【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する調節駆動装置によって、及び請求項13の特徴を有する方法によって達成される。本発明のさらなる有利な発展形態は従属請求項で特定されている。
【0008】
出力シャフトの軸方向の遊びのない配置を確実にする補償要素がその動作位置において超音波溶接によってハウジングに接続されることが、本発明に係る調節駆動装置の特徴である。本発明の文脈において「動作位置」として理解されるべきものは、軸方向の遊びのない配置で出力シャフトをハウジング内で固定する補償要素の位置であり、この位置は、調節駆動装置によって調節される車両部品が遊びを有して調節されることを確実に防止し、又は調節駆動装置の作動中の不快なノイズを確実に防止する。
【0009】
本発明によれば、補償要素は、出力シャフトに対して、出力シャフトがもはや軸方向の遊びを有さないように補償要素がハウジングと出力シャフトの軸方向停止部の両方に当接する位置に移動される。補償要素のこの動作位置を固定するために、ハウジングに対してこの位置にある補償要素は、超音波溶接によってハウジングに接合される。ハウジング及び補償要素は、少なくとも超音波溶接接合の領域がプラスチックで作られ、ハウジング及び補償要素の両方を、完全にプラスチックから作ることができる。
【0010】
超音波溶接接合は、その信頼性のある、ハウジングの補償要素への非分離接合によって優れており、補償要素のハウジングへの、したがって出力シャフトに対する恒久的な固定が、それによって達成される。また、超音波溶接は、容易に且つ安価に、速い溶接速度で経済的に行うことができる。補償要素とハウジングの熱可塑性プラスチックは、接触領域で溶融され、動作位置における確実な補償要素の配置をもたらすために、硬化プロセス中に結合される。
【0011】
全体として、本発明に係る調節駆動装置は、全耐用期間にわたって軸方向の遊びなしで配置される軸方向の出力シャフトを有し、特に、補償要素を超音波溶接によってハウジングに接続し、それにより、動作位置を恒久的に固定し、遊びのない配置も調節駆動装置の全耐用期間にわたって保持されることを確実に保証する。
【0012】
軸方向の遊びを補償するために、補償要素は、その動作位置において、ハウジングと出力シャフトの軸方向停止部の両方に当接し、したがって、それにより達成される出力シャフトの遊びなしの配置を固定する。補償要素は、出力シャフトの軸方向停止部と任意の位置で相互作用することができ、軸方向停止部は、例えばシャフト端部によって形成されることができ、補償要素は、その結果、シャフトの端部とハウジングとの間に配置される。
【0013】
本発明の特に有利な実施形態によれば、補償要素はU字型台座開口部を有するが、台座開口部は、軸方向停止部を形成するシャフト肩部の領域で出力シャフトを取り囲む。本発明のこの実施形態によれば、シャフト肩部(出力シャフトから径方向に延びるシャフト上に配置され且つシャフト軸に対して実質的に垂直に延びるピニオンなどの任意の形状に形成することができる)は軸方向停止部を形成し、補償要素はその動作位置でこの軸方向停止部に当接する。出力シャフトに対する補償要素の特に有利な配置を可能にするために、補償要素はU字型台座開口部を有し、開口部断面は、動作位置で取り付けられた補償要素の領域における出力シャフトの直径に適合される。
【0014】
本発明の対応するさらなる実施形態は、出力シャフトの軸方向の遊びのない配置を達成するために補償要素が補償シャフトに向かって径方向に動作位置へと押し込まれなければならない、選択された動作位置及び事前取り付け位置において、出力シャフトに対する補償要素の極めて位置的に安定した配置を確実にする。また、U字型台座開口部は、補償要素が出力シャフトに確実に取り付けられることを可能にし、動作中に生じる補償要素に作用する応力を低減する。
【0015】
