特許第5746892号(P5746892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5746892-電子制御装置 図000002
  • 特許5746892-電子制御装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746892
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   H05K1/02 Q
   H05K1/02 J
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-71806(P2011-71806)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-209309(P2012-209309A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】風木 仁志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−163476(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/068923(WO,A1)
【文献】 特開2009−021627(JP,A)
【文献】 特開平10−326984(JP,A)
【文献】 特開平10−150283(JP,A)
【文献】 特開2001−251027(JP,A)
【文献】 特開2008−130684(JP,A)
【文献】 特開平06−169189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層に形成され且つ発熱部品と接続された内層パターンを有するプリント基板と、該プリント基板を収容する筐体とを備える電子制御装置であって、
前記内層パターンは、前記プリント基板の表層に形成された表層パターンよりも厚さが大きい大電流用の内層パターンであり、前記プリント基板のビア及び前記表層パターンを介して前記発熱部品と接続され、前記プリント基板の外縁部まで延設されており、
前記筐体の一部と前記プリント基板の外縁部とは、熱的に接続しており、
前記発熱部品から発せられた熱は、前記表層パターン、前記ビア、前記内層パターン、前記プリント基板の外縁部を順に介して前記筐体へ伝達されることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記筐体は、金属製の第1の筐体と第2の筐体とから構成されており、
前記プリント基板は、前記第1の筐体と前記第2の筐体との間に挟まれた状態で両筐体に共締めされていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流を流すための電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子制御装置は、部品実装用の多層基板として、例えば内層(グランド層及び電源層)の厚さが約35μm、定格電流値が約5Aの4層基板を備えている。このような電子制御装置の放熱効率を向上させる技術として、多層基板の内層に発熱電子部品の熱を伝達する内層側伝熱導体を設けると共に、多層基板表面においてカバーと接触する位置に形成された接地導体に対して上記内層側伝熱導体をビアを介して接続することにより、発熱電子部品から発せられた熱を、内層側伝熱導体→接地導体→カバーという径路で伝達させて空気中へ放熱させる技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−130684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来では、大電流を要しない電子制御装置内の発熱電子部品から発せられた熱を、多層基板の厚さ約35μmの内層を通じて金属製のカバー等の筐体から放熱させていたが、例えば40Aもの大電流を流すための電子制御装置では、内層自体の発熱量が極めて大きくなる(内層の抵抗値が同じ場合、内層の発熱量は電流の二乗に比例して増大する)ため、十分な放熱効果を得られず、さらなる放熱効率の向上が必要であった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、大電流を流すための電子制御装置の放熱効率の向上を実現可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、電子制御装置に係る第1の解決手段として、内層に形成され且つ発熱部品と接続された内層パターンを有するプリント基板と、プリント基板を収容する筐体とを備える電子制御装置であって、前記内層パターンは、大電流用の内層パターンであり、前記プリント基板の外縁部まで延設されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、電子制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記筐体の一部と前記プリント基板の外縁部とが熱的に接触していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、電子制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記筐体は、金属製の第1の筐体と第2の筐体とから構成されており、前記プリント基板は、前記第1の筐体と前記第2の筐体との間に挟まれた状態で両筐体に共締めされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、プリント基板の内層に形成され且つ発熱部品と接続された大電流用の内層パターンをプリント基板の外縁部まで延設することにより、発熱部品から発せられた熱を大電流用の内層パターンを介してプリント基板の外縁部まで伝達させて放熱させることができ、また、大電流用の内層パターンを用いることにより、一般的な内層パターンと比較して内層パターンの抵抗値が下がるため、内層パターンに大電流が流れても内層パターン自体の発熱量を抑えることができる。
