(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タンクプレートは、前記レバーに回動可能に連結され、前記タンク載置面が水平になるタンク載置姿勢と、前記タンク載置面が鉛直になる収納姿勢と、の間で回動可能であり、
前記タンクプレートとレバーとの連結部分には、前記タンクプレートの姿勢を前記タンク載置姿勢及び収納姿勢に保持するための姿勢保持機構が設けられる、
請求項3又は請求項4に記載の作業車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、作業者が軽い力で前記補給タンクが載置された前記タンク台を持ち上げることが可能となり、給油作業に要する作業者の労力を軽減することが可能な作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の作業車両は、
補給タンクに収容された燃料が燃料タンクに供給されるときに、前記補給タンクを支持するタンク支持部を備えた作業車両であって、
前記タンク支持部は、
機体に固定されるスタンドフレームと、
前記補給タンクを載置可能なタンク台と、
前記スタンドフレームと前記タンク台との間に介装され、前記タンク台がその姿勢を変えずに、前記スタンドフレームに対して上下動するように前記タンク台を支持するリンク機構と、
一端が前記スタンドフレームに接続され、他端が前記リンク機構に接続され、前記タンク台が所定の高さよりも高い位置に存在する場合には、前記リンク機構を介して前記タンク台を上方に付勢し、前記タンク台が前記所定の高さよりも低い位置に存在する場合には、前記リンク機構を介して前記タンク台を下方に付勢する付勢手段と、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の作業車両においては、
前記リンク機構の回動を規制して、前記タンク台の位置を最上位置に固定するロック機構を備える。
【0009】
請求項3に記載の作業車両においては、
前記スタンドフレームは、機体側部で上下方向に延在する形状を有し、
前記タンク台は、前記補給タンクを載置可能なタンク載置面を有するタンクプレートと、タンクプレートから下方に突出するレバーと、を備え、
前記リンク機構は、アッパリンクと、ロアリンクと、を有する平行リンク機構であり、
前記アッパリンクの一端は、前記スタンドフレームに接続され、前記アッパリンクの他端は、前記レバーに接続され、
前記ロアリンクの一端は、前記アッパリンクの一端よりも下方に配置されると共に、前記スタンドフレームに接続され、前記ロアリンクの他端は、前記アッパリンクの他端よりも下方に配置されると共に、前記レバーに接続される。
【0010】
請求項4に記載の作業車両においては、
前記ロック機構は、前記アッパリンクの中途部に回動可能に接続されるロックプレートを有し、
前記ロックプレートには、第一長穴部と、前記第一長穴部の端部から略直角に突出する第二長穴部とを有するL字形状の長穴が形成され、前記第一長穴部には前記ロアリンクの一端が貫通しており、前記ロアリンクの一端は前記タンク台の上下動時に前記第一長穴部を摺動し、
前記ロックプレートは、前記タンク台が最上位置まで移動されたときに、重力で回動して、前記ロアリンクの一端を前記第一長穴部と第二長穴部との連結部から前記第二長穴部へ摺動させることにより、前記タンク台の位置を前記最上位置に固定する。
【0011】
請求項5に記載の作業車両においては、
前記タンクプレートは、前記レバーに回動可能に連結され、前記タンク載置面が水平になるタンク載置姿勢と、前記タンク載置面が鉛直になる収納姿勢と、の間で回動可能であり、
前記タンクプレートとレバーとの連結部分には、前記タンクプレートの姿勢を前記タンク載置姿勢及び収納姿勢に保持するための姿勢保持機構が設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、前記タンク台が前記所定の高さよりも高い位置に存在するとき、前記付勢手段は前記リンク機構を介して前記タンク台を上方に付勢する。これにより、作業者は、軽い力で前記補給タンクが載置された前記タンク台を持ち上げることが可能となり、給油作業に要する作業者の労力を軽減することが可能となる。
また、前記タンク台が前記所定の高さよりも低い位置に存在するとき、前記付勢手段は前記リンク機構を介して前記タンク台を下方に付勢する。これにより、前記タンク台が低所にある状態を保持することが可能となる。従って、作業者は、前記タンク台に前記補給タンクを載せる作業、及び前記タンク台から前記補給タンクを下ろす作業を円滑に行うことが可能となり、給油作業に要する作業者の労力を軽減することが可能となる。
