特許第5746813号(P5746813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746813皮膚の老化の外観を処置、低減及び抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746813
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】皮膚の老化の外観を処置、低減及び抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20150618BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20150618BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20150618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150618BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61K8/64
   A61P17/16
   A61P43/00 111
   A61Q19/08
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2008-557569(P2008-557569)
(86)(22)【出願日】2007年3月9日
(65)【公表番号】特表2009-532332(P2009-532332A)
(43)【公表日】2009年9月10日
(86)【国際出願番号】CA2007000396
(87)【国際公開番号】WO2007101354
(87)【国際公開日】20070913
【審査請求日】2010年3月9日
【審判番号】不服2013-9817(P2013-9817/J1)
【審判請求日】2013年5月28日
(31)【優先権主張番号】60/780,352
(32)【優先日】2006年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/797,352
(32)【優先日】2006年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】グランビル、デビッド、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】クルス、ラニ、プリヤ、ゴメス
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 新留 素子
【審判官】 大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−522430(JP,A)
【文献】 特開2000−136122(JP,A)
【文献】 Biochim Biophys Acta,2000年,Vol.1477(1−2),pp.307−323
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,1997年,Vol.25,pp.36−40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDream2)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の弾力性を増加するため、
皮膚の脆弱性を維持又は低減するため、
皮膚の厚さを維持又は増加するため、
対象の皮膚のしわの外観ないし発現を維持又は低減するため、
皮膚のしわの深さを維持又は低減するため、
皮膚の細かいしわの外観ないし発現を維持又は低減するため、
対象の皮膚の変色の外観ないし発現を維持又は低減するため、及び/又は
対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するための、グランザイムB阻害剤を含む美容剤。
【請求項2】
前記皮膚の細胞外蛋白質の含有量を維持又は増加するため、及び/又は
前記皮膚の皮膚エラスチンの含有量を維持又は増加するための請求項1に記載の美容剤。
【請求項3】
細胞外蛋白質の含有量の減少速度を低減するため、及び/又は
前記皮膚の皮膚エラスチンの含有量の減少速度を低減するための請求項1に記載の美容剤。
【請求項4】
前記皮膚の弾力性の減少速度を低減するため、
前記皮膚の脆弱性の増加速度を低減するため
記皮膚の厚さの減少速度を低減するため
記対象の前記皮膚のしわの発現の増加速度を低減するため、
前記皮膚のしわの深さの増加速度を低減するため、
前記皮膚の細かいしわの発現の増加速度を低減するため、
前記皮膚の変色の発現の増加速度を低減するため、及び/又は
前記皮膚の体毛の毛包密度の増加速度を増加するための請求項1又は3に記載の美容剤。
【請求項5】
対象の皮膚の非弾力性を低減するため、
対象の皮膚の非弾力性の増加速度を低減するため、又は
対象の皮膚の弾力性を維持するためのグランザイムB阻害剤を含む美容剤。
【請求項6】
前記美容剤は、局所的に適用するため、
下的に適用するため、又は
身的に適用するための組成物として調製される請求項1〜のいずれか一に記載の美容剤。
【請求項7】
前記対象は人間を除く哺乳動物であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一に記載の美容剤。
【請求項8】
前記対象は人間であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一に記載の美容剤。
【請求項9】
対象の皮膚の細胞外基質蛋白質の劣化ないし変質を抑制するためのグランザイムB阻害剤を含む美容剤。
【請求項10】
前記細胞外基質蛋白質がエラスチンである、請求項に記載の美容剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の美容の分野に関する。特に、グランザイムB阻害剤を用いる皮膚の老化の外観(ないし発現)の処置、低減及び抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
WO03/065987で公開された国際出願には、自己免疫性慢性炎症やその他の疾病及び障害の治療のためにグランザイムB阻害剤を用いることが開示されている。
【0003】
2003/0148511で公開された米国特許出願には、細胞傷害性T細胞を媒介した免疫反応を増大させるための方法と共に、ウイルス及び/又は癌に対するホスト(宿主)免疫を増大させるためにグランザイムB阻害剤を用いることが開示されている。
【0004】
Buzzaら(The Journal of Biological Chemistry, Volume 280, No. 25, pages 23549-23558(2005))によると、グランザイムBは細胞外の基質を再構築する強い能力があると記載している。Buzzaらはまた、原初(未組換え)の及び組換え型のグランザイムBはいずれも、主に内皮細胞及び軟骨細胞の不死化及び形質変換された株化細胞を分離すると記載している。Buzzaらはまた、グランザイムBは細胞外基質の構造や機能に関与する3つの蛋白質、ビトロネクチン、フィブロネクチン及びラミニンを切断(開裂)すると記載している。
【0005】
皮膚は人体の中で最も大きな臓器の1つであり、その状態や外観は、皮膚に含まれるエラスチンの量と状態により部分的に決定される。エラスチンは基質蛋白質であり、トロポエラスチンモノマーから構成され、架橋してより大きな三次構造を形成している。エラスチンは弾力性を与え、負荷状態での伸張による組織の動的変形を抑制又は制止し、負荷がなくなった後に組織がもとの配列に戻ることを可能にする。皮膚のしなやかさや弾力性の喪失、関節のこわばりそして柔軟性の喪失は、エラスチンの劣化と組織の結合構造の変質に関連している。
【特許文献1】WO03/065987
【特許文献2】US2003/0148511
【特許文献3】WO2004/100889
【非特許文献1】Buzza, et. al., The Journal of Biological Chemistry, Volume 280, No. 25, pages 23549-23558(2005)
【非特許文献2】Bird et. al.、Mol. Cell. Biol. 18, 6387-6398(1998)
【非特許文献3】Kam et. al.、Biochim Biophys Acta 1477(12):307:23(2000)
【非特許文献4】Alfonso Gennaro, Remington: the Science & Practice of Pharmacy, 20th ed., Williams & Wilkins (2000)
【非特許文献5】Agache et. al., Measuring the Skin, Springer (2004)
【非特許文献6】Chapman et.al., British Journal of Dermatology (2005),152: 646-649
【非特許文献7】Banda, M. J. and Werb, Z., (1981) Biochem J, 193:589-605
