコポリマー;Chevron Phillips Chemical社からK−Resin KK38、KR01、KR03およびKR05として販売されている水素化ラジアルブロックコポリマー;(株)クラレからSEPTON S8104として販売されている、ポリスチレン含量が60質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;(株)クラレからSEPTON S4044、S4055、S4077およびS4099として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;および(株)クラレからSEPTON S2104として販売されている、ポリスチレン含量が65質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーなどが挙げられる。2つ以上の水素化ブロックコポリマーの混合物を用いてもよい。
【0052】
該スチレン系コポリマーは未水素化ブロックコポリマーであり得る。該未水素化ブロックコポリマーは、ポリ(共役ジエン)ブロックの残余の脂肪族不飽和が水素化によって還元されていない点を除いて、該水素化ブロックコポリマーに類似している。未水素化ブロックコポリマーの具体的な例としては、ポリスチレン−ポリブタジエンジブロックコポリマー(SB)、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレンジブロックコポリマー(SI)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマー(SIS)が挙げられる。
【0053】
未水素化ブロックコポリマーの調製方法は当分野で既知であり、多くの未水素化ブロックコポリマーが市販されている。市販の未水素化ブロックコポリマーの例としては、Kraton Polymers社からKRATON D1101、KRATON D1102、KRATON D1116、KRATON D1118、KRATON D1133、KRATON D1152、KRATON D1153、KRATON D1155、KRATON D1184、KRATON D1186、KRATON D1189、KRATON D1191、KRATON D1192およびKRATON D1193として販売されているポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Polymers社からKRATON D1111、KRATON D1113、KRATON D1114、KRATON D1117、KRATON D1119、KRATON D1124、KRATON D1126、KRATON D1160、KRATON D1161、KRATON D1162、KRATON D1163、KRATON D1164およびKRATON D1165として販売されているポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマー;AK Elastomers社からTUFPRENE A、TUFPRENE125、TUFPRENE126S、ASAPRENE T−411、ASAPRENE T−432、ASAPRENE T437、ASAPRENE T−438およびASAPRENE T439として販売されているポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマーが挙げられる。
【0054】
該組成物は、約1〜約40質量%の、具体的には約2〜約30質量%の、より具体的には約3〜約25質量%の、さらにより具体的には約4〜約20質量%の、さらにより具体的には約5〜約17質量%のスチレン系ポリマーを含む。
【0055】
該組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物とスチレン系ポリマーに加えて、有機リン酸エステルを含有する難燃剤を含む。典型的な有機リン酸エステルとしては、フェニル基、置換フェニル基あるいはこれらの組み合わせを含むリン酸エステル、例えばレゾルシノールビス−ジフェニルホスフェートなどのレゾルシノール系ビス−アリールリン酸エステルおよび、例えばビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェートなどのビスフェノール系リン酸エステルが挙げられる。一部の実施形態では、該有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS登録番号第89492−23−9号または同第78−33−1号)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(例えばCAS登録番号第57583−54−7号)、ビス−フェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(例えばCAS登録番号第181028−79−5号)、トリフェニルホスフェート(例えばCAS登録番号第115−86−6号)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えばCAS登録番号第68937−41−7号)およびこれらの有機リン酸エステルの2つ以上の組み合わせから選択されるトリアリールホスフェートである。
【0056】
一部の実施形態では、該有機リン酸エステルは、下式の構造
【化10】
(式中、Rはそれぞれ独立に、C
1−C
12アルキリデン基であり、R
16およびR
17はそれぞれ独立に、C
1−C
5アルキル基であり、R
12、R
13およびR
15は独立に、C
1−C
12ヒドロカルビルであり、R
14はそれぞれ独立に、C
1−C
12ヒドロカルビルであり、mは1〜25の整数であり、s1とs2はそれぞれ独立に、0、1または2の整数)を有するビス−アリールホスフェートを含む。一部の実施形態では、OR
5、OR
6、OR
7およびOR
8はそれぞれ独立に、フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールまたはトリアルキルフェノールから誘導される。
【0057】
当業者には容易に理解されるように、該ビス−アリールホスフェートはビスフェノールから誘導される。典型的なビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(所謂ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。一部の実施形態では、該ビスフェノールは、レゾルシノール、ビスフェノールAまたはこれらの混合物を含む。
【0058】
一部の実施形態では、該難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはこれらの混合物を含む。
【0059】
一部の実施形態では、該難燃剤は、該有機リン酸エステルから構成される。
【0060】
該組成物は、その合計質量に対して、約1〜約40質量%の、具体的には約3〜約30質量%の、より具体的には約5〜約25質量%の、さらにより具体的には約7〜約20質量%の、さらにより具体的には約8〜約15質量%の該難燃剤を含む。
【0061】
一部の実施形態では、前記組成物は、1種または複数種の添加剤をさらに含む。こうした添加剤としては、例えば、安定剤、離型剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤、ナノクレイおよび導電性付与剤が挙げられる。添加剤が存在する場合、それらのすべての合計量は、組成物の合計質量に対して、典型的には約0.1〜約10質量%であり、具体的には約0.5〜約5質量%であり、より具体的には約1〜約4質量%であり、さらにより具体的には約2〜約4質量%である。
【0062】
