(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
転写テープを繰出リールから繰り出し転写ヘッドを経由して巻取リールに巻き取るとともに、繰出リールの回転と巻取リールの回転とを動力伝達装置を介して連動させる転写具であって、
前記動力伝達装置の要素であるギア部材と、ギア部材に対して摺動可能であり前記繰出リールまたは前記巻取リールの何れかを支持する支軸部材との間に滑り機構を構成しており、
前記滑り機構が、
前記ギア部材に設けられ、環状溝を介して外歯部から隔てられたボス軸部と、
前記支軸部材に設けられ、周方向に連続した略円筒状をなし、前記ボス軸部が挿入されて少なくとも一部が前記環状溝に収まる嵌装部と、
前記環状溝と前記嵌装部との間に設けられ、嵌装部から前記ボス軸部が抜出するのを抑止する抜止構造と
を備えることを特徴とする転写具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に鑑みてなされた本発明は、有効に転写具に実装される滑り機構の小形化を図ることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、転写テープを繰出リールから繰り出し転写ヘッドを経由して巻取リールに巻き取るとともに、繰出リールの回転と巻取リールの回転とを動力伝達装置を介して連動させる転写具であって、前記動力伝達装置の要素であるギア部材と、ギア部材に対して摺動可能であり前記繰出リールまたは前記巻取リールの何れかを支持する支軸部材との間に滑り機構を構成しており、前記滑り機構が、前記ギア部材に設けられ、環状溝を介して外歯部から隔てられたボス軸部と、前記支軸部材に設けられ、周方向に連続した略円筒状をなし、前記ボス軸部が挿入されて少なくとも一部が前記環状溝に収まる嵌装部と、前記環状溝と前記嵌装部との間に設けられ、嵌装部から前記ボス軸部が抜出するのを抑止する抜止構造とを備えていることを特徴とする。なお、支軸部材は、テープを巻き回す繰出リールまたは巻取リールと一体化していることがある。
【0010】
このようなものであれば、ギア部材及び支軸部材の寸法、またこれらを機構部品とした滑り機構の寸法を可及的に小さくすることが可能になる。
【0011】
前記環状溝に設けられ、環状溝の内周面から突出した内向突片と、前記嵌装部に設けられ、嵌装部の外周面から突出し、
前記嵌装部内に前記ボス軸部が挿入された状態で前記内向突片よりも軸心方向に沿って内奥に位置づけられる外向突片とをさらに備え、前記内向突片と
前記外向突片との係わり合いによって前記抜止構造が構築されるものであれば、ギア部材及び支軸部材の形状が徒に複雑化しない。
【0012】
前記内向突片は周方向に沿って間欠的に複数設けられ、前記外向突片は周方向に連続した略円環状をなしていることが好ましい。
【0013】
前記ボス軸部が、その外周面から突出した凸部を有しており、前記凸部と前記内向突片とが径方向に沿って対向していれば、これら凸部と内向突片とで支軸部材の嵌装部を部分的に挟んで適確に位置決めすることができる。即ち、支軸部材の軸心がギア部材の軸心から大きく偏倚してしまうことを予防でき、嵌装部から前記ボス軸部が不意に抜出するのをより確実に阻むことができる。
【0014】
前記内向突片が周方向に沿って間欠的に複数設けられている場合、前記凸部もまた周方向に沿って間欠的に複数形成される。
【0015】
前記嵌装部の一部が、その他の部分よりも外方に張り出したフランジとなっており、前記フランジに前記内向突片が近接し、なおかつフランジに前記外向突片が設けられているならば、嵌装部の強度をフランジで補強して嵌装部の変形を抑止できる。これにより、内向突片と外向突片との係わり合いが不意に解消されるおそれが少なくなり、抜止構造としての安定性が増す。
【0016】
前記支軸部材の嵌装部が、前記繰出リールまたは前記巻取リールの何れかに挿入され得る外形寸法を有していれば、嵌装部もリールの軸支に寄与し、転写具の軸心方向寸法の小形化に奏効し得る。
【0017】
前記支軸部材を、前記嵌装部よりも小径の基軸部の基端側に嵌装部が連接し、さらに基軸部の外周面からリブが突出したものとし、前記リブの外側端面と前記嵌装部の外周面とが略面一となっていれば、リールに対して支軸部材を挿脱する操作が円滑化する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有効に転写具に実装される滑り機構の小形化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1ないし
