(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747118
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】トラクターの操向装置
(51)【国際特許分類】
B62D 7/16 20060101AFI20150618BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
B62D7/16
A01B69/00 302
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-500990(P2014-500990)
(86)(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公表番号】特表2014-513000(P2014-513000A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】KR2012001961
(87)【国際公開番号】WO2012128525
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2013年9月19日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0025876
(32)【優先日】2011年3月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511014910
【氏名又は名称】デホ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンホ
【審査官】
重田 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特公平06−008110(JP,B2)
【文献】
特開平07−172339(JP,A)
【文献】
特開平08−154419(JP,A)
【文献】
特開2006−248267(JP,A)
【文献】
実開昭64−24627(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 7/16
A01B 69/00
B62D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受ける操向シリンダーによってトラクターの前輪を旋回させる操向装置において、
前記操向シリンダーは操向シリンダー本体と前記操向シリンダー本体から左右に伸縮する左右一対のシリンダーロッドとを持ち、前輪車軸ハウジングに平行な方向に一定の間隔を置いて設置され、
前記操向シリンダーに平行な方向に両端がそれぞれ前記シリンダーロッドの両端部と固定結合された案内レールが設置され、
前記案内レールは一面に一定の長さだけ陥没した部分を持ち、前記陥没した部分を外れた陥没しなかった両側境界面には突出部がそれぞれ形成され、
前記シリンダロッドが左右に移動されることにより、前記案内レールも左右に移動され、
前記案内レールの左側と右側に形成された突出部によって前記操向シリンダーの左側と右側に操向角度を区分して感知するようにしたことを特徴とする、トラクターの操向装置。
【請求項2】
前記左右一対のシリンダーロッドの両端部がそれぞれスイングリンクとヒンジ結合され、
前記操向シリンダーの伸縮動作によって左右にスイングする4節リンク構造を提供することで、前記前輪が操向されるようにし、
一端が前記前輪車軸ハウジングにヒンジ結合され、他端が前記操向シリンダー本体にヒンジ結合された固定リンクが備えられ、前記操向シリンダーが作動するとき、前記操向シリンダーが左右に移動しないが前後方向には一定の長さだけ移動できるようにした構造となったことを特徴とする、請求項1に記載のトラクターの操向装置。
【請求項3】
前記固定リンクは上下の二つから形成され、その一つは前記前輪車軸ハウジング及び操向シリンダー本体の上部にそれぞれヒンジ結合され、他の一つは前記前輪車軸ハウジング及び操向シリンダー本体の下部にそれぞれヒンジ結合されることを特徴とする、請求項2に記載のトラクターの操向装置。
【請求項4】
前記4節リンク構造の左右側にそれぞれ第2の4節リンク構造をさらに備え、
前記第2の4節リンク構造は、前記スイングリンクと;前記前輪車軸ハウジングの端部に設置されて前記前輪を旋回させるスイングアームと;前記スイングアームに一端がヒンジ結合され、他端が前記スイングリンクにヒンジ結合されたロッドリンクと;からなって4節リンク構造をなすようにしたことを特徴とする、請求項2に記載のトラクターの操向装置。
【請求項5】
