(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の第1の支持部は、前記可動部のX2側にて連結されて一体化しており、前記一対の前記第2の支持部は、前記可動部のX1側にて連結されて一体化している請求項1記載の物理量センサ。
前記可動部のY1側では、前記第1の支持部が前記第2の支持部よりも外側に位置しており、前記可動部のY2側では、前記第2の支持部が前記第1の支持部よりも外側に位置している請求項2記載の物理量センサ。
前記X方向検知部は、前記可動部と一体に形成されたX検知可動電極と、前記可動部と分離して形成されたX検知固定電極とを有し、前記X検知可動電極と前記X検知固定電極とが前記シリコン基板を加工して形成されたものであり、前記X検知可動電極及び前記X検知固定電極には夫々、Y1−Y2方向にて間隔を空けて対向する複数の電極子がX1−X2方向に列を成して構成されている請求項4記載の物理量センサ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図に示す物理量センサに関しては、X方向が左右方向であり、X1方向が左方向でX2方向が右方向、Y方向が前後方向であり、Y1方向が後方でX2方向が前方である。また、Y方向とX方向の双方に直交する方向が上下方向(Z方向;高さ方向)である。
【0017】
図1,
図2に示す物理量センサ1,19は、長方形の平板状のシリコン基板8から形成されている。すなわち、シリコン基板8に、各部材の形状に対応する平面形状のレジスト層を形成し、レジスト層が存在していない部分で、シリコン基板をディープRIE(ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング)などのエッチング工程で切断することで、各部材を分離している。したがって、物理量センサ1を構成する各部材は、シリコン基板の表面と裏面の厚みの範囲内で構成されている。
【0018】
物理量センサ1は微小であり、例えば長方形の長辺1a,1bの長さ寸法は1mm以下であり、例えば短辺1c,1dの長さ寸法は0.8mm以下である。さらに、厚み寸法は0.1mm以下である。
【0019】
図1に示すように、物理量センサ1は、シリコン基板8の中央領域に形成された部分が可動部2である。
【0020】
図1に示すように可動部2の前後方向(Y1−Y2)の両側に第1のアンカ部6,6が配置されている。一対の第1のアンカ部6,6は前後方向で対向している(前後方向の線上に一致している)。また各第1のアンカ部6,6の左側(X1)には夫々、第2のアンカ部7,7が配置されている。一対の第2のアンカ部7,7は前後方向で対向している(前後方向の線上に一致している)。
【0021】
図1に示すように、一対の第1のアンカ部6,6には夫々、左右方向(X1−X2)に延出する第1の支持部3,4が第1のばね部11,11を介して回動自在に連結されている。ここで「左右方向に延出する」とは支持部3,4の基本的な延出方向を指し、第1の支持部3のように前後方向等に折り曲がる部分があってもよい。第1のアンカ部6,6には第1のばね部11の形成領域に切欠部が形成され、その切欠部内に前後方向(Y1−Y2)に直線状に延びる第1のばね部11が、第1のアンカ部6,6と第1の支持部3,4との間を連結している。第1のばね部11は、第1のアンカ部6,6及び第1の支持部3,4と一体で形成される。第1のばね部11は、第1の支持部3,4に比べて十分に狭い幅寸法で形成され、弾性変形可能な部分となっている。一方、第1の支持部3,4の剛性は高くなっている。
【0022】
図1に示すように第1の支持部3,4の第1のアンカ部6よりも左方(X1)に第1の脚部3a,4aが設けられている。第1の脚部3a,4aは可動部2の高さ方向への変位を抑制する機能を備える。
【0023】
図1に示すように、前方(Y2)に位置する第1の支持部3は、第1のアンカ部6と可動部2との間を通るように折れ曲がりながら左右方向に延びて形成されている。また後方(Y1)に位置する第1の支持部4は、第1のアンカ部6の外側を通って左右方向に直線状(帯状)に形成される。
【0024】
図1に示すように一対の第1の支持部3,4は、可動部2の前方及び後方の各側方にて延在し、さらに可動部2の右側方(X2)にて前後方向(Y1−Y2)に延びる第1の連結部5に連結されて一体化している。
