(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共重合体(A)が、前記化学式(1)で表される基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)とを、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト又は1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートによって重合して得られる共重合体である、請求項1又は請求項2に記載の防汚塗料組成物。
【背景技術】
【0002】
フジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ、スライム等の水棲汚損生物が、船舶(特に船底部分)や漁網類、漁網付属具等の漁業具や発電所導水管等の水中構造物に付着することにより、それら船舶等の機能が害される、外観が損なわれる等の問題がある。
従来使用されていた有機錫含有共重合体の使用禁止以降、毒性が低く環境への負荷が少ないトリオルガノシリル基含有共重合体が開発され、防汚塗料組成物に使用されてきた(特許文献1)。
【0003】
これらの共重合体は、一般に、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、AIBNなどの汎用重合開始剤を用いて重合されたもので、重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,0000位のものが多用されてきた。
【0004】
しかし、前記の汎用重合開始剤により重合されるトリオルガノシリルエステル共重合体を防汚塗料組成物に用いると、その防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜は、初期の段階では、海水中で一定の速度で溶解するものの、塗膜の溶解速度が徐々に大きくなり長期間経過すると、塗膜の溶解速度が大きくなりすぎてしまい、塗料設計が困難であるという問題があったため、前記トリオルガノシリルエステル含有共重合体に加えて、ロジン、ロジン誘導体、又はそれらの金属塩を用いることにより、長期間安定した塗膜溶解を発揮する防汚塗料が提案されてきた(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、前記防汚塗料は、長期間安定した塗膜溶解を発揮するものの、海水中に長期間浸漬した後の塗膜は、クラック等の塗膜異常を引き起こすという問題があった。特に、低分子量の該共重合体を用いた場合には、その問題が顕著に現れる。
【0006】
また、従来から、防汚塗料組成物に用いられる前記共重合体の溶液は、ステンレス鋼製の反応槽、外部ジャケット、内部コイル、コンデンサー、撹拌器等を備えたバッチ式反応装置で一般的に製造されている。このバッチ式反応装置は、外部ジャケットと内部コイルに冷媒を流すことで温度制御をしているが、前記共重合体の製造を連続して繰り返すと、反応槽内に、溶媒に不溶な共重合体由来のゲル化物が付着して蓄積されていくという問題があった。そのため、前記共重合体の製造をする際には、反応槽内の洗浄に過大な労力と時間を要し、生産性の面で大きな問題を有していた。さらに、内部コイルに付着したゲル化物によって冷却能力が低下し、重合時の発熱の制御が困難となる問題もあった。
【0007】
付着した前記の共重合体由来のゲル化物の洗浄方法としては、高濃度のアルカリ(15〜30重量%)溶液を高圧にしてバッチ式反応装置を洗浄する方法が提案されている(特許文献3)。しかし、高濃度のアルカリを高温高圧下で接触させるため、ステンレス鋼製の反応槽が腐食して、金属原子が共重合体溶液に混入し着色する、また経時の洗浄によって反応槽が傷み寿命を短くするという問題がある。
【0008】
また、熱可塑性アクリル共重合体由来のゲル化物の洗浄法として、アルカリ金属水酸化物(1〜15重量%未満)と1価アルコール(3〜50重量%以下の炭素数2または3)1種以上とを含有する洗浄水溶液を用いてステンレス鋼製の反応槽を洗浄する方法なども提案されているが(特許文献4)、常圧下の穏やかな条件のものであり、完全に問題を解消するまでに至らない。そして、そもそもゲル化物の洗浄作業が依然必要なため、共重合体の生産性が向上するまでに至らない。
【0009】
さらに、ゲル物の生成自体を抑制する方法として、外部循環冷却装置を有するバッチ式反応装置が提案されているが(特許文献5)、反応槽内の内部コイル等にゲル化物は生成しなくなるものの、外部循環冷却装置内にはゲル化物が生成するため、結局、洗浄作業を必要とするもので、共重合体の生産性が向上するまでに至らない。
【0010】
以上のように、一般的に使用されるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、AIBNなどの重合開始剤を用いて重合された前記共重合体には、一定期間海水へ浸漬した後、塗膜が海水中でクラック等の異常を起こすなどの塗膜物性不良、およびそれに起因し、長期の安定した塗膜溶解性および防汚性能を維持できない問題、並びに、ゲル化物の生成に起因し、生産性が悪くなるなどの製造上の問題を有していた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0018】
<共重合体(A)>
本発明の共重合体(A)は、化学式(1)で表される基を側鎖に有し、かつ、化学式(2)で表される基と化学式(3)で表される基の少なくとも一方を末端に有する。共重合体(A)は、化学式(2)で表される基と化学式(3)で表される基の両方を末端に有することが好ましいが、どちらか一方のみを末端に有してもよい。
