特許第5747093号(P5747093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747093調節駆動装置及び調節駆動装置を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747093
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】調節駆動装置及び調節駆動装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/181 20060101AFI20150618BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20150618BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20150618BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   B62D1/181
   F16H25/20 F
   B60N2/02
   B60N2/44
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-555817(P2013-555817)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公表番号】特表2014-509284(P2014-509284A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】EP2012052606
(87)【国際公開番号】WO2012116892
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2013年10月25日
(31)【優先権主張番号】102011000972.8
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011001971.5
(32)【優先日】2011年4月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508018598
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ メタルズ アンド メカニズムス ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】アーント、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ストルゾッカ、 マンフレッド
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、 トニー
(72)【発明者】
【氏名】ポクジック、 タマス
【審査官】 重田 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0134131(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/031613(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第4116368(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/181
B60N 2/02
B60N 2/44
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のステアリングコラム調節器又は車両シート用の調節駆動装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に取り付けられた出力シャフトと、
前記出力シャフトの軸方向の遊びを防止するくさび形の補償要素であって、その動作位置において、前記ハウジングと前記出力シャフトの軸方向停止部とに直接支持される補償要素と
備え
前記補償要素(5)は、その動作位置において、前記出力シャフト(4)の軸方向の遊びのない配置を固定するために超音波溶接によって前記ハウジング(2)に接続される調節駆動装置。
【請求項2】
前記補償要素(5)はU字型台座開口部(15)を有し、前記U字型台座開口部(15)は、軸方向停止部(11)を形成するシャフト肩部の領域で前記出力シャフト(4)を取り囲む請求項1に記載の調節駆動装置。
【請求項3】
前記補償要素(5)は、前記動作位置において、前記ハウジングの接触面(17)に当接する、前記軸方向停止部(11)から離れる方向を向く支持面(13)を有する請求項1又は2に記載の調節駆動装置。
【請求項4】