【非特許文献8】Gordon, S., Werb, Z, and Cohn, Z.A. (1976), In Vitro Methods in Cell Mediated and Tumor Immunity, Bloom, B.R.とDavid, J.R.による共同編集, Academic Press, New York, page 349-350
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚の性質を改善処理するさまざまな組成物や方法が知られている。例えば、WO2004/100889で出願公開された国際出願には、皮膚の美観を改善するための、3,3’−チオジプロピオン酸又はその誘導体を含む抗老化剤が開示されている。皮膚の性質を改善処理する一つの方法は、美容外科手術である。他の方法は、腐食性組成物の適用のみか、又は皮膚の外皮を物理的に剥ぎ取る、いわゆる「皮膚剥離」及び「化学的脱皮」処理を組み合わせるものである。皮膚の性質を改善処理する多くの組成物は、疾病の治療のための医薬ではなく、しわやたるみ(窪み)といった皮膚の正常な状態を改変するものである。このような正常な皮膚の状態は、しばしばエラスチン即ち細胞外蛋白質の劣化(ないし変質、degradation)に関係している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、部分的に、グランザイムBが、皮膚中のエラスチンとともに、及び皮膚中のエラスチンの近傍に共存しているという観察結果に基づいている。本発明はまた、部分的に、グランザイムBは、他の細胞外基質(マトリックス)蛋白質に加えて、細胞及び血漿を取り囲む間質空間のエラスチンを切断するという観察結果に基づいている。
【0008】
本発明の1つの視点において、グランザイムB阻害剤を対象(subject)の皮膚に適用する(ないし施す、application)ことを含む、対象の皮膚の外観を若々しく保つための方法が提供される。
【0009】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の老化の外観ないし発現を低減するための方法が提供される。
【0010】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の老化の外観ないし発現を抑制するための方法が提供される。
【0011】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の老化の外観の発現速度を低減するための方法が提供される。
【0012】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の非弾力性(弾力性のなさ、inelasticity)を低減するための方法が提供される。
【0013】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の非弾力性の増加速度(弾力性の喪失速度)を低減するための方法が提供される。
【0014】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の弾力性を保つための方法が提供される。
【0015】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚に適用することを含む、対象の皮膚の体毛(hair)の毛包(follicle)密度を増加するための方法が提供される。
【0016】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の外観を若々しく保つためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0017】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化の外観ないし発現を低減するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0018】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化の外観ないし発現を抑制するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0019】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化的外観の発現速度を低減するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0020】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化的外観の発現速度を低減するための薬剤の調製のためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0021】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の非弾力性を低減するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0022】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の非弾力性の増加速度を低減するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0023】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の非弾力性の増加速度を低減するための薬剤を調製するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0024】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の弾力性を維持するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0025】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の弾力性を維持するための薬剤を調製するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0026】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0027】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するための薬剤を調製するためのグランザイムB阻害剤の使用が提供される。
【0028】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の外観を若々しく保つために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0029】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化の外観ないし発現を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0030】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化の外観ないし発現を抑制するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0031】
本発明の他の視点において、皮膚の細胞外蛋白質の含有量を維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0032】
本発明の他の視点において、皮膚の皮膚エラスチンの含有量を維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0033】
本発明の他の視点において、皮膚の弾力性を維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0034】
本発明の他の視点において、皮膚の脆弱性を維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0035】
本発明の他の視点において、皮膚の堅牢性を維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0036】
本発明の他の視点において、皮膚の剥がれ落ちやすさを維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0037】
本発明の他の視点において、皮膚の乾燥度を維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0038】
本発明の他の視点において、皮膚のポア(細孔ないし毛穴)サイズを維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0039】
