(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747056
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】昇降用ステップの固定装置
(51)【国際特許分類】
E06C 5/24 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
E06C5/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-155199(P2013-155199)
(22)【出願日】2013年7月26日
(62)【分割の表示】特願2009-178871(P2009-178871)の分割
【原出願日】2009年7月31日
(65)【公開番号】特開2013-213407(P2013-213407A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−032700(JP,A)
【文献】
特開2008−285815(JP,A)
【文献】
実開昭57−071699(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第04235144(DE,A1)
【文献】
特開2010−270438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 5/24
E06C 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側一対の支柱にステップ板を適宜間隔で取り付けた昇降用ステップの固定装置であって、細長板状の曲げ部材をL字状に折り曲げて、被固定部を前方から垂直におよび下方から水平に押え込む下部押さえ部材と、被固定部を上方から水平に押え込む細長板状の上部押さえ部材とで固定部材を形成し、前記下部押さえ部材および上部押さえ部材は、前記支柱側部にそれぞれ回動自在に軸着し、前記上部押さえ部材は、下部押さえ部材の内方位置に設けることを特徴とする昇降用ステップの固定装置。
【請求項2】
下部押さえ部材は、被固定部を前方から押え込む垂直部と、被固定部を下方から押え込む水平部とを備え、さらに前記水平部の先端から被固定部に差し込まれる差込片が垂直に延設されている請求項1に記載の昇降用ステップの固定装置。
【請求項3】
下部押さえ部材には、前記下部押さえ部材とその内方位置にある前記上部押さえ部材とが干渉せずに回動可能とするための開口が形成されている請求項1または請求項2に記載の昇降用ステップの固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラック荷台の所要箇所に立て掛けて使用される梯子としての昇降用ステップの固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業員が、トラックの荷台での作業のために荷台部に対し昇り降りしたり、荷台部から小荷物等を持って降りたりするためには昇降用ステップが必要である。
【0003】
トラックの荷台は、周囲に開閉自在なあおりを有するが、トラックの荷台への乗り降りや昇降や荷の積み下ろしのための昇降用ステップとしては、車輪を有する階段構造の移動ステップが用いられるが、収納場所や設置の容易性に難があり、また、不要な際にはトラック荷台に搭載しておくのに適さない。
【0004】
これに対して、このように、作業員が、トラックの荷台部での作業のために荷台部に対し昇り降りしたり、荷台部から小荷物等を持っておりたりするためのトラック専用の梯子は、従来、知られておらず、従って、トラック荷台部での昇降には、両側一対の支柱に踏杆を所要間隔おきに横架してなる普通の梯子が使用されている。
【0005】
しかし、普通の梯子をトラックの荷台部の所要箇所、例えば、荷台部に取り付けてある煽り外板(左右各サイドにある側煽り外板及び後ろ側にある後煽り外板がある)にそのまま立て掛けて使用する場合、梯子が煽り板から転倒しやすいため、梯子を昇り降りする作業者以外の他の作業者等がその梯子を保持しなければならず、非常に面倒であった。
【0006】
下記特許文献1は、普通の梯子に代わるものとして、トラック荷台部の煽り外板上端、あるいは煽り外板の上に取り付けられた手摺り、あるいはまた煽り外板を倒した状態での荷台部に立て掛けても、転倒したりすることなく、安全に自己保持させることができるとして提案されている。
【特許文献1】特開2005−48381号公報
【0007】
これは