前記補償要素(5)のくさび形状に対応し、前記接触面(17)は、前記出力シャフト(4)に垂直に延びる平面に対して反対に傾斜している請求項1から3のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項5】
前記接触面(17)は前記ハウジング(2)と一体に形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項6】
前記補償要素(5)は、ハウジング開口部(7)から延びる作動部分有する請求項1から5のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項7】
前記ハウジング(2)はハウジング本体(10)とハウジングカバー(3)とによって形成され前記補償要素(5)は超音波溶接によって前記ハウジングカバー(3)に接続される請求項1から6のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項8】
前記補償要素(5)は前記出力シャフト(4)に対して誤った配置ができないように設計されている請求項1から7のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項9】
前記補償要素(5)はそれを整列させるための輪郭(14)を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項10】
前記ハウジング(2及び前記補償要素(5)内の超音波溶接の領域に埋め込まれた安全ボルト(19)を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の調節装置。
【請求項11】
前記安全ボルト(19)は、前記補償要素(5)に向かって細くなる端部、及び/又はその長手軸方向において変化する断面、及び/又は円形から逸脱した断面を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項12】
前記安全ボルト(19)は、超音波振動発生器に連結され且つ前記ハウジング(2)及び/又は前記補償要素(5)に超音波振動を伝達するように設計される請求項1から11のいずれか1項に記載の調節駆動装置。
【請求項13】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に取り付けられた出力シャフトと、
前記出力シャフト軸方向の遊びを防止するくさび形の補償要素であって、その動作位置において、前記ハウジングと前記出力シャフトの軸方向停止部とに直接支持される補償要素と
を備える調節駆動装置を製造する方法であって、
前記出力シャフト(4)の軸方向の遊びのない配置を固定する前記補償要素(5)の動作位置を固定するために、以下の順番で以下ステップ、
安全ボルト(19)が超音波振動発生器に解放可能に結合されるステップと、
前記安全ボルト(19)が前記ハウジング(2)と前記補償要素(5)とに係合されるステップと、
前記安全ボルト(19)を取り囲むプラスチックを可塑化するために超音波振動が前記安全ボルト(19)を介して前記補償要素(5)及び前記ハウジング(2)へ導入されるステップと、
前記安全ボルト(19)が前記超音波振動発生器から切り離されるステップと
が実行される方法。
【請求項14】
前記安全ボルト(19)は、前記ハウジング(2と前記補償要素(5)との係合を行うために、前記ハウジング(2)及び/又は前記補償要素(5)に予め導入されたに挿入される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記超音波振動は、所定の時間にわたって及び/又は前記安全ボルト(19)の周囲で可塑化するプラスチックにおける所定の伝播に至るまで導入される請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のステアリングコラム調節器又は車両シート用の調節駆動装置であって、
ハウジングと、
ハウジングに回転可能に取り付けられた出力シャフトと、
出力シャフトの軸方向の遊びを防止するくさび形の補償要素であって、その動作位置において、ハウジングと出力シャフトの軸方向停止部とに支持される補償要素と
を備える調節駆動装置、及び調節駆動装置を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
初めに引用した種類の調節駆動装置は、様々な車両部品の電動式調節のために自動車において様々な実施形態で使用され、それらは、例えば、車両制御装置、座席位置などがそれぞれの乗客に適合されることを可能にする。初めに引用した種類の調節駆動装置は、したがって、それぞれの運転者にステアリングコラムの位置を適合させるだけでなく、様々なシート部品を調節するために、特に自動車シートの領域内で使用される。
【0003】
