特許第5747076号(P5747076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747076コーティングされたアモルファス金属部品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747076
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】コーティングされたアモルファス金属部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/08 20060101AFI20150618BHJP
   B22D 21/00 20060101ALI20150618BHJP
   C23C 24/10 20060101ALN20150618BHJP
【FI】
   B22D19/08 Z
   B22D21/00 A
   !C23C24/10 Z
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-513631(P2013-513631)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-531734(P2013-531734A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2011059156
(87)【国際公開番号】WO2011154312
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2012年12月7日
(31)【優先権主張番号】10165287.3
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ディオンヌ,ジャン−フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ブルバン,ステュース
(72)【発明者】
【氏名】ドュバッハ,アルバン
(72)【発明者】
【氏名】ファレ,ヤン
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−021540(JP,A)
【文献】 特表2004−537417(JP,A)
【文献】 特表2009−510267(JP,A)
【文献】 特開2010−105049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00−19/16,21/00
B22C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料から形成された少なくとも1つの面を有し、前記少なくとも1つの面が少なくとも1つのコーティング(3)で被覆された第1の部品(5)を製造する方法であって、前記第1の材料は少なくとも1つの金属元素を含み、前記材料が結晶構造を局所的に失うように、その溶融温度よりも高い温度まで上昇し、続いて前記材料が少なくとも部分的にアモルファスになるように、そのガラス転移温度よりも低い温度まで冷却されるときに、少なくとも部分的にアモルファスになることができるように前記第1の材料が選択され、前記方法は、
a)前記第1の部品の雌型を形成するキャビティ(2)を備える第2の部品(1)を使用するステップと、
b)少なくとも第1の層を有する前記コーティング(3)を、前記第2の部品に蒸着するステップと、
c)前記第1の材料を使用するステップと、
d)前記第1の部品(5)の前記少なくとも1つの面に前記コーティングを固定するように、第2の部品の前記キャビティを前記第1の材料で満たすことにより、前記第1の材料を成形するステップであって、前記第1の材料が、遅くとも前記成形動作時に、少なくとも部分的にアモルファスになるようにする処理を受けているステップと、
e)前記コーティング(3)で被覆された前記第1の部品を得るように、前記第1の部品(5)を前記第2の部品から分離するステップとを含み、さらに
前記第1の材料が合金であることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップe)は前記第2の部品(1)を溶解することにあることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステップd)は、前記第1の材料を、事前に少なくとも部分的にアモルファスのプリフォーム(4)に変形した後にのみ成形することにあり、前記プリフォームは、その後、第1の材料のガラス転移温度と結晶化温度との間からなる温度に晒されて、圧力作業動作を受け、続いて前記第1の材料が少なくとも部分的にアモルファス特性を維持することができるようにする冷却動作を受けることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
成形ステップd)は、前記第1の材料をその溶融温度よりも高い温度に晒した後に、そのガラス転移温度よりも低い温度で冷却することにより、前記第1の材料を少なくとも部分的にアモルファスにする処理と同時に行われ、鋳造作業中に、前記材料を少なくとも部分的にアモルファスにすることができることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
粘着手段(7)は前記コーティング(3)に配置されて、前記コーティング(3)と前記第1の部品(5)との間の粘着性を向上させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