図4に示すように、トラック用昇降梯子Aは、両側一対の支柱1,1に踏杆2を所要間隔おきに横架してなる梯子3と、この梯子3の片側の支柱1に取り付けられる手摺4と、梯子3の両支柱1,1の夫々上部側に設けられ、トラックの荷台部5の立て掛け箇所に掛止される掛止具6から構成される。
【0008】
梯子3の各支柱1は、図示は省略するが、支柱本体と、この支柱本体の下端部に伸縮調整自在に連結される伸縮部材とから構成され、伸縮部材の下端部には接地ベース9が枢着されている。接地ベース9の底面には滑り止めが施されている。
【0009】
掛止具6は、梯子3の各支柱1に一端部を枢着された回動自在な回動板10と、この回動板の先端部に固着された略L字状の掛止具本体11と、梯子3が所定の傾斜角度の立て掛け姿勢にある時に掛止具本体11を支柱1から前方へ水平に突出した掛止位置に保持する掛止位置保持手段と、掛止具本体11を支柱1側に退避した退避位置に保持する退避位置保持手段とによって構成される。
【0010】
使用方法について説明すると、昇降梯子Aの使用にあたって、トラック荷台部5のあおりRを倒した状態でそのあおりRの基端部37に昇降梯子Aを立て掛けて使用する場合は、梯子3を地面Gに対して所定傾斜角度になるように前傾させながら、掛止具6の掛止具本体11を荷台部5に枢着されているあおりRの基端部37に掛止させる。
【0011】
あおりRが荷台部5に対し起立させてあって、このあおりRに立設されたガードバー38の上端部に昇降梯子Aを立て掛けて使用する場合にも、同様に、掛止具6の掛止具本体をガードバー38の上横枠に掛止させる。
【0012】
このように昇降梯子Aをトラック荷台部5の所要箇所に立て掛けて使用する際には、梯子3の両支柱1,1の夫々上部側に設けた掛止具6が、トラック荷台部5の立て掛け箇所、即ち
図5の例ではあおりRの基端部37、またガードバー38の上横枠に掛止されて、自己保持されるから、作業者が梯子3を保持する必要がなく、従って昇降梯子Aの使用に余分な作業員を必要とせず、昇降梯子Aを安全に使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、トラック荷台のあおりは、荷の積み下ろし等の際に水平状態に倒した状態とすることができると、あおり上を作業員が載る作業スペースとして使用でき、荷台いっぱいに荷を積む場合に便利である。
【0014】
しかし前記特許文献1のトラック用昇降梯子に取り付けてあるあおりへの固定装置である掛止具6は略L字状の掛止具本体11を引っ掛けるもので、トラック荷台のあおりを垂直に立てた状態か、もしくはこの立てた状態から180°折り畳んで倒した状態に限定された使用であり、水平状態に倒したあおりに使用できる固定装置はなかった。
【0015】
なお、特開2000−310093号公報には、マンホールなどの昇降時に使用する折畳み式タラップとして、マンホールの開口スラブに水平に掛止する固定金物が開示され、また、特開2004−124359号公報には作業台の水平部に固定する取付部を備える踏み梯子が開示されている。
【0016】
しかしながら、これらの発明に開示の固定装置は、いずれも開口スラブや作業台の端縁を上下から挟み込む構造とする場合、挟着力を付与するための締付けネジやバネを必要とし、構造が複雑となるだけでなく、取り付けの手間も要して作業性がよくなかった。
【0017】
本発明は前記従来例の不都合を解消し、例えばトラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態とすることで、あおり上を、作業員が載る作業スペースや荷の積み下ろし等の際の荷の仮置きスペースとして利用することを前提に、トラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態で立て掛けても、滑ったりすることなく、安全に自己保持させることができ、梯子があおりの支持脚として水平に倒したあおりを支えることにもなり、あおりの荷重受け強度を増すこともできることに加えて、トラック荷台への取り付けの容易性および確実性、不使用の際、折畳んだ状態で突出部分も少なくて、ステップのトラック荷台への収納性にも優れる、例えばトラック荷台昇降用梯子などの昇降用ステップの固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の昇降用ステップの固定装置は、両側一対の支柱にステップ板を適宜間隔で取り付けた昇降用ステップの固定装置であって、
細長板状の曲げ部材をL字状に折り曲げて、被固定部を前方から垂直におよび下方から水平に押え込む下部押さえ部材と、被固定部を上方から水平に押え込む細長板状の上部押さえ部材とで固定部材を形成し、前記下部押さえ部材および上部押さえ部材は、前記支柱側部にそれぞれ回動自在に軸着し、前記上部押さえ部材は、下部押さえ部材の内方位置に設けることを要旨とするものである。