化学式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ同一又は異なって、炭素数3〜6のα位が分岐したアルキル基若しくはフェニル基を示す)
化学式(2):
【化2】
化学式(3):
【化3】
【0019】
炭素数3〜6のα位が分岐したアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、テキシル基等が挙げられる。
特に、本発明では、R
1、R
2及びR
3として特定の基を選択することにより、塗膜異常を起こしにくく、且つ、耐水性に優れた防汚塗膜を形成できる。このような観点から、R
1、R
2及びR
3としては、それぞれ同一又は異なって、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基及びフェニル基であることが好ましく、イソプロピル基であることがより好ましい。
【0020】
<<共重合体(A)の合成>>
共重合体(A)は、例えば、下記単量体(a)及び下記単量体(b)との混合物を重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト又は1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートによって重合させることにより得ることができる。重合開始剤の使用量を適宜設定することにより、共重合体Aの分子量を調整することができる。必要に応じて連鎖移動剤等を使用できる。
【0021】
<<単量体(a)>>
単量体(a)は、上記化学式(1)で表される基を有するエチレン性不飽和単量体(a)である。
【0022】
単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルt−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルテキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジs−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジフェニルテキシルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジフェニルシリル、マレイン酸ビス(トリイソプロピルシリル)、マレイン酸メチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸エチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸n−ブチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸イソブチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸t−ブチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸n−ペンチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸イソペンチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸2−エチルヘキシルトリイソプロピルシリル、マレイン酸シクロヘキシルトリイソプロピルシリル、フマル酸ビス(トリイソプロピルシリル)、フマル酸メチルトリイソプロピルシリル、フマル酸エチルトリイソプロピルシリル、フマル酸n−ブチルトリイソプロピルシリル、フマル酸イソブチルトリイソプロピルシリル、フマル酸n−ペンチルトリイソプロピルシリル、フマル酸イソペンチルトリイソプロピルシリル、フマル酸2−エチルヘキシルトリイソプロピルシリル、フマル酸シクロヘキシルトリイソプロピルシリル等が挙げられる。
【0023】
特に、塗膜異常を起こしにくく、且つ、耐水性に優れた防汚塗膜を形成できる点で、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリs−ブチルシリル及び(メタ)アクリル酸t−ブチルジフェニルシリル、マレイン酸イソペンチルトリイソプロピルシリルが好ましく、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、マレイン酸イソペンチルトリイソプロピルシリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和単量体(a)は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0024】
<<単量体(b)>>
単量体(b)は、前記単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−メトキシプロピル、アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、及び(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族化合物;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸化合物が挙げられる。この中でも特に、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)クリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸2−メトキシエチルがより好ましい。前記例示の単量体(b)は、前記共重合体(A)のモノマー成分として単独又は二種以上で使用できる。
【0025】
