特許第5746443号(P5746443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746443管の内層構造及びそれに使用する連結部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746443
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】管の内層構造及びそれに使用する連結部材
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20150618BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   E03F7/00
   F16L55/18 B
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-538626(P2014-538626)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2013076234
(87)【国際公開番号】WO2014051041
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-217386(P2012-217386)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505354095
【氏名又は名称】タキロンエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】真山 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】西谷 朋之
(72)【発明者】
【氏名】安井 聡
(72)【発明者】
【氏名】早川 進
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−316539(JP,A)
【文献】 特開2007−085031(JP,A)
【文献】 特開2003−032821(JP,A)
【文献】 特開2002−310378(JP,A)
【文献】 特開平8−034017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内周面に沿って、管軸方向に間隔をあけて設置した固定部材と、該固定部材に配設した、内面材が嵌着される第1の嵌着部を備えた連結部材と、該連結部材の第1の嵌着部に嵌着して、管軸方向に隣接する固定部材に架設した帯状の内面材とからなる管の内層構造であって、前記連結部材を、前記固定部材に対して分割して配設するようにするとともに、該連結部材を固定部材に設置するための第2の嵌着部を備えたことを特徴とする管の内層構造。
【請求項2】
前記第2の嵌着部によって、連結部材が固定部材に沿って位置調整可能に配設するようにしたことを特徴とする請求項1記載の管の内層構造。
【請求項3】
前記連結部材の第1の嵌着部を形成した面を面一に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の管の内層構造。
【請求項4】
前記連結部材の各々に複数の第2の嵌着部を備えるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の管の内層構造。
【請求項5】
管の内周面に沿って設置される固定部材と内面材とを接合するために用いられる連結部材であって、全体形状が帯状をなし、内面材が嵌着される第1の嵌着部と、固定部材に設置するための第2の嵌着部とを備えてなることを特徴とする管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項6】
第1の嵌着部の嵌着方向及び第2の嵌着部の嵌着方向が、直交する方向とされてなることを特徴とする請求項5記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項7】
第2の嵌着部が、固定部材に嵌入するためのU字状の溝からなることを特徴とする請求項5又は6記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項8】
連結部材に複数個の第2の嵌着部を備え、それぞれの第2の嵌着部のU字状の溝の開口方向を、基準点を挟んで180°異なる方向を向くようにしてなることを特徴とする請求項7記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項9】
