(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
関節を人工関節に置換する手術において、人工関節用コンポーネントと軟部組織とをシート状の組織代用合成繊維布を介して結合する際に当該組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付けるために用いられる、人工関節置換術用手術装置であって、
前記人工関節用コンポーネントに対して又は当該人工関節用コンポーネントに対応した軸状部材に対して前記組織代用合成繊維布が筒状に巻き付けられた状態で、筒状の前記組織代用合成繊維布の周方向に亘って配置される周方向配置部材を有するとともに、前記周方向配置部材によって前記組織代用合成繊維布を外周側から前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して押し付ける押し付け機構と、
前記周方向配置部材に取り付けられる部材として構成され又は当該周方向配置部材によって構成された保持部材を有し、前記組織代用合成繊維布が前記周方向配置部材によって前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に押し付けられた状態で、前記保持部材により、前記周方向配置部材を介して前記組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して保持する保持機構と、
を備え、
前記周方向配置部材は、組み合わされることで円筒を構成するように分割された形状である一対の円筒分割形状部材として設けられ、前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して筒状に巻きつけられた前記組織代用合成繊維布を周方向に覆った状態で当該組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に押し付けることを特徴とする、人工関節置換術用手術装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2に開示された術式によると、人工関節用コンポーネントに対して巻き付けられた状態で固定された組織代用合成繊維布に対して軟部組織が縫合糸によって縫着されて固定される。このため、人工関節用コンポーネントに対して軟部組織を縫合糸或いはスクリュー等によって直接的に結合させる術式とは異なり、軟部組織を縫着する縫合糸の脱落及び軟部組織の損傷が発生し難く、軟部組織の人工関節用コンポーネントからの遊離を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、非特許文献2に開示された術式においては、術者は、シート状の組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して筒状に巻き付け、更にその状態を自らの手を用いて維持したまま、組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに縫合糸で固定して取り付ける必要がある。このような作業、即ち、組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに巻き付けて更にその状態で人工関節用コンポーネントに取り付ける作業は、煩雑であり、術者の熟練度が作業結果に影響を与えてしまい易いという問題がある。更に、作業が煩雑であることから、手術時間が長くなってしまい易く、感染のリスクが高くなり易いという問題がある。
【0008】
本
発明は、上記実情に鑑みることにより、人工関節用コンポーネントと軟部組織とをシート状の組織代用合成繊維布を介して結合する際に組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易にし、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、更に、手術時間を短くすることができる、人工関節置換術用手術装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は、関節を人工関節に置換する手術において、人工関節用コンポーネントと軟部組織とをシート状の組織代用合成繊維布を介して結合する際に当該組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付けるために用いられる、人工関節置換術用手術装置に関する。そして、
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は、前記人工関節用コンポーネントに対して又は当該人工関節用コンポーネントに対応した軸状部材に対して前記組織代用合成繊維布が筒状に巻き付けられた状態で、筒状の前記組織代用合成繊維布の周方向に亘って配置される周方向配置部材を有するとともに、前記周方向配置部材によって前記組織代用合成繊維布を外周側から前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して押し付ける押し付け機構と、前記周方向配置部材に取り付けられる部材として構成され又は当該周方向配置部材によって構成された保持部材を有し、前記組織代用合成繊維布が前記周方向配置部材によって前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に押し付けられた状態で、前記保持部材により、前記周方向配置部材を介して前記組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して保持する保持機構と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この
構成によると、シート状の組織代用合成繊維布は、人工関節用コンポーネント又は軸状部材に筒状に巻き付けられた状態で周方向配置部材によって外周側から押し付けられる。そして、その状態で、保持部材によって、周方向配置部材を介して、組織代用合成繊維布が人工関節用コンポーネント又は軸状部材に保持される。このため、組織代用合成繊維布が人工関節用コンポーネント又は軸状部材に巻かれた状態が容易に実現でき且つ維持されることになる。そして、その状態において、術者は、縫合糸を用いて組織代用合成繊維布を筒状に固定する作業を容易に行うことができる。組織代用合成繊維布が筒状に固定されると、押し付け機構及び保持機構は取り外されることになる。
【0011】
尚、組織代用合成繊維布が筒状に固定された後は、組織代用合成繊維布が人工関節用コンポーネントに巻かれている場合は、筒状の組織代用合成繊維布をそのまま簡単に人工関節用コンポーネントに対して縫合糸で固定することができる。また、組織代用合成繊維布が人工関節用コンポーネントに対応する軸状部材に巻かれている場合は、筒状の組織代用合成繊維布を軸状部材から抜き出すようにして外し、そのまま簡単に人工関節用コンポーネントに対して被せて縫合糸で固定することができる。よって、術者は、人工関節置換術の際に、本
