特許第5747127号(P5747127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747127
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】アルミナ多孔質体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20150618BHJP
   C04B 35/10 20060101ALI20150618BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20150618BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20150618BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20150618BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C04B38/00 303Z
   C04B38/00 304Z
   C04B35/10 Z
   C04B41/85 C
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/02
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-521219(P2014-521219)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2013063858
(87)【国際公開番号】WO2013187182
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-136366(P2012-136366)
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕和
(72)【発明者】
【氏名】バラゴパル エヌ. ナイル
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/035645(WO,A1)
【文献】 特開2012−62232(JP,A)
【文献】 特開2010−208901(JP,A)
【文献】 特開2002−234779(JP,A)
【文献】 特開2006−263498(JP,A)
【文献】 福田功一郎,c軸配向アパタイト型ケイ酸ランタン多結晶体の作製と酸化物イオン伝導,日本結晶学会誌,2014年,Vol.56 No.1,P.43-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/10,38/00−38/10,41/85−41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材であるアルミナ粒子間を結合することで構成され、前記骨材のアルミナ粒子間は、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とから合成される、ケイ酸ガドリニウム、ケイ酸ランタン、またはケイ酸イットリウムから成る化合物にて結合されているアルミナ多孔質体と、
該アルミナ多孔質体上に形成された無機多孔質膜と
を、有することを特徴とするセラミック多孔質体。
【請求項2】
前記ケイ酸塩鉱物としてムライトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである請求項1のセラミック多孔質体。
【請求項3】
前記ケイ酸塩鉱物としてカオリナイトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである請求項1のセラミック多孔質体。
【請求項4】
請求項1のアルミナ多孔質体の製造方法であって、
骨材のアルミナ粒子に、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とを混合する第1混合工程と、
前記第1混合工程によって混合された材料から所定形状に成形する成形工程と、
前記成形工程によって成形された成形体を、前記化合物が合成され且つその溶融によって前記アルミナ粒子間を結合する焼成温度で焼成する焼成工程と
を含むアルミナ多孔質体の製造方法。
【請求項5】
前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてムライトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである請求項のアルミナ多孔質体の製造方法。
【請求項6】
前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてカオリナイトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである請求項のアルミナ多孔質体の製造方法。
【請求項7】
請求項1のアルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法であって、
骨材のアルミナ粒子に、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とを混合する第1混合工程と、
前記第1混合工程によって混合された材料から所定形状に成形する成形工程と、
前記無機多孔質膜を構成する無機粉末に有機バインダーおよび水を混合させてスラリーを調整する第2混合工程と、
前記成形工程によって成形された成形体の表面に前記第2混合工程によって調整されたスラリーを層状に付着させるスラリーコーティング工程と、
前記スラリーコーティング工程によってスラリーが層状に付着した成形体を、前記化合物が合成され且つその溶融によって前記アルミナ粒子間を結合する焼成温度で焼成する焼成工程と
を含むアルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法。
【請求項8】
前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてムライトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである請求項のアルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法。
【請求項9】
前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてカオリナイトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである請求項のアルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温で焼成されるアルミナ多孔質体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック多孔質体から成るセラミックフィルターや、そのセラミック多孔質体の表面に無機多孔質膜(アルミナ、シリカ、ゼオライト等)を形成した分離膜フィルターは、石油化学、食品化学、エネルギー産業で、気体や液体の分離や濾過に使用されている。また、上記のようなセラミック多孔質体は、ガスや液体を多量に通過させるために、充分な機械的強度と共に可及的に大きな細孔径および高い気孔率が望まれており、比較的大きな粒径のセラミック原料を用いて焼成しなければならないが、粒子径が大きいと例えばアルミナ粒子のように耐火度が高いものは、例えば1700℃以上の比較的高温で焼結させなければ必要な強度が得られない。このため、上記のような問題の対策として、例えば、特許文献1では特定量の有機質細孔形成剤を添加する方法や、特許文献2、3等では適量の焼結助剤(ガラス成分、SiO、MgO、ZrO等)を用いる方法が提案されている。また、特許文献4では、高い気孔率を維持しながら、高強度を維持するために、粗粒アルミナ(5〜50μm)と微粒アルミナ(2μm以下)とを混合して1700℃よりは低温の1600℃にて焼成する方法が提案されている。