簡単にできて信頼性の高い調節手段を提供し且つ出力シャフトの方向が反転するときに不快なカチッという音を防止するために、出力シャフトの軸方向の遊びを、それが調節される車両部品と実質的に遊びなしで係合するように補償することが必要である。
【0004】
汎用の調節駆動装置は、自動車のワイパーシステムに関する特許文献1から知られており、この駆動装置では、出力シャフトの軸方向の遊びは、電機子軸の軸方向停止部を径方向に圧迫し且つそれによって出力シャフトを軸方向に移動させるテーパー状スライドによって補償される。テーパー状スライドに作用する必要な変位力は、テーパー状スライドを出力シャフトに向かって押し付けるバネ要素によって加えられる。バネ要素への連続的な高荷重によって、弾性特性が全耐用期間中に衰え、それにより軸方向の遊びがもはや確実に補償されず、出力シャフトが、特に荷重下で、前後に動く可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19854535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、出力シャフトの軸方向の遊びが確実に且つ持続的に補償される、初めに引用した種類の調節駆動装置及び調節駆動装置を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する調節駆動装置によって、及び請求項13の特徴を有する方法によって達成される。本発明のさらなる有利な発展形態は従属請求項で特定されている。
【0008】
出力シャフトの軸方向の遊びのない配置を確実にする補償要素がその動作位置において超音波溶接によってハウジングに接続されることが、本発明に係る調節駆動装置の特徴である。本発明の文脈において「動作位置」として理解されるべきものは、軸方向の遊びのない配置で出力シャフトをハウジング内で固定する補償要素の位置であり、この位置は、調節駆動装置によって調節される車両部品が遊びを有して調節されることを確実に防止し、又は調節駆動装置の作動中の不快なノイズを確実に防止する。
【0009】
本発明によれば、補償要素は、出力シャフトに対して、出力シャフトがもはや軸方向の遊びを有さないように補償要素がハウジングと出力シャフトの軸方向停止部の両方に当接する位置に移動される。補償要素のこの動作位置を固定するために、ハウジングに対してこの位置にある補償要素は、超音波溶接によってハウジングに接合される。ハウジング及び補償要素は、少なくとも超音波溶接接合の領域がプラスチックで作られ、ハウジング及び補償要素の両方を、完全にプラスチックから作ることができる。
【0010】
超音波溶接接合は、その信頼性のある、ハウジングの補償要素への非分離接合によって優れており、補償要素のハウジングへの、したがって出力シャフトに対する恒久的な固定が、それによって達成される。また、超音波溶接は、容易に且つ安価に、速い溶接速度で経済的に行うことができる。補償要素とハウジングの熱可塑性プラスチックは、接触領域で溶融され、動作位置における確実な補償要素の配置をもたらすために、硬化プロセス中に結合される。
【0011】
全体として、本発明に係る調節駆動装置は、全耐用期間にわたって軸方向の遊びなしで配置される軸方向の出力シャフトを有し、特に、補償要素を超音波溶接によってハウジングに接続し、それにより、動作位置を恒久的に固定し、遊びのない配置も調節駆動装置の全耐用期間にわたって保持されることを確実に保証する。
【0012】
軸方向の遊びを補償するために、補償要素は、その動作位置において、ハウジングと出力シャフトの軸方向停止部の両方に当接し、したがって、それにより達成される出力シャフトの遊びなしの配置を固定する。補償要素は、出力シャフトの軸方向停止部と任意の位置で相互作用することができ、軸方向停止部は、例えばシャフト端部によって形成されることができ、補償要素は、その結果、シャフトの端部とハウジングとの間に配置される。
【0013】
本発明の特に有利な実施形態によれば、補償要素はU字型台座開口部を有するが、台座開口部は、軸方向停止部を形成するシャフト肩部の領域で出力シャフトを取り囲む。本発明のこの実施形態によれば、シャフト肩部(出力シャフトから径方向に延びるシャフト上に配置され且つシャフト軸に対して実質的に垂直に延びるピニオンなどの任意の形状に形成することができる)は軸方向停止部を形成し、補償要素はその動作位置でこの軸方向停止部に当接する。出力シャフトに対する補償要素の特に有利な配置を可能にするために、補償要素はU字型台座開口部を有し、開口部断面は、動作位置で取り付けられた補償要素の領域における出力シャフトの直径に適合される。
【0014】