【0014】
請求項2においては、前記ロック機構により前記最上位置に配置された前記タンク台が意図せずに下降することを防止でき、作業者は、前記最上位置に配置された前記タンク台に前記補給タンクが載置された状態で、安定して給油作業を行うことができる。
【0015】
請求項3においては、前記作業車両は、前記平行リンク機構により、前記タンク載置面を水平に保持した状態で前記タンク台を上下動させることができる。
【0016】
請求項4においては、作業者は、前記ロックプレートにより、前記タンク台の位置を前記最上位置で固定するための作業を行う必要がなくなり、円滑に給油作業を行うことが可能となる。
【0017】
請求項5においては、前記タンクプレートが前記姿勢保持機構により前記タンク載置姿勢に保持されることにより、作業者は、前記補給タンクを前記タンクプレートのタンク載置面に安定的に載置することが可能となる。
また、前記タンクプレートが前記姿勢保持機構により前記収納姿勢に保持されることにより、前記作業車両の走行時に前記タンクプレートが作物等の障害物に引っ掛かかりにくくなり、前記作業車両の操作性の低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る作業車両の実施の一形態であるトラクタ1について説明する。
なお、本発明に係る作業車両はトラクタ1に限るものではなく、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であっても良い。
また、以下では、
図1〜
図9において、矢印U方向を上方向として上下方向を規定して、矢印F方向を前方向として前後方向を規定して、矢印L方向を左方向として左右方向を規定する。
【0020】
図1(a)に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その前部で左右一対の前輪3・3に支持されるとともに、その後部で左右一対の後輪4・4に支持される。前輪3・3の間には、フロントアクスルケース5が設けられる。
【0021】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、機体フレーム2の前部にはエンジン6が設けられ、エンジン6はボンネット7によって覆われている。ボンネット7内における後部上側(エンジン6の後上方)には燃料タンク14が配置される。燃料タンク14の上部には給油口が設けられる。前記給油口は、蓋(不図示)によって開閉自在に構成されている。ボンネット7の天板の後部における前記給油口と対向する位置には、開口7aが形成される。ボンネット7後部の右側、すなわち燃料タンク14の右側には、タンク支持部15が配置される。タンク支持部15は、補給タンク16を支持するものである。補給タンク16には、燃料タンク14に供給するための燃料が収容される。補給タンク16内の燃料は、手動式又は電動式のポンプ16aにより、補給タンク16から吸い上げられて、ボンネット7の開口7aを通じて、燃料タンク14の給油口から燃料タンク14に供給される。タンク支持部15についての詳細な説明は後述する。
【0022】
機体フレーム2の前後中途部から後部にかけては、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部11が設けられる。運転操作部11には、運転席12、操向操作用の操作ハンドル13、変速レバー、クラッチペダル等が設けられる。
【0023】
機体フレーム2の後部にはミッションケース8が設けられる。ミッションケース8内には、エンジン6からの動力を変速する変速装置が収納される。機体フレーム2の前後中途部にはクラッチハウジング9が設けられる。クラッチハウジング9内には、エンジン6から前記変速装置への動力伝達を断接するクラッチ(不図示)が収納される。
【0024】
かかる構成を備えたトラクタ1においては、エンジン6の動力がクラッチを介して前記変速装置へ伝達され、前記変速装置により変速されたあと、前輪3・3に伝達可能とされるとともに、後輪4・4に伝達可能とされる。そして、エンジン6の動力が伝達されることによって、左右一対の前輪3・3及び左右一対の後輪4・4が回転駆動され、トラクタ1の走行が行われる。
【0025】
また、エンジン6の動力が前記変速装置により変速されたあと、機体フレーム2に対して装着された図示しない耕耘装置等の作業機にも伝達可能とされる。このようにして、エンジン6の動力が伝達されることによって、種々の作業機が駆動される。