粘着手段(7)は、前記コーティング(3)を形成する層に配置されて、一方での前記層と、他方での前記第1の部品または前記コーティングの別の層との間の粘着性を向上させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
粘着手段(7)は、前記コーティング(3)に配置された少なくとも1つの浮彫り凹部または凸部(8)を備えることを特徴とする、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの浮彫り部(8)は、前記コーティング(3)を蒸着する前記方法の変形形態により達成されることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの浮彫り部は、前記コーティング(3)を機械加工することにより形成されることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記粘着手段(7)は、前記第1の部品に最も近いコーティングの層と前記第1の部品(5)との間に配置された中間層(9)を有することを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング(3)は、少なくとも1つの第2の層を備え、前記第1の部品に最も近いコーティングの層が、前記コーティング(3)と前記第1の部品(5)との間の粘着手段(7)として作用する中間層(9)であることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記中間層(9)は、前記第1の材料で形成した前記第1の部品(5)に最も近いコーティング(3)の層、または前記第1の部品(5)および前記中間層(9)が蒸着されるコーティングの層と化学的親和性を有して、原子相互拡散プロセスを加速することにより、前記第1の部品に対する前記コーティングの粘着性を向上させることを特徴とする、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
成形ステップd)中、または成形ステップd)後で分離ステップe)前に、前記中間層(9)は溶融して、前記第1の部品(5)に最も近いコーティングの層または前記中間層が蒸着されるコーティング(3)の層を前記第1の部品にろう付けすることができることを特徴とする、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第1の部品を前記第2の部品から分離するステップe)後に、前記コーティングの原子と前記第1の材料の原子との間の相互拡散を加速するように前記第1の部品(5)を結晶化するステップf)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第1の部品(5)は、前記第1の部品の別個の面に蒸着された、少なくとも1つの他のコーティングをさらに有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
ステップb)は、前記コーティングを蒸着するためにCVDまたはPVDまたは電着方法を使用することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1の材料は完全にアモルファスであることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第1の材料の組成は41.2重量%のZr、13.8重量%のTi、12.5重量%のCu、10重量%のNi、および22.5重量%のBeであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の材料から形成された少なくとも1つの面を有し、前記少なくとも1つの面が少なくとも1つのコーティングで被覆された第1の部品を製造する方法であって、前記第1の材料が少なくとも1つの金属元素を含み、前記材料が結晶構造を局所的に失うことができるようにする、その溶融温度よりも高い温度まで上昇し、続いて前記材料が少なくとも部的にアモルファスになるようにする、そのガラス転移温度よりも低い温度まで冷却されるときに、少なくとも部的にアモルファスになることができるように前記第1の材料が選択される方法に関する。
【0002】
本発明の技術分野は、精密機構の技術分野である。より詳細には、本発明は、コーティングされたアモルファス金属部品を製造する方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の装飾的または機能的適用のための材料として、種々の部品にコーティングを蒸着することが公知である。このような蒸着のための公知の方法は、一般に、例えば、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、または電着である。
【0004】
しかし、これらの方法は、ある複雑な形状、例えば凹面形状の場合に、厚さが不均一になるという欠点を有する。これは、例えば、時計製造業の分野で「クール・ド・パリ」として知られる面の場合に、表面平滑化を生じさせることになり得る。
【0005】
さらに、これらの方法は、基板層材料の対を選択する際にあまり柔軟性がないという欠点を有する。実際に、実用上、厚みの大きいあらゆるタイプの材料には、いかなるタイプの層をも蒸着することはできない。これは、熱応力、あるいは基板材料と層または他の要素の材料との適合性のない結晶構造等の種々の要因による。