前記混合物中における前記単量体(a)の含有量は20〜70質量%程度が好ましく、20〜60重量%程度がより好ましい。前記単量体(a)の含有量が20〜70重量%程度の場合、得られる防汚塗料組成物を用いて形成した塗膜が、安定した塗膜溶解性を示し、長期間、防汚性能を維持できる。
【0026】
通常、他の重合開始剤から得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜100,000であるが、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト又は1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートを重合開始剤として用いて得られた共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、より低分子量でも適用可能であり、好ましくは、3,000〜100,000であり、特に好ましくは、3,000〜70,000である。Mwが3,000〜100,000の場合、塗膜が脆くならず、かつ、塗膜の溶解が適度であるため、所望の防汚効果を有効に発揮できる。重量平均分子量(Mw)3,000〜12,000の共重合体の場合、防汚塗料組成物の粘度を好適に下げることができ、塗料として使用する際の溶剤の使用量を効果的に削減することができる。Mwの測定方法としては、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。
【0027】
共重合体Aは、単量体(a)と単量体(b)とのランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。共重合体Aは、例えば、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト又は1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートの存在下、単量体(a)及び単量体(b)を重合させることにより得ることができる。このような重合開始剤を用いると、生成されるポリマー鎖の末端が化学式(2)及び/又は化学式(3)で表される基になる。
【0028】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、共重合体Aを得ることができる点で、溶液重合が好ましい。
【0029】
前記重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。この中でも特に、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、キシレンがより好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
重合反応における反応温度は、通常70〜140℃であり、好ましくは80〜120℃である。重合反応における反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定すればよく、通常4〜8時間程度である。重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0031】
本発明の組成物中における共重合体(A)の含有量は、特に制限されないが、本発明の組成物の固形分中、通常2〜50質量%、好ましくは4〜25質量%である。共重合体(A)の含有量が4質量%〜25質量%の場合、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が得られ、長期間の安定した表面更新性が維持でき、所望の防汚効果を有効に発揮することができる。また、塗膜の優れたリコート性能を発揮することができる。
【0032】
本発明における防汚塗料組成物には、共重合体(A)のほかに、必要に応じて、防汚薬剤、溶出調整剤、可塑剤、他の樹脂等を配合することができる。これにより、より優れた防汚効果を発揮できる。
【0033】
<防汚薬剤>
防汚薬剤としては、海棲汚損生物に対して殺傷又は忌避作用を有する物質であればよく、特に限定されない。例えば無機薬剤及び有機薬剤が挙げられる。
無機薬剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(一般名:ロダン銅)、キュプロニッケル、銅粉等が挙げられる。この中でも特に、亜酸化銅とロダン銅が好ましい。
有機薬剤としては、例えば、2−メルカプトピリジン−N−オキシド銅(一般名:カッパーピリチオン)等の有機銅化合物、2−メルカプトピリジン−N−オキシド亜鉛(一般名:ジンクピリチオン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(一般名:ジネブ)、ビス(ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛(一般名:ジラム)、ビス(ジメチルジチオカルバメート)エチレンビス(ジチオカーバメート)二亜鉛(一般名:ポリカーバメート)等の有機亜鉛化合物;ピリジン・トリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジル−ジフェニルメチルボラン、4−フェニルピリジル−ジフェニルボラン、トリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロン等の有機ボロン化合物;2,4,6−トリクロロマレイミド、N−(2,6ジエチルフェニル)2,3−ジクロロマレイミド等のマレイミド系化合物;その他、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン(一般名:シーナイン211)、3,4−ジクロロフェニル−N−N−ジメチルウレア(一般名:ジウロン)