図17に示す本実施形態の転写具Tは、転写具本体1と、転写具本体1内部に収納する交換可能なリフィル2とを主たる要素とする。
【0021】
リフィル2は、粘着剤や修正テープ、顔料等の転写物を保持するもので、
図3、
図5、及び
図6に示すように、転写物を付着させた転写テープを巻き回してなる繰出リール21と、繰出リール21から繰り出される転写テープを巻き掛けた転写物を転写対象面に押圧転写するための転写ヘッド22と、転写ヘッド22を経由した転写テープを巻き取る巻取リール23と、これら繰出リール21、転写ヘッド22及び巻取リール23を支持するリフィルフレーム24とを具備する。
【0022】
転写具本体1は、
図5及び
図7に示すように、転写具Tの外面を形成する外ケース3と、外ケース3に対して長手方向にスライド可能に取り付けてなりリフィル2を支持するスライドフレーム4と、スライドフレーム4を収納位置Sまたは使用位置Uの一方に選択的に保持する選択保持機構たるノック機構5と、外ケース3に片持ち支持させてなるキャップ6と、スライドフレーム4の移動に連動してキャップ6を閉止位置Cから開放位置Oに、またはその逆方向に駆動するキャップ開閉機構7とを具備する。
【0023】
外ケース3は、
図3及び
図5に示すように、第1のケース部材31と、第1のケース部材31に対して着脱可能な第2のケース部材32と、第2のケース部材32の外面と略面一な外面を有する第3のケース部材33とを具備する。また、この外ケース3には、転写ヘッド22を露出させるための第1の開口3aと、ノック機構5の後述するノック棒51を露出させるための第2の開口3bとを形成している。
【0024】
第1のケース部材31は、
図3及び
図5に示すように、面板部311と、面板部311の周縁部から起立させて設けた周壁部312とを有する。面板部311の内面には、スライドフレーム4のスライド移動の方向を案内するためのガイド爪311aを設けている。また、周壁部312の第2の開口3b側の端部には、第3のケース部材33に係り合わせるための取付爪312aを設けている。さらに、周壁部312の第1の開口3a側の端部及び長手方向中央部には、第2のケース部材32に係り合わせるための取付爪312bを設けている。
【0025】
第2のケース部材32は、
図3及び
図5に示すように、第1のケース部材31の面板部311と対向する面板部321と、面板部321の前端部を除く部位から垂下させて設けた周壁部322とを有する。この周壁部322に設けた図示しない係合凹部を、第1のケース部材31に設けた取付爪312bと係り合わせることにより、第2のケース部材32を第1のケース部材31に装着するようにしている。そして、面板部321の後端部に、第3のケース部材33に装着するための係止爪321aを設けている。
【0026】
第3のケース部材33は、
図3に示すように、第1のケース部材31の面板部311と対向し第2のケース部材32の面板部321と面一をなす面板部331と、面板部331の前端部を除く部位から垂下させて設けた周壁部332とを有する。この周壁部332に設けた図示しない係合凹部を、第1のケース部材31に設けた取付爪312aと係り合わせることにより、第3のケース部材33を第1のケース部材31に装着するようにしている。また、面板部311には、第2のケース部材32の係止爪321aと係り合うことが可能な図示しない係止凹部を設けている。そして、第3のケース部材33の係止凹部に第2のケース部材32の係止爪321aを係り合わせた状態で、スライドフレーム4が、
図3及び
図5に示すように、第1、第2、第3のケース部材31、32、33からなる外ケース3内に収納される。
【0027】
スライドフレーム4は、
図3及び
図7に示すように、第1のケース部材31のガイド爪311aにスライド可能に支持させてなるスライドフレーム本体41、スライドフレーム本体41から第2のケース部材32に向かう側に突出し繰出リール21の回転中心をなす繰出軸42、繰出軸42に軸支させるギア部材たる繰出ギア43、同じく繰出軸42に軸支させるとともに繰出リール21を支持する支軸部材たるクラッチ44、繰出ギア43に噛み合わせてなる第1の中間ギア45、第1の中間ギア45に噛み合わせてなる第2の中間ギア46、リフィルフレーム24側の巻取リール23を軸支して巻取リール23の回転中心をなす巻取軸47を備えている。そして、このスライドフレーム4は、ノック機構5により収納位置Sから使用位置U、またはその逆方向に駆動される。繰出ギア43及びクラッチ44は滑り機構8(摩擦クラッチ機構)を構成する。滑り機構8については、後述する。