【0003】
また、従来において、上記のようなセラミック多孔質体上に細粒アルミナ等の無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミックフィルターを製造するには、そのセラミック多孔質体を構成する粒子よりも小径の粒子を含むスラリーを調整し、このスラリーを一度焼成したセラミック多孔質体の表面に塗布し、その後再度焼成することでそのスラリーを焼結させた多孔質薄膜を得ている。しかしながら、低コスト化や膜材料の高性能化、薄膜化が進むにつれて、上記のような二層構造のセラミックフィルターの製造において、例えばセラミック粒子に成形助剤を加えて混練したものを所定形状に成形したセラミック多孔質体のグリーン成形体上に、上記スラリーを塗布して、それらグリーン成形体と上記スラリーとを同時焼成する工程が望まれている。なお、上記グリーン成形体とは、例えばセラミック粒子に成形助剤を加えて混練したものを所定形状に成形した未焼成のセラミック多孔質体である。
【0004】
しかしながら、上記のようなグリーン成形体上にスラリーを塗布してそれらグリーン成形体とスラリーとを同時焼成する場合、一般的に細粒アルミナから成るスラリーを多孔質薄膜に焼結する焼成温度は1450℃以下と比較的低いことから、例えば、特許文献4に示すようなアルミナ多孔質体を焼成するための1600℃程度の焼成温度で焼成すると、その多孔質薄膜では過度の焼結となって緻密化が進行してしまうので、セラミックフィルターに適用できなくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−512302号公報
【特許文献2】特公平5−21605号公報
【特許文献3】特開平1−317178号公報
【特許文献4】特開昭62−252381号公報
【特許文献5】特開2007−268463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような問題を解消するために、アルミナ多孔質体の焼成温度を下げる目的で焼結助剤としてたとえばガラス成分を添加して焼成することが一般的であるが、焼結助剤成分であるガラス成分は、焼成中に主原料セラミック内で固溶し焼結を促進する一方で、固溶したガラス成分はセラミック多孔質体における細孔を埋めてしまい、セラミック多孔質体の透過性能を低下させ、ひいてはフィルターの性能低下の要因となってしまうという問題がある。また、更には、上記セラミック多孔質体上にアルミナ等の無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミックフィルターを製造する際には、焼成時にガラス成分が無機多孔質膜へ拡散し、無機多孔質膜の細孔を埋めてしまい、多孔質膜の透過性能を低下させ、ひいてはフィルターの性能低下の要因となってしまう問題がある。
【0007】
特許文献5では、焼結助剤として用いたガラス成分をアルカリ処理によってセラミック多孔質体から溶出させることでその問題を解決する提案が示されている。しかしながら、特許文献5に示すような方法では、アルカリ処理によりガラス成分だけでなく主原料セラミックも溶出するためセラミック多孔質体の強度低下が避けられないという問題点があった。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、比較的低温で焼成しても比較的大きな強度を有し、気孔率が比較的高く且つ細孔径が比較的大きなアルミナ多孔質体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、骨材のアルミナ粒子にケイ酸塩鉱物例えばムライト、カオリナイト等と、Gd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とを添加し、1450℃以下の焼成温度で焼成することによって、アルミナ粒子の粒径が比較的大きい場合でも比較的大きな強度を有するアルミナ多孔質体、すなわち比較的大きな強度を有し、気孔率が比較的高く且つ細孔径が比較的大きなアルミナ多孔質体を得ることができることを見いだした。これは、骨材のアルミナ粒子間において、添加されたケイ酸塩鉱物および上記希土類酸化物が焼成されることによってケイ酸ガドリニウム、ケイ酸ランタン、またはケイ酸イットリウムから成る化合物が合成され、その化合物がアルミナ粒子間を結合することによって、アルミナ粒子の粒径が大きい場合でも良好な結合強度が得られると考えられる。本発明はこのような知見に基づいて為されたものである。
【0010】
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)骨材であるアルミナ粒子間を結合することで構成され、前記骨材のアルミナ粒子間は、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とから合成される、ケイ酸ガドリニウム、ケイ酸ランタン、またはケイ酸イットリウムから成る化合物にて結合されているアルミナ多孔質体と、(b)そのアルミナ多孔質体上に形成された無機多孔質膜とを、有することを特徴とする二層構造のセラミック多孔質体にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記骨材のアルミナ粒子間は、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とから合成される、ケイ酸ガドリニウム、ケイ酸ランタン、またはケイ酸イットリウムから成る化合物にて結合されている。このため、例えば、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ粒子間が前記化合物によって結合され良好な結合強度が得られるので、比較的低温で焼成しても比較的大きな強度を有し、気孔率が比較的高く且つ細孔径が比較的大きなアルミナ多孔質体が得られる。また、そのアルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成することで二層構造のセラミック多孔質体が構成される。このため、比較的低温で前記アルミナ多孔質体が焼結させられるので、例えば、アルミナ粒子に成形助剤を加えて混練したものを所定形状に成形したアルミナ多孔質体のグリーン成形体上に、前記無機多孔質膜を形成させるスラリーを塗布して、それらグリーン成形体とスラリーとを同時焼成しても、前記無機多孔質膜の焼結による緻密化の進行が抑制される。
【0013】
ここで、好適には、前記ケイ酸塩鉱物としてムライトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである。このため、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ多孔質体の強度を好適に向上させることができる。
【0014】
また、好適には、前記ケイ酸塩鉱物としてカオリナイトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである。このため、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ多孔質体の強度を好適に向上させることができる。
【0015】
また、好適には、(a)骨材のアルミナ粒子に、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とを混合する第1混合工程と、(b)前記第1混合工程によって混合された材料から所定形状に成形する成形工程と、(c)前記成形工程によって成形された成形体を前記化合物が合成され且つその溶融によって前記アルミナ粒子間を結合する焼成温度で焼成する焼成工程とを、含む製造方法によって、アルミナ多孔質体が製造される。
【0016】