【0019】
請求項2記載の本発明の昇降用ステップの固定装置は、前記下部押さえ部材は、被固定部を前方から押え込む垂直部と、被固定部を下方から押え込む水平部とを備え、さらに前記水平部の先端から被固定部に差し込まれる差込片が垂直に延設されていること、請求項3記載の本発明の昇降用ステップの固定装置は、前記下部押さえ部材には、前記下部押さえ部材とその内方位置にある前記上部押さえ部材とが干渉せずに回動可能とするための開口が形成されていることを要旨とするものである。
【0020】
本発明によれば、例えばトラック荷台のあおりを水平状態に倒して、これに昇降用ステップを固定する場合、あおりの端部を下部押さえ部材と上部押さえ部材とで下方、前方および上方から挟むようにして押さえることで、昇降用ステップがあおりに固定される。
【0021】
固定装置を使用しないときは、下部押さえ部材と上部押さえ部材とをそれぞれ支柱側部で支柱側に回動すれば、支柱に側部にそって折畳まれる。この状態で、特に上部押さえ部材が支柱から外方に突出しないから、収納性がよい。
【0022】
また、前記上部押さえ部材は、下部押さえ部材の内方位置に設けたので、下部押さえ部材と上部押さえ部材とは上下位置で対応するから、例えばトラックのあおりなどにしっかりと固定される。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように本発明の昇降用ステップの固定装置は、例えばトラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態とすることで、あおり上を、作業員が載る作業スペースとして荷の積み下ろし等の際の荷の仮置きスペースとして利用することを前提に、トラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態で立て掛ける場合、簡単な作業で容易に固定でき、固定後は確実にステップを所定位置に保持できるものである。
【0024】
さらに、固定装置を使用しないときは、下部押さえ部材および上ぶ押さえ部材をそれぞれ支柱の側部で回動し、支柱側部にそって折畳めば、支柱から大きく突出することなく支柱側部に収めることができ、収納性もよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の昇降用ステップの固定装置の実施形態を示す要部である下部押さえ部材の斜視図、
図2は本発明の固定部材を有するステップの斜視図である。
【0026】
本発明の昇降用ステップの固定装置は、例えばトラック荷台のあおりの所要箇所に立て掛けて使用される梯子としてのトラック荷台昇降用ステップに設置されるものであって、昇降用ステップは、周知のように一対の支柱1,1間に複数の踏み桟3aを適宜間隔で取り付けてなる梯子3により構成される。
【0027】
本発明の固定装置は、梯子3に装着される下部の押さえ部材12と、上部押さえ部材15とで構成し、トラックの荷台に対して水平に倒したアオリの下部押さえ部材12としては、
図1、
図3に示すように、細長板状の曲げ部材をL字状に折り曲げて、被固定部であるあおりRを前方から押し込む垂直部12aと、下方から押し込む水平部12bとで形成する。
【0028】
この垂直部12aと水平部12bとは、支柱1の左右の内側と外側の両側に設け、あおりを垂直方向に180度回転させて垂下した状態で、梯子3を荷台に固定するための部材として、この水平部12bの先端から直角方向の下側に差込片13を一体に突設し、左右の差込片13の先端は水平杆14でさらに一体に連結する。
【0029】
さらに、細長コ字形に形成した取付部16を垂直部12aから突設し、この取付部16細長コ字形の開口内で支柱1を挟み込み、取付部16の下部から突設した回動片16aを支柱1の左右両側に回動自在に軸着する。これにより、垂直部12a、水平部12bおよび差込片13が回動自在に支柱1に取り付けられる。
【0030】
前記開口は、下部押さえ部材12と、その内方位置にある前記上部押さえ部材15とが干渉せずに回動可能とするための開口である。
【0031】
支柱1に対して下部押さえ部材12が突出する側とは反対の側に位置させて、取付部16を固定位置に係止するストッパー17を支柱1に回動自在に軸着する。このストッパー17は、フック状に形成され、先端のフック部が取付部16の下縁に係止する。
【0032】
被固定部を上方から水平に押え込む細長板状の上部押さえ部材15は、下部押さえ部材12とは別体のものとして、細長板状体の端部を前記回動片16aの下方位置で支柱1の側部に回動自在に軸着した。
【0033】