本明細書で必要なものあるいは選択的なものとして教示されない成分は、該組成物から選択的に除くことができる。例えば、一部の実施形態では、該組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物および水素化ブロックコポリマー以外のいかなるポリマーも含まない。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)組成物は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アルケニル芳香族モノマーのホモポリマー(ホモポリスチレンなど)、ポリ(フェニレンスルフィド)、アルケニル芳香族と共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマーおよびゴム変性ポリスチレンの1つまたは複数を含まない。一部の実施形態では、該組成物には、リニア低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン約0.2〜約2質量%が離型剤として組み込まれている。
【0063】
ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物が少量の場合には、難燃剤がレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)であることが好ましく、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物が多量の場合には、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)であることが好ましい場合もある。従って、特定の実施形態では、該組成物は、55超〜約65質量%のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロック反応生成物を含み、該難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を含む。別の特定の実施形態では、該組成物は、約65〜約95質量%のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み、該難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含む。
【0064】
一部の実施形態では、該組成物は、本質的に、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、該水素化ブロックコポリマーと、該難燃剤と、および選択的に、組成物の合計質量に対して、約0.1〜約10質量%の、具体的には約0.5〜約5質量%の、より具体的には約1〜約4質量%の、さらにより具体的には約2〜約4質量%の、安定剤、離型剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤、ナノクレイおよび導電性付与剤で構成される群から選択された1種または複数種の添加剤と、から構成される。この文脈において、「本質的に構成される」では、組成物の難燃性、溶融流動性、耐衝撃性および耐熱性間の向上したバランスに悪影響を与える量の他の成分は含まれない。
【0065】
非常に特定的な実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)ブロックは、下式の構造
【化11】
を有するアリーレンエーテル繰り返し単位を含み、該ポリシロキサンブロックは、下式の構造
【化12】
(式中、nは約30〜約60)を有しており;該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、約1〜約8質量%のシロキサン繰り返し単位と約92〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位とを含み;該組成物は、約67〜約87質量%の該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み;該スチレン系コポリマーは、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーから構成され;該組成物は、約5〜約17質量%の該スチレン系ポリマーを含み;該難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはこれらの混合物を含み;該組成物は、約8〜約15質量%の該難燃剤を含む。
【0066】
該組成物は、多くの好都合な特性の1つまたは複数を有し得る。一部の実施形態では、該組成物の難燃性は、Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の20mm垂直燃焼試験に準拠して測定して、最大1.5mm厚みのサンプルで、具体的には1.5mm厚みのサンプルで、より具体的には1.0mm厚みのサンプルで、さらにより具体的には0.8mm厚みのサンプルでV−0等級である。
【0067】
一部の実施形態では、該組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ASTM D256−10に準拠し、温度−40℃、振り子エネルギー2.7J、衝撃速度3.5m/秒で測定して、少なくとも100J/mであり、具体的には100〜約500J/mであり、より具体的には約115〜約450J/mであり、さらにより具体的には約120〜約400J/mであり、さらにより具体的には約150〜約350J/mである。
【0068】
一部の実施形態では、該組成物のメルトマスフローレートは、ASTM D1238−10 手順Bに準拠し、温度300℃、滞留時間375秒、荷重5kgで測定して、少なくとも5g/10分であり、具体的には5〜約30g/10分であり、より具体的には約8〜約28g/10分であり、さらにより具体的には約10〜約26g/10分であり、さらにより具体的には約12〜約26g/10分である。
【0069】
一部の実施形態では、該組成物の熱変形温度は、ASTM D648−07に準拠し、厚みが3.2mmのサンプル、応力1.82MPaで測定して、少なくとも90℃であり、具体的には90〜約150℃であり、より具体的には約100〜約140℃であり、さらにより具体的には約105〜約130℃である。
【0070】
該組成物は、上記の個別の特性に加えて、ポリ(アリーレンエーテル)組成物ではこれまでに見られなかった好都合な物性の組み合わせを有し得る。例えば、該組成物は、上記の特性の任意のものの2つ以上の組み合わせを有し得、あるいは、それらの3つ以上の組み合わせを有し得る。
【0071】
例えば、一部の実施形態では、該組成物の難燃性能は、Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の20mm垂直燃焼試験に準拠して測定して、最大1.5mm厚みのサンプルでV−0等級であり、また、以下の3つの特性のうち少なくとも2つを有する:ASTM D256−10に準拠し、温度−30℃〜−40℃、振り子エネルギー2.7J、衝撃速度3.5m/秒で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも150J/m;ASTM D1238−10 手順Bに準拠し、温度300℃、滞留時間375秒、荷重5kgで測定したメルトマスフローレートが少なくとも5g/10分;およびASTM D648−07に準拠し、厚みが3.2mmのサンプル、応力1.82MPaで測定した熱変形温度が少なくとも105℃。一部の実施形態では、該組成物は、これら3つの特性のすべてを有する。
【0072】
該組成物は、以下の特性の少なくとも2つを有する:Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の20mm垂直燃焼試験に準拠して測定した難燃性能が最大1.5mm厚みのサンプルでV−0等級;ASTM D256−10に準拠し、温度−40℃、振り子エネルギー2.7J、衝撃速度3.5m/秒で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも150J/m;ASTM D1238−10 手順Bに準拠し、温度300℃、滞留時間375秒、荷重5kgで測定したメルトマスフローレートが少なくとも12g/10分;およびASTM D648−07に準拠し、厚みが3.2mmのサンプル、応力1.82MPaで測定した熱変形温度が少なくとも105℃。別の実施形態では、該組成物は、この段落で記載した物性のうちの少なくとも3つを有する。