本発明の対応するさらなる実施形態は、出力シャフトの軸方向の遊びのない配置を達成するために補償要素が補償シャフトに向かって径方向に動作位置へと押し込まれなければならない、選択された動作位置及び事前取り付け位置において、出力シャフトに対する補償要素の極めて位置的に安定した配置を確実にする。また、U字型台座開口部は、補償要素が出力シャフトに確実に取り付けられることを可能にし、動作中に生じる補償要素に作用する応力を低減する。
【0015】
補償要素は、任意の所望の位置でハウジングに当接することができる。例えば、補償要素が軸方向停止部に対して径方向にずれた部分でハウジングの適切な領域に当接するように、補償要素を設計することが考えられる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、動作位置にある補償要素は、軸方向停止部から離れる方向を向く支持面でハウジングの接触面に当接する。本発明のこの実施形態によれば、補償要素は、2つの対向面、すなわち、ハウジングと軸方向停止部の間の領域に延びている。補償要素の支持面はハウジングの接触面に当接し、出力シャフトの軸方向停止部は補償要素の接触面に当接し、それにより、特に信頼性のある方法で、補償要素がその動作位置にある場合の出力シャフトの軸方向のない軸受を保証する。動作位置において、補償要素が軸方向停止部により出力シャフトを軸方向の遊びがない位置にずらしたとき、補償要素の支持面は、軸方向停止部の反対側でハウジングに当接する。
【0016】
補償要素のくさび形のデザインは、その機能に不可欠である。出力シャフトに対する補償要素の径方向の位置に応じて、ハウジングと軸方向停止部との間の距離を補償要素によって調節することができる。一般に、くさび形の補償要素の使用は、本発明に係る調節駆動装置においてその機能を実行するのに十分であるが、補償要素と軸方向停止部及び/又は関連する接触面との間の部分的に線状の接合部が、くさび形のデザインによってハウジングに存在する可能性がある。
【0017】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、したがって、接触面が、補償要素のくさび形状に対応して出力シャフトに垂直に延びる平面に対して反対に傾斜していることが定められる。本発明のこの実施形態によれば、動作位置において補償要素と相互作用するハウジングの接触面は、補償要素のくさび角に対応する角度になっており、通路は、表面が補償要素の挿入方向に向かって狭くなるようになっている。補償要素が出力シャフトにおいて動作位置にあるとき、このことは、補償要素による軸方向停止部及びハウジングの接触面に対する平坦な接触をもたらす。このことは、調節駆動装置の全耐用期間にわたって持続される特に信頼性の高い方法で、軸方向の遊びのない配置を確実にする。
【0018】
一般に、接触面は、任意所望の方法で補償要素に対応する傾斜した形状に設計することができる。ハウジング壁に接続された被設置部を、接触面の領域においてハウジングに配置することができる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、接触面は、ハウジングと一体に形成される。調節駆動装置は、したがって、対応して傾斜した接触面を提供するための追加の組み立て作業を省略することができるので、それに応じて発展した形で特に容易に且つ経済的に製造することができる。
【0019】
補償要素は、出力シャフトに対して、すなわち、特に事前組み立て中の補償要素の径方向の調節において出力シャフトに向かって、補償要素が出力シャフトを遊びのない位置で支持する動作位置へ、いかなる方法でも配置されることができる。本発明の特に有利な一実施形態によれば、しかしながら、補償要素の作動部分、特に、出力シャフトに対して径方向に突出する突起は、ハウジング開口部から延びている。
【0020】
作動部分が好ましくは残りの補償要素よりも小さい断面を有する、本発明のこの実施形態によれば、調節駆動装置は、補償要素を初期位置において出力シャフトとハウジングに対して既に固定している、補償要素を有するハウジングで容易に事前組み立てされることができる。補償要素は、その後、補償要素を出力シャフトに向かって移動させる、作動部分に作用する力の結果として、径方向にずらされる。動作位置において、補償要素は、設定された動作位置を維持しながら、超音波溶接によりハウジングに接合されることができる。溶接の前に補償要素の位置をその動作位置に固定するための広範囲にわたる対策を、これにより回避することができる。補償要素がハウジングに接合された後、ある特定の状況では厄介な、補償要素のハウジングから突出する部分を、単にポキッと折る、叩き落す、引きちぎるなどによって取り除くことを容易にする、所定の破壊点を作動部分に設けることが特に有利である。
【0021】
一般に、補償要素は、任意所望の位置でハウジングに接続されることができる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、補償要素は、超音波溶接によりハウジングカバーに接続される。この接合は、行うことが特に容易であり、ハウジングカバーに接合用に作られた部分を設けることを可能にし、それは、ハウジング全体を相応に設計するのと比較して非常に容易に且つ経済的に行うことができる。