【0006】
これらの欠点を部的に克服する、ダイヤモンド・コーティングを蒸着するための方法も公知である。この方法は、フランス特許第2815045号から公知であり、以下のステップを含む。
1)製造したい部品の雌型をシリコンから形成する。
2)化学蒸着(CVD)により、2μmのダイヤモンド層を雌型に蒸着する。
3)エポキシ樹脂を使用して雌型をオーバーモールドする。
4)エポキシ樹脂またはダイヤモンド層を溶解することなく、フッ化水素酸により雌型を選択的に溶解する。
【0007】
この方法の欠点は、プラスチックまたはポリマーまたは結晶金属のためにこの方法を使用することができない点である。実際に、複数の理由で、このコーティング蒸着方法のために結晶金属を使用することはできない。
【0008】
第1に、金属は、一般に、樹脂またはプラスチック材料がもつことのできる粘着性を有していない。実際に、エポキシは、重合されると、木、金属、ガラス等の材料との良好な牽引率を伴う粘着性を有するポリマーである。したがって、金属が低い粘着性を有するため、フランス特許第2815045号に開示された方法を結晶金属に適用することは、製造する部品に粘着する層の蒸着を考慮していない。
【0009】
第2に、金属の一部の特性により、先行技術で開示された方法におけるそれらの金属の使用が妨げられるおそれがある。したがって、一般に、金属を金型で成形できるようにするために、金属を液体状、すなわち、溶融した状態で配置しなければならない。ある数の金属は、1000℃よりも高い溶融温度を有する。したがって、このタイプの溶融温度により、雌型に蒸着された層が損傷を受けるおそれがあり、特に前記層が薄い場合には、雌型自体が損傷を受けるおそれがある。
【0010】
当業者が先行技術に開示された方法で金属を使用することを妨げる他の特性に加えて、凝固収縮、または層および金属の膨張係数の差が挙げられる。凝固収縮は、凝固中に金属自体が収縮することである。これにより、雌型の寸法と比較して固体部品の寸法が約5〜7%減少する。したがって、層と凝固金属との間に剥離が生じる危険がある。剥離の危険は、層および金属の膨張係数の差によっても生じる可能性があり、金属の膨張係数は、一般に層の膨張係数よりもはるかに大きい。
【0011】
したがって、層でコーティングされた金属部品を製造する場合、フランス特許第2815045号に開示された方法を使用しない方が好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、金属に対して良好な粘着性を呈し、かつコーティングされる金属および蒸着されるコーティングの選択に際して非常に柔軟性が高いコーティングで被覆された第1の部品を、以下「第1の材料」と呼ぶ所与の材料で製造することに備えることにより、先行技術の欠点を克服する第1の部品を製造するための方法に関する。前記第1の材料は合金、金属、または少なくとも1つの金属元素を含む材料とすることができる。
【0013】
したがって、本発明は、第1の材料から形成された少なくとも1つの面を有し、前記少なくとも1つの面が少なくとも1つのコーティングで被覆された第1の部品を製造する方法に関する。前記第1の材料は少なくとも1つの金属元素を含み、前記第1の材料が局所的な結晶構造を失うように、その溶融温度よりも高い温度まで上昇し、続いて前記第1の材料が少なくとも部的にアモルファスになるように、そのガラス転移温度よりも低い温度まで冷却されるときに、少なくとも部的にアモルファスになることができるように前記第1の材料が選択され、との方法は、
a)第1の部品の雌型を形成するキャビティを備える第2の部品を使用するステップと、
b)少なくとも第1の層を有する前記コーティングを、前記第2の部品に蒸着するステップと、
c)第1の材料を使用するステップと、
d)前記第1の部品の前記少なくとも1つの面に前記コーティングを固定するように、第2の部品の前記キャビティを前記第1の材料で満たすことにより、前記第1の材料を成形するステップであって、前記第1の材料が、遅くとも前記成形動作時に、少なくとも部的にアモルファスになるようにする処理を受けているステップと、
e)前記コーティングで被覆された前記第1の部品を得るように、第1の部品を第2の部品から分離するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の1つの利点は、特に第1の少なくとも部的にアモルファスの材料の場合に成形が非常に容易になり、複雑な形状の部品をより正確に形成することができる点である。実際に、アモルファス金属は、所与の温度範囲[Tg−Tx](ここでTxは結晶化温度、Tgはガラス転移温度)(例えばZr41.24Ti13.75Cu12.5Ni10Be22.5合金について、Tg=350℃、Tx=460℃)内のある時間、アモルファスのままでありながら、特定の軟化特性を有する。したがって、これらの金属を比較的低い応力かつ低い温度で成形することができるため、簡単なプロセスを使用することができる。このタイプの材料を使用することにより、微細な形状を非常に精密に再現することができる。これは、温度範囲[Tg−Tx]内の温度に応じて合金の粘性が大幅に減少し、これにより合金が雌型のすべての細部を取り入れるからである。例えば、白金をベースとした材料について、温度Tgでの1012Pa.sの粘性の代わりに、約300℃で1MPaの圧力について103Pa.sまでの粘性で成形が行われる。
【0015】
驚くべきことに、比較的低い温度範囲[Tg−Tx]におけるこの軟化能力により、結晶金属が有していない粘着性をアモルファス金属が有することができる。
