特許第5746732号(P5746732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許5746732光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746732
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/16 20060101AFI20150618BHJP
   C07C 231/18 20060101ALI20150618BHJP
   C07C 237/06 20060101ALI20150618BHJP
   C07C 237/20 20060101ALI20150618BHJP
   C12P 41/00 20060101ALI20150618BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/72 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/84 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/025 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/06 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/265 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/465 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/15 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/77 20060101ALN20150618BHJP
   C12R 1/80 20060101ALN20150618BHJP
【FI】
   C07C231/16
   C07C231/18
   C07C237/06
   C07C237/20
   C12P41/00 D
   !C07B53/00 G
   !C07B53/00 E
   C12P41/00 D
   C12R1:72
   C12P41/00 D
   C12R1:84
   C12P41/00 D
   C12R1:025
   C12P41/00 D
   C12R1:06
   C12P41/00 D
   C12R1:265
   C12P41/00 D
   C12R1:465
   C12P41/00 D
   C12R1:15
   C12P41/00 D
   C12R1:77
   C12P41/00 D
   C12R1:80
【請求項の数】7
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2013-127772(P2013-127772)
(22)【出願日】2013年6月18日
(62)【分割の表示】特願2008-517863(P2008-517863)の分割
【原出願日】2007年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-209424(P2013-209424A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2013年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2006-146745(P2006-146745)
(32)【優先日】2006年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】森 耕平
(72)【発明者】
【氏名】西山 章
(72)【発明者】
【氏名】田岡 直明
(72)【発明者】
【氏名】森山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 伸夫
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−145650(JP,A)
【文献】 特開2001−233863(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/058821(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/035525(WO,A1)
【文献】 特許第5301270(JP,B2)
【文献】 Bioorg. Med. Chem. Lett.,2003年,13,1111−1114
【文献】 Tetrahedron: Asymmetry,2005年,16,3099−3106
【文献】 Tetrahedron Lett.,2000年,41,5357−5361
【文献】 Feske BD et al,Tetrahedron Asym,2005年,Vol.16,p.3124-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 231/16〜18
C07C 237/06〜20
C07B 53/00
C12P 41/00
C12R 1/025〜84
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2);
【化1】
(式中、R4は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。*は不斉炭素原子である。)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法であって、
(i)下記式(5);
【化2】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、R2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。*、R4は前記に同じ。)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体を、アルカリ加水分解することにより、下記式(16);
【化3】
(式中、*、R1、R4は前記に同じ。)で表される化合物を製造する工程、
(ii)前記式(16)で表される化合物と下記式(6);
【化4】
で表されるシクロプロピルアミンを反応させることにより、下記式(17);
【化5】
(式中、*、R1、R4は前記に同じ。)で表される化合物を製造する工程、及び
(iii)前記式(17)で表される化合物の3位のアミド基を選択的に加水分解(脱保護)することにより、前記式(2)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩を製造する工程を、順次行うことを特徴とする光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【請求項2】
前記化合物(5)で表される化合物が、下記式(7);
【化6】
(式中、*、R2、R4は前記に同じ。)で表される化合物と下記式(4);
1CN (4)
(式中、R1は前記に同じ。)で表されるニトリルを反応させて得られたものである、請求項に記載の光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【請求項3】
前記化合物(7)が、下記式(11);
【化7】
(式中、*、R2、R4は前記に同じ、Xはハロゲン原子を表す。)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体に塩基を作用させることにより得られたものである、請求項に記載の光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【請求項4】
前記化合物(11)が、下記式(10);
【化8】
(式中、R2、R4、Xは前記に同じ。)で表される2−ハロ−3−オキソプロピオン酸誘導体を不斉還元することにより得られたものである、請求項に記載の光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【請求項5】
前記不斉還元が、当該化合物を(2R,3R)選択的、又は(2S,3S)選択的に還元する能力を有する酵素源を作用させることにより行われることを特徴とする、請求項に記載の光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【請求項6】
前記(2S,3S)選択的な酵素源が、キャンディダ(Candida)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、メツクニコウィア(Metschnikowia)属、ピキア(Pichia)属、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、アシディフィリウム(Acidiphilium)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、デボシア(Devosia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属、オエルスコビア(Oerskovia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、パエニバシラス(Paenibacillus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、サッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属、アエゲリタ(Aegerita)属またはクリニペリス(Crinipellis)属に属する微生物由来の酵素源である、請求項に記載の光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【請求項7】
前記(2R,3R)選択的な酵素源が、アンブロシオジーマ(Ambrosiozyma)属、ブレッタノマイセス(Brettanomyces)属、キャンディダ(Candida)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属、イサチェンキア(Issatchenkia)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、クライシア(Kuraishia)属、オガタエア(Ogataea)属、パチソレン(Pachysolen)属、ピキア(Pichia)属、サッカロマイコデス(Saccharomycodes)属、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、サツルニスポラ(Saturnispora)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、クラドスポリウム(Cladosporium)属、コルディセプス(Cordyceps)属、コリオラス(Coriolus)属、デンドリフィエラ(Dendryphiella)属、エメリセラ(Emericella)属、フサリウム(Fusarium)属、グロエオフィラム(Gloeophyllum)属、レンティヌラ(Lentinula)属、マクロフォーマ(Macrophoma)属、モナスカス(Monascus)属、ミロセシウム(Myrothecium)属、ナンニチア(Nannizzia)属、パヌス(Panus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属、ピクノポラス(Pycnoporus)属、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、スコプラリオプシス(Scopulariopsis)属、アンベロプシス(Umbelopsis)属またはベルティシリウム(Verticillium)属に属する微生物由来の酵素源である、請求項に記載の光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品中間体として有用な光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩の製造方法、並びにそれらの製造に有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩の製造方法として、以下の例が知られている。
(1)L−N−(tert−ブトキシカルボニル)−ノルバリンを縮合剤存在下、N,O−ジメチルヒドロキシアミンと反応させてワインレブ(WeinReb)アミドへと変換し、これを還元してアルデヒドを得、これにシクロプロピルイソニトリルを付加させて、(2S,3S)−3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−アセトキシヘキサン酸シクロプロピルアミドとした後に、アセチル基の脱保護、tert−ブトキシカルボニル基の脱保護を行い、3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸シクロプロピルアミドの塩酸塩を取得する方法(特許文献1、特許文献2)。
(2)L−N−(tert−ブトキシカルボニル)−ノルバリン由来のアルデヒドに青酸を付加させ、次にtert−ブトキシカルボニル基の脱保護とシアノ基の加水分解を行って、3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸とし、窒素上をベンジロキシカルボニル保護した後に、縮合剤を用いてシクロプロピルアミンと縮合させ、加水素分解することにより、(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸シクロプロピルアミドを取得する方法(特許文献3、非特許文献1)。
【0003】
しかし、1)の方法は、高価なL−N−(tert−ブトキシカルボニル)−ノルバリンを出発原料として用い、還元工程においても高価で危険性の高い水素化リチウムアルミニウムを用いている点や、アルデヒドへの増炭工程において、入手困難なイソニトリル誘導体を用いている点において、現実的な方法とは言えない。
【0004】
また、2)の方法においても、高価なL−N−(tert−ブトキシカルボニル)−ノルバリン誘導体を出発原料に用いている点や、猛毒の青酸を使用する点、更に窒素原子上の保護脱保護を繰り返すことで工程数が多い点から、経済性に劣る上、工業的に実施が困難であり、効率的な合成法とは言えない。
【0005】
このように、現在知られている光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩の製造方法は、いずれも経済性の面に大きな問題があり、工業的実施の観点からも実用的な方法ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2005/058821
【特許文献2】US2005/0197301
【特許文献3】WO2005/035525
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Letters in Drug Design & Discovery, 2005, 118-123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑み、本発明の目的は、医薬品中間体として有用な光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩を、安価で入手容易な原料から簡便に製造でき、工業的生産に対して実用的な方法、並びに前記光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩の製造に有用な中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記に鑑み鋭意検討を行った結果、医薬中間体として有用な3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩を、安価且つ入手容易な原料から簡便に製造できる方法を開発するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記式(1);
【0011】
【化27】
【0012】
(式中、*は不斉炭素原子を表す。R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。R4は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体に関する。
【0013】
また、本発明は、下記式(3);
【0014】
【化28】
【0015】
(式中、*、R4は前記に同じ。)で表される光学活性エポキシアミド誘導体に関する。
【0016】
また、本発明は、下記式(5);
【0017】
【化29】
【0018】
(式中、*、R1、R4は前記に同じ。R2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体に関する。
【0019】
また、本発明は、下記式(13);
【0020】
【化30】
【0021】
(式中、*、R4は前記に同じ。M1はアルカリ金属を表す。)で表される光学活性エポキシカルボン酸塩に関する。
【0022】
また、本発明は、下記式(17);
【0023】
【化31】
【0024】
(式中、*、R1、R4は前記に同じ)で表される化合物に関する。
【0025】
また、本発明は、下記式(10);
【0026】
【化32】
【0027】
(式中、R2、R4は前記に同じ。Xはハロゲン原子を表す。)で表される2−ハロ−3−オキソプロピオン酸誘導体を不斉還元することを特徴とする、下記式(11);
【0028】
【化33】
【0029】
(式中、*、R2、R4、Xは前記に同じ。)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法に関する。
【0030】
また、本発明は、下記式(7);
【0031】
【化34】
【0032】
(式中、*、R2、R4は前記に同じ。)で表される光学活性エポキシカルボン酸誘導体と下記式(6);
【0033】
【化35】
【0034】
で表されるシクロプロピルアミンを反応させることを特徴とする、前記式(3)で表される光学活性エポキシアミド誘導体の製造方法に関する。
【0035】
また、本発明は、酸触媒の存在下、前記式(3)で表される光学活性エポキシアミド誘導体と下記式(4);
1CN (4)
(式中、R1は前記に同じ)で表されるニトリルを反応させることを特徴とする、下記式(1);
【0036】
【化36】
【0037】
(式中、*、R1、R4は前記に同じ。)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体の製造方法に関する。
【0038】