前記操向シリンダーが作動されて左側または右側方向に一定の範囲以上の操向角度が感知されれば、前記前輪及び後輪を同一回転数で駆動させる4輪駆動方式を前記前輪及び後輪の回転数の差を調節する差動式4輪駆動方式に切り換えるようにすることを特徴とする、請求項1に記載のトラクターの操向装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクターの前輪を旋回させるトラクターの操向装置に係り、より詳しくは運転者の操向ハンドルの操作によって前記トラクターの前輪が前記トラクターの前方の垂直方向以上にまたは垂直方向に近く旋回して操向されるようにすることで、前記トラクターが定位置で旋回可能になり、狭小な場所や定位置で旋回する必要がある作業などの多様な作業を可能にするために、前記前輪の操向角度をより大きくし、前記前輪がより滑らかに旋回することができるようにするトラクターの操向装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクターは牽引力を用いて農業または建設分野で各種の作業を行う作業用自動車であり、現在農業用トラクターは前方に前方ローダーを設置し、そのローダーに各種の作業用アタッチメントを装着して運搬、荷降ろし、荷積みなどの各種の作業を遂行し、後方部には後方リンクを介してロータベータなどを装着して耕土などの作業を行うことが一般的である。
【0003】
前記のような農業用トラクターは、エンジンで発生した動力をトランスミッションを介して走行に必要な車輪を駆動させる走行系動力と、トラクターに装着される多様な種類の作業器を駆動させるためのPTO(Power take off)系動力とに区分される。前記走行系動力は4輪駆動方式が一般的である。
【0004】
従来のトラクターは、前記前輪が運転者が操向ハンドルを時計方向及び反時計方向に回転させることで、操向装置によって左右に旋回する構造となっている。前記前輪車軸が前記前輪と直接結合される方式には、前記操向ハンドルを最大に回転させるとき、前記前輪の旋回角度が60度以上に旋回することができないため、前記操向ハンドルを最大に回転させても、前記トラクターの最小回転半径が大きくなってトラクターを後方に方向転換しようとするときの前後進を頻繁に行わなければならない問題点があった。
【0005】
前記のようなトラクターは、作業環境または作業内容によってトラクターを走行または旋回しなければならないが、前記のようにトラクターの最小回転半径が長いため、狭小な場所や定位置で旋回する必要がある場合、これに対応することができなく、これによって円滑な作業ができない問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、本発明は、運転者の操向ハンドルの操作によって前記トラクターの前輪が前記トラクター前方の垂直方向以上にまたは垂直方向に近く旋回して操向されるようにすることで、前記トラクターが定位置で旋回可能になり、狭小な場所や定位置で旋回する必要がある作業などの多様な作業を可能にするために、前記前輪の操向角度をより大きくし、前記前輪をより滑らかに旋回することができるようにするトラクターの操向装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するためのトラクターの操向装置は、運転者の操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受ける操向シリンダーによってトラクターの前輪を旋回させる操向装置において、前記操向シリンダーは操向シリンダー本体と前記操向シリンダー本体から左右に伸縮する左右一対のシリンダーロッドとを持ち、前輪車軸ハウジングに平行な方向に一定の間隔を置いて設置され、
前記操向シリンダーに平行な方向に両端がそれぞれ前記シリンダーロッドの両端部と固定結合された案内レールが設置され、前記案内レールは一面に一定の長さだけ陥没した部分を持ち、前記陥没した部分を外れた陥没しなかった両側境界面には突出部がそれぞれ形成され、前記シリンダロッドが左右に移動されることにより、前記案内レールも左右に移動され、前記案内レールの左側と右側に形成された突出部によって前記操向シリンダーの左側と右側に操向角度を区分して感知するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記
左右一対のシリンダーロッドの両端部がそれぞれスイングリンクとヒンジ結合され、前記操向シリンダーの伸縮動作によって左右にスイングする4節リンク構造を提供することで、前記前輪が操向されるようにし、一端が前記前輪車軸ハウジングにヒンジ結合され、他端が前記操向シリンダー本体にヒンジ結合された固定リンクが備えられ、前記操向シリンダーが作動するとき、前記操向シリンダーが左右に移動しないが前後方向には一定の長さだけ移動できるようにした構造となったことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記
