(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜16に記載の少なくとも1つの装置を備え、ばね、ダンパ、または別の請求項1〜16に記載の装置のうちの少なくとも1つに接続され、互いに一体化されることを特徴とするシステム。
前記少なくとも1つの装置が、第1のダンパに直列に接続されて直列ダンパ−イナータが形成され、前記直列ダンパ−イナータが、第2のダンパに並列に接続されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
第1の装置が、ダンパに直列に接続されて直列ダンパ−イナータが形成され、前記直列ダンパ−イナータが、第2の装置に並列に接続されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
ばねが、ダンパに並列に接続されて並列ばね−ダンパが形成され,前記並列ばね−ダンパが、前記少なくとも1つの装置に直列に接続されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の原理を理解しやすくするために、図面に示される実施形態を参照し、それらを説明するために具体的な用語を使用する。しかしながら、それらは決して本発明の技術的範囲を限定しようとするものではなく、例示の装置の変更およびさらなる改良、ならびに本明細書に例示される本発明の原理のさらなる応用は、本発明に関する技術の当業者にとって通常に想到されると考えられることは当然である。本発明の少なくとも1つの実施形態を説明および図示するが、本願は、本発明の他の実施形態を示し、および/または記載しうる。「本発明」とは、一群の発明の或る実施形態を指し、或る1つの実施形態に含まれる装置、プロセス、または構成が、とくにそのようでないと述べられない限りは、すべての実施形態に含まれる必要はないことは当然である。さらに、本発明のいくつかの実施形態によってもたらされる「利点」が説明されるかもしれないが、他の実施形態がそのような利点を含まなくてもよく、他の利点を含んでもよいことは当然である。本明細書に記載される利点を、いずれの請求項も限定するものとして解釈してはならない。
【0011】
種々の具体的な量(空間における寸法、温度、圧力、時間、力、抵抗、電流、電圧、濃度、波長、周波数、熱伝達係数、無次元のパラメータ、など)が本明細書において述べられるが、そのような具体的な量は、あくまでも例として提示されるにすぎず、特記されない限りは、概略値であり、あたかもそれぞれの量に「約」という言葉が前置きされるかのように理解されなければならない。さらに、事物の具体的な構成に関する説明は、あくまでも例にすぎず、その構成の他の種の適用可能性を制限するものではなく、記載の構成に関係しない他の構成の適用可能性を制限するものでもない。
【0012】
油圧力制御装置の試作品を製作して試験した。そのような試作品には、
図1に示されるようにシリンダの外側にコイルが設けられ、流体として水を使用する試作品、および
図2に示されるようにピストンそのものに内部のらせん状の流路が設けられ、油圧流体を使用する別の試作品が含まれる。
【0013】
図1は、力制御油圧装置1の例を示す。装置1は、別個独立に移動可能な端末を含む油圧手段を備え、別個独立に移動可能な端末は、この例では、シリンダ2およびシリンダ内を移動可能なピストン3にそれぞれ含まれてよい。液体4が、シリンダ2の内部に収容される。さらに装置は、2つのオリフィス(6、7)を介してシリンダ2からの液体の流出およびシリンダ2への液体の流入を生じさせる密封された流路を形成するらせん管5を、シリンダ2の外側に配置して備える。油圧手段は、端末の相対移動によって液体の流れを生じさせるように構成される。ピストン3が移動することで、液体4がらせん管5を通って流れ、移動する液体4の質量に起因して慣性力が生じる。シリンダ2が、一方の端末を含むことができ、ピストン3が、もう1つの端末を含むことができる。後述されるように、端末間の相対移動によって引き起こされる移動する液体の質量に起因する慣性力により、端末における機械力を、端末間の相対の加速度に実質的に比例するように制御する。