また、本発明は、酸触媒存在下、前記式(7)で表される光学活性エポキシカルボン酸誘導体と前記式(4)で表されるニトリルを反応させることにより、前記式(5)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体を製造し、続いて前記式(6)で表されるシクロプロピルアミンと反応させることを特徴とする、前記式(1)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体の製造方法に関する。
【0039】
また、本発明は、前記式(1)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体のオキサゾリン環を選択的に酸加水分解又は酸加アルコール分解することを特徴とする、下記式(2);
【0040】
【化37】
【0041】
(式中、*、R4は前記に同じ。)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法に関する。
【0042】
また、本発明は、前記式(2)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩の製造方法であって、(i)前記式(5)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体を酸加水分解する工程、(ii)3位のアミノ基を保護する工程、(iii)前記式(6);
【0043】
【化38】
【0044】
で表されるシクロプロピルアミンを縮合させる工程、(iv)脱保護する工程を順次行うか、または、(i)前記式(5)で表される化合物をアルカリ加水分解する工程、(ii)前記式(6)で表されるシクロプロピルアミンを縮合させる工程、(iii)3位のアミド基の加水分解を行う工程を順次行うことからなる、前記式(2)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、医薬品中間体として有用な光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩を、安価で入手容易な原料から簡便に製造でき、工業的生産に対して実用的な方法、並びに前記光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体およびその塩の製造に有用な中間体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は下記スキームで表される全ての工程に関する。
【0047】
【化39】
【0048】
本発明において前記式(2)で表される化合物を得るためには、前記スキームに記載されたいずれの化合物を出発化合物としても良い。また、出発化合物に応じて、いずれの工程を実施するか適宜決定すればよい。

以下に、本発明を工程ごとに順を追って説明する。
【0049】
工程1
本工程においては、下記式(10);
【0050】
【化40】
【0051】
で表される2−ハロ−3−オキソプロピオン酸誘導体を不斉還元することにより、下記式(11);
【0052】
【化41】
【0053】
で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体を製造する。
【0054】
原料の2−ハロ−3−オキソプロピオン酸誘導体は、市販されている3−オキソプロピオン酸誘導体を、例えば、塩化チオニル、塩化スルフリル、臭素、三臭化リン等のハロゲン化剤でハロゲン化することにより簡便に製造することができる。例えばTetrahedron Asymmetry, 16 (2005), 3124-3127に記載の方法に従って、塩化スルフリルを用いるとよい。
【0055】
ここで、*は不斉炭素原子を表す。R2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。置換基としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基が挙げられ、置換基の数は0〜3個が挙げられる。R2として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、又はベンジル基が挙げられ、更に好ましくはR2が水素原子、メチル基、又はエチル基である。Xはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、更に好ましくは塩素原子である。
【0056】
4は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。置換基としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基、アミノ基、水酸基、チオール基等が挙げられ、置換基の数は0〜3個が挙げられる。R4として好ましくは、n−プロピル基、シクロブチルメチル基、又はベンジル基であり、更に好ましくはn−プロピル基である。
【0057】
本工程における不斉還元方法としては、前記化合物(10)のカルボニル基を立体選択的に還元できる方法であれば特に限定されず、[1]光学活性化合物によって修飾されたヒドリド還元剤を用いて還元する方法、[2]不斉遷移金属触媒存在下に水素化する方法、[3]不斉金属触媒存在下に水素移動型で還元する方法、若しくは[4]微生物あるいは微生物由来の酵素を用いて還元する方法が挙げられる。
【0058】
[1]の方法において、光学活性化合物によって修飾されたヒドリド還元剤としては、具体的には、光学活性酒石酸と水素化ホウ素ナトリウムから調製される還元剤、光学活性オキサボロリジン誘導体とボランから調製される還元剤、光学活性ケトイミナト型コバルト錯体と水素化ホウ素ナトリウムとテトラヒドロフラン−2−メタノールから調製される還元剤、光学活性1,1’−ビ−2−ナフトールと水素化リチウムアルミニウムから調製される還元剤等が挙げられる。
【0059】
光学活性化合物によって修飾されたヒドリド還元剤の使用量としては、前記化合物(10)に対して5倍モル量以下であり、更に好ましくは0.5〜2倍モル量である。
【0060】
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒である。混合溶媒を用いる場合、その混合比率は特に制限されない。
【0061】
反応温度として好ましくは、反応時間の短縮、還元の選択性向上、及び収率向上の観点から−100〜60℃であり、更に好ましくは−78〜20℃である。
【0062】
反応の際の前記化合物(10)、不斉還元剤、及び溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0063】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液から減圧、もしくは加圧ろ過にて遷移金属触媒を除去した後、減圧加熱等の操作により、反応溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製方法により、さらに純度を高めても良い。
【0064】
また、不斉遷移金属触媒存在下に水素化する場合(前記[2]の方法)、不斉遷移金属触媒としては、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、又は白金などの周期律表第VIII族元素の金属錯体が好ましく、錯体の安定性や入手の容易さ、経済性の観点からルテニウム錯体がより好ましい。該金属錯体中の不斉配位子としてはホスフィン系配位子が好ましく、ホスフィン系配位子として好ましくは二座配位子である。二座配位子として好ましくは、BINAP(2,2’−ビスジフェニルホスフィノ−1,1’−ビナフチル);Tol−BINAP(2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ−1,1’−ビナフチル)等のBINAP誘導体;BDPP(2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン);DIOP(4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン;BPPFA(1−[1’、2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン);CHIRAPHOS(2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン);DEGPHOS(1−置換−3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン);DuPHOS(1,2−ビス(2,5−置換ホスホラノ)ベンゼン);DIPAMP(1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン)等が挙げられ、更に好ましくはBINAP(2,2’−ビスジフェニルホスフィノ−1,1’−ビナフチル)である。ここでBINAP錯体として好ましくは、(BINAP)RuBr2、(BINAP)RuCl2、または[(BINAP)RuCl2]NEt3等が挙げられる。
【0065】
不斉遷移金属触媒の使用量として好ましくは、前記化合物(10)に対して0.2倍モル量以下であり、更に好ましくは0.05〜0.0001倍モル量である。
【0066】
本工程の水素圧として、好ましくは1〜100kg/cm2であり、更に好ましくは1〜30kg/cm2である。
【0067】
反応溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;シメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒であり、より好ましくは、これらアルコール溶媒と水の混合溶媒である。更に好ましくはメタノールと水の混合溶媒である。
【0068】
アルコール溶媒と水の混合溶媒を用いる場合、アルコール溶媒/水の混合比率は任意に選択できるが、好ましくはアルコール溶媒/水の容量比が100/1〜1/1であり、更に好ましくは20/1〜4/1である。
【0069】
前記溶媒の使用量としては、前記化合物(10)に対し、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは5〜20倍重量である。
【0070】
反応温度として好ましくは、反応時間の短縮、還元の選択性向上、及び収率向上の観点から−20〜100℃であり、更に好ましくは0〜70℃である。
【0071】
反応の際の前記化合物(10)、不斉還元剤、及び溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0072】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液から減圧、もしくは加圧ろ過にて遷移金属触媒を除去した後、減圧加熱等の操作により、反応溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製方法により、さらに純度を高めても良い。
【0073】
また、不斉遷移金属触媒存在下に水素移動型で還元する方法(前記[3]の方法)として具体的には、下記式(24);
【0074】
【化42】
【0075】
で表される光学活性ジアミン触媒存在下に水素供与性化合物を用いて実施される。
【0076】
前記触媒(24)において、*は不斉炭素原子を表す。M2は遷移金属を表し、例えば、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、白金、ジルコニウム、チタン、クロム、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、マンガン、鉄、イッテルビウム、ランタン、サマリウム等が挙げられ、中でもルテニウム、ロジウム、イリジウムが好ましい。
【0077】
5、R6はそれぞれ同一、又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表し、R5とR6が一緒になって環を形成してもよい。
【0078】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基としては例えば、ベンジル基が挙げられる。R5とR6が一緒になって環を形成しているものとしては例えば、テトラメチレン基等が挙げられる。R5、R6としては反応の立体選択性の観点からフェニル基、又はテトラメチレン基が好ましい。
【0079】
7は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表し、具体的には前述のものが挙げられる。収率、立体選択性の観点から水素原子、又はメチル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0080】
Arは置換されていてもよい芳香族化合物を表し、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、エチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、p−シメン、クメン、又はペンタメチルシクロペンタジエニル等が挙げられ、中でもベンゼン、メシチレン、又はp−シメンが好ましい。
【0081】
Zはハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールスルホニルオキシ基、又は置換基を有していてもよいアラルキルスルホニルオキシ基を表し、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、又はp−トルエンスルホニルオキシ基などが挙げられ、中でも塩素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0082】
Yは酸素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニルアミド基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニルアミド基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルスルホニルアミド基を表し、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニルアミド基としては例えば、メタンスルホニルアミド基、トリフルオロメタンスルホニルアミド基、又はカンファースルホニルアミド基等が挙げられる。
【0083】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニルアミド基としては例えば、ベンゼンスルホニルアミド基、p−トルエンスルホニルアミド基、メシチレンスルホニルアミド基、p−トリフルオロメチルベンゼンスルホニスアミド基、1−ナフタレンスルホニルアミド基、又は2−ナフタレンスルホニルアミド基等が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルスルホニルアミド基としては例えば、ベンジルスルホニルアミド基等が挙げられる。中でも収率、立体選択性の観点からp−トルエンスルホニルアミド基、カンファースルホニルアミド基、メシチレンスルホニルアミド基、1−ナフタレンスルホニルアミド基、又は2−ナフタレンスルホニルアミド基が好ましい。
【0084】
前記触媒(24)として具体的には、例えば、RuCl[(R,R)−NpDPEN](p−cymen)錯体、RuCl[(S,S)−NpDPEN](p−cymen)錯体、RuOTf[(R,R)−NpDPEN](p−cymen)錯体又はRuOTf[(S,S)−NpDPEN](p−cymen)錯体等が挙げられる。ここで、(S,S)−NpDPENとは(1S,2S)−N−モノ(1−ナフタレンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミンを表し、OTfとはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。例えば、RuCl[(R,R)−NpDPEN](p−cymen)錯体は下記式(25);
【0085】
【化43】
【0086】
で表され、RuOTf[(R,R)−NpDPEN](p−cymen)錯体は下記式(26);
【0087】
【化44】
【0088】
で表される。
【0089】
本工程で使用する前記触媒(24)はJ. Am. Chem. Soc., 1996, 118, 2521に記載の方法に従って合成しても良いし、市販のものを用いても良い。本工程で使用する前記触媒(24)は前もって調製し、単離精製したものを用いても良く、系中で調製したものをそのまま用いても良い。
【0090】
本工程で使用する前記触媒(24)の使用量は特に制限されないが、前記式(10)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体に対して通常0.00001〜1倍モル量であるが、好ましくは0.0001〜0.2倍モル量である。
【0091】
本工程で使用する水素供与性化合物としては、特に制限されないが例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;ギ酸;ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等のギ酸塩などが挙げられ、特に収率の観点からギ酸、又はギ酸ナトリウムが好ましく、とりわけギ酸が好ましい。
【0092】
本工程で使用する水素供与性化合物の使用量は特に制限されないが、前記一般式(10)で示される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体に対して通常1〜100倍モル量であり、好ましくは1〜10倍モル量である。
【0093】
また、本工程は反応を促進させる目的で更に塩基を共存させてもよい。塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は炭酸カリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、又はカリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド;トリエチルアミン、トリメチルアミン、又はアンモニアなどのアミンが挙げられる。水素供与性化合物としてギ酸を使用する場合は塩基を共存させることが好ましく、トリエチルアミン、トリメチルアミン、又はアンモニアなどのアミンを共存させるとよい。特に好ましくはトリエチルアミンである。
【0094】
本工程で塩基を使用する場合、その使用量に制限はないが、前記式(10)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体に対して通常0.01〜100倍モル量であり、好ましくは0.1〜10倍モル量であり、より好ましくは1〜10倍モル量である。
【0095】
本工程において水素供与性化合物が液体であったり、共存させる塩基が液体である場合は、特に反応溶媒は必要ではない。無溶媒で反応を行った方が短時間で反応を完結出来、触媒使用量を削減できる点で好ましいが、反応基質の溶解度が低い場合などは更に反応溶媒を使用してもよい。
【0096】