固定リンクが上下の二つから形成され、その一つは前記前輪車軸ハウジング及び操向シリンダー本体の上部にそれぞれヒンジ結合され、他の一つは前記前輪車軸ハウジング及び操向シリンダー本体の下部にそれぞれヒンジ結合されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記
4節リンク構造の左右側にそれぞれ第2の4節リンク構造をさらに備え、前記第2の4節リンク構造は、前記スイングリンクと;前記前輪車軸ハウジングの端部に設置されて前記前輪を旋回させるスイングアームと;前記スイングアームに一端がヒンジ結合され、他端が前記スイングリンクにヒンジ結合されたロッドリンクと;からなって4節リンク構造をなすようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記操向シリンダー
が作動されて左側または右側方向に一定の範囲以上の操向角度が感知されれば、前記前輪及び後輪を同一回転数で駆動させる4輪駆動方式を前記前輪及び後輪の回転数の差を調節する差動式4輪駆動方式に切り換えるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるトラクターの操向装置は、運転者の操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受ける操向シリンダーによってトラクターの前輪を旋回させる操向装置において、前記操向シリンダーの左右一対のシリンダーロッドの両端部に4節リンク構造をなして前記前輪が操向できるようにし、前輪車軸ハウジング及び前記操向シリンダー本体にヒンジ結合された固定リンクを備え、前記操向シリンダーが作動するときに前記操向シリンダーが左右に移動しなくて前後方向には一定の長さだけ移動可能な構造をなすことによって、前記前輪が前記トラクターの前方の垂直方向以上にまたは垂直方向に近く旋回して操向されても前記操向シリンダーのシリンダーロッドの撓みを防止することができ、これにより前記前輪の操向角度をより大きくし、前記前輪がより滑らかに旋回することができる効果がある。
【0016】
また、本発明は、運転者の操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受ける操向シリンダーによってトラクターの前輪を旋回させる操向装置において、前記操向シリンダーが作動した一定の範囲の操向角度を簡単な構造で自動で感知することにより、前記操向シリンダーの操向角度が一定の範囲以上となれば前記前輪及び後輪の駆動方式をAWD(All wheel Drive)駆動方式に切り換えることができるようにして、前記前輪が前記トラクター前方の垂直方向以上にまたは垂直方向に近く旋回して前記トラクターが定位置で旋回するときにも前記前輪が前記後輪の旋回動作によって前方に押されなくなり、これによって前記トラクターがより滑らかに旋回することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用されるトラクターの一実施例の全体斜視図である。
【
図2】本発明が適用されるトラクターの一要部の平面図である。
【
図3】本発明によるトラクターの操向装置を説明するための正面図である。
【
図4】本発明において前輪部の駆動装置の詳細図である。
【
図5】本発明において前輪が時計方向に最大に操向されたときの平面図である。
【
図6】本発明において案内レールの設置平面図及び正面図である。
【
図7】本発明において案内レールが右側及び左側に移動するときの状態を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるトラクターについて添付図面を参照して具体的に説明すれば次のようである。
【0019】
本発明が適用されるトラクターの一実施例は、
図1に示すように、運転席がある運転キャップ10が車体フレーム30の上部左側に位置し、回転可能な旋回軸41と結合して旋回することができる屈折アーム40が前記運転キャップ10が設置されなかった空間に配置されて均衡をなしている。すなわち、前記運転キャップ10はトラクターの前輪21と後輪22との間に位置するとともに左側に配置され、前記運転キャップ10の側面には一定の空間が形成され、前記一定の空間には、前記屈折アーム40で作業しない場合、前記屈折アーム40が配置される構造となっている。
【0020】
また、車体フレーム30の前方には、運転者の操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受けて左右に伸縮する左右一対のシリンダーロッド72を持つ操向シリンダー71が前輪車軸53を収容している前輪車軸ハウジング50の前方に設置され、前記前輪車軸53は前記前輪21の上面の高さの上方に配置されている。
【0021】
本発明によるトラクターの操向装置は、