前記アルミナ多孔質体の製造方法によれば、前記第1混合工程において骨材のアルミナ粒子に、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とが混合され、前記成形工程において前記第1混合工程によって混合された材料から所定形状に成形され、前記焼成工程において前記成形工程によって成形された成形体が前記化合物が合成され且つその溶融によって前記アルミナ粒子間を結合する焼成温度で焼成されることにより、比較的低温で焼成しても比較的大きな強度を有し、気孔率が比較的高く且つ細孔径が比較的大きなアルミナ多孔質体が製造される。
【0017】
また、好適には、前記アルミナ多孔質体の製造方法において、前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてムライトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである。このため、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ多孔質体の強度を好適に向上させることができる。
【0018】
また、好適には、前記アルミナ多孔質体の製造方法において、前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてカオリナイトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである。このため、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ多孔質体の強度を好適に向上させることができる。
【0019】
また、好適には、(a)骨材のアルミナ粒子に、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とを混合する第1混合工程と、(b)前記第1混合工程によって混合された材料から所定形状に成形する成形工程と、(c)前記無機多孔質膜を構成する無機粉末に有機バインダーおよび水を混合させてスラリーを調整する第2混合工程と、(d)前記成形工程によって成形された成形体の表面に前記第2混合工程によって調整されたスラリーを層状に付着させるスラリーコーティング工程と、(e)前記スラリーコーティング工程によってスラリーが層状に付着した成形体を、前記化合物が合成され且つその溶融によって前記アルミナ粒子間を結合する焼成温度で焼成する焼成工程とを、含む製造方法によって、アルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体が製造される。
【0020】
前記アルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法によれば、前記第1混合工程において骨材のアルミナ粒子に、ケイ酸塩鉱物とGd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の希土類酸化物とが混合され、前記成形工程において前記第1混合工程によって混合された材料から所定形状に成形され、前記第2混合工程において前記無機多孔質膜を構成する無機粉末に有機バインダーおよび水が混合されてスラリーが調整され、前記スラリーコーティング工程において前記成形工程によって成形された成形体の表面に前記第2混合工程によって調整されたスラリーが層状に付着され、前記焼成工程において前記スラリーコーティング工程によってスラリーが層状に付着した成形体が、前記化合物が合成され且つその溶融によって前記アルミナ粒子間を結合する焼成温度で焼成されることにより、緻密化の進行が好適に抑制された無機多孔質膜をアルミナ多孔質体上に形成する二層構造のセラミック多孔質体が製造される。
【0021】
また、好適には、前記アルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法において、前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてムライトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである。このため、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ多孔質体の強度を好適に向上させることができる。
【0022】
また、好適には、前記アルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の製造方法において、前記第1混合工程は、前記ケイ酸塩鉱物としてカオリナイトを、前記希土類酸化物としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである。このため、比較的低温で大きな粒径のアルミナ粒子を焼結した場合でも、前記アルミナ多孔質体の強度を好適に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のアルミナ多孔質体の一部を拡大して示す模式図である。
図2図1のアルミナ多孔質体の製造方法を説明する工程図である。
図3図2の製造方法においてアルミナ粒子にムライトとイットリアとが添加されて製造されたアルミナ多孔質体の平均圧環強度等の測定結果を示す図である。
図4図3の実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体の平均圧環強度(MPa)をそれぞれ示す図である。
図5図3の実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体の平均細孔径(μm)をそれぞれ示す図である。
図6図3の実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体の気孔率(%)をそれぞれ示す図である。
図7図3の実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体をそれぞれ粉末X線回折によって測定した粉末回折X線パターンを示す図である。
図8図3の実施例品1のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図9図3の実施例品2のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図10図3の実施例品3のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図11図3の比較例品3のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図12図3の比較例品4のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図13図3の比較例品1のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図14図3の比較例品5のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図15図2の製造方法においてアルミナ粒子にカオリナイトとイットリアとが添加されて製造されたアルミナ多孔質体の平均圧環強度等の測定結果を示す図である。
図16図15の実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体の平均圧環強度(MPa)をそれぞれ示す図である。
図17図15の実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体の平均細孔径(μm)をそれぞれ示す図である。
図18図15の実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体の気孔率(%)をそれぞれ示す図である。
図19図15の実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体をそれぞれ粉末X線回折によって測定した粉末回折X線パターンを示す図である。