反応溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に制限は無いが、例えば前述の炭化水素系溶媒;エステル系溶媒;ニトリル系溶媒;エーテル系溶媒;アミド系溶媒;スルホキシド系溶媒;ハロゲン系溶媒;アルコール溶媒;ギ酸、酢酸などのカルボン酸系溶媒;水が挙げられる。また、これらの溶媒の2種以上を混合して用いても良い。混合溶媒を用いる場合、その混合比に特に制限は無い。
【0097】
反応を行う際の前記式(10)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の濃度は用いる反応溶媒によって異なるが、一般的には1〜90重量%で反応を実施することが出来、好ましくは4〜30重量%である。
【0098】
本工程の反応温度は、用いる光学活性な遷移金属錯体及び水素供与性化合物の種類と使用量、反応溶媒の種類によって異なるが、通常は用いる反応溶剤の凝固点から沸点以下の範囲である。反応を短時間で完了させる為には温度を高めて実施するほうが良く、副反応を抑える観点からは温度を低く設定して実施するほうが良い。一般的には−20〜150℃であり、好ましくは0〜70℃である。
【0099】
反応時の反応時間は用いる光学活性ジアミン触媒や水素供与性化合物の種類と使用量、反応溶媒の種類及び反応温度により異なるが、反応温度を0〜70℃で実施した場合、通常1〜36時間である。
【0100】
本反応に用いる前記式(10)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体、前記式(24)で表される光学活性ジアミン、水素供与性化合物、塩基、及び反応溶媒等の混合順序は任意であり、特に制限されないが、前記式(10)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体と前記式(24)で表される光学活性ジアミンの混合物に、水素供与性化合物を添加する順序が好ましい。塩基を添加する場合も、前記式(10)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体と前記式(24)で表される光学活性ジアミンと塩基の混合物に水素供与性化合物を添加する順序が好ましい。水素供与性化合物は一括添加して反応させても良いし、連続的又は断続的に添加しながら反応させても良い。反応の進行に伴って気体が発生する場合は、安全性の面から、反応の進行に合わせて逐次添加するのが好ましい。
【0101】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液から減圧濾過、若しくは加圧濾過にて遷移金属触媒を除去した後、減圧加熱等の操作により、反応溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製方法により、さらに純度を高めても良い。
【0102】
微生物、或いは微生物由来の酵素を用いて還元する場合(前記[4]の方法)においては、工業的に実施するには微生物由来の酵素を用いて還元する方法が好ましい。以下に、例えば前記化合物(10)のカルボニル基を立体選択的に還元する能力を有する酵素源の存在下、前記化合物(10)を立体選択的に還元することにより前記化合物(11)を得る方法について説明する。
【0103】
ここで、「酵素源」とは、前記還元活性を有する酵素自体はもちろんのこと、前記還元活性を有する微生物の培養物およびその処理物も含まれる。「微生物の培養物」とは、菌体を含む培養液あるいは培養菌体を意味し、また、その処理物であってもよい。「その処理物」とは、例えば、粗抽出液、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、またはそれら菌体の破砕物等を意味する。さらに前記酵素源は、公知の手段で固定化して、固定化酵素又は固定化菌体として用いることもできる。固定化は、当業者に周知の方法(例えば架橋法、物理的吸着法、包括法等)で行うことができる。
【0104】
本発明において、前記化合物(10)のカルボニル基を(2S,3S)選択的に還元する能力を有する酵素源としては、キャンディダ(Candida)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、メツクニコウィア(Metschnikowia)属、ピキア(Pichia)属、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、アシディフィリウム(Acidiphilium)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、デボシア(Devosia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属、オエルスコビア(Oerskovia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、パエニバシラス(Paenibacillus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、サッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属、アエゲリタ(Aegerita)属またはクリニペリス(Crinipellis)属に属する微生物由来の酵素源が挙げられる。
【0105】
好ましくは、キャンディダ・エチェルシー(Candida etchellsii)、キャンディダ・グイリエルモンディー(Candida guilliermondii)、キャンディダ・ラクティス−コンデンシ(Candida lactis-condensi)、キャンディダ・オレオフィラ(Candida oleophila)、キャンディダ・ソラニ(Candida solani)、キャンディダ・フェルメンタティ(Candida fermentati)、デバリオマイセス・カルソニー(Debaryomyces carsonii)、デバリオマイセス・ロベルトシアエ(Debaryomyces robertsiae)、デバリオマイセス・カステリー(Debaryomyces castellii)、デバリオマイセス・ポリモルファス(Debaryomyces polymorphus)、クルイベロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、メツクニコウィア・ビカスピダタ バー ビカスピダタ(Metschnikowia bicuspidatavar. bicuspidata)、ピキア・ボビス(Pichia bovis)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ピキア・ハプロフィア(Pichia haplophila)、サッカロマイコプシス・マランガ(Saccharomycopsis malanga)、ウィリオプシス・サツルナス バー スアベオレンス(Williopsis saturnus var. suaveolens)、アクロモバクター・キシロソキシダンス サブスピーシーズ デニトリフィカンス(Achromobacter xylosoxidans subsp. denitrificans)、アルスロバクター・クリスタロポイエテス(Arthrobacter crystallopoietes)、アルスロバクター・ニコチアナエ(Arthrobacter nicotianae)、アルスロバクター・プロトフォルミアエ(Arthrobacter protophormiae)、アシディフィリウム・クリプタム(Acidiphilium cryptum)、セルロモナス・スピーシーズ(Cellulomonas sp.)、セルロモナス・フェルメンタンス(Cellulomonas fermentans)、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)、ミクロバクテリウム・アルボレセンス(Microbacterium arborescens)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、オクロバクトラム・スピーシーズ(Ochrobactrum sp.)、オエルスコビア・ツルバタ(Oerskovia turbata)、シュードモナス・スツツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、パエニバシラス・アルベイ(Paenibacillus alvei)、ストレプトマイセス・アウレウス(Streptomyces aureus)、ストレプトマイセス・カカオイ サブスピーシーズ アソエンシス(Streptomyces cacaoisubsp. asoensis)、ストレプトマイセス・コエレセンス(Streptomyces coelescens)、ストレプトマイセス・グリセオアウランティカス(Streptomyces griseoaurantiacus)、ストレプトマイセス・ハイドロゲナンス(Streptomyces hydrogenans)、ストレプトマイセス・サルモニス(Streptomyces salmonis)、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、アエゲリタ・キャンディダ(Aegerita candida)またはクリニペリス・スティピタリア(Crinipellis stipitaria)等の微生物由来の酵素源が挙げられる。
【0106】
前記化合物(10)のカルボニル基を(2R,3R)選択的に還元する能力を有する酵素源としては、アンブロシオジーマ(Ambrosiozyma)属、ブレッタノマイセス(Brettanomyces)属、キャンディダ(Candida)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属、イサチェンキア(Issatchenkia)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、クライシア(Kuraishia)属、オガタエア(Ogataea)属、パチソレン(Pachysolen)属、ピキア(Pichia)属、サッカロマイコデス(Saccharomycodes)属、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、サツルニスポラ(Saturnispora)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、クラドスポリウム(Cladosporium)属、コルディセプス(Cordyceps)属、コリオラス(Coriolus)属、デンドリフィエラ(Dendryphiella)属、エメリセラ(Emericella)属、フサリウム(Fusarium)属、グロエオフィラム(Gloeophyllum)属、レンティヌラ(Lentinula)属、マクロフォーマ(Macrophoma)属、モナスカス(Monascus)属、ミロセシウム(Myrothecium)属、ナンニチア(Nannizzia)属、パヌス(Panus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、プレクトスファエレラ(Plectosphaerella)属、ピクノポラス(Pycnoporus)属、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、スコプラリオプシス(Scopulariopsis)属、アンベロプシス(Umbelopsis)属またはベルティシリウム(Verticillium)属に属する微生物由来の酵素源が挙げられる。
【0107】
好ましくは、アンブロシオジーマ・フィレントマ(Ambrosiozyma philentoma)、ブレッタノマイセス・カステルシアヌス(Brettanomyces custersianus)、キャンディダ・カンタレリー(Candida cantarellii)、キャンディダ・ハエムロニー(Candida haemulonii)、キャンディダ・ピニ(Candida pini)、キャンディダ・マリス(Candida maris)、キャンディダ・パラルゴサ(Candida pararugosa)、キャンディダ・ステラタ(Candida stellata)、キャンディダ・ゼイラノイデス(Candida zeylanoides)、クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)、デバリオマイセス・ネパレンシス(Debaryomyces nepalensis)、ハンセニアスポラ・バルビエンシス(Hanseniaspora valbyensis)、イサチェンキア・テリコラ(Issatchenkia terricola)、クルイベロマイセス・ラクティス バー ドロソフィラルム(Kluyveromyces lactisvar. drosophilarum)、クルイベロマイセス・ラクティス バー ラクティス(Kluyveromyces lactis var. lactis)、クライシア・カプスラタ(Kuraishia capsulata)、オガタエア・グルコザイマ(Ogataea glucozyma)、パチソレン・タンノフィラス(Pachysolen tannophilus)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・ホルスティー(Pichia holstii)、ピキア・ジャディニー(Pichia jadinii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・ペテルソニー(Pichia petersonii)、ピキア・ローダネンシス(Pichia rhodanensis)、ピキア・ウィカーミー(Pichia wickerhamii)、ピキア・メンブラニファシエンス(Pichia membranifaciens)、ピキア・キシロサ(Pichia xylosa)、ロードトルラ・ミヌタ(Rhodotorula minuta)、サッカロマイセス・ユニスポラス(Saccharomyces unisporus)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・セレビシエ ハンセン(Saccharomyces cerevisiaehansen)、サッカロマイセス・セレビシエ バー エリプソイデウス(Saccharomyces cerevisiae var. ellipsoideus)、サッカロマイセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、サッカロマイコデス・ルドウィジー(Saccharomycodes ludwigii)、サッカロマイコプシス・クラタエゲンシス(Saccharomycopsis crataegensis)、サッカロマイコプシス・ジャバネンシス(Saccharomycopsis javanensis)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サツルニスポラ・ディスポラ(Saturnispora dispora)、トルラスポラ・グロボサ(Torulaspora globosa)、ウィリオプシス・サツルナス バー サツルナス(Williopsis saturnusvar. saturnus)、チゴサッカロマイセス・バイリー(Zygosaccharomyces bailii)、チゴサッカロマイセス・ロウキシー(Zygosaccharomyces rouxii)、コリネバクテリウム・フラベセンス(Corynebacterium flavescens)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、クラドスポリウム・レシナエ(Cladosporium resinae)、コルディセプス・サブセシリス(Cordyceps subsessilis)、コリオラス・コンソルス(Coriolus consors)、デンドリフィエラ・サリナ(Dendryphiella salina)、エメリセラ・ニドゥランス バー ニドゥランス(Emericella nidulans var. nidulans)、エメリセラ・アンガイス(Emericella unguis)、フサリウム・アングイオイデス(Fusarium anguioides)、グロエオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes)、マクロフォーマ・コメリナエ(Macrophoma commelinae)、モナスカス・プルプレウス(Monascus purpureus)、ミロセシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、ナンニチア・ジプセア バー インカーバタ(Nannizzia gypseavar. incurvata)、パヌス・ラコムテイ(Panus lacomtei)、ペニシリウム・ジャンシネラム(Penicillium janthinellum)、プレクトスファエレラ・ククメリナ(Plectosphaerella cucumerina)、ピクノポラス・コシネウス(Pycnoporus coccineus)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、リゾパス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾパス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、リゾパス・ストロニファー バー ストロニファー(Rhizopus stolonifer var. stolonifer)、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、スポロトリカム・アウランティアカム(Sporotrichum aurantiacum)、アンベロプシス・ビナセア(Umbelopsis vinacea)またはベルティシリウム・ニベオストラトサム(Verticillium niveostratosum)等の微生物由来の酵素源が挙げられる。
【0108】
また、前記還元酵素の由来となる微生物としては、野生株または変異株のいずれでもよい。あるいは細胞融合または遺伝子操作等の遺伝学的手法により誘導される微生物も用いることができる。さらにはこれら微生物由来の還元酵素を生産する能力を有する組換え微生物であってもよい。該酵素を生産する組換え微生物は、例えば、これらの酵素を単離及び/または精製して酵素のアミノ酸配列の一部または全部を決定する工程、このアミノ酸配列に基づいて酵素をコードするDNA配列を得る工程、このDNAを他の微生物に導入して組換え微生物を得る工程、及びこの組換え微生物を培養して、本酵素を得る工程を含有する方法により得ることができる(WO98/35025を参照)。
【0109】