【0028】
ノック機構5は、筆記具に用いられるノック機構5として広く知られているものと同様の機構を有する。具体的には、外ケース3の第2の開口3bに挿し通してなるノック棒51と、後端部をこのノック棒51に接続しているとともに前端部をスライドフレーム4に接続している図示しないノックカムと、移動端すなわち後端部をスライドフレーム4に接続してなるとともに固定端すなわち前端部を第1のケース部材31に設けた固定側リテーナ313に接続してなる付勢手段であるコイルバネ52とを備えている。このノック機構5のコイルバネ52は、前述したように固定端を第1のケース部材31の面板部311に備えた固定側リテーナ313に接続してなるとともに、自由端をスライドフレーム4に備えた移動側リテーナ411に接続してなる。また、移動側リテーナ411からは固定側リテーナ313に向かう方向に延びるバネ支持棒411aを突出させて設けていて、バネ支持棒411aにコイルバネ52を挿し通している。一方、固定側リテーナ313には、バネ支持棒411aを挿し通すことが可能な支持棒挿通孔313aを設けていて、スライドフレーム4の移動の際にはバネ支持棒411aが支持棒挿通孔313aを通過する。そして、このノック機構5は、スライドフレーム4を収納位置Sに配している状態でノック棒51を押圧する操作を加えると、スライドフレーム4を使用位置Uまで駆動し、スライドフレーム4が使用位置Uまで移動した際にスライドフレーム4を使用位置Uに保持するように構成している。一方、スライドフレーム4を使用位置Uに保持した状態でノック棒51を押圧する操作を加えると、コイルバネ52の付勢力によりスライドフレーム4を収納位置Sまで移動し、スライドフレーム4をそのまま収納位置Sに保持するように構成している。
【0029】
キャップ6は転写ヘッド22を遮蔽する閉止位置Cと転写ヘッド22を外部に露出させる開放位置Oとの間で移動可能であり、
図1〜
図5、及び
図7〜
図10に示すように、第1のケース部材31の面板部に片持ち支持される支持部61と、支持部61の先端に接続し閉止位置Cにおいて転写ヘッド22を遮蔽する遮蔽部62と、遮蔽部62に接続し第1及び第2のケース部材32の周壁部312、322に沿う板片状のストッパ部63とを具備する。支持部61には、第1のケース部材31の面板部311に形成した円弧状の案内スリット311bに係り合う案内爪611、612を設けていて、これらの案内爪611、612が案内スリット311b内を移動することにより第1のケース部材31の面板部311の法線に沿う軸を中心として回転移動する。そして、上述したように、この支持部61の先端に遮蔽部62を接続している。遮蔽部62は、閉止位置Cにおいて外ケース3の第1の開口3aを遮蔽する板状の部位であり、この遮蔽部62の一端部にストッパ部63を接続している。ストッパ部63は、上述したように第1及び第2のケース部材31、32の周壁部312、322に沿う板片状の部位であり、開放位置Oにおいて第1及び第2のケース部材31、32に衝き当たることによりキャップ6の回転移動を規制する。
【0030】
キャップ開閉機構7は、前述したように、スライドフレーム4の移動に連動してキャップ6を閉止位置Cから開放位置Oに、またはその逆方向に駆動する。具体的には、このキャップ開閉機構7は、スライドフレーム4の面板部の第1のケース部材31に向かう側の面に設けたキャップ駆動突起71と、スライドフレーム4の第1のケース部材31に向かう側の面の両側縁に設けたキャップ案内突条72と、キャップ6の支持部61の後部に設けてなる断面視コの字状の突起でありキャップ駆動突起71及びキャップ案内突条72に駆動される被駆動部73とを利用して構成している。被駆動部73は、キャップ6が閉止位置Cに位置する際にキャップ駆動突起71の転写ヘッド22側に位置する第1の壁体731と、キャップ6が開放位置Oに位置する際にキャップ駆動突起71のノック棒51側に位置する第2の壁体732と、キャップ6が閉止位置Cに位置する際にキャップ駆動突起71のノック棒51側に位置する第3の壁体733とを一体に有する。