図1に示している運転キャップ10、屈折アーム40などからなった構造に限定されるものではない。
【0022】
本発明によるトラクターの操向装置の一実施例について
図2〜
図5を参照して説明すれば次のようである。
【0023】
本発明によるトラクターの操向装置はトラクターの前輪21を時計方向または反時計方向に操向する操向装置であり、前輪車軸53を収容している前輪車軸ハウジング50の前方に設置されている。
【0024】
前記操向装置は、運転者の操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受けて左右に伸縮する左右一対のシリンダーロッド72を持つ操向シリンダー71が前輪車軸ハウジング50の前方に前記前輪車軸ハウジング50に平行な方向に一定の間隔を置いて設置され、前記左右一対のシリンダーロッド72の両端部がそれぞれスイングリンク73とヒンジ結合されて4節リンクの構造を持つ。前記4節リンク構造の左右側にはそれぞれ第2の4節リンク構造を提供することで、前記前輪が前記前輪の操向角度をより大きくし、前記前輪がより滑らかに旋回することができる。
【0025】
前記4節リンク構造は、前記左右一対のスイングリンク73の一端が前輪車軸ハウジング50にヒンジ結合され、他端は前記左右一対のシリンダーロッド72の両端部にヒンジ結合されることにより、前記左右一対のシリンダーロッド72が伸縮して左右に移動することによって前記左右一対のスイングリンク73が左右にスイングすることができる構造となっている。
【0026】
前記第2の4節リンク構造は、前記スイングリンク73と、前記前輪車軸ハウジング50の端部に設置されて前記前輪を旋回させるスイングアーム75と、前記スイングアーム75に一端がヒンジ結合され、他端が前記スイングアーム75にヒンジ結合されたロッドリンク74とからなっている、
【0027】
前記のように、前記左右一対のシリンダーロッド72を持つ操向シリンダー71と一対のスイングリンク73によって4節リンク構造とからなった第1の4節リンク構造に加え、左右側にそれぞれ第2の4節リンクをさらに設置することで、より大きな角度(70〜110度)に前記前輪21が操向されるようになり、また前記前輪21の操向の際、旋回方向側の前輪は操向角が大きくなり、旋回反対側の前輪は操向角を小さくすることができるので、より柔らかい旋回が可能となる。
【0028】
また、前記操向装置が時計方向または反時計方向に最大角度(70〜110度)に操向されるとき、前記前輪21が前記前輪車軸53及び前記前輪車軸を収容する前輪車軸ハウジング50によって干渉されないように、
図3に示すように、前記前輪車軸53及び前記前輪車軸ハウジング50を前記前輪21の上面高さの上方に配置する。この場合、前記前輪車軸53が前記前輪21に動力を伝達する形状は、
図3及び
図5に示すように、逆“U”字形となる。
【0029】
前記前輪車軸53及び前記前輪車軸ハウジング50を前記前輪21の上面高さの上方に配置したとき、前記前輪21が回転駆動される構造を
図4を参照して説明すれば次のようである。
【0030】
図4に示すように、前記前輪差動歯車51から伝達された動力が左右の前輪車軸53に水平方向に伝達される。この際、前記前輪車軸53の端部に傘歯車63、64が設置されることによって、前記前輪車軸53に伝達された動力が垂直方向に作用するように変換させるようにする。前記傘歯車64から下方に延びた傘歯車軸65はその下端部に傘歯車66が設置され、前記傘歯車66に前記前輪21を回転させるための回転駆動部67にギア結合されることによって前記回転駆動部67が回転する構造となっており、前記回転駆動部67は前輪軸結合部68内に収容されている。
【0031】
前記前輪車軸ハウジング50の一端部にフランジ結合されて前記傘歯車63、64を保護し、外部からの異物流入を防止するためのギア部ハウジング61が設置され、前記ギア部ハウジング61の下部には、操向装置の作動によって回転可能な構造として、前記ギア部ハウジング61の下部に結合されたスイングハウジング62が設置されている。前記スイングハウジング62には前記傘歯車軸65、前記傘歯車66及び回転駆動部67が収容される。
【0032】
前記前輪21は、タイヤの内径部にホイールフレーム21aが設置され、前記ホイールフレーム21aの中央部にはホイール回転軸21bが設置され、前記ホイール回転軸21bが前記回転駆動部67と軸結合され、前記回転駆動部67が回転することによって前記前輪21が回転駆動するようになるものである。
【0033】
一方、前記操向シリンダー71は、
図2及び