【0026】
以下では、タンク支持部15について詳細に説明する。
【0027】
図1(a)に示すように、タンク支持部15は、補給タンク16に収容された燃料がポンプ16aにより燃料タンク14に供給されるときに、燃料タンク14を支持するものである。
【0028】
図2に示すように、タンク支持部15は、スタンドフレーム17と、タンク台18と、リンク機構19と、ガススプリング(付勢手段)20と、ロック機構40と、を備える。
【0029】
図2に示すように、スタンドフレーム17は、正面視略L字形状に形成され、左右に延在する第一フレーム17aと、第一フレーム17aの右端から右上方に突出する第二フレーム17bと、を有する。スタンドフレーム17は、機体の右部に配置され、詳細にはエンジン6の右側に配置され、第一フレーム17aの左端が機体(機体フレーム2)にボルト等により固定されている。
【0030】
図3(a)及び
図4に示すように、タンク台18は、タンクプレート22と、レバー23と、を有する。
タンクプレート22は、板状の部材である。タンクプレート22の前部には、作業者がタンクプレート22を前後に移動する際に把持する第一つかみ穴22aが形成される。また、タンクプレート22の右部には、作業者がタンクプレート22を上下に移動する際に把持する第二つかみ穴22bが形成される。タンクプレート22の表面には補給タンク16を載置可能なタンク載置面22cが形成される。タンクプレート22の裏面における左右中央部には、前後方向に所定間隔を空けて一対のブラケット22d・22dが固定される。ブラケット22d・22dには、それぞれ貫通孔が形成される
【0031】
レバー23は、上下方向に延在する棒状の部材であり、その上端がタンクプレート22に連結されており、レバー23がタンクプレート22から下方に突出している。レバー23の上端とブラケット22d・22dには、ブラケット22d・22dの間にレバー23の上端が配置された状態で、ピン24が前後方向に貫通している。これにより、タンクプレート22が、レバー23の上端に、ピン24を中心にして回動可能に連結されている。
タンクプレート22は、タンク載置姿勢と収納姿勢との間で回動可能に構成されると共に、前記タンク載置姿勢と収納姿勢に保持可能に構成される。
図3(a)に示すように、前記タンク載置姿勢は、タンク載置面22cが上方を向き、水平になるときのタンクプレート22の姿勢である。
図3(b)に示すように、前記収納姿勢は、タンクプレート22が前記タンク載置姿勢から、ピン24を中心にして左方(機体側)に回動して、タンク載置面22cが左方(機体側)を向き、鉛直になるときのタンクプレート22の姿勢である。
【0032】
図2、
図4及び
図5に示すように、レバー23は、リンク機構19を介してスタンドフレーム17(第二フレーム17b)に接続されており、前後方向の位置が定位置に固定されている。これに対し、
図4及び
図5に示すように、タンクプレート22は、ピン24に沿って前後方向に摺動可能に構成されており、作業者は、第一つかみ穴22aを把持して、タンクプレート22を前後方向に摺動させることが可能である。
【0033】
タンクプレート22とレバー23との連結部分には、姿勢保持機構が設けられる。
前記姿勢保持機構は、タンクプレート22の姿勢を前記タンク載置姿勢及び収納姿勢に保持するものである。
【0034】
図3(a)、
図3(b)、
図4及び
図5に示すように、前記姿勢保持機構は、前後方向に移動可能に支持されるタンクプレート22と、レバー23に形成される第一ロック爪23a及び第二ロック爪23bと、タンクプレート22を後方へ付勢する弾性部材(コイルばね)26と、タンクプレート22に形成され、タンクプレート22が前記タンク載置姿勢の状態で、タンクプレート22に対して前方に力が加わっていないときには、第一ロック爪23aに係合して、タンクプレート22の回動を規制し、タンクプレート22が前記収納姿勢の状態で、タンクプレート22に対して前方に力が加わっていないときには、第二ロック爪23bに係合して、タンクプレート22の回動を規制し、タンクプレート22に対して前方に力が加えられ、タンクプレート22が前方に移動されたときには、ロック爪23a・23bと係合不能であり、タンクプレート22の回動を許容する溝部22eと、で構成される。
【0035】
第一ロック爪23aは、レバー23の上部から上方に突出する凸部である。第二ロック爪23bは、レバー23の上部から左方(機体側)に突出する凸部であり、第一ロック爪23aに対してピン24を中心に左方に90°の位相差を有する位置に設けられている。
【0036】