第2の嵌着部のU字状の溝が、並設された2本の固定部材に嵌入する長さを備えてなることを特徴とする請求項7又は8記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項10】
連結部材に複数個の第1の嵌着部及び第2の嵌着部を備え、該第1の嵌着部及び第2の嵌着部を帯状の連結部材の長手方向における同じ位置に設けるようにしたことを特徴とする請求項5、6、7、8又は9記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項11】
連結部材が、接続片を介して、管の周方向に一体に接続されてなることを特徴とする請求項5、6、7、8、9又は10記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【請求項12】
接続片が、管の周方向に隣接する連結部材の端部間の距離を調整するスペーサ機能を備えてなることを特徴とする請求項11記載の管の内層構造に使用する連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の内層構造及びそれに使用する連結部材に関し、特に、下水道管等の比較的大口径の既設管の補修に適した管の内層構造及びそれに使用する連結部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した下水道管等の既設管の補修構造として、既設管の内面を内張り材で全面的に覆う既設管の補修構造が数多く提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
このうち、特許文献1に記載のものは、組み立てることにより管状、角形又は馬蹄形の筒状体を構成する、内周面を構成する内面板と、該内面板の周縁に立設された外周板とをプラスチックによって一体に形成した流路施設修復用ブロック体を用いて施工されるものであり、また、特許文献2に記載のものは、既設管路内に、当該既設管路内面に略沿った中空骨組み状補強材が配置され、その補強材の内側に、既設管路の筒長方向並びに周方向にそれぞれ複数の内面部材が連続的に取り付けられて筒状に組み立てられているとともに、既設管路の筒長方向に隣接している内面部材同士は、互いの端面が当接した状態で、双方の内面部材に跨って配置された内面材連接材により相互に連結されてなり、内面部材と既設管路内面との間に硬化性充填材が充填されてなるものである。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、合成樹脂製のブロック体を使用するために高価な金型を必要とすることから、コストがかかり、また、数多くのブロック体の組み立てに多大な手間を要するものであり、また、特許文献2に記載のものは、既設管路の補修長が長くなるに従い、内面部材及び嵌合部材を筒長方向に連続したものを使用しようとする場合の輸送上又は製造設備上、製造現場における設置スペース等の問題を解決するものの、既設管路内に中空骨組み状の補強材を配置するのに補強材が多数の部材からなり補強材を既設管路内で組み立てるのに多大な手間を要し、また、内面部材の数も多くこれを同様に数の多い嵌合部材に係止するのに多大な手間を要するものとなっている。
【0004】
一方、このような実情に鑑み、経済的な部材を用い、その組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある既設管の補修構造として、既設管の内周面の周方向に沿って、管軸方向に所定の間隔をあけて配設した剛性リングと、これら剛性リングの内側に跨るように管軸方向に、剛性リングの周方向に所定の間隔をあけて配設した既設管の中心側に所定の間隔をあけて形成した切欠きを有する剛性直材と、該剛性直材の切欠きに対応する突条を有する帯状の合成樹脂製内面材とからなり、前記合成樹脂製内面材の突条を剛性直材の切欠きに嵌着することにより、合成樹脂製内面材を既設管の内周面の周方向に沿って、かつ、管軸方向に隙間なく順次配設し、既設管と合成樹脂製内面材との間に生じる空隙に硬化性充填材を充填したものも提案されている(例えば、特許文献3参照。)が、合成樹脂製内面材が既設管の内周面の周方向に沿って配設されるものであるため、内面材を管軸方向に凹凸を生じないように精度高く配設することができず、既設管路の補修長が長くなるに従い、内面材の配設の手数がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−286742号公報
【特許文献2】特開2002−310378号公報