【0073】
一部の実施形態では、該組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ISO180:2000(E)に準拠し、温度−30℃、振り子エネルギー5.5Jで測定して、少なくとも5kJ/m
2であり、具体的には5〜約50kJ/m
2であり、より具体的には約8〜約45kJ/m
2であり、さらにより具体的には約10〜約40kJ/m
2であり、さらにより具体的には約12〜約35kJ/m
2である。
【0074】
一部の実施形態では、該組成物は、特にアルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーが約5質量%以下の組成物の場合、向上した多軸衝撃強度を有する。一部の実施形態では、該組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ISO180:2000(E)に準拠し、温度−30℃、振り子エネルギー5.5Jで測定して、少なくとも5kJ/m
2であり、具体的には5〜約500kJ/m
2であり、より具体的には約10〜約500kJ/m
2であり、さらにより具体的には約15〜約500kJ/m
2であり、さらにより具体的には約20〜約500kJ/m
2であり、さらにより具体的には約25〜約500kJ/m
2である。一部の実施形態では、該組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ISO180:2000(E)に準拠し、温度−40℃、振り子エネルギー5.5Jで測定して、約100〜約500kJ/m
2である。
【0075】
本発明的組成物は、ワイヤーおよびケーブル絶縁としての使用を目的とした柔軟な組成物であるGuoらの米国特許出願公報第2010/0139944A1号とは異なり、高剛性度で特徴付けられる。例えば、一部の実施形態では、該組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790−10に準拠し、温度23℃、試験速度1mm/分、厚み3.2mmのサンプルで測定して、少なくとも1,500MPaであり、具体的には1,500〜約3,000MPaであり、より具体的には約2,000〜約3,000MPaであり、さらにより具体的には約2,200〜約2,600MPaである。該組成物はこの剛性度を有するために、剛体物品用の成形用組成物としての使用に理想的に適したものになっている。
【0076】
一部の実施形態では、該組成物の多軸衝撃全エネルギーは、ASTM D3763−06に準拠し、温度−30℃、厚み3.2mmのサンプル、衝撃速度3.3m/秒で測定して、少なくとも20Jであり、具体的には20〜約70Jであり、より具体的には約30〜約70Jであり、さらによりより具体的には約35〜約70Jであり、さらにより具体的には約40〜約70Jである。
【0077】
該組成物は、該ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物、該水素化ブロックコポリマー、該難燃剤および任意の選択的成分の溶融混練または溶融混合により形成できる。溶融混練機は当分野で既知であり、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、リボンブレンダー、Henschelミキサー、Banburyミキサー、ドラムタンブラー、単軸押出機、共混練機、および組成物にせん断を印加し得る同様の混合機が挙げられる。特定の溶融混練方法については、後述の実施例で説明する。
【0078】
該組成物は、成形、押出あるいは型成形による物品形成に理想的に適している。特に、射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、ロータリー成形、ブロー成形、圧縮成形および関連する成形プロセスなどの既知のプロセスを用いて、該組成物から物品を成形できる。該組成物に適用可能な特定の射出成形方法については、後述の実施例で説明する。
【0079】
一実施形態は、該組成物から射出成形された物品である。該組成物は、太陽電池端子ボックスとコネクタの成形に特に適している。太陽電池端子ボックスは一般に、個々の太陽エネルギー収集パネルから、その場所での電気負荷回路または出力電力送電線へ送るための電力収集回路および電力管理装置に至る太陽光発電装置内の種々のポイントにおいて、屋外環境の厳しい状況から電気接続を保護する長方形で薄型のプラスチック筐体である。これらの端子ボックスには、異なる数の配線区画が含まれていてもよく、また、信頼性のある再現可能な接続がその場で直ぐに確実に実現できる安全な方法で通電導体を収容するために、配線端子、コネクタ、リード線が設けられていてもよい。太陽電池端子ボックスとコネクタの具体的な構造は、例えば、Dailyらの米国特許第7,291,036B1号、Lauermannらの同第7,824,189号、Coyleらの米国特許出願公報第2010/0218797A1号およびShmuklerらの同第2010/0294903A1号などに記載されている。
【0080】
上記の組成変形例のすべては、該組成物そのものおよび該組成物を含む射出成形物品に当てはまる。
【0081】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0082】
実施形態1:組成物であって、特に明記されない限り、その合計質量に対して、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーと、ポリ(アリーレンエーテル)ブロックおよび平均で約20〜約80個のシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックを含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物であって、約1〜約30質量%のシロキサン繰り返し単位と約70〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位とを含み、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含むモノマー混合物の酸化共重合ステップを備えたプロセスの生成物であり、質量平均分子量が少なくとも30,000原子質量単位であるポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を55超〜約95質量%と;ゴム変性ポリスチレン、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの未水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択されたスチレン系ポリマーを約1〜約40質量%と;有機リン酸エステルを含む難燃剤を約1〜約40質量%と、を含む組成物であって、ASTM D790−10に準拠し、温度23℃、厚み3.2mmのサンプルで測定した曲げ弾性率が少なくとも1500MPaである組成物。
【0083】
実施形態2:約67〜約87質量%の前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施形態1に記載の組成物。
【0084】
実施形態3:約5〜約17質量%の前記スチレン系ポリマーを含む実施形態1または実施形態2に記載の組成物。
【0085】
実施形態4:約8〜約15質量%の前記難燃剤を含む実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載の組成物。
【0086】
実施形態5:前記スチレン系ポリマーは、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの前記水素化ブロックコポリマーから構成される実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載の組成物。
【0087】