本発明の他の視点において、皮膚の厚さを維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0040】
本発明の他の視点において、皮膚の細胞の代謝回転速度を維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0041】
本発明の他の視点において、対象の皮膚のしわの外観ないし発現を維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0042】
本発明の他の視点において、皮膚のしわの深さを維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0043】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の細かいしわの外観ないし発現を維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0044】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の変色の外観ないし発現を維持又は低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0045】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の老化的外観の発現速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0046】
本発明の他の視点において、細胞外蛋白質の含有量の減少速度を低減するために使用するグランザイムB阻害が提供される。
【0047】
本発明の他の視点において、皮膚の皮膚エラスチンの含有量の減少速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0048】
本発明の他の視点において、皮膚の弾力性の減少速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0049】
本発明の他の視点において、皮膚の脆弱性の増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0050】
本発明の他の視点において、皮膚の堅牢性の減少速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0051】
本発明の他の視点において、皮膚の剥がれ落ちやすさの増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0052】
本発明の他の視点において、皮膚の乾燥度の増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0053】
本発明の他の視点において、皮膚のポアサイズの増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0054】
本発明の他の視点において、皮膚の厚さの減少速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0055】
本発明の他の視点において、皮膚の細胞の代謝回転速度の減少速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0056】
本発明の他の視点において、対象の皮膚のしわの発現の増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0057】
本発明の他の視点において、皮膚のしわの深さの増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0058】
本発明の他の視点において、皮膚の細かいしわの発現の増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0059】
本発明の他の視点において、皮膚の変色の発現の増加速度を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0060】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の非弾力性を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0061】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の非弾力性の増加速度(弾力性の喪失速度)を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0062】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の弾力性を維持又は増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0063】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0064】
本発明の他の視点において、体毛の灰色化(しらが化)を低減するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0065】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を局所的に適用するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0066】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を皮下的に適用するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0067】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚全体に適用するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0068】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の皮膚の一部に適用するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0069】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を対象の頭皮のみに適用するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0070】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤を全身的(systemic)に適用するために使用するグランザイムB阻害剤が提供される。
【0071】
本発明の他の視点において、適用の対象は哺乳動物であることを特徴とするグランザイムB阻害剤が提供される。
【0072】
本発明の他の視点において、適用の対象は家庭用ペットであることを特徴とするグランザイムB阻害剤が提供される。
【0073】
本発明の他の視点において、適用の対象は人間であることを特徴とするグランザイムB阻害剤が提供される。
【0074】
本発明の他の視点において、適用の対象は犬であることを特徴とするグランザイムB阻害剤が提供される。
【0075】
本発明の他の視点において、皮膚の細胞外蛋白質の含有量を維持又は増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0076】
本発明の他の視点において、皮膚のエラスチン含有量を維持又は増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0077】
本発明の他の視点において、皮膚の弾力性を維持又は増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0078】
本発明の他の視点において、皮膚の脆弱性(fragility)を維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0079】
本発明の他の視点において、皮膚の堅牢性(引き締まり、firmness)を維持又は増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0080】
本発明の他の視点において、皮膚の剥がれ落ちやすさ(flakiness)を維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0081】
本発明の他の視点において、皮膚の乾燥度を維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0082】
本発明の他の視点において、皮膚のポアサイズを維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0083】
本発明の他の視点において、皮膚の厚さを維持又は増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0084】