【0025】
また
図1に示すように一対の支持部3,4は夫々、可動部2と第2のばね部9,9を介して連結されている。第2のばね部9,9は、可動部2の前方側面の右側、及び後方側面の右側に夫々設けられている。
【0026】
図7の部分拡大平面図で示すように、第2のばね部9は、可動部2に設けられた前後方向に細長い溝10内に配置され、可動部2と第1の支持部3との間を連結している。第2のばね部9は、溝10内で前後方向(Y1−Y2)に直線状に長く形成され、また折り返されて、可動部2と第1の支持部3との間を連結している。第2のばね部9は、第1の支持部3に比べて幅寸法が十分小さく、第2のばね部9は、弾性変形可能とされている。第2のばね部9は、可動部2及び第1の支持部3と一体に形成される。
【0027】
このように第1の支持部3,4は、可動部2と第1のアンカ部6とにばね部9,11を介して連結されている。ばね部9,11は捩れ変形可能とされており、これにより第1の支持部3,3を高さ方向に回動させることが可能となっている。
【0028】
また、
図1に示すように、一対の第2のアンカ部7,7には夫々、左右方向(X1−X2)に延びる第2の支持部13,14が第3のばね部15,15を介して回動自在に連結されている。第2のアンカ部7,7には第3のばね部15の形成領域に切欠部が形成され、その切欠部内に前後方向(Y1−Y2)に直線状に延びる第3のばね部15が、第2のアンカ部7と第2の支持部13,14との間を連結している。第3のばね部15は、第2のアンカ部7と第2の支持部13,14と一体で形成される。第3のばね部15は、第2の支持部13,14に比べて十分に狭い幅寸法で形成され、弾性変形可能な部分となっている。一方、第2の支持部13,14の剛性は高くなっている。
【0029】
図1に示すように第2の支持部13,14には第2のアンカ部7,7よりも右方(X2)に第2の脚部13a,14aが設けられている。第2の脚部13a,14aは可動部2の高さ方向への変位を抑制する機能を備える。
【0030】
図1に示すように、可動部2の前方(Y2)に位置する第2の支持部13は、第2のアンカ部7の外側を通って左右方向(X1−X2)に直線状(帯状)に延出している。
【0031】
また、可動部2の後方(Y1)に位置する第2の支持部14は、第2のアンカ部7と可動部2との間を通るように折れ曲がりながら左右方向に延びて形成されている。
【0032】
可動部2の前方(Y2)及び後方(Y1)の夫々に形成された第1の支持部3,4と第2の支持部13,14は、第1のアンカ部6及び第2のアンカ部7が介在する領域を除き、微小隙間を介して相対向した状態で左右方向に延びている。
【0033】
可動部2の前方(Y2)に配置された第1の支持部3及び第2の支持部13と、可動部2の後方(Y1)に配置された第1の支持部4及び第2の支持部14とは互いに、可動部2(シリコン基板8)の中心Oを中心軸として180度回転させた形態と同じとなっている。このため
図1に示すように、第1の支持部3は、第2の支持部14と可動部2(シリコン基板8)の中心Oを中心軸として180度回転させた形態と同じとなっており、また、第1の支持部4は、第2の支持部13と可動部2(シリコン基板8)の中心Oを中心軸として180度回転させた形態と同じとなっている。
【0034】
図1に示すように一対の第2の支持部13,14は、可動部2の前方及び後方の各側方にて左右方向に延在し、さらに可動部2の左側方(X1)にて前後方向(Y1−Y2)に延びる第2の連結部16に連結されて一体化している。
【0035】
また
図1に示すように一対の第2の支持部13,14は夫々、可動部2と第4のばね部17,17を介して連結されている。第4のばね部17の形態は
図7と同様である。第4のばね部17,17は、可動部2の前方側面の左側、及び後方側面の左側に夫々設けられている。
【0036】
このように第2の支持部13,14は、可動部2と第2のアンカ部7とにばね部15,17を介して連結されている。ばね部15,17は捩れ変形可能とされており、これにより第2の支持部13,14を高さ方向に回動させることが可能となっている。
【0037】
図1,