【0014】
ピストン3の運動を、ばねバッファ(図示されていない)などの装置によって規制することができる。そのような手段は、ピストンの行程の限界において大きな力または速度が生じた場合に装置を保護するための有用な安全の特徴をもたらすことができる。
【0015】
図1の装置は、貫通ロッド8を使用して実現される。フローティングピストンまたは二重管あるいは他の同様の機構を有する単一のロッドを使用する代案も、同様に実現可能である。油圧手段の他の構成も、後述されるさらに具体的な実施形態において同様に実現可能であることを、理解できるであろう。流体を加圧するための手段(図示略)が考えられる。
【0016】
図2は、本発明による力制御油圧装置11の別の例を示す。装置11は、シリンダ12と、シリンダ内で移動可能なピストン13と、シリンダ12内の液体14とを備える。ピストン13の外面が、シリンダ12の内側に挿入されたときにピストン13とシリンダ12との間にらせん状の流路15が形成されるよう、らせん状の溝を有する。ピストン13が移動することで、液体14がらせん状の流路15を通って流れ、シリンダ12の内部を移動する液体14の質量に起因して慣性力が生じる。
図2の例では、らせん状の流路15が、機械加工に便宜な半円形の断面を有する。他の断面形状も、装置の減衰特性を制御するために好都合に使用することができる。
図2の例は、貫通ロッド15を使用して実現される。
【0017】
図1に示した例において、装置1を特徴付けるパラメータ、すなわち端末に加わる力と端末間の相対の加速度とを関連付ける比例定数を、ピストン、シリンダ、およびらせん管の半径、シリンダの長さ、ならびに液体の密度などの値を変えることによって変更することができる。そのようなパラメータの影響を、以下で詳しく述べる。
【0018】
図1に示した構成に関して、ピストンの半径をr
1とし、シリンダの内径をr
2とし、らせん管の内径をr
3とし、らせんの半径をr
4とし、らせんのピッチをhとし、らせんの巻きの数をnとし、シリンダの内側の長さをLとし、液体の密度をρとする。さらに、A
1=π(r
22−r
12)がシリンダの断面積であり、A
2=πr
32が管の断面積である。
【0019】
らせん管内の液体の総質量は、下記式(1)にほぼ等しい。
【0021】
シリンダ内の液体の総質量は、下記式(2)にほぼ等しい。
【0023】
ピストンにxに等しい直線変位が加わる場合、らせん管内の流体要素は、下記式(3)にほぼ等しい角度変位θ(ラジアン)を期待することができる。
【0025】
らせん管内の全液体の質量について、ピストンの軸を中心とする慣性モーメントは、下記一般式にほぼ等しい。
【0027】
ここで、装置1が、端末間に生じる慣性力が端末間の相対の加速度に比例する理想的な挙動を有し、比例定数がbで表わされると仮定すると、下記式(4)と考えることができ、下記式(5)がもたらされる。
【0030】
全液体の質量を、m
tot=m
hel+m
cylとする。
図1に示した実施形態に使用した2つの異なる液体について、典型的な値が下記の表にまとめられる。以下の例において、r
4=r
2+r
3、h=2r
3、およびL=nhとした。また、装置の外径(OD)を、2(r
4+r
3)に等しくした。
【0033】
表1および表2に示されるように、モデル化および試験の作業によって、生じる慣性抵抗効果(加速度に比例した力)が、充分に大きくなりうる(比例定数bが、50kgよりも大きい)ことが実証された。そのような効果は、装置がばねおよびダンパに並列に配置される場合に必要になると考えられる。
【0034】
さらに、モデル化および試験によって、液体の粘性が理想的な挙動からの乖離をもたらすことが実証された。さらなる有害抵抗要素が、流体の圧縮性によってもたらされる可能性があり、そのような流体の圧縮性を、2つの並列な要素に直列なばねとしてモデル化することができる。
【0035】
