特許第5746814号(P5746814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746814
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/004 20060101AFI20150618BHJP
   H01G 9/10 20060101ALI20150618BHJP
   H01G 9/14 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01G9/05 C
   H01G9/10 G
   H01G9/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-26638(P2009-26638)
(22)【出願日】2009年2月6日
(65)【公開番号】特開2010-182968(P2010-182968A)
(43)【公開日】2010年8月19日
【審査請求日】2012年2月1日
【審判番号】不服2014-10382(P2014-10382/J1)
【審判請求日】2014年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白勢 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】氏家 幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏行
【合議体】
【審判長】 丹治 彰
【審判官】 関谷 隆一
【審判官】 井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−98394(JP,A)
【文献】 特開2002−83900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/012,H01G9/052,H01G9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部と陰極部を有するコンデンサ素子を、
絶縁基材よりなり基板搭載面に陽極電極と陰極電極を有する接続板に搭載した固体電解コンデンサにおいて、
基板搭載面の陽極電極と陰極電極との間隙を溝部とし、この溝部に陽極電極及び/又は陰極電極と離間した半田レジスト層を形成して半田溜まりとした固体電解コンデンサ。
【請求項2】
陽極電極及び陰極電極を同一平面に形成するとともに、半田レジスト層の厚さを陽極電極および陰極電極よりも突出しない厚さとした請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるコンデンサの中で、導電性高分子を固体電解質に用い、かつ、面実装対応にしたチップ形固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高周波化に伴って電子部品の一つであるコンデンサにも従来よりも高周波領域でのインピーダンス特性に優れたコンデンサが求められてきており、このような要求に応えるために電気伝導度が高い導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサが種々検討されている。
【0003】
また、近年、パーソナルコンピュータのCPU周り等に使用される固体電解コンデンサには小型大容量化が強く望まれており、更に高周波化に対応して低ESR(等価直列抵抗)化のみならず、ノイズ除去や過渡応答性に優れた低ESL(等価直列インダクタンス)化が強く要求されており、このような要求に応えるために種々の検討がなされている。
【0004】
この固体電解コンデンサの低ESL化を図るためには、固体電解コンデンサの陽極の電極と陰極の電極を近接させて、陽極と陰極を流れる電流の誘導磁界を相殺することにより低ESL化が図られることが知られている。
【0005】
このような固体電解コンデンサの低ESR化、低ESL化を図った固体電解コンデンサとして、次の特許文献に開示された固体電解コンデンサが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−135425号
【特許文献2】特開2008−294012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、この固体電解コンデンサの低ESL化を図るためには、固体電解コンデンサの陽極の電極と陰極の電極を近接させてことが有効である。このような観点では、固体電解コンデンサの陽極と陰極の距離はより近接させることが求められるが、極度に近接させた場合には、固体電解コンデンサを半田リフローによってプリント基板に実装する場合には、半田リフロー時に溶解した半田によって、陽極と陰極が短絡してしまう場合が発生してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、この発明では、固体電解コンデンサの低ESLを図るために、陽極と陰極の近接させるととともに、陽極と陰極の間での半田によるショートの防止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、陽極部と陰極部を有するコンデンサ素子を、絶縁基材よりなり基板搭載面に陽極電極と陰極電極を有する接続板に搭載した固体