前記のような組換え微生物としては、前記還元酵素をコードするDNAを有するベクターで形質転換された形質転換微生物が挙げられる。また、宿主微生物としては大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。より好ましくは、上記セルロモナス・スピーシーズ(Cellulomonas sp.)由来のグリセロール脱水素酵素で形質転換された大腸菌の培養物であり具体的には、セルロモナス・スピーシーズ(Cellulomonas sp.)KNK0102株由来のグリセロール脱水素酵素遺伝子(WO2005/123921を参照)を有するベクターで形質転換されたEscherichia coli HB101(pTSCS) 受託番号FERM BP−10024(平成16年5月12日 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている)や、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)NBRC13584株由来のカルボニル還元酵素遺伝子(WO2004/027055参照)を有するベクターで形質転換されたEscherichia coli HB101(pNTDR) 受託番号FERM BP−08457(平成14年5月29日 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている)等が挙げられる。
【0110】
酵素源として用いる微生物のための培養培地は、その微生物が増殖し得るものである限り特に限定されない。例えば、炭素源として、グルコース、シュークロース等の糖質、エタノール、グリセロール等のアルコール類、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸及びそのエステル類、菜種油、大豆油等の油類、窒素源として、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、ふすま、酵母エキスなど、無機塩類として、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、燐酸1水素カリウム、燐酸2水素カリウムなど、他の栄養源として、麦芽エキス、肉エキス等を含有する通常の液体培地が使用することができる。培養は好気的に行い、通常、培養時間は1〜5日間程度、培地のpHが3〜9、培養温度は10〜50℃で行うことができる。
【0111】
本発明において、前記化合物(10)のカルボニル基の還元反応は、適当な溶媒に基質となる前記化合物(10)、補酵素NAD(P)H及び前記微生物の培養物またはその処理物等を添加し、pH調整下攪拌することにより行うことができる。
【0112】
反応条件は用いる酵素、微生物またはその処理物、基質濃度等によって異なるが、通常、基質濃度は約0.1〜100重量%、好ましくは1〜60重量%であり、補酵素NAD(P)Hは基質に対して0.000001〜1倍モル量、好ましくは0.00001〜0.001倍モル量、反応温度は10〜60℃、好ましくは20〜50℃であり、反応のpHは4〜9、好ましくは5〜8であり、反応時間は1〜120時間、好ましくは1〜72時間で行うことができる。
【0113】
また、反応には有機系の溶媒を混合して用いてもよい。有機系溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、ジイソプロピルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。基質は一括または連続的に添加して行うことができる。
【0114】
また、反応はバッチ方式または連続方式で行うことができる。
【0115】
本発明の還元工程において、一般に用いられる補酵素NAD(P)H再生系を組み合わせて用いることにより、高価な補酵素の使用量を大幅に減少させることができる。代表的なNAD(P)H再生系としては、例えば、グルコース脱水素酵素及びグルコースを用いる方法が挙げられる。
【0116】
還元酵素遺伝子及びこの酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素(例えばグルコース脱水素酵素)の遺伝子を同一宿主微生物内に導入した形質転換微生物、すなわち、本発明の還元酵素をコードするDNA及び該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素(例えばグルコース脱水素酵素)の遺伝子を同一宿主微生物内に導入した形質転換微生物の培養物またはその処理物等を用いて、前記と同様の反応を行えば、別途に補酵素の再生に必要な酵素源を調製する必要がないため、より低コストで前記化合物(11)を製造することができる。
【0117】
前記のような形質転換微生物としては、前記還元酵素をコードするDNA及び該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素をコードするDNAの両者を有するプラスミドで形質転換された形質転換微生物が挙げられる。ここで、補酵素を再生する能力を有する酵素としては、グルコース脱水素酵素が好ましく、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のグルコース脱水素酵素がより好ましい。また、宿主微生物としては大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。そのような好ましい形質転換微生物として、Escherichia coli HB101(pTSCSG1)(WO2005/123921を参照)や、Escherichia coli HB101(pNTRDG1) 受託番号FERM BP−08458(平成14年5月29日 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている)が挙げられる。
【0118】
形質転換微生物の培養は、それらが増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いて実施できる。また、形質転換微生物中の補酵素再生能を有する酵素の活性は、常法により測定することができる。例えば、グルコース脱水素酵素の活性は、1Mのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、100mMのグルコース、2mMの補酵素NADPまたはNAD、および酵素を添加し、25℃で1分間反応させた際の、波長340nmにおける吸光度の増加速度から算出できる。
【0119】
なお、本発明の還元工程を、補酵素再生系と組み合わせて実施する、または、酵素源として前記形質転換微生物の培養物もしくはその処理物を用いる場合は、補酵素として、より安価な酸化型のNAD(P)を添加して反応を行うことも可能である。
【0120】
還元反応で生じた前記化合物(11)は、定法により精製することが出来る。例えば、反応液を遠心分離、ろ過等の処理を施して菌体等の懸濁物を除去し、次いで一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0121】
工程2
本工程では、前記式(11)で表される光学活性2−ハロ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体に塩基を作用させて環化させることにより、下記式(7);
【0122】
【化45】
【0123】
で表される光学活性エポキシカルボン酸誘導体を製造する。ここで、*、R2、R4は前記に同じである。なお、前記化合物(11)については、工程1で製造したものを用いてもよいし、別途入手したものでも良い。
【0124】
ここで、前記塩基としては特に制限されないが、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の第3級アミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシドを用いることができる。好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシドであり、更に好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシドである。
【0125】
前記塩基の使用量として、好ましくは前記化合物(11)に対して、0.5〜10倍モル量であり、更に好ましくは0.5〜5倍モル量である。
【0126】
反応溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;シメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒である。
【0127】
前記溶媒の使用量としては、前記化合物(11)に対し、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0128】
反応の際の前記化合物(11)、塩基、及び反応溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0129】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、または必要に応じて塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0130】
なお、本工程において得られる前記化合物(7)の立体化学については、第3級アミン類、金属炭酸塩、又は金属水酸化物を塩基に用いた場合、前記化合物(11)のジアステレオマー比がほぼそのまま生成物である前記化合物(7)のジアステレオマー比に反映される。即ち、(2R,3R)の前記化合物(11)からは(2S,3R)の前記化合物(7)が得られ、(2S,3R)の前記化合物(11)からは(2R,3R)の前記化合物(7)が得られる。また、(2S,3S)の前記化合物(11)からは(2R,3S)の前記化合物(7)が得られ、(2R,3S)の前記化合物(11)からは(2S,3S)の前記化合物(7)が得られる。
【0131】
一方、金属アルコキシドを塩基に用いた場合は、2位のエピメリ化を伴いながら反応が進行するため、原料である前記化合物(11)のジアステレオ比に依らず、高選択的にトランス体の前記化合物(7)が得られる。即ち、(2R,3R)の前記化合物(11)および(2S,3R)の前記化合物(11)からは(2S,3R)の前記化合物(7)が得られ、(2S,3S)の前記化合物(11)および(2R,3S)の前記化合物(11)からは(2R,3S)の前記化合物(7)が得られる。
【0132】
前記化合物(7)の立体化学として好ましくは、(2S,3R)又は(2R,3S)である。
【0133】
工程3
本工程では、前記式(7)で表される光学活性エポキシカルボン酸誘導体に、下記式(6);
【0134】
【化46】
【0135】
で表されるシクロプロピルアミンを反応させることにより、下記式(3);
【0136】
【化47】
【0137】
で表される光学活性エポキシアミド誘導体を製造する。ここで、*、R4は前記に同じである。
【0138】
なお、本工程で得られる前記化合物(3)は、医薬中間体として有用な文献未記載の新規化合物である。
【0139】
前記化合物(7)の入手方法については特に限定されないが、例えばUS5773629に記載の方法に従って、アルデヒドとクロロ酢酸エステルのDarzens反応によってラセミ体の前記化合物(7)を合成し、リパーゼ等の微生物由来の酵素によって光学分割することにより、光学活性な前記化合物(7)を製造してもよく、またJ. Am. Chem. Soc., 1987, 109, 5765に記載の方法に従って、アリルアルコール誘導体を不斉エポキシ化した後に、水酸基を酸化することにより、光学活性な前記化合物(7)を製造してもよい。好ましくは、前記工程2で製造したものを用いると良い。
【0140】
本工程は、
[1]前記化合物(7)とシクロプロピルアミンを直接反応させることによって前記化合物(3)を製造するか、
又はR2が水素である前記化合物(7)については、[2]脱水縮合剤を用いてシクロプロピルアミンと縮合させるか、
又は[3]酸ハロゲン化物または混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させてもよい。
【0141】
まずは、シクロプロピルアミンと直接反応させることによって、前記化合物(3)を製造する方法([1]の方法)について説明する。
【0142】
シクロプロピルアミンの使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜50倍モル量であり、更に好ましくは1〜20倍モル量である。
【0143】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−20〜200℃であり、更に好ましくは0〜100℃である。
【0144】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0145】
反応時の圧力として好ましくは、1〜20気圧であり、更に好ましくは1〜5気圧である。
【0146】
本工程の反応溶媒としては、シクロプロピルアミンをそのまま反応溶媒として使用してもよいし、又はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒を用いてもよい。好ましくは、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記反応溶媒の使用量としては、前記化合物(7)に対し、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0147】
反応の際の前記化合物(7)、シクロプロピルアミン、及び反応溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0148】
次に、R2が水素である前記化合物(7)とシクロプロピルアミンを脱水縮合剤で縮合させる方法([2]の方法)について説明する。
【0149】
脱水縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの塩酸塩、ジイソプロピルカルボジイミド、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ(4,5−b)ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスファート、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。反応の後処理が容易であるという点から、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド又はその塩酸塩を用いるのが好ましい。
【0150】
脱水縮合剤の使用量としては、前記化合物(7)に対して、1〜5倍モル量であり、好ましくは1〜2倍モル量である。前記添加剤の使用量としては、前記化合物(7)に対して、0.5〜5倍モル量であり、好ましくは1〜2倍モル量である。
【0151】
前記シクロプロピルアミンの使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜10倍モル量であり、更に好ましくは1〜4倍モル量である。
【0152】
本工程の反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒を用いてもよい。好ましくは、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0153】
反応溶媒の使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0154】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−20〜100℃であり、更に好ましくは0〜70℃である。
【0155】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜20時間であり、更に好ましくは30分〜5時間である。
【0156】
本方法においては、反応時間の短縮、反応収率の向上、副生物の抑制、または反応温度の低下のいずれかを改善する目的で、更に添加剤を加えても良い。
【0157】
そのような添加剤としては、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアゾジン、1−ヒドロキド−7−アザベンゾトリアゾール、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。
【0158】
なお、反応の際の前記化合物(7)、脱水縮合剤、添加剤、シクロプロピルアミン、及び反応溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されるものではない。
【0159】
次に、R2が水素である前記化合物(7)を酸ハロゲン化物または混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させる方法([3]の方法)について説明する。
【0160】
酸ハロゲン化物としては、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物等が挙げられる。好ましくは酸塩化物である。酸ハロゲン物の調製方法としては特に制限されないが、例えば第5版実験化学講座16(日本化学会編、丸善株式会社出版)101−104頁に記載の方法に従って調製できる。例えば、酸塩化物は、前記化合物(7)に塩化チオニルを作用させることによって調製することができる。塩化チオニルの使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜10倍モル量であり、さらに好ましくは1〜4倍モル量である。
【0161】
混合酸無水物としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、ピバリン酸、安息香酸等のカルボン酸との無水物;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、m−ニトロベンゼンスルホン酸等のスルホン酸との無水物;メトキシカルボン酸、エトキシカルボン酸、イソプロポキシカルボン酸、tert−ブトキシカルボン酸、ベンジロキシカルボン酸、フェノキシカルボン酸等のアルコキシカルボン酸との無水物が挙げられる。好ましくはピバリン酸との無水物;メトキシカルボン酸、エトキシカルボン酸、イソプロポキシカルボン酸、tert−ブトキシカルボン酸、ベンジロキシカルボン酸、フェノキシカルボン酸等のアルコキシカルボン酸との無水物であり、更に好ましくはピバリン酸との無水物、又はエトキシカルボン酸との無水物である。
【0162】
混合酸無水物の調製方法としては特に制限されないが、例えば上記の方法によって前記化合物(7)を酸塩化物とし、第5版実験化学講座16(日本化学会編、丸善株式会社出版)107−117頁に記載の方法に従い、それに前記カルボン酸塩を作用させることによって混合酸無水物とすることができる。ここでカルボン酸塩としては、ナトリウム塩、又はカリウム塩が好ましい。カルボン酸塩の使用量としては、化合物(7)の酸塩化物に対して、好ましくは1〜5倍モル量であり、さらに好ましくは1〜2倍モル量である。
【0163】
また、前記カルボン酸との無水物、特にピバリン酸との無水物は、前記化合物(7)を後述する塩基の存在下、塩化ピバロイルと反応させることによっても調製できる。