発明の人工関節置換術用手術装置を用いることで、シート状の組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0012】
また、本
発明の人工関節置換術用手術装置によると、前述のように、組織代用合成繊維布が人工関節用コンポーネントに巻かれて取り付けられた状態が容易に実現できるため、作業の熟練がほとんど要求されず、作業時間の短時間化も図られることになる。このため、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、手術時間を短くすることもできる。
【0013】
従って、本
発明によると、人工関節用コンポーネントと軟部組織とをシート状の組織代用合成繊維布を介して結合する際に組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易にし、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、更に、手術時間を短くすることができる、人工関節置換術用手術装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記周方向配置部材は、組み合わされることで円筒を構成するように分割された形状である一対の円筒分割形状部材として設けられ、前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して筒状に巻きつけられた前記組織代用合成繊維布を周方向に覆った状態で当該組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に押し付けること
が好ましい。
【0015】
この
構成によると、人工関節用コンポーネント又は軸状部材に対して筒状に巻きつけられた組織代用合成繊維布を周方向に覆った状態で押し付ける周方向配置部材が、一対の円筒分割形状部材として設けられる。このため、組織代用合成繊維布を外周側から人工関節用コンポーネント又は軸状部材に対して効率よく押し付ける構造を簡素な部材で容易に実現することができる。
【0016】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、一対の前記円筒分割形状部材は、円筒に組み合わされて閉じた状態と円筒の内側を開放するように開いた状態との間で開閉可能に連結するヒンジ部によって連結されていること
が好ましい。
【0017】
この
構成によると、一対の円筒分割形状部材がヒンジ部によって開閉可能に連結される。このため、開いた状態の一対の円筒分割形状部材を閉じる動作を行うだけで、人工関節用コンポーネント又は軸状部材に対して筒状に巻きつけられた組織代用合成繊維布を周方向に覆った状態で押し付ける作業を更に容易に行うことができる。
【0018】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記保持機構は、一対の前記円筒分割形状部材の一方に設けられた突起と、一対の前記円筒分割形状部材の他方に対して回転可能に支持され、前記突起に係合することで、一対の前記円筒分割形状部材が円筒に組み合わされた状態を保持する前記保持部材と、を有すること
が好ましい。
【0019】
この
構成によると、保持機構が一対の円筒分割形状部材の一方の突起と他方に回転自在に支持されて突起に係合する保持部材とで構成される。このため、周方向配置部材を介して組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネント又は軸状部材に対して保持する機構を簡素な部材で容易に実現することができる。
【0020】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記保持部材は、バネ部材として設けられ、バネ力によって、前記周方向配置部材を介して前記組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して保持すること
が好ましい。
【0021】
この
構成によると、保持部材が、バネ力によって組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネント又は軸状部材に対して保持するバネ部材として構成される。このため、術者の操作に基づいて保持部材が弾性変形することで、容易に組織代用合成繊維布を保持可能な状態となり、更に、弾性変形させる操作を解除することで、バネ力が作用可能な安定した状態で組織代用合成繊維布を保持することができる。よって、操作が容易で組織代用合成繊維布の安定した保持が可能な保持部材を実現することができる。
【0022】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記保持機構は、一対のレバーと、一対の前記レバーを付勢する前記バネ部材としての前記保持部材と、を有し、前記周方向配置部材は、筒状又は環状に配置される閉鎖状態と、前記閉鎖状態において筒状又は環状に配置される部分が開くように配置される開放状態と、の間で開閉駆動される一対の開閉部材として設けられ、一対の前記レバーのうちの一方が一対の前記開閉部材のうちの一方に一体に連結され、一対の前記レバーのうちの他方が一対の前記開閉部材のうちの他方に一体に連結されていること
が好ましい。
【0023】
この
構成によると、術者は、周方向配置部材を構成する一対の開閉部材にそれぞれ設けられた一対のレバーをバネ部材のバネ力に抗して操作することで、一対の開閉部材を開放状態とし、容易に組織代用合成繊維布を保持可能な状態にできる。そして、一対のレバーの操作を解除することで、一対の開閉部材がバネ力によって閉鎖状態となり、バネ力が作用可能な安定した状態で組織代用合成繊維布を保持することができる。よって、レバーによって容易に操作が可能であって、バネ力によって組織代用合成繊維布を安定して保持できる保持機構を実現することができる。
【0024】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記保持部材は、前記周方向配置部材によって構成され、1カ所が開放された筒状又は環状に湾曲して形成された部分を有する前記バネ部材として設けられ、拡径した後に弾性回復するバネ力によって縮径することで、前記周方向配置部材を介して前記組織代用合成繊維布を前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に対して保持すること
が好ましい。
【0025】
この
構成によると、バネ部材としての保持部材が、1カ所が開放された筒状又は環状に湾曲して形成された部分を有して拡縮動作を行うことで作動する周方向配置部材として構成される。このため、周方向配置部材と保持部材とが共通化されるため、部材点数の削減と構成の簡素化を図ることができる。
【0026】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記周方向配置部材には、前記人工関節用コンポーネント又は前記軸状部材に巻き付けられた前記組織代用合成繊維布における巻き付け方向の両端の縁部分側を挟み込むように支持する挟持部が設けられ、前記挟持部には、前記組織代用合成繊維布を縫合する縫合糸が挿通される縫合糸挿通孔が形成されていること