本発明の他の視点において、皮膚細胞の代謝回転速度を維持又は増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0085】
本発明の他の視点において、対象の皮膚のしわ(wrinkles)の外観(ないし発現)を維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0086】
本発明の他の視点において、皮膚のしわの深さを維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0087】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の細かいしわ(すじ、fine lines)の外観を維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0088】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の変色(退色、discolouration)の外観を維持又は低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0089】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の細胞外蛋白質含有量の減少速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0090】
本発明の他の視点において、対象の皮膚のエラスチン含有量の減少速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0091】
本発明の他の視点において、皮膚の弾力性の減少速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0092】
本発明の他の視点において、皮膚の脆弱性の増加速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0093】
本発明の他の視点において、皮膚の堅牢性(引き締まり)の減少速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0094】
本発明の他の視点において、皮膚の剥がれ落ちやすさの増加速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0095】
本発明の他の視点において、皮膚の乾燥度の増加速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0096】
本発明の他の視点において、皮膚のポアサイズの増大速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0097】
本発明の他の視点において、皮膚の厚さの減少速度を増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0098】
本発明の他の視点において、皮膚細胞の代謝回転速度の減少速度を増加することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0099】
本発明の他の視点において、対象の皮膚のしわの外観の増加速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0100】
本発明の他の視点において、皮膚のしわの深さの増大速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0101】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の細かいしわ(すじ)の外観の増加速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0102】
本発明の他の視点において、対象の皮膚の変色(退色)の外観の増加速度を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0103】
本発明の他の視点において、体毛の灰色化(しらが化)を低減することを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0104】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤が局所的に適用されることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0105】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤が皮下的に適用されることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0106】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤が対象の皮膚全体に適用されることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0107】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤が対象の皮膚の一部に適用されることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0108】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤が対象の頭皮のみに適用されることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0109】
本発明の他の視点において、グランザイムB阻害剤が全身的(systemic)に適用されることされることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0110】
本発明の他の視点において、対象が哺乳動物、家庭内ペット、人間及び犬であることを特徴とする方法及び使用が提供される。
【0111】
本発明の他の視点において、以下の手順を含むグランザイムB阻害剤の識別方法が提供される。即ち、i)グランザイムBを試験化合物と接触させ、初回刺激を受けたグランザイムBを形成する、ii)初回刺激を受けたグランザイムBを細胞外皮膚膜に接触させる、iii)切断された細胞外蛋白質の量を測定する。そして切断された細胞外蛋白質の量が小さければ、その試験化合物はグランザイムB阻害剤と判断される。
【0112】
本発明の他の視点において、以下の手順を含むグランザイムB阻害剤の識別方法が提供される。即ち、i)グランザイムBを試験化合物と接触させ、初回刺激を受けたグランザイムBを形成する、ii)初回刺激を受けたグランザイムBをエラスチンに接触させる、iii)切断されたエラスチンの量を測定する。そして切断されたエラスチンの量が小さければ、その試験化合物はグランザイムB阻害剤と判断される。
【0113】
本発明の他の視点において、以下の手順を含むグランザイムBアゴニスト(作用物質)の識別方法が提供される。即ち、i)グランザイムBを試験化合物と接触させ、初回刺激を受けたグランザイムBを形成する、ii)初回刺激を受けたグランザイムBを細胞外皮膚膜に接触させる、iii)切断された細胞外蛋白質の量を測定する。そして切断された細胞外蛋白質の量が多ければ、その試験化合物はグランザイムBアゴニストと判断される。
【0114】
本発明の他の視点において、以下の手順を含むグランザイムBアゴニストの識別方法が提供される。即ち、i)グランザイムBを試験化合物と接触させ、初回刺激を受けたグランザイムBを形成する、ii)初回刺激を受けたグランザイムBをエラスチンに接触させる、iii)切断されたエラスチンの量を測定する。そして切断されたエラスチンの量が多ければ、その試験化合物はグランザイムBアゴニストと判断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0115】
グランザイムBは、細胞及び血漿を取り囲む間質空間にあるエラスチン及びその他の細胞外蛋白質を切断することができるセリンプロテアーゼである。グランザイムBを阻害することは、エラスチン及びその他の細胞外蛋白質の切断を低減する。エラスチン及びその他の細胞外蛋白質の切断を低減することは、皮膚の状態を改善し、維持し、又は皮膚の通常の劣化速度を低減する。
【0116】
グランザイムBは、阻害できる酵素(エンザイム)である。グランザイムBの阻害剤は、グランザイムBによって細胞外蛋白質が切断されるのを阻害又は低減する物質である。例えば、グランザイムBがエラスチンを切断するのを阻止する化合物又は組成物は、グランザイムB阻害剤であろう。多くの場合、阻害剤は拮抗剤(アンタゴニスト)と称される。その逆に、グランザイムBの細胞外蛋白質切断能力を促進する物質はアゴニスト(作用物質)といわれる。例えば、グランザイムBがエラスチンを切断する速度を増加させる化合物又は組成物はグランザイムBアゴニストである。