【特許文献3】特開2006−316539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、内面材を精度高く配設することを可能にしながら、内面材を含む、構成部材の組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある管の内層構造及びそれに使用する連結部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の管の内層構造は、管の内周面に沿って、管軸方向に間隔をあけて設置した固定部材と、該固定部材に配設した、内面材が嵌着される第1の嵌着部を備えた連結部材と、該連結部材の第1の嵌着部に嵌着して、管軸方向に隣接する固定部材に架設した帯状の内面材とからなる管の内層構造であって、前記連結部材を、前記固定部材に対して分割して配設するようにするとともに、該連結部材を固定部材に設置するための第2の嵌着部を備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記第2の嵌着部によって、連結部材が固定部材に沿って位置調整可能に配設するようにすることができる。
【0009】
また、前記連結部材の第1の嵌着部を形成した面を面一に形成することができる。
【0010】
また、前記連結部材の各々に複数の第2の嵌着部を備えるようにすることができる。
【0011】
また、本発明の管の内層構造に使用する連結部材は、管の内周面に沿って設置される固定部材と内面材とを接合するために用いられる連結部材であって、全体形状が帯状をなし、内面材が嵌着される第1の嵌着部と、固定部材に設置するための第2の嵌着部とを備えてなることを特徴とする。
【0012】
この場合において、第1の嵌着部の嵌着方向及び第2の嵌着部の嵌着方向が、直交する方向になるようにすることができる。
【0013】
また、第2の嵌着部を、固定部材に嵌入するためのU字状の溝から構成することができる。
【0014】
また、連結部材に複数個の第2の嵌着部を備え、それぞれの第2の嵌着部のU字状の溝の開口方向を、基準点を挟んで180°異なる方向を向くようにすることができる。
【0015】
また、第2の嵌着部のU字状の溝を、並設された2本の固定部材に嵌入する長さを備えるようにすることができる。
【0016】
また、連結部材に複数個の第1の嵌着部及び第2の嵌着部を備え、該第1の嵌着部及び第2の嵌着部を帯状の連結部材の長手方向における同じ位置に設けるようにすることができる。
【0017】
また、連結部材が、接続片を介して、管の周方向に一体に接続されてなるようにすることができる。
【0018】
また、接続片が、管の周方向に隣接する連結部材の端部間の距離を調整するスペーサ機能を備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の管の内層構造及びそれに使用する連結部材によれば、連結部材を、前記固定部材に対して分割して配設するようにするとともに、該連結部材を固定部材に設置するための第2の嵌着部を備えるようにすることにより、管の内周面に沿って配置した固定部材に沿って正確に連結部材を配設することができ、帯状の内面材を管軸方向に隣接する固定部材に架設するようにしたことと相俟って、内面材を管軸方向に凹凸を生じないように精度高く配設することができる。
そして、内面材を含む、構成部材の組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある管の内層構造を提供することができる。
【0020】
また、前記第2の嵌着部によって、連結部材が固定部材に沿って位置調整可能に配設するようにすることにより、連結部材を固定部材に沿って自由度を持って配設することができる。
【0021】
また、前記連結部材の第1の嵌着部を形成した面を面一に形成するようにすることにより、内面材を作業性よく、かつ、周方向に凹凸を生じないように精度高く配設することができる。
【0022】
また、前記連結部材の各々に複数の第2の嵌着部を備えるようにすることにより、連結部材を固定部材に沿ってより正確に配設することができる。
【0023】
また、第1の嵌着部の嵌着方向及び第2の嵌着部の嵌着方向が、直交する方向になるようにすることにより、第1の嵌着部及び第2の嵌着部のそれぞれの嵌着状態を安定して維持することができる。
【0024】
また、第2の嵌着部を、固定部材に嵌入するためのU字状の溝から構成することにより、第2の嵌着部を固定部材に簡易に嵌入することができるとともに、嵌着状態を安定して維持することができる。
【0025】