図6に示すように、第1のアンカ部6と第2のアンカ部7との間には左右方向(X1−X2)に間隔を空けて前後方向(Y1−Y2)に延びる隙間20が形成されている。そして、この隙間20内に、第1の支持部3と第2の支持部4との間を連結する連結ばね21が設けられている。
【0038】
図6に示すように連結ばね21は前後方向(Y1−Y2)に直線状に細長く形成される。連結ばね21は弾性変形可能とされている。
【0039】
図1に示すように、連結ばね21は、可動部2(シリコン基板8)の中心Oを通る前後方向(Y1−Y2)の線上に位置している。また、
図1に示すように連結ばね21と第1のばね部11との間の左右方向(X1−X2)の距離、及び連結ばね21と第3のばね部15との間の左右方向(X1−X2)の距離は同じとなっている。
【0040】
図1等で示した第1のアンカ部6及び第2のアンカ部7は、
図8に示す固定部(支持基板)30に固定支持される。この固定部30は例えばシリコン基板であり、各アンカ部6、7と固定部30との間には図示しない酸化絶縁層(SiO
2層)が介在している。固定部30、酸化絶縁層、及び
図1に示す可動部2、支持部3,4,13,14、アンカ部6,7及び各ばねを構成するシリコン基板8は、例えばSOI基板である。
【0041】
図1に示す可動部2、各支持部3,4,13,14及び各アンカ部6,7は夫々分離して形成されている。このうち、各アンカ部6,7と固定部30との間には上記した酸化絶縁層が介在し、各アンカ部6,7が固定部30に固定支持された状態になっているが、可動部2及び各支持部3,4,13,14と、固定部30との間には酸化絶縁層は存在せず、可動部2及び各支持部3,4,13,14と固定部30との間は空間となっている。
【0042】
図8に示すように、物理量センサ1には、可動部2と高さ方向にて離れた一方に固定部30と他方に対向部40が設けられる。対向部40の表面には固定電極41が設けられる。固定電極41と可動部2とは高さ方向(Z)にて相対向している。
【0043】
対向部40は例えばシリコン基板であり、固定電極41は、対向部40の表面40aに絶縁層を介して導電性金属材料をスパッタしまたはメッキすることで形成されている。
【0044】
また、可動部2の表面(下面)2aには、固定電極41に対面する可動電極(図示しない)が絶縁層を介してスパッタやメッキ工程で形成されている。あるいは、可動部2が、低抵抗シリコン基板などの導電性材料で形成されている場合には、可動部2それ自体を可動電極として使用することが可能である。
【0045】
図1に示す実施形態では、可動部2内に可動部2の左右方向(X1−X2)への変位を検知するためのX方向検知部50,51が形成されている。
【0046】
X方向検知部50,51について
図9の部分拡大平面図を用いて説明する。
図9は
図1に示すX方向検知部50の一部を拡大したものである。
図1、
図9(a)に示す符号52は可動電極で、符号53は固定電極である。
【0047】
図1,
図9(a)に示すように固定電極53は固定支持されたアンカ部54と、アンカ部54の両側から左右方向(X1−X2)に延出する延出部55,55と、各延出部55,55の前後方向の両側から前後方向(Y1−Y2)に延出する複数本の支持部56(
図9(a)に符号を付した)と、各支持部56から左方向(X1)に短く突出し、かつ前後方向(Y1−Y2)に所定の間隔を空けて配置された複数本の櫛歯状の固定電極子57と、を有して構成される。アンカ部54はアンカ部6,7と同様、固定部30に支持固定されており、各延出部55,55から延出する支持部55は、後述する高さ方向(Z)への加速度が作用しても変位しない。なお
図9(a)には、2本の固定電極子57にのみ符号を付した。
【0048】
また
図1に示すように、可動部2と一体となって可動電極52が形成されている。可動電極52には、
図9(a)に示すように、前後方向(Y1−Y2)に延出する複数の支持部60が形成されている。各支持部60は、可動部2の内側側面から一体となって且つ固定電極53の各支持部56と左右方向(X1−X2)に間隔を空けて配置されている。また
図9(a)に示すように、各支持部60の右側面から右方向(X2)に短く突出した複数本の可動電極子61が固定電極子57と前後方向(Y1−Y2)に交互に配置されている。なお
図9(a)には、2本の可動電極子61にのみ符号を付した。