【0117】
グランザイムB阻害剤は、初回刺激を受けたグランザイムBを形成するために、グランザイムBと試験化合物とを接触することにより識別される。試験化合物とは、それがグランザイムB阻害剤かどうか識別したい物質、化合物又は組成物である。初回(接触)刺激を受けた(primed)グランザイムBとは、それに結合した試験化合物を有するか、又は有さないグランザイムBエンザイムであり、試験化合物と接触又は混合されてできたものである。言い換えれば、初回刺激を受けたグランザイムBとは、エラスチンのような細胞外蛋白質を加えることにより、試験化合物がグランザイムBの阻害剤又は拮抗剤であるか、そうでないかを識別するという状況下でのグランザイムBエンザイムである。いったん初回刺激を受けたグランザイムBが形成されれば、それを所定量のエラスチンのような細胞外蛋白質と接触させ、所定の期間に蓄積される切断された細胞外蛋白質の量を測定し、それを通常の切断された細胞外蛋白質の量と比較することにより、その試験化合物がグランザイムB阻害剤かどうかを識別することができる。通常の切断された細胞外蛋白質の量は、同じ所定量の細胞外蛋白質をグランザイムB、即ち初回刺激を受けていないグランザイムBに加え、先の所定期間に蓄積される切断された細胞外蛋白質の量を測定することによって得られる。所定期間とは、初回刺激を受けていないグランザイムBにより、全ての所定量の細胞外蛋白質が切断されてしまうことのない期間である。もしも切断された細胞外蛋白質の量が、通常の切断された細胞外蛋白質の量よりも少なければ、試験化合物はグランザイムB阻害剤又は拮抗剤とされる。もしも、切断された細胞外蛋白質の量が、通常の切断された細胞外蛋白質の量と同じであれば、試験化合物はグランザイムB阻害剤又は拮抗剤ではないと判断される。択一的に、もしも切断された細胞外蛋白質の量が、通常の切断された細胞外蛋白質の量よりも多ければ、試験化合物はグランザイムBのアゴニスト(作用物質)である。特定の阻害剤、拮抗剤又はアゴニストの存在下、又は非存在下でのグランザイムBによるエラスチン切断速度の識別に、同様の試験方法が用いられる。
【0118】
皮膚は、3つの主要層即ち表皮、真皮及び皮下層からなる。これらの3つの層はそれぞれ独自の組成を持つ。これらの層の機能と構造は当業者には周知である。表皮は、皮膚の最も外側の層であり、生きている細胞層と死滅した細胞層とを含む。真皮は、皮膚の中間層で、多くの特殊化された細胞と構造を取り囲むコラーゲン繊維の配列からなる。体毛の毛包は真皮にあり、真皮層及び表皮層を貫通して成長し、体毛として見えるようになる体毛の幹を生産する。皮膚の最も内側の層は皮下層と呼ばれる。皮下層は、大部分が脂肪及び結合組織からなり、比較的大きな血管と神経を内蔵している。エラスチンは皮膚のどの層でも観察されるが、真皮層に最も多く見られる。
【0119】
皮膚の若々しい外観は、老化の特徴的な兆候が1つもないことによって得られる。これは通常若さによって達成される。にもかかわらず、状況によっては、若いからといっても若々しい外観を示さない場合がある。疾病や異常、又は年月に関係しない事象によって老化の特徴が現れることがあるからである。若々しい外観は、しばしば皮膚の状況によって特徴付けられる。そして以下の皮膚の特質が、これに限られないが、若々しい外観に典型的に関係している。小さいポア(細孔ないし毛穴)サイズ、健康的な色調、輝き、透明感、しなやかさ、引き締まり、豊満さ、柔軟さ、弾力性、柔らかさ、健康的な肌触り、しわがほとんどない健康的な輪郭、しわの浅さ、細かいしわ(すじ)がほとんどないこと、健康的な皮膚のつやと明るさ、みずみずしさ、健康的な肉付き及び弾力のある肌である。対象の皮膚が、これらの特徴のいずれか一つ以上を備えていれば、若々しい外観が達成される。
【0120】
老化の外観(ないし発現、appearance)はさまざまな原因により生じうるが、典型的には年月の経過にともなって通常の速度で発生する。老化の外観が発現する速度は、対象の違いによって異なり、年齢、性別、食餌及び生活習慣を含むさまざまな要因に依存する。老化の外観は、しばしば皮膚の状況によって特徴付けられる。皮膚の老化の外観に関連する特徴には、これらに限られないが、皮膚のもろさ(脆弱性)、皮膚の萎縮、皮膚のしわ、細かいしわ(すじ)、皮膚の変色(退色)、皮膚のたるみ(窪み)、皮膚の衰え(疲弊)、皮膚の緊張、皮膚の非弾力性、皮膚のもろさ、皮膚の軟化、皮膚の剥がれ落ち(flakiness)、皮膚の乾燥、ポアサイズの増大、皮膚の薄化、皮膚の細胞の代謝速度の減少、皮膚のしわが深くなること、である。老化の外観の発現速度は、これらの特徴の1つ以上が発現する速さで測定できる。老化の外観(ないし発現)は、これらの皮膚の特徴のいずれか一以上の状態を減少させ、又は維持することにより、抑制し、低減し、又は処置することができる。
【0121】
多くの場合、皮膚の外観における老化の低減は、グランザイムBを阻害することにより、エラスチン生成速度がエラスチン切断(分解)速度を上回る場合に達成される。他の多くの場合、皮膚の若々しい外観は、グランザイムBを阻害することにより、エラスチン生成速度とエラスチン切断(分解)速度とが同等となる場合に達成される。他の多くの場合、皮膚の老化の外観の発現速度の低減は、グランザイムB阻害剤を適用(ないし投与)することにより、エラスチン切断速度がエラスチン生成速度を上回り、エラスチン切断速度のエラスチン生成速度に対する比率が、グランザイムB阻害剤投与前に比べて、グランザイムB阻害剤投与後において、大きくなるように、エラスチンの切断速度を遅くすることによって達成される。他の多くの場合、エラスチンを除く細胞外蛋白質もまたグランザイムBによって切断されるため、グランザイムBを阻害する有利な効果は、エラスチンの切断を阻害するだけの場合の効果よりも大きくなりうる。
【0122】
多くのグランザイムB阻害剤が当業者に公知であり、例えば公開番号WO03/065987の国際出願、米国特許出願公開US2003/0148511、バードら(Bird et. al.)、Mol. Cell. Biol. 18, 6387-6398(1998)、カムら(Kam et. al.)、Biochim Biophys Acta 1477(12):307:23(2000)に開示されている。グランザイムB阻害剤(複数)は、ペプチド(複数)と小さな分子(複数)を含むが、それに限られるものではない。グランザイムB阻害剤の識別方法は、この明細書の他のところで説明する。
【0123】
多くのグランザイムB阻害剤は水溶性であり、塩を形成しうる。そのような場合、グランザイムB阻害剤の組成物は、当業者に公知の生理学(機能)的に受容可能な塩を含む。製剤は、一般的に製剤の投与モードに適した1以上の担体を含む。投与モードは、局所投与、洗浄、表皮投与、表皮下投与、経皮投与、真皮下投与、皮下(内)投与、全身投与、注射、吸入、経口投与又は選択した処置に適した他のモードである。適切な担体(複数)は、このような投与モードの利用分野に公知のものがある。
【0124】
公知の方法により適切な組成物が処方調製され、当業者によって投与モード及び投与量が決定される。非経口投与の場合、化合物は殺菌水又は生理食塩水に溶解され、あるいはビタミンKの投与に用いられるような、非水溶性化合物に用いられる薬理学的に受容可能な担体に溶解される。経腸投与の場合、化合物はタブレット(錠剤)、カプセル又は溶液の形で投与される。タブレット又はカプセルは腸溶性コーティングされるか、持続的に放出される(徐放性)製剤とする。多くの適切な製剤が公知である。これらには、放出される化合物を高分子又は蛋白質でカプセル化した微粒子、軟膏、ペースト、ゲル、ハイドロゲル、泡、クリーム、パウダー、ローション、オイル、半固形物、石鹸、薬用石鹸、シャンプー、薬用シャンプー、スプレー、フィルム、溶液が含まれ、いずれも化合物の局所投与に用いることができる。長期間にわたって持続放出させるために、持続放出性(徐放性)パッチ又は埋め込み(インプラント)が適用されうる。多くの公知技術がアルフォンソ・ジェンナロ、「レミントン:薬学の科学と実践」(Remington: the Science & Practice of Pharmacy by Alfonso Gennaro, 20th ed., Williams & Wilkins (2000))に記載されている。製剤は、例えば賦形剤、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、野菜由来のオイル、又は水素化されたナフタレンを含みうる。生体適合(親和)性で生体中で分解するラクチドポリマー、ラクチド/グリコライドコポリマー(共重合体)、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーが化合物の放出をコントロールするために用いられうる。そのほかに調節性化合物の運搬システムとして役に立つ可能性のあるものとして、エチレン−ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み可能な注入システム、及びリポソームが含まれる。製剤として、例えばラクトースといった賦形剤を含み、又は例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸及びデオキシコール酸を含む水溶液、又は液滴又はゲルの形態で投与する油状溶液でありうる。