補償要素は、任意の所望の位置でハウジングに当接することができる。例えば、補償要素が軸方向停止部に対して径方向にずれた部分でハウジングの適切な領域に当接するように、補償要素を設計することが考えられる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、動作位置にある補償要素は、軸方向停止部から離れる方向を向く支持面でハウジングの接触面に当接する。本発明のこの実施形態によれば、補償要素は、2つの対向面、すなわち、ハウジングと軸方向停止部の間の領域に延びている。補償要素の支持面はハウジングの接触面に当接し、出力シャフトの軸方向停止部は補償要素の接触面に当接し、それにより、特に信頼性のある方法で、補償要素がその動作位置にある場合の出力シャフトの軸方向のない軸受を保証する。動作位置において、補償要素が軸方向停止部により出力シャフトを軸方向の遊びがない位置にずらしたとき、補償要素の支持面は、軸方向停止部の反対側でハウジングに当接する。
【0016】
補償要素のくさび形のデザインは、その機能に不可欠である。出力シャフトに対する補償要素の径方向の位置に応じて、ハウジングと軸方向停止部との間の距離を補償要素によって調節することができる。一般に、くさび形の補償要素の使用は、本発明に係る調節駆動装置においてその機能を実行するのに十分であるが、補償要素と軸方向停止部及び/又は関連する接触面との間の部分的に線状の接合部が、くさび形のデザインによってハウジングに存在する可能性がある。
【0017】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、したがって、接触面が、補償要素のくさび形状に対応して出力シャフトに垂直に延びる平面に対して反対に傾斜していることが定められる。本発明のこの実施形態によれば、動作位置において補償要素と相互作用するハウジングの接触面は、補償要素のくさび角に対応する角度になっており、通路は、表面が補償要素の挿入方向に向かって狭くなるようになっている。補償要素が出力シャフトにおいて動作位置にあるとき、このことは、補償要素による軸方向停止部及びハウジングの接触面に対する平坦な接触をもたらす。このことは、調節駆動装置の全耐用期間にわたって持続される特に信頼性の高い方法で、軸方向の遊びのない配置を確実にする。
【0018】
一般に、接触面は、任意所望の方法で補償要素に対応する傾斜した形状に設計することができる。ハウジング壁に接続された被設置部を、接触面の領域においてハウジングに配置することができる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、接触面は、ハウジングと一体に形成される。調節駆動装置は、したがって、対応して傾斜した接触面を提供するための追加の組み立て作業を省略することができるので、それに応じて発展した形で特に容易に且つ経済的に製造することができる。
【0019】
補償要素は、出力シャフトに対して、すなわち、特に事前組み立て中の補償要素の径方向の調節において出力シャフトに向かって、補償要素が出力シャフトを遊びのない位置で支持する動作位置へ、いかなる方法でも配置されることができる。本発明の特に有利な一実施形態によれば、しかしながら、補償要素の作動部分、特に、出力シャフトに対して径方向に突出する突起は、ハウジング開口部から延びている。
【0020】
作動部分が好ましくは残りの補償要素よりも小さい断面を有する、本発明のこの実施形態によれば、調節駆動装置は、補償要素を初期位置において出力シャフトとハウジングに対して既に固定している、補償要素を有するハウジングで容易に事前組み立てされることができる。補償要素は、その後、補償要素を出力シャフトに向かって移動させる、作動部分に作用する力の結果として、径方向にずらされる。動作位置において、補償要素は、設定された動作位置を維持しながら、超音波溶接によりハウジングに接合されることができる。溶接の前に補償要素の位置をその動作位置に固定するための広範囲にわたる対策を、これにより回避することができる。補償要素がハウジングに接合された後、ある特定の状況では厄介な、補償要素のハウジングから突出する部分を、単にポキッと折る、叩き落す、引きちぎるなどによって取り除くことを容易にする、所定の破壊点を作動部分に設けることが特に有利である。
【0021】