図20図15の比較例品7のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図21図15の比較例品8のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図22図15の実施例品4のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図23図15の実施例品5のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図24図15の実施例品6のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図25図15の実施例品7のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図26図15の実施例品8のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図27図15の比較例品9のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図28図15の比較例品6のアルミナ多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図29図1のアルミナ多孔質体上に無機多孔質膜を形成する二層構造のセラミック多孔質体の一部を拡大して示す模式図である。
図30図29の二層構造のセラミック多孔質体の製造方法を説明する工程図である。
図31図30の製造方法により製造された二層構造のセラミック多孔質体における破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
図32】一度焼成されたアルミナ多孔質体にスラリーをディッピングさせて再度焼成させることによって製造された二層構造のセラミック多孔質体において、無機多孔質膜の表面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確には描かれていない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の一実施例のアルミナ多孔質体10を示す模式図である。
【0026】
アルミナ多孔質体10は、図1に示すように、所定形状に成形された複数の細孔を有する多孔体から成っており、骨材であるアルミナ粒子16の間が、図2に示すSi系化合物18例えばムライト(AlSi13)、カオリナイト(AlSi(OH))等と、Gd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類の図2に示す希土類酸化物20とから合成される化合物(RSi(R=希土類元素))22によって結合されている。なお、化合物22は、YSi(Yttrimu Silicate ケイ酸イットリウム)、GdSi(Gadolinium Silicate ケイ酸ガドリニウム)、および/またはLaSi(Lanthanum Silicate ケイ酸ランタン)である。また、アルミナ多孔質体10は、気孔率(%)が比較的高く且つ平均細孔径(μm)が比較的大きくなるように、粒径が比較的大きな例えば15μm〜50μmの粒径(平均粒径35μm)のアルミナ粒子16を使用している。また、上記アルミナ粒子16の平均粒径(μm)は、マルバーン社のMaster Sizerを使用してレーザー回折散乱法により測定されたものである。
【0027】
また、図1に示すように、アルミナ多孔質体10は、例えば、矢印A1方向から供給された気体或いは液体等の被処理流体をそのアルミナ多孔質体10に透過させることにより、前記被処理流体すなわち濾過流体を濾過するセラミックフィルターとして構成されている。
【0028】
アルミナ多孔質体10は、比較的低温で焼成されても、骨材であるアルミナ粒子16の間がSi系化合物18と希土類酸化物20とから合成される化合物22によって結合されることにより、比較的大きな強度を有するものである。
【0029】
以下において、アルミナ多孔質体10の製造方法を図2を用いて説明する。そして、図2の製造方法によりアルミナ粒子16の間をSi系化合物18と希土類酸化物20とから合成される化合物22で結合したアルミナ多孔質体10と、アルミナ粒子16の間を化合物22で結合しないアルミナ多孔質体10とをそれぞれ製造して、それらアルミナ多孔質体10の強度すなわち平均圧環強度KA(MPa)を測定して比較させることにより、アルミナ多孔質体10においてアルミナ粒子16の間を化合物22で結合させることによってアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KA(MPa)が好適に高くなることを以下の実験Iおよび実験IIに示す。
【0030】
図2に示すように、先ず、第1混合工程P1において、粒径が15μm〜50μmの範囲である平均粒径が35μmの粗粒アルミナ(Al)すなわちアルミナ粒子16に、焼結助剤としてSi系化合物18例えば平均粒径が1.5μmのムライト(AlSi13)或いは平均粒径が0.6μmのカオリナイト(AlSi(OH))と希土類酸化物20例えば平均粒径が0.5μmのイットリア(Y)とが所定量添加されて混合される。なお、第1混合工程P1によって混合された混合粉末は、粗粒アルミナが100mol%、ムライトが1.42mol%〜2.39mol%或いはカオリナイトが1.32mol%〜3.70mol%、イットリアが0.45mol%〜3.08mol%となるように調合されている。また、上記粗粒アルミナ、ムライト、カオリナイト、イットリアの平均粒径(μm)は、マルバーン社のMaster Sizerを使用してレーザー回折散乱法により測定されたものである。また、アルミナ粒子16には、製造されたアルミナ多孔質体10の気孔率(%)が比較的高く且つ平均細孔径(μm)が比較的大きくなるように、上記粒径範囲に示す比較的大きな粒径のものが使用されている。
【0031】
次に、混練工程P2において、第1混合工程P1によって混合された混合粉末に成形助剤としてメチルセルロース系バインダー24および水26が加えられて混練される。
【0032】
次に、成形工程P3において、混練工程P2によって混練された坏土を用いて良く知られた押出成形機により所定形状例えばパイプ状(円筒形状)に押出成形させた。
【0033】
次に、第1乾燥工程P4において、成形工程P3によってパイプ状に成形された成形体すなわちパイプ状グリーン成形体が、所定の乾燥機内においてたとえば80℃程度の温度で乾燥され、水分が低下させられる。
【0034】
次に、焼成工程P5において、第1乾燥工程P4によって乾燥されたパイプ状グリーン成形体が焼成温度1450℃、2時間の焼成条件で所定の焼成炉内で焼成される。これによって、アルミナ多孔質体10が焼成されて製造される。
【0035】
[実験I]
ここで実験Iを説明する。図2の製造工程P1〜P5において、図3に示すように、第1混合工程P1における粗粒アルミナに添加されるムライトの添加量を0.00(mol%)〜2.82(mol%)の範囲内すなわち0.00(mol%)、0.28(mol%)、0.85(mol%)、1.42(mol%)、1.99(mol%)、2.39(mol%)、2.53(mol%)、2.82(mol%)に変化させ、第1混合工程P1における粗粒アルミナに添加されるイットリアの添加量を0.00(mol%)〜2.82(mol%)の範囲内すなわち0.00(mol%)、0.29(mol%)、0.45(mol%)、0.85(mol%)、1.42(mol%)、1.99(mol%)、2.56(mol%)、2.82(mol%)に変化させることによって、8種類の試料であるアルミナ多孔質体10すなわち実施例品1〜3、比較例品1〜5のアルミナ多孔質体10を製造し、それらアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KA(MPa)、平均細孔径(μm)、気孔率(%)を測定すると共に、それらアルミナ多孔質体10内のネックの主成分を調べた。なお、前記ネックとは、アルミナ多孔質体10内において骨材であるアルミナ粒子16の間のボンドである。
