(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747019
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】安全装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20150618BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20150618BHJP
G21C 9/00 20060101ALI20150618BHJP
G21D 3/04 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
G01N1/04 F
G01N1/04 J
G01N1/04 M
E04H9/14 E
G21C9/00 K
G21D3/04 P
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-286693(P2012-286693)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130028(P2014-130028A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】512161239
【氏名又は名称】吉川 典彦
(73)【特許権者】
【識別番号】501213860
【氏名又は名称】独立行政法人労働安全衛生総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100132724
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敏文
(74)【代理人】
【識別番号】100153752
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 裕
(72)【発明者】
【氏名】吉川 典彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 輝人
【審査官】
長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−069595(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0237178(US,A1)
【文献】
特開2011−058866(JP,A)
【文献】
米国特許第05915449(US,A)
【文献】
特開平04−348299(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3041070(JP,U)
【文献】
特開2007−138487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
E04H 9/14
G21C 9/00
G21D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖空間を形成する構造物の隔壁に設けられた少なくとも前記閉鎖空間で爆発が生じた際には開口可能な通気部と連通するように配設され、前記閉鎖空間で爆発が生じた際に膨張展開し、前記通気部から外部に放出される爆発ガスおよび飛散物質を内部に収容する捕集バッグと、
前記通気部から前記捕集バッグに至るガスの流路に設けられた破片捕集用フィルターと
を備えることを特徴とする安全装置。
【請求項2】
閉鎖空間を形成する構造物の隔壁に設けられた少なくとも前記閉鎖空間で爆発が生じた際には開口可能な通気部と連通するように配設され、前記閉鎖空間で爆発が生じた際に膨張展開し、前記通気部から外部に放出される爆発ガスおよび飛散物質を内部に収容する捕集バッグと、
前記通気部から前記捕集バッグに至るガスの流路に設けられたフレームアレスタと
を備えることを特徴とする安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物内部における爆発によって生じたガス及び飛散物質を捕集する捕集バッグおよびそれを用いた安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性ガス、粉体を取扱う場面では、爆発事故の危険を考慮する必要がある。構造物の室内で爆発事故が生じた場合、一次的な爆発による直接の被害の他、構造物が損壊したり、爆発ガス及び飛散物質が構造物外部へ拡散し二次災害を引き起こす可能性がある。
【0003】
これは、実際に2011年3月11日の東日本大震災に起因して、東京電力福島第一原子力発電所において水素爆発によって建屋が損壊する事故が発生し、放射性物質が拡散することとなり深刻な環境被害をもたらすに至っていることからも、構造物の損壊を防止し、爆発ガス及び飛散物質の拡散を防止することが重要であるといえる。
【0004】
ここで、爆発により生じたガスの圧力の急激な上昇による構造物の損壊を防ぐため、構造物外部に圧力を逃し内部の圧力を下げる爆発ガス放散口を設ける方策が有効であるが、放散口を設けるだけでは圧力を下げることはできるものの、爆発ガスそのものや爆発による飛散物質が外部に拡散することを防止することはできない。
【0005】
特許文献1には解体工事や掘削工事に伴って発生する粉塵が構造物の外部に飛散し二次災害を起こすことを防止し、粉塵が構造物の内面に付着するのを防止するシステムが開示されている。このシステムは、構造物内部に幕を形成し、発生する粉塵を構造物内部の幕内に閉じこめることで捕集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−138487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシステムによれば、粉塵は捕集できるが、構造物内部で爆発が起こった場合を想定したものではないため、構造物内部で爆発事故が起こった場合に、構造物の損壊を防止することはできない。
【0008】
そこで、本発明者らの鋭意研究の結果、爆発事故が生じた際に、構造物内部の爆発ガスが外部に放出する際に爆発ガス及び飛散物を捕集できれば二次災害を防止できることを見出した。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造物内部で爆発事故が生じた際に、構造物内部の圧力上昇を抑制するとともに、爆発ガス及び飛散物質が構造物外部へ拡散することを防止する
捕集バッグを用いた安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の
一態様に係る安全装置は、閉鎖空間を形成する構造物の隔壁に設けられた少なくとも前記閉鎖空間で爆発が生じた際には開口可能な通気部と連通するように配設され、前記閉鎖空間で爆発が生じた際に膨張展開し、前記通気部から外部に放出される爆発ガスおよび飛散物質を内部に収容する
捕集バッグと、前記通気部から前記捕集バッグに至るガスの流路に設けられた破片捕集用フィルターとを備えることにより上記課題を解決する。
また、本発明の他の態様に係る安全装置は、閉鎖空間を形成する構造物の隔壁に設けられた少なくとも前記閉鎖空間で爆発が生じた際には開口可能な通気部と連通するように配設され、前記閉鎖空間で爆発が生じた際に膨張展開し、前記通気部から外部に放出される爆発ガスおよび飛散物質を内部に収容する捕集バッグと、前記通気部から前記捕集バッグに至るガスの流路に設けられたフレームアレスタとを備える。
【0011】
本発明の
安全装置によれば、構造物の内部で爆発事故が生じた際に、構造物の通気部から放出される爆発ガスおよび飛散物質を、捕集バッグの袋体の内部に収容できるように通気部と連通するように配設し、捕集バッグを膨張展開することで放出される爆発ガスおよび飛散物質を捕集バッグの内部に収容することができる。これは、閉鎖空間を形成する構造物の内部で爆発事故が生じると、構造物内部の気体が膨張し圧力が上昇することにより、そのままでは構造物の損壊の危険があるところ、通気部から爆発ガスを放出することで圧力上昇を抑制し、構造物の損壊を回避できる。ここで、単に通気部から爆発ガスを放出すると、爆発ガスや飛散物質が構造物の外部に拡散してしまい、二次災害を引き起こす可能性がある。そこで、通気部から構造物外部に放出される爆発ガスおよび飛散物質を膨張展開した捕集バッグ内部に収容することで構造物内部の圧力上昇を抑制しつつ、爆発ガスおよび飛散物質の拡散を防止することができる。
また、飛散物質や破裂板の破片等が捕集バッグ内に収容される際に袋体を破損するおそれがあるところ、通気部から捕集バッグに至るガスの流路に破片捕集用フィルターを設置し、これを防止することができる。さらにまた、捕集バッグに収容される爆発ガスが可燃性である場合、ガスが燃焼、爆発し、捕集バッグを破損する可能性があるところ、通気部から捕集バッグに至るガスの流路にフレームアレスタを設置し、これを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造物内部で爆発事故が生じた際に、構造物内部の圧力上昇を抑制するとともに、爆発ガスおよび飛散物質が構造物外部へ拡散することを防止する
捕集バッグを用いた安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一形態に係る安全装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る安全装置の一形態について説明する。
図1は、本発明の一形態に係る安全装置の概略図である。構造物1は、閉鎖空間を形成するものであるが、内部で爆発事故が生じ、損壊した場合に、閉鎖性が損なわれ、爆発ガスや飛散物質が拡散することで二次災害が生じうるあらゆるものが考えられる。爆発事故は、可燃性ガスや粉塵によるものなど様々なケースが想定できることから、構造物1としても、例えば、原子力発電所における反応炉を収容する建屋、化学工場の反応塔や各種装置、乾燥機、工場や燃料貯蔵施設や配管、穀物の貯蔵設備、ひいては実験装置等にいたるまで様々なものを挙げることができる。なお、構造物1によって形成される閉鎖空間の閉鎖性については、必ずしも厳密な閉鎖性・密閉性が保たれている必要はなく、構造物内部で爆発事故が生じた際に、構造物1内部の圧力が上昇し、損壊する可能性があれば足りる。
【0015】
構造物の隔壁2には、爆発事故が生じた場合に構造物内部で急激に上昇する圧力を構造物外部に逃すために、予め通気部3を設ける。これは、構造物1内部で爆発事故が生じると、爆発による化学変化によって、構造物内部のガスの温度が上昇し、急激な膨張が起こることにより、構造物内部の圧力が上昇する。構造物1がその圧力上昇に耐えられなくなると損壊することとなるため、構造物1に予め通気部3を設け、膨張するガスを構造物1の外部に放出し、構造物1の耐圧限界を超える圧力上昇が起こることを防止する。このとき、通気部3からは、構造物1内部の物質も外部に飛散することがありうる。飛散物質は、例えば、放射性物質、粉体、爆発による破片、人体や環境に悪影響を及ぼす可能性のある薬液等の有害物質(ミスト状のものを含む)等様々なものが考えられる。
【0016】
通気部3は、構造物の平常時の閉鎖性を確保するため破裂板4で塞ぐ構成とすることができる。破裂板4は、予め設定した圧力で破裂するように形成され、構造物内部で爆発等によって圧力異常が発生した際、破裂板が破裂することで、通気部3が開口し、通気部3の開口部を通って爆発ガスが放出され、構造物内部の圧力上昇を抑制することができる。そのため、破裂板4は爆発により破壊される程度の強度を持っていれば良く、金属製やカーボン製のものを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0017】
通気部3から放出される爆発ガスおよび飛散物質は、捕集バッグ8で捕集する。通気部3から放出される爆発ガスは、構造物1内部で膨張したガスが通気部3に集中し、流速も速く、膨張による圧力がかかった状態で放出されることから、通気部3と連通するように配設された捕集バッグ8の袋体内部には、袋体を膨張展開させるのに十分な圧力をもった爆発ガスが流入する。これにより、捕集バッグ8が膨張展開し、構造物の容積に加えて膨張展開した捕集バッグ分の容積が増えることになるため、構造物内部の圧力上昇を抑制することができる。また、通気部3から放出される爆発ガスに混入した飛散物質も同時に捕集バッグ8内部に収容することができる。なお、平常時の捕集バッグ8について、折り畳み等を行わない自由な状態で配設することもできるが、折り畳んだ状態で配設することが好ましい。
【0018】
捕集バッグ8は、爆発ガスが高温で可燃性のガスである可能性を考慮して、柔軟性で耐熱性と難燃性を持つ素材で構成されることが好ましい。例えば、芳香族ナイロンであるケブラーやノメックスで製織編された織編物を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、捕集バッグ8の通気度は、織編物を構成する糸の太さ、使用本数を変えることで通気度を適宜調整することができる。
【0019】
ここで、爆発ガスが無害な場合、爆発ガスは通過させ、飛散物質だけを捕集すれば良いので、捕集バッグ8を構成する織編物の目の大きさは飛散物質の大きさより小さく調整した織編物を使用すれば足りる。
【0020】
一方、爆発ガス自体が人体や環境に悪影響を及ぼす可能性がある場合、捕集された爆発ガスが漏れ出さないよう捕集バッグ8を構成する織編物の目を小さくする必要があるが、通気性を一切有しない織編物を製造することは困難である。そのため、例えば、捕集バッグ8の表面を通気性のないフィルム等を貼り合わせることで通気性の問題を解決することができる。
【0021】
飛散物質や破裂板の破片等が捕集バッグ8内に収容する際に袋体を破損するおそれがある。これを防止するため、通気部3から捕集バッグ8に繋がるガスの流路5に破片捕集用フィルター6を設置することができる。破片捕集用フィルター6は、十分な強度を有していればよく、金属製のものを用いることができるが、破片によって破壊されない材質のものなら金属製のものに限定されることはない。
【0022】
捕集バッグ8に収容される爆発ガスが可燃性である場合、ガスが燃焼、爆発し、捕集バッグ8を破損する可能性があることから、通気部3から捕集バッグ8に繋がるガスの流路5にフレームアレスタ7を設置することができる。フレームアレスタ7は、不燃性または難燃性の素材で構成されており、ガスは通過させるが火炎の通過を防ぎ、衝撃波の伝播を緩和する。ここで、フレームアレスタ7には、爆燃・爆轟に対応するものも含む。フレームアレスタ7としては、様々な態様のものを用いることができ、例えば、金属製のメッシュ(金網)型、クリンプリボン(波型)の装置を用いることができるが、これらに限定されることはない。また金属製のものに限られず、例えば、不燃性の無機繊維素材、例えばアルミナ繊維布帛、ガラス繊維布帛、セラミック繊維布帛等を支持する枠に挟んで固定し、ガス流路内にガスの流れる方向に対して略直角に設置する構成とすることができるが、これに限定されることはなく、様々な構成のものを用いることができる。
【0023】
以上、説明したように、構造物内部で爆発事故が起こった場合でも、構造物の隔壁に設けられた通気部より爆発ガスを放出し、爆発ガスを捕集袋に導き、捕集することで爆発ガスの一部を構造物内部から捕集袋に移し、構造物内部の圧力上昇を抑制することができ、構造物の損壊を防止するとともに、飛散物質を捕集することで構造物の外部に人体や環境に悪影響を及ぼす物質が構築物の外部に拡散し、二次災害が生じることを防止することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 構造物
2 隔壁
3 通気部
4 破裂板
5 ガス流路
6 破片捕集用フィルター
7 フレームアレスタ
8 捕集袋