米国特許第7,316,303号明細書においては、理想的(すなわち、力が相対の加速度に比例する)な装置が開示され、摩擦やバックラッシュなどによって引き起こされる乖離は、必要なだけ小さくすることができる有害抵抗と考えられる。しかしながら、本発明の場合には、液体の粘性によって引き起こされる非線形な減衰が内在し、大きなピストン速度において理想的な挙動からの乖離を引き起こす。
【0036】
本発明の非線形な減衰は、「累進的」であり、すなわち力が相対速度につれて線形よりも高い割合で増大する。自動車の用途における実際のダンパは、多くの場合に逆進的であり、すなわち力が相対速度につれて線形よりも低い割合で増大する。油圧流体などの通常の液体を使用する場合でも、本発明による装置を、調節手段を使用して理想的な挙動を示すように構成することができる。例えば、無視できない並列ダンパとなるものの、オリフィス6、7におけるシムパックまたはバルブ機構を使って、より線形な減衰特性を達成することができる。これは、線形ダンパを並列に有する本発明による理想的な挙動を有する便宜な一体型の装置を生み出す可能性を有する。他の状況においては、粘性の影響を補償しない方が好都合である可能性がある。
【0037】
以下に、減衰の影響を詳述する。らせん管における流体の平均速度をuとし、ピストンの両側にわたる圧力低下をΔpとし、流体の粘性をμとし、らせん管の長さをlとすると、下記式(6)である。
【0039】
次に、平均速度uの管内の流れを維持するために必要な主たるピストンの両側にわたる圧力低下Δpを計算する。これは、下記ピストン相対速度を維持するために必要な定常力を計算可能にし、したがって減衰係数を計算可能にする。
【0042】
上記一般式に鑑み、管のレイノルズ数(Re)は、下記式(7)に等しく、層流から乱流への移行は、(Re)=2×10
3の付近で生じる。層流が保たれるようにuが充分に小さいと仮定し、直線管についてのハーゲン−ポワズイユの式を使用して、下記式(8)が得られる。
【0046】
上記定常の相対速度を維持するために必要なピストンへの力は、ΔpA
1に等しい。このことは、下記式(9)に等しい線形な減衰レート係数を示唆する。
【0048】
乱流を維持するために必要な圧力低下は、ダーシーの法則によれば、下記式(10)であり、fは無次元の摩擦係数である。
【0050】
滑らかな管において、ブラシウスの実験式は、下記式(11)である。
【0052】
これにより、定常速度を維持するために必要なピストンへの定常力の以下の式(12)が得られる。
【0054】
流体を、ρ=100kgm
−3およびμ=10
−3Pasの水であるとする。l=7m、r
1=8mm、r
2=20mm、r
3=4mm、L=300mmとする。これにより、
m
hel=0.352kg
m
cyl=0.317kg
b=155kg
の装置が得られる。
【0055】
乱流への移行は、下記一般式のピストン速度において生じ、層流に一致する速度において、ダンパレートはc=77.6Nsm
−1である。
【0057】
乱流の条件における圧力低下および直線力が、
図3および
図4にそれぞれ示される。
【0058】
r
1、r
2、およびr
3がすべて2倍に増やされ、lが4分の1に減らされる場合、m
helおよびbは変わらないが、m
cylが4倍に増え、乱流における減衰力が、2
1.25=2.38という係数で減少する。
【0059】
油圧手段の別の構成も、同様に実現可能である。
図1に示したらせん管を、本発明の他の実施形態においては、別の形状の管で置き換えることができる。さらに、液体の流路をシリンダの内部に設けてもよく、ピストンを、例えばらせん状の液体の流路またはいくつかの同心ならせんが形成されるように成形することができる。ピストンの周囲のすき間を使ってシリンダの内部に流路を形成してもよい。実際には、最良の結果は、らせん状の流路によって達成されると考えられる。
【0060】
図5は、ピストンの外面に位置する半円形の断面のらせん状の溝と、
図2の概略図のように配置された貫通ロッドとを有する流体イナータを示す。