が好ましい。
【0027】
この
構成によると、組織代用合成繊維布における巻き付け方向の両端の縁部分側が、周方向配置部材の挟持部によって挟み込まれるように支持される。そして、この状態で、挟持部に形成された縫合糸挿通孔に挿通される縫合糸によって組織代用合成繊維布が縫合される。よって、術者は、人工関節用コンポーネント又は軸状部材に筒状に巻き付けられて保持された状態の組織代用合成繊維布を縫合糸によって固定する作業を更に容易に行うことができる。
【0028】
本発明に係る人工関節置換術用手術装置は
、前記軸状部材と、前記軸状部材を片持ち状に支持する支持台と、を有する巻き付け支持機構が更に備えられていること
が好ましい。
【0029】
この
構成によると、巻き付け支持機構の支持台に片持ち状に支持された軸状部材に対して、シート状の組織代用合成繊維布が巻き付けられる。このため、術者は、支持台にて安定して支持された軸状部材に対して組織代用合成繊維布の巻き付け作業を行うことができ、組織代用合成繊維布の巻き付け作業が更に容易となる。
【発明の効果】
【0030】
本
発明によると、人工関節用コンポーネントと軟部組織とをシート状の組織代用合成繊維布を介して結合する際に組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易にし、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、更に、手術時間を短くすることができる、人工関節置換術用手術装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本
発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。本
発明は、関節を人工関節に置換する手術において、人工関節用コンポーネントと軟部組織とをシート状の組織代用合成繊維布を介して結合する際に組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して巻き付けた状態で取り付けるために用いられる、人工関節置換術用手術装置として、広く適用することができるものである。
【0033】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態における人工関節用コンポーネントである大腿骨コンポーネント101と筋繊維等の軟部組織103とが組織代用合成繊維布100を介して結合された状態を模式的に示す斜視図である。尚、
図1は、患者に対して、人工関節置換術のうち、股関節を人工股関節に置換する手術である人工股関節置換術が行われ、大腿骨102の近位部側が大腿骨コンポーネント101に置換された状態を示している。
【0034】
ここで、大腿骨102及び大腿骨コンポーネント101において、相対的に体幹に近い側は「近位」と称され、相対的に体幹から遠い側は「遠位」と称される。また、
図1では、大腿骨102及び軟部組織103以外の人体組織の図示が省略されている。また、
図1では、人工股関節における大腿骨コンポーネント101以外の要素である骨頭ボール、骨盤側コンポーネント、等の図示が省略されている。
【0035】
図1に大腿骨コンポーネント101の設置状態を例示する人工股関節置換術の形態では、大腿骨コンポーネント101は、遠位側の端部にて、近位側の部分が切除された大腿骨100の近位側の端部に固定される。大腿骨コンポーネント101が設置される人工股関節置換術では、大腿骨102の近位部側及びその周辺の軟部組織の切除が広範囲に亘って行われる。そして、大腿骨102に設置された大腿骨コンポーネント101と大腿骨102から遊離した軟部組織103とが、筒状に成形されて大腿骨コンポーネント101に巻かれた状態で取り付けられた組織代用合成繊維布100を介して、結合される。
【0036】
組織代用合成繊維布100を介した大腿骨コンポーネント101と軟部組織103との結合の際には、筒状の組織代用合成繊維布100が、大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けられた状態で取り付けられる。そして、後述するように、組織代用合成繊維布100が大腿骨コンポーネント101に対して縫合糸によって固定して取り付けられる(
図12を参照)。更に、この組織代用合成繊維布100に対して軟部組織103が縫合糸104によって縫着されて結合され、これにより、大腿骨用コンポーネント101と軟部組織103とが組織代用合成繊維布100を介して結合されることになる。
【0037】
次に、本
発明の第1実施形態に係る人工関節置換術用手術装置について説明する。
図2は、本
発明の第1実施形態に係る人工関節置換術用手術装置1(以下、単に「手術装置1」ともいう)を示す斜視図である。前述した組織代用合成繊維布100は、
図2に示す手術装置1が用いられることで、シート状に広がった状態から筒状に巻かれた状態に成形されることになる。尚、組織代用合成繊維布100は、例えば、ポリプロピレン製の糸が織られることで形成されたメッシュ状の布として構成されている。
【0038】
図2に示す手術装置1は、巻き付け支持機構11、押し付け機構12、及び保持機構13を備えて構成されている。巻き付け支持機構11、押し付け機構12、及び保持機構13は、医療機器の素材としての認可承認を得たステンレス鋼、チタン合金、コバルトクロム合金などの金属材料により形成されている。尚、この例に限らず、巻き付け支持機構11、押し付け機構12、及び保持機構13が、医療機器の素材としての認可承認を得た樹脂材料により形成されてもよい。
【0039】
巻き付け支持機構11は、成形される組織代用合成繊維布100が巻き付けられて支持される構造体として設けられている。そして、この巻き付け支持機構11は、軸状部材11aと、支持台11bとを備えて構成されている。
【0040】
軸状部材11aは、円柱状の部材として設けられている。この軸状部材11aは、大腿骨コンポーネント101に対応して形成され、大腿骨コンポーネント101の胴部の直径に対応した直径寸法の円柱状の部材として設けられている。そして、軸状部材11aにおける円柱の周方向の側面に対してシート状の組織代用合成繊維布100が巻き付けられることになる。尚、軸状部材11aの直径寸法は、例えば、大腿骨コンポーネント101の胴部の直径寸法と同じ寸法又は少し大きい寸法に設定されている。
【0041】
支持台11bは、軸状部材11aを片持ち状に支持する台座として設けられている。そして、この支持台11bは、テーブル等の表面に安定して載置されるために設けられた平坦なブロック状の基台部14と、基台部14に対して垂直に突出するように形成された平板状の支持壁部15とを備えて構成されている。軸状部材11aは、支持壁部15から片持ち状に突出してこの支持壁部15に支持されている。そして、軸状部材11aは、支持壁部15に対して垂直に突出し、基台部14に対して平行に延びるように配置されている。