【0016】
本発明の別の利点は、成形性や凝固収縮の欠如等の特性の一部を損なう前記金属結晶の危険なく、コーティングをアモルファス金属に蒸着できる点である。実際に、基板へのコーティングの蒸着は、この方法の場合、基板の結晶化温度よりも高い温度を必要とすることができる。基板がアモルファス金属であれば、結晶化の危険がある。本発明では、コーティングが最初に雌型に蒸着され、雌型の材料がコーティングと完全に適合するように選択されるため、このような危険はない。したがって、コーティングを第2の部品に蒸着するための方法の動作温度は、アモルファス金属に適用されないため、結晶化の危険がなくなる。
【0017】
このコーティング蒸着方法の有利な実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0018】
第1の有利な実施形態では、ステップe)は前記第2の部品を溶解することにある。
【0019】
第2の有利な実施形態では、ステップd)は、前記第1の材料を、事前に少なくとも部的にアモルファスのプリフォームに変形した後にのみ成形することにあり、前記プリフォームは、その後、第1の材料のガラス転移温度と結晶化温度との間からなる温度に晒されて、圧力形成動作を受け、続いて前記第1の材料が少なくとも部的にアモルファス特性を維持することができるようにする冷却動作を受ける。
【0020】
第3の有利な実施形態では、成形ステップd)は、前記第1の材料をその溶融温度よりも高い温度に晒した後に、そのガラス転移温度よりも低い温度で冷却することにより、前記第1の材料を少なくとも部的にアモルファスにする処理と同時に行われ、鋳造作業中に、前記材料を少なくとも部的にアモルファスにすることができる。
【0021】
第4の有利な実施形態では、粘着手段は前記コーティングに配置されて、前記コーティングと第1の部品との間の粘着性を向上させる。
【0022】
別の有利な実施形態では、粘着手段は、前記コーティングを形成する層に配置されて、一方での前記層と、他方での前記第1の部品または前記コーティングの別の層との間の粘着性を向上させる。
【0023】
別の有利な実施形態では、粘着手段は、コーティングに配置された少なくとも1つの凹部または凸部を備える。
【0024】
別の有利な実施形態では、前記少なくとも1つの浮彫り部は、前記コーティング蒸着方法の変形形態により達成される。
【0025】
別の有利な実施形態では、前記少なくとも1つの浮彫り部は、前記コーティングを機械加工することにより形成される。
【0026】
別の有利な実施形態では、粘着手段は、第1の部品に最も近いコーティングの層と第1の部品との間に配置された中間層を有する。
【0027】
別の有利な実施形態では、前記コーティングは、少なくとも1つの第2の層を備え、第1の部品に最も近いコーティングの層が、前記コーティングと第1の部品との間の粘着手段として作用する中間層である。
【0028】
別の有利な実施形態では、中間層は、第1の材料および第1の部品に最も近いコーティングの層、または第1の材料および前記中間層が蒸着されるコーティングの層と化学的親和性を有して、原子相互拡散プロセスを加速することにより、前記第1の部品に対する前記コーティングの粘着性を向上させる。
【0029】
別の有利な実施形態では、成形ステップd)中、または成形ステップd)後で分離ステップe)前に、中間層は溶融して、第1の部品に最も近いコーティングの層または前記中間層が蒸着されるコーティングの層を第1の部品にろう付けすることができる。
【0030】
別の有利な実施形態では、方法は、第1の部品を第2の部品から分離するステップe)後に、コーティングの原子と第1の材料の原子との間の相互拡散を加速するように第1の部品を結晶化するステップf)をさらに含む。
【0031】
別の有利な実施形態では、第1の部品は、第1の部品の別個の面に蒸着された、少なくとも1つの他のコーティングをさらに有する。
【0032】
別の有利な実施形態では、ステップb)は、前記コーティングを蒸着するためにCVDまたはPVDまたは電着方法を使用する。
【0033】
別の有利な実施形態では、前記第1の材料は完全にアモルファスである。
【0034】
別の有利な実施形態では、前記第1の金属材料は合金である。
【0035】
別の有利な実施形態では、前記第1の材料の組成は41.2重量%のZr、13.8重量%のTi、12.5重量%のCu、10重量%のNi、および22.5重量%のBeである。
【0036】
これらの実施形態の利点の1つは、良好な粘着性である。実際に、浮彫り部を有するようにコーティングを構成することにより、粘着性を向上させることができる。これらの浮彫り部は、アモルファス金属がコーティングされて粘着部として作用することができるようにする凹部または凸部の形をとることができ、これにより粘着性を向上させる。
【0037】
本発明による第1の部品を形成する方法の目的、利点、および特徴は、非限定的な例としてのみ提示され、添付図面に示される、本発明の少なくとも1つの実施形態についての以下の詳細な説明から理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図2】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図3】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図4】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図5】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図6】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図7】本発明による方法のステップを示す概略図である。