図6は、ピストンの外面のらせん状の溝と、標準的な伸縮式ダンパと同様の単一のロッドと、加圧ガスリザーバとを有する流体イナータを示す。
【0061】
図7は、本発明による力制御油圧装置10の例を示す。
図1の装置と同様に、装置10は、シリンダ20と、シリンダ内を移動可能なピストン30と、シリンダ20内の液体40とを備える。さらに装置は、2つのオリフィス(60、70)を介してシリンダ20からの液体40の流出およびシリンダ20への液体40の流入を生じさせる密封された流路を形成するらせん管50を、シリンダ20の外側に配置して備える。したがって、2つのオリフィス(60、70)が、らせん管50における液体の流れを制御するための基本的な手段を示す。液体の流れを制御するための手段が、他の構成を有してもよいことを、理解できるであろう。そのような構成として、例えば電子弁、コンピュータ制御のフローバルブ、またはさらに詳しく後述されるように磁性流体とともに使用される磁界発生器が挙げられる。
図1の装置と異なり、本発明によるピストン30には、オリフィス90の形態の減衰手段が設けられる。
【0062】
ピストン30の移動によって、液体40がオリフィス90(第1の流路)を通って流れて減衰力を生じさせるとともに、らせん管50(第2の流路)を通って流れて移動する液体40の質量に起因する慣性力を生じさせる。この構成において、外側のらせん管50内の圧力低下は、ピストン30の両側にわたる圧力低下と同じである。この圧力低下にピストンの面積を乗算したものが、端末において直面される力に等しい。したがって、第1および第2の流路が流体によって結合し、イナータに直列に組み合わせられたダンパが得られる。オリフィス90の代わりに、従来の油圧ダンパに使用されるような他の減衰手段を使用してもよい。
【0063】
図8は、
図7に示した液体直列ダンパ−イナータの等価回路を概略的に示す。この回路は、らせん管50を通って流れる液体40によって設けられるイナータ300と、らせん管50を通る液体40に起因する粘性効果によって引き起こされる有害抵抗(非線形の並列な減衰)200と、オリフィス90または同様の減衰手段によって設けられるダンパ600とを備える。
【0064】
後述されるように、
図7に示した構成の変形および追加が、実際には可能である。
【0065】
図9は、本発明による力制御油圧装置の例を示す。この装置は、外側のらせん状の流路を形成する二重管の構成と、軸に取り付けられた減衰ピストンとを有する。この装置は、圧縮または伸張の際に、ピストンを通過し、あるいはピストンの周囲に位置する2つの流体の流路を提供する。ピストンの移動は、シリンダ内で双方向である。標準的な種類のダンパ軸、ピストン、およびシムの構成を使用することができる。
【0066】
第1の流路が、軸に取り付けられた減衰ピストンを通って設けられる。第1の流路は、減衰力を生じさせる主たる軸のピストンのシムまたはオリフィスを通過する従来の液体の流れである。第2のらせん状の流路は、第1の流路に流体に関して直列に接続される。らせん状の流路は、液体にスピン運動を生じさせ、回転する流体の慣性が慣性抵抗を生じさせる。らせん状の流路を通過する流れは、粘性減衰も生じさせる。
【0067】
両方の流路が流体に関して接続されるため、この構成は、それぞれの流路における圧力が等しくなるために、直列な力の接続を構成する。主たる軸部のピストンの両側にわたる圧力差が、軸の動きに抵抗する(あるいは、軸の動きを促進する)力に変換される。
【0068】
図9に示した装置は、軸部がピストンを通過してダンパの両側から外へと延びる貫通ロッド型ダンパの一例である。これは、液体の押し出しを防止し、押し出された液体を受けるためのリザーバを不要にする。しかしながら、温度の上昇が予想される場合には、熱膨張リザーバが、典型的には必要である。らせん状の流路がピストンの内部に含まれ、外部の液体の流路がオリフィスを有する固定のピストンによって制限される内外が逆の例も可能である。この構成においては、貫通ロッドに取り付けられたオリフィス付きの別のピストンが、らせん状の流路において得られる減衰と並列なさらなる減衰を達成し、有害抵抗の減衰を変えるための手段を提供する。