電解コンデンサにおいて、基板搭載面の陽極電極と陰極電極との間隙を溝部とし、この溝部に陽極電極及び/又は陰極電極と離間した半田レジスト層を形成して半田溜まりとしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の固体電解コンデンサにおいて、陽極電極及び陰極電極を同一平面に形成するとともに、半田レジスト層の厚さを陽極電極および陰極電極よりも突出しない厚さとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は本発明の電解コンデンサでは、基板搭載面の陽極電極と陰極電極との間隙に、陽極電極及び/又は陰極電極と離間した半田レジスト層を形成した構成としているため、間隙に形成された半田レジスト層によって溶融した半田が堰き止められるようになる。特に、電極と半田レジストが離間させることで、両者の間には空間が形成されており、この空間が半田溜まりとして機能することで、陽極と陰極の短絡を防止することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の固体電解コンデンサの構造を示す断面図である。
図2】本発明の固体電解コンデンサの接続板を示す斜視図である。
図3】本発明の固体電解コンデンサの接続板の別の実施形態を示す斜視図である。
図4】本発明の固体電解コンデンサをプリント基板に半田付け実装した状態を示す断面図である。
図5】本発明の固体電解コンデンサの接続板の別の実施形態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、本発明は陽極部と陰極部を有するコンデンサ素子を、絶縁基材よりなり基板搭載面に陽極電極と陰極電極を有する接続板に搭載した固体電解コンデンサにおいて、基板搭載面の陽極電極と陰極電極との間隙に、陽極電極及び/又は陰極電極と離間した半田レジスト層を形成したことを特徴としている。
【0015】
図1(a)には、本発明の固体電解コンデンサの断面図を示し、(b)には、固体電解コンデンサをコンデンサ素子と接続板に分解した断面図を示している。
【0016】
本発明で用いるコンデンサ素子1を図1(b)を基に説明する。まず、薄板状のアルミニウム材11に凹部を形成し、この凹部の内面をエッチングにより拡面処理し、さらに陽極酸化することで酸化皮膜12を形成する。次に凹部の内面に酸化皮膜上に固体電解質層としての導電性高分子13を形成し、続いてグラファイト、銀ペーストを形成し、さらに銅板等の金属板を貼り付けて陰極部14とし、コンデンサ素子1としたものである。このコンデンサ素子1では、凹部の周囲のアルミニウム材11が陽極部18となる。
【0017】
このようなコンデンサ素子は、出発原料であるアルミニウム材11の厚さを100μm程度とし、凹部の深さを60μm程度とすることで、薄型のコンデンサ素子を作成することができる。
【0018】
次に、接続板2について説明する。接続板はガラスエポキシ基板等の絶縁基板21をベースとし、下面に陽極電極22及び陰極電極23を備え、上面にはコンデンサ素子の陽極部、陰極部とそれぞれに接続される陽極導体24,陰極導体25を備えると共に、上面と裏面の陽極導体26と陽極電極24、陰極導体25と陰極電極23をそれぞれ導通させたものである。
【0019】
また、接続板2の下面の電極の構成は、接続されるCPU等の仕様に併せて任意の形状に形成が可能である。図3には、接続板2を下面からみた斜視図を示す。図3(a)に示すように、陽極電極22と陰極電極23が両端に形成された2端子型の形状、図3(b)に示すように、両端を陽極電極22とし、中央部を陰極電極23として3端子型の形状、あるいは、図2(b)に示すように陰極電極23の周囲を陽極電極22が取り囲むような電極の形状等、任意の形状に形成することができる。
【0020】
接続板2の上面に形成した陽極導体24、陰極導体25は、コンデンサ素子1の陽極部15、陰極部14にそれぞれ合致した形状とすればよい。図2(a)には、接続板2の上面から見た斜視図を示している。先に示したコンデンサ素子1の構造のように、凹部を形成し、この凹部に陰極部を形成し、凹部の周囲を陽極部としたコンデンサ素子の形状に合致するように陽極導体24、陰極導体25の配置としている。
【0021】
従って、図3(a)に示すように、陽極電極22と陰極電極23が両端に形成された2端子型の形状の接続板の場合には、コンデンサ素子1も2端子型のコンデンサ素子を用いることができ、図3(b)に示すように、両端を陽極電極22とし、中央部を陰極電極23として3端子型の形状の接続板の場合には、両端が陽極部で、中央部が陰極部の3端子型のコンデンサ素子を用いればよい。このように、コンデンサ素子の形状およびこのコンデンサ素子の形状に合致した接続板とすれば良く、コンデンサ素子の形状、及び絶縁板に形成する導体、電極の形状には限定がない。
【0022】
これらの陽極電極22,陰極電極23の厚さは全て同じ厚さとすることで、陽極電極22および陰極電極23の実装面が同一平面となり、プリント基板に実装する際に固体電解コンデンサを安定して搭載することができる。
【0023】
例えば、接続板の絶縁基板21の厚さを80μmとし、それぞれの電極と導体の厚さを約30μmの厚さで一定の厚さとすることができる。
【0024】