【0036】
以下、図3乃至図7にその測定結果を示す。なお、アルミナ多孔質体10の圧環強度K(MPa)の測定は、JIS Z 2507「焼結軸受−圧環強さ試験法」に準じて、円筒形状に成形されたアルミナ多孔質体10を図示しない圧縮装置の一対のプレート間に配置させてそのプレートからアルミナ多孔質体10に荷重F(N)を加えるものであり、下記の数式(1)により算出されるものである。なお、数式(1)において、Fはアルミナ多孔質体10が破壊したときの最大荷重(N)であり、Lはアルミナ多孔質体10における中空円筒の長さ(mm)であり、Dはアルミナ多孔質体10における中空円筒の外径(mm)であり、eはアルミナ多孔質体10における中空円筒の壁厚(mm)である。また、平均圧環強度KA(MPa)は、第1混合工程P1において粗粒アルミナに添加されたムライト、イットリアの添加量が同じに製造された複数のアルミナ多孔質体10の試料における圧環強度K(MPa)の平均値である。
【0037】
[数1]
圧環強度K(MPa)=(F×(D−e))/(L×e)・・・(1)
【0038】
また、アルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)および気孔率(%)は、マイクロメリテックス社のAuto PoreIIIを使用して水銀圧入法により測定したものである。また、アルミナ多孔質体10を粉末X線回折装置を用いて粉末回折X線パターンを測定することにより、アルミナ多孔質体10の結晶構造すなわち前記ネックの主成分を判定した。
【0039】
図3図7の測定結果から示すように、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10は、比較例品1乃至5のアルミナ多孔質体10に比較して平均圧環強度KA(MPa)が高く、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10内にはアルミナ粒子16の間を結合するネックの主成分にYSi(ケイ酸イットリウム)が含まれていた。また、図4は縦軸が平均圧環強度KA(MPa)を示し横軸がムライト/Y(イットリア)のモル比を示す図であり、その図4には上記した実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KA(MPa)の値を結ぶ曲線L1が示されている。その図4の曲線L1によれば、ムライト/イットリアのモル比が0.5〜7.5のときに平均圧環強度KA(MPa)が25MPa以上となる。なお、アルミナ多孔質体10が使用される条件によって必要とされる強度が変わるが、平均圧環強度KAが25MPaであれば一般的にアルミナ多孔質体10に十分な強度があると言える。
【0040】
また、図3図5の測定結果から示すように、実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体10において、それらアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)の大きさは、7.0μm以上と比較的大きな値であり、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)と比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)とに大きな差はない。また、図3図6の測定結果から示すように、実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体10において、それらアルミナ多孔質体10の気孔率(%)の大きさは、30%以上と比較的高い値であり、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10の気孔率(%)と比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体10の気孔率(%)とに大きな差はない。
【0041】
また、図8乃至図14は、アルミナ多孔質体10の破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM(Scanning Electron MicroScope)像を示す図である。なお、図8はムライト/イットリアのモル比が5.3である実施例品1のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図9はムライト/イットリアのモル比が2.3である実施例品2のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図10はムライト/イットリアのモル比が1.0である実施例品3のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図11はムライト/イットリアのモル比が0.4である比較例品3のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図12はムライト/イットリアのモル比が0.1である比較例品4のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図13は比較例品1のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図14は比較例品5のアルミナ多孔質体10のSEM像である。これによれば、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10においてアルミナ粒子16の間を結合するネックが成長している。
【0042】
以上のことから、図3の実施例品1乃至3、比較例品1乃至5のアルミナ多孔質体10において、アルミナ粒子16に所定量添加されたムライトとイットリアとから合成される化合物22のYSiがアルミナ粒子16の間を結合したことにより良好な結合強度が得られたので、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10が、アルミナ多孔質体10内においてアルミナ粒子16の間をムライトとイットリアとから合成されるYSiで結合されない比較例品1乃至5のアルミナ多孔質体10よりも平均圧環強度KA(MPa)が高くなったと考えられる。また、図3の実施例品1乃至3、比較例品2乃至4のアルミナ多孔質体10において、アルミナ粒子16に添加されるムライトおよびイットリアのモル比を0.5〜7.5の範囲内にすることによって、好適にアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KA(MPa)を比較的高い値にできると考えられる。
【0043】
[実験II]
ここで実験IIを説明する。図2の製造工程P1〜P5において、図15に示すように、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるカオリナイトの添加量を0.44(mol%)〜4.40(mol%)の範囲内すなわち0.44(mol%)、1.32(mol%)、2.20(mol%)、3.08(mol%)、3.46(mol%)、3.70(mol%)、3.83(mol%)、3.95(mol%)、4.40(mol%)に変化させ、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるイットリアの添加量を0.00(mol%)〜3.96(mol%)の範囲内すなわち0.00(mol%)、0.45(mol%)、0.57(mol%)、0.70(mol%)、0.95(mol%)、1.32(mol%)、2.20(mol%)、3.08(mol%)、3.96(mol%)に変化させることによって、9種類の試料であるアルミナ多孔質体10すなわち実施例品4〜8、比較例品6〜9のアルミナ多孔質体10を製造し、それらアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KA(MPa)、平均細孔径(μm)、気孔率(%)を測定すると共に、それらアルミナ多孔質体10内のネックの主成分を調べた。