これにより、上部押さえ部材15は、支柱1の左右側部から突出する垂直部12a,12aの間に位置して下部押さえ部材12の上方で水平部12bとほぼ平行に出没自在となる。
【0034】
そして、下部押さえ部材12および上部押さえ部材15、差込片13、水平杆14は、あおりやトラック荷台などに直接接触する部材であることから、あおりなどが損傷することを防止するために、軟質塩ビなどの軟質部材で被覆する。
【0035】
図2に示す符号18は、あおりを垂直に立てたままの状態で梯子3をあおりに固定する場合に使用する上部の固定部材である。
【0036】
次に、例えば、トラック荷台のあおりに固定する梯子に本発明の固定装置を取り付けた場合を例にとって、使用法を説明する。不使用時には、
図3に示すように下部押さえ部材12は回動片16aの箇所で上方に回動し支柱1の側部にそって折畳まれている。
【0037】
同様にして上部押さえ部材15も端部を回動軸として下方に回動して支柱1と平行に折畳まれている。また、ストッパー17も自重で下方に回動して支柱1にそって垂下している。よって、下部押さえ部材12、上部押さえ部材15およびストッパー17も支柱1から大きく突出しないから、収納性がよい。
【0038】
この状態から水平に倒したあおりに梯子3を固定するため、固定装置をあおりに固定するには、ストッパー17を
図3において時計方向で上方に回動しておき、次に上部押さえ部材15を反時計方向に上方に回動する。これにより、ストッパー17および上部押さえ部材15が下部押さえ部材12の回動の妨げにならないようになる。
【0039】
そして、下部押さえ部材12を回動片16aを介して時計方向に下方に回動すれば、
図1に示す状態のように下部押さえ部材12と上部押さえ部材15とがあおり方向に水平に突出する。
【0040】
よって、ストッパー17の先端のフック部を取付部16の上縁に係止して下部押さえ部材12が収納方向に回動しないように固定する。
【0041】
下部押さえ部材12があおりの高さに合致するように梯子3の高さを調整し、水平部12bと上部押さえ部材15とで形成される開口にあおりの端部を合致させ、開口内であおりの先端が上部押さえ部材15にあたるまで挿入する。この場合、上部押さえ部材15は回動自在に形成してあるから、あおりの端部が上部押さえ部材15に当たるまで差し込まれた状態が、奥まで挿入された状態であり、この位置で固定されガタツクことはない。
【0042】
また、この状態ではあおりは上下から挟み込まれ、ストッパー17により梯子3が倒れる方向に下部押さえ部材12があおりから抜け出ることも阻止されているから、昇降時の安全を確保できる。
【0043】
あおりをさらに下方に回動し、先端を下方に向けて垂直に倒した状態で、梯子3の固定装置をトラックに固定するには、先端の差込片13をあおりとトラック荷台の床部との間に形成されている隙間に上方から差し込む。
【0044】
これにより下部押さえ部材12の水平部12bがあおりの上部に当接した状態で差込片13が狭い隙間に差し込まれ、昇降時にガタツクこともなく、梯子3が倒れる方向に差込片13が抜け出るおそれもなく、安全に使用できる。
【0045】
以上のように下部押さえ部材12にあおりの端部を差し込むだけの作業、また、差込片13をあおりとトラック床部の隙間に差し込むだけの作業で、固定装置を容易かつ確実にあおりなどに固定できる。
【0046】
あおりを垂直に立てたまま状態で梯子3をあおりに固定するには、上部の固定部材18を使用する。
【0047】
前記実施形態は、トラック荷台への昇降用ステップに使用するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、通常の梯子や昇降階段への固定装置としても使用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の昇降用ステップの固定装置の実施形態を示す要部の斜視図である。
【
図2】本発明の固定装置が実施されるトラック荷台昇降用ステップの斜視図である。
【
図3】本発明の固定装置の実施形態を示す収納状態の側面図である。
【
図4】従来のトラック用昇降梯子を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
A 昇降梯子 R あおり
G 地面 1 支柱
2 踏杆 3 梯子
3a 踏み桟 4 手摺
5 荷台部 6 掛止具
9 接地ベース 10 回動板
11 掛止具本体 12 下部押さえ部材
12a 垂直部 12b 水平部
13 差込片 14 水平杆
15 上部押さえ部材 16 取付部
16a 回動片
17 ストッパー 18 上部の固定部材
37 基端部 38 ガードバー