【0164】
更に前記アルコキシカルボン酸との無水物は、前記化合物(7)を、後述する塩基の存在下、塩化メトキシカルボニル、塩化エトキシカルボニル、塩化イソプロポキシカルボニル、塩化ベンジロキシカルボニル、塩化フェニキシカルボニル等の塩化アルコキシカルボニル;二炭酸ジエチル、二炭酸ジ−tert−ブチル、二炭酸ジベンジル等の二炭酸ジアルキルと反応させることにより調製できる。好ましくは塩化メトキシカルボニル、塩化エトキシカルボニル、塩化イソプロポキシカルボニル、塩化ベンジロキシカルボニルと反応させて調製したアルコキシカルボン酸との無水物である。
【0165】
ここで、前記塩基については特に制限されないが、第3級アミン類が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。更に好ましくはトリエチルアミンである。塩基の使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜10倍モル量であり、更に好ましくは1〜4倍モル量である。
【0166】
塩化アルコキシカルボニルあるいは二炭酸ジアルキルの使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜10倍モル量であり、更に好ましくは1〜4倍モル量である。
【0167】
[3]の方法において、シクロプロピルアミンの使用量としては、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜10倍モル量であり、更に好ましくは1〜4倍モル量である。
【0168】
本工程の反応溶媒としては、R2が水素である前記化合物(7)とシクロプロピルアミンを脱水縮合剤で縮合させる際に用いた溶媒と同様のものを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記反応溶媒の使用量としては、前記化合物(7)に対し、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0169】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−50〜80℃であり、更に好ましくは−25〜50℃である。
【0170】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜20時間であり、更に好ましくは30分〜5時間である。
【0171】
反応の際の前記化合物(7)、塩基、塩化アルコキシカルボニルあるいは二炭酸ジアルキル、シクロプロピルアミン、及び反応溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0172】
前述の各反応([1]〜[3]の方法)後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、また必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液、あるいは塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0173】
なお、R2が水素原子でない前記化合物(7)を加水分解して、R2が水素である前記化合物(7)に変換した後、シクロプロピルアミンと脱水縮合剤で縮合させるか、又は酸ハロゲン物あるいは混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させる方法も本発明に含まれるのは、いうまでもない。
【0174】
この場合、化合物(7)を加水分解する方法としては例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いる方法が挙げられる。なお、本加水分解反応は前記工程2で説明した環化反応と同時に行うこともできる。
【0175】
アルカリ金属水酸化物の使用量は、前記化合物(7)に対して、好ましくは1〜50倍モル量であり、更に1〜10倍モル量である。
【0176】
また、水の使用量はアルカリ金属水酸化物に対して、好ましくは1〜50倍重量であり、更に好ましくは1〜10倍重量である。
【0177】
反応温度としては、反応時間短縮、及び収率向上の観点から、好ましくは0〜100℃であり、更に好ましくは20〜70℃である。
【0178】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜20時間であり、更に好ましくは30分〜5時間である。
【0179】
反応後の処理としては例えば、反応液をそのまま減圧加熱等の操作により濃縮して、下記式(13);
【0180】
【化48】
【0181】
で表される光学活性エポキシカルボン酸塩を固体として単離してもよい。ここで、*、R4は前記に同じである。M1はリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属であり、好ましくはナトリウム又はカリウムである。なお、前記化合物(13)は文献未記載の新規化合物である。
【0182】
化合物(13)の単離法としては、反応液から減圧加熱等により反応溶媒を留去して乾固させるか、又は反応液にメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、又はアセトニトリル等の溶剤を加えて結晶を析出させ、単離する方法等が挙げられる。
【0183】
前記式(13)で表される光学活性エポキシカルボン酸塩は、上記方法で製造することができるが、もちろん、前記式(7)においてR2が水素の化合物に、前記のアルカリ金属水酸化物の水溶液を反応させて製造してもよい。
【0184】
単離した化合物(13)は、塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から、減圧加熱等の操作により反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると、R2が水素である前記化合物(7)が得られる。又、前記化合物(13)の単離を行わずに前記後処理を行って、R2が水素である前記化合物(7)を得てもよい。
【0185】
また、前記式(13)で表される光学活性エポキシカルボン酸塩と、塩化ピバロイル、塩化アルコキシカルボニルあるいは二炭酸ジアルキルを反応させることにより、R2が水素である前記化合物(7)を経由せずに直接、アルコキシカルボン酸との無水物を調製してもよい。前記アルコキシカルボン酸との無水物とシクロプロピルアミンとの反応については、前記に同じである。
【0186】
なお、本工程において得られる前記化合物(3)の立体化学については、前記化合物(7)の立体化学がそのまま維持される。即ち、前記化合物(3)の立体化学として好ましくは、(2S,3R)又は(2R,3S)である。
【0187】
工程4
本工程では、前記式(3)で表される光学活性エポキシアミド誘導体に酸触媒存在下、下記式(4);
1CN (4)
で表されるニトリルを作用させることにより、下記式(1);
【0188】
【化49】
【0189】
で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体を製造する。ここで、*、R4は前記に同じである。R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。置換基としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、置換基の数は0〜3個が挙げられる。R1として具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル、トリクロロメチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、又はベンジル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、クロロメチル基、フェニル基、又はベンジル基である。更に好ましくはイソプロピル基である。
【0190】
なお、本工程で得られる前記化合物(1)は、医薬品中間体として有用な文献未記載の新規化合物である。また前記化合物(3)については、工程3で製造したものを用いても良いし、別途入手したものでも良い。
【0191】
前記酸触媒としては例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、過塩素酸リチウム、塩化スカンジウム、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、アルミニウムトリフラート、四塩化チタン、四塩化錫、塩化ハフニウム、塩化ジルコニウム、イットリビウムトリフラート、スカンジウムトリフラート、チタンプロポキシド、ジルコニウムプロポキシド、又はアルミニウムプロポキシド等のルイス酸;硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等のブレンステッド酸が挙げられる。好ましくは、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、四塩化チタン、硫酸、塩化水素、臭化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はトリフルオロ酢酸である。
【0192】
酸の使用量としては、好ましくは前記化合物(3)に対して0.01〜10倍モル量であり、更に好ましくは0.1〜5倍モル量である。
【0193】
前記ニトリル(4)の使用量として、好ましくは前記化合物(3)に対して1〜100倍モル量であり、更に好ましくは1〜50倍モル量である。
【0194】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−20〜80℃であり、更に好ましくは−10〜50℃である。
【0195】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0196】
本工程の反応溶媒としては、前記ニトリル(4)をそのまま反応溶媒として使用してもよいし、又はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒を用いてもよい。好ましくは、塩化メチレン、トルエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0197】
反応溶媒の使用量としては、前記化合物(3)に対し、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0198】
反応の際の化合物(3)、ニトリル(4)、酸触媒、及び反応溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0199】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、または必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0200】
なお、立体化学についていえば、本工程では原料である前記化合物(3)の3位の反転を伴って反応が進行する。原料である前記化合物(3)と反応生成物である前記化合物(1)はIUPAC命名法上の主鎖が異なる為、前記化合物(3)の3位の炭素が前記化合物(1)の4位の炭素に相当し、前記化合物(3)の2位の炭素が前記化合物(1)の5位の炭素に相当する。従って、
(2S,3R)の前記化合物(3)からは(4S,5S)の前記化合物(1)が得られ、
(2S,3S)の前記化合物(3)からは(4R,5S)の前記化合物(1)が得られ、
(2R,3S)の前記化合物(3)からは(4R,5R)の前記化合物(1)が得られ、
(2R,3R)の前記化合物(3)からは(4S,5R)の前記化合物(1)が得られる。前記化合物(1)の立体化学として好ましくは、(4S,5S)又は(4R,5R)である。
【0201】
工程5
本工程では、前記式(1)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体のオキサゾリン環を選択的に酸加水分解又は酸加アルコール分解することにより、下記式(2);
【0202】
【化50】
【0203】
で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩を製造する。ここで、*、R4は前記に同じである。
【0204】
上記式(2)の塩としては、特に制限されないが、硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などのブレンステッド酸との塩があげられ、好ましくは、塩化水素、臭化水素、又はメタンスルホン酸であり、特に好ましくは塩化水素との塩である。
【0205】
また、前記化合物(1)については、工程4又は後述する工程7で製造したものを用いてもよいし、別途入手したものを用いてもよい。
【0206】
本工程においては、酸を用いて前記化合物(1)の加水分解又は加アルコール分解を行うことにより、下記式(14);
【0207】
【化51】
【0208】
で表される化合物を一旦生成させ、そのエステル基のみを加水分解又は加アルコール分解することにより、シクロプロピルアミド骨格の分解を伴わずに、目的とする前記化合物(2)への変換が可能となった。
【0209】
ここで、酸としては、例えば、工程4で酸触媒として例示したルイス酸、ブレンステッド酸などが挙げられる。好ましくは、硫酸、塩化水素、臭化水素、又はメタンスルホン酸であり、更に好ましくは塩化水素、臭化水素、又はメタンスルホン酸であり、とりわけ好ましくは塩化水素である。また、これらの酸はそのまま用いてもよいし、水に溶解させて、酸の水溶液として用いても良い。
【0210】
酸の使用量としては、前記化合物(1)に対して、好ましくは0.01〜50倍モル量であり、更に好ましくは0.1〜20倍モル量である。
【0211】
本工程に用いる反応溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられ、またこれらの混合溶媒を用いて行ってもよい。好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールであり、2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。反応溶媒の使用量としては、前記化合物(1)に対し、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0212】
反応温度としては、反応時間短縮、及び収率向上の観点から、好ましくは−50〜90℃であり、更に好ましくは−25〜60℃である。
【0213】
反応時間としては、収率向上の観点から、好ましくは5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0214】
反応の際の化合物(1)、酸、及び反応溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0215】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、または必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。または、反応終了後の反応液を濃縮乾固させるか、またはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶媒置換することで、光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体を酸との塩である結晶として析出させ、これを濾別することにより目的物を得ることもできる。これらのようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0216】
なお、立体化学については、原料の立体化学がそのまま生成物に保持されるが、原料である前記化合物(1)と反応生成物である前記化合物(2)はIUPAC命名法上の主鎖が異なる為、前記化合物(1)の5位の炭素が前記化合物(2)の2位の炭素に相当し、前記化合物(1)の4位の炭素が前記化合物(2)の3位の炭素に相当する。従って
(4S,5R)の前記化合物(1)からは(2R,3S)の前記化合物(2)が得られ、
(4S,5S)の前記化合物(1)からは(2S,3S)の前記化合物(2)が得られ、
(4R,5S)の前記化合物(1)からは(2S,3R)の前記化合物(2)が得られ、
(4R,5R)の前記化合物(1)からは(2R,3R)の前記化合物(2)が得られる。前記化合物(2)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【0217】
工程6
本工程では、前記式(7)で表される光学活性エポキシカルボン酸誘導体に酸触媒存在下、前記式(4)で表されるニトリルを作用させることにより、下記式(5);
【0218】
【化52】
【0219】
で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体を製造する。ここで、*、R1、R2、R4は前記に同じである。なお、本工程で得られる前記化合物(5)は、医薬中間体として有用な文献未記載の新規化合物である。また、前記化合物(7)の入手方法については、前記工程3における説明と同様であり、前記工程2で得られた化合物(7)を用いるのが好ましい。
【0220】
反応条件については、前記工程4の反応条件と同様であり、工程4で用いた原料(3)の替わりに(7)を使用してやれば良い。
【0221】
なお、立体化学については、本工程が原料である前記化合物(7)の3位の反転を伴って進行する。原料である前記化合物(7)と反応生成物である前記化合物(5)はIUPAC命名法上の主鎖が異なる為、前記化合物(7)の3位の炭素が前記化合物(5)の4位の炭素に相当し、前記化合物(7)の2位の炭素が前記化合物(5)の5位の炭素に相当する。従って
(2S,3R)の前記化合物(7)からは(4S,5S)の前記化合物(5)が得られ、
(2S,3S)の前記化合物(7)からは(4R,5S)の前記化合物(5)が得られ、
(2R,3S)の前記化合物(7)からは(4R,5R)の前記化合物(5)が得られ、
(2R,3R)の前記化合物(7)からは(4S,5R)の前記化合物(5)が得られる。前記化合物(5)の立体化学として好ましくは、(4S,5S)又は(4R,5R)である。
【0222】
工程7
本工程では、前記式(5)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体に前記式(6)で表されるシクロプロピルアミンを反応させ、前記式(1)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体を製造する。前記化合物(5)については、工程6で製造したものを用いてもよいし、別途入手したものを用いても良い。
【0223】
本工程は、前記化合物(5)とシクロプロピルアミンを直接反応させることによって前記化合物(1)を製造するか、又はR2が水素である場合において、脱水縮合剤を用いてシクロプロピルアミンと縮合させるか、又は酸ハロゲン化物または混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させてもよい。