また、連結部材に複数個の第2の嵌着部を備え、それぞれの第2の嵌着部のU字状の溝の開口方向を、基準点を挟んで180°異なる方向を向くようにすることにより、基準点を回転中心として連結部材を回転させることによって、第2の嵌着部を固定部材に簡易に嵌着させることができる。
【0026】
また、第2の嵌着部のU字状の溝を、並設された2本の固定部材に嵌入する長さを備えるようにすることにより、第2の嵌着部を、接続部分において2本が並設される固定部材に安定して嵌着させることができる。
【0027】
また、連結部材に複数個の第1の嵌着部及び第2の嵌着部を備え、該第1の嵌着部及び第2の嵌着部を帯状の連結部材の長手方向における同じ位置に設けるようにすることにより、内面材を嵌着させる際に第1の嵌着部にかかる力が、第2の嵌着部を介して固定部材によって支持されるため、当該力によって連結部材が撓むことがなく、内面材を連結部材の第1の嵌着部に確実に嵌着させることができる。
【0028】
また、連結部材が、接続片を介して、管の周方向に一体に接続されてなるようにすることにより、連結部材の一体性を向上することができる。
【0029】
また、接続片が、管の周方向に隣接する連結部材の端部間の距離を調整するスペーサ機能を備えるようにすることにより、連結部材及び内面材を敷設する管の曲率の違いによる連結部材と内面材との寸法のずれを、スペーサ機能を備えた接続片によって吸収することができ、内面材を連結部材の第1の嵌着部に確実に嵌着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の管の内層構造の一実施例を示し、(a)は管の横断面図、(b)は管の横断面の拡大図、(c)は管の縦断面の拡大図である。
図2】固定部材、連結部材、内面材及び内面材連接材を組み立てた状態を示し、(a)は管の縦断面方向の説明図(固定部材省略)、(b)は管の横断面方向の説明図(内面材及び内面材連接材省略)、(c)は管の縦断面方向の要部の説明図、(d)は異なる実施例の管の縦断面方向の要部の説明図である。
図3】固定部材、連結部材、内面材及び内面材連接材を組み立てた状態を示し、(a)は管の縦断面方向の説明図(固定部材省略)、(b)は管の横断面方向の説明図(内面材及び内面材連接材省略)、(c)は管の縦断面方向の要部の説明図、(d)は異なる実施例の管の縦断面方向の要部の説明図である。
図4】隣接する連結部材の接続構造を示し、(a)は管の縦断面方向の説明図(固定部材省略)、(b)は管の横断面方向の説明図(内面材及び内面材連接材並びに接続片省略)、(c)及び(d)は接続片の説明図である。
図5】本発明の管の内層構造の施工手順を示す説明図である。
図6】本発明の管の内層構造の施工手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の管の内層構造及びそれに使用する連結部材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0032】
図1図6に、本発明の管の内層構造を、老朽化した下水道管等の既設管に適用することにより、当該既設管を補修するようにした一実施例を示す。
この管の内層構造は、既設管1の内周面に沿って、既設管1の管軸方向に間隔をあけて設置した固定部材2と、この固定部材2に配設した、内面材4が嵌着される第1の嵌着部31及び固定部材2に設置するための第2の嵌着部32を備えた帯状の連結部材3と、この連結部材3の第1の嵌着部31に嵌着して、既設管1の管軸方向に隣接する固定部材2に架設した帯状の内面材4とからなり、連結部材3を分割して構成して、各々の連結部材3に備えるようにした第2の嵌着部32を介して固定部材2に配設するようにしている。
【0033】
この場合において、本発明の管の内層構造は、本実施例に示すような、断面が円形の管に限定されず、矩形等の任意の形状の管にも適用することができる。
【0034】
固定部材2は、既設管1の内周面に沿う形状、好ましくは、既設管1の内周面に沿って設置したときに、既設管1の内周面に対してほぼ均一な間隔を有して設置されるように、湾曲形成した複数の鉄筋、好ましくは、異形鉄筋等からなる棒状部材のほか、形鋼等の鋼材を好適に用いることができ、図5(a)に示すように、この固定部材2をアンカー等の任意の定着部材21を用いて既設管1の周方向に、閉ループ状に組み立てながら設置するようにする。
これにより、設置が容易で、作業性がよく、また、鉄筋や形鋼は、汎用材料のため、材料費が低廉である。
【0035】
連結部材3は、図2に示すように、1つの固定部材2に対して分割して配設するように構成してなり、1又は複数個(本実施例においては、両端部と、その間に3個の合計5個)の内面材4が嵌着される第1の嵌着部31及び固定部材2に設置するための第2の嵌着部32を備え、これらを連結片33で接続した帯状をした形状に形成するようにしている。