実施形態6:前記スチレン系ポリマーは、前記ゴム変性ポリスチレンと、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの前記未水素化ブロックコポリマーと、から構成される実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載の組成物。
【0088】
実施形態7:前記組成物は、55超〜約65質量%の前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロック反応生成物を含み、前記難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を含む実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載の組成物。
【0089】
実施形態8:前記組成物は、約65〜約95質量%の前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み、前記難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含む実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載の組成物。
【0090】
実施形態9:前記ポリ(アリーレンエーテル)ブロックは、下式の構造
【化13】
(式中、各繰り返し単位に対し、Z
1はそれぞれ独立に、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシであり;Z
2はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシ)を有するアリーレンエーテル繰り返し単位を含み;前記ポリシロキサンブロックは、下式の構造
【化14】
(式中、R
1とR
2はそれぞれ独立に、水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビル)を有する繰り返し単位を含み;前記ポリシロキサンブロックはさらに、下式の構造
【化15】
(式中、Yは、水素、C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシまたはハロゲンであり、R
3とR
4はそれぞれ独立に、水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビル)を有する末端単位を含む実施形態1乃至実施形態8のいずれかに記載の組成物。
【0091】
実施形態10:前記ポリ(アリーレンエーテル)ブロックは、下式の構造
【化16】
を有するアリーレンエーテル繰り返し単位を含み、前記ポリシロキサンブロックは、下式の構造
【化17】
(式中、nは約30〜約60)を有する実施形態1乃至実施形態9のいずれかに記載の組成物。
【0092】
実施形態11:前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を形成するプロセスはさらに、イソプロパノールを含む貧溶媒で酸化共重合反応混合物を沈殿させて前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を形成するステップを備え、前記ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、その合計質量に対して、約1.5質量%未満の前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含む実施形態1乃至実施形態10のいずれかに記載の組成物。
【0093】
実施形態12:前記難燃剤は、前記有機リン酸エステルから構成される実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載の組成物。
【0094】
実施形態13:前記難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはこれらの混合物を含む実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載の組成物。
【0095】
実施形態14:前記組成物は、本質的に、前記ポリ(アリーレンエーテル)と、前記水素化ブロックコポリマーと、前記難燃剤と、および選択的に、安定剤、離型剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤、ナノクレイおよび導電性付与剤で構成される群から選択された1種または複数種の添加剤約0.1〜約10質量%と、から構成される実施形態1乃至実施形態12のいずれかに記載の組成物。
【0096】
実施形態15:Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の20mm垂直燃焼試験に準拠して測定した難燃性能が、最大1.5mm厚みのサンプルでV−0等級であり、また、以下の特性のうちの少なくとも2つを有する実施形態1乃至実施形態14のいずれかに記載の組成物:ASTM D256−10に準拠し、温度−30℃〜−40℃、振り子エネルギー2.7J、衝撃速度3.5m/秒で測定したノッチ付アイゾッド衝撃強度が少なくとも150J/m;ASTM D1238−10 手順Bに準拠し、温度300℃、滞留時間375秒、荷重5kgで測定したメルトマスフローレートが少なくとも5g/10分;およびASTM D648−07に準拠し、厚みが3.2mmのサンプル、応力1.82MPaで測定した熱変形温度が少なくとも105℃。
【0097】
実施形態16:前記の3つの特性をすべて有する実施形態15に記載の組成物。
【0098】
実施形態17:ASTM D790−10に準拠し、温度23℃、厚み3.2mmのサンプルで測定した曲げ弾性率が少なくとも2,000MPaである実施形態1乃至実施形態16のいずれかに記載の組成物。
【0099】
実施形態18:実施形態1乃至実施形態17のいずれかに記載の組成物を含む射出成形物品。
【0100】
実施形態19:太陽電池端子ボックスあるいは太陽電池端子コネクタである実施形態18に記載の射出成形物品。
【0101】
実施形態20:組成物であって、特に明記されない限り、その合計質量に対して、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーと、下式の構造
【化18】
を有するアリーレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)ブロック、および平均で約20〜約80個のシロキサン繰り返し単位を含み、下式の構造
【化19】
(式中、nは約30〜約60)を有するポリシロキサンブロックを含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと、を含むポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物であって、約1〜約8質量%のシロキサン繰り返し単位と約92〜約99質量%のアリーレンエーテル繰り返し単位とを含み、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含むモノマー混合物の酸化共重合ステップを備えたプロセスの生成物であり、質量平均分子量が少なくとも30,000原子質量単位であるポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を約67〜約87質量%と;アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーから構成されるスチレン系ポリマーを約5〜約17質量%と;レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはこれらの混合物を含む難燃剤を約8〜約15質量%と、を含む組成物。
【0102】
以下の非限定的実施例によって、本発明をさらに例証する。
【0103】
調製実施例