【0031】
スライドフレーム4が
図8に示す収納位置Sから
図9に示す収納位置Sと使用位置Uとの中間位置まで移動する際には、キャップ駆動突起71が被駆動部73の第1の壁体731を押圧することによりキャップ6が駆動され、キャップ6の案内爪611が案内スリット311b内を移動することにより、キャップ6は閉止位置Cから閉止位置Cと開放位置Oとの中間まで移動する。それからさらにスライドフレーム4が
図9に示す収納位置Sと使用位置Uとの中間から
図10に示す使用位置Uまで移動する際には、被駆動部73とキャップ案内突条72とが互いに接触することによりキャップ6が駆動され、引き続きキャップ6の案内爪611が案内スリット311b内を移動することにより、キャップ6は閉止位置Cと開放位置Oとの中間から開放位置Oまで移動する。一方、スライドフレーム4が開放位置Oから収納位置Sに向けて移動する際には、キャップ開閉機構7は上述したものと逆方向に作動する。すなわち、スライドフレーム4が使用位置Uから収納位置Sと使用位置Uとの中間まで移動する際には、被駆動部73とキャップ案内突条72が互いに接触することによりキャップ6が駆動され、キャップ6の案内爪611が案内スリット311b内を移動することにより、キャップ6は閉止位置Cと開放位置Oとの中間まで移動する。その後、被駆動部73とキャップ案内突条72との接触はなくなるが、被駆動部73はキャップ駆動突起71と接触し、このキャップ駆動突起71が被駆動部73の第2の壁体732及び第3の壁体733を順次押圧することによりキャップ6が駆動され、引き続きキャップ6の案内爪611が案内スリット311b内を移動することにより、キャップ6は閉止位置Cまで移動する。
【0032】
さらに本実施形態では、キャップ6を前記開放位置Oに保持するキャップ保持部74を備えている。このキャップ保持部74は、キャップ6の案内爪611の長手方向一端部に設けた保持突起741と、スライドフレーム4の裏面に設けてなり保持突起741と係り合う保持凹部742とが係り合うことにより機能する。
【0033】
しかして、再度リフィル2に目を転じると、リフィル2は、転写具本体1のスライドフレーム4に支持させた状態で、スライドフレーム4と一体的に転写ヘッド22が外部に露出する使用位置Uと転写ヘッド22が転写具本体1内に収納させる収納位置Sとの間で移動可能である。また、このリフィル2は、非使用時に前記繰出リール22の回転を阻止する空転防止機構25を備えている。
【0034】
リフィルフレーム24は、繰出リール21を軸支する繰出リール支持部241と、巻取リール23を軸支する巻取リール支持部242と、巻取リール23に設けたラチェット歯23aに係り合わせてなり巻取リール23の逆転を防止するためのラチェット爪243と、繰出リール21に設けた係止歯21aに係り合わせてなる係止爪244xを先端に設けた係止アーム244とを有する。また、このリフィルフレーム24の転写ヘッド22側の端部には、内部に長孔245aを有する係合受部245を設けている。係合受部245は、リフィル2をスライドフレーム4に取り付けた状態で、スライドフレーム4に設けた係合ピン412を係合受部245内部の長孔245aに収納してなり、これら係合受部245と係合ピン412とにより、リフィルフレーム24をスライドフレーム4に移動可能に支持する可動係合部Kを形成している。
【0035】
繰出リール21には、上述した繰出リール支持部241に対して転写テープが引き出された際に、クラッチ44から回転力の伝達を受けるための噛合穴211を中心部に設けている。また、上述したように、繰出リール21のリフィルフレーム24側に向かう面には、リフィルフレーム24の係止爪244xに係り合う係止歯21aを設けている。また、本実施形態では、輸送中や保管中等、長期間使用しない状態で転写物が露出する部位を少なくすべく、転写テープの転写物を内面すなわちこの繰出リール21の中心に向かう側の面に保持させた状態で繰出リール21に巻き回している。そして、この操出リール21の転写対称面と反対側の部位から繰り出された転写テープは、巻取リール23の転写対称面に向かう部位にガイドされ、転写ヘッド22に導かれる。
【0036】
