【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は請求項1に記載の方法によって解決される。有利な変形形態は、請求項1に従属する請求項から明らかである。
【0015】
プラズマチャンバシステム内で基材上に微結晶シリコンを堆積するための該方法は、
プラズマチャンバシステムが、プラズマ開始前には、反応性のシリコン含有ガスおよび水素を、または水素だけを含むステップ、
プラズマを開始するステップ、
プラズマ開始後、チャンバシステムに連続的に反応性のシリコン含有ガスだけを供給する、またはプラズマ開始後、チャンバシステムに連続的に反応性のシリコン含有ガスおよび水素を含む混合物を供給し、その際、チャンバ内に供給する際の反応性のシリコン含有ガスの濃度を0.5%超に調整するステップ、および
プラズマ出力を、0.1〜2.5W/cm
2電極面の間に調整するステップ、および
0.5nm/s超の堆積速度を選択し、かつ1000nmの厚さを超えない微結晶層を基材上に堆積するステップ、
を含む。
【0016】
シラン濃度(=シラン流量/(シラン流量および水素流量の合計))は、微結晶吸収層の堆積が、μc−Si:H/a−Si:H成長遷移付近で行われるように調整される。その理由は、μc−Si:H吸収層の最適な特性が、結晶割合が高いことで達成されるのではなく、アモルファス部分と結晶部分を含む遷移領域内の材料が最もよい特性を示すことにある。この有利な特性の原因としては、アモルファスシリコンによるシリコン晶子の最適な界面不動態化が考えられる。
【0017】
微結晶層を堆積させるため、プラズマ開始の前および/または後に、プロセスガス(シリコン含有ガスおよび水素)に例えばアルゴンのような不活性ガスを混合してもよい。
【0018】
発生器出力の増大は、それ以外のプロセスパラメータが同じであれば、成長する層の結晶体積割合をより高くする。
【0019】
本発明による方法は、工業的規模での太陽電池の大量生産のために特に有利な特徴を有することが有利である。本方法は、比較的薄いμc−Si:H吸収層を、同時に高い堆積速度で堆積させる。微結晶吸収層が、単層型セルのために堆積されるか、積層型太陽電池のために堆積されるかは重要でない。薄い微結晶吸収層で堆積速度を上昇させる対策だけが、選択された基材およびそれに関連する太陽電池の構造に関係なく本発明の課題を解決する。
【0020】
プラズマチャンバシステムという概念は、太陽電池の堆積のために慣用のすべてのプラズマチャンバを含んでいる。したがって本方法は、原理的には単一チャンバのためにも、および複数の単一チャンバから成る組み合わされたプラズマチャンバシステムのためにも適用することができる。
【0021】
プラズマチャンバシステムは、例えば真性a−Si:Hおよびμc−Si:H吸収層を製造するための1つの単一チャンバ(iチャンバ)、pドープまたはnドープされたa−Si:Hおよびμc−Si:H層を製造するためのもう1つの単一チャンバ(ドープチャンバ)、ならびに基材の取込みおよび送出しのためのローディングチャンバ(Ladekammer)を含むことができる。
【0022】
堆積速度が0.5nm/s超に上昇しかつ同時に層厚が1000nm未満の薄いμc−Si:H吸収層の場合に、堆積速度の上昇はさほどの効率損失を引き起こさなくなることが、本発明の枠内で認識された。その際、堆積速度および層厚に関する範囲内の値のすべての組合せが可能である。これとは異なり、これまでの従来技術では好ましいとされた層厚1000nm超の厚い微結晶吸収層の場合、堆積速度が例えば1nm/sから2.5nm/sに上昇することは、明らかな効率損失を引き起こす。
【0023】
堆積速度は、プラズマ出力または発生器出力に依存して最大5nm/sまで選択することができる。
【0024】
ドープチャンバ内でpドープまたはnドープされたシリコン層を製造するため、シリコン含有ガスおよびH
2から成るプロセスガス混合物に、追加的にホウ素含有ガス(例えばトリメチルボロンB(CH
3)
3)またはリン含有ガス(例えばホスフィンPH
3)を混合することができる。真性シリコン吸収層を製造する際のドープ物質のキャリーオーバーをできるだけ回避するため、iチャンバとドープチャンバは好ましくはスルースゲート(Schleusentor)を介して互いに隔てられている。
【0025】
iチャンバは、1つまたは複数の異なる高周波電極を内包することができ、この電極は、均質なガス供給のために「シャワーヘッド」のデザインを有することができ、この電極の電極面は、垂直または水平に方向づけることができる。コーティングすべき基材は、搬送システムを用いて、シリコン堆積が行われるべきである電極の方へ動かすことができる。基材が目標位置に着くと、加熱システムが基材を、堆積開始前に所望の基材温度に加熱する。高周波電極と基材の間隔は、例えば5〜25mmの間の値に調整することができる。