【0042】
図3は、押し付け機構12及び保持機構13を示す斜視図である。
図4は、押し付け機構12及び保持機構13を示す斜視図であって、
図3とは異なる状態を示す図である。
図5は、押し付け機構12及び保持機構13についての
図3における矢印A方向から見た状態の側面図である。尚、
図5(a)及び
図5(b)は、押し付け機構12及び保持機構13についての異なる状態を示している。
【0043】
図2乃至
図5に示す押し付け機構12は、周方向配置部材16及びヒンジ部18を備えて構成されている。周方向配置部材16は、軸状部材11aに対して略正方形又は略長方形のシート状の組織代用合成繊維布100が筒状に巻き付けられた状態で、筒状の組織代用合成繊維布100の周方向に亘って配置される部材として設けられている。そして、押し付け機構12は、この周方向配置部材16によって組織代用合成繊維布100を外周側から軸状部材11aに対して押し付ける機構として構成されている。
【0044】
また、周方向配置部材16は、組み合わされることで円筒を構成するように分割された形状である一対の円筒分割形状部材(17a、17b)として設けられている。この一対の円筒分割形状部材(17a、17b)は、円筒が円筒軸方向に平行な面で半分に分割された形状に形成されている。そして、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)は、円筒を構成するように組み合わされた状態であって、軸状部材11aに対して筒状に巻き付けられた組織代用合成繊維布100を周方向に覆った状態で、組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して押し付けることになる。
【0045】
また、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)は、ヒンジ部18を介して連結されている。ヒンジ部18は、円筒分割形状部材17aにおける円筒軸方向に延びる一方の縁部と、この縁部に対応する縁部であって円筒分割形状部材17bにおける円筒軸方向に延びる一方の縁部とを回転軸を介して連結するヒンジ機構として設けられている。これにより、ヒンジ部18は、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)を円筒に組み合わされて閉じた状態と円筒の内側を開放するように開いた状態との間で開閉可能に連結するように構成されている。尚、
図3及び
図5(a)は、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)が閉じた状態を示しており、
図4及び
図5(b)は、一対の円筒分割形状部材17a、17b)が開いた状態を示している。
【0046】
また、周方向配置部材16を構成する一対の円筒分割形状部材(17a、17b)には、軸状部材11aに巻き付けられた組織代用合成繊維布100における巻き付け方向の両端の縁部分側を挟み込むように支持する挟持部19(19a、19b)が設けられている。挟持部19aは、円筒分割形状部材17aにおける円筒軸方向に延びる縁部であってヒンジ部18と反対側に配置された他方の縁部に沿って延びるとともに、円筒軸方向に垂直な方向に向かってフランジ状に張り出した部分として設けられている。一方、挟持部19bは、円筒分割形状部材17bにおける円筒軸方向に延びる縁部であってヒンジ部18と反対側に配置された他方の縁部に沿って延びるとともに、円筒軸方向に垂直な方向に向かってフランジ状に張り出した部分として設けられている。
【0047】
また、各挟持部(19a、19b)には、それぞれ長孔状に形成された複数の縫合糸挿通孔20が設けられている。各縫合糸貫通孔20は、挟持部19(19a、19b)に挟み込まれて支持された組織代用合成繊維布100を縫合する縫合糸が挿通される貫通孔として設けられている。
【0048】
縫合糸挿通孔20は、各挟持部(19a、19b)において、円筒分割形状部材(17a、17b)の円筒軸方向と平行に直列に並ぶように配置されている。そして、挟持部19aに設けられた各縫合糸挿通孔20と挟持部19bに設けられた各縫合糸挿通孔20とは、互いに対向する位置で挟持部19にて貫通するように設けられている。
【0049】
保持機構13は、突起21と保持部材22とを備えて構成されている。突起21は、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)の一方の円筒分割形状部材17aに対して挟持部19aにおいて設けられている。そして、この突起21は、円筒分割形状部材17aの円筒軸方向における挟持部19aの一方の端部から円筒軸方向と平行に突出する部分として設けられている。
【0050】
また、保持部材22は、本実施形態では、周方向配置部材16である一対の円筒分割形状部材(17a、17b)に取り付けられる部材として構成されている。この保持部材22は、門型形状に形成され、矩形の枠体における1つの辺に対応する部分が欠落して開放された形状に形成されている。また、保持部材22は、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)の他方の円筒分割形状部材17bに対して、開放された部分に設けられた回転軸において、回転可能に支持されている。更に、この保持部材22は、円筒分割形状部材17bの挟持部19bに対して、円筒分割形状部材17bの円筒軸方向における挟持部19bの一方の端部において、上記の回転軸を介して回転可能に支持されている。尚、保持部材22及び突起21は、円筒分割形状部材(17a、17b)に対して円筒軸方向における同じ側の端部に設けられている。
【0051】
また、保持部材22の内側には、保持部材22が回転自在に支持される挟持部19bの端部との間において、突起21が挿入される空間が区画されている。そして、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)が円筒に組み合わされた状態で、保持部材22が、円筒分割形状部材17bの円筒軸方向に沿って突出した状態から円筒分割形状部材17bの端部に向かって倒れこむように回転することで、上記の空間に突起21が挿入される状態となる。これにより、保持部材22が突起21に係合することになる。
【0052】
そして、保持部材22は、上記のように突起21に係合することで、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)が円筒に組み合わされた状態を保持する。これにより、保持機構13は、組織代用合成繊維布100が周方向配置部材16によって軸状部材11aに押し付けられた状態で、保持部材22により、周方向配置部材16を介して組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するように構成されている。
【0053】
次に、人工股関節置換術において、術者が、手術装置1を用いることで、大腿骨コンポーネント101と軟部組織103とをシート状の組織代用合成繊維布100を介して結合する際に組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付ける作業について説明する。