【0224】
本工程の反応条件については、前記工程3の反応条件と同様であり、工程3で用いた原料(7)の替わりに(5)を使用し、他の条件については全て工程3記載の条件と同様にして実施できる。
【0225】
なお、本工程において得られる前記化合物(1)の立体化学については、前記化合物(5)の立体化学がそのまま維持される。即ち、前記化合物(1)の立体化学として好ましくは、(4S,5S)又は(4R,5R)である。
【0226】
工程8
本工程では、前記式(1)で表される光学活性オキサゾリンアミド誘導体のオキサゾリン環を選択的にアルカリ加水分解することにより、一般式(17);
【0227】
【化53】
【0228】
で表される化合物を製造する。ここで、*、R1、R4は前記に同じである。なお、本工程で得られる前記化合物(17)は、医薬中間体として有用な文献未記載の新規化合物である。また前記化合物(1)については、前記工程4又は7で製造したものを用いても良いし、別途入手したものを用いてもよい。
【0229】
ここで、前記アルカリについては例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩等が挙げられる。好ましくは、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩であり、更に好ましくは炭酸水素ナトリウムである。前記アルカリの使用量としては、前記化合物(1)に対して、好ましくは1〜50倍モル量であり、更に好ましくは1〜10倍モル量である。
【0230】
本工程に用いる溶媒は水であり、原料及び生成物の溶解度を高めて反応速度を促進する目的等で更に有機溶媒を添加してもよい。前記有機溶媒としては例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレア系溶媒、ホスホン酸トリアミド系溶媒が挙げられる。各溶媒のさらに具体的な例としては、工程3で例示したものと同様なものがあげられる。好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0231】
水の使用量としては、前記化合物(1)に対して、好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。また前記有機溶媒の使用量としては、前記化合物(1)に対して、好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0232】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−50〜90℃であり、更に好ましくは−25〜60℃である。
【0233】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0234】
反応の際の前記化合物(1)、アルカリ、水、及び有機溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0235】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、または必要に応じて塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0236】
なお、立体化学については、原料の立体化学がそのまま生成物に保持されるが、原料である前記化合物(1)と反応生成物である前記化合物(17)はIUPAC命名法上の主鎖が異なる為、前記化合物(1)の5位の炭素が前記化合物(17)の2位の炭素に相当し、前記化合物(1)の4位の炭素が前記化合物(17)の3位の炭素に相当する。従って
(4S,5R)の前記化合物(1)からは(2R,3S)の前記化合物(17)が得られ、
(4S,5S)の前記化合物(1)からは(2S,3S)の前記化合物(17)が得られ、
(4R,5S)の前記化合物(1)からは(2S,3R)の前記化合物(17)が得られ、
(4R,5R)の前記化合物(1)からは(2R,3R)の前記化合物(17)が得られる。前記化合物(17)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【0237】
工程9
本工程では、前記式(17)で表される化合物の3位のアミド基を選択的に加水分解(脱保護)することにより、前記式(2)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミド誘導体またはその塩を製造する。ここで、*は前記に同じである。また前記化合物(17)については、前記工程8又は後述する工程11で製造したものを用いても良いし、別途入手したものを用いてもよい。
【0238】
本工程の反応条件については、例えばPROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION(Greene Wuts著、WILEY-INTERSCIENCE出版)、550-572頁記載の方法に従って実施すればよい。但し、高温下で強酸あるいは強塩基を用いると、シクロプロピルアミド骨格の分解が進行することがあるため、温和な条件で脱保護することが好ましい。そのような条件としては、例えばクロロアセチル基の場合、チオ尿素を作用させることで選択的に脱保護することができる。この場合、チオ尿素の使用量としては前記化合物(17)に対して、好ましくは1〜5倍モル量であり、さらに好ましくは1〜2倍モル量である。
【0239】
本工程に用いる溶媒は特に制限されないが、例えば、水、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレア系溶媒、ホスホン酸トリアミド系溶媒が挙げられる。各溶媒のさらに具体的な例としては、工程3で例示したものと同様なものがあげられる。好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン等である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。前記溶媒の使用量としては、前記化合物(17)に対して、好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。また前記有機溶媒の使用量としては、前記化合物(17)に対して、好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0240】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−50〜90℃であり、更に好ましくは−25〜60℃である。
【0241】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0242】
また、本工程は酵素を用いる温和な条件で実施することもできる。前記化合物(17)の3位のアミド基の選択的な加水分解能を有する酵素を作用させるに当たっては、円滑な反応、操作の容易性などの観点から、前記化合物(17)及び加水分解能を有する酵素を水性溶媒中に溶解または分散して反応を行う方法が好ましく採用される。
【0243】
加水分解反応を行なう水性溶媒は、加水分解能を有する酵素の種類に応じて酵素が働き易いpHに調整しておくことが必要である。pHの範囲としては、一般的にはpH6〜12程度、より好ましくはpH7〜10程度である。pHの調整は、水性溶媒として所定のpHを有する緩衝水溶液を用いて行っても良い。その際の緩衝水溶液としては、例えば、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液などのようなリン酸アルカリ金属塩水溶液等の無機塩の緩衝水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液などの酢酸アルカリ金属塩等の有機酸塩の緩衝水溶液などを挙げることができる。また、反応系のpHを加水分解反応に適したpHに保つために、加水分解反応の初期および/または途中に水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液などの塩基や塩酸、硫酸などの酸などのpH調整剤を添加してもよい。
【0244】
使用する酵素としては、化合物(17)の3位のアミド基の選択的な加水分解能を有する酵素あれば特に制限されないが、例えばアミダーゼ等が挙げられ、好ましくはペニシリンアミダーゼである。酵素の使用量としては前記化合物(17)に対して、好ましくは0.0001〜3倍重量であり、さらに好ましくは0.001〜1倍重量である。
【0245】
反応温度としては、温度が高すぎると酵素の安定性が低下したり酵素が失活する場合があり、一方温度が低すぎると反応速度が低下する場合があるので、通常5〜65℃の範囲であることが好ましく、20〜50℃の範囲であることがより好ましい。
【0246】
反応時間としては、使用する酵素の種類や量、反応温度などに応じて変わり得るが、好ましくは5分〜120時間程度であり、更に好ましくは30分〜48時間である。
【0247】
反応における試材の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0248】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、または必要に応じて塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0249】
なお、立体化学については、原料の立体化学がそのまま生成物に保持される。
【0250】
工程10
本工程では、前記式(5)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体を、アルカリ加水分解することにより、下記式(16);
【0251】
【化54】
【0252】
で表される化合物を製造する。ここで、*、R1、R4は前記に同じである。また前記化合物(5)については、前記工程6で製造したものを用いてもよいし、別途入手したものを用いても良い。
【0253】
本工程の反応条件については、前記工程8の反応条件と同様であり、工程8で用いた原料(1)の替わりに前記式(5)で表される化合物を使用し、他の条件については全て工程8記載の条件と同様にして実施できる。
【0254】
なお、立体化学については、原料の立体化学がそのまま生成物に保持されるが、原料である前記化合物(5)と反応生成物である前記化合物(16)はIUPAC命名法上の主鎖が異なる為、前記化合物(5)の5位の炭素が前記化合物(16)の2位の炭素に相当し、前記化合物(5)の4位の炭素が前記化合物(16)の3位の炭素に相当する。従って
(4S,5R)の前記化合物(5)からは(2R,3S)の前記化合物(16)が得られ、
(4S,5S)の前記化合物(5)からは(2S,3S)の前記化合物(16)が得られ、
(4R,5S)の前記化合物(5)からは(2S,3R)の前記化合物(16)が得られ、
(4R,5R)の前記化合物(5)からは(2R,3R)の前記化合物(16)が得られる。前記化合物(16)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【0255】
工程11
本工程では、前記式(16)で表される化合物と前記式(6)で表されるシクロプロピルアミンを反応させることにより、前記式(17)で表される化合物を製造する。ここで、*、R1、R4は前記に同じである。また前記化合物(16)については、前記工程10で製造したものを用いてもよいし、別途入手したものを用いても良い。
【0256】
本工程においては、前記化合物(16)とシクロプロピルアミンを直接反応させてもよいが、好ましくは前記化合物(16)とシクロプロピルアミンを脱水縮合剤で縮合させるか、又は前記化合物(16)を酸ハロゲン化物または混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させるとよい。
【0257】
前記化合物(16)とシクロプロピルアミンを脱水縮合剤で縮合させるか、又は前記化合物(16)を酸ハロゲン化物または混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させる反応条件としては、前記工程3記載の反応条件と同様であり、工程3の原料である化合物(7)においてR2が水素原子である化合物の替わりに化合物(16)を用いてやれば良い。
【0258】
なお、本工程において得られる前記化合物(17)の立体化学については、前記化合物(16)の立体化学がそのまま維持される。即ち、前記化合物(17)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【0259】
工程12
本工程では、前記式(5)で表される光学活性オキサゾリンカルボン酸誘導体を酸加水分解し、続いて3位のアミノ基をカルバメート保護することにより、下記式(12);
【0260】
【化55】
【0261】
で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸誘導体を製造する。ここで、*、R4は前記に同じである。R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。置換基としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基が挙げられ、置換基の数は0〜3個が挙げられる。具体的には例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、アリル基、フェニル基、又はベンジル基であり、好ましくはtert−ブチル基、又はベンジル基である。また前記化合物(5)については、工程6で製造したものを用いても良いし、別途入手したものを用いてもよい。
【0262】
加水分解に用いる酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の鉱酸;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸;蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸が挙げられ、好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の鉱酸であり、更に好ましくは塩酸である。酸の使用量としては前記化合物(5)に対して、好ましくは1〜50倍モル量であり、更に好ましくは2〜20倍モル量である。
【0263】
本工程に用いる溶媒は水であるが、原料を溶解させて反応時間を短縮する目的等で、更に有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、工程3で例示した溶媒があげられる。好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その混合比は特に制限されない。反応溶媒の使用量としては、前記化合物(5)に対して、好ましくは50倍重量以下、更に好ましくは20倍重量以下である。
【0264】
反応温度として好ましくは、反応時間短縮、及び収率向上の観点から−20〜120℃であり、更に好ましくは0〜100℃である。
【0265】
反応時間として好ましくは、収率向上の観点から5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0266】
反応の際の前記化合物(5)、酸、水、及び有機溶媒の添加方法や添加順序は特に制限されない。
【0267】
次に、3位のアミノ基をカルバメート保護する方法について説明する。3位のアミノ基をカルバメート保護する方法については特に制限されず、通常実施される保護方法で実施すればよいが、以下に一例を挙げて説明する。
【0268】
まずは前記化合物(5)の酸加水分解反応が終了した液に、塩基を加えて中和する。続いて、pHが7〜13を維持するように塩基を加えながらカルバメート保護試剤を加えるか、若しくは予めpHが7〜13を維持できる量の塩基を加え、ここにカルバメート保護試剤を加えて反応を行うとよい。
【0269】
カルバメート保護試剤としては例えば、塩化メトキシカルボニル、塩化エトキシカルボニル、塩化イソプロポキシカルボニル、二炭酸ジtert−ブチル、塩化アリルオキシカルボニル、塩化フェノキシカルボニル、塩化ベンジロキシカルボニル、二炭酸ジベンジル等が挙げられる。好ましくは二炭酸ジtert−ブチルである。カルバメート保護試剤の使用量としては、前記化合物(5)に対して、好ましくは1〜5倍モル量であり、更に好ましくは1〜2倍モル量である。
【0270】
反応温度としては、反応時間短縮、及び収率向上の観点から、好ましくは−20〜120℃であり、更に好ましくは0〜100℃である。
【0271】
反応時間としては、収率向上の観点から、好ましくは5分〜48時間であり、更に好ましくは2時間〜24時間である。
【0272】
反応後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水、または必要に応じて塩酸水溶液、硫酸水溶液等の酸水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0273】
なお、立体化学については、原料の立体化学がそのまま生成物に保持されるが、原料である前記化合物(5)と反応生成物である前記化合物(12)はIUPAC命名法上の主鎖が異なる為、前記化合物(5)の5位の炭素が前記化合物(12)の2位の炭素に相当し、前記化合物(5)の4位の炭素が前記化合物(12)の3位の炭素に相当する。従って
(4S,5R)の前記化合物(5)からは(2R,3S)の前記化合物(12)が得られ、
(4S,5S)の前記化合物(5)からは(2S,3S)の前記化合物(12)が得られ、
(4R,5S)の前記化合物(5)からは(2S,3R)の前記化合物(12)が得られ、
(4R,5R)の前記化合物(5)からは(2R,3R)の前記化合物(12)が得られる。前記化合物(12)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【0274】
工程13
本工程では、前記式(12)で表される化合物に、前記式(6)で表されるシクロプロピルアミンを縮合させることにより、下記式(15);
【0275】
【化56】
【0276】
で表される化合物を製造する。ここで、*、R3、R4は前記に同じである。また前記化合物(12)については、工程12で製造したものを用いても良いし、別途入手したものを用いてもよい。
【0277】
本工程は、前記化合物(12)とシクロプロピルアミンを直接反応させてもよいが、好ましくは前記化合物(12)とシクロプロピルアミンを脱水縮合剤で縮合させるか、又は前記化合物(12)を酸ハロゲン化物または混合酸無水物に誘導してからシクロプロピルアミンと反応させるとよい。
【0278】
本工程は、前記工程3と同様な方法で実施することができ、工程3で用いる原料である化合物(7)の替わりに化合物(12)を用いてやれば、反応条件は、同様である。
【0279】