モノマー混合物の質量に対して、2,6−キシレノール95質量%と、1分子当たり約45個のシロキサン繰り返し単位を有するオイゲノールキャップ化ポリシロキサン5質量%と、を含むモノマー混合物を酸化共重合して、実施例で使用する、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.45dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−co−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマー反応生成物を調製した。以下の手順に従って、該ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)−co−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマー反応生成物を調製した。
【0104】
該プロセスを表1に示すが、ここで、「トルエン源」は、トルエン溶媒が未使用品(表1中、「未使用」)であるか、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマー合成からの再利用品(表1中、「再利用」)であるかを表し;「DMBA濃度(%)」は、トルエンの質量に対するジメチル−n‐ブチルアミンの濃度(単位:質量%)であり;「固形分(%)」は、2,6−ジメチルフェノールとオイゲノールキャップ化ポリシロキサンとトルエンの合計質量に対する2,6−ジメチルフェノールとオイゲノールキャップ化ポリシロキサンとの合計質量(単位:質量%)であり;「ポリシロキサン鎖長」は、オイゲノールキャップ化ポリシロキサンにおけるジメチルシロキサン(−Si(CH
3)
2O−)単位の平均数であり;「ポリシロキサン投入量(%)」は、オイゲノールキャップ化ポリシロキサンと2,6−ジメチルフェノールとの合計質量に対する、反応混合物中のオイゲノールキャップ化ポリシロキサンの質量%であり;「初期2,6−ジメチルフェノール(%)」は、2,6−ジメチルフェノールの合計質量に対する、重合開始時(反応槽への酸素導入時)に反応槽に存在する2,6−ジメチルフェノールの質量%であり;「O:2,6−ジメチルフェノールモル比」は、2,6−ジメチルフェノールの添加中に維持した、酸素原子(酸素分子として供給)と2,6−ジメチルフェノールとのモル比であり;「初期充填温度(℃)」は、初期充填モノマーを反応槽に添加し、酸素を反応混合物に最初に導入した時の反応混合物の温度であり;「添加温度(℃)」は、さらに2,6−ジメチルフェノールを添加中の反応温度であり;「形成温度(℃)」は、反応の形成相中の温度であり;「傾斜時間(分)」は、温度を添加温度から形成温度に上昇させる間の時間であり;「傾斜勾配(℃/分)」は、温度を添加温度から形成温度に上昇させる間の温度変化率であり;「反応時間(分)」は、酸素導入時から酸素遮断時までの全反応時間である。すべての変形例に対して、モノマー添加時間は、反応開始(すなわち、酸素流の開始)から40〜80分に制御した。形成時間は、制御されたモノマー添加終了から反応終了(すなわち酸素流停止)までで測定し、約80〜160分であった。
【0105】
以下の一般的な合成手順を用いた。リアクタと2,6−ジメチルフェノール添加タンクを温かいトルエンですすぎ、トルエンは廃棄した。反応は、酸素濃度が1%未満となるように窒素パージして行った。初期トルエン(未使用品または再利用品)をリアクタに入れ、500rpmで撹拌した。該初期トルエンの温度を表1の「初期充填温度」に調整し、添加タンクから反応槽への初期充填2,6−ジメチルフェノールの添加の間、この温度に維持した。初期充填2,6−ジメチルフェノールの添加終了後、オイゲノールキャップ化ポリジメチルシロキサン、ジ−n‐ブチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジアミンおよび銅触媒を反応槽に投入した。酸素流およびモノマーのさらなる添加を開始し、酸素流を調節してヘッドスペース濃度を17%未満に維持した。モノマーのさらなる添加の間、冷却水供給温度を調節して、表1の「添加温度(℃)」に示す温度に維持した。モノマーの添加終了後、モノマー添加ラインをトルエンでフラッシングし、反応温度を表1の「形成温度(℃)」に示す温度まで上げた。表1の「傾斜時間(分)」に示す時間をかけ、また同表の「傾斜勾配(℃/分)」に示す速度で、この温度調節を行った。所定の時点に到達するまで反応を継続させた。該所定の時点は、目的の固有粘度とシロキサンの最大取り込みが達成される時間であり、典型的には、2,6−ジメチルフェノールの添加終了後80〜160分である。この時点に到達後、酸素流を停止した。その後、反応混合物を60℃に加熱し、キレート水溶液を含むキレート化タンクに移送した。得られた混合物を60℃に保持し1時間撹拌した。軽い相(有機系)と重い相(水系)とをデカンテーションで分離し、重い相は廃棄した。分析用に、軽い相の少量をサンプリングしてイソプロパノール沈殿させ、残りを沈殿タンクに移送して、貧溶媒と軽い相との質量比が3:1となる量のメタノール貧溶媒(イソプロパノール貧溶媒での代用可能)と混合した。沈殿物をろ過して湿潤ケーキとし、それを同じ貧溶媒で3度再スラリー化し、トルエン濃度が1質量%未満になるまで窒素下で乾燥させた。
【0106】
得られた生成物の特性を表1に示す。単離生成物中の揮発性物質の質量%を表す「全揮発性物質(%)」は、減圧下での110℃×1時間の乾燥に伴う質量ロス%を測定して求め;銅元素量を質量ppm単位で表した残存触媒濃度を表す「残存銅(ppm)」は、原子吸光分析法で求め;反応時間の関数としての特性については、リアクタからサンプルを取出し、(触媒金属の事前のキレート化は行わずに)反応混合物1容積を室温のイソプロパノール3容積に添加して沈殿させ、この沈殿物をろ過、イソプロパノール洗浄、乾燥させて、
1H NMR分析(シロキサン質量%とシロキサン取り込み効率決定のため)と固有粘度分析を行った。
【0107】
ゲル透過クロマトグラフィを用い、以下の方法で数平均分子量と質量平均分子量を求めた。それぞれが狭小な分子量分布を有し、全体で3,000〜1,000,000g/モルの分子量範囲に及ぶ8つのポリスチレン標準を用いて、ゲル透過クロマトグラフを較正した。カラムは、5μLのPLゲルガードカラム(孔サイズ:100Å)を備えたPLゲルカラム(孔ザイズ:1,000Åおよび100,000Å)を用いた。クロマトグラフィは25℃で行った。溶出液として、100質量ppmのジ−n−ブチルアミンを含むクロロホルムを用いた。溶出流量は1.2mL/分とした。検出器波長は254nmとした。較正点によって3次多項式関数を適合させた。単離したブロックコポリマー反応生成物0.27gをトルエン45mLに溶解して、実験サンプルを調製した。得られた溶液の50μLサンプルをクロマトグラフに注入した。数平均分子量(M
n)および質量平均分子量(M
w)値は、ポリスチレン検量線を用いて測定信号から算出される。その後、式:M(PPE)=0.3122×M(PS)
1.073(式中、M(PPE)はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の分子量、M(PS)はポリスチレンの分子量)を用いて、ポリスチレンの分子量をポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の分子量に変換する。
【0108】
表1において、「分子量<10K(%)」は、ゲル透過クロマトグラフィで測定した分子量が10,000原子質量単位未満の単離反応生成物の質量%であり;「分子量>100K(%)」は、ゲル透過クロマトグラフィで測定した分子量が10,000原子質量単位未満の単離反応生成物の質量%であり;「反応終了時固有粘度(dL/g)」は、イソプロパノール沈殿で単離された乾燥パウダーの、25℃クロロホルム中ウベローデ粘度計で測定した固有粘度であり;「キレート化終了時固有粘度(dL/g)」は、キレート化後有機相中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の、25℃クロロホルム中ウベローデ粘度計で測定した固有粘度であり;「反応終了時M