【0022】
補償要素が出力シャフトに対して不正確に組み付けられるのを防止するために、特にハウジングの接触面が補償要素に対応する傾斜した形状を有する場合に、補償要素は、本発明の別の実施形態において、出力シャフトに対する補償要素の位置合わせを誤ることを不可能にする方法で設計される。このことは、特に信頼性の高い方法で、補償要素の所定の配置を確実にする。一般に、いかなる設計も可能であるが、ハウジングが対応するデザインを有する場合に単一の設置位置のみを可能にする非対称な形状を補償要素に与える、それを位置合わせするための輪郭を補償要素が有する場合、特に有利である。突起、棒状部、又は隆起を、好ましくは補償要素の一方の側に沿って延びる輪郭として設けることができる。
【0023】
一般に、超音波溶接によって作られる補償要素のハウジングへの接合は、発生する応力に抵抗するための安定性要件を既に満たしているため、出力シャフトが軸方向の遊びなしで確実に配置されることを可能にする。
【0024】
本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトが、超音波溶接の領域でハウジングに埋め込まれ、好ましくは、ハウジングカバー及び補償要素に埋め込まれる。ハウジング及び補償要素、又はこれらの部品の少なくとも一部を通って延びる、本発明のこの実施形態に係る安全ボルトは、出力シャフト及びハウジングに対して補助的な方法で補償要素の位置を固定する。
【0025】
超音波溶接の前にハウジング及び補償要素に安全ボルトを配置することはまた、摩擦及び/又はキーによる接合に加えて、プラスチックが超音波溶接中に溶融して安全ボルトをハウジング及び補償要素と一体的に結合した後に、安全ボルト、ハウジング及び補償要素の間に溶接後の一体接続があることを確実にする。安全ボルトを使用することは、安全ボルトによって大きなせん断荷重を伝達することができるように、複合構造のせん断抵抗を増大させる。
【0026】
いかなる安全ボルトのデザインをも選択することができ、安全ボルトは、一般に、例えば、超音波溶接を行う前に補償要素及び/又はハウジングに有利に設けられた孔に配置されることができる、単純な円柱状のピンによって形成することができる。
【0027】
しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトは、補償要素に向かって細くなる端部、及び/又は長手軸の方向に変化する断面、及び/又は円形から逸脱した断面を有する。本発明のこの実施形態によれば、安全ボルトは、例えば、安全ボルトを配置することをより容易にする細い端部を形成する先端部を有することができる。
【0028】
安全ボルト、補償要素及びハウジングからなる複合構造の安定性を改善するために、安全ボルトは、長手軸の方向において変化する断面を有することができ、側面は、例えば外周突起又はネジ山を有する。本実施形態の結果、安全ボルトに円形とは異なる断面を持たせる軸方向に延びる棒状部又は突起と同様に、安全ボルトは複数のアンダーカットを有し、可塑化プラスチックが溶接プロセス中にこれらのアンダーカットに流れ、特に良好な接合をもたらす。
【0029】
本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトが超音波振動発生器に結合され、超音波振動をハウジング及び/又は補償要素に伝達するように設計されている。本発明のこの実施形態によれば、安全ボルトは、ソノトロードなどの超音波振動発生器に連結又は接続することを可能にし、それはまた、ハウジング及び/又は補償要素に超音波振動を伝達するように設計される。
【0030】
本実施形態によれば、ターゲットを絞った形で熱を導くことができるように、好ましくは金属の安全ボルトがソノトロードの延伸部を形成し、それにより特に均質な接合を形成することができる。超音波溶接処理に続いて、ソノトロードが安全ボルトから切断され、安全ボルトはそのとき配置された位置のままである。
【0031】
ハウジングと、
ハウジングに回転可能に取り付けられた出力シャフトと、
出力シャフトの軸方向の遊びを防止するくさび形補償要素であって、その動作位置において、ハウジングと出力シャフトの軸方向停止部に支持される補償要素と
を備える調節駆動装置を製造するための本発明に係る方法の特徴は、
軸方向の遊びのない出力シャフトの配置を固定する補償要素の動作位置を固定するために、以下の秩序だったステップ、
安全ボルトが超音波振動発生器に解放可能に連結されるステップと、
安全ボルトがハウジングと補償要素とに係合されるステップと、