【0125】
グランザイムB阻害剤を含む組成物は、浸透剤(penetrating agents)も含みうる。浸透剤は、グランザイムB阻害剤が皮膚のより深い層へ運搬される能力を改善する。使用される浸透剤は当業者に公知であり、Lアルギニン又はアルギニンを含むアミノ酸のほか、ヒアルロン酸、インスリン、リポソーム、又はこれらと同等なものを含むが、これらに限定されない。
【0126】
なお、参考例として、グランザイムB阻害剤の化合物及び組成物は、インプラント、移植、プロステーシス(補綴)、衣類の着用、ステント等の医療用器具又は装具を用いて投与しうる。また、インプラントは、化合物や組成物を含み、放出するように細工しうる。一つの例は、化合物を長期にわたって放出するように調整した高分子材料からなるインプラントである。このようなインプラントは、対象が身に着ける衣類、例えば手袋、シャツ、マスク、又は帽子に配置しうる。
【0127】
グランザイムB(阻害剤)組成物の「有効(ないし効果的)な量」には、治療として有効(効果的)な量又は予防として有効(効果的)な量を含む。「治療として有効(効果的)な量」とは、皮膚の弾力性、皮膚の耐久性、皮膚の締り、及び皮膚のきめの改善といった望ましい治療的結果を達成するために必要な投与量及び投与期間としての有効(効果的)な量を指す。化合物の、治療として有効(効果的)な量は、対象の皮膚の状態、年齢、性別及び体重といった要素、及び対象に望ましい反応を引き起こさせる化合物の能力によって変わりうる。最適な治療効果を発現させるために、投与計画が調節されうる。治療として有効(効果的)な量とはまた、化合物の有毒又は有害な効果よりも、治療上の有益な効果のほうが勝る量でもある。「予防として有効(効果的)な量」とは、皮膚の弾力性、皮膚の耐久性、皮膚の締り、及び皮膚のきめの改善といった望ましい予防的結果を達成するために必要な投与量及び投与期間としての有効(効果的)な量を指す。一般的には、予防的投与量は、皮膚の劣化よりも前又はその初期段階に対象に用いられる。したがって、予防として有効(効果的)な量は治療として有効(効果的)な量よりも少ない。
【0128】
投与量は、皮膚の老化の発現程度によって変わりうるということに注意しなければならない。どのような対象であっても、その対象のための投与計画は各対象の必要性及び化合物の投与者又は投与監督者の判断に基づいて、投与期間中調整されうる。ここに説明する投与(量)の範囲は例示のみであり、選択される投与(量)範囲を限定するものではない。組成物中の活性化合物の量は、対象の皮膚の状態、年齢、性別及び体重といった要素によって変わりうる。投与計画は、最適な治療的効果を与えるために調整されうる。例えば、1種類の適用(投与)が処方されたり、複数の分割投与が期間中に処方されたり、あるいは投与量は状況の緊急性に比例して減少又は増加されうる。投与を容易にするため及び投与量を均一にするため、1回あたりの投与量の形態で製剤しておくことが有利である。
【0129】
一般に、本発明の化合物は重大な毒性を引き起こさないように用いなければならない。本発明の化合物の毒性は、標準的な技術、例えば培養細胞又は実験動物による試験、及び試験係数即ちLD50(個体数の50%致死量)とLD100(個体数の100%致死量)との比率を測定することによって決定することができる。しかしある状況下、例えば皮膚の老化の発現が著しい場合においては、組成物のかなり過剰な投与が必要になるかもしれない。
【0130】
ここで用いる「対象」(subject)とは、哺乳動物、人間を除く霊長類、家庭用ペット、人間、ラット、マウス、牛、馬、豚、羊、ヤギ、犬、猫、等である。対象は、皮膚の老化の発現が疑われる、又は発現のリスクがあるものである。皮膚のしわ及び皮膚のたるみを含む皮膚の老化現象の発現の種々の段階の診断方法は、当業者に公知である。例えばアガチェら、「皮膚の測定」(Measuring the Skin by Agache et. al., Springer (2004))を参照のこと。
【0131】
グランザイムB阻害剤は、老化の発現を抑制又は低減するために用いられる。老化は自然現象であり、それ自体は元に戻すことはできないが、皮膚の弾力性の喪失、皮膚のもろさ、皮膚の軟化、皮膚の剥がれ易さ、皮膚の乾燥、ポアの大きさの増大、皮膚の薄化、皮膚細胞の代謝速度の減少、皮膚のしわ、しわが深くなること、皮膚のたるみ、細かいしわ(すじ)、及び皮膚の変色(退色)を含む皮膚の劣化(これらに限らないが)つまり老化の発現は、抑制又は低減しうる。
【0132】
グランザイムB阻害剤は、皮膚の特定の特徴の発現の増加速度又は低減速度を増加又は低減するために用いられる。言い換えれば、グランザイムB阻害剤は、対象の皮膚又は皮膚の一部に投与された場合、老化の発現の兆候を遅らせるのである。例えば、1つの母集団の中で、個体数の半分の皮膚にはグランザイムB阻害剤を投与し、他の半分にはグランザイムB阻害剤を投与しない場合、ある期間が経過した後、グランザイムB阻害剤を投与した半数の個体には、グランザイムB阻害剤を投与しなかった半数の個体ほどには老化は見られないであろう。グランザイムB阻害剤を投与した半数の個体には、若々しい外観を保っているであろう。
【0133】
ある特定の対象が、特定の皮膚の特徴の発現速度の変化、即ち特定の皮膚の特徴の発現速度の増加又は低減を生じる割合ないし程度(rate)は、対象の年齢、体重、性別、及び生活習慣(これらに限られるわけではないが)を含む種々の要素に依存する。このように、割合は必ずしも一定ではないが、本発明に係る方法及び使用に基づいて投与されるグランザイムB阻害剤を除く一連の諸条件(a set of conditions)の下で、所定の期間後に特定の特徴が新たに発現することとして定義される、特徴の発現が増加又は低減する通常の割合は、本発明に係る方法又は使用に基づくグランザイムB阻害剤の投与により増加し、又は低減するのである。皮膚の特徴、皮膚の特徴の発現の増加速度、及び皮膚の特徴の発現の低減速度を測定する方法は当業者に公知である。例えばアガチェら、「皮膚の測定」(Measuring the Skin by Agache et. al., Springer (2004))を参照のこと。
【0134】
驚くべきことに、グランザイムB阻害剤は対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加させるためにも用いられ、また対象の皮膚の皮膚黄色腫の発生を減少させるためにも用いられうる。活発に成長する体毛の毛包は、基質ケラチン生成細胞に色素を送り、体毛に色を付ける働きをするメラニン細胞を含んでいる。さらに、皮脂分泌線で生成される皮脂は、しばしば体毛の毛包を経由して分泌される。体毛の毛包密度の増加は、色素の生成を増加し、そして皮脂の分泌を増加し、結果として健全な体毛と皮膚に改善されるとともに、体毛の外観が改善(例えば白髪が減少し、あるいは白髪がなくなる)される。グランザイムB阻害剤はまた、皮膚のより深い部分に体毛の毛包を発生させる。これにより、機械的な損傷に影響されにくい強い体毛を生成することができる。さらに、老化の特徴的な兆候は毛包密度の減少である。当業者には、年齢と毛包の微小化は体毛数とはあまり強い因果関係にないことが知られている(チャップマンら、Chapman et.al., British Journal of Dermatology (2005),152: 646-649を参照のこと)。したがって、体毛の毛包密度に関する老化の特徴的兆候は、体毛の濃さを予測させるものではない。
【0135】
グランザイムB阻害剤又はグランザイムB阻害剤を含む組成物は、対象の皮膚の一部又は全体に投与することができる。例えば、グランザイムB阻害剤及びグランザイムB阻害剤を含む組成物は、顔面のみ、頭皮のみ、顔を含む頭部全体又は体の各部ごとに適用ないし投与することができる。グランザイムB阻害剤及びグランザイムB阻害剤を含む組成物は、例えば、皮膚の老化の外観ないし発現の処置、低減及び抑制するための製剤、つまり、皮膚の美容剤、即ち、美容のための製剤である
【0136】
以下に本発明の択一的な実施形態及び実施例をいくつか説明する。これらの実施形態及び実施例は例示のみであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるものではない。
【実施例】
【0137】
(実施例1)
アポリポ蛋白E(ApoE)/グランザイムB ダブルノックアウト(DKO)マウス
(1)C57Bl/6 野生型(WT)、(2)C57/ApoE -/-(ApoE-KO)、(3)C57/GrB -/-(GrB-KO)及び(4)C57 GrB/ApoE-DKO(DKO)からなる4つのグループのマウスに、通常の固形飼料又は高脂質の「ウェスタン(Western)」ダイエット飼料(21%脂肪、0.2%コレステロール)を30週間与えた。最初の3ヶ月間は、マウスに明らかな表現型の違いは見られなかった。30週齢でマウスを殺し、組織を採取した。過去の文献による報告のとおり、ApoE−KOマウスには重度の皮膚黄色腫症、体毛の脱落、体毛の変色(退色)及び種々の動脈硬化性病変が現れていた。
【0138】