【0026】
ここで堆積速度という概念は、時間単位ごとに堆積される吸収層の厚さと定義される。堆積速度は、原理的にはプラズマ出力または発生器出力が増すにつれて上昇する。
【0027】
電極間隔が5〜25ミリメートル、好ましくは10〜25ミリメートルの場合、好ましくは、13.56〜約100MHzのプラズマ励起周波数を選択できる。
【0028】
本方法中のプラズマチャンバ内の堆積圧力は、1つまたは複数のプラズマチャンバ内で1〜25mbarの間に調整されることが好ましい。堆積圧力の上昇は、それ以外のプロセスパラメータが同じであれば、成長する層の結晶体積割合をより低くする。
【0029】
本方法は、本発明のさらなる特に有利な一実施形態では、プラズマチャンバシステム内のベース圧力が少なくとも10
−6mbarまたはさらにそれ以上、つまり例えば10
−5mbarまたは例えば10
−4mbarであるように実施することができる。範囲内のすべての値が可能である。
【0030】
ベース圧力とは、プロセスガス導入前の真空状態のプラズマチャンバまたはプラズマチャンバシステム内の支配的な圧力であり、とりわけチャンバのデザインおよび使用するガスの純度に依存する。
【0031】
従来技術によれば、小さな研究設備のプラズマチャンバまたはプラズマチャンバシステムは、約10
−8mbarのベース圧力を有する。これは、言及した純度の高い度合いを義務付けており、従来技術に基づく方法は、太陽電池の所望の高い効率を得るため、この高い純度で稼働されなければならない。こうして、μc−Si:H吸収層中の酸素含有率は、特定の限界値を決して超えるべきでなく、さもなければμc−Si:Hをベースとする単層型太陽電池の達成可能な効率も、a−Si:H/μc−Si:Hをベースとする積層型太陽電池の達成可能な効率も、顕著で望ましくない効率損失を被るという認識が定着した。したがってこれに対応してプロセス精度に関し従来技術によれば、高いセル効率を達成するため、μc−Si:H吸収層中の酸素含有率が常に許容限界値未満にとどまることを保証しなければならなかった。従来技術によればこの限界値は、μc−Si:H吸収層の場合、約2
*10
19/cm
3の酸素原子およびμc−Si:H吸収層の標準層厚>1000nmである。これには、使用すべきポンプシステムのため、プロセス精度に対して高い設備費用が伴った。稼働費用そのものも同様に比較的高い。なぜならプロセスガス、基本的にはシランまたはシリコン含有ガス、一般的にはさらに水素の純度も高く選択しなければならなかったからである。
【0032】
本発明の枠内では、特に有利には0.5nm/s超の高い堆積速度で、同時に堆積された微結晶吸収層が1000nm未満の小さな層厚の場合に相乗効果が生じ、このやり方では、最大10
−6mbar、10
−5mbar、またはそれ以上の非常に高いベース圧力にもかかわらず、セルの効率損失が少ししか生じず、この効率損失は、プロセス技術的観点から絶対的に許容可能であることが認識された。これら3つのパラメータ、堆積速度>0.5nm/s、層厚<1000nm、およびベース圧力>10
−6mbarに関してはここでも、本方法のためにそれぞれの範囲内の値を採用することができる。
【0033】
本発明による高い堆積速度は、低い堆積速度に比べて、同じベース圧力の場合、成長するμc−Si:H層中に取り込まれる酸素量を少なくすることが認識された。さらに、吸収層が薄い場合、μc−Si:H単層型太陽電池における許容可能であって、まだ効率損失が生じない酸素含有率が、厚い吸収層の場合より高いことが認識された。ここでも同じことが積層型太陽電池のすべての形態に当てはまる。
【0034】
上述の発見、つまり吸収層の厚さに依存した、達成可能なμc−Si:H単層型太陽電池効率への堆積速度および/または酸素含有率の影響に基づく結論として、μc−Si:H吸収層を内包する薄層ソーラーモジュールの場合、生産費用の最適条件は、明らかにより小さい総層厚にシフトする。これは積層型太陽電池にも当てはまる。
【0035】
この場合、本発明による方法の枠内で、達成可能なセル効率が僅かに減少するかもしれないが、この欠点は、より短い製造時間だけでなく、層厚の減少ならびに場合によってはプロセス精度(ガス純度)へのより低い要求および製造されたセルの酸素含有率に基づき、十分すぎるほど補償され、かつこの場合、太陽電池製造時間は、μc−Si:H吸収層の堆積速度の上昇に基づき、追加的な効率損失なしでもう一段格段に短縮できることが認識された。つまり生産は、プロセス精度への明らかにより低い要求で実施することができ、これは費用の有意な利点、すなわちより少ない設備費用およびより少ないプロセスガス費用をもたらす。これに加えてさらに考慮すべきは、より薄いa−Si:H/μc−Si:Hベースの積層型太陽電池は劣化がより少ないことである。したがってこれにより、標準的な総層厚のa−Si:H/μc−Si:Hベースの積層型太陽電池に対する安定した効率での差は、初期効率でのそれより小さくなる。