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン(一般名:イルガロール1051)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(一般名:クロロタロニル)、Nージクロロフルオロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N―p−トリルスルファミド(一般名:トリフルアニド)、Nージクロロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N−フェニルスルファミド(一般名:ジクロフルアニド)、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾ−ル(一般名:チアベンダゾール)、3−(ベンゾ〔b〕チエン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキシド(一般名:ベトキサジン)、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノー4−ブロモー5−トリフルオロメチル ピロール(一般名:ECONEA 028)等が挙げられる。この中でも特に、ジンクピリチオン、カッパーピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジル−ジフェニルメチルボラン、ベトキサジン、ジネブ、シーナイン211及びイルガロール1051が好ましく、カッパーピリチオン、ジンクピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン及びベトキサジンがより好ましい。
防汚薬剤としては、亜酸化銅、ロダン銅、ジンクピリチオン、カッパーピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジル−ジフェニルメチルボラン、ベトキサジン、ジネブ、シーナイン211及びイルガロール1051、トリフルアニド、ジクロフルアニドが好ましく、亜酸化銅、カッパーピリチオン、ジンクピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン及びシーナイン211がより好ましい。
これらの防汚薬剤は1種又は2種以上併用して使用できる。
本発明の組成物中における防汚薬剤の含有量は、特に制限されないが、本発明の組成物の固形分中、通常0.1〜75質量%、好ましくは1〜60質量%である。防汚薬剤の含有量が0.1質量%未満の場合、十分な防汚効果が得られないおそれがある。防汚薬剤の含有量が75質量%を超える場合、形成される塗膜が脆弱であり、さらに、被塗膜形成物に対する接着性も弱く、防汚塗膜としての機能を十分に果たせない。
【0034】
<溶出調整剤>
溶出調整剤としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体およびこれらの金属塩、モノカルボン酸およびその塩または脂環式炭化水素樹脂等が挙げられる。
前記ロジンとしては、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等を例示できる。前記ロジン誘導体としては、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等を例示できる。ロジンの金属塩およびロジン誘導体の金属塩としては、金属化合物とロジンとの反応物を使用でき、ロジンの金属塩としては、例えば、ガムロジン亜鉛(又は銅)塩、ウッドロジン亜鉛(又は銅)塩、トール油ロジン亜鉛(又は銅)塩等が挙げられる。ロジン誘導体の金属塩としては、水添ロジン亜鉛(又は銅)塩、不均化ロジン亜鉛(又は銅)塩、マレイン化ロジン亜鉛(又は銅)塩、ホルミル化ロジン亜鉛(又は銅)塩、重合ロジン亜鉛(又は銅)塩、等が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えば、炭素数5〜30程度の脂肪酸、合成脂肪酸、ナフテン酸等が挙げられる。モノカルボン酸の塩としては、銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
前記脂環式炭化水素樹脂としては、市販品として、例えば、クイントン1500、1525L、1700(商品名、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
特に、本発明の組成物は、溶出調整剤として、適度な溶出促進性を本発明の組成物に付与できる点で、ロジン、ロジン誘導体およびこれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、耐クラック性・耐水性の向上の点で、ロジンまたはロジン誘導体の銅塩または亜鉛塩を含有することが特に好ましい。
本発明の組成物中における溶出調整剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して通常1〜400質量部、好ましくは5〜350質量部である。溶出調整剤が1質量部未満の場合、水棲汚損生物付着防止効果、とくに艤装期間における水棲汚損生物付着防止効果をあまり期待できない。
【0035】
<可塑剤>
本発明の防汚塗料組成物に可塑剤を含有させることにより、前記組成物の可塑性を向上させることができ、その結果、強靱な塗膜を好適に形成できる。