血中コレステロール及びリポ蛋白量については、ApoE−KOマウスとDKOマウスとで差はない。血漿中の総コレステロール及びLDL−C濃度については、2つのグループで同じである。HDL、LDL及びトリグリセリドについては、ウェスタンダイエット飼料を与えたApoE−KOマウス(斜線棒)とDKOマウス(格子棒)とで有意な差は見られない(図1)。グランザイムB活性のみを除去したグループ(白棒)には、C57/Bl6(黒棒)グループに比べて血中脂質分布に与える有意な影響は見られない。
【0139】
30週目において、DKOマウスには黄色腫は肉眼観察されなかった(表1)。DKOマウスの皮膚はなめらかでしわがなかった。

表1 皮膚黄色腫に冒された動物数
数字は、黄色腫罹患動物数/全体数で示している。
【0140】
ApoE−KOマウスの体毛はむらができ、変色(灰色化)し、皮膚には弱く保持されている(脱毛剤で容易に抜け落ちた)。それに対して、DKOマウスは、黒い(dark)体毛のままであり、変色あるいは灰色化せず、皮膚にしっかりと保持されている。むしろDKOマウスの体毛は、GrB−KOマウスの体毛よりもしっかりと保持されている。GrB−KOマウス及びDKOマウスの体毛の毛包は、野生型又はApoE−KOマウスに比べるとより豊富であり、皮膚の脂肪層のより深い部分に位置している(表2)。標準的なNair(脱毛剤)を用いた脱毛処理では、GrB−KOマウス及びDKOマウスでは45分間超かかったのに対し、WT(野生型)及びApoE−KOマウスでは5分間であった。

表2 マウスの系統による皮膚サンプルの毛包密度
数字は8.9mm中の毛包数で示す。個体数はN=8(各系統とも)。
【0141】
(実施例2)
エラスチン及びグランザイムBの分布
大動脈根の病変部のグランザイムBとマクロファージの共存解析(colocalization)が行われ、共焦点顕微鏡で映像化(撮像)した。ApoE−KOマウスの病変部はグランザイムB及びマクロファージの両方が染色されたが、双方の共存はプラークの特定の領域、線維性被膜(fibrotic cap)及びショルダー(shoulder)領域にのみ発生した。染色されたグランザイムBは、内部弾性膜層に局在化していた。
【0142】
大動脈壁に付着するため、平滑筋細胞はエラスチンを必要とする。C57wt、GrB−KO、ApoE−KO及びDKOマウスの大動脈は、弾性のファンギーソン(elastic van Gieson)で染色された。ApoEマウスの染色された大動脈セクションの大動脈壁は非常に薄く見え、C57wtマウスの染色された大動脈セクションに比べるとエラスチン染色は大きく減少している。DKOマウスの染色大動脈セクションでは、大動脈壁は非常に厚く見え、エラスチン染色はそれに伴ってより濃かった。グランザイムBは、ApoE−KOのアテローム硬化性プラークの内部弾性膜層と流入するマクロファージと共存していた。DKOマウスでは、このような共存は共焦点顕微鏡染色では観察されなかった。
【0143】
(実施例3)
DKOマウスの皮膚の炎症の減少及び皮膚の外観の改善
マウスの外観が観察され、ApoE−KOマウスの皮膚はより老化して、不健康に、そして非常に剥がれ落ちやすく見えた。皮膚は著しく弾力性を失っていた。グランザイムB活性を喪失させたDKOマウスは、このような弾力性の減少は示さなかった。ApoE−KOマウスには免疫細胞が大量に浸潤している範囲が観察されたが、DKOマウスにはこれも見られなかった。
【0144】
DKOマウスの皮膚は、ApoE−KOマウスと比べると、より厚く、より強く、より弾力性があり、より健康そうな色調であり、より健康そうなきめないし組織(texture、即ちしわが少ない)のように見えた。
【0145】
(実施例4)
グランザイムBの細胞外基質蛋白質エラスチンとの結合
生体外でのグランザイムBのエラスチン結合分析は次のような方法で行った。グランザイムBの50、100、300ngをそれぞれ人間の不溶性皮膚(Sk)及び大動脈(Ao)エラスチン(エラスチンプロダクツカンパニー、モンタナ州オーウェンスビル(Elastin Products Company, Owensville, MO))15μgとPBS中で3時間室温で培養した。試料は、室温で1000Gで3分間遠心分離し、不溶性エラスチンをペレット状で回収した。結合していないグランザイムBを含む上澄み液は、SDSを含む緩衝液で変性し、10%SDS−PAGEゲル上で泳動させた。グランザイムBはウェスタンブロット法で検出した。各ゲルは、3つのレーンを含んでいた。第1のレーンは、エラスチンのないグランザイムBを含む試料に関するもの、第2のレーンは、グランザイムBと人間の不溶性皮膚エラスチンを含む試料に関するもの、第3のレーンは、グランザイムBと大動脈エラスチンを含む試料に関するものである。エラスチンのないグランザイムBを含む試料に関するレーンは、上澄み液で太いバンドを示し、ペレットでは薄い(わずかな)バンドしか示さなかった。グランザイムBと皮膚エラスチンを含む試料に関するレーン及びグランザイムBと大動脈エラスチンを含む試料に関するレーンはいずれも、ペレットに太いバンドを示し、このバンドはエラスチンのないグランザイムBを含む試料に関するペレットの薄いバンドよりもずっと大きなバンドを示した。さらに、グランザイムBと皮膚エラスチンを含む試料の上澄み液のバンドは、エラスチンのないグランザイムBを含む試料の上澄み液のバンドに比べて、劇的に少なかった。グランザイムBと大動脈エラスチンを含む試料の上澄み液には、バンドは見られなかった。したがって、上澄み液にはグランザイムBはより少なく、このことはグランザイムBはペレット中のエラスチンと関連している(associating)ことを示す。この現象は投与量に依存し、用いたエラスチンのタイプ(即ち皮膚エラスチン又は大動脈エラスチン)に限定されることはなかった。
【0146】
(実施例5)
グランザイムBの細胞外基質蛋白質の切断
人間の冠状動脈の平滑筋細胞(SMC)の基質をグランザイムBで処理すると、多数の細胞外蛋白質の切断が生じた。SMC培養組織の細胞外蛋白質がビオチン化され、グランザイムBとともに培養された。上澄み液が処理後2、4及び24時間で採取され、全不溶性細胞外蛋白質の標本が処理後24時間で採取された。細胞外蛋白質はビオチンのウェスタンブロットにより可視化された。ベータアクチンのウェスタンブロットにより、細胞外蛋白質の標本は細胞内蛋白質を全く含んでいないことが確認された。グランザイムBで処理したSMCの溶解液(ライセート)について、フィブロネクチン、リン酸化FAK(p−FAK)及びFAKのウェスタンブロットも行った。採取された不溶性蛋白質の中に、およそ50−70kDaの範囲及びおよそ236kDaの4つの蛋白質バンドが、グランザイムB処理後24時間で消失し、およそ25−39kDaの断片の切断が同じ時点で基質中において明白に見られた。さらに、グランザイムB処理後早くも2時間後には、およそ29−148kDaからの分子量範囲の6つの蛋白質及び/又は切断片が、上澄み液に溶出していた。用いたSMC細胞外蛋白質標本に細胞内蛋白質を含んでいないことを確認するため、採取した上澄み液と細胞外蛋白質に対してベータアクチンのウェスタンブロットを実施した。ベータアクチンは、SMCライセート(陽性対照)には明白に存在したが、基質及び上澄み標本には存在しなかった。
【0147】
グランザイムBによって切断された細胞外蛋白質を識別するため、グランザイムBで処理していないSMCのライセート及びグランザイムBで処理したSMCのライセートの、フィブロネクチン、コラーゲン及びビトロネクチンのウェスタンブロットを行った。グランザイムBで24時間処理した全てのSMCは、SMCから採取したライセート中の全フィブロネクチンの量が減少していた。グランザイムBで24時間処理したSMCの上澄み液中には、フィブロネクチンの切断生成物が検出された。コラーゲンIV及びビトロネクチンの切断は測定されなかった。したがって、グランザイムBはSMC細胞外基質のフィブロネクチンは切断するが、コラーゲンIV及びビトロネクチンは影響(切断)しない。
【0148】
(実施例6)
生体外でのグランザイムBのエラスチン結合及び分解