【0069】
複数のらせんインサートを、らせん状の流路の長さを増加または減少させて慣性抵抗効果の大きさを調節できるようにするために追加したり取り除いたりすることができる。
図10および
図11が、らせん状の流路の長さを増減させて慣性抵抗を増減させるために
図9の装置の第2の流路に並べることができるらせんインサートを示す。インサートを、らせん状の流路を整列させるためにピンまたはスロットを使用して配置することができる。これは、開発またはレーシングカーに使用される装置においてとくに有用である。
【0070】
らせんインサートの使用を図示および説明したが、他の実施形態は、流体に渦流を付与するための他の手段を備える。そのような渦形成手段の一例として、第2の流路に半らせん状または完全にらせん状に延びる複数の別々の羽根が挙げられる。そのような羽根は、圧力容器の内径またはピストンの円筒形の流路の外径に配置することができる。例えばMR流体など、とくには高密度および/または粘性の流体の場合に、必ずしも360度にわたる完全な流体の案内を用意する必要がないことは当然である。
【0071】
再び
図9を参照すると、ピストンが移動する内側の管のそれぞれの端部に1つ以上のオリフィスが形成されることを、見て取ることができる。これらのオリフィスのいくつかに、一方向には実質的に自由な流体の流れをもたらすが、他方の方向の流体の流れは実質的に遮る逆止弁など、一方向のバルブを配置してもよい。
【0072】
さらに、さらに別の実施形態は、ショックアブソーバのピストンにおいて一般的に見られるシム式一方向バルブと同様の圧力低下に応じて変化する流れの開口を生じるバルブを備える。上述の実施形態において、一方向バルブは、減衰に流体の流れの方向に依存する慣性成分をもたらすように機能する。そのような実施形態においては、一例として、沈み込みの際に比較的軽い慣性効果を有し、跳ね返りの際により大きな慣性効果を有することができる。さらに別の例として、バルブを、主たる移動ピストンの両側にわたる圧力低下が少ないときには慣性効果が小さく、移動ピストンの両側にわたる圧力低下がより大きいときにはより大きな慣性効果をもたらすように、構成することができる。
【0073】
図12は、本発明による力制御油圧装置の別の例を示す。この装置は、軸によって押し出される液体および減衰用の液体の熱膨張を受けるためのリザーバを有するより従来的なダンパを含む。この単動式ロッドの構成は、従来からのダンパの技術と同様に、浮動ピストンを有する外部チャンバを使用する。これにより、装置を加圧するための便宜な手段が得られる。頭弁ピストンを有し、あるいは頭弁ピストンを有さない典型的なダンパのリザーバが、軸によって押し出される液体を受け、ダンパに正の圧力を維持するために使用される。加圧ガスリザーバが備えられる。
【0074】
いくつかの実施形態においては、
図10および
図11に示した形式のらせんインサートを、頭弁と浮動ピストンとの間でリザーバに挿入することができる。そのようなリザーバのらせんインサートが、主たるシリンダのピストンの周囲のらせん状の流路を置き換えることができ、あるいは主たるシリンダのピストンの周囲のらせん状の流路を補助することができる。
【0075】
図13は、本発明による力制御油圧装置の別の例を示す。この装置は、貫通ロッドの一例であり、より低い速度においていくらかの追加の制御可能な減衰をもたらすために、双方向の減衰ピストンが外部のらせん状の流路に直列に追加される。
【0076】
図9、
図12、
図13、および
図22〜
図24は、本発明の種々の実施形態による流体ショックアブソーバを示す。以下の説明において、説明のうちの一部は
図9、
図12、
図13、および
図22〜
図24に示した実施形態のすべてに関係するかもしれないが、他の説明は、
図9、
図12、
図13、および
図22〜