図8】複数の層を有するコーティングを示す概略図である。
図9】本発明の第1の変形形態によるコーティングを示す概略図である。
図10】本発明の第2の変形形態によるコーティングを示す概略図である。
図11】本発明による方法の第4の変形形態の第1の代替形態を示す概略図である。
図12】本発明による方法の第4の変形形態の第1の代替形態を示す概略図である。
図13】本発明による方法の第4の変形形態の第1の代替形態を示す概略図である。
図14】本発明による方法の第4の変形形態の第1の代替形態を示す概略図である。
図15】本発明による方法の第4の変形形態の第1の代替形態を示す概略図である。
図16】本発明による方法の第4の変形形態の第1の代替形態を示す概略図である。
図17】本発明による方法の第4の変形形態の第2の代替形態を示す概略図である。
図18】本発明による方法の第4の変形形態の第2の代替形態を示す概略図である。
図19】本発明による方法の第4の変形形態の第2の代替形態を示す概略図である。
図20】本発明による方法の第4の変形形態の第2の代替形態を示す概略図である。
図21】本発明による方法の第4の変形形態の第2の代替形態を示す概略図である。
図22】本発明による方法の第4の変形形態の第2の代替形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1乃至図7は、本発明による第1の部品を形成する方法の種々のステップを示す。この方法により、第1の部品5に、外部カバーとなるコーティング3を形成することができる。このコーティング3は表面的なものであり、すなわち、接触面の少なくとも1つで第1の部品5に直接施される。この第1の部品5は、第1の材料から形成される。第1の部品5は、腕時計ケース、歯車列、腕時計ベゼル、独立した部品、または腕時計等のシステムの要素等の装飾的または機能的部品であり得る。第1の部品5は、要素を製造する金型として作用することもできる。実際に、コーティングされた装飾的または機能的部品を有することは有利であるが、研磨材に対して良好な耐性をもたらすダイヤモンド・コーティング等の特定のコーティング3を有する金型があることも有利となり得る。
【0040】
図1に示す第1のステップは、製造およびコーティングする必要のある第1の部品5の雌型(以下、雌型1)を使用することにある。これを達成するために、従来の金型製造動作が行われる。第2の部品とも呼ばれるこの雌型1は、「第2の材料」と呼ばれる材料から形成される。雌型1は、形成する部品のキャビティであるキャビティ2を有する。
【0041】
図2に示す第2のステップは、第1の部品5に施すことが望ましいコーティング3を雌型1に蒸着することにある。これを達成するために、コーティング3を形成する材料を使用する。「第3の材料」と呼ばれるこの材料は、雌型1を形成する第2の材料の選択を決定する。実際に、コーティング3は、第1の部品5に移される前に、まず雌型1に蒸着される。したがって、雌型1の材料が、前記コーティング3の蒸着を最適化するように選択されるため、コーティングする部品とコーティング3を形成する材料との間の不適合をなくすという利点がある。例えば、ダイヤモンド層を蒸着するために、シリコン雌型が使用される。
【0042】
実際の蒸着は、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)または電着等の公知の蒸着方法あるいは他の方法を使用することにある。蒸着を最適化するように、使用する技術を蒸着する材料に応じて決めることができることが明らかであろう。
【0043】
図8に示すように、コーティングが異なる材料の複数の層を含むこともできる。これにより、コーティング3は、少なくとも2つの層、すなわち、外側要素に面した層である第1の蒸着層31と、蒸着される最終層であり、第1の部品5の第1の材料と相互作用する第2の層32とを含む。したがって、種々の層を重ねることにより、例えば、疲労耐性の向上または摩擦挙動の改善または耐衝撃性の向上等の装飾的および機械的利点をもたらすことができる。例えば、DLC層の上に金層を有して、金の高価な外観とDLC層の硬さ特性とを組み合わせることができる。
【0044】
一般に使用可能なコーティング3は、例えば、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素(DLC)、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、窒化ケイ素(Si34)、二酸化ケイ素(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ホウ素(BN)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ケイ素(Si)、ロジウム(Rh)その他である(厚さは、セラミック蒸着については0.1μm〜10μm、金属蒸着については数百ミクロンまでとしなければならない)。
【0045】