また、このような陽極電極22と陰極電極23は、相互に近接させることで、陽極電極22と陰極電極23を流れる電流は反対向きとなるため、それぞれの電極を流れる電流によって発生する磁界が相殺され、ESLの低減が図れるようになる。
【0025】
そして、陽極電極22と陰極電極23の間は間隙を有する構造となる。そして、陽極電極22と陰極電極23は、絶縁板2の絶縁基材の上に形成したものであるため、これらの電極の間隙は溝部となり、接続板2の絶縁基材21が露出することになる。この接続板の溝部の絶縁基材21の上には、さらに半田レジスト樹脂を塗布し、半田レジスト層26を形成する。塗布方法としては、通常のスクリーン印刷法等を用いることができる。この半田レジスト層26は、陽極電極22または陰極電極23の一方とは接しないように塗布して形成する。ここで陽極または陰極の電極の少なくとも一方と接しないとは、陽極と陰極の対向する最短距離の部分で同時に接触することがないようにすれば良く、例えば図5に示すように、3端子型の固体電解コンデンサにおいて、一方の陽極電極側では、半田レジストが陽極電極に、他方の電極側では半田レジストが陰極電極側に接する場合には問題が無い。しかし、後述する半田付けの際の半田によるショートの防止の観点では、半田レジストは陽極、陰極ともに離れていることが最も好ましい。
【0026】
また、半田レジスト層26の厚さは、接続板2に下面に形成した陽極電極22、陰極電極23の厚さと同じか、または薄く形成すると好適である。半田レジスト層26が陽極電極22および陰極電極23よりも高くなるように形成すると、固体電解コンデンサをプリント基板に実装した際に、陽極電極22および陰極電極23がプリント基板から浮いてしまい、半田リフロー時に、半田付け不良が発生するおそれがでてくる。
【0027】
半田レジスト層26を接続板に下面に形成した陽極電極22、陰極電極23の厚よりも薄く形成した場合には、固体電解コンデンサをプリント基板に実装した場合に、半田レジスト層がプリント基板と接触することなく、空隙部を形成することになり、半田付けの際のフラックスを逃がし、より安定した半田付けが可能となる。
【0028】
このような半田付け不良を防止するためには、陽極電極22および陰極電極23よりも2〜10μm程度薄く形成することが好適である。
【0029】
接続板2の上面の導体24,25と下面の電極22、23を導通させる方法としては、接続板2の所定箇所をレーザーによって穿穴し、その穴の内面をスルーホールメッキすることによって導通を図ることができる。この導通のためのスルーホールの位置、個数等は、固体電解コンデンサに要求される電流容量等の特性に応じて任意に設計可能である。
【0030】
上記のようなコンデンサ素子1を接続板2に搭載し、コンデンサ素子1の電極17、18と接続板の導体24、25をそれぞれ導電性接着剤等で接合して固体電解コンデンサCとする。また、必要に応じて、コンデンサ素子をモールド樹脂でモールドすることも可能である。
【0031】
前述したように、コンデンサ素子は100μm程度の厚さであり、接続板は、両面の電極、導体層の厚さを含めて140μm程度の厚さであるために、最少で250μm程度の厚さの固体電解コンデンサを得ることができる。
【0032】
次に、上述した固体電解コンデンサをプリント基板に実装する実装形態について図4とともに説明する。
【0033】
この固体電解コンデンサをプリント基板3に実装するときには、例えば半田リフロー法によって基板に半田付けされる。
【0034】
すなわち、プリント基板3に形成された回路パターン31に半田4が塗布され、その回路パターン31の上に本発明の固体電解コンデンサCが搭載される。そして、リフロー炉を通過させることで、半田4を溶融し、固体電解コンデンサCの電極22、23と回路パターン31を半田付けする。このリフロー炉中で溶融した半田4は、回路パターン31との濡れ性が良く、溶融した半田4も回路パターン31側に濡れるように拡がっていくが、回路パターン31からはみ出して流れる場合もある。このように半田4が回路パターン31からはみ出した場合に、固体電解コンデンサの陽極電極22と陰極電極23のショートを引き起こすおそれがあるが、本発明の電解コンデンサでは、基板搭載面の陽極電極22と陰極電極23との間隙に、陽極電極及び/又は陰極電極と離間した半田レジスト層26を形成した構成としているため、溶融してあふれ出した半田4が、溝部の半田レジスト層26によって堰き止められるようになる。特に、半田レジスト層26をそれぞれの電極と離間させることで、両者の間には空間が形成されており、この空間が半田溜まりとして機能することで、陽極電極22と陰極電極23の短絡を防止することができる。
【0035】
本発明の固体電解コンデンサをプリント基板3に実装した図を示す。図4の矢印に示す「半田流れ部」の箇所で、半田4がプリント基板3の回路パターン31の範囲を超えて流れ出した状態となっているが、流れ出した半田は、固体電解コンデンサの溝部の半田レジスト層によって堰き止められ、ショートが防止された状態を示している。
【符号の説明】
【0036】
C 固体電解コンデンサ
1 コンデンサ素子
11 アルミニウム材
12 酸化皮膜層
13 固体電解質層
14 陰極部
15 陽極部
2 接続板
21 絶縁基材
22 陽極電極
23 陰極電極
24 陽極導体
25 陰極導体
3 プリント基板
31 回路パターン
32 レジスト
4 半田
図5
図1
図2
図3
図4