安全ボルトを取り囲むプラスチックを可塑化するために超音波振動が安全ボルトを介して補償要素及びハウジングへ導入されるステップと、
安全ボルトが超音波振動発生器から切り離されるステップと
が実行されることである。
【0032】
本発明に係る方法にとって、安全ボルトが、超音波溶接プロセス中に安全ボルトを取り囲むプラスチックの特に効果的な溶融を可能にするためにハウジング及び補償要素に超音波振動を伝達する役割を果たし、それにより、補償要素を、それが出力シャフトを軸方向の遊びなしで固定するその動作位置に極めて確実に固定するように、ハウジング、補償要素及び安全ボルトの間の特に均質で確実な接合を生じさせることが不可欠である。
【0033】
安全ボルトは、安全ボルトがハウジング及び補償要素の中に配置される前及び後に、超音波振動発生器に接続することができる。安全ボルトが配置され、例えばソノトロードに連結された後、超音波振動が超音波振動発生器から安全ボルトに伝達される。安全ボルトを取り囲むプラスチックが十分に可塑化された後及び後続の溶接の後に、超音波振動発生器は、超音波溶接処理が完了した後で安全ボルトから切断される。安全ボルトと超音波振動発生器との間の解放可能な接続は、超音波振動の伝達が保証される限り、任意のデザインを有することができる。
【0034】
ハウジング及び補償要素の中へいかなる場所にも挿入することができるように安全ボルトを設計することが常に可能であり、特に、先端及び/又はネジ山、ローレット(ナーリング)などを有する安全ボルトを設計することが考えられる。
【0035】
本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトは、ハウジング、特にハウジングカバー及び補償要素との係合を行うために、ハウジング及び/又は補償要素に予め導入された穴、詳細には穿孔に挿入される。
【0036】
両方の部品か又は単に一方の部品に穴がある場合がある、本発明のこの実施形態は、補償要素及びハウジング内に安全ボルトを配置し、又は安全ボルトを位置決めすることができる。安全ボルトの侵入深さは、一般に、設置された状態にあるとき、それがハウジング又は補償要素から、すなわち、調節駆動装置の内部に又は外壁から突出しないようになっている。
【0037】
方法のさらなる発展形態によれば、超音波振動は、特に均質で信頼性の高い接合を生じさせるために、所定の時間にわたって及び/又は安全ボルトの周りで可塑化するプラスチックにおいて所定の伝播に至るまで導入される。超音波を発生させるために設定される期間が一般に経験的データに基づくか、又は超音波溶接が可塑性プラスチックの伝播を特定することによって決定される、本発明のこの実施形態は、特に、信頼性の高い接合を作ることを可能にし、この製造方法は、設定されたパラメータがあるとすれば、実行するのが特に容易である。
【0038】
溶融プラスチックとして理解されるべきである可塑化プラスチックは、ハウジング、補償要素及び安全ボルトの間の一体接続を可能にし、補償要素の位置をその動作位置に極めて確実に固定する。また、可塑化プラスチックは、特に接合を信頼できるものにする安全ボルトの設計から存在する任意の使用可能なアンダーカットに入ることができる。
【0039】
本発明の例示的な実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ハウジングと、ハウジングから延びる出力シャフトとを有する、調節装置の斜視図を示す。
図2図1の調節装置の平面図を示す。
図3図2の交線A−Aに沿った断面の図を示す。
図4図1の調節装置のハウジングのハウジングカバーの斜視図を示す。
図5図1の調節装置の補償要素の斜視図を示す。
図6図4のハウジングカバーと図5の補償要素の斜視図を組み立て位置で示す。
図7】安全ボルトを有する調節装置のさらなる実施形態の断面図を示す。
図8図7の安全ボルトの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
調節駆動装置1の例示的な実施形態及びその部品が、図1〜6に描かれている。調節駆動装置1は、ハウジング本体10及びハウジングカバー3によって形成されたハウジング2を有し、ハウジング2に、調節駆動装置1の出力シャフト4が回転可能に取り付けられている。調節可能な車両部品(図示せず)に接続可能な出力シャフト4は、その略図のみが描かれているピニオン12によって駆動されることができる。
【0042】
円滑な動作に必要な、ハウジング2内における出力シャフト4の軸方向の遊びがない配置のために、調節駆動装置1はくさび形の補償要素5を有し、補償要素5は、図1及び図3に示される動作位置にあるとき、出力シャフト4を軸方向の遊びのない位置に固定する。動作位置にある補償要素5の停止面16は、ピニオン12によって形成された軸方向停止部11に当接し、支持面13は、ハウジング本体10の内部の(補償要素5のくさび形状に対応する)傾斜した接触面17に当接し、同時に出力シャフト4の軸方向の遊びがない配置を達成するために、ハウジング2内に配置されたシャフト端部の円錐形のテーパー状支持軸受18が、接触面17の反対側の内側ハウジングに当接する。軸方向における出力シャフト4の位置は、くさび形の補償要素5の出力シャフト4に対する径方向位置の関数として、補償要素5を径方向にずらすことによって出力シャフト4が遊びのない位置に移動されるように決定される。