図24に示した実施形態のすべてにではなく一部にのみ当てはまる。これらの図および他の図は、特定の実施形態をさらに説明する本文を含む。そのテキストおよび説明は、あくまでも例としてのみ提示され、本発明を限定するものとして解釈されてはならない。
【0077】
2つの端部および円筒形の内壁を有する内側ハウジングが存在する。内壁の内側をスライドできるピストンが存在する。このピストンは2つの面を有し、内壁と協働して、かつ一方の面から一方の端部までの第1の流体空間と、他方の面から他方の端部までの第2の流体空間とを形成するように、一方の面から他方の面へとピストンを通過する第1の流路を有する。内側ハウジングを受け入れる外側ハウジングが存在し、外側ハウジングおよび内側ハウジングが、前記第1の空間および前記第2の空間の両方に連通する第2の流路を形成し、この第2の流路が、内壁の外側を巡って周方向に取り囲む。いくつかの実施形態においては、第2の流路が、少なくとも約1回転にわたって周方向に取り囲む。
【0078】
外側ハウジングは、略円筒形の内面および外面を有し、内側ハウジングは、略円筒形の内面および外面を有する。外側ハウジングおよび内側ハウジングが、略環状の空間を両者の間に形成し、第2の流路が、この環状の空間を通る。
【0079】
いくつかの実施形態は、内側ハウジングと外側ハウジングとの間に配置された別途の円筒部材をさらに備え、この部材が、部材の円筒の軸の周囲を少なくとも1回転にわたって延びる溝を有し、この溝が内側ハウジングまたは外側ハウジングの少なくとも一方と協働して、第2の流路を形成する。円筒部材は、ショックアブソーバに着脱可能であってよい。第2の流路は、複数の円筒部材を備える。
【0080】
各々の部材の溝は、入り口および出口を有するらせん状であってよく、1つの円筒部材の出口が、隣接する円筒部材の入り口へと流体をもたらすように整列する。
【0081】
第2の流路は、複数回転にわたって内側ハウジングの周囲を周方向に取り囲み、第2の流路を通って流れる流体の角度モーメントを実質的に増加するように構成および設定される。第2の流路は、略渦巻き状であってよい。
【0082】
第1の空間または第2の空間の一方から第2の通路を通って第1の空間または第2の空間の他方へと流れる流体を、らせん形状の範囲内に実質的に閉じ込めることができる。
【0083】
第2の流路は、比較的少ない粘性による圧力低下で第2の流路を通って流れる流体の慣性に実質的に関連するフロー特性を示し、第1の圧力低下が、そこを通って流れる流体の速度および粘性に実質的に関連するフロー特性を示す。いくつかの実施形態においては、第2の通路の粘性による圧力低下が、第1の通路の粘性による圧力低下よりも実質的に少ない。
【0084】
第1の流路は、一方の面から他方の面へと流れる流体について所定の流体の流れの特性を有するバルブを備える。いくつかの実施形態は、第1の空間または第2の空間の一方から第3の空間への連通をもたらすバルブをさらに備え、このバルブが、第3の空間へと流入する流体について第1の所定の流体のフロー特性を有し、第3の空間から流出する流体について第2の別の所定の流体のフロー特性を有する。
【0085】
外側ハウジングは、第1の取り付け手段を備え、ロッドが、第2の取り付け手段を備え、各々の取り付け手段が、車両の懸架装置の別の構成要素へと接続されるように構成および設定される。さらに、いくつかの実施形態は、2つの端部を有するロッドを備え、一端がピストンに固定接続され、他端が外側ハウジングの外へと突き出する。
【0086】
流体は、油圧流体または磁性(MR)流体であってよい。MR流体は、典型的には、懸濁状の鉄粒子を含み、したがってきわめて密度が高く、より大きな慣性効果をもたらすとともに、磁界の印加によって粘性を調節することもできる。
【0087】
図10および
図11のらせんインサートを
図12および
図13の装置の第2の流路に配置して、らせん状の流路の長さを増減させてもよい。
図13は、3組のらせんインサート(各々が断面で図示される)が対向面においてピンで一体化される実施形態を示す。
【0088】
図7に示したらせん管を、本発明の他の実施形態において、別の形状の管で置き換えてもよい。さらに、