前記可塑剤としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート等の燐酸エステテル類、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート等のセバシン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化油脂類、メチルビニルエーテル重合体、エチルビニルエーテル重合体等のアルキルビニルエーテル重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、t−ノニルペンタスルフィド、ワセリン、ポリブテン、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、シリコーンオイル、流動パラフィン、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
本発明の組成物中における可塑剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して通常0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜90質量部である。
【0036】
<他の樹脂>
本発明の防汚塗料組成物に他の樹脂を含有させることにより、本発明の効果を損なうことなく、コストダウンが可能であり、また、樹脂の持つ物性との相乗効果を得ることができる。
他の樹脂としては、例えば(メタ)アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物中における他の樹脂は、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が損なわれない範囲で含有することができ、その含有量は、共重合体(A)100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは10〜250質量部である。
【0037】
<その他の添加剤>
さらに、本発明の防汚塗料組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、タレ止め剤、分散剤、沈降防止剤、脱水剤、有機溶媒等を、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が損なわれない範囲で添加することができる。
顔料としては、例えば、酸化亜鉛、ベンガラ、タルク、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
染料として、有機溶剤可溶の各種有機染料等が挙げられる。
消泡剤として、シリコーン樹脂系消泡剤、アクリル樹脂系消泡剤等が挙げられる。
タレ止め剤、分散剤または沈降防止剤として、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
脱水剤としては、例えば、合成ゼオライト系吸着剤、オルソエステル類、テトラエトキシシラン等のシリケート類やイソシアネート類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶媒としては、例えば、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等の通常、防汚塗料に配合されるものが挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
<防汚塗料組成物の製造方法>
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、共重合体(A)及び防汚薬剤、溶出調整剤、可塑剤、他の樹脂等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散することにより製造できる。
前記混合液としては、共重合体(A)及び防汚薬剤、溶出調整剤、可塑剤、他の樹脂(E)等の各種材料を溶媒に溶解または分散させたものであることが好ましい。前記溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものを使用できる。
前記分散機としては、例えば、微粉砕機として使用できるものを好適に用いることができる。例えば、市販のホモミキサー、サンドミル、ビーズミル等を使用することができる。また、撹拌機を備えた容器に混合分散用のガラスビーズ等を加えたものを用い、前記混合液を混合分散してもよい。
【0039】
<防汚処理方法、防汚塗膜、および塗装物>
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。また、塗膜を溶解させた後、上記組成物を上塗りすることにより、継続的に防汚効果を発揮することができる。
被塗膜形成物としては、例えば、船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等が挙げられる。漁業具としては、例えば、養殖用又は定置用の漁網、該漁網に使用される浮き子、ロープ等の漁網付属具等が挙げられる。水中構造物としては、例えば、発電所導水管、橋梁、港湾設備等が挙げられる。
防汚塗膜は、上記防汚塗料組成物を被塗膜形成物の表面(全体又は一部)に塗布することにより形成できる。
塗布方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレー法、ディッピング法、フローコート法、スピンコート法等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用して行ってもよい。
塗布後、乾燥させる。乾燥温度は、室温でよい。乾燥時間は、塗膜の厚み等に応じて適宜設定すればよい。
上記防汚塗料組成物を用いて形成される本発明の防汚塗膜は、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性を発揮し、長期間の安定した表面更新性が維持でき、所望の防汚効果を有効に発揮することができる。また、塗膜の優れたリコート性能を発揮することができるという利点を有する。