一般に、補償要素は、任意所望の位置でハウジングに接続されることができる。しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、補償要素は、超音波溶接によりハウジングカバーに接続される。この接合は、行うことが特に容易であり、ハウジングカバーに接合用に作られた部分を設けることを可能にし、それは、ハウジング全体を相応に設計するのと比較して非常に容易に且つ経済的に行うことができる。
【0022】
補償要素が出力シャフトに対して不正確に組み付けられるのを防止するために、特にハウジングの接触面が補償要素に対応する傾斜した形状を有する場合に、補償要素は、本発明の別の実施形態において、出力シャフトに対する補償要素の位置合わせを誤ることを不可能にする方法で設計される。このことは、特に信頼性の高い方法で、補償要素の所定の配置を確実にする。一般に、いかなる設計も可能であるが、ハウジングが対応するデザインを有する場合に単一の設置位置のみを可能にする非対称な形状を補償要素に与える、それを位置合わせするための輪郭を補償要素が有する場合、特に有利である。突起、棒状部、又は隆起を、好ましくは補償要素の一方の側に沿って延びる輪郭として設けることができる。
【0023】
一般に、超音波溶接によって作られる補償要素のハウジングへの接合は、発生する応力に抵抗するための安定性要件を既に満たしているため、出力シャフトが軸方向の遊びなしで確実に配置されることを可能にする。
【0024】
本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトが、超音波溶接の領域でハウジングに埋め込まれ、好ましくは、ハウジングカバー及び補償要素に埋め込まれる。ハウジング及び補償要素、又はこれらの部品の少なくとも一部を通って延びる、本発明のこの実施形態に係る安全ボルトは、出力シャフト及びハウジングに対して補助的な方法で補償要素の位置を固定する。
【0025】
超音波溶接の前にハウジング及び補償要素に安全ボルトを配置することはまた、摩擦及び/又はキーによる接合に加えて、プラスチックが超音波溶接中に溶融して安全ボルトをハウジング及び補償要素と一体的に結合した後に、安全ボルト、ハウジング及び補償要素の間に溶接後の一体接続があることを確実にする。安全ボルトを使用することは、安全ボルトによって大きなせん断荷重を伝達することができるように、複合構造のせん断抵抗を増大させる。
【0026】
いかなる安全ボルトのデザインをも選択することができ、安全ボルトは、一般に、例えば、超音波溶接を行う前に補償要素及び/又はハウジングに有利に設けられた孔に配置されることができる、単純な円柱状のピンによって形成することができる。
【0027】
しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトは、補償要素に向かって細くなる端部、及び/又は長手軸の方向に変化する断面、及び/又は円形から逸脱した断面を有する。本発明のこの実施形態によれば、安全ボルトは、例えば、安全ボルトを配置することをより容易にする細い端部を形成する先端部を有することができる。
【0028】
安全ボルト、補償要素及びハウジングからなる複合構造の安定性を改善するために、安全ボルトは、長手軸の方向において変化する断面を有することができ、側面は、例えば外周突起又はネジ山を有する。本実施形態の結果、安全ボルトに円形とは異なる断面を持たせる軸方向に延びる棒状部又は突起と同様に、安全ボルトは複数のアンダーカットを有し、可塑化プラスチックが溶接プロセス中にこれらのアンダーカットに流れ、特に良好な接合をもたらす。
【0029】
本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトが超音波振動発生器に結合され、超音波振動をハウジング及び/又は補償要素に伝達するように設計されている。本発明のこの実施形態によれば、安全ボルトは、ソノトロードなどの超音波振動発生器に連結又は接続することを可能にし、それはまた、ハウジング及び/又は補償要素に超音波振動を伝達するように設計される。
【0030】