【0054】
図6乃至
図9は、手術装置1によって組織代用合成繊維布100が筒状に巻かれた状態に成形される工程を説明するための図である。また、
図10は、筒状に巻かれた状態に成形された組織代用合成繊維布100を示す斜視図である。また、
図11及び
図12は、組織代用合成繊維布100が大腿骨コンポーネント101に対して巻かれた状態で取り付けられる工程を説明するための図である。
【0055】
図6(a)に示すように、自在に持ち運びが可能な巻き付け支持機構11がテーブル(図示を省略)の表面に載置される。そして、軸状部材11aと基台部14との間に、略長方形のシート状の組織代用合成繊維布100が挿入される。この状態において、
図6(b)に示すように、シート状の組織代用合成繊維布100が軸状部材11aの周囲に下方から巻き付けられる。そして、シート状の組織代用合成繊維布100における巻き付け方向の両端側が上方に引き出されるように配置される。
【0056】
上記の状態において、
図7に示すように、押し付け機構12及び保持機構13が、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)が円筒の内側を開放するように開いた状態で、軸状部材11aと基台部14との間に配置される。このとき、押し付け機構12及び保持機構13は、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)の円筒軸方向が軸状部材11aの円柱軸方向と平行となるように、配置される。
【0057】
上記の状態から、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)が、円筒に組み合わされて閉じた状態となるように、術者によって操作される。そして、このとき、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)は、軸状部材11aに対して筒状に巻き付けられた組織代用合成繊維布100を周方向に覆った状態で組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに押し付けるように、閉じられる。この状態で、術者によって、保持部材22が挟持部19bに対して回転するように操作され、保持部材22が挟持部19a側の突起21に係合することになる。これにより、組織代用合成繊維布100が周方向配置部材16によって軸状部材11aに押し付けられた状態で、保持部材22により、周方向配置部材16を介して組織代用合成繊維布100が軸状部材11aに対して保持される。
【0058】
上記の状態において、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、挟持部(19a、19b)で挟持された組織代用合成繊維布100が、各縫合糸挿通孔20から挿通される各縫合糸105によって縫合される。尚、
図8(a)は、周方向配置部材16によって組織代用合成繊維布100が外周側から軸状部材11aに押し付けられるとともに、保持部材22により周方向配置部材16を介して組織代用合成繊維布100が軸状部材11aに対して保持され、更に、縫合糸105によって組織代用合成繊維布100が筒状のまま縫合されて固定された状態を示す斜視図である。また、
図8(b)は、
図8(a)の側面図である。
【0059】
また、縫合糸105によって縫合された組織代用合成繊維布100において、挟持部(19a、19b)からはみ出した部分は不要となる。そこで、
図9(a)の斜視図及び
図9(b)の側面図に示すように、組織代用合成繊維布100における挟持部(19a、19b)からはみ出した部分が切除される。尚、組織代替用合成繊維布100における不要な部分が切除された状態では、筒状の組織代用合成繊維布100における巻き付け方向の両端部には、挟持部(19a、19b)に挟持されて縫合糸105で縫合された部分が、縁部分100aとして残っている。
【0060】
図9(a)及び
図9(b)に示す状態から、術者によって、保持部材22が挟持部19bに対して回転するように操作され、保持部材22の突起21に対する係合が解除される。次いで、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)が、円筒に組み合わされて閉じた状態から円筒の内側を開放するように開かれる。そして、組織代用合成繊維布100が軸状部材11aから抜き出されるように取り外される。これにより、
図10に示すように、筒状に巻かれた状態に成形された組織代用合成繊維布100が完成することになる。
【0061】
組織代用合成繊維布100が筒状に巻かれた状態に成形されると、この組織代用合成繊維布100が、大腿骨コンポーネント101に対して、
図11の矢印Bで示す方向に被せられる。また、大腿骨コンポーネント101には、貫通孔として形成された複数の縫着用孔101aが設けられている。筒状の組織代用合成繊維布100は、大腿骨コンポーネント101に対して被せられた状態で、組織代用合成繊維布100を貫通するとともに縫着用孔101aに挿通される縫合糸106(
図12(b)を参照)によって、大腿骨コンポーネント101に縫着されて固定される。
【0062】
図12は、筒状の組織代用合成繊維布100が、大腿骨コンポーネント101に被せられた状態で縫合糸106によって複数個所で大腿骨コンポーネント101に対して縫着されて固定された状態を示す斜視図である。尚、
図12(a)及び
図12(b)は、異なる角度から見た状態を示している。
図12(a)及び
図12(b)に示すように組織代用合成繊維布100が巻き付けられて取り付けられた大腿骨コンポーネント101は、大腿骨102に設置される。このとき、大腿骨コンポーネント101は、その本体部分よりも小径の軸状部分として設けられた遠位側の髄腔挿入部101bにおいて、大腿骨102の髄腔部に挿入され、大腿骨102に設置される。
【0063】
組織代用合成繊維布100が巻き付けられて取り付けられた大腿骨コンポーネント101が大腿骨102に設置されると、
図1に示すように、組織代用合成繊維布100に対して軟部組織103が縫合糸104によって縫着されて結合される。これにより、大腿骨用コンポーネント101と軟部組織103とが組織代用合成繊維布100を介して結合されることになる。
【0064】
以上説明したように、人工関節置換術用手術装置1によると、シート状の組織代用合成繊維布100は、軸状部材11aに筒状に巻き付けられた状態で周方向配置部材16によって外周側から押し付けられる。そして、その状態で、保持部材22によって、周方向配置部材16を介して、組織代用合成繊維布100が軸状部材11aに保持される。このため、組織代用合成繊維布100が軸状部材11aに巻かれた状態が容易に実現でき且つ維持されることになる。そして、その状態において、術者は、縫合糸105を用いて組織代用合成繊維布100を筒状に固定する作業を容易に行うことができる。組織代用合成繊維布100が筒状に固定されると、押し付け機構12及び保持機構13は取り外されることになる。