バンダら(Banda, M. J. and Werb, Z., (1981) Biochem J, 193:589-605)及びゴードンら(Gordon, S., Werb, Z, and Cohn, Z.A. (1976), In Vitro Methods in Cell Mediated and Tumor Immunity, Bloom, B.R.とDavid, J.R.による共同編集, Academic Press, New York, page 349-350)の記載に修正を加えてトリチウム(標識)化したエラスチンを準備した。1mgの皮膚又は大動脈エラスチンを1mlの蒸留水に希釈し、pHを9.2に調整した。これに1mCiのNaB(パーキンエルマー、マサチューセッツ州ウォルサム(PerkinElmer, Waltham, MA))及び2mgの非放射性NaB(シグマ、モンタナ州セントルイス(Sigma, St. Louis, MO))を加えた。2時間培養した後、pHを3.0に調整し、エラスチンをさらに30分間培養した。エラスチンを3分間5000Gで遠心分離し、ペレットを繰り返し洗浄して過剰のNaBを除去した。切断分析のため、トリチウム化したエラスチン0.15mgをグランザイムB(5回の合計で0.75μg加えた)とともに室温で7日間培養した。培養して7日目に、陽性対照として25μgのエラスターゼ(エラスチンプロダクツカンパニー、モンタナ州オーウェンスビル(Elastin Products Company, Owensville, MO))をエラスチンに加えて2時間培養した。培養後、反応生成物を3分間5000Gで遠心分離した。上澄み液中の、切断された溶解性のエラスチン切断片の放射能をレディセイフシンチレーション液(Ready Safe Scintillation Fluid、ベックマン−コールター、カリフォルニア州フラートン(Beckman-Coulter, Fullerton, CA))中で測定した。切断された溶解性のエラスチン切断片の放射能は、皮膚エラスチン及び大動脈エラスチンのバックグラウンドに比べて、それぞれ4.8倍及び2.7倍であった(図2)。エラスターゼによるエラスチンの蛋白分解では、皮膚エラスチンではバックグラウンドの14.9倍、大動脈エラスチンでは7.7倍の放射能増加が測定された。これらのデータは、グランザイムBにはエラスチン親和性があり、弾性組織の分解を促進する作用があることを示している。
【0149】
理解を容易にするために、本発明を実施及び実施例を用いてある程度詳細に説明してきたが、当業者であれば本発明の教示に基づいて、本発明の請求項の本質又は範囲を離れることなく修正及び変形を行うことが可能である。ここに引用した全ての特許、特許出願及び刊行物は引用により繰り込まれ記載されているものとする。
なお、ここに、まとめとして、本発明の好ましい実施の形態シリーズI及びIIを示す。
形態シリーズI
(形態1)
対象の皮膚の若々しい外観を維持するため、
対象の皮膚の老化の外観ないし発現を低減するため、又は
対象の皮膚の老化の外観ないし発現を抑制するためのグランザイムB阻害剤の使用。
(形態2)
前記皮膚の細胞外蛋白質の含有量を維持又は増加するため、及び/又は
前記皮膚の皮膚エラスチンの含有量を維持又は増加するための形態1のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態3)
前記皮膚の弾力性を維持又は増加するため、
前記皮膚の脆弱性を維持又は低減するため、
前記皮膚の堅牢性を維持又は増加するため、
前記皮膚の剥がれ落ちやすさを維持又は低減するため、
前記皮膚の乾燥度を維持又は低減するため、
前記皮膚のポアサイズを維持又は低減するため、
前記皮膚の厚さを維持又は増加するため、
前記皮膚の細胞の代謝回転速度を維持又は増加するため、
前記対象の前記皮膚のしわの外観ないし発現を維持又は低減するため、
前記皮膚のしわの深さを維持又は低減するため、
前記対象の前記皮膚の細かいしわの外観ないし発現を維持又は低減するため、及び/又は
前記対象の前記皮膚の変色の外観ないし発現を維持又は低減するための形態1又は2のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態4)
対象の皮膚の老化的外観の発現速度を低減するためのグランザイムB阻害剤の使用。
(形態5)
細胞外蛋白質の含有量の減少速度を低減するため、及び/又は
前記皮膚の皮膚エラスチンの含有量の減少速度を低減するための形態1又は4のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態6)
前記皮膚の弾力性の減少速度を低減するため、
前記皮膚の脆弱性の増加速度を低減するため、
前記皮膚の堅牢性の減少速度を低減するため、
前記皮膚の剥がれ落ちやすさの増加速度を低減するため、
前記皮膚の乾燥度の増加速度を低減するため、
前記皮膚のポアサイズの増加速度を低減するため、
前記皮膚の厚さの減少速度を低減するため、
前記皮膚の細胞の代謝回転速度の減少速度を低減するため、
前記対象の前記皮膚のしわの発現の増加速度を低減するため、
前記皮膚のしわの深さの増加速度を低減するため、
前記皮膚の細かいしわの発現の増加速度を低減するため、及び/又は
前記皮膚の変色の発現の増加速度を低減するための形態1、4及び5のいずれか一のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態7)
対象の皮膚の非弾力性を低減するため、
対象の皮膚の非弾力性の増加速度を低減するため、又は
対象の皮膚の弾力性を維持するためのグランザイムB阻害剤の使用。
(形態8)
対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するためのグランザイムB阻害剤の使用。
(形態9)
前記グランザイムB阻害剤を局所的に適用するため、
前記グランザイムB阻害剤を皮下的に適用するため、又は
前記グランザイムB阻害剤を全身的に適用するための形態1〜8のいずれか一のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態10)
前記対象は人間を除く哺乳動物であることを特徴とする、形態1〜9のいずれか一のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態11)
前記対象は人間であることを特徴とする、形態1〜9のいずれか一のグランザイムB阻害剤の使用。
(形態12)
対象の皮膚の若々しい外観を維持する、
対象の皮膚の老化の外観ないし発現を低減する、
対象の皮膚の老化の外観ないし発現を抑制する、
対象の皮膚の老化の発現速度を低減する、
対象の皮膚の非弾力性(弾力性のなさ)を低減する、
対象の皮膚の非弾力性の増加速度を低減する、
対象の皮膚弾力性を維持する、又は
対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するための美容的処置方法であって、該対象の皮膚にグランザイムB阻害剤を局所的に塗布することを含む、美容的処置方法。
(形態13)
対象の皮膚の細胞外基質蛋白質の劣化ないし変質を抑制するためのグランザイムB阻害剤の使用。
(形態14)
前記細胞外基質蛋白質がエラスチンである、形態13のグランザイムB阻害剤の使用。
形態シリーズII
(形態1)
皮膚の弾力性を増加するため、
皮膚の脆弱性を維持又は低減するため、
皮膚の厚さを維持又は増加するため、
対象の皮膚のしわの外観ないし発現を維持又は低減するため、
皮膚のしわの深さを維持又は低減するため、
皮膚の細かいしわの外観ないし発現を維持又は低減するため、
対象の皮膚の変色の外観ないし発現を維持又は低減するため、及び/又は
対象の皮膚の体毛の毛包密度を増加するための、グランザイムB阻害剤を含む美容剤。
(形態2)
前記皮膚の細胞外蛋白質の含有量を維持又は増加するため、及び/又は
前記皮膚の皮膚エラスチンの含有量を維持又は増加するための形態1の美容剤。
(形態3)
細胞外蛋白質の含有量の減少速度を低減するため、及び/又は
前記皮膚の皮膚エラスチンの含有量の減少速度を低減するための形態1の美容剤。
(形態4)
前記皮膚の弾力性の減少速度を低減するため、
前記皮膚の脆弱性の増加速度を低減するため、
前記皮膚の厚さの減少速度を低減するため、
前記対象の前記皮膚のしわの発現の増加速度を低減するため、
前記皮膚のしわの深さの増加速度を低減するため、
前記皮膚の細かいしわの発現の増加速度を低減するため、
前記皮膚の変色の発現の増加速度を低減するため、及び/又は
前記皮膚の体毛の毛包密度の増加速度を増加するための形態1又は3の美容剤。
(形態5)
対象の皮膚の非弾力性を低減するため、
対象の皮膚の非弾力性の増加速度を低減するため、又は
対象の皮膚の弾力性を維持するための、グランザイムB阻害剤を含む美容剤。
(形態6)
前記美容剤は、局所的に適用するため、
皮下的に適用するため、又は
全身的に適用するための組成物として調製される形態1〜5のいずれか一の美容剤。
(形態7)
前記対象は人間を除く哺乳動物であることを特徴とする、形態1〜6のいずれか一の美容剤。
(形態8)
前記対象は人間であることを特徴とする、形態1〜6のいずれか一の美容剤。
(形態9)
対象の皮膚の細胞外基質蛋白質の劣化ないし変質を抑制するための、グランザイムB阻害剤を含む美容剤。
(形態10)
前記細胞外基質蛋白質がエラスチンである、形態9の美容剤。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1】ウェスタンダイエット食餌を与えたマウスの血漿脂質の分布特性を示す棒グラフであり、黒い棒はC57/Bl/6、白抜き棒はGrB-KO、斜線棒はApoE-KO、及び格子棒はApoE/GrB-DKOマウスをそれぞれ示す。「TG平均」はトリグリセリド平均値、「TC平均」は全コレステロール平均値である。各グループともN=3である。
図2】生体外における、グランザイムBのエラスチンの切断を示す図である。グランザイムBはH化エラスチンとともに7日間室温で培養した。エラスターゼはH化エラスチンとともに2時間室温で培養した。可溶性のエラスチン切断断片(フラグメント)を含む上澄み液を集めて計測した。データは対照(エラスチンのみ)に対する放射能量の倍数で示している。(n=2)
図1
図2