コーティング3の蒸着を雌型1の全面に行うのではなく、コーティングしなければならないキャビティ2の面のみに行うことができることが明らかであろう。キャビティ2の一部のみにコーティング3を蒸着することもできる。さらに、外側部品が複数のコーティングを含み、各コーティングが第1の部品5の面に対応する雌型1の面に配置されるようにしてもよい。したがって、雌型1の底部がダイヤモンド・コーティングを有し、側面が金コーティングを有することが想定できる。しかし、雌型1の全面をコーティングして、機械的または化学的手段により余分なコーティング3を除去することもできる。
【0046】
図3に示す第3のステップは、第1の材料、すなわち、第1の部品5を形成する材料を使用することにある。コーティングの良好な粘着性と金属およびコーティング3の非常に柔軟な選択性を有するコーティングされた金属部品を製造するために、第1の材料が少なくとも部的にアモルファス材料である。特に、材料は金属であり、これは材料が少なくとも1つの金属元素を含むことを意味する。第1の材料は、均質な金属合金あるいは少なくとも部的または完全にアモルファスの金属とすることができる。したがって、第1の材料は、温度がその溶融温度よりも高く上昇した後に、前記材料を少なくとも部的にアモルファスにすることのできるガラス転移温度よりも低い温度で冷却するときに、局所的な結晶構造を失うことができるように選択される。
【0047】
図4乃至図6に示す第4のステップは、ここではアモルファス金属である第1の材料を成形して第1の部品を形成することにある。これを達成するために、熱間加工法が使用される。
【0048】
最初に、アモルファス材料のプリフォーム4が形成される。このプリフォーム4は、最終部品と同様の外観および寸法をもつ部品からなる。一般に、例えば、円形膜を形成したい場合、プリフォーム4は円盤状となる。重要な点は、前記プリフォーム4がすでにアモルファス構造を有する点である。これを達成するために、第1の材料を形成する1または複数の材料が、温度をこれらの溶融温度よりも高く上昇させることにより、液体状で配置される。第1の材料が複数の元素を含む場合、これらの材料は均質に混合されて、前記第1の材料を形成する。次に、この混合物は、所望の形状の金型で鋳造されて、原子が構築される時間がないように、すべてができるだけ急速に冷却される。第1の材料は、その後、少なくとも部的にアモルファスになる。
【0049】
図4に示すように、プリフォーム4は、雌型1を覆うように雌型1上に配置される。次に、ホットプレスを材料固有の温度、好ましくはガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間からなる温度まで加熱する。
【0050】
ホットプレスが温度に達すると、図5に示すように、プリフォーム4に圧力を加えて雌型1を満たす。この押圧動作は、所定の時間行われる。
【0051】
この動作が可能なのは、アモルファス金属の利点が、各合金に特有の所与の温度範囲[Tg−Tx]内で、これらの温度Tg、Txが高くないため低温度でアモルファスのままでありながら、特有の軟化特性を有することであるからである。これは、合金の粘性が大幅に低下し、合金を容易に変形して雌型1のキャビティ2のすべての細部を取り入れることができるため、微細で精密な形状を非常に正確に再現することができることを意味する。さらに、アモルファス金属を成形するのに必要な低温度は、雌型1またはコーティング3を劣化させることがない。
【0052】
押圧時間が経過すると、第1の材料がTgより低い温度まで冷却されて第1の部品5を形成する。第1の材料の結晶化を防止するため、押圧および冷却を十分に急速に行わなければならない。実際に、ガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間の所与の温度の所与の第1の材料について、最大持続時間があり、これを超えると前記材料が結晶化する。この持続時間は温度が結晶化温度Txに近づくと減少し、温度がガラス転移温度Tgに近づくと増加する。したがって、TgおよびTx間の温度で過ごす時間が、各温度/合金対についてのある特定値を超える場合に、アモルファス材料が結晶化する。一般に、Zr41.2Ti13.8Cu12.5Ni10Be22.5合金および440℃の温度については、押圧時間が約120秒を超えるべきではない。したがって、熱間成形により、プリフォーム4の少なくとも部的にアモルファスの初期状態が維持される。
【0053】
この第4のステップに対する変形形態として、鋳造方法を使用して第1の部品5を形成することが想定される。この方法は、第3のステップで得られた第1の材料を、少なくとも部的にアモルファスにする処理を行うことなく使用し、これを液体状にして配置することにある。前記第1の材料は、溶融により液体状で配置される。
【0054】
第1の材料は、液体状になると、雌型1のキャビティ2で鋳造される。雌型1のキャビティ2が満たされるか、少なくとも部的に満たされると、第1の材料が冷却されてアモルファス状になる。これを達成するために、第1の材料を急速に冷却して、第1の材料を形成する原子が結晶状に配置されないようにする。
【0055】
アモルファスになることのできる金属または合金を鋳造する1つの利点は、溶融温度が低い点である。実際に、アモルファス形状を有することのできる金属または合金の溶融温度は、一般に、同じタイプの組成についての従来の合金の溶融温度より2〜3倍低い。例えば、ジルコニウムZrおよびチタンTiをベースとした合金の1500−1700℃と比較して、Zr41.2Ti13.8Cu12.5Ni10Be22.5合金の溶融温度は750℃である。これにより、鋳造中にコーティング3に損傷を与える危険を避ける。
【0056】