図3に示すように、一端が前記前輪車軸ハウジング50にヒンジ結合され、他端が前記操向シリンダー71の本体にヒンジ結合された固定リンク81を備え、前記操向シリンダー71が作動するとき、前記操向シリンダー71が左右に移動しないが前後方向には一定の長さだけ移動が可能である構造となっている。すなわち、前記固定リンク81は一端[ヒンジ結合部81a]が前記前輪車軸ハウジング50の一側に固定設置された固定ブラケット82の端部にヒンジ結合され、他端[ヒンジ結合部81b]は前記操向シリンダー71の本体の一側にヒンジ結合されることで、前記操向シリンダー71が左右に移動しないが前後方向には一定の長さだけ移動できるようになったものである。
【0034】
また、前記固定リンク81は、前記前輪車軸ハウジング50と前記操向シリンダー71の結合をより確かにするために、上下の二つで構成され、その一つは前記前輪車軸ハウジング50及び前記操向シリンダー71の本体上部にそれぞれヒンジ結合され、他の一つは前記前輪車軸ハウジング50及び前記操向シリンダー71の本体下部にそれぞれヒンジ結合されるようにすることができる。
【0035】
前記のような構造を提供することにより、本発明によるトラクターの操向装置は、前記前輪21のキャンバ角(camber angle)によって発生する傾動を前記左右側に形成された4節リンク及び第2の4節リンクの構造が柔軟に対応することができ、前記前輪が前記トラクターの前方の垂直方向以上にまたは垂直方向に近く旋回して操向されても、前記操向シリンダー71のシリンダーロッド72の撓みを防止することができ、これにより前記前輪21の操向角度をより大きくし、前記前輪21がより滑らかに旋回することができるようになる利点がある。
【0036】
前記のようなトラクターの操向装置において、運転者が操向ハンドルを時計方向に最大に回転させたときは
図4のような状態となる。
【0037】
図4に示すように、運転者が操向ハンドルを時計方向に最大に回転させれば、前記前輪21の内側輪(
図7の左側輪)は90度以上(90〜105度)に旋回するようになり、外側輪(
図7の右側輪)は90度未満(80〜89度)まで旋回することができるようになる。前記前輪21の内側輪(
図7の左側輪及び
図8の右側輪)の旋回角度は、前記外側輪(
図7の右側輪及び
図8の左側輪)とともに操向装置によって旋回するものなので、前記外側輪が旋回可能な最大旋回角度によって決定される。
【0038】
前記内側輪と前記外側輪の最大旋回角度は前記トラクターが定位置で最小半径で旋回することができる角度に制限することが好ましい。すなわち、トラクターの前記前輪21及び後輪22の輪幅及び長さなどによって前記トラクターが定位置で最小半径で旋回することができる前記前輪21の旋回角度が決定される。したがって、前記前輪21の内側輪の旋回角度を直線走行状態で90〜105度の特定角度に制限し、前記前輪21の外側輪の最大旋回角度は直線走行状態で80〜89度の特定角度に制限することが好ましい。
【0039】
このようにする場合、運転者が自分が望む方向(時計方向または反時計方向)に定位置で旋回しようとする場合、前記操向ハンドルを自分が望む方向(時計方向または反時計方向)に最大に回転させた後にトラクターを走行させれば、前記トラクターが自分が望む方向に定位置で旋回することができるようになるものである。
【0040】
一方、本発明によるトラクターの操向装置において、前記操向シリンダーの操向角度を感知する装置について
図6及び
図7を参照して説明すれば次のようである。
【0041】
本発明によるトラクターの操向装置において、前記操向シリンダー71の操向角度を感知する装置は
図6(a)(平面図)及び
図6(b)(トラクターの前方から見た正面図)に示すように、前記操向シリンダー71に平行な方向に両端がそれぞれ前記シリンダーロッド72の両端部に固定結合された案内レール91が設置され、前記シリンダーロッド72が前記操向シリンダー71の作動によって左右に移動することによって前記案内レール91も移動する構造となっており、前記案内レール91の中央部には前記案内レール91が揺れることを防止するためのガイドが設置され、前記案内レール91の移動範囲を感知する感知部92が前記操向シリンダー71に固定設置されている。
【0042】
前記案内レール91は、一面に一定の長さだけ陷沒した部分を持ち、前記陷沒した部分を外れた陷沒しなかった両側境界面には突出部91a、91bがそれぞれ形成されている。前記感知部92の内部には前記案内レール91の一面に接するリミットスイッチ92aが設置され、前記案内レール91が移動する場合、前記リミットスイッチ92aが前記陷沒した部分を通るときと前記陷沒した部分を脱するときの信号を感知して、前記操向シリンダー71が作動した一定の範囲の操向角度を感知するようにする。
図6及び
図7においては、前記案内レール91の移動範囲を感知する感知手段としてリミットスイッチ92aを使っているが、前記案内レール91の移動範囲を感知する感知手段であればいずれのものを使ってもかまわない。
【0043】