【0049】
図9(b)は可動部2が左方向(X1)に移動した状態を示す。これにより、可動電極子61と固定電極子57との間の対向面積が
図9(a)の基準状態よりも減少し、静電容量が小さくなる。
【0050】
なお
図1に示す実施形態では、
図1の左側に配置されたX方向検知部50と右側に配置されたX方向検知部51とでは、可動電極子61と固定電極子57との位置関係が逆になっており、X方向検知部50にて静電容量が増加すれば、X方向検知部51にて静電容量が減少し、また、X方向検知部51にて静電容量が増加すれば、X方向検知部52にて静電容量が減少する。これにより、X方向検知部50により得られた静電容量変化と、X方向検知部51により得られた静電容量変化により差動出力を得ることができる。
【0051】
図2は第2の実施形態における物理量センサ19の平面図である。
図2では、
図1と異なって可動部2内にX方向検知部50,51が形成されておらず平面となっている。すなわち
図10の物理量センサは可動部2の高さ方向への変位のみを検出するものである。そのほか、
図1と同じ符号が付された箇所は
図1と同じ部分を指す。なお
図2では各ばね部を簡易的に図示した。またばね部9,17の形成位置は
図1と異なった位置としたが、
図1において
図2のばね部9,17の位置としてもよいし、
図2において
図1のばね部9,17の位置としてもよい。
【0052】
図3は
図2に示す物理量センサの静止状態における斜視図であり、
図4、
図5は物理量センサに高さ方向への加速度が作用した際の動作状態における斜視図である。なお
図1の物理量センサにおいても
図3ないし
図5と同様の静止状態、動作状態となる。
【0053】
図3に示すように、物理量センサが静止状態のときに、表面全体と裏面全体が夫々、同一面上に位置しており、表面及び裏面から突出する部分がない
図3に示す静止状態において可動部2と固定部30との間の間隔は、例えば、1〜5μm程度である。また、可動部2と対向部40との間の間隔は、可動部2と固定部30との間の間隔と同程度かあるいはそれよりも狭く設定される。
【0054】
本実施形態の物理量センサは、外部から力(加速度等)が作用していないときに、ばね部の弾性復元力により、
図3に示すように、全ての部分の表面が同一平面となった状態を維持している。
【0055】
物理量センサに外部から例えば加速度が高さ方向に与えられると、加速度は、可動部2及び各アンカ部6,7に作用する。このとき、可動部2は慣性力によって絶対空間内で留まろうとし、その結果、各アンカ部6,7に対して可動部2が加速度の作用方向と逆の方向へ相対的に移動する。
【0056】
図4は、アンカ部6,7、固定部30及び対向部40に対して下向きの加速度が作用したときの動作を示している。このとき、可動部2は慣性力により
図3の静止状態の位置から上方向へ向けて変位すべく、第1支持部3,4及び第2支持部13,14が高さ方向に回動する。この回動動作時、各ばね部が捩れ変形する。
【0057】
図4に示すように、各支持部3,4,13,14の脚部3a,4a,13a,14aは下方に変位し、各脚部3a,4a,13a,14aの先端は可動部2よりも下方に突出する。
【0058】
脚部3a,4a,13a,14aの突出量が大きくなると、
図8に示すように、可動部2が固定部30の表面30aに当接するよりも先に、脚部3a,4a,13a,14aの先端部が対向部40の表面(ストッパ面)40aに当接し、可動部2が
図8の状態よりもさらに上方に変位できなくなり、可動部2の変位が抑制される。このように各脚部3a,4a,13a,14aと対向部40の表面(ストッパ面)40aとで可動部2の変位を抑制するストッパ機構が構成されている。
【0059】
図5は、アンカ部6,7、固定部30及び対向部40に対して上向きの加速度が作用したときの動作を示している。このとき、可動部2は慣性力により
図3の静止状態の位置から下方向へ向けて変位すべく、第1支持部3,4及び第2支持部13,14が高さ方向に回動する。この回動動作時、各ばね部が捩れ変形する。
【0060】
図5に示すように、各支持部3,4,13,14の脚部3a,4a,13a,14aは上方に変位し、各脚部3a,4a,13a,14aの先端は、可動部2よりも上方に突出する。
【0061】