この場合、帯状の連結部材3の長手方向、第1の嵌着部31の嵌着方向及び第2の嵌着部32の嵌着方向が、それぞれ直交する方向になるように構成することが好ましい。
これにより、第1の嵌着部31の嵌着方向及び第2の嵌着部32の嵌着方向を、直交する方向になるように構成することによって、第1の嵌着部31及び第2の嵌着部32のそれぞれの嵌着状態を安定して維持することができることに加え、複数の連結部材3の連結状態を安定して維持することができる。
第1の嵌着部31と、第2の嵌着部32とは、必ずしも対応して備える必要はないが、帯状の連結部材3の長手方向の長さ等に応じて、連結部材3の両端部付近とそれ以外の場所に、合計3個以上、7個以下(例えば、30cm幅当たり)の個数を備えることが好ましい。
両端部付近のみ(2個)の場合は、連結部材3に中央部付近で、連結部材3と固定部材2や内面材4との隙間が大きくなるので好ましくない。ここで、中間部に備えた第2の嵌着部32は、固定部材2が固定部材2の周りに回転することを防止する機能を果たしている。
一方、8個以上あると連結部材3と固定部材2や内面材4との隙間は小さくなるが、施工性が劣り、材料も多く必要になるので好ましくない。
また、連結部材3に複数個の第1の嵌着部31及び第2の嵌着部32を備える場合には、第1の嵌着部31及び第2の嵌着部32を帯状の連結部材3の長手方向における同じ位置に設けるようにすることが好ましい。
これにより、内面材4を嵌着させる際に第1の嵌着部31にかかる力が、第2の嵌着部32を介して固定部材2によって支持されるため、当該力によって連結部材3が撓むことがなく、内面材4を連結部材3の第1の嵌着部31に確実に嵌着させることができる。
【0036】
連結部材3の材質は、特に限定されるものではなく、合成樹脂や表面処理した金属から構成することができるが、重量や製造のし易さ等から合成樹脂を好適に用いることができる。特に下水管を補修する際には、耐薬品性、耐摩耗性及び耐アルカリ性を有する合成樹脂を用いるようにする。そのような合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。なお、下水管以外の補修においても、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂製のものを好適に用いることができる。
連結部材3は、公知の任意の方法で製造することができる。合成樹脂が熱可塑性樹脂ならば、例えば、射出成形により製造することができ、金属ならば、例えば、溶接や鋳造により製造することができる。
【0037】
このうち、内面材4が嵌着される第1の嵌着部31は、上向きに開口した形状をするとともに、中間部の3個の第1の嵌着部31は、内面材4が抜け止め状に嵌着されるように、開口部に内面材4に形成した係止爪41aと係合する係止爪31aを形成するようにしている。
なお、係止爪31a及び係止爪41aの長さ(高さ方向の寸法)は適宜決めることができるが、既設管1の径に対して補修後の管の径が小さくなりすぎて流下能力が低下しないように長さが短いほうが好ましい。
また、両端部の第1の嵌着部31は、係止爪31aを形成せずに、隣接する内面材4の端縁同士を抜け止め状に嵌着する内面材連接材5を介して連結するようにしている。
このため、連結部材3と内面材4の既設管1の周方向の両端部の位置を一致させるようにしている。
これにより、内面材4の位置決めが容易になり、施工性が向上する。
この場合、連結部材3と内面材4の既設管1の周方向の両端部の位置を一致させるために、連結部材3と内面材4の既設管1の周方向の長さ及び幅を同じにするほか、連結部材3の長さが内面材4の幅の整数倍であり連結部材3の適切な位置に内面材4の両端縁を嵌着する部位を設けるようにしたり、内面材4の幅が連結部材3の長さの整数倍となるようにすることもできる。
また、連結部材3と内面材4との隙間は、1〜10mmが好ましい。
1mm未満の場合には、連結部材3及び内面材4の寸法誤差により、連結部材3の第1の嵌着部31と内面材4の被嵌着部の位置のずれを吸収し難くなるため好ましくない。一方、10mmを超えると、既設管1の径に対して補修後の管の径が小さくなりすぎ、流下能力が低下するので好ましくない。
【0038】
また、固定部材2に設置するための第2の嵌着部32は、固定部材2を嵌入するようにするための開口32aを横方向(既設管1の管軸方向)に形成したU字状の溝で構成するとともに、第2の嵌着部32の外側に沿って既設管1の内周面に当接するか、それより若干小さい寸法の補強リブを兼ねたスタビライザ34を設けるようにしている。