ばね26は、ピン24に巻回されており、レバー23と後側のブラケット22dとの間に配置されており、タンクプレート22(後側のブラケット22d)をレバー23に対して後方へ付勢している。
図4及び
図5に示すように、作業者が第一つかみ穴22aを把持して、タンクプレート22に対して前方に力を加えるとき、ばね26が収縮して、これにより、タンクプレート22がピン24に沿って前方へ摺動する。この状態から、作業者が第一つかみ穴22aを離して、タンクプレート22をフリーの状態(タンクプレート22に対して前方に力が加わっていない状態)にするとき、ばね26が復元して、これにより、タンクプレート22がピン24に沿って後方へ摺動する。
【0037】
図3(a)、
図3(b)、
図4及び
図5に示すように、溝部22eは、タンクプレート22の裏面に形成されており、ロック爪23a・23bに係合可能な凹形状に形成され、ロック爪23a・23bと係合することによってタンクプレート22のレバー23に対する回動を規制する。
図3(a)及び
図4に示すように、溝部22eは、タンクプレート22が前記タンク載置姿勢の状態、かつ、フリーの状態のときには、第一ロック爪23aに係合し、これにより、タンクプレート22のレバー23に対する回動を規制して、タンクプレート22の姿勢を前記タンク載置姿勢に固定する。
図3(b)に示すように、溝部22eは、タンクプレート22が前記収納姿勢の状態、かつ、フリーの状態のときには、第二ロック爪23bに係合し、これにより、タンクプレート22のレバー23に対する回動を規制して、タンクプレート22の姿勢を前記収納姿勢に固定する。
図5に示すように、溝部22eは、タンクプレート22が前方に力を加えられて前方へ摺動されたときには、レバー23(ロック爪23a・23b)の前方に存在して、ロック爪23a・23bと係合不能になり、これにより、タンクプレート22の回動を許容する。
【0038】
作業者は、タンクプレート22が前記タンク載置姿勢に固定された状態から、タンクプレート22の第一つかみ穴22aを把持して、タンクプレート22を前方へ摺動して、タンクプレート22を左方(機体側)へ回動して前記収納姿勢にした後、タンクプレート22を後方へ摺動して、溝部22eと第二ロック爪23bとを係合させることによって、タンクプレート22の姿勢を前記タンク載置姿勢から前記収納姿勢に変更する。作業者は、燃料補給時以外は、タンクプレート22を前記収納姿勢とすることで、作業者は運転席12に着座した状態で、右側の前輪3近傍を視認することができ、前方視界を確保することができる。
作業者は、タンクプレート22が前記収納姿勢に固定された状態から、タンクプレート22の第一つかみ穴22aを把持して、タンクプレート22を前方へ摺動して、タンクプレート22を右方へ回動して前記タンク載置姿勢にした後、タンクプレート22を後方へ摺動して、溝部22eと第一ロック爪23aとを係合させることによって、タンクプレート22の姿勢を前記収納姿勢から前記タンク載置姿勢に変更する。
【0039】
図2、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、リンク機構19は、スタンドフレーム17とタンク台18との間に介装され、タンク台18を上下動可能に支持するものである。
図4、
図5、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、リンク機構19は、アッパリンク27・27と、ロアリンク28と、を有する平行リンク機構である。
【0040】
アッパリンク27・27は、前後方向に所定間隔を空けて配置される一対の部材であり、中途部にて屈曲する形状を有する。アッパリンク27・27は、アッパリンク27・27の間に介装される連結プレート27aにより互いに連結されており、一体化されている。アッパリンク27・27の一端とスタンドフレーム17の第二フレーム17bの上端とには、アッパリンク27・27の一端の間に第二フレーム17bの上端が存在する状態で、ピン29が前後方向に貫通している。これにより、アッパリンク27・27の一端が第二フレーム17bの上端に接続されている。アッパリンク27・27の他端、タンクプレート22(ブラケット22d・22d)及びレバー23の上端には、アッパリンク27・27の他端とブラケット22d・22dとが前後に交互に配置され、かつ、レバー23の上端が前側のアッパリンク27及びブラケット22dと、後側のアッパリンク27及びブラケット22dとの間に存在する状態で、ピン24が前後方向に貫通している。これにより、アッパリンク27・27の他端が、レバー23の上端及びタンクプレート22に接続されている。