w(原子質量単位)」は、重合反応終了時の反応混合物中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の、ゲル透過クロマトグラフィで測定した質量平均分子量であり;「反応終了時M
n(原子質量単位)」は、重合反応終了時の反応混合物中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の、ゲル透過クロマトグラフィで測定した数平均分子量であり;「反応終了時M
w/M
n」は、重合反応終了時の反応混合物中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の質量平均分子量と数平均分子量との比であり;「キレート化終了時M
w(原子質量単位)」は、キレート化後有機相中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の、ゲル透過クロマトグラフィで測定した質量平均分子量であり;「キレート化終了時M
n(原子質量単位)」は、キレート化後有機相中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の、ゲル透過クロマトグラフィで測定した数平均分子量であり;「キレート化終了時M
w/M
n」は、キレート化後有機相中の、イソプロパノール沈殿で単離後乾燥させた生成物の質量平均分子量と数平均分子量との比である。
【0109】
表1において、「シロキサン質量%(%)」は、単離生成物中の2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位とジメチルシロキサン単位との合計質量に対する、単離生成物中のジメチルシロキサン単位の質量%であり、以下の「式(I)」の構造中のaプロトンおよびbプロトンを用いた
1H NMR法および下式により算出されたものである:
【数1】
式中
【数2】
および
【数3】
X算出式中の「シロキサン液Mn」は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン中のジメチルシロキサン単位の数平均分子量であり、Y算出式中の「2,6−キシレノールMw」は、2,6−ジメチルフェノールの分子量である。この計量を「シロキサン質量%」と呼ぶことは、単離された生成物の2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位とジメチルシロキサン単位以外の成分を無視している点で簡略化し過ぎだが、有用な計量である。
【0110】
表1において、「シロキサン取り込み効率(%)」は、反応混合物中の使用した全モノマー組成物中のジメチルシロキサン単位の質量%に対する、単離生成物中のジメチルシロキサン単位の質量%である(イソプロパノール沈殿によって、未反応の(取り込まれなかった)シロキサンマクロマは除去される)。測定は、「式I」の構造中のaプロトンおよびbプロトンを用いた
1H NMR法で行い、下式により算出した:
【数4】
式中、「生成物中のシロキサン質量%」算出式は上記のものであり、
【数5】
式中、「投入したシロキサンモノマー質量」は、反応混合物中の使用したヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量であり、「投入した2,6モノマー質量」は、反応混合物中の使用した2,6−ジメチルフェノールの合計質量である。この計量を「シロキサン取り込み効率」と呼ぶことは、少量のモノマーとオリゴマーが単離プロセスで消失し得る可能性を無視している点で簡略化し過ぎである。例えば、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンがすべてブロックコポリマーに取り込まれ、一部のアリーレンエーテルオリゴマーが単離プロセスで消失したとすると、シロキサン取り込み効率は理論的に100%を超え得る。しかしながら、シロキサン取り込み効率は有用な計量である。
【0111】
表1において、「尾部(%)」は、全2,6−ジメチルフェノール残基に対する、末端基構造中の2,6−ジメチルフェノールの%を表す。
測定は、下記の「式(III)」の構造中のeプロトンと「式(I)」の構造中のaプロトンとを用いた
1H NMR法で行い、下式により算出した:
【数6】
式中、Yの算出式は上記のものである。
【数7】
【0112】
表2において、「ビフェニル(%)」は、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール残基,すなわち、下式の構造を有する残基であり、
【化20】
「式(II)」の構造中のdでラベル化された「ビフェニル」プロトンを用いた
1H NMR法で求め、下式により算出した:
【数8】
式中、Yの算出式は上記のものであり、
【数9】
式中、「ビフェニルMW」は、上記の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール残基の分子量である。
【0113】
「OH(ppm)」は、単離されたサンプルの合計質量に対するすべての水酸基の質量ppmである。測定は、K.P.Chanらの「Facile Quantitative Analysis of Hydroxyl End Groups of Poly(2,6−dimethyl−1,4−phenylene oxide)s by
31P NMR Spectroscopy」,Macromolecules,27巻,6371−6375ページ(1994)に記載されているように、単離されたサンプルの水酸基のリン誘導体化後、
31P NMR法で行った。
式(I)
【化21】
式(II)
【化22】
式(III)
【化23】
【表1】
【0114】
分子量画分の関数としての調製実施例組成物のキャラクタリゼーションとして、6つのゲル透過クロマトグラフィ注入からの画分(注入された全材料36mg)を、ジルソン(Gilson)フラクションコレクタを用いて収集した。操作時間12分〜25分の間に溶出する溶離液を60試験管に分割した。分割したものはその後再混合し、それぞれが全材料の16.67%(クロマトグラフの面積率から決定)を含む6つの画分とした。5つの画分の少量(200μL)をゲル透過クロマトグラフィで分析し、分別の効果を確認した。残りは
1H NMR分析に使用した。NMR分析に使用した画分は、窒素流下、50℃で蒸発・乾燥させた。重水素化クロロホルム(内部標準としてテトラメチルシランを含む)1mLを添加し、サンプルを
1H NMR法で分析した。表2の結果は、第1に、すべての画分が実質的にジメチルシロキサンを含むことを示している。最高分子量画分で「尾部%」が検出されなかったという事実は、この画分が本質的にポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含まない、すなわち、本質的に純粋なブロックコポリマーであることを示している。同様に、最大の「尾部%」が最小分子量画分に見られたという事実は、ポリ(アリーレンエーテル)が小分子量画分の方に偏っていることを意味している。
【表2】
【0115】
実施例1〜26、比較実施例1〜22
これらの実施例によって、ポリ(アリーレンエーテル)に代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を使用して得られた特性は向上していることが例証される。ある実施例での成分量と、対応する比較実施例でのそれとが同じである実施例もある。他の実施例では、成分量は違っており、従って、種々の物性間の好都合なバランスが達成されている。実施例における組成物の調製に用いた個別の成分を表3に示す。実施例で使用した非化学略語を表4に示す。
【表3】
【表4】
【0116】
発明組成物および比較組成物を表5〜表14に示す。成分量の単位はすべて質量部である。以下の方法で個別の成分から組成物を調製した。回転速度が300rpm、バレル温度が供給口からダイにかけて240〜290℃とした、内径30mmの二軸スクリュー押出機で成分を混合した。難燃剤以外の他の成分はすべて、押出機の供給口で添加した。アリールホスフェート難燃剤(BPADPまたはRDP)は、押出機後半の液注入装置経由で下流側で添加した。押出品をペレット化し80℃×4時間乾燥させた後、射出成形に用いた。該ポリ(アリーレンエーテル)組成物を物性試験用物品に射出成形した。バレル温度を530°F(266.7℃)、金型温度を190°F(87.7℃)としたVan Dorn120T射出成形機で射出成形した。