U字状の溝で構成した第2の嵌着部32は、図2(b)に示すように、並設された2本の固定部材2に嵌入する長さを備えるようにする。
これにより、第2の嵌着部32を、接続部分において2本が並設される固定部材2を抱持するようにして、固定部材2に安定して嵌着させることができる。
また、スタビライザ34を設けることにより、固定部材2に設置した第2の嵌着部32が、固定部材2の周りに回転することを防止することができる。
そして、第2の嵌着部32のうち、例えば、両端部の第2の嵌着部32は、必要に応じて、その内面に嵌入された固定部材2が抜け止め状に保持されるようにするための突起32bを形成するようにしている。
また、第2の嵌着部32は、既設管1の中心軸に向かう方向の寸法が、固定部材2の寸法(径)よりも、1〜15mm大きいことが好ましい。
これにより、連結部材3や内面材4を既設管1の周方向に並べた際に、連結部材3や内面材4の寸法誤差等による隙間が生じないように調整することができる。
なお、本実施例において、固定部材2に設置するための第2の嵌着部32は、横方向(既設管1の管軸方向)に開口32aを備えたものとしたが、開口の方向を放射方向(既設管1の内周面方向)としたり、開口を有しない孔形状(当該孔に固定部材2を挿通するようにする。)に形成することもできる。
また、本実施例において、固定部材2に設置するための第2の嵌着部32は、横方向(既設管1の管軸方向)の同じ方向に開口32aを備えたものとしたが、第2の嵌着部32の開口32aの方向を、基準点を挟んで180°異なる方向を向くようにすることもできる。
ここで、基準点は、帯状の連結部材3の長手方向の中間位置近傍に設定することが好ましい。
これにより、基準点を回転中心として連結部材3を回転させることによって、第2の嵌着部32を固定部材2に順次簡易に嵌着させることができる。
【0039】
連結部材3の第1の嵌着部31を形成した連結片33の内周側の面は、面一に形成するようにする。
これにより、内面材4を作業性よく、かつ、周方向に凹凸を生じないように精度高く配設することができる。具体的には、内面材4により連結部材3の第1の嵌着部31が見え難い状態においても、内面材4を連結部材3上を連結部材3の長さ方向に移動させることで、内面材4の係止爪41aに対応する連結部材3の第1の嵌着部31の位置を特定することができる。
また、第1の嵌着部31を設ける間隔が異なるように、例えば、本実施例に示すように、両端部の第1の嵌着部31と、この第1の嵌着部31と隣り合う第1の嵌着部31との間隔L1と、両端部以外の隣り合う第1の嵌着部31同士の間隔L2とが、異なるように設定することが好ましい。
これにより、内面材4の係止爪41aを位置が対応しない連結部材3の第1の嵌着部31に嵌着した場合、内面材4の他の係止爪41aと連結部材3の第1の嵌着部31とに位置ずれが生じて嵌着できなくなるため、内面材4の誤装着を未然に防止することができ、内面材4の係止爪41aに対応する連結部材3の第1の嵌着部31の位置を正確に特定することができる。
【0040】
連結部材3の第2の嵌着部32によって、連結部材3が固定部材2に沿って位置調整可能に配設することができる。
なお、連結部材3は、第2の嵌着部32を介して、既設管1の管軸方向にも位置調整可能である。
これにより、連結部材3を固定部材2に沿って自由度を持って配設することができる。
【0041】
このように、連結部材3を、1つの固定部材2に対して分割して配設するとともに、固定部材2に沿って位置調整可能に配設するための第2の嵌着部を備えて構成することにより、閉ループ状に組み立てられた固定部材2に、連結部材3を位置調整可能に、かつ、固定部材2に沿って正確に配設することができ、帯状の内面材4を既設管1の管軸方向に隣接する固定部材2に架設するようにしたことと相俟って、内面材4を既設管1の管軸方向に凹凸を生じないように精度高く配設することができる。
【0042】
連結部材3の長さ(固定部材2に沿う方向の長さ)は、既設管1の全周の1/2以下の60mm〜2400mmで、かつ、既設管1の全周に亘って施工した際に、連結部材3同士に隙間が生じないように設定することが好ましい。
60mm未満では短がすぎて全周に亘って施工するには本数が多くなりすぎ、施工性が劣る。一方、2400mmを超えると、固定部材2に嵌入し難くなり施工性に劣る。
【0043】
このように、連結部材3が、管の周方向に分割して形成される場合には、図4に示すように、管の周方向に隣接する連結部材3の端部同士を接続片35により接続するようにすることが好ましい。