つまり、本発明によれば、プリント基板を収容する筐体からの基本的な放熱(筐体内部に充満した熱の放熱)に加えて、プリント基板の外縁部からの放熱も補助的に行われると共に、内層パターン自体の発熱量を抑えることができるため、大電流を流すための電子制御装置の放熱効率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電子制御装置1の分解斜視図である。
図2】プリント基板2の外縁部の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態に係る大電流を用いた電子制御装置1の分解斜視図である。この電子制御装置1は、大電流を利用する制御装置で、例えば車両に搭載されて車両扉の自動開閉制御を行うECU(Electronic Control Unit)であり、プリント基板2と、該プリント基板2を収容する金属製のケース3(筐体)とを備えている。
【0012】
プリント基板2は、その表面に車両扉の自動開閉制御に必要な電子部品(図示省略)及び外部装置と接続するためのコネクタ2aが実装された矩形状の多層基板である。この多層基板は、例えば4層基板であり、厚さが35μmの表層パターン(第1層及び第4層)と、厚さが大電流用の70μmの内層パターン(第2層及び第3層)から構成されている。コネクタ2aは、例えばPBTやPPS等の高熱伝導性樹脂から形成されており、プリント基板2の裏面側から表面側へ向けて貫通する2本のコネクタ固定用ネジ4によってプリント基板2にネジ止め固定されている。また、このプリント基板2の4隅及び中央部には、ケース3にプリント基板2を固定するための4隅ネジ孔2b及び中央ネジ孔2cが設けられている。
【0013】
ケース3は、上記プリント基板2を内部に収容して保護する鉄或いはアルミ等の金属製ケースであり、下側ケース31(第1の筐体)と上側ケース32(第2の筐体)との2つのパーツに分割可能な構成となっている。下側ケース31の4隅及び中央部には、プリント基板2を固定するための4隅ネジ孔31a及び中央ネジ孔31bが設けられている。また、上側ケース32の4隅にも、プリント基板2を固定するための4隅ネジ孔32aが設けられている。
【0014】
プリント基板2は、部品実装面を上側にした状態で、プリント基板2の中央ネジ孔2cを上側から下側へ向けて貫通して下側ケース31の中央ネジ孔31bに螺合する基板固定用ネジ5によって下側ケース31にネジ止め固定される。上側ケース32は、下側ケース31にプリント基板2が固定された状態で、上側ケース32及びプリント基板2の4隅ネジ孔32a、2bを上側から下側へ向けて貫通して下側ケース31の4隅ネジ孔31aに螺合するケース固定用ネジ6によって下側ケース31にネジ止め固定される。
このように、プリント基板2は、下側ケース31と上側ケース32との間に挟まれた状態で両ケース31、32に共締めされる。
【0015】
図2は、ケース3(31、32)に共締めされた状態でのプリント基板2の外縁部の断面構造を示す図である。この図に示すように、プリント基板2は、ガラスエポキシ樹脂等から形成された絶縁層2dと、大電流用の銅箔等から形成された厚さ70μmの内層パターン2e(グランドパターン2e1、電源パターン2e2)とが交互に積層された多層構造となっている。なお、図中の符号2fはプリント基板2の表面に実装された電子部品の内、特に大電流が流れて発熱する発熱部品である。
【0016】
プリント基板2の内層に形成された大電流用のグランドパターン2e1は、ビア2g及び表層パターン2hを介して発熱部品2fと電気的に接続されていると共に、プリント基板2の外縁部まで延設されている。また、大電流用の電源パターン2eも、不図示の発熱部品と電気的に接続されていると共に、プリント基板2の外縁部まで延設されている。なお、大電流用のグランドパターン2e1との短絡を防ぐために、大電流用の電源パターン2e2はビア2gを避けてパターニングされている。
【0017】
ケース3の一部はプリント基板2の外縁部(特に外縁部の基板表面及び基板裏面)と熱的に接触している。ここで、「熱的な接続」とは、金属製のケース3と樹脂製のプリント基板2との間で熱の伝達が行われる程度の物理的な接触或いは距離を指す。本実施形態では、ケース3とプリント基板2とがケース固定用ネジ6によって共締めされて、プリント基板2に対してケース3が大きな圧力で接触しているため、ケース3とプリント基板2間において良好な熱伝導性を確保できる。
【0018】
このように、プリント基板2の内層に形成され且つ発熱部品2fと接続された大電流用の内層パターン2e(特にグランドパターン2e1)をプリント基板2の外縁部まで延設することにより、発熱部品2fから発せられた熱を、大電流用のグランドパターン2e1→プリント基板2の外縁部→ケース3という径路で伝達させて空気中に放熱させることができ、また、大電流用の内層パターン2eを用いることにより、一般的な内層パターンと比較して内層パターン2eの抵抗値が下がるため、内層パターン2eに大電流が流れても内層パターン2e自体の発熱量を抑えることができる。
つまり、本実施形態によれば、プリント基板2を収容するケース3からの基本的な放熱(ケース3内部に充満した熱の放熱)に加えて、プリント基板2の外縁部からの放熱も補助的に行われと共に、内層パターン2e自体の発熱量を抑えることができるため、大電流を流すための電子制御装置1の放熱効率の向上を実現することができる。
【0019】
さらに、本実施形態の構成と、特許文献1(特開2008−130684号公報)に記載の構成、つまりプリント基板2の内層に発熱電子部品の熱を伝達する内層側伝熱導体を設けると共に、プリント基板2の表面において上側ケース32と接触する位置に形成された接地導体に対して上記内層側伝熱導体をビアを介して接続する構成を合体させれば、さらなる放熱効率の向上を実現できる。
【0020】
以上、本発明の一実施形態である電子制御装置1について説明したが、本発明は車両に搭載されて車両扉の自動開閉制御を行うECUに限らず、コネクタがネジ止め固定されているプリント基板と、該プリント基板を収容する筐体とを備える電子制御装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…電子制御装置、2…プリント基板、2f…発熱部品、2e…大電流用の内層パターン、3…ケース(筐体)、31…下側ケース(第1の筐体)、32…上側ケース(第2の筐体)
図1
図2