なお、本工程において得られる前記化合物(15)の立体化学については、前記化合物(12)の立体化学がそのまま維持される。即ち、前記化合物(15)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【0280】
工程14
本工程では、前記式(15)で表される化合物の3位のアミノ基の保護基を脱保護することにより、前記式(2)で表される光学活性3−アミノ−2−ヒドロキシプロピオン酸シクロプロピルアミドまたはその塩を製造する。ここで、*、R4は前記に同じである。また前記化合物(15)については、工程13で製造したものを用いると良いし、別途入手したものを用いてもよい。
【0281】
ここで、前記脱保護する方法としては、保護基に応じて適宜選択すればよい。例えば、R3がメチル基やエチル基等の場合、酸やアルカリのいずれの条件でも加水分解を行うことができるが、R3がtert−ブチル基の場合は、酸で加水分解することが好ましい。またR3がベンジル基の場合は、パラジウム触媒存在下に水素を用いて脱保護することもできる。
【0282】
反応後の処理としては、脱保護の方法に応じて適宜行えばよい。例えば、酸加水分解を行った場合は、反応終了後の反応液に、必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を加えて中和し、一般的な抽出溶媒、例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。又は、反応終了後の反応液をそのまま濃縮乾固して、目的物を酸との塩として取得してもよく、更には反応液をメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン等の有機溶媒に置換することで目的物を酸との塩として析出させ、単離してもよい。このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、若しくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
【0283】
なお、本工程において得られる前記化合物(2)の立体化学については、前記化合物(15)の立体化学がそのまま維持される。即ち、前記化合物(2)の立体化学として好ましくは、(2S,3S)又は(2R,3R)である。
【実施例】
【0284】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0285】
実施例1 (2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸エチルの製造
【0286】
【化57】
【0287】
(2R,3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル(1.0g、5mmol)、エタノール(10ml)、炭酸カリウム(2.1g、15mmol)を混合し、15℃にて14時間攪拌した。メチルtert−ブチルエーテル(20ml)を加え、水(10ml)で3回洗浄した。有機層を減圧濃縮することにより、標題化合物(0.83g、収率100%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ4.24−4.21(m,2H),3.20(d,1H),3.08−3.04(dt,1H),1.72−1.62(m,2H),1.61−1.50(m,2H),1.28(t,3H),0.98(t,3H)。
【0288】
実施例2 (2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸メチルの製造
【0289】
【化58】
【0290】
(2R,3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸メチル(0.9g、5mmol)、エタノール(10ml)、炭酸カリウム(2.1g、15mmol)を混合し、15℃にて14時間攪拌した。メチルtert−ブチルエーテル(20ml)を加え、水(10ml)で3回水洗した。有機層を減圧濃縮することにより、標題化合物(0.75g、収率100%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ3.81(s,3H),3.23(d,1H),3.18−3.15(dt,1H),1.66−1.50(m,4H),0.99(t,3H)。
【0291】
実施例3 (2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸の製造
【0292】
【化59】
【0293】
(2R,3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル(5.0g、22mmol)、エタノール(15ml)を混合し、5℃に冷却した。これに20%ナトリウムエトキシド/エタノール溶液(8.3g、24mmol)をゆっくりと加え、室温にて1時間攪拌した。析出した無機塩をろ別し、ろ液に水酸化カリウム(1.24g、24mmol)を加え、室温にて14時間攪拌した。減圧下にて溶媒を留去し、水(15ml)を加えた。濃塩酸にてpH1.8に調製し、酢酸エチル(20ml)にて抽出した。減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物(2.33g、収率65%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ3.23(d,1H),3.17(dt,1H),1.72−51(m,4H),0.98(t,3H)。
【0294】
実施例4 (2S,3R)−N−シクロプロピル−3−プロピル−2−オキシランカルボキサミドの製造
【0295】
【化60】
【0296】
(2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸(1.16g、7.8mmol)、塩化メチレン(10ml)、シクロプロピルアミン(8.5当量)を混合し、5℃に冷却した。これに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(2.23g、1.2当量)の塩化メチレン溶液(5ml)をゆっくりと加え、5℃から室温にて2時間攪拌した。有機層を水(5ml)、1規定HCl(5ml)、水(5ml)にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。無機物をろ別し、ろ液を減圧下にて留去することにより、標題化合物を淡黄色固体(0.70g、収率53%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ6.15(brs,1H),3.19(d,1H),2.91−2.88(m,1H),2.68(dt,1H),1.65−1.48(m,4H),0.99(t,3H),0.79−0.77(m,2H),0.52−0.48(m,2H)。
【0297】
実施例5 (4S,5S)−N−シクロプロピル−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミドの製造
【0298】
【化61】
【0299】
(2S,3R)−N−シクロプロピル−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸(0.40g、2.4mmol)、アセトニトリル(4ml)を混合し、5℃に冷却した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.84g、6.2mmol)のアセトニトリル溶液(1ml)を加え、5℃で2時間、室温にて2時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水(10ml)にて反応を水解し、酢酸エチル(25ml)で抽出した。有機層を水(5ml)にて洗浄し、減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を淡黄色固体(0.45g、収率90%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ6.32(brs,1H),4.83(d,1H),4.31(dt,1H),2.75−2.71(m,1H),2.04(s,3H),1.72−1.66(m,1H),1.55−1.51(m,1H),1.42−1.37(m,1H),0.94−0.89(m,1H),0.92(t,3H),0.84−0.80(m,2H),0.57−0.52(m,2H)。
【0300】
実施例6 (2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸シクロプロピルアミド塩酸塩の製造
【0301】
【化62】
【0302】
N−シクロプロピル−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド(0.10g、0.5mmol)、メタノール(4ml)、濃塩酸(0.5ml、5.5mmol)を混合し、室温にて14時間攪拌した。減圧下にて溶媒を留去した。得られた固体にイソプロパノール(4ml)を加え、室温にて10分間攪拌した。結晶をろ別し、減圧下にて乾燥することにより、標題化合物を白色結晶(0.03g、収率28%)として得た。
1H NMR(400MHz,D2O):δ4.38(d,1H),3.66−3.62(m,1H),2.66−2.61(m,1H),1.65−1.30(m,4H),0.91(t,3H),0.83−0.76(m,2H),0.60−0.55(m,2H)。
【0303】
実施例7 (4S,5S)−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボン酸エチルの製造
【0304】
【化63】
【0305】
(2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸エチル(0.8g、5mmol)にアセトニトリル(5ml)を加えて5℃に冷却し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.4g、5.5mmol)をゆっくりと滴下した。室温で6時間攪拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15ml)を加えた。混合液を濃縮し、酢酸エチル(20ml)にて抽出した。有機層を水(10ml)で2回洗浄し、減圧下にて溶媒を留去した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物を無色油状物(0.69g、収率65%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ4.90(d,1H),4.32−4.21(m,3H),2.05(s,3H),1.63−1.24(m,7H),0.92(t,3H)。
【0306】
実施例8 (2S,3S)−N−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸の製造
【0307】
【化64】
【0308】
(4S,5S)−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボン酸エチル(0.68g、3mmol)、6規定塩酸(10ml)を混合し、100℃にて14時間攪拌した。5℃に冷却し、pH9.8に調整した。二炭酸ジtert−ブチル(1eq)のトルエン溶液(1ml)を添加し、室温で2時間攪拌した。これに水(10ml)、酢酸エチル(20ml)を加え、pH2.3に調整した。水層を除去し、減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を得た(0.71g、収率78%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ4.91(d,1H),4.33(d,1H),3.95(ddt,1H),1.59−1.28(m,13H),0.98(t,3H)。
【0309】
実施例9 2−クロロ−3−ヒドロキシへキサン酸エチルの製造
【0310】
【化65】
【0311】
ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー(126mg、S/C=50)、(S)−2,2’−ビスジフェニルホスフィノ−1,1’−ビナフチル(332mg)、ジメチルホルムアミド(4ml)を混合し、減圧窒素置換した。100℃で10分間攪拌し、触媒溶液を調製した。
【0312】
2−クロロ−3−オキソへキサン酸エチル(2.5g、13mmol)、メタノール(7.5ml)、水(0.75ml)を混合し、減圧窒素置換した。上記触媒溶液をこれに加え、減圧水素置換(3気圧)を行い、70℃にて14時間攪拌した。室温まで放冷し、減圧下にて溶媒を留去した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物を無色油状物(1.83g、収率72%)として得た((2S,3R):(2S,3S):(2R,3S):(2R,3R)=6.2:58.5:33.2:2.2))。
【0313】
実施例10 (2R,3S)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸エチルの製造
【0314】
【化66】
【0315】
実施例9で合成した2−クロロ−3−ヒドロキシへキサン酸エチル(0.8g、4mmol)、エタノール(3ml)、20%ナトリウムエトキシド/エタノール溶液(1.52g、1.1当量)を混合し、室温にて30分攪拌した。ヘキサン(10ml)を加え、水(10ml×2回)にて洗浄した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、無機塩をろ別後、ろ液を減圧下にて留去した。標題化合物を無色油状物(0.9g、収率87%、(2R,3S)体が主成分)として得た。
【0316】
実施例11 (2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸シクロプロピルアミドの製造
【0317】
【化67】
【0318】
(2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸メチル(0.26g、1.8mmol)、エタノール(1ml)、シクロプロピルアミン(1.03g、18mmol)を混合し、室温にて14時間攪拌した。酢酸エチル(20ml)を加え、1規定HCl(5ml)、水(5ml)にて洗浄し、減圧下に溶媒を留去することにより、標題化合物を淡黄色固体(0.17g、収率55%)として得た。
【0319】
実施例12 (2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸シクロプロピルアミドの製造
【0320】
【化68】
【0321】
(2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸118mg、0.8mmol)、トリエチルアミン(0.8mmol)、テトラヒドロフラン(2ml)を混合し、−20℃に冷却した。塩化エトキシカルボニル(86mg、0.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1ml)をゆっくりと加え、同温度にて30分攪拌した。シクロプロピルアミン(48mg、0.8mmol)のテトラヒドロフラン(1ml)溶液をゆっくりと滴下し、同温度にて2時間、室温にて2時間攪拌した。水(10ml)にて水解し、酢酸エチル(10ml)を加え、減圧下に溶媒を留去した。酢酸エチル(10ml)にて抽出し、水(5ml)で洗浄した。減圧下に溶媒を留去し、標題化合物を無色油状物(0.10g、収率76%)として得た。
【0322】
実施例13 (4S,5S)−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボン酸メチルの製造
【0323】
【化69】
【0324】
(2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸メチル(1.42g、9.8mmolmmol)にアセトニトリル(15ml)を加えて5℃に冷却し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1,24g、11mmolmmol)をゆっくりと滴下した。室温で6時間攪拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)を加えた。混合液を濃縮し、酢酸エチル(30ml)にて抽出した。有機層を水(10ml×2)にて洗浄し、減圧下にて溶媒を留去した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物を無色油状物(1.23g、収率76%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ4.93(d,1H),4.31(dt,1H),3.81(s,3H),2.05(s,3H),1.63−1.31(m,4H),0.93(t,3H)。
【0325】
実施例14 (2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸塩酸塩の製造
【0326】
【化70】
【0327】
(4S,5S)−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボン酸メチル(0.68g、3mmol)、6規定塩酸(10ml)を混合し、100℃にて14時間攪拌した。減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を白色固体(0.50g、収率90%)として得た。
1H NMR(400MHz,D2O):δ4.37(dd,1H),3.64(dt,1H),1.68−1.27(m,4H),0.98(t,3H)。
【0328】
実施例15 (2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸メチル塩酸塩の製造
【0329】
【化71】
【0330】
(4S,5S)−2−メチル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボン酸メチル(0.2g、1.1mmol)、メタノール(2ml)、濃塩酸(0.25ml)を混合し、室温にて3時間攪拌した。減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を白色固体(0.1g、収率50%)として得た。
1H NMR(400MHz,D2O):δ4.67(d,1H),3.90(s,3H),3.79−3.74(m,1H),1.79−1.61(m,1H),1.58−1.24(m,4H),0.92(t,3H)。
【0331】
実施例16 酵母菌による2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチルの還元