別の利点は、アモルファス金属の凝固収縮が非常に少なく、結晶金属の5〜7%の収縮と比較して1%未満である点である。この利点により、前記収縮により生じる脱落または剥離のおそれなく、鋳造の原理を使用することができる。
【0057】
図6に示すように、余分な機械材料または化学材料は除去される。余分な材料を、冷却前または後に除去することができる。
【0058】
図7に示す第5のステップは、雌型1から第1のコーティングされた部品6を分離することにある。これを達成するために、アモルファス金属をオーバーモールドして第1の部品5を形成する雌型1が、機械的に除去されるか、化学溶液に浸漬される。この化学溶液は、雌型1をエッチングするために特に選択される。実際に、このステップの目的は、コーティング3またはアモルファス金属から形成された第1の部品5を溶解することなく、雌型1を溶解することである。例えば、シリコン雌型1の場合、水酸化カリウムまたは炭酸カリウム(KOH)溶液を使用して、雌型1のシリコンを溶解する。最終的に、第1のコーティングされたアモルファス金属部品6が得られる。
【0059】
図9に示す本発明の第1の変形形態では、コーティング3と第1の部品5を形成するアモルファス金属との間の粘着性が向上する。これを達成するために、コーティング3は、粘着手段7を備える。この粘着手段7は、起伏、孔、または浮彫り部8の形をとる。アモルファス金属が雌型1にオーバーモールドされるときに、このような浮彫り部8が、アモルファス金属と接触する層に形成される。コーティング3が1つの層のみを有する場合、浮彫り部8はこの単一の層に形成される。逆に、図8に示すようにコーティング3が複数の層31、32を有する場合、好ましくは、浮彫り部8が、蒸着するコーティング3の最終層、すなわち、図8の層32に形成される。コーティング3が3つまたは4つの層を有する場合も同様である。
【0060】
これらの浮彫り部8は、凸部または凹部の形をとる。したがって、このような浮彫り部8により、アモルファス材料の成形特性を使用することができる。実際に、前述したように、アモルファス金属の粘性が大幅に低下することにより、金属が浮彫り部8を含む雌型1のすべての細部を取り入れるため、アモルファス材料は、微細で精密な形状を非常に正確に再現するという利点を有する。これより、前記浮彫り部はアモルファス金属を前記コーティング3に固着して、コーティング3の第1の部品5に対する剥離耐性をもたらし、粘着性を向上させる。
【0061】
このような浮彫り部8は、例えば、コーティング3の蒸着中に、蒸着パラメータを変化させることにより形成される。このような浮彫り部8を、例えば、フォトリソグラフィー、レーザ、プラズマ・エッチング、またはマイクロサンドブラストにより形成することもできる。浮彫り部8は、好ましくは、垂直保持手段として作用するように、雌型1に形成された前記コーティング3の側面33に形成されて、コーティング3がアモルファス金属の第1の部品5から剥離するのを防止する。
【0062】
第2の変形形態では、中間層9を使用することにより粘着性を向上させる。実際に、本変形形態では、第2のステップ中に蒸着される最終層は、前記コーティング3の第1の部品5への固着を支持する層、すなわち前記コーティング3のアモルファス金属への固着を支持する層である。この中間層9を、前記固着を達成するために、コーティング3を形成する層に加えて特別に蒸着する、すなわち、中間層9を第1の部品5に最も近いコーティング3の層と第1の部品5との間に位置決めする。しかし、既存の層、好ましくは最終蒸着層を使用して、前記コーティング3の固着を支持することができる。これは、図8において、コーティング3が2つの層31、32を有する場合に、中間層が層32であることを意味する。さらに、浮彫り部8を中間層9と関連付けることも当然可能である。これにより、2つの異なる原理を使用して、固着を達成することができる。
【0063】
最初に、中間層9が蒸着されるコーティング3の層と第1の部品5を形成する第1の材料との間に優れた化学的親和性を有するように、中間層9が選択される。この優れた化学的親和性は、中間層9の原子と中間層9が蒸着されるコーティング3の層の原子とアモルファス金属との間の、加速された相互拡散プロセスを特徴とする。このプロセスは、異なる材料を互いに接続する原子の相互拡散にある。拡散深さは、他の原子網の原子の膨張係数、指数的に変化する温度、および平方根により変化する時間に関連する。一般に、1〜100μmの拡散深さが可能な値である。しかし、層の厚さが1μm以下である場合、拡散深さは約10〜100nmとなる。
【0064】
第2に、ろう付けにより固着を達成することができる。この解決法は、中間層9をろう付けのための固定要素として使用することにある。これを達成するために、例えば231℃の溶融温度を有する、錫等の低溶融温度の材料を使用する。この低溶融温度により、前記中間層9は、アモルファス金属の熱間成形中に固体状から液体状に変化することができる。これにより、コーティング3と第1の部品5のアモルファス材料とのろう付けが行われ、前記コーティング3の良好な粘着性がもたらされる。当然、前記中間層9が溶融するときにコーティング3に損傷を与えないように、中間層9を形成する材料が選択される。この中間層9は、1〜10μmの厚さを有することができる。
【0065】
さらに、中間層9を介したろう付けを、前記第1の部品5の冷却後で、前記第1の部品5を雌型3から分離する前に達成することができる。前記第1の部品5の温度を上昇させて中間層9を溶融させ、コーティング3および第1の部品5をろう付けすることにより、ろう付けが達成される。中間層9を形成する材料は、第1の部品5を形成する材料およびコーティング3を形成する材料の溶融温度を超えないように選択される。