【0036】
本発明のさらなる一変形形態では、チャンバに供給され、かつチャンバから導出されるガスまたはガス混合物の流量を、本方法中は一定の堆積圧力が形成されるよう調節するように、本方法を実施することができる。
【0037】
特に、堆積速度は約1.0〜2.5nm/sの間で選択することができ、微結晶層は厚さ200〜800nm、特に400〜600nmで堆積することができる。この場合、前述の方法により規則的に、範囲内の値でのすべての組合せに対し、同様に効率が約7〜8%のμc−Si:H単層型太陽電池を実現することができる。a−Si:H/μc−Si:Hベースの積層型太陽電池は、a−Si:H部分に基づき最初は光誘起によって劣化し、その後でようやく安定した効率を示すが、約9〜11%のより高い初期効率およびさらに約8〜10%のより高い安定した効率も簡単に達成することができる。
【0038】
プラズマ開始後、チャンバに連続的に反応性のシリコン含有ガスだけを0.5sccm〜20sccm/100cm
2コーティング面、特に0.5sccm〜10sccm/100cm
2コーティング面の体積流量で供給することができる。これは例えば、チャンバまたはチャンバシステムがプラズマ開始の始まる前に水素を含み、シリコン含有ガスを含まない場合に適用される。同時に、チャンバ内に存在するガス混合物は少なくとも一部はチャンバから導出することができる。本方法では不活性ガスを混合してもよい。
【0039】
微結晶シリコンを堆積するための本方法は、特に積層型太陽電池を製造するために利用することができる。その場合、本方法では基材として、例えば電気コンタクト層およびその上に堆積された微結晶n層が選択される。タンデム構成の場合の太陽電池は、完成状態ではn−i−p−n−i−p構成を有する。電気コンタクト層としては例えば金属−ZnO層または金属−SnO
2層または別のTCO層を選択することができる。n−i−p−n−i−p層の電気コンタクト層としては、反射体としての金属層だけを選択することもできる。単層型セルは、対応するa−Si:H部分なしで作製される。
【0040】
ただし基材として例えばガラス−TCO−a−Si:H層系およびその上に堆積された微結晶p層を選択することもできる。金属−TCO−a−Si:H層系およびその上に堆積された微結晶p層を選択してもよい。この場合でのタンデム構成では、太陽電池は完成状態でp−i−n−p−i−n構成を有する。単層型セルのためには、基材は対応するa−Si:H部分なしで選択される。もちろん積層型太陽電池を製造するためにその他の基材を使用してもよい。
【0041】
つまり本方法で製造された太陽電池は、少なくとも1つのn−i−p構造またはp−i−n構造を有し、吸収層は微結晶質で形成されている。例えば、本発明による方法を用い、2.5nm/sの特に有利な堆積速度で製造されるμc−Si:H単層型太陽電池は、約7〜8%の効率を有する。この単層型太陽電池は、μc−Si:H吸収層の厚さが1000ナノメートル未満であることを特徴とする。
【0042】
本発明による方法で製造された単層型太陽電池が既に、堆積速度が高く、層厚が小さいにもかかわらず、7〜8%の効率を有していることが特に有利である。これに対応して積層型太陽電池では、より高い効率を達成することができる。
【0043】
本発明の特に有利な一変形形態では、本方法で製造された太陽電池は、微結晶吸収層中に2
*10
19超〜約1
*10
21cm
−3の酸素原子を含むことができる。
【0044】
a−Si:H/μc−Si:Hベースの積層型太陽電池は、すべての吸収層の総層厚が1000ナノメートル未満であることが特に有利である。その際、好ましくはワットピークのソーラーモジュール定格出力あたりの製造費用に関し、微結晶吸収層は2
*10
19超〜特に10
21酸素原子/cm
3の酸素含有率を有する。
【0045】
特に有利なのは、本方法で、薄いa−Si:H/μc−Si:H積層型太陽電池、特にタンデム型太陽電池を製造できることであり、その際、μc−Si:H吸収層のための高い堆積速度およびμc−Si:H吸収層中の汚染物質の高い濃度の通常の悪い影響は、著しく少なくしか現れない。これに伴い、製造時間のさらなる短縮およびプロセス精度へのより低い要求によって、追加的な費用節減が可能になる。これに関してはさらに相乗効果が生まれる。なぜなら高い堆積速度は、低い堆積速度に比べて、同じベース圧力の場合、成長するμc−Si:H層中に取り込まれる酸素量を少なくするからである。
【0046】
本発明の枠内では、劣化に基づく積層型太陽電池の相対的な効率損失が、吸収層厚が次第に小さくなるにつれて少なくなることも認識された。
【0047】
以下に、例示的実施形態および添付した図に基づいて本発明をより詳しく説明する。