【0044】
以下、図15乃至図19にその測定結果を示す。なお、アルミナ多孔質体10の圧環強度K(MPa)は、上述したように、JIS Z 2507「焼結軸受−圧環強さ試験法」に準じて測定した。また、アルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)および気孔率(%)は、上述したように、マイクロメリテックス社のAuto PoreIIIを使用して測定した。また、アルミナ多孔質体10のアルミナ粒子16の間を結合するネックの主成分は、上述したように、粉末X線回折によって判定した。
【0045】
図15図19の測定結果に示すように、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10は、比較例品6乃至9のアルミナ多孔質体10に比較して平均圧環強度KA(MPa)が高く、その実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10内においてアルミナ粒子16の間を結合するネックの主成分にYSi(ケイ酸イットリウム)が含まれている。また、図16は縦軸が圧環強度K(MPa)を示し横軸がカオリナイト/Y(イットリア)のモル比を示す図であり、その図16には上記した実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KA(MPa)の値を結ぶ曲線L2が示されている。その図16の曲線L2によれば、カオリナイト/イットリアのモル比が0.2〜6.2のときに平均圧環強度KA(MPa)が25MPa以上となる。
【0046】
また、図15図17の測定結果に示すように、実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体10において、それらアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)の大きさは、比較例品9のアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)が7.0μm以下であるが、それ以外は7.0μm以上と比較的大きな値であり、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)と比較例品7、8のアルミナ多孔質体10の平均細孔径(μm)とに大きな差はない。また、図15図18の測定結果から示すように、実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体10において、それらアルミナ多孔質体10の気孔率(%)の大きさは、比較例品9のアルミナ多孔質体10の気孔率(%)が30%以下であるが、それ以外は30%以上と比較的高い値であり、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10の気孔率(%)と比較例品7、8のアルミナ多孔質体10の気孔率(%)とに大きな差はない。
【0047】
また、図20乃至図28は、アルミナ多孔質体10の破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影されたSEM像を示す図である。なお、図20はカオリナイト/イットリアのモル比が8.7である比較例品7のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図21はカオリナイト/イットリアのモル比が6.7である比較例品8のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図22はカオリナイト/イットリアのモル比が5.3である実施例品4のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図23はカオリナイト/イットリアのモル比が3.7である実施例品5のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図24はカオリナイト/イットリアのモル比が2.3である実施例品6のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図25はカオリナイト/イットリアのモル比が1.0である実施例品7のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図26はカオリナイト/イットリアのモル比が0.4である実施例品8のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図27はカオリナイト/イットリアのモル比が0.1である比較例品9のアルミナ多孔質体10のSEM像であり、図28は比較例品6のアルミナ多孔質体10のSEM像である。これによれば、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10においてアルミナ粒子16間を結合するネックが成長している。
【0048】
以上のことから、図15の実施例品4乃至8、比較例品6乃至9のアルミナ多孔質体10において、アルミナ粒子16に所定量添加されたカオリナイトとイットリアとから合成される化合物22のYSiがアルミナ粒子16の間を結合したことにより良好な結合強度が得られたので、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10が、アルミナ多孔質体10内においてアルミナ粒子16の間をカオリナイトとイットリアとから合成されるYSiで結合しない比較例品6乃至9のアルミナ多孔質体10よりも平均圧環強度KA(MPa)が高くなったと考えられる。また、図15の実施例品4乃至8、比較例品7乃至9のアルミナ多孔質体10において、アルミナ粒子16に添加される焼結助剤であるカオリナイトおよびイットリアのモル比を0.2〜6.2の範囲内にすることによって、好適にアルミナ多孔質体10の平均圧環強度KAを比較的高い値にできると考えられる。
【0049】
上述のように、実施例品1乃至8のアルミナ多孔質体10によれば、骨材のアルミナ粒子16間は、Si系化合物18であるムライト或いはカオリナイトと希土類酸化物20であるイットリア(Y)とから合成される化合物22であるYSi(ケイ酸イットリウム)にて結合されている。このため、例えば、焼成温度が1450℃と比較的低温で比較的大きな粒径例えば15μm〜50μmの範囲の粒径のアルミナ粒子16を焼結した場合でも、アルミナ粒子16間がYSiによって結合され良好な結合強度が得られるので、比較的低温で焼成しても比較的大きな平均圧環強度KA(MPa)を有し、気孔率(%)が比較的高く且つ平均細孔径(μm)が比較的大きなアルミナ多孔質体10が得られる。
【0050】
また、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10によれば、Si系化合物18としてムライトを、希土類酸化物20としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである。このため、焼成温度が1450℃と比較的低温で比較的大きな粒径例えば15μm〜50μmの範囲の粒径のアルミナ粒子16を焼結した場合でも、アルミナ多孔質体10の平均圧環強度KAを25MPa以上に向上させることができる。
【0051】