【0041】
ロアリンク28は、両端30・31が直角に屈曲した棒状の部材である。ロアリンク28の一端30は、スタンドフレーム17の第二フレーム17bの上下中途部に設けたステー17cを後方から貫通しており、これにより、ロアリンク28の一端30が第二フレーム17bの上下中途部に接続されている。ロアリンク28の他端31はレバー23の下端に後方から貫通しており、これにより、ロアリンク28の他端31がレバー23の下端に接続されている。
【0042】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、リンク機構19は、アッパリンク27・27及び第二フレーム17bの接続箇所(ピン29)と、アッパリンク27・27及びレバー23の接続箇所(ピン24)とを結んだ線分αが、ロアリンク28及び第二フレーム17bの接続箇所(ロアリンク28の一端30)と、ロアリンク28及びレバー23の接続箇所(ロアリンク28の他端31)とを結んだ線分βと平行になり、線分αの左右方向の位置が線分βの左右方向の位置と等しくなり、かつ、線分αの長さが線分βの長さと等しくなるように構成されている。
【0043】
タンク台18(タンクプレート22)が上方移動されるとき、線分αと線分βとが平行な状態を保持して、線分αがピン29を中心にして上方に回動すると共に、線分βがロアリンク28の一端30を中心にして上方に回動する。これにより、タンク台18がその姿勢を変えずに、上方に移動(回動)する。これに対し、タンク台18(タンクプレート22)が下方移動されるとき、線分αと線分βとが平行な状態を保持して、線分αがピン29を中心にして下方に回動すると共に、線分βがロアリンク28の一端30を中心にして下方に回動する。これにより、タンク台18がその姿勢を変えずに、下方に移動(回動)する。従って、作業者は、補給タンク16の姿勢を変えずに、補給タンク16を倒すことなく、補給タンク16をタンク台18により上下動させることができる。
リンク機構19は、タンク台18を最上位置と最下位置との間で移動可能に支持する。
前記最上位置は、タンク台18の移動範囲内における最も上方の位置であり、作業者が補給タンク16内の燃料をポンプ16a等により燃料タンク14に供給するときのタンク台18の位置であり、燃料タンク14の高さ、ボンネット7の開口7aの高さ等を考慮して適宜決定される。
前記最下位置は、タンク台18の移動範囲内における最も下方の位置であり、作業者がタンク台18(タンク載置面22c)に補給タンク16を載せる作業、及びタンク台18から補給タンク16を下ろす作業を行うときのタンク台18の位置であり、作業者の作業のし易さ等を考慮して適宜決定される。
【0044】
アッパリンク27・27は、タンクプレート22と干渉せずに、タンクプレート22をボンネット7の近傍にて、十分に低い位置まで回動させるために、中途部にてロアリンク28側に屈曲する形状を有している。アッパリンク27・27は、タンク台18が前記最上位置に存在するときに、正面視略L字状の姿勢になり、タンク台18が前記最下位置に存在するときに、背面視略L字状の姿勢になる。
図7(a)に示すように、アッパリンク27・27が中途部にてロアリンク28側に屈曲する形状を有することにより、タンク台18が下方移動されて、アッパリンク27・27の他端(ピン24)がピン29を中心にして下方に回動するときに、アッパリンク27・27の中途部(ピン33)がピン29を中心にして左方向(機体側)に回動する。
図7(b)に示すように、タンク台18が上方移動されて、アッパリンク27・27の他端(ピン24)がピン29を中心にして上方に回動するときに、アッパリンク27・27の中途部(ピン33)がピン29を中心にして右方向(機体の外側)に回動する。
【0045】
ガススプリング20は、上下に延在する長手形状を有し、長手方向に伸縮自在であり、長手方向に伸長する方向に押圧力(ガス反力)を発生する。
図4、
図5、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ガススプリング20の下端は、ピン32によりスタンドフレーム17の第二フレーム17bの下端に設けたステー17dに左右方向に回動可能に接続されている。ガススプリング20の他端は、ピン33により後側のアッパリンク27の中途部に左右方向に回動可能に接続されている。これにより、タンク台18が上下動されて、アッパリンク27・27の他端(ピン24)がピン29を中心にして上下方向に回動するときに、ガススプリング20の他端(ピン33)がピン29を中心にして左右方向に回動する。