【0043】
支持軸受18は、支持軸受18が内側ハウジング壁に当接するハウジング本体10の領域と同様に、確実な位置と最小限の摩擦とを達成するためにいかなるデザインをも有することができる。したがって、ハウジング本体10には、例えば、ハウジング本体10に別途取り付けられるか又はその製造工程中に埋め込まれる、好ましくは金属のスラストワッシャー(図示せず)を支持部18の領域に設けることができる。描かれている円錐形のデザインの代わりに、支持軸受18は、シャフト端部に回転可能に配置された球体で形成することができる。
【0044】
補償要素5の動作位置をハウジング2に対して固定するために、補償要素5は、出力シャフト4に向かって径方向に延びるハウジングカバー3の棒状部8によって、ハウジングカバー3に超音波溶接点9を用いて接合される。出力シャフト4の軸方向の遊びのない位置が、ハウジング本体10とハウジングカバー3の位置的に安定した接合によって固定され、ハウジングカバー3は、ハウジング本体10と共同で、出力シャフト4の断面に対応する棒状部8の円弧状部分によって出力シャフト4のラジアル軸受を形成する。
【0045】
出力シャフト4上の補償要素5の位置は、何よりも、U字型台座開口部15によって決定され、U字型台座開口部15は、動作位置では、出力シャフト4の周りの領域に延びる。突起6は、補償要素を初期位置から動作位置に移動させるのに役立ち、径方向に見たときに、補償要素5のU字型台座開口部15と反対側の側部に延び、補償要素5が事前取り付け及び取り付け位置にあるとき、ハウジングカバー3の開口部7から突出する。事前取り付け位置において、すでに取り付けられているハウジング2のハウジング開口部7から突出する突起6を楽にずらすことによって、補償要素5は、出力シャフト4に向かって動作位置(この動作位置において、補償要素5が超音波溶接によってハウジングカバー3に恒久的に接続される)へと押し込まれることができる。
【0046】
軸方向停止部11と停止面16との間の最小限の摩擦を達成するために、それらは例えば適切な材料から作られることができ、又は低摩擦コーティングを設けることができる。図示しない実施形態によれば、玉軸受などの軸受をピニオン12と補償要素5との間に配置することもでき、それにより特に低摩擦の動作が可能になる。
【0047】
ハウジング2内の対応する凹部と相互作用する補償要素5の一方の側に配置された輪郭14は、出力シャフト4に対する補償要素5の単一の設置位置を容易にし、したがって、支持面13が、ハウジング本体8の内側ハウジング壁にある対応する傾斜接触面17と平面的に接触することを確実にする。
【0048】
図7は、安全ボルト19を有する調節装置1のさらなる実施形態の断面図を示し、安全ボルト19もまたハウジング2に対する補償要素5の位置を固定するように、安全ボルト19はハウジング2の棒状部8を通って補償要素5内に延びる。安全ボルト19はまた、補償要素5及びハウジング2に超音波振動を導入するのにも役立ち、超音波振動は、安全ボルト19の周りの領域を可塑化し、すなわち、溶融し、超音波溶接が生じる。超音波振動を導入するために、安全ボルト19は、ハウジング2及び補償要素5に配置される前又は後に、ソノトロード(図示せず)に連結される。
【0049】
安全ボルト19の特に信頼性の高い配置を確実にするために、それはその周囲に一種のネジ山20を有し、可塑化プラスチックが超音波溶接中にその隙間に流れ、キーによる接続に加えて、特に高品質の一体接続をもたらす。
【0050】
超音波溶接プロセス中に、超音波振動は、音響変換器を用いて機械的振動エネルギーに変換される。超音波溶接中の可塑化に必要とされる熱は、機械的振動を導入することによって得られ、これらは、ソノトロードの制御された圧力の下で溶接される部品5,8,19に供給される。その設計を考えると、連結ボルト19は、ターゲットを絞った形で熱を導入するのに役立ち、熱はネジ山20のフランクの分子及び界面摩擦によって生成され、その領域でプラスチックが溶融し始め、したがって、可塑化プラスチックをネジ山20のフランク間の領域に流入させる。
【0051】
安全ボルトの効果的な配置を可能にするために、ハウジング2に受け入れられるように設けられたハウジングカバー3は、補償要素5に適合されたパイロット穴を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8