図2、
図5、および
図6に示されるように、液体の流路を、例えばピストンをらせん状の流路またはいくつかの同心ならせんが形成されるように形作り、シリンダ内に設けることが可能である。ピストンの周囲のすき間を使って、シリンダ内に流路を形成してもよい。実際には、最良の結果は、らせん状の流路によって達成されると考えられる。他の実施形態においては、両方の液体の流路を、軸アセンブリに形成されるらせん状の流路など、ピストンの内部に設けてもよい。
【0089】
さらに、本発明による装置の外側のらせん状の流路について、複数の始点および変化する断面形状も想定される。より小さな形状のらせんによって早期の段階において粘性減衰をもたらし、次いで、より大きな断面を残して慣性抵抗を生じさせてもよい。
【0090】
図22〜
図24が、らせん状の(第2の)流路を通過する液体の流れを制御するためのいくつかの選択肢を示す。
図22〜
図24の実施形態において、らせん状の流路は、双方向のピストンを通って案内されて慣性流を制御する。
図22〜
図24の実施形態においては、加圧ガスリザーバが、系を加圧し、熱膨張を許容するために使用されるが、ダンパから押し出されてガスリザーバに受け入れられる流体が存在しない貫通ロッドの構成を使用することも可能である。
【0091】
外部から調節することができる慣性抵抗が、装置の内側管を、らせん状の流路に対して軸方向に調節して第1の流路を形成することができる本発明による装置について考えられる。これは、動かされたときに、流体のらせん状の柱の開始点を設定し、らせん状の流路の一部分を実質的に追加または除去することで、慣性抵抗を変化させる。
【0092】
図23は、減衰および慣性のそれぞれの流路の流れを制御するために外部の調節手段が使用される実施形態を示す。調節手段は、ブリード式、ブローオフ式、シムプレロード式、または他の種類の調節手段のいずれでもよい。
【0093】
さらに、
図24の実施形態に示されるとおり、本発明による設計と連動して動作するようにコンピュータ制御のバイパスバルブを使用してもよい。コンピュータ制御バルブを使ってらせん状の流路を巡るバイパスの流れを制御してもよいが、らせん状の流路を通る流れを制御することによって慣性抵抗を別に制御してもよい。
【0094】
図24に示した実施形態においてMR流体が使用される場合には、磁界によって粘性を調節することが可能である。磁界発生装置を、第1または第2の流路における減衰特性を変化させるために使用することができる。
【0095】
本発明による装置を、例えば運動の制御をもたらすためにオートバイのフォークの内部または自動車のストラットの内部に設置することができる。
【0096】
本発明による装置を含む一体型の装置を製作できる。ここで、別の装置が本発明による装置と並列に作用する
図14、
図16、および
図18の3つの例が提示される。
【0097】
図14は、ダンパ121に並列な直列ダンパ−イナータを示す。この装置は、2つの別々な流体チャンバ124および122を備える。装置は、チャンバ124において貫通ロッドとして機能するロッド128を備える。ピストン131および132が、ロッドに取り付けられる。チャンバ124により、流体で満たされた外側のらせん状の流路125と、入り口および出口ポート126および127と、ピストン131のオリフィス123とを備えるタイプ10(
図7に示される)の装置が動作する。らせん状の流路125によって、イナータ効果(第1の流路)が得られ、オリフィス123によって、直列なダンパ(第2の流路)が得られる。第2のチャンバ122が、ピストン132のオリフィス133によって並列ダンパが得られる。チャンバ122は、外部のチャンバ130および浮動ピストン129を備え、ロッドによって押し出される流体を受ける。このチャンバは、装置を加圧するように機能してもよい。
【0098】
図15は、ダンパ161をダンパ162とイナータ163との直列接続に並列に備える