【0046】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ピン33の回動範囲に関しては、タンク台18が低所に存在する場合は、アッパリンク27・27及び第二フレーム17bの接続箇所(ピン29)と、ガススプリング20及び第二フレーム17bの接続箇所(ピン32)とを結んだ線γよりも左側(機体側)にピン33が存在し、タンク台18が高所に存在する場合は、線γよりも右側(機体の反対側)にピン33が存在するように構成されている。すなわち、タンク台18が高所から低所へ移動されるときに、ピン33は、左側(機体側)へ回動して線γを通過し、タンク台18が低所から高所へ移動されるときに、ピン33は、右側(機体の反対側)へ回動して線γを通過するように構成されている。つまり、タンク台18が低所(前記最下位置)から高所(前記最上位置)、又は低所から高所へ移動されるときに、ピン33は、ガススプリング20が最も圧縮される死点(線γ)を通過する構成となる。
なお、線γは、上方に向かうにしたがって、右側(機体の反対側)に傾斜している。
【0047】
図7(a)に示すように、ピン33が線γよりも左側(機体側)に存在するとき、ガススプリング20が線γに対して左側へ傾斜している。この状態から、ガススプリング20が長手方向に伸長する方向に押圧力を発生することによって、ピン33がピン29を中心にして左側に回動するように、ガススプリング20がアッパリンク27・27に対して押圧力を付与する。これにより、タンク台18が下方へ移動するように付勢される。
図7(b)に示すように、ピン33が線γよりも右側(機体の反対側)に存在するとき、ガススプリング20が線γに対して右側へ傾斜している。この状態から、ガススプリング20が長手方向に伸長する方向に押圧力を発生することによって、ピン33がピン29を中心にして右側に回動するように、ガススプリング20がアッパリンク27・27に対して押圧力を付与する。これにより、タンク台18が上方へ移動するように付勢される。
すなわち、ガススプリング20は、ピン33が線γよりも右側(機体の反対側)に存在して、タンク台18が所定の高さよりも高い位置に存在する場合には、リンク機構19を介してタンク台18を上方に付勢し、ピン33が線γよりも左側(機体側)に存在して、タンク台18が前記所定の高さよりも低い位置に存在する場合には、リンク機構19を介して、タンク台18を下方に付勢する。なお、前記所定の高さは、ピン33が線γ上に存在するときのタンク台18の上下方向の位置である。
このような構成において、作業者は、タンク台18を低所に配置した状態で補給タンク16をタンクプレート22のタンク載置面22cに載置する。そして、作業者はこの状態からタンク台18を右方へ引っ張る(機体の反対側へ回動させる)だけで、ピン33が線γ(死点)を越えることとなり、その後はガススプリング20の付勢力により上方への持ち上げ力がアシストされるので、作業者は軽い力で重い補給タンク16を高所まで持ち上げることができる。
また、タンク台18を付勢する付勢手段にガススプリング20を用いることによって、タンク台18が急激に上下動することが抑制される。これにより、補給タンク16が載置されたタンク台18がスムーズに上下動され、補給タンク16が安定した状態で上下動される。
【0048】
なお、ガススプリング20の代わりに、線γの延長線上におけるピン29よりも上方に位置する箇所と、ピン33との間に引っ張りバネを介装し、前記引っ張りバネの収縮力により、ピン33が線γよりも右側(機体の反対側)に存在する場合には、タンク台18がリンク機構19を介して上方に付勢され、ピン33が線γよりも左側(機体側)に存在する場合には、タンク台18がリンク機構19を介して下方に付勢されるように構成してもよい。
【0049】
ロック機構40は、
図4、
図5、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、スタンドフレーム17とリンク機構19との間に介装されるロックプレート21と、係止ピンを兼ねるロアリンク28の一端30と、を有する。
ロックプレート21は、鉛直に延在する平板形状を有する部材である。ロックプレート21の鉛直面には、正面視略L字形状の長穴34が形成されている。長穴34は、上下に延在する形状を有する第一長穴部34aと、第一長穴部34aの下端から左側(機体側)に略直角に突出する第二長穴部34bと、を有している。ロックプレート21は、アッパリンク27・27の間に配置されており、ロックプレート21の上端は、ピン35により前側のアッパリンク27の中途部に左右方向に回動可能に接続されている。なお、ピン35の軸心と、ピン33(