巻取リール23は、当該巻取リール23の主体をなし巻取リール支持部242に支持される巻取リール本体231と、巻取リール本体231のリフィルフレーム24側に設けてなりリフィルフレーム24のラチェット爪243に係り合うラチェット歯23aと、巻取リール本体231のスライドフレーム4と対向する側に設けてなりスライドフレーム4の第2の中間ギア46に対して噛み合い得る巻取ギア232とを有している。巻取ギア232は、リフィル2交換時に第2の中間ギア46に簡便に噛み合わせることができるよう、傘歯車状のものとなっている。また、本実施形態では、この巻取リール23は、前記繰出リール21と比較して、転写ヘッド22に近い側に配している。
【0037】
空転防止機構25は、
図11及び
図12に示すように、リフィルフレーム24の係止アーム244の先端に設けた係止爪244xと、繰出リール21に設けた係止歯21aとを係り合わせることにより、リフィルフレーム24の回転を阻止する。より具体的には、係止アーム244は、リフィルフレーム24の長手方向に伸びるアーム本体244aと、アーム本体244aの中間部からリフィルフレーム24の両側縁に向けて伸びる軸部244bと、軸部244bからリフィルフレーム24の両側縁に向かいつつ転写ヘッド22に向かう方向に伸びる弾性支持部244cとを有する。アーム本体244aは、中間部に設定した支点244zを中心にシーソー運動可能である。この支点244zは、スライドフレーム4のノック棒51側の端縁からリフィルフレーム24側に突出させて設けたアーム支持部413に衝き当たる箇所である。また、アーム本体244aのノック棒51側の端部には、リフィル2の移動に伴い第2のケース部材32に設けた係止解除突起321bに衝き当たる突起244yを設けている。この突起244yが係止解除突起321bに衝き当たると、アーム本体244aは支点244zを軸に回転移動し、
図13に示すように、係止爪244xが係止歯21aから離間する。なお、係止アーム244の突起244yが係止解除突起321bに衝き当たった状態では、係止アーム244には、係止爪244xと係止歯21aとを係り合わせる方向への弾性力が蓄積される。そして、リフィルフレーム24のアーム本体244aの周囲の部位には、このアーム本体244aをリフィルフレーム24の厚さ方向に移動可能にすべく切欠き部24xを設けている。
【0038】
さらに、リフィル2と第2のケース部材32との間には、空転防止機構25によるリフィル2の回転阻止状態を解除するための解除機構Kを設けている。解除機構Kは、係止アーム244に設けた前記突起244yと、第2のケース部材32に設けた前記係止解除突起321bを利用して構成している。この解除機構Kは、転写具Tの使用時において、以下のようにして機能する。
【0039】
転写具Tの使用時には、ノック機構5が作動することにより、スライドフレーム4及びこのスライドフレーム4に支持させたリフィルフレーム24が収納位置Sから使用位置Uに向けて移動する。その際、リフィルフレーム24が使用位置Uまで移動すると、係止アーム244の突起244yが第2のケース部材32の係止解除突起321bに衝き当たり、アーム本体244aが支点244zを軸として回転移動し、
図13に示すように、係止アーム244の先端部の係止爪244xが繰出リール21の係止歯21aと離間する。結果、繰出リール21が回転可能になる。
【0040】
逆に、転写具Tの非使用時には、ノック機構5が作動することにより、スライドフレーム4及びこのスライドフレーム4に支持させたリフィルフレーム24が使用位置Uから収納位置Sに向けて移動する。その際、リフィルフレーム24が使用位置Uから移動すると、係止アーム244の突起244yが第2のケース部材32の係止解除突起321bに衝き当たった状態が解除される。その際、アーム本体244aが弾性力により支点244zを軸として回転移動し、
図12に示すように、この係止アーム244の先端部の係止爪244xが繰出リール21の係止歯21aと係り合う。結果、繰出リール21の回転が再び規制される。
【0041】
以降、繰出ギア43とクラッチ44とがなす滑り機構(摩擦クラッチ機構)8について詳述する。転写具Tの使用に際し、使用者が転写具本体1を把持し、転写ヘッド22及び転写テープを転写対象面に押し付けながら転写具本体1を移動させると、転写ヘッド22に巻き掛けた転写テープが転写対象面に引き摺られ、転写テープが繰出リール21から引き出される。転写テープから繰出リール21に与えられる回転駆動力は、繰出リール21と一体的に回転するクラッチ44に伝わり、さらにクラッチ44から繰出ギア43に伝わる。動力伝達装置9を構成する繰出ギア43、第1の中間ギア45及び第2の中間ギア