防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類、船舶の航行速度、海水温度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が船舶の船底の場合、防汚塗膜の厚みは通常50〜500μm、好ましくは100〜400μmである。
本発明の防汚塗膜は、適度な硬さを有する。すなわち、本発明の防汚塗膜は、コールドフロー等の塗膜異常を起こさない程度の硬さを有する。
本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面に有する。本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面の全体に有していてもよく、一部に有していてもよい。
本発明の塗装物は、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性を改善することにより長期間の安定した表面更新性とリコート性に優れる塗膜を備えているため、上記船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等として好適に使用できる。例えば、船舶の船底表面に上記防汚塗膜を形成した場合、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。しかも、前記防汚塗膜は、加水分解速度が好適に抑制されている。そのため、該船舶は、防汚性能を長期間維持でき、例えば、停泊中、艤装期間中等の静止状態においても、水棲汚損生物の付着・蓄積がほとんどなく、長期間、防汚効果を発揮できる。
また、長時間経過後においても、表面の防汚塗膜には、基本的にクラックやハガレが生じない。そのため、塗膜を完全に除去した後あらためて塗膜を形成する等の作業を行う必要がない。よって、上記防汚塗膜組成物を直接上塗りすることにより好適に防汚塗膜を形成できる。これにより、簡便にかつ低コストでの継続的な防汚性能の維持が可能になる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各製造例、比較製造例、実施例及び比較例中の%は質量%を示す。粘度は、25℃での測定値であり、B形粘度計により求めた値である。重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
ガードカラム・・・TSKguardcolumn SuperHZ−L(東ソー株式会社製)
カラム・・・ TSKgel SuperHZM−M 4.6mmI.D.15cm(東ソー株式会社製)2本直列接続
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
展開溶媒・・・ THF(和光純薬工業社製;試薬特級)
試料濃度・・・10g/L
注入量・・・3μL
粘度は、JIS7117−1に準じて、ブルックフィールド形回転粘度計にて、25℃で測定した。
加熱残分は、125℃で1時間加熱して求めた値である。
また、表中の各成分の配合量の単位はgである。
【0041】
<共重合体溶液の製造>
<<製造例1(共重合体溶液A−1の製造)>>
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたステンレス製の反応槽に、キシレン170gを仕込み、窒素ガスを導入しながら、85±5℃で攪拌しながら、メタクリル酸トリイソプロピルシリル270g、メタクリル酸メチル50g、メタクリル酸2−メトキシエチル130g、アクリル酸2−メトキシエチル30g、アクリル酸n−ブチル20g、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト2g(初期添加)の混合液を2時間かけて滴下した。その後同温度で1時間攪拌を行った後、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト1g(後添加)を1時間毎に3回添加して重合反応を完結した後、キシレン330gを添加し溶解させることにより、共重合体溶液A−1を得た。
A−1の粘度、加熱残分、Mw、ガラス転移温度を表1に示す。
【0042】
<<製造例2〜22、比較製造例1〜11(共重合体溶液A−2〜A−22、B−1〜B−11の製造)>>
表1〜表3に示す単量体、重合開始剤及び溶剤を用いて、各反応温度条件下、製造例1と同様の操作で重合反応を行うことにより、共重合体溶液A−2〜A−22、B−1〜B−11を得た。これらの共重合体溶液の粘度、加熱残分、Mw、ガラス転移温度を表1〜表3に示す。
表1〜表3中の重合開始剤のうち、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエ−ト又は1,1,3,3−テトラメチルブチルパ−オキシネオデカノエートを用いた場合には、ポリマー鎖の末端が化学式(2)で表される基及び/又は化学式(3)で表される基となるが、その他の重合開始剤を用いた場合には、ポリマー鎖の末端は、別の構造の基となる。この末端の構造の違いが、試験例2〜4での評価結果の差異に生じさせたと考えられる。
【0043】
製造例1〜22で得られた共重合体の末端は、
13C-Single pulse with
1H decoupling,
13C-DEPT135を測定することによって確認した。
NMRの条件は下記の通りである。
装置・・・株式会社JEOL RESONANCE ECX400
プローブ・・・ROYALプローブ
フリップ角・・・30°
パルス待ち時間・・・20秒
積算回数・・・10000回
【0044】
製造例1の共重合体について得られたNMRスペクトルを
図1(a)〜(b)に示す。
図1(a)は、「
13C-DEPT135」スペクトルを示し、