本実施形態では、可動部2と、対向部40に設けられた固定電極41との間の静電容量変化により、加速度等の物理量を検出することが可能となっている。
【0062】
本実施形態の可動部2の支持機構により可動部2を高さ方向(Z)に効果的に平行移動させることが出来る。
【0063】
特に本実施形態によれば、高さ方向(Z)への検出モードと、検出モード以外のモードとの固有振動数の差を効果的に大きくできる。ここで、「検出モード以外のモード」には、前後方向(Y1−Y2)への振動、前後方向や左右方向、さらには前後方向と左右方向の双方に対して斜めに傾く対角線方向を軸とした回転モード、面内回転モード等が含まれる。このように高さ方向(Z)への検出モードと、検出モード以外のモードとの固有振動数の差を効果的に大きくできるから、検出モード時に、検出モード以外のモードが加わっても、可動部2を高さ方向に安定して平行移動させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、大きな加速度が作用した場合等に、各支持部3,4,13,14の各脚部3a,4a,13a,14aを対向部40の表面40aに当接させることができ、これにより可動部2の変位を抑制できる。そして本実施形態では、脚部3a,4a、13a、14aの先端(対向部40の表面40aとの当接部)が可動部2の四隅付近に位置するため、
図8の当接状態において、可動部2の姿勢を安定にできる。
【0065】
また本実施形態では、シリコン基板8の中央領域に可動部2を形成し、可動部2の側方に支持部3,4,13,14を設けた構成としたことで、可動部2の面積を広くできる。よって固定電極41との間で生じる静電容量を大きくできる。また
図8のように、各脚部3a,4a、13a、14aの先端が対向部40の表面40aに当接するため、脚部により、簡単なストッパ兼スティッキング防止構造を実現できる。
【0066】
なお
図8では、対向部40の表面40aが平坦面となっているが、例えば、各脚部3a,4a、13a、14aの先端が当接する位置の表面40aを突出させて可動部2の高さ方向(Z)への変位量を規制したり、あるいは表面40aからの突起の面積を小さくするなどして、各脚部と対向部40との接触面積がより小さくなるように構成することもできる。
以上により高感度で検出安定性に優れた物理量センサにできる。
【0067】
また本実施形態では
図1,
図2,
図6に示すように、可動部2の前方(Y2)及び後方(Y1)に形成された夫々の第1の支持部3,4と第2の支持部13,14同士が連結ばね21によって連結されている。連結ばね21を設けることで、連結ばね21により連結された第1の支持部3,4と、第2の支持部13,14との間で回動状態が同等となるように規制でき、第1の支持部3,4に設けられた第1の脚部3a,4aと、第2の支持部13,14に設けられた第2の脚部13a,14aとを可動部2に対し上方あるいは下方の同方向に突出量のばらつきを小さく安定して突出させることができる。
【0068】
また本実施形態では、
図1,
図2等に示すように一対の第1の支持部3,4が可動部2の右方側(X2)にて連結されて一体化しており、また、一対の第2の支持部13,14が可動部2の左方側(X1)にて連結されて一体化している。これにより、一対の第1の支持部3,4及び一対の第2の支持部13,14を夫々、一緒に回動させることができ、これにより可動部2を高さ方向に、より安定して平行移動させることができ、検出安定性をより効果的に向上させることができる。
【0069】
また本実施形態では、可動部2の後方(Y1)では、第1の支持部4が第2の支持部14よりも外側に位置し、可動部2の前方(Y2)では、第2の支持部13が第1の支持部3よりも外側に位置している。上記したように、可動部2の後方(Y1)に位置する第1の支持部4及び第2の支持部14と、可動部2の前方(Y2)に位置する第1の支持部3及び第2の支持部13とでは互いに可動部2(シリコン基板8)の中心Oを中心軸として180度回転させた形状と一致している。これにより、シリコン基板8内に可動部2と、可動部2の両側に、アンカ部6,7、一対の第1の支持部3,4及び一対の第2の支持部13,14とを効率良く配置でき、物理量センサの小型化を実現できる。
【0070】
また