図7(a)及び
図7(b)参照)の軸心とは同一軸線上に配置される。長穴34の第一長穴部34aにはロアリンク28の一端30が後方から貫通している。
【0050】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、タンク台18が下方移動されるとき、ロックプレート21の上端がピン29を中心にして左方(機体側)に回動し、これに対し、タンク台18(タンクプレート22)が上方移動されるとき、ロックプレート21の上端(ピン35)がピン29を中心にして右方(機体の反対側)に回動する。
タンク台18が上下動されるとき、ロアリンク28の一端30はロックプレート21の第一長穴部34a内を摺動する。
タンク台18が上下動される場合で、ロックプレート21の上端(ピン35)が点X(ピン35の回動軌跡と、ロアリンク28の一端30から上方に延在する線との交点)から離間するとき、ロアリンク28の一端30が長穴34の第一長穴部34aの下部(第一長穴部34aと第二長穴部34bとの連結部)へ向かって摺動する。これに対し、タンク台18が上下動される場合で、ロックプレート21の上端(ピン35)が点Xに近接するとき、ロアリンク28の一端30が長穴34の第一長穴部34aの上部(第一長穴部34aと第二長穴部34bとの連結部の反対側)へ向かって摺動する。
【0051】
図8(b)及び
図9に示すように、タンク台18(タンクプレート22)が前記最上位置まで移動されたとき、すなわちタンク台18が上方移動されて、ロアリンク28の一端30が第一長穴部34aと第二長穴部34bとの連結部に到達したとき、ロックプレート21が重力で、ピン35を中心にして右方(機体の反対側)に回動して、ロアリンク28の一端30が、第一長穴部34aと第二長穴部34bとの連結部から第二長穴部34bへ摺動する。これにより、ロアリンク28の一端30が長穴34の第一長穴部34aを摺動できない状態になる。従って、アッパリンク27・27及びロアリンク28のスタンドフレーム17に対する回動が規制され、タンク台18(タンクプレート22)の位置が前記最上位置に固定される。
従って、ロック機構40により前記最上位置に配置されたタンク台18が意図せずに下降することを防止でき、作業者は、前記最上位置に配置されたタンク台18に補給タンク16が載置された状態で、安定して給油作業を行うことができる。
なお、作業者は、タンク台18を下降させる場合には、ロックプレート21を左方(機体側)へ回動して、ロアリンク28の一端30を第二長穴部34bから第二長穴部34bと第一長穴部34aとの連結部へと摺動させた後、タンクプレート22の第二つかみ穴22bを把持して、タンクプレート22を下方へ回動させればよい。
【0052】
なお、ロック機構40は、ロアリンク28の一端30(係止ピン)をロックプレート21の第二長穴部34bに係合させる構成に限定するものではなく、ロックプレート21に固定孔を形成すると共に、スタンドフレーム17に固定孔を形成して、タンク台18が前記最上位置に存在する状態で、ロックプレート21の固定孔とスタンドフレーム17の固定孔とにピンが挿入されることで、アッパリンク27・27及びロアリンク28のスタンドフレーム17に対する回動を規制して、タンク台18の位置を前記最上位置に固定してもよい。また、ロックプレート21の代わりにロッドを用い、タンク台18が前記最上位置に存在する状態で、当該ロッドの一端をアッパリンク27の中途部に枢支して、当該ロッドの他端をスタンドフレーム17に設けた凹部に係合させて、当該ロッドをアッパリンク27とスタンドフレーム17との間で突っ張らせることで、アッパリンク27・27及びロアリンク28のスタンドフレーム17に対する下方回動を規制して、タンク台18の位置を前記最上位置に固定してもよい。
【0053】
以上のように、トラクタ1は、
補給タンク16に収容された燃料が燃料タンク14に供給されるときに、補給タンク16を支持するタンク支持部15を備えたトラクタ1であって、
タンク支持部15は、
機体(機体フレーム2)に固定されるスタンドフレーム17と、
補給タンク16を載置可能なタンク台18と、
スタンドフレーム17と前記タンク台18との間に介装され、タンク台18がその姿勢を変えずに、スタンドフレーム17に対して上下動するようにタンク台18を支持するリンク機構19と、