【0065】
組織代用合成繊維布100が筒状に固定された後は、筒状の組織代用合成繊維布100を軸状部材11aから抜き出すようにして外し、そのまま簡単に大腿骨コンポーネント101に対して被せて縫合糸106で固定することができる。よって、術者は、人工股関節置換術の際に、手術装置1を用いることで、シート状の組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0066】
また、手術装置1によると、組織代用合成繊維布100が大腿骨コンポーネント101に巻かれて取り付けられた状態が容易に実現できるため、作業の熟練がほとんど要求されず、作業時間の短時間化も図られることになる。このため、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、手術時間を短くすることもできる。
【0067】
従って、人工関節置換術用手術装置1によると、大腿骨コンポーネント101と軟部組織103とをシート状の組織代用合成繊維布100を介して結合する際に組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易にし、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、更に、手術時間を短くすることができる。
【0068】
また、人工関節置換術用手術装置1によると、軸状部材11aに対して筒状に巻きつけられた組織代用合成繊維布100を周方向に覆った状態で押し付ける周方向配置部材16が、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)として設けられる。このため、組織代用合成繊維布100を外周側から軸状部材11aに対して効率よく押し付ける構造を簡素な部材で容易に実現することができる。
【0069】
また、人工関節置換術用手術装置1によると、一対の円筒分割形状部材(17a、17b)がヒンジ部18によって開閉可能に連結される。このため、開いた状態の一対の円筒分割形状部材(17a、17b)を閉じる動作を行うだけで、軸状部材11aに対して筒状に巻きつけられた組織代用合成繊維布100を周方向に覆った状態で押し付ける作業を更に容易に行うことができる。
【0070】
また、人工関節置換術用手術装置1によると、保持機構13が一対の円筒分割形状部材(17a、17b)の一方の突起21と他方に回転自在に支持されて突起21に係合する保持部材22とで構成される。このため、周方向配置部材16を介して組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持する機構を簡素な部材で容易に実現することができる。
【0071】
また、人工関節置換術用手術装置1によると、組織代用合成繊維布100における巻き付け方向の両端の縁部分側が、周方向配置部材16の挟持部(19a、19b)によって挟み込まれるように支持される。そして、この状態で、挟持部(19a、19b)に形成された縫合糸挿通孔20に挿通される縫合糸105によって組織代用合成繊維布100が縫合される。よって、術者は、軸状部材11aに筒状に巻き付けられて保持された状態の組織代用合成繊維布100を縫合糸105によって固定する作業を更に容易に行うことができる。
【0072】
また、人工関節置換術用手術装置1によると、巻き付け支持機構11の支持台11bに片持ち状に支持された軸状部材11aに対して、シート状の組織代用合成繊維布100が巻き付けられる。このため、術者は、支持台11bにて安定して支持された軸状部材11aに対して組織代用合成繊維布100の巻き付け作業を行うことができ、組織代用合成繊維布100の巻き付け作業が更に容易となる。
【0073】
〔第2実施形態〕
次に、本
発明の第2実施形態に係る人工関節置換術用手術装置について説明する。
図13は、本
発明の第2実施形態に係る人工関節置換術用手術装置2(以下、単に「手術装置2」ともいう)を示す斜視図である。
図14は、手術装置2の正面図(
図14(a))及び側面図(
図14(b))である。
図15は、手術装置2の斜視図であって、
図13とは異なる状態を示す図である。
図16は、
図15に示す手術装置の正面図(
図16(a))及び側面図(
図16(b))である。
【0074】
図13乃至
図16に示す手術装置2は、第1実施形態の手術装置1と同様に、人工股関節置換術において、大腿骨コンポーネント101と軟部組織103とをシート状の組織代用合成繊維布100を介して結合する際に組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付けるために用いられる。尚、以下の手術装置2についての説明においては、第1実施形態と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことにより、そして、符号或いは説明を引用することにより、適宜説明を省略する。
【0075】
図13乃至
図16に示す手術装置2は、巻き付け支持機構11、押し付け機構23、及び保持機構24を備えて構成されている。尚、
図13乃至
図16では、巻き付け支持機構11の図示を省略している。巻き付け支持機構11、押し付け機構23、及び保持機構24は、医療機器の素材としての認可承認を得たステンレス鋼、チタン合金、コバルトクロム合金などの金属材料により形成されている。
【0076】
図13乃至
図16に示す押し付け機構23は、周方向配置部材25及びヒンジ部18を備えて構成されている。周方向配置部材25は、軸状部材11aに対して略正方形又は略長方形のシート状の組織代用合成繊維布100が筒状に巻き付けられた状態で、筒状の組織代用合成繊維布100の周方向に亘って配置される部材として設けられている。そして、押し付け機構23は、この周方向配置部材25によって組織代用合成繊維布100を外周側から軸状部材11aに対して押し付ける機構として構成されている。
【0077】
また、周方向配置部材25は、組み合わされることで円筒を構成するように分割された形状の部分を有する一対の開閉部材(26a、26b)として設けられている。この一対の開閉部材(26a、26b)は、円筒が円筒軸方向に平行な面で半分に分割された形状に形成されている。そして、一対の開閉部材(26a、26b)は、円筒を構成するように組み合わされた状態であって、軸状部材11aに対して筒状に巻き付けられた組織代用合成繊維布100を周方向に覆った状態で、組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して押し付けることになる。
【0078】
また、一対開閉部材(26a、26b)は、第1実施形態における一対の円筒分割形状部材(17a、17b)と同様に構成される部分を有しており、第1実施形態と同様にヒンジ部18を介して連結されている。これにより、一対の開閉部材(26a、26b)は、円筒状に配置される閉鎖状態と、閉鎖状態において円筒状に配置される部分が開くように配置される開放状態と、の間で開閉駆動されるように構成されている。尚、