【0117】
該組成物から射出成形された部品の物性を表5〜18に示す。メルトマスフローレート(MFR)(単位:g/10分)は、ASTM D1238−10に準拠し、温度300℃、荷重5kg、滞留時間375.0分で測定した。メルトボリュームフローレート(MVR)(単位:cm
3/10分)も、ASTM D 1238−10に準拠し、温度300℃、荷重5kg、滞留時間375.0分で測定した。熱変形温度(HDT)(単位:℃)は、ASTM D648−07に準拠し、応力1.82MPa、厚み3.2mmのサンプルにて、あるいは、ISO75−1:2004、方法Aに準拠し、応力1.8MPa、厚み4.0mmのサンプル、サンプル方向:フラットワイズにて測定した。ビカット軟化温度(VST)(単位:℃)は、ISO306:2004(E)に準拠し、力:50N、加熱速度120℃/時にて測定した。弾性率は、温度23℃、試験速度1mm/分にて測定した。降伏点応力(MPa)、破断応力(MPa)およびこれらの比(%)は、ISO527−5:1997(E)に準拠し、温度23℃、試験速度50.0mm/分にて測定した。曲げ弾性率(MPa)は、ASTM D790−10に準拠し、温度23℃で測定した。ノッチ付アイゾッド衝撃強度(J/m)は、ASTM D256−10に準拠し、温度23℃、−30℃または−40℃、振り子エネルギー2.7J、衝撃速度3.5m/秒にて測定した。ノッチ付アイゾッド衝撃強度(kJ/m
2)は、ISO180:2000(E)に準拠し、温度23℃または−30℃、振り子エネルギー2.75Jまたは5.5Jにて測定した。多軸衝撃強度(J)は、ASTM D3763−06に準拠し、温度23℃または−30℃、厚み3.2mmのサンプル、衝撃速度3.3m/秒にて測定した。燃焼特性は、Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の20mm垂直燃焼試験に準拠し、厚みが0.8mm、1.0mm、1.5mmまたは3.0mmのサンプルで測定した。結果は、性能等級(V−0、V−1またはV−2)、平均第1消炎時間、平均第2消炎時間、平均全消炎時間で示した。また、燃焼特性は、Underwriter’s Laboratory Bulletin94「プラスチック材料の燃焼性試験UL94」の500W(125mm)垂直燃焼試験に準拠し、長さ125mm×幅13mm×厚み1.6mmのバーおよび150mm×厚み1.6mmの円板でも測定した。結果は、5枚の円板に対しては性能等級5VAとして、10枚のバーに対しては性能等級5VBとして示した。
【0118】
実施例1〜6
ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む発明実施例1〜6の組成物および特性を表5に示す。これらの実施例は、メルトマスフローレートが少なくとも12.7g/10分;熱変形温度が少なくとも105℃;ノッチ付アイゾッド衝撃強度が、ASTM D256−10に準拠し温度−40℃で測定して少なくとも119J/m;UL94性能等級が1.0mm厚みのサンプルでV−0、という有用な特性組み合わせを有する。
【表5】
【0119】
実施例7、比較実施例1
表6には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例1の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例7の特性との比較を示す。実施例7では、メルトボリュームフローレートとノッチ付アイゾッド衝撃強度が向上しており、また、UL94第1および第2消炎時間で測定した難燃性もわずかに向上している。ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマー組成物を改良することによって、流動性、衝撃強度および難燃性のうちの1つを向上させることは一般に可能である。しかしながら、これらの特性のうちの任意の2つを向上させると、典型的にはもう1つの特性が犠牲となる。従って、実施例7で見られたように、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を用いることによって、これらの3つの特性すべてを同時に向上させられることは驚くべきことである。
【表6】
【0120】
実施例8〜11、比較実施例2〜5
表7には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例2〜5の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例8〜12の特性との比較を示す。実施例8および9では、厚みが1.5mmのサンプルでのUL94等級がV−1からV−0に向上した。実施例11でも、消炎時間のわずかな向上が見られた。実施例8、9および11から、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を使用することによって、難燃性が向上できることが例証されている。
【表7】
【0121】
実施例12〜14、比較実施例6〜8
表8には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例6〜8の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例12〜14の特性との比較を示す。これらの実施例はすべて、8.0質量部のBDADP難燃剤を含む。難燃剤のこの濃度において、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して、温度23℃および−30℃の両方で向上している。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物のUL94で測定した難燃性も、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して向上している。比較実施例6と実施例12からわかるように、耐衝撃性改良剤(SEBS)の最少濃度(4.0質量部)において、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物の−30℃ノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して向上している。
【表8】
【0122】
実施例15〜19、比較実施例9〜11
表9には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例9〜11の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例15〜17の特性との比較を示す。これらの実施例はすべて、11.0質量部のBDADP難燃剤を含む。難燃剤のこの濃度において、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して、温度23℃および−30℃の両方で向上している。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物のUL94で測定した難燃性は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と同等である。比較実施例9と実施例15からわかるように、耐衝撃性改良剤(SEBS)の最少濃度(4.0質量部)において、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物の−30℃ノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して向上している。
【表9】
【0123】
実施例18〜20、比較実施例12〜14