連結部材3の端部同士の接続は、開口32aの背面側に設けたスタビライザ34に形成したスリット状の溝34aに、図4(c)又は(d)に示すような接続片35を取り付けることにより行うほか、ボルト・ナット等により固定して接続することもできる。
これにより、接続片35を介して接続された連結部材3の一体性を向上することができる。
【0044】
この場合、接続片35が、管の周方向に隣接する連結部材3の端部間の距離d(隙間の寸法)を調整するスペーサ機能を備えるようにすることができる。
このため、接続片35には、図4(c)に示すような、スタビライザ34に形成したスリット状の溝34aに挿入される軸部35aの両端に挟持部35b及び当接部35cを設けることにより連結部材3の端部間の距離dの最大値を規制するようにしたものや、図4(d)に示すような、軸部35aの両端に挟持部35bをそれぞれ設けることにより連結部材3の端部間の距離dを一定に規制するようにしたものを用いることができる。
これにより、連結部材3及び内面材4を敷設する既設管1の曲率(直径)の違いによる連結部材3と内面材4との寸法のずれを、スペーサ機能を備えた接続片35によって吸収することができ、内面材4を連結部材3の第1の嵌着部31に確実に嵌着させることができ、内面材4を取り付ける際の作業効率を向上することができる。
ここで、接続片35によって吸収するようにする連結部材3と内面材4との寸法のずれ、すなわち、連結部材3の端部間の距離dは、既設管1の曲率(直径)により異なり、直径1000mmの既設管1で、10mm程度、直径2000mmの既設管1で、5mm程度に設定するようにする。
なお、接続片35は、連結部材3と別部材で構成するようにしたが、連結部材3の一方側に一体に形成するようにすることもできる。
【0045】
本実施例において、帯状の内面材4及び内面材4を連結する内面材連接材5は、長手方向が既設管1の管軸方向になるように配設するようにする。
そして、内面材4及び内面材連接材5の材質は、特に限定されるものではなく、合成樹脂や表面処理した金属から構成することができるが、重量や製造のし易さ等から合成樹脂を好適に用いることができる。特に下水管を補修する際には、耐薬品性、耐摩耗性及び耐アルカリ性を有する合成樹脂を用いるようにする。そのような合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。なお、下水管以外の補修においても、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂製のものを好適に用いることができる。
内面材4及び内面材連接材5は、公知の任意の方法で製造することができる。合成樹脂が熱可塑性樹脂の場合やアルミニウムの場合で、かつ、長尺のものを得るには、例えば、押出成形により製造することができる。
【0046】
内面材4の幅(固定部材2に沿う方向の長さ)は、60mm〜600mmであることが好ましい。
60mm未満では幅が狭すぎて全周に亘って施工するには本数が多くなりすぎ、施工性が劣る。一方、600mmを超えると、人孔から搬入するのが難しい場合があり、かつ、幅が広すぎて狭い管内での施工性に劣る。
【0047】
内面材4及び内面材連接材5の長さ(既設管1の管軸方向の長さ)は、任意の長さでよいが、補修に必要な長さを有していることが好ましい。
内面材4や内面材連接材5が補修に必要な長さよりも短い場合は、内面材4や内面材連接材5を溶着、接着、溶接等により長手方向に接合することにより、接合部で漏水のない構造にすることが好ましい。
内面材4や内面材連接材5の接合方法は、材質に合わせて公知の方法が適用できる。例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂からなる場合は溶着により、ポリ塩化ビニルからなる場合は接着により、金属からなる場合は溶接により接合することができる。
【0048】
内面材4には、既設管1の周方向の端部に形成される凹状の接続用空間40を閉鎖するように延びる第1のはね40aを内面材4の基部側から延設するようにする。
これにより、第1のはね40aが接続用空間40の止水性を向上するとともに、接続用空間40のあそびを吸収し、さらに、内面材4の接続状態が解除される方向の力に対して抵抗となって内面材4の内面材連接材5による接続状態を安定させることができる。
ここで、内面材4の内面材連接材5による接続は、本実施例においては、図2(a)及び(c)に示すように、内面材4の端部に係止爪40bを形成し、隣接する内面材4の係止爪40b同士を内面材連接材5に形成した係止爪5bにより抱持するようにして行うようにしている。