前記のような前記操向シリンダー71の操向角度を感知する装置において、前記操向シリンダー71の操向角度を感知する過程を
図7(a)及び
図7(b)に基づいて説明すれば次のようである。
【0044】
図7(a)は、運転者が操向ハンドルを時計方向に一定の範囲で操向した場合、前記運転者が操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受けた操向シリンダー71がシリンダーロッド72の左側を伸張させるとともに前記シリンダーロッド72の右側を収縮させながら移動し、前記シリンダーロッド72の移動によって両端がそれぞれ前記シリンダーロッド72の両端部に固定結合された前記案内レール91が左側に移動した状態を示すものである。前記案内レール91が左側に移動するとき、前記案内レール91の一面に接触するリミットスイッチ92aが前記案内レール91の陷沒した部分と接していて陷沒しなかった境界面である突出部91aに接触するようになる。この際、前記リミットスイッチ92aは前記案内レール91が一定の範囲以上に移動したという信号(ON/OFF)を発生させて感知部92に伝達する。
【0045】
図7(b)は、運転者が操向ハンドルを反時計方向に一定の範囲に操向した場合、前記運転者が操向ハンドルの操作によって操向された操向力を油圧として受けた操向シリンダー71がシリンダーロッド72の右側を伸張させるとともに前記シリンダーロッド72の左側を収縮させながら移動し、前記シリンダーロッド72の移動によって両端がそれぞれ前記シリンダーロッド72の両端部に固定結合された前記案内レール91が右側に移動した状態を示すものである。前記案内レール91が右側に移動するとき、前記案内レール91の一面に接触するリミットスイッチ92aが前記案内レール91の陷沒した部分と接触していて陷沒しなかった境界面である突出部91bに接触するようになる。この際、前記リミットスイッチ92aは前記案内レール91が一定の範囲以上に移動したという信号(ON/OFF)を発生させて感知部92に伝達する。
【0046】
前記のような構造を持つことにより、本発明によるトラクターの操向装置は、前記感知部92が前記案内レール91が一定の範囲以上に移動したという信号を自動で感知することによって、前記操向シリンダー71が作動した一定の範囲以上の操向角度に対して自動で感知することができるようになる。
【0047】
前記操向シリンダー71が作動した一定の範囲以上の操向角度が感知されれば(
図6及び
図7に示した前記操向シリンダーの操向角度を感知する装置の構造または他の構造によって前記操向シリンダー71が作動した一定の範囲以上の操向角度が感知されれば)、つまり前記前輪が一定の範囲以上に操向されたことが感知されれば、前記後輪が前記前輪との駆動回転数の差によって前記前輪を押すようになる現象を防止するために、前記前輪及び後輪を同一回転数で駆動させる4輪駆動方式から前記前輪及び後輪の回転数の差を調節する差動式4輪駆動方式に切り換えることによって、前記前輪及び後輪の駆動回転数が自動で調節されるようにする。
【0048】
一方、前記前輪が一定の範囲以上に操向されてから一定の範囲内で操向される場合、前記リミットスイッチ92aは前記案内レール91の陷沒した部分と接触するようになり、この場合、前記前輪及び後輪の駆動方式は前記前輪及び後輪を同一回転数で駆動させる4輪駆動方式に切り換えるようになる。
【0049】
このようにすることにより、前記前輪が操向シリンダーによってトラクターの前方の垂直方向以上にまたは垂直方向に近く旋回して前記トラクターが定位置で旋回しても、前記前輪が前記後輪の旋回動作によって前方に過度に押されなくてより柔らかい旋回が可能な利点がある。
【0050】
以上、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者であれば下記の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範疇内で本発明を多様に修正及び変更することができることを理解することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 運転キャップ
21 前輪
21a ホイールフレーム
21b ホイール回転軸
22 後輪
30 車体
40 屈折アーム
41 旋回軸
50 前輪車軸ハウジング
51 前輪差動歯車
52 操向シリンダーブラケット
53 前輪車軸
54 操向シリンダー結合リンク
61 ギアハウジング
62 スイングハウジング
63、64、66 傘歯車
65 傘歯車軸
67 回転駆動部
68 前輪軸結合部
71 操向シリンダー
72 シリンダーロッド
73 スイングリンク
74 ロッドリンク
75 スイングアーム
81 固定リンク
81a、81b ヒンジ結合部
82 固定ブラケット
91 案内レール
91a、91b 突出部
92 感知部
92a リミットスイッチ