図1(b)は、「
13C-Single pulse with
1H decoupling」スペクトルを示す。
図1(a)〜(b)を比較することで、44ppm〜49ppm付近の信号群が4級炭素由来であることが分かった。また、得られたスペクトルをACDソフト(富士通社販売のNMR解析ソフト)のPredictionの機能を用いて解析したところ、47ppm付近のピークと45ppm付近のピークは、それぞれ、
図2に示すように、複数のピークで構成されており、47.07ppmのピークが化学式(2)に由来するものであり、44.97ppmのピークが化学式(3)に由来するものであることが分かった。なお、化学式(2)と(3)のどちらにも帰属されないピークは、共重合体の主鎖に存在する4級炭素に由来すると推測される。また、製造例2〜22の共重合体についても、同様の条件でNMRスペクトルを測定したところ、同様に、化学式(2)及び(3)に由来するピークが確認された。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
商品名「VeoVa 9」:炭素数9のバーサチック酸のビニルエスエル(Momentive社製)
商品名「ナイパーBMT−K40」:ジ−(2−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド及びジベンゾイルパーオキサイドの混合物(日油(株)社製)
なお、表1〜表3中の各種単量体には、表4で示す安定剤を添加したものを使用した。
【0048】
【表4】
【0049】
<試験例1(繰り返し製造試験)>
製造例1〜22で行った共重合体溶液A−1〜A−22共重合体溶液の製造を300バッチ繰り返した。反応槽内壁等にゲル化物は目視で認められなかった。
比較製造例1〜11で行った共重合体溶液B−1〜B−11共重合体溶液の製造を繰り返した。反応槽内壁等にゲル化物が観察された。ゲル化物が観察されたバッチ数を表1〜表3に示す。
本発明の方法で製造すれば、繰り返し製造を行ってもゲル化物が生成しないことがわかる。
【0050】
<試験例2(耐水性試験)>
製造例1〜22及び比較製造例1〜11で得られた共重合体(A−1〜A−22、B−1〜11)をスリガラス(100×200×2mm)の片面に乾燥膜として厚みが約100μmとなるように塗布した。得られた塗布物を50℃で3日間乾燥させることにより、厚みが約100μmの乾燥膜を有する試験片を作製した。この試験片を35℃の天然海水中に6ヶ月間、浸漬した後、塗膜の状態を肉眼観察により確認した。
塗膜に変化がないものを◎、曇化したものを○、白化したものを△、膨潤したものを×とした。
結果を表1〜表3に示す。
表1〜表3から、本発明の製造例1〜22で得られた共重合体(A−1〜A−22)を用いて形成された乾燥膜は、耐水性に優れていることがわかる。
【0051】
<塗料組成物の製造>
<<実施例1〜22及び比較例1〜11(塗料組成物の製造)>>
表5〜表7に示す成分を表5〜表7に示す割合(質量%)で配合し、直径1.5〜2.5mmのガラスビーズと混合分散することにより塗料組成物を製造した。
【0052】
ガムロジン亜鉛塩溶液:製造例23で製造したものを使用
水添ロジン亜鉛塩溶液:製造例24で製造したものを使用
ガムロジン溶液:中国産ガムロジン(WW)の固形分約60%キシレン溶液
水添ロジン溶液:商品名「ハイペールCH」(荒川化学(株)製)の固形分約60%キシレン溶液
エポキシ化大豆油:商品名「サンソサイザーE−2000H」(新日本理化(株)製)
塩素化パラフィン:商品名「トヨパラックス150」(東ソー(株)製)
アクリルポリマー:商品名「UP−1000」(粘度:1,000mPa・s、Mw:3,000、Tg:−77℃、固形分:≧98%)(東亜合成(株)社製)
スチレン−アクリルポリマー:商品名「UF−5022」(フレーク、Mw;14,000、Tg:75℃、固形分:≧96%)(東亜合成(株)社製)
亜酸化銅:商品名「NC−301」(日清ケムコ(株)製)、平均粒径3 μm
銅ピリチオン:商品名「カッパーオマジン」(アーチケミカル(株)製)
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン:商品名「シーナイン211」(ローム&ハース社)固形分30重量%
ベンガラ:商品名「TODA COLOR EP−13D」(戸田ピグメント(株)製)
タルク:商品名「クラウンタルク3S」(松村産業(株)製)
酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛2種」(正同化学(株)製)
酸化チタン:商品名「FR−41」(古河機械金属(株)製)
テトラエトキシシラン:キシダ化学(株)製、特級試薬
脂肪酸アマイド系揺変剤:商品名「ディスパロンA603−20X」(楠本化成(株)製)
【0053】
<<製造例23(ガムロジン亜鉛塩のキシレン溶液の製造)>>
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1Lのフラスコに、中国産ガムロジン(WW)240gとキシレン240gをフラスコに入れ、更に、前記ガムロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70〜80℃で3時間還流脱水した。その後、冷却しろ過を行うことにより、ガムロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明溶液、固形分約60%)を得た。得られたキシレン溶液の加熱残分は、60.5%であった。
【0054】
<<製造例24(水添ロジン亜鉛塩のキシレン溶液の製造)>>
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1