また、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10によれば、Si系化合物18としてカオリナイトを、希土類酸化物20としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである。このため、焼成温度が1450℃と比較的低温で比較的大きな粒径例えば15μm〜50μmの範囲の粒径のアルミナ粒子16を焼結した場合でも、アルミナ多孔質体10の平均圧環強度KAを25MPa以上に向上させることができる。
【0052】
実施例品1乃至8のアルミナ多孔質体10の製造方法によれば、第1混合工程P1において骨材のアルミナ粒子16に、Si系化合物18であるムライト或いはカオリナイトと、希土類酸化物20であるイットリアとが混合され、成形工程P3において第1混合工程P1によって混合された材料から所定形状に成形され、焼成工程P5において成形工程P3によって成形されたパイプ状グリーン成形体が化合物22が合成され且つその溶融によってアルミナ粒子16間を結合する焼成温度例えば1450℃で焼成されることにより、1450℃の比較的低温で焼成しても比較的大きな平均圧環強度KA(MPa)を有し、気孔率(%)が比較的高く且つ平均細孔径(μm)が比較的大きなアルミナ多孔質体10が製造される。
【0053】
また、実施例品1乃至3のアルミナ多孔質体10の製造方法によれば、第1混合工程P1は、Si系化合物18としてムライトを、希土類酸化物20としてYを用いて、それ等のモル比が0.5〜7.5の範囲内となるように混合するものである。このため、焼成温度が1450℃と比較的低温で比較的大きな粒径例えば15μm〜50μmの範囲の粒径のアルミナ粒子16を焼結した場合でも、アルミナ多孔質体10の平均圧環強度KAを25MPa以上に向上させることができる。
【0054】
また、実施例品4乃至8のアルミナ多孔質体10の製造方法によれば、第1混合工程P1は、Si系化合物18としてカオリナイトを、希土類酸化物20としてYを用いて、それ等のモル比が0.2〜6.2の範囲内となるように混合するものである。このため、焼成温度が1450℃と比較的低温で比較的大きな粒径例えば15μm〜50μmの範囲の粒径のアルミナ粒子16を焼結した場合でも、アルミナ多孔質体10の平均圧環強度KAを25MPa以上に向上させることができる。
【0055】
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0056】
図29は、前述の実施例1のアルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12を形成する二層構造のセラミック多孔質体14を示す模式図である。
【0057】
セラミック多孔質体14は、アルミナ多孔質体10の表面10aにアルミナ多孔質体10の細孔よりも小さな複数の細孔を有する無機多孔質膜12が形成されている。なお、無機多孔質膜12は、例えばアルミナ、シリカ、ゼオライト等の無機粉末12aにより構成されており、その無機粉末12aの粒径はアルミナ粒子16より十分に小さいものである。また、無機多孔質膜12の厚みは、10〜300μm、例えば80μm程度である。
【0058】
また、図29に示すように、セラミック多孔質体14は、例えば、矢印A2方向から供給された気体或いは液体等の被処理流体を無機多孔質膜12およびアルミナ多孔質体10を透過させることにより、前記被処理流体すなわち濾過流体を濾過するセラミックフィルターとして構成されている。
【0059】
セラミック多孔質体14は、アルミナ多孔質体10の細孔よりも小さな粒径の無機粉末12aを含むスラリーが使用された場合においても、アルミナ多孔質体10上に厚みが略均一な無機多孔質膜12が形成されるものである。
【0060】
以下において、アルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12を形成する二層構造のセラミック多孔質体14の製造方法を図30を用いて説明する。そして、図30の製造方法によりアルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12を形成する二層構造のセラミック多孔質体14と、一度焼成したアルミナ多孔質体10に無機粉末12aを含むスラリーを塗布して再度焼成させる従来の製造方法によって製造させた二層構造のセラミック多孔質体14とをそれぞれ製造して、それら二層構造のセラミック多孔質体14を比較させることによって、アルミナ多孔質体10の細孔よりも小さな粒径の無機粉末12aを含むスラリーが使用された場合であっても、図30の製造方法で製造された二層構造のセラミック多孔質体14の無機多孔質膜12が略均一な厚みに形成されることを以下の実験IIIに示す。
【0061】
以下に、図30を用いて二層構造のセラミック多孔質体14の製造方法を示す。なお、図2における第1混合工程P1〜第1乾燥工程P4と図30における第1混合工程P1〜第1乾燥工程P4とは同じであるので、以下において、図30の第1混合工程P1〜第1乾燥工程P4を省略して第2混合工程P6から説明する。
【0062】
第2混合工程P6において、無機多孔質膜12を構成する無機粉末12a例えば平均粒径が1.5μmのアルミナ粒子12aに、有機バインダー28および水26が混合され、攪拌されてスラリーが調整される。なお、アルミナ粒子12aの平均粒径(μm)は、上述したように、マルバーン社のMaster Sizerを使用して測定する。また、アルミナ粒子12aは、図2によって製造されたアルミナ多孔質体10の細孔より十分に小さいものである。
【0063】
次に、ディッピング工程(スラリーコーティング工程)P7において、成形工程P3によって成形されたパイプ状グリーン成形体が第2混合工程P6によって調整されたスラリー中にディッピングされ、そのパイプ状グリーン成形体の表面にスラリーが層状に付着される。
【0064】
次に、第2乾燥工程P8において、ディッピング工程P7によってスラリーが表面に付着されたパイプ状グリーン成形体が所定の乾燥機内でたとえば80℃程度の温度で乾燥され、水分が低下される。
【0065】
次に、焼成工程P9において、第2乾燥工程P8によって乾燥させたパイプ状グリーン成形体が1450℃の焼成温度、2時間の焼成条件で所定の焼成炉内で焼成される。これによって、アルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12が形成された二層構造のセラミック多孔質体14が焼結されて製造される。
【0066】
[実験III]
ここで実験IIIを説明する。図30の製造工程P1〜P9において第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるムライトの添加量を1.99mol%にし、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるイットリアの添加量を0.85mol%にして、実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14を製造した。また、パイプ状グリーン成形体を1450℃で2時間焼成させた実施例品2のアルミナ多孔質体10を第2混合工程P6によって調整されたスラリーをディッピングして乾燥させた後、再度1450℃で2時間焼成して比較例の二層構造のセラミック多孔質体14を製造した。そして、これら二層構造のセラミック多孔質体14の無機多孔質膜12の状態を図31および図32を用いて比較した。なお、図31は実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14の破断面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像であり、図32は比較例の二層構造のセラミック多孔質体14の無機多孔質膜12の表面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影したSEM像である。
【0067】