【0066】
本発明のこのような第1の2つの変形形態により、アモルファス金属の質を有する完成部品が提供されることが明らかである。範囲[Tg−Tx]におけるアモルファス金属の粘性の低下は、アモルファス金属の固有の質を必要としないが別の方法では得ることができない部品を製造することができ、部品の形成中にのみアモルファス金属特性が使用されることを意味する。
【0067】
図示しない第3の変形形態では、コーティング3の第1のアモルファス金属部品5に対する粘着性を結晶化により向上させることができる。第1の部品5を形成する金属のアモルファス特性が不要な場合に、この方法を使用することができる。これにより、前記金属のアモルファス特性は、成形のためのみに使用される。
【0068】
結晶化は、第5のステップの後、または第4のステップ中に実行される第6のステップからなる。このステップは、アモルファス金属のガラス転移温度よりも高い温度で、コーティングされた第1の部品6を熱処理することにより実行される。選択された温度および時間に応じて、合金が結晶化し、例えばナノ結晶構造等の種々の微細構造を呈することができる。当然、温度は、コーティング3に損傷を与えないように調節される。アモルファス金属を結晶化することにより、時間または温度による、粘着層の原子と金属原子との相互拡散プロセスが増加する。これにより、中間層9の原子と金属原子が互いに拡散して、前記コーティング3と第1の部品5との間の粘着性を向上させる。
【0069】
好ましくは、金属間相ではなく樹枝状結晶を形成することができるように、第1の部品5を形成する第1の材料と結晶化の条件とが定義される。この樹枝状結晶により、結晶化金属が脆化しすぎるのを防止する。
【0070】
第4の変形形態では、第1の部品5を形成する雌型1が2つの型を有する。実際に、製造される第1の部品5は複雑な形状を有する可能性があり、これは前記コーティング3を良好な状態で蒸着することができないことを意味する。
【0071】
図11乃至図16に示す第1の代替形態では、雌型1の2つの型11、12を使用してコーティング3全体を形成する。実際に、図1乃至図7に開示された方法によって、完全にコーティングされた第1の部品5を製造することはできない。これは、主に単一の型1を使用することが原因である。したがって、解決法は、図12に示すように、いずれもコーティング3で被覆された2つの型11、12を使用することである、これにより、第1の部品5は、前述し図13乃至図15に示す熱間成形プロセスにより製造される。図16に示すように、第1のコーティング部品6がこれにより得られる。この部品6が完全にコーティングされる。
【0072】
図17乃至図22に示す第2の代替形態では、型110、120の一方のみがコーティング3を有する。この代替形態の利点は、部的にコーティングされた複雑な部品を製造することができる点である。例えば、ダイヤモンド・コーティング3を有するねじ頭とコーティングされていない本体とをもつアモルファス金属ねじを製造することが望ましい場合を取り上げる。ねじ頭が本体よりも幅広であるため、この部品は複雑になる。したがって、このねじを単一の型で製造することは非常に複雑で、ねじ頭のみにコーティング3を蒸着することも困難である。1つの解決法が、図18に示される。これは、型120が、ねじ頭と同様のキャビティ2を有し、ダイヤモンド・コーティング3で被覆されるが、第2の型110は、ねじの本体の形状と同様の形状をもちコーティングされないキャビティ2を有することを意味する。これは、図18乃至図20に示す熱間成形中に、所望のねじ、すなわち部的にコーティングされたねじを形成することができることを意味する。
【0073】
添付の特許請求の範囲により確定された本発明の範囲から逸脱することなく、前述した本発明の種々の実施形態に、当業者に明白な種々の変更および/または改良および/または組合せを行うことができることが明らかであろう。
【0074】
したがって、第1の部品5を形成する第1の材料が、貴重なアモルファス材料であることが明らかである。
【0075】
雌型1を使用する第1のステップが、前記雌型1の準備を含み得ることも明らかである。実際に、コーティングされた第1の部品6に表面状態を直接形成することができるように、雌型1を装飾することができる。このような表面状態は、「コート・ド・ジュネーブ」、円形粒、ダイヤモンド渦、またはサテン装飾として知られる表面状態である。
【0076】
本発明による方法の変形形態の1つの実施は、異なるコーティングを、第1の部品5の異なる面に施すことができることを意味する。
【0077】
ある面にコーティングを重ねることもできる。例えば、ガラス層により保護された着色面を形成して、宝飾品類のあらゆるタイプの大胆な革新を行うこともできる。また、コーティング3の実施中に、ロゴ、イメージ、または他の装飾等の2つまたは3つの寸法の装飾を形成することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 雌型
2 キャビティ
3 コーティング
4 プリフォーム
5 第1の部品
6 第1のコーティング部品
7 粘着手段
8 浮彫り部
9 中間層
11、12、110、120 型
31 第1の蒸着層
32 第2の層
33 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22