一端がスタンドフレーム17に接続され、他端がリンク機構19に接続され、タンク台18が所定の高さよりも高い位置に存在する場合には、リンク機構19を介してタンク台18を上方に付勢し、タンク台18が前記所定の高さよりも低い位置に存在する場合には、リンク機構19を介してタンク台18を下方に付勢するガススプリング20と、
を備える。
前記所定の高さは、ガススプリング20の他端(ピン33)が、アッパリンク27・27及び第二フレーム17bの接続箇所(ピン29)と、ガススプリング20及び第二フレーム17bの接続箇所(ピン32)とを結んだ線γ上に存在するときのタンク台18の上下方向の位置である。
【0054】
これによると、タンク台18が前記所定の高さよりも高い位置に存在するとき、ガススプリング20はリンク機構19を介してタンク台18を上方に付勢する。これにより、作業者は、軽い力で補給タンク16が載置されたタンク台18を持ち上げることが可能となり、給油作業に要する作業者の労力を軽減することが可能となる。
また、タンク台18が前記所定の高さよりも低い位置に存在するとき、ガススプリング20はリンク機構19を介してタンク台18を下方に付勢する。これにより、タンク台18が低所(前記最下位置)にある状態を保持することが可能となる。従って、作業者は、タンク台18に補給タンク16を載せる作業、及びタンク台18から補給タンク16を下ろす作業を円滑に行うことが可能となり、給油作業に要する作業者の労力を軽減することが可能となる。
【0055】
また、トラクタ1においては、
リンク機構19の回動を規制して、タンク台18の位置を最上位置に固定するロック機構40を備える。
【0056】
これによると、ロック機構40により前記最上位置に配置されたタンク台18が意図せずに下降することを防止でき、作業者は、前記最上位置に配置されたタンク台18に補給タンク16が載置された状態で、安定して給油作業を行うことができる。
【0057】
また、トラクタ1においては、
スタンドフレーム17は、機体側部で上下方向に延在する形状を有し、
タンク台18は補給タンク16を載置可能なタンク載置面22cを有するタンクプレート22と、タンクプレート22から下方に突出するレバー23と、を備え、
リンク機構19は、アッパリンク27・27と、ロアリンク28と、を有する平行リンク機構であり、
アッパリンク27・27の一端は、スタンドフレーム17に接続され、アッパリンク27・27の他端は、レバー23に接続され、
ロアリンク28の一端は、アッパリンク27・27の一端よりも下方に配置されると共に、スタンドフレーム17に接続され、ロアリンク28の他端は、アッパリンク27・27の他端よりも下方に配置されると共に、レバー23に接続される。
【0058】
これによると、トラクタ1は、前記平行リンク機構により、タンク載置面22cを水平に保持した状態でタンク台18を上下動させることができる。
【0059】
また、トラクタ1においては、
ロック機構40は、アッパリンク27・27の中途部に回動可能に接続されるロックプレート21を有し、
ロックプレート21には、第一長穴部34aと、第一長穴部34aの端部から略直角に突出する第二長穴部34bとを有するL字形状の長穴34が形成され、第一長穴部34aにはロアリンク28の一端30が貫通しており、ロアリンク28の一端30はタンク台18の上下動時に第一長穴部34aを摺動し、
ロックプレート21は、タンク台18が前記最上位置まで移動されたときに、重力で回動して、ロアリンク28の一端30を第一長穴部34aと第二長穴部34bとの連結部から第二長穴部34bへ摺動させることにより、タンク台18の位置を前記最上位置に固定する。
【0060】
これによると、作業者は、ロックプレート21により、タンク台18の位置を前記最上位置で固定するための作業を行う必要がなくなり、円滑に給油作業を行うことが可能となる。
【0061】
また、トラクタ1においては、
タンクプレート22は、レバー23に回動可能に連結され、タンク載置面22cが水平になるタンク載置姿勢と、タンク載置面22cが鉛直になる収納姿勢と、の間で回動可能であり、
タンクプレート22とレバー23との連結部分には、タンクプレート22の姿勢を前記タンク載置姿勢及び収納姿勢に保持するための前記姿勢保持機構が設けられる。
【0062】
これによると、タンクプレート22が前記姿勢保持機構により前記タンク載置姿勢に保持されることにより、作業者は、補給タンク16をタンクプレート22のタンク載置面22cに安定的に載置することが可能となる。
また、タンクプレート22が前記姿勢保持機構により前記収納姿勢に保持されることにより、トラクタ1の走行時にタンクプレート22が作物等の障害物に引っ掛かかりにくくなり、トラクタ1の操作性の低下が抑制される。