図31に示すように、アルミナ多孔質体10の細孔よりも小さなアルミナ粒子12aを有するスラリーが使用された場合においても、成形工程P3によって成形されたグリーン成形体にスラリーをディッピングすることで製膜が可能であり、実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14には略均一な厚みの無機多孔質膜12が形成されている。なお、上記アルミナ多孔質体10は平均細孔径が9.3μm、気孔率が41%であり、無機多孔質膜12は平均細孔径が0.4μm、気孔率が40%であり、無機多孔質膜12を構成するアルミナ粒子12aの平均粒径は、アルミナ多孔質10の平均細孔径9.3μmより十分に小さい1.5μmであった。また、実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14は焼成温度が1450℃と比較的低温で焼成したことから、平均粒径が1.5μm程度の細粒のアルミナ粒子12aを有する無機多孔質膜12の焼結による緻密化は進行していない。
【0068】
図32に示すように、アルミナ多孔質体10の細孔よりも小さなアルミナ粒子12aを有するスラリーが使用されたので、アルミナ多孔質体10にディッピングしたスラリーがそのアルミナ多孔質体10内に吸収されてしまい比較例の二層構造のセラミック多孔質体14には殆ど無機多孔質膜12が形成されておらず所々に穴がある。
【0069】
また、実験IIIにおいて、実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14は、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるムライトの添加量を1.99mol%にし、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるイットリアの添加量を0.85mol%にしているので、実質的に実施例品2のアルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12が形成されているが、例えば、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるムライト或いはカオリナイトの添加量を変化させ、第1混合工程P1におけるアルミナに添加されるイットリアの添加量を変化させることによって、実施例品1、3乃至8のアルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12を形成する実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14を製造することができる。そして、それら実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14の無機多孔質膜12は、図31のように略均一な厚みであり、且つ、焼成温度が1450℃と比較的低温で焼成していることから無機多孔質膜12の焼結による緻密化は進行していないものである。
【0070】
上述のように、実施例品1乃至8のアルミナ多孔質体10は、そのアルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12を形成する二層構造のセラミック多孔質体14に使用される。このため、焼成温度が1450℃と比較的低温でアルミナ多孔質体10が焼結させられるので、例えば、アルミナ粒子16に成形助剤を加えて混練したものを押出成形により所定形状に成形したアルミナ多孔質体10のグリーン成形体上に、無機多孔質膜12を形成させるスラリーを塗布して、それらグリーン成形体とスラリーとを同時焼成しても、無機多孔質膜12の焼結による緻密化の進行が抑制される。
【0071】
アルミナ多孔質体10上に無機多孔質膜12を形成する実施例2の二層構造のセラミック多孔質体14の製造方法によれば、第1混合工程P1において骨材のアルミナ粒子16に、Si系化合物18であるムライト或いはカオリナイトと希土類酸化物20であるイットリアとが混合され、成形工程P3において第1混合工程P1によって混合された材料からパイプ状に成形され、第2混合工程P6において無機多孔質膜12を構成する無機粉末12aに有機バインダー28および水26が混合されてスラリーが調整され、ディッピング工程P7において成形工程P3によって成形されたパイプ状グリーン成形体の表面に第2混合工程P6によって調整されたスラリーが層状に付着され、焼成工程P9においてディッピング工程P7によってスラリーが層状に付着したパイプ状グリーン成形体が化合物22が合成され且つその溶融によってアルミナ粒子16間を結合する焼成温度1450℃で焼成されることにより、緻密化の進行が好適に抑制された無機多孔質膜12をアルミナ多孔質体10上に形成する二層構造のセラミック多孔質体14が製造される。
【0072】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0073】
前述の実施例1において、第1混合工程P1で粗粒アルミナ16に希土類酸化物20としてYが添加されたが、Yの代わりにGd或いはLaが添加されても良い。また、希土類酸化物20は、Gd、La、Yから選ばれた少なくとも1種類のものであれば良い。
【0074】
すなわち、第1混合工程P1で粗粒アルミナにSi系化合物18としてムライト或いはカオリナイトと希土類酸化物20としてYが所定量添加されてその後焼成されることによって、アルミナ粒子16の間にムライト或いはカオリナイトとYとから合成されるYSiが結合されてアルミナ多孔質体10の平均圧環強度が高くなった。しかし、例えば、Yの代わりにGdを所定量添加させてアルミナ粒子16の間にGdSi(Gadolinium Silicate ケイ酸ガドリニウム)を結合させることによってアルミナ多孔質体10の平均圧環強度が高くなる。また、Yの代わりにLaを所定量添加させてアルミナ粒子16の間にLaSi(Lanthanum Silicate ケイ酸ランタン)を結合させることによってアルミナ多孔質体10の平均圧環強度が高くなる。このようにしても、前述の実施例品1乃至8のアルミナ多孔質体10と同様の効果が得られる。
【0075】
また、前述の実施例1では、アルミナ多孔質体10は焼成温度1450℃で焼成されたが、例えは1450℃以下の焼成温度で焼成してもアルミナ粒子16の間にYSiが結合されるのであれば平均圧環強度が比較的高いアルミナ多孔質体10を製造することができる。要するに、Si系化合物18と希土類酸化物20とから化合物RSiが合成され、その化合物RSiの溶融によって粗粒アルミナ粒子16間を結合する焼成温度であれば良い。
【0076】
また、前述の第1乾燥工程P4および第2乾燥工程P8では、乾燥機を用いて積極的な乾燥が行われていたが、自然乾燥であっても差し支えない。
【0077】
また、前述の成形工程P3では、混練工程P2によって成形助剤を添加して混練された混合物から押出成形によりパイプ状グリーン成形体が成形されたが、プレス成形、ロール成形、スタンピング成形などによって板状のグリーン成形体が成形されても良い。また、成形工程P3において、流し込み(鋳込み)成形が用いられる場合には、第1混合工程P1において、アルミナ粒子16、希土類酸化物20、Si系化合物18の混合物に、水および必要に応じて合成胡料などの成形助剤を加えてスラリーを作成し、そのスラリーを用いて成形工程P3において流し込み成形が行われても良い。
【0078】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
10:アルミナ多孔質体
12:無機多孔質膜
12a:無機粉末
14:二層構造のセラミック多孔質体
16:アルミナ粒子
18:Si系化合物
20:希土類酸化物
22:化合物
P1:第1混合工程
P3:成形工程
P6:第2混合工程
P7:ディッピング工程(スラリーコーティング工程)
P5、P9:焼成工程
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