表10には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例12〜14の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例18〜20の特性との比較を示す。これらの実施例はすべて、11.0質量部のBDADP難燃剤を含む。難燃剤のこの濃度において、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して、温度23℃および−30℃の両方で向上している。ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物のUL94で測定した難燃性は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と同等である。比較実施例12と実施例18からわかるように、耐衝撃性改良剤(SEBS)の最少濃度(4.0質量部)において、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物の−30℃ノッチ付アイゾッド衝撃強度は、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む組成物と比較して向上している。
【表10】
【0124】
実施例21〜23、比較実施例15〜17
表11には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例15〜17の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例21〜23の特性との比較を示す。実施例21〜23では、比較実施例15〜17に対して、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の量を増やし、耐衝撃性改良剤(SEBS)と難燃剤(BPADP)の量を低減させて、比較実施例15〜17のそれぞれと同等な熱変形温度を得ている。実施例21〜23では、耐衝撃性改良剤と難燃剤の量が低減されているにもかかわらず、比較実施例15〜17それぞれと比較して、ノッチ付アイゾッド衝撃強度は温度23℃および−30℃の両方で向上しており、平均第1、第2および全消炎時間で測定した難燃性も向上している(消炎時間の低減によって証明されている)。
【表11】
【0125】
実施例24〜25、比較実施例18〜19
表12には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例18および19の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例24および25の特性との比較を示す。実施例24および25では、比較実施例18および19それぞれに対して、耐衝撃性改良剤(SEBS)と難燃剤(BPADP)の量を低減させ、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の量を増やして、比較実施例18および19と同様の熱変形温度を得ている。実施例24および25では、耐衝撃性改良剤と難燃剤の量が低減されているにもかかわらず、ノッチ付アイゾッド衝撃強度は、比較実施例24および25と比較して、温度23℃および−30℃の両方で向上しており、平均第1、第2および全消炎時間で測定した難燃性は同等である。
【表12】
【0126】
実施例26、比較実施例20〜21
表13には、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーを含む比較実施例20および21の特性と、ポリ(アリーレンエーテル)ホモポリマーに代えて、ポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む実施例26の特性との比較を示す。これらの例のすべてにおいて、耐衝撃性改良剤(SEBS)の量は6.0質量部で一定である。実施例26の難燃剤(BPADP)の量は11.5質量部であり、比較実施例20および21の13.5質量部から低減している。実施例26のノッチ付アイゾッド衝撃強度は、比較実施例20および21と比較して、温度23℃および−30℃の両方において向上している。実施例26の−40℃における延性(多軸衝撃強度)は、比較実施例20および21と比較して向上している。実施例26の熱変形温度は、比較実施例20および21と同等である。
【表13】
【0127】
実施例2および17、比較実施例22
表14には、実施例2および17と、Guoらの米国特許出願公報第2010/0139944A1号における実施例15である比較実施例22との比較を示す。Guoらは、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーとを含むワイヤーおよびケーブル絶縁組成物について記載している。Guoらの実施例15は、組成物と物性の点において,実施例2および17で例示される本明細書での発明組成物とは実質的に異なる。Guoらの組成物は、40質量%のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを有する比較実施例22で例示されるように、そのポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー含量は5〜55質量%に限定されている。本明細書での発明組成物は、それぞれ76.15質量%および76質量%のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを有する実施例2および17で例示されるように、55超〜約95質量%のポリ(アリーレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。また、本明細書での本発明組成物は、実施例2および17で例示されるように、比較実施例22で例示されるGuoらの組成物とは実質的に異なる物性も有する。実施例2の曲げ弾性率が2,250MPaであるのに対し、比較実施例22のそれは、わずか296MPaである。実施例17の弾性係数が2,051MPaであるのに対し、比較実施例22のそれは、わずか185MPaである。このように、比較実施例22は非常に柔軟な組成物であり、ワイヤーおよびケーブル絶縁としての使用に理想的に適したものになっている。しかしながら、この同様な柔軟性によって、太陽電池端子ボックスやコネクタなどの剛体物品での使用には適さないものとなっている。対照的に、実施例2および17は、その高曲げ弾性率と弾性係数によって、剛体物品での使用に理想的に適したものになっている。
【表14】
【0128】
本明細書では実施例を用いて最良の実施形態を含めて本発明を開示しており、当業者によって本発明をなし使用することを可能にしている。本発明の特許範囲は請求項によって定義され、当業者がもたらすその他の実施例も包含し得る。こうしたその他の実施例は、請求項の文字どおりの解釈と違わない構成要素を有する場合、 あるいは請求項の文字どおりの解釈とごくわずかな違いしかない等価な構成要素を含む場合には、請求項の範囲内であると意図される。
【0129】
引用された特許、特許出願および他の参考文献はすべて、参照により本明細書に援用される。しかしながら、本出願中の用語が援用された参考文献の用語と矛盾するか対立する場合、本出願の用語が援用された参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0130】
本明細書で開示された範囲はすべて、終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせできる。
【0131】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における単数表現は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いられるものである。量に関連して用いた「約」は、記載された数値を含むものであり、文脈上決定される意味(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の程度を含む)を有するものである。