46は、この回転駆動力を巻取ギア232に伝達する。巻取ギア232は巻取リール23に一体成形されており、巻取ギア232を介して回転駆動される巻取リール23は転写対象物を転写済みのテープを巻き取る。
【0042】
繰出リール21に巻かれているテープの残量が減少し、同時に巻取リール23に巻き取られるテープの量が増加すると、繰出リール21の実質的な巻径が小さくなり、巻取リール23の実質的な巻径が大きくなる。繰出ギア43と巻取ギア232との増速比(または、減速比)は一定であるので、そのままだと巻取リール23へのテープの巻き取り速度が上がり、テープの張力が増大する。
【0043】
このような張力の増大を防止するため、クラッチ44を繰出ギア43に対して摩擦を伴いつつ滑らせることで両者の回転数に差を生じさせ、繰出リール21のテープ繰り出し速度と巻取リール23のテープ巻き取り速度とを合致させる滑り機構8を設けているのである。滑り機構8における滑りの度合い、換言すればクラッチ44と繰出ギア43との回転数差は、転写テープが未使用であるときには0であるか小さく、転写テープが使用されその残量が減るにつれて大きくなる。
【0044】
図14及び
図15に示すように、繰出ギア43は、外周に第1の中間ギア45に噛み合う外歯を形成した外歯部431と、中心部位にあって軸心方向に伸長したボス軸部432と、外歯部431とボス軸部432とを隔てる軸心方向に開口した環状溝433とを有している。ボス軸部432は、概ね厚肉の円筒状であるが、先端側を複数箇所で切り欠いてあり、それら切り欠き432bによって周方向に連続せず断裂している。図示例では、切り欠き432bを複数(三つ)形成しているが、切り欠き432bは一つでもよい。加えて、その外周面に、周方向に沿って間欠的に複数の凸部432aを有している。各凸部432aは、ボス軸部432の外周面から若干ながら膨出している。環状溝433には、周方向に沿って間欠的に複数の内向突片433aを設けてある。各内向突片433aは、環状溝433の開口幅を狭めるように環状溝433の内周面(径方向に対向した両壁面のうち外周側にあって内側を向く面)から径方向に沿って内方に延出しており、それぞれが径方向に沿って各凸部432aと対向している。
【0045】
図14及び
図16に示すように、クラッチ44は、基軸部441と、基軸部441の基端側に連接する嵌装部442とを有している。基軸部441は嵌装部442よりも小径かつ長尺な略円筒状をなし、嵌装部442は基軸部441よりも大径かつ短尺な略円筒状をなす。基軸部441、嵌装部442何れも、ボス軸部432と比較して薄肉であり、周方向に沿って断裂せずに一周連続している。嵌装部442は、軸心方向に対し直交する中空円板状の連続部443を介して基軸部441に連なる。嵌装部442の一部は、その他の部分よりも径方向に沿って外方に張り出したフランジ442aとなっている。このフランジ442aの終端縁に、フランジ442aの外周面から突出した外向突片442bを設けている。外向突片442bは、周方向に連続した略円環状をなす。基軸部441の外周面からは、複数本のリブ441aが径方向に沿って突出している。各リブ441aは、基軸部441及び連続部443に接合する。各リブ441aの外側端面は、基端側が嵌装部442の外周面と略面一に連続し、先端側がテーパ状となっている。
【0046】
前記クラッチ44は、その嵌装部442の内部にボス軸部432を挿入し、同時に嵌装部442のフランジ442aを環状溝433に挿入することによって繰出ギア43に組み付ける。
図15及び
図17に示すように、クラッチ44を繰出ギア43に組み付けた状態では、嵌装部442の内周面にボス軸部432の凸部432aが密接する。並びに、嵌装部442の外周面、特にフランジ442aの外周面に、環状溝433の内向突片433aが近接または当接する。また、連続部443の基端側の面に、ボス軸部432の先端面が近接または当接する。さらに、外向突片442bが、内向突片433aよりも軸心方向に沿って内奥(ボス軸部432の基端側に向かう方、
図17における上方)に位置づけられる。これら外向突片442bと内向突片433aとの係わり合いにより、嵌装部442から前記ボス軸部432が抜出するのを抑止、ひいてはクラッチ44が繰出ギア43から離脱するのを抑止する抜止構造が構築される。
【0047】