グルコース 4%、イーストエキス 0.3%、KH2PO4 1.3%、(NH42HPO4 0.7%、NaCl 0.01%、MgSO4・7H2O 0.08%、ZnSO4・7H2O 0.006%、FeSO4・7H2O 0.009%、CuSO4・5H2O 0.0005%、MnSO4・4〜5H2O 0.001%からなる液体培地(pH7.0)を調製し、大型試験管に5mlずつ分注して、120℃で20分間蒸気殺菌した。これらの液体培地に表1及び表2に示した酵母菌をそれぞれ1白金耳植菌し、30℃で2〜3日間振盪培養した。この培養液から遠心分離または吸引ろ過により菌体を集め、水洗後、0.1Mリン酸緩衝液(pH5.5)1mlに懸濁した。この菌体懸濁液0.5mlに、2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチル 1mg、グルコース 10mgを添加し、栓付試験管で30℃にて24時間振とうした。反応終了後酢酸エチル1mlにより抽出し、抽出液中の生成物をGCで分析することにより、収率(%)、ジアステレオマー比(anti/syn)、及び光学純度(%e.e.)を求めた。結果を表1及び表2に示す。
【0332】
分析条件、光学純度の計算方法は以下の通りである。
【0333】
〔収率の分析〕
GC分析条件=キャピラリーカラム:HP−5 Φ0.32mm I.D.×30m(J&W Scientific社製)、キャリアーガス:He 300kPa、検出器:FID、カラム温度:120℃、検出時間:2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチル 8.8分、2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル 10.1〜10.5分。
【0334】
〔ジアステレオマー比、及び光学純度の分析〕
GC分析条件=キャピラリーカラム:CHIRALDEX G−TA Φ0.25mm I.D.×30m(ASTEC社製)、キャリアーガス:He 300kPa、検出器:FID、カラム温度:110℃、検出時間:(2R、3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル 16.7分、(2S、3S)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル 17.8分、(2R、3S)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル 18.9分、(2S、3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル 20.7分
光学純度(%ee)=(A−B)/(A+B)×100
(A及びBは対応する鏡像異性体量を表し、A>Bである)
【0335】
【表1】
【0336】
【表2】
【0337】
実施例17 細菌による2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチルの還元
肉エキス 1%、ポリペプトン 1%、イーストエキス 0.5%、NaCl 0.3%からなる液体培地(pH7.0)を調製し、大型試験管に5mlずつ分注して、120℃で20分間蒸気殺菌した。これらの液体培地に表3に示した細菌をそれぞれ1白金耳植菌し、30℃で2〜3日間振盪培養した。この培養液から遠心分離または吸引ろ過により菌体を集め、水洗後、0.1Mリン酸緩衝液(pH5.5)0.5mlに懸濁した。この菌体懸濁液を用いて実施例16と同条件で反応及び抽出を行い、収率(%)、ジアステレオマー比(anti/syn)、及び光学純度(%e.e.)を求めた。結果を表3に示す。
【0338】
【表3】
【0339】
実施例18 放線菌による2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチルの還元
表4に示す微生物について、トリプティックソイブロス 3%、可溶性澱粉 1%からなる液体培地(pH7.2)を用いた他は実施例17と同様の操作を行い、収率(%)、ジアステレオマー比(anti/syn)、及び光学純度(%e.e.)を求めた。結果を表4に示す。
【0340】
【表4】
【0341】
実施例19 カビによる2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチルの還元
表5に示すカビについて、肉エキス 1%、ポリペプトン 1%、グルコース 1%、イーストエキス 0.5%、NaCl 0.1%、MgSO4・7H2O 0.05%からなる液体培地(pH7.0)を用いた以外は実施例16と同様の操作を行い、収率(%)、ジアスエレオマー比(anti/syn)、及び光学純度(%e.e.)を求めた。結果を表5に示す。
【0342】
【表5】
【0343】
実施例20 組換え大腸菌による2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチルの還元
バクト−トリプトン1.6%、バクト−イーストエキス1%、NaCl0.5%(pH7.0)からなる培地50mlを500ml坂口フラスコに入れ殺菌後、Escherichia coli HB101(pTSCS)受託番号FERM BP-10024を植菌し、37℃で24時間振とう培養した。得られた培養ブロス50mlに、2−クロロ−3−オキソヘキサン酸エチル 1g、グルコース脱水素酵素(天野エンザイム社製) 100Units、グルコース 1280mg、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+) 2.5mgを添加し、30%NaOHでpHを6.5に保ちながら24時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル100mlで2回抽出し、得られた有機相を減圧濃縮し、油状の2−クロロ−3−ヒドロキシヘキサン酸エチル 0.96gを得た。得られたものをGCにより分析したところ、anti/syn=99/1、anti体(2S,3S)の光学純度は99.7%e.e.であった。
【0344】
実施例21 (3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルの製造
【0345】
【化72】
【0346】
2−クロロ−3−オキソ−4−フェニル酪酸エチル(180mg、0.7mmol)、RuCl[(S,S)−TsDPEN](p−cymen)錯体(10mg、2mol%)を混合し、クロロベンゼン(1ml)に溶解させた。トリエチルアミン(374mg、5当量)のクロロベンゼン溶液(1ml)を添加し、次にギ酸(102mg、3当量)のクロロベンゼン溶液(1ml)をゆっくりと滴下した。40℃にて3時間攪拌後、水(4ml)を加えた。酢酸エチル(10ml)を加えて抽出し、有機層を減圧濃縮することにより標題化合物を褐色油状物として得た(182mg、収率100%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.41−7.22(m,5H),4.23(q,2H),4.15(d,1H),3.11(dd,1H),2.90(dd,1H),2.5(brs,1H),1.29(t,3H)。
【0347】
実施例22 (2S,3R)−3−ベンジル−2−オキシランカルボン酸の製造
【0348】
【化73】
【0349】
(3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチル(122mg、0.5mmol)をエタノール(3ml)に溶かし、20重量%ナトリウムエトキシド/エタノール溶液(254mg)をゆっくりと添加した。室温にて3時間攪拌し、減圧下にて溶媒を留去した。水(5ml)を加え、30重量%水酸化ナトリウム水溶液でpHを13に調整した。トルエン(5ml)にて洗浄し、濃塩酸にてpH1.5に調整した。酢酸エチル(15ml)にて抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去することにより、標題化合物を褐色油状物として得た(66mg、収率74%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ9.33(brs,1H),7.43−7.18(m,5H),3.40(dt,1H),3.30(s,1H)。
【0350】
実施例23 (2S,3R)−3−ベンジル−2−オキシランカルボン酸シクロプロピルアミドの製造
【0351】
【化74】
【0352】
(2S,3R)−3−ベンジル−2−オキシランカルボン酸(66mg)とシクロプロピルアミン(23.2mg、1.1当量)のクロロベンゼン溶液(2ml)を混合し、5℃に冷却した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの塩酸塩(1.5当量)の塩化メチレン溶液(2ml)をゆっくりと加え、室温にて14時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)を加え、酢酸エチル(10ml)で抽出した。有機層を1規定塩酸(5ml)、水(5ml)で順次洗浄し、減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を褐色油状物として得た(50mg、収率62%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.30−7.15(m,5H),6.23(brs,1H),3.28(d,1H),3.14(ddd,1H),3.05(dd,1H),2.80(dd,1H),0.75(dt,2H),0.47(dt,2H)。
【0353】
実施例24 (4S,5S)−N−シクロプロピル−2−イソプロピル−4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミドの製造
【0354】
【化75】
【0355】
(2S,3R)−3−ベンジル−2−オキシランカルボン酸シクロプロピルアミド(50mg)、イソブチロニトリル(2ml)を混合し、5℃に冷却した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(2.5当量)をゆっくりと加え、5〜20℃にて2時間攪拌した。酢酸エチル(10ml)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)の混合溶液を5℃に冷却しておき、この中に反応液をゆっくりと滴下した。水層を除去した後に減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を褐色固体として得た(63mg、収率96%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.30−7.18(m,5H),6.25(brs,1H),4.84(d,1H),4.60(dt,1H),3.16(dd,1H),2.76(tt,1H),2.60(dd,1H),2.52(dd,1H),1.20(d,6H),0.83(dd,2H),0.57(dd,2H)。
【0356】
実施例25 (2S,3S)−2−ヒドロキシ−3−アミノ−4−フェニル酪酸塩酸塩の製造
【0357】
【化76】
【0358】
(4S,5S)−N−シクロプロピル−2−イソプロピル−4−ベンジル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド(63mg)、アセトン(2.5ml)、濃塩酸(0.25g)を混合し、50℃にて23時間攪拌した。反応液を濃縮し、イソプロパノール(5ml)を加えて減圧濃縮した。更に同じ操作を繰り返した後、イソプロパノール(3ml)を添加すると結晶が析出した。結晶を減圧ろ別し、真空乾燥することにより、標題化合物を白色結晶として得た(23mg、収率36%)。
1H NMR(400MHz,D2O):δ7.27−7.16(m,5H),4.27(brs,1H),3.98−3.80(m,1H),2.95−2.85(m,1H),2.26−2.22(m,1H),0.83(dd,2H),0.57(dd,2H)。
【0359】
実施例26 (2S,3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシへキサン酸エチルの製造
【0360】
【化77】
【0361】
2−クロロ−3−オキソへキサン酸エチル(194mg)、DMF(2.4ml)、RuCl[(S,S)−MesDPEN](p−cymen)錯体(1mol%)、トリエチルアミン(5当量)を混合し、これにギ酸(5当量)をゆっくりと加えた。40℃、3時間反応を行った。反応液を分析した結果、変換率は97%であり、異性体比は((2S,3R):(2S,3S):(2R,3R):(2R,3S)=94.7:1.3:0:4.0)であった。なお、Mesはメチレンスルホニル基を表す。
【0362】
実施例27 (2S,3R)−2−クロロ−3−ヒドロキシへキサン酸エチルの製造
2−クロロ−3−オキソへキサン酸エチル(194mg)、DMF(2.4ml)、RuCl[(S,S)−NpDPEN](p−cymen)錯体(1mol%)、トリエチルアミン(5当量)を混合し、これにギ酸(5当量)をゆっくりと加えた。40℃、3時間反応を行った。反応液を分析した結果、変換率は95%であり、異性体比は((2S,3R):(2S,3S):(2R,3R):(2R,3S)=88.3:4.6:2.1:5.1)であった。
【0363】
実施例28 2−クロロ−3−ヒドロキシへキサン酸エチルの製造
2−クロロ−3−オキソへキサン酸エチル(194mg)、クロロベンゼン(3ml)、RuCl[(S,S)−TsDPEN](p−cymen)錯体(1mol%)、トリエチルアミン(5当量)を混合し、これにギ酸(3当量)をゆっくりと加えた。40℃、3時間反応を行った。反応液を分析した結果、変換率は100%であり、異性体比は((2S,3R):(2S,3S):(2R,3R):(2R,3S)=63.7:24.9:4.1:7.3)であった。
【0364】
参考例1 3−オキソ−4−フェニル酪酸エチルの製造
【0365】
【化78】
【0366】
マロン酸モノエチルモノカリウム塩(12.9g、2.3当量)をテトラヒドロフラン(200ml)と混合し、5℃に冷却した。トリエチルアミン(8.2g、2.5当量)、塩化マグネシウム(8.62g、2.8当量)を加えて5〜20℃で3時間攪拌した。反応液を5℃に冷却し、フェナシルクロライド(5g、32mmol、1当量)をゆっくりと加え5〜20℃で63時間攪拌した。5℃に冷却し、1規定塩酸(30ml)を添加した。減圧下にてテトラヒドロフランを留去し、酢酸エチル(50ml)で抽出した。有機層を1規定塩酸(30ml)、水(10ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)、水(10ml)で順次洗浄した。減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を淡黄色油状物として得た(5.82g、収率86%)。
【0367】
参考例2 2−クロロ−3−オキソ−4−フェニル酪酸エチルの製造
【0368】
【化79】
【0369】
3−オキソ−4−フェニル酪酸エチル(4.8g、23mmol)を塩化メチレン(48ml)と混合し、ここに塩化スルフリル(3.1g、1当量)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、20℃で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、酢酸エチル(20ml)で抽出した。溶媒を減圧下に留去し、真空乾燥することにより標題化合物を黄色油状物として得た(4.8g、収率86%)。
【0370】
実施例29 (4S,5S)−N−シクロプロピル−2−イソプロピル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミドの製造
【0371】
【化80】
【0372】
(2S,3R)−3−プロピル−2−オキシランカルボン酸エチル(3.2g、19mmol)にイソブチロニトリル(6.8g)を加えて5℃に冷却し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(5.5g、2当量)をゆっくりと滴下して室温で2時間攪拌した。酢酸エチル(40ml)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(13ml)を混合して5℃に冷却しておき、この中に反応液を投入した。pHを6.7に調整し、水層を除去した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(8ml)で洗浄し、減圧下にて溶媒を留去することにより、標題化合物を黄色固体(6.23g、収率90%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ6.24(brs,1H),4.80(d,1H),4.36(dt,1H),2.80−2.55(m,2H),1.80−1.36(m,3H),1.22−1.05(m,7H),0.95(t,3H)、0.83−0.80(m,2H),0.55−0.50(m,2H)。
【0373】
実施例30 (2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸シクロプロピルアミド塩酸塩の製造
(4S,5S)−N−シクロプロピル−2−イソプロピル−4−プロピル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド(3.11g、8.7mmol)、アセトン(15ml)、濃塩酸(1.39g、1.5当量)を混合し、50℃にて39時間攪拌した。減圧下にて溶媒を留去した。イソプロパノール(10ml)を加えて濃縮し、再度同様の操作を行なった。得られた固体にメタノール(2.7ml)を加え、60℃にて1時間間攪拌した。これに酢酸エチル(20ml)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、5℃まで徐々に冷却した。析出した結晶をろ別し、減圧下にて乾燥することにより、標題化合物を白色結晶(1.36g、収率72%)として得た。
【0374】
実施例31 組換え大腸菌による2−クロロ−3−オキソ−4−フェニル酪酸エチルの還元
バクト−トリプトン1.6%、バクト−イーストエキス1%、NaCl0.5%(pH7.0)からなる培地50mlを500ml坂口フラスコに入れ殺菌後、Escherichia coli HB101(pNTRDG1)受託番号FERM BP-08458を植菌し、37℃で24時間振とう培養した。得られた培養ブロス50mlに、2−クロロ−3−オキソ−4−フェニル酪酸エチル 1g、グルコース 2g、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+) 2.5mgを添加し、30%NaOHでpHを6.5に保ちながら24時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル100mlで2回抽出し、得られた有機相を減圧濃縮し、油状の2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチル0.96gを得た。得られたものをGCにより分析したところ、anti/syn=99/1、anti体(2S,3S)の光学純度は99.8%e.e.であった。