図1に示す実施形態では、可動部2内にX方向検知部50,51を設けたことで、可動部2の高さ方向(Z)への変位の検知と、左右方向(X1−X2)への変位の検知の双方を小型の物理量センサにより得ることができる。なお本実施形態では、可動部2と各支持部3,4,13,14との間を連結するばね部9,17が前後方向(Y1−Y2)に細長く形成されており、可動部2が前後方向に変位しにくくなっている。したがって
図1に示す実施形態の物理量センサ1によれば、可動部2の高さ方向の変位と左右方向(X1−X2)の変位を安定して検知することが可能になっている。
【0071】
また、可動部2内にX方向検知部50,51を設けたことで、可動部2の高さ方向への振動性能を損なうことがない。後述する実験では、検出モード以外のモードの固有振動数と高さ方向への検出モードの固有振動数との差を広げることができ、可動部2を安定して高さ方向や左右方向に変位させることができ、優れた検出安定性を得ることができる。
【0072】
また
図10は可動電極子61及びZ方向検知部としての固定電極41との部分縦断面図である。
図10には一つの可動電極子61のみを図示した。
図10に示すように可動電極子61の下面(端部)61aから所定のギャップGを介して対向する固定電極41に向けて電界Eが可動電極子61の幅よりも広がって発生していることがわかる。このため
図1や
図9に示すように可動部2内にX方向検知部50,51を設けることで微小隙間が可動部2内に形成されるが、前記微小隙間内では、電界Eが固定電極41に向けて広がって生じているために、可動部2内にX方向検知部が形成されていない形態と比べて、静電容量の低下を低く抑えることができ、あるいは、可動部2内にX方向検知部が形成されていない形態とほぼ同等の静電容量を得ることができる。
【0073】
またX方向検知部50,51を平行平板式でなく、面積変化式による静電容量変化を捉えることで、左右方向(X1−X2)の変位に対する静電容量の変化の出力を良好な線形性を有した状態で得られるため、高い検出精度を得ることができ、さらに、左右方向(X1−X2)への有効検出範囲(ダイナミックレンジ)を広くできる。
【0074】
特に、X方向検知部50,51では固定電極53と可動電極52において複数本の支持部56,60を設け、各支持部56,60から複数本の固定電極子57及び複数本の可動電極子61を設けることで、可動部2が左右方向(X1−X2)に移動した際の面積変化領域を増やすことができ、左右方向への検出感度を向上させることができる。
【0075】
本実施形態では、可動部2と、対向部40に設けられた固定電極41との間の静電容量変化により、加速度等の物理量を検出することが可能であるが、検知部の構成は静電容量式に限定するものではない。ただし静電容量式としたことで簡単で且つ高精度な検知部の構成を実現できる。
【0076】
本実施形態は加速度センサのみならず角速度センサ、衝撃センサ等、物理量センサ全般に適用可能である。
【実施例】
【0077】
(実験1:実施例と比較例における複数モードでの固有振動数の実験)
図11ないし
図13は比較例の物理量センサの構成である。
図11は平面図、
図12、
図13は斜視図である。
【0078】
比較例に示す物理量センサ100は、実施例(
図1)の物理量センサ1と異なって可動部101の内側にアンカ部102〜104及び支持部105〜108が設けられている。可動部101、アンカ部102〜104及び支持部105〜108は夫々分離して形成されている。また符号109〜120はばね部である。
【0079】
図11に示すように、支持部105,107には夫々、脚部105a,107aが設けられている。
【0080】
図12は静止状態であり、高さ方向に加速度が作用すると可動部101が高さ方向に変位し、
図13に示すように脚部105a,107aが可動部101とは逆方向に変位して脚部105a,107aの先端が突出する。
【0081】
図1に示す実施例1と、上記した比較例を用いて、異なる複数モードにおける固有振動数(KHz)を求めた。
【0082】
実施例1及び比較例におけるモード1は高さ方向(Z)への検出モードである。実施例1におけるモード2は左右方向(X1−X2)への検出モードである。また実施例1におけるモード3〜モード6は、検出モード以外のモードであり、前後方向(Y1−Y2)への振動モード、前後方向及び左右方向を軸とした回転モード、面内回転モードである。実施例1のモード3〜モード6については、固有振動数が低いモード順に並べた。