この滑り機構8では、クラッチ44の嵌装部442の内周面と繰出ギア43のボス軸部432の凸部432aとの摺動摩擦によりトルクを伝達する。切り欠き432bを形成したボス軸部432は、その径を収縮させるように弾性変形することが可能であり、弾性変形の反発により凸部432aを嵌装部442の内周面に押圧して適切な大きさの摩擦トルクを発生させることができる。嵌装部442の外周面には、環状溝433の内周面から突出した内向突片433aが近接しており、この内向突片433aがボス軸部432に対する嵌装部442の径方向の相対変位を規制する。そのため、ボス軸部432が塑性変形してしまうほどに大きく変形させられることはなく、機構の耐久性能並びにボス軸部432の抜け止めを維持し得る。
【0048】
これら繰出ギア43及びクラッチ44はともに、スライドフレーム4に一体成形された繰出コア42に軸支させる。即ち、
図17に示しているように、繰出コア42を、繰出ギア43側からボス軸部432及び基軸部441の内空に挿入することで、繰出ギア43及びクラッチ44をスライドフレーム4に回転可能に支持させる。その上で、リフィル2をスライドフレーム4に取り付けた暁には、クラッチ44の基軸部441及び嵌装部442のフランジ442aを除いた部分が、繰出リール21の内部に収まる。クラッチ44の基軸部441から突出したリブ441aは、繰出リール21内周の凹凸に掛かり、繰出リール21の回転とクラッチ44の回転とを同期させる役割を担う。
【0049】
本実施形態によれば、転写テープを繰出リール21から繰り出し転写ヘッド22を経由して巻取リール23に巻き取るとともに、繰出リール21の回転と巻取リール23の回転とを動力伝達装置9を介して連動させる転写具Tであって、前記動力伝達装置9の要素であるギア部材43と、ギア部材43に対して摺動可能であり前記繰出リール21を支持する支軸部材44との間に滑り機構8を構成しており、前記滑り機構8が、前記ギア部材43に設けられ、環状溝433を介して外歯部431から隔てられたボス軸部432と、前記支軸部材44に設けられ、周方向に連続した略円筒状をなし、前記ボス軸部432が挿入されて少なくとも一部が前記環状溝433に収まる嵌装部442と、前記環状溝433と前記嵌装部442との間に設けられ、嵌装部442から前記ボス軸部432が抜出するのを抑止する抜止構造とを備えているため、ギア部材43及び支軸部材44の寸法、またこれらを機構部品とした滑り機構8の寸法を可及的に小さくすることが可能になる。
【0050】
前記環状溝433に設けられ、環状溝433の内周面から突出した内向突片433aと、前記嵌装部442に設けられ、嵌装部442の外周面から突出し、
前記嵌装部442内に前記ボス軸部432が挿入された状態で前記内向突片433aよりも軸心方向に沿って内奥に位置づけられる外向突片442bとをさらに備え、前記内向突片433aと
前記外向突片442bとの係わり合いによって前記抜止構造が構築されるものであるため、ギア部材43及び支軸部材44の形状が徒に複雑化しない。
【0051】
前記内向突片433aは周方向に沿って間欠的に複数設けられ、前記外向突片442bは周方向に連続した略円環状をなしており、嵌装部442からボス軸部432が抜出するのを適切に防止してクラッチ44の繰出ギア43からの離脱を阻止できる。
【0052】
前記ボス軸部432が、その外周面から突出した凸部432aを有しており、前記凸部432aと前記内向突片433aとが径方向に沿って対向しているため、これら凸部432aと内向突片433aとで支軸部材44の嵌装部442を部分的に挟んで適確に位置決めすることができる。即ち、支軸部材44の軸心がギア部材43の軸心から大きく偏倚してしまうことを予防でき、嵌装部442から前記ボス軸部432が不意に抜出するのをより確実に阻むことができる。
【0053】
前記内向突片433aが周方向に沿って間欠的に複数設けられているのに合わせて、前記凸部432aもまた周方向に沿って間欠的に複数形成されており、各内向突片433aが各凸部432aにそれぞれ対向する。
【0054】
前記嵌装部442の一部が、その他の部分よりも外方に張り出したフランジ442aとなっており、前記フランジ442aに前記内向突片433aが近接し、なおかつフランジ442aに前記外向突片442bが設けられているため、嵌装部442の強度をフランジ442aで補強して嵌装部442の変形を抑止できる。これにより、内向突片433aと外向突片442bとの係わり合いが不意に解消されるおそれが少なくなり、抜止構造としての安定性が増す。