図13及び
図14は、閉鎖状態である一対の開閉部材(26a、26b)を示しており、
図15及び
図16は、開放状態である一対の開閉部材(26a26b)を示している。
【0079】
保持機構24は、一対のレバー(27a、27b)と、一対のレバー(27a、27b)を付勢するバネ部材としての保持部材28とを備えて構成されている。一対のレバー(27a、27b)は、平行に延びる丸棒状の部分として設けられている。
【0080】
そして、一対のレバー(27a、27b)のうちの一方のレバー27aは、一対の開閉部材(26a、26b)のうちの一方の開閉部材26aに対して、開閉部材26aの一部である連結部分29aにて、一体に連結されている。また、一対のレバー(27a、27b)のうちの他方のレバー27bは、一対の開閉部材(26a、26b)のうちの他方の開閉部材26bに対して、開閉部材26bの一部である連結部分29bにて、一体に連結されている。尚、各連結部分(29a、29b)は、各開閉部材(26a、26b)においてその円筒軸方向における一方の端部側に配置されている。そして、各レバー(27a、27b)は、各連結部分(29a、29b)から、各開閉部材(26a、26b)の円筒軸方向と平行に片持ち状に突出して設けられている。
【0081】
保持部材28は、コイル状のバネ部材として設けられ、連結部分(29a、29b)の間に配置されている。そして、保持部材28は、ヒンジ部18の回転軸周りでコイル状に巻かれたバネ部材としての一端側が連結部分29aに係止し、他端側が連結部分29bに係止している。これにより、保持部材28は、連結部分(29a、29b)を介して、連結部分(29a、29b)に一体に設けられたレバー(27a、27b)を互いに離間する方向に付勢するように構成されている。
【0082】
上記により、手術装置2においては、保持部材28によって一対のレバー(27a、27b)が互いに離間する方向に付勢されることで、一対の開閉部材(26a、26b)における開閉動作を行う本体部分が、閉鎖状態となる方向に付勢されるように構成されている。そして、保持機構24は、組織代用合成繊維布100が周方向配置部材25によって軸状部材11aに押し付けられた状態で、保持部材28により、周方向配置部材25を介して組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するように構成されている。即ち、バネ部材としての保持部材28は、そのバネ力によって、周方向配置部材25を介して組織代替用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するように構成されている。
【0083】
この手術装置2では、周方向配置部材25によって組織代用合成繊維布100が外周側から軸状部材11aに押し付けられるとともに、保持部材28により周方向配置部材25を介して組織代用合成繊維布100が軸状部材11aに対して保持される。そして、その状態において、縫合糸105によって組織代用合成繊維布100が筒状のまま縫合され、更に、組織代用合成繊維布100における挟持部(19a、19b)からはみ出した不要な部分が切除される。手術装置2を用いて組織代用合成繊維布100が筒状に巻かれた状態に成形されると、術者は、保持部材28のバネ力に抗して一対のレバー(27a、27b)を互いに接近させる方向に操作する。これにより、一対の開閉部材(26a、26b)が開放状態となるように駆動され、組織代用合成繊維布100が軸状部材11aから抜き出して取り外すことが可能となる。
【0084】
以上説明した人工関節置換術用手術装置2によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。即ち、人工関節置換術用手術装置2によると、大腿骨コンポーネント101と軟部組織103とをシート状の組織代用合成繊維布100を介して結合する際に組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易にし、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、更に、手術時間を短くすることができる。
【0085】
また、人工関節置換術用手術装置2によると、保持部材28が、バネ力によって組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するバネ部材として構成される。このため、術者の操作に基づいて保持部材28が弾性変形することで、容易に組織代用合成繊維布100を保持可能な状態となり、更に、弾性変形させる操作を解除することで、バネ力が作用可能な安定した状態で組織代用合成繊維布100を保持することができる。よって、操作が容易で組織代用合成繊維布100の安定した保持が可能な保持部材28を実現することができる。
【0086】
また、人工関節置換術用手術装置2によると、術者は、周方向配置部材25を構成する一対の開閉部材(26a、26b)にそれぞれ設けられた一対のレバー(27a、27b)をバネ部材である保持部材28のバネ力に抗して操作することで、一対の開閉部材(26a、26b)を開放状態とし、容易に組織代用合成繊維布100を保持可能な状態にできる。そして、一対のレバー(27a、27b)の操作を解除することで、一対の開閉部材(26a、26b)がバネ力によって閉鎖状態となり、バネ力が作用可能な安定した状態で組織代用合成繊維布100を保持することができる。よって、レバー(27a、27b)によって容易に操作が可能であって、バネ力によって組織代用合成繊維布100を安定して保持できる保持機構24を実現することができる。
【0087】
〔第3実施形態〕
次に、本
発明の第3実施形態に係る人工関節置換術用手術装置について説明する。
図17は、本
発明の第3実施形態に係る人工関節置換術用手術装置3(以下、単に「手術装置3」ともいう)を示す斜視図である。
図18は、手術装置3の左側面図(
図18(a))、正面図(
図18(b))及び右側面図(
図18(c))である。
【0088】
図17及び
図18に示す手術装置3は、第1実施形態の手術装置1と同様に、人工股関節置換術において、大腿骨コンポーネント101と軟部組織103とをシート状の組織代用合成繊維布100を介して結合する際に組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付けるために用いられる。尚、以下の手術装置3についての説明においては、第1実施形態と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことにより、そして、符号或いは説明を引用することにより、適宜説明を省略する。
【0089】
図17及び
図18に示す手術装置3は、巻き付け支持機構11、押し付け機構30、及び保持機構31を備えて構成されている。尚、
図17及び
図18では、巻き付け支持機構11の図示を省略している。巻き付け支持機構11、押し付け機構30、及び保持機構31は、医療機器の素材としての認可承認を得たステンレス鋼、チタン合金、コバルトクロム合金などの金属材料により形成されている。また、手術装置3は、押し付け機構30及び保持機構31が、共通する同一の部材によって構成されている。