【0083】
また、比較例におけるモード2〜モード6は、検出モード以外のモードであり、左右方向(X1−X2)及び前後方向(Y1−Y2)への振動モード、前後方向及び左右方向を軸とした回転モード、面内回転モードである。比較例のモード2〜モード6については、固有振動数が低いモード順に並べた。
【0084】
実施例1は、高さ方向(Z)及び左右方向(X)への可動部の変位を検出する構成である。
図14に示すように、比較例においても、検出モード以外であるモード2〜モード6での固有振動数は、検出モードであるモード1よりも高くなり、固有振動数差を得ることができるとわかった。よって比較例の構成においても、可動部の高さ方向への変位を適切に検出することができる。ただし実施例1のほうが比較例よりも検出モード以外であるモード3〜モード6での固有振動数は高くなり、検出モードとの固有振動数差を広げることができるとわかった。
【0085】
また、実施例1では、左右方向(X)への検出モードであるモード2と、検出モード以外であるモード3〜モード6との固有振動数差を、モード1の場合と同様に大きくすることができた。
【0086】
このように実施例1では、検出モードと検出モード以外のモードとの固有振動数差を大きくでき、優れた検出安定性を得ることができるとわかった。
【0087】
続いて
図10に示す実施例2(高さ方向検知のみ)と、上記した比較例を用いて、異なる複数モードにおける固有振動数(KHz)を求めた。
【0088】
実施例2及び比較例におけるモード1は高さ方向(Z)への検出モードである。また実施例2及び比較例におけるモード2〜モード6は、検出モード以外のモードであり、左右方向(X1−X2)及び前後方向(Y1−Y2)への振動モード、前後方向及び左右方向を軸とした回転モード、面内回転モードである。実施例2及び比較例のモード2〜モード6については、固有振動数が低いモード順に並べた。
【0089】
図15に示す比較例の結果は
図14と同じである。
図15に示すように、実施例2と比較例とを対比すると、検出モード以外であるモード2〜モード6での固有振動数はいずれも実施例1のほうが高いことがわかった。この結果、これら検出モード以外のモード2〜6と、高さ方向の検出モードであるモード1との固有振動数差は、実施例2のほうが比較例よりも大きくなることがわかった。
【0090】
このように実施例2では、検出モードと検出モード以外のモードとの固有振動数差を大きくでき、優れた検出安定性を得ることができるとわかった。
【0091】
(実験2:実施例1におけるギャップと静電容量の実験)
実験では
図1に示す実施例1(高さ方向及び左右方向の検知部を備える)の物理量センサを用い、
図10に示すギャップGを変化させてZ方向検知部における静電容量を求めた。また
図10に示す実施例2(高さ方向の検知部のみ備える)の物理量センサを用い、
図10に示すギャップGを変化させてZ方向検知部における静電容量を求めた。
【0092】
その実験結果が
図16に示されている。実施例1と実施例2との静電容量差は非常に小さく、実施例1のように、可動部内にX方向検知部を設けても、高さ方向(Z)への検知を高感度で行うことが可能であるとわかった。
【0093】
電界ベクトルを調べてみると、
図10のように電界が櫛歯状電極の下面から固定電極の方向に向って広がっていることがわかった。この結果、可動部2内にX方向検知部を設けることで微小隙間が形成されても、前記微小隙間内は櫛歯状電極の下面から広がった電界が作用して電荷密度を上げることができ、
図16のようにX方向検知部を備えない実施例2と大差ない静電容量が得られたものと考えられる。
【0094】
ただしX方向検知部の構成としては、並行平板型などとすると可動部2内に形成される空間が大きくなったり、また前記空間内を電界の広がりでカバーしきれないことがある。したがって、
図1,
図9に示したように、X方向検知部の可動電極側と固定電極側とで多数の櫛歯状電極が微小隙間を空けて対向し、可動部2が左右方向に可動したときに櫛歯状電極間の対向面積の変化により静電容量が変化する構成とすることが、高感度にでき好適である。