本実施形態によれば、ターゲットを絞った形で熱を導くことができるように、好ましくは金属の安全ボルトがソノトロードの延伸部を形成し、それにより特に均質な接合を形成することができる。超音波溶接処理に続いて、ソノトロードが安全ボルトから切断され、安全ボルトはそのとき配置された位置のままである。
【0031】
ハウジングと、
ハウジングに回転可能に取り付けられた出力シャフトと、
出力シャフトの軸方向の遊びを防止するくさび形補償要素であって、その動作位置において、ハウジングと出力シャフトの軸方向停止部に支持される補償要素と
を備える調節駆動装置を製造するための本発明に係る方法の特徴は、
軸方向の遊びのない出力シャフトの配置を固定する補償要素の動作位置を固定するために、以下の秩序だったステップ、
安全ボルトが超音波振動発生器に解放可能に連結されるステップと、
安全ボルトがハウジングと補償要素とに係合されるステップと、
安全ボルトを取り囲むプラスチックを可塑化するために超音波振動が安全ボルトを介して補償要素及びハウジングへ導入されるステップと、
安全ボルトが超音波振動発生器から切り離されるステップと
が実行されることである。
【0032】
本発明に係る方法にとって、安全ボルトが、超音波溶接プロセス中に安全ボルトを取り囲むプラスチックの特に効果的な溶融を可能にするためにハウジング及び補償要素に超音波振動を伝達する役割を果たし、それにより、補償要素を、それが出力シャフトを軸方向の遊びなしで固定するその動作位置に極めて確実に固定するように、ハウジング、補償要素及び安全ボルトの間の特に均質で確実な接合を生じさせることが不可欠である。
【0033】
安全ボルトは、安全ボルトがハウジング及び補償要素の中に配置される前及び後に、超音波振動発生器に接続することができる。安全ボルトが配置され、例えばソノトロードに連結された後、超音波振動が超音波振動発生器から安全ボルトに伝達される。安全ボルトを取り囲むプラスチックが十分に可塑化された後及び後続の溶接の後に、超音波振動発生器は、超音波溶接処理が完了した後で安全ボルトから切断される。安全ボルトと超音波振動発生器との間の解放可能な接続は、超音波振動の伝達が保証される限り、任意のデザインを有することができる。
【0034】
ハウジング及び補償要素の中へいかなる場所にも挿入することができるように安全ボルトを設計することが常に可能であり、特に、先端及び/又はネジ山、ローレット(ナーリング)などを有する安全ボルトを設計することが考えられる。
【0035】
本発明の特に有利な実施形態によれば、安全ボルトは、ハウジング、特にハウジングカバー及び補償要素との係合を行うために、ハウジング及び/又は補償要素に予め導入された穴、詳細には穿孔に挿入される。
【0036】
両方の部品か又は単に一方の部品に穴がある場合がある、本発明のこの実施形態は、補償要素及びハウジング内に安全ボルトを配置し、又は安全ボルトを位置決めすることができる。安全ボルトの侵入深さは、一般に、設置された状態にあるとき、それがハウジング又は補償要素から、すなわち、調節駆動装置の内部に又は外壁から突出しないようになっている。
【0037】
方法のさらなる発展形態によれば、超音波振動は、特に均質で信頼性の高い接合を生じさせるために、所定の時間にわたって及び/又は安全ボルトの周りで可塑化するプラスチックにおいて所定の伝播に至るまで導入される。超音波を発生させるために設定される期間が一般に経験的データに基づくか、又は超音波溶接が可塑性プラスチックの伝播を特定することによって決定される、本発明のこの実施形態は、特に、信頼性の高い接合を作ることを可能にし、この製造方法は、設定されたパラメータがあるとすれば、実行するのが特に容易である。
【0038】
溶融プラスチックとして理解されるべきである可塑化プラスチックは、ハウジング、補償要素及び安全ボルトの間の一体接続を可能にし、補償要素の位置をその動作位置に極めて確実に固定する。また、可塑化プラスチックは、特に接合を信頼できるものにする安全ボルトの設計から存在する任意の使用可能なアンダーカットに入ることができる。
【0039】
本発明の例示的な実施形態について図面を参照して以下に説明する。