【0090】
押し付け機構30は、周方向配置部材32を備えて構成されている。そして、保持機構31は、周方向配置部材32によって構成された保持部材32を備えて構成されている。即ち、周方向配置部材32及び保持部材32は、共通する同一の部材32として構成されている。以下、部材32について、周方向配置部材32としての構成と保持部材32としての構成を説明する。
【0091】
周方向配置部材32は、1カ所が開放された筒状に湾曲して形成された部分を有する部材として設けられている。そして、この周方向配置部材32は、軸状部材11aに対して略正方形又は略長方形のシート状の組織代用合成繊維布100が筒状に巻き付けられた状態で、筒状の組織代用合成繊維布100の周方向に亘って配置される部材として設けられている。また、押し付け機構30は、この周方向配置部材32によって組織代用合成繊維布100を外周側から軸状部材11aに対して押し付ける機構として構成されている。
【0092】
保持部材32は、1カ所が開放された筒状に湾曲して形成された部分を有するバネ部材として設けられている。そして、保持機構31は、組織代用合成繊維布100が周方向配置部材32によって軸状部材11aに押し付けられた状態で、周方向配置部材32でもある保持部材32により、組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するように構成されている。また、バネ部材としての保持部材32は、拡径した後に弾性回復するバネ力によって縮径することで、周方向配置部材32を介して組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するように構成されている。
【0093】
この手術装置3では、周方向配置部材32によって組織代用合成繊維布100が外周側から軸状部材11aに押し付けられるとともに、周方向配置部材32でもある保持部材32により組織代用合成繊維布100が軸状部材11aに対して保持される。そして、その状態において、縫合糸105によって組織代用合成繊維布100が筒状のまま縫合される。手術装置3を用いて組織代用合成繊維布100が筒状に巻かれた状態に成形されると、術者は、保持部材32のバネ力に抗してこの保持部材32を少し拡径させるように操作する。これにより、保持部材32が、巻き付け支持機構11から取り外され、組織代用合成繊維布100が軸状部材11aから抜き出して取り外すことが可能となる。尚、術者は、保持部材32を拡径させるように操作する際には、保持部材32の開放された部分における両方の端部にそれぞれ設けられたつまみ操作部(32a、32b)を指でつまむようにして操作することになる。
【0094】
以上説明した人工関節置換術用手術装置3によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。即ち、人工関節置換術用手術装置3によると、大腿骨コンポーネント101と軟部組織103とをシート状の組織代用合成繊維布100を介して結合する際に組織代用合成繊維布100を大腿骨コンポーネント101に対して巻き付けた状態で取り付ける作業を容易にし、術者の熟練度によって作業結果に影響が生じてしまうことを抑制し、更に、手術時間を短くすることができる。
【0095】
また、人工関節置換術用手術装置3によると、保持部材32が、バネ力によって組織代用合成繊維布100を軸状部材11aに対して保持するバネ部材として構成される。このため、術者の操作に基づいて保持部材32が弾性変形することで、容易に組織代用合成繊維布100を保持可能な状態となり、更に、弾性変形させる操作を解除することで、バネ力が作用可能な安定した状態で組織代用合成繊維布100を保持することができる。よって、操作が容易で組織代用合成繊維布100の安定した保持が可能な保持部材32を実現することができる。
【0096】
また、人工関節置換術用手術装置3によると、バネ部材としての保持部材32が、1カ所が開放された筒状に湾曲して形成された部分を有して拡縮動作を行うことで作動する周方向配置部材32として構成される。このため、周方向配置部材32と保持部材32とが共通化されるため、部材点数の削減と構成の簡素化を図ることができる。
【0097】
以上、本
発明の実施形態について説明したが、本
発明は前述の実施の形態に限られるものではなく、
特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0098】
(1)第1乃至第3実施形態では、人工股関節置換術において用いられる人工関節置換術用手術装置を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。本
発明の人工関節置換術用手術装置が、人工股関節置換術以外の人工関節置換術、例えば、人工肩関節置換術或いは人工膝関節置換術において用いられる人工関節置換術用手術装置として実施されてもよい。
【0099】
(2)第1乃至第3実施形態では、軸状部材が設けられた巻き付け支持機構を備える人工関節置換術用手術装置を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。軸状部材が設けられない場合、押し付け機構は、人工関節用コンポーネントに対して組織代用合成繊維布が筒状に巻き付けられた状態で、筒状の組織代用合成繊維布の周方向に亘って配置される周方向配置部材を有するとともに周方向配置部材によって組織代用合成繊維布を外周側から人工関節用コンポーネントに対して押し付ける機構として構成される。そして、保持機構は、周方向配置部材に取り付けられる部材として構成され又は周方向配置部材によって構成された保持部材を有し、組織代用合成繊維布が周方向配置部材によって人工関節用コンポーネントに押し付けられた状態で、保持部材により、周方向配置部材を介して組織代用合成繊維布を人工関節用コンポーネントに対して保持する機構として構成される。
【0100】
(3)軸状部材が、人工関節用コンポーネントの配置等を術者が検討する際に用いられるトライアル部材として構成されていてもよい。この場合、巻き付け支持機構が、トライアル部材としての軸状部材を着脱自在に支持する支持台を備えて構成されていてもよい。
【0101】
(4)第1実施形態において、周方向配置部材である一対の円筒分割形状部材が、ヒンジ部で連結されておらず、一対の分離した状態の部材として構成されていてもよい。また、第1実施形態において、保持部材が、周方向配置部材に対して着脱自在に取り付けられる部材として構成されていてもよい。
【0102】
(5)第2実施形態において、一対の開閉部材が、環状に配置される閉鎖状態と、閉鎖状態において環状に配置される部分が開くように配置される開放状態と、の間で開閉駆動されるように構成されていてもよい。
【0103】
(6)第3実施形態において、周方向配置部材によって構成される保持部材が、1カ所が開放された環状に湾曲して形成された部分を有するバネ部材として設けられていてもよい。