【0055】
前記支軸部材44の嵌装部442が、前記繰出リール21に挿入され得る外形寸法を有しているため、嵌装部442もリール21の軸支に寄与し、転写具Tの軸心方向寸法の小形化に奏効し得る。
【0056】
前記支軸部材44を、前記嵌装部442よりも小径の基軸部441の基端側に嵌装部442が連接し、さらに基軸部441の外周面からリブ441aが突出したものとし、前記リブ441aの外側端面と前記嵌装部442の外周面とが略面一となっているため、リフィル2交換時にリール21に対して支軸部材44を挿脱する操作が円滑化する。
【0057】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。列挙すると、上記実施形態では、支軸部材44の嵌装部442の内周面とギア部材43のボス軸部432の外周面の凸部432aとの間で摩擦を発生させていたが、ボス軸部432に凸部432aを成形せず、ボス軸部432の外周面の広範囲を嵌装部442の内周面に摺接させてもよい。
【0058】
ボス軸部432の凸部432aを、
図14等に示しているような小形なものとせず、周方向に沿って拡張した形状に成形することもできる。例えば、
図18に示すように、凸部432aを周方向に伸びた凸条としてもよい。このような態様とすることで、凸部432aと嵌装部442の内周面とが接する面積が周方向に増大する。従って、嵌装部442の内周面が小形の凸部432aに圧迫され、経年変化に伴い塑性変形して局所的に凹むおそれが低減する。
【0059】
並びに、
図19に示すように、周方向に伸びる凸条状の凸部432aを、軸心方向に沿って遷移するように傾斜させていてもよい。さすれば、滑りが発生して支軸部材44が繰出ギア43に対し相対回転するときに、嵌装部442の内周面において凸部432aに接する接触箇所が軸心方向に変位することとなる。そのため、嵌装部442の内周面の塑性変形または摩耗が一層抑制され、滑り機構の寿命が延びてより長期に亘る使用に耐え得るものとなる。
【0060】
ボス軸部432の凸部432aを、周方向に沿って間欠的なものとせず、一周連続した円環状の凸条としても構わない。
【0061】
上記実施形態では、支軸部材44の嵌装部442の内周面とギア部材43のボス軸の内周面(の凸部432a)との間で摩擦を発生させていたが、これとともに、あるいはこれに替えて、支軸部材44の嵌装部442の外周面とギア部材43の環状溝433の内向突片433aとを密接させて両者間で摩擦を発生させる構成としてもよい。
【0062】
支軸部材44の嵌装部442にフランジ442aを成形することは必須ではない。フランジ442aを有さない嵌装部442の外周面を内向突片433aに近接または当接させるようにしてもよい。
【0063】
内向突片433aを、周方向に沿って一周連続したものとしてもよい。外向突片442bを、周方向に沿って一周連続していない、一部分断したものとしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、テープを繰り出す繰出リール21側に滑り機構8を配設していたが、テープを巻き取る巻取リール23側に同様の滑り機構を配設することもできる。この場合、巻取リール23側に、当該巻取リール23を軸支する支軸部材と、支軸部材が組み付けられるとともに中間ギア46と噛合するギア部材とを設ける。
【0065】
また、リフィル交換をしない使い切り型の転写具Tにおいては、テープを巻き回すリール21と、リール21を支える支軸部材44とを一体化することが許される。
【0066】
加えて、嵌装部442からボス軸部432が抜出するのを抑止する抜止構造もまた、上記実施形態の如き態様には限定されない。例えば、
図20に示すように、環状溝433の内周面と、この内周面に近接または当接する嵌装部442(または、嵌装部442の一部をなすフランジ442a)の外周面とのうち一方に周方向に沿って延伸する凹条を形成し、他方にこの凹条に差し入る突片または凸条を形成して、両者の凹凸係合を利用した抜止構造を構築することが考えられる。
図20は、環状溝443側に凹条433bを設け、嵌装部442側に突片または凸条442cを設けた態様を示している。
【0067】
その他各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。