また、内面材連接材5の内天部には、止水材7を配設し、係止爪40bの先端を当接することにより、内面材連接材5による止水を確実に行うことができるようにしている。
また、内面材連接材5の両側部には、内面材4の表面に達する第2のはね5aを延設することにより、第2のはねによって接続用空間40を閉鎖し、止水性を一層向上することができるようにしている。
また、内面材連接材5の第2のはね5aの下面から係止爪5bの両外側下端にかけて柔軟性を有する止水材8を配設することにより、第2のはね5aと内面材4の間及び係止爪5bと第1のはね40aの間の止水を確実に行うことができるようにするとともに、内面材4の内面材連接材5による接続状態の安定性を高めることができるようにしている。
なお、図3に示すように、第1のはね40aや止水材8は、省略することもできる。
【0049】
ところで、本実施例においては、上記のとおり、既設管1の周方向に隣接する内面材4の既設管1の周方向の両端部同士を突き合わせた状態で内面材連接材5を介して連結するようにしているが、図2(d)に示すように、既設管1の周方向に隣接する内面材4同士を、内面材4の既設管1の周方向の両端部に形成した嵌合部42、43を介して連結するようにすることもできる。
この場合も、既設管1の周方向の端部に形成される凹状の接続用空間40を閉鎖するように延びる第1のはね40aを内面材4の基部側から延設するようにすることができる。
これにより、第1のはね40aが接続用空間40の止水性を向上するとともに、接続用空間40のあそびを吸収し、さらに、内面材4の接続状態が解除される方向の力に対して抵抗となって内面材4同士の接続状態を安定させることができる。
ここで、内面材4同士の接続は、内面材4の嵌合部42に係止爪42aを形成し、この係止爪42aを隣接する内面材4の嵌合部43に形成した係止爪43aにより抱持するようにして行うようにしている。
また、内面材4の嵌合部43の内天部には、止水材7を配設し、係止爪43aの先端を当接することにより、嵌合部42、43による止水を確実に行うことができるようにしている。
一方の内面材4の嵌合部43に、隣接する他方の内面材4の表面に達する第2のはね40cを内面材4の基部側から延設するようにすることにより、第2のはね40cが接続用空間40を閉鎖し、止水性を一層向上することができるようにしている。
【0050】
ところで、連結部材3の第1の嵌着部31への内面材4の嵌着作業は、例えば、図5(b)に示すように、固定部材2に連結部材3を配設した後、図5(c)に示すように、人孔11の外で、内面材4を順次溶着、接着、溶接等により長手方向に接合しながら、人孔11から既設管1内に引き込んで行うようにする。
【0051】
ここで、図5及び図6(d)に示す例では、既設管1の下半分の固定部材2、下部の連結部材3及び内面材4の順に設置を完了してから、同様の手順で、既設管1の上半分の固定部材2、側部及び上部の連結部材3及び内面材4の順に設置を行うようにしているが、他の分割の仕方で固定部材2、連結部材3及び内面材4の順に設置を行うようにしたり、既設管1の全周に亘って固定部材2、連結部材3及び内面材4の順に設置を行うようにする等、各部材の設置の手順は任意に決定することができる。
そして、図6(e)に示すように、隣接する内面材4の端縁同士を抜け止め状に嵌着する内面材連接材5を介して連結し、内面材4及び内面材連接材5の既設管1の管軸方向の両端部の処理を行った後、図6(f)に示すように、既設管1の内周面と内面材4によって区画された環状の隙間にモルタル6を注入、硬化させて、施工を完了する。
【0052】
以上、本発明の管の内層構造及びそれに使用する連結部材について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の管の内層構造及びそれに使用する連結部材は、内面材を精度高く配設することを可能にしながら、内面材を含む、構成部材の組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある管の内層構造を提供できることから、老朽化した下水道管等の既設管の補修の用途に好適に用いることができるほか、例えば、新設管の内表面の仕上げの用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 既設管
2 固定部材
21 定着部材
3 連結部材
31 第1の嵌着部
31a 係止爪
32 第2の嵌着部
33 連結片
34 スタビライザ
35 接続片
4 内面材
40 接続用空間
40a 第1のはね
40b 係止爪
40c 第2のはね
41a 係止爪
5 内面材連接材
5a 第2のはね
6 モルタル
7 止水材
8 止水材
図1
図2
図3
図4
図5
図6