図14による装置の回路図を示す。らせん状の流路からの有害抵抗の減衰または意図的に導入される減衰は、イナータ要素のみに並列に作用すると考えられる。
【0099】
図16は、イナータ141に並列な直列ダンパ−イナータを示す。この装置は、2つの別々な流体チャンバ144および142を備える。装置は、チャンバ144において貫通ロッドとして機能するロッド148を備える。ピストン151および152が、ロッドに取り付けられる。チャンバ144により、流体で満たされた外側のらせん状の流路145と、入り口および出口ポート146および147と、ピストン151のオリフィス143とを備えるタイプ(
図7に示される)の装置10の動作が得られる。らせん状の流路145によって、イナータ効果(第1の流路)が得られ、オリフィス143によって、直列なダンパ(第2の流路)が得られる。第2のチャンバ142が、外部のらせん状の流路155によって並列イナータをもたらす。チャンバ142は、外部のチャンバ150および浮動ピストン149を備え、ロッドによって押し出される流体を受ける。このチャンバは、装置を加圧するように機能させてもよい。
【0100】
図17は、イナータ181をダンパ182とイナータ183との直列接続に並列に備える
図16による装置の回路図を示す。らせん状の流路からの有害抵抗の減衰または意図的に導入される減衰は、イナータ要素に並列に作用すると考えられる。
【0101】
図18は、ばねダンパとイナータ221との直列接続に並列な直列ダンパ−イナータを示す。この装置は、2つの別々な流体チャンバ224および222を備える。装置は、チャンバ224において貫通ロッドとして機能するロッド228を備える。ピストン231が、ロッド228に取り付けられる。ばね付勢式のピストン232が、ばね234によってロッド228へと摺動自在に取り付けられる。チャンバ224が、流体で満たされた外側のらせん状の流路225と、入り口および出口ポート226および227と、ピストン231のオリフィス223とを備えるタイプ(
図7に示される)の装置10の動作が得られる。らせん状の流路225によって、イナータ効果(第1の流路)が得られ、オリフィス223によって、直列なダンパ(第2の流路)が得られる。第2のチャンバ222が、外側のらせん状の流路235と、ばね付勢式のピストン232と、ピストンのオリフィス233とによる直列イナータ−ばね−ダンパを並列にもたらす。チャンバ222は、外部のチャンバ230および浮動ピストン229を備えロッドによって押し出される流体を受ける。このチャンバは、装置を加圧するように機能させてもよい。
【0102】
図19は、ダンパ241とイナータ242との直列接続をばね243とダンパ244とイナータ245との直列接続に並列に備える
図18による装置の回路図を示す。らせん状の流路からの有害抵抗の減衰または意図的に導入される減衰は、イナータ要素のみに並列に作用すると考えられる。
【0103】
図20は、本発明による装置321を示す。装置321は、シリンダ322と、シリンダ内を移動可能なロッド328と、シリンダ322内の流体324とを備える。オリフィス323を有するピストン331がロッド328に固定され、さらなるばね付勢式のピストン332が、ロッド328に摺動自在に取り付けられる。さらに装置は、2つのオリフィス(326、327)を介してシリンダ322からの液体の流出およびシリンダ322への液体の流入を生じさせる密封された流路を形成するらせん管325を、シリンダ322の外側に配置して備える。ロッドが移動することで、液体324がらせん管325を通って流れ、移動する液体324の質量に起因して慣性力が生じる。
図7の装置と同様に、ピストン331が、オリフィス323の形態の減衰手段を備える。第2のばね付勢式のピストン332が、並列なばねの作用をもたらす。装置321は、外部のチャンバ329および浮動ピストン330を備えロッドによって押し出される流体を受ける。このチャンバは、装置を加圧するように機能させてもよい。
【0104】
図21は、ばね342とダンパ343との並列接続に直列なイナータ341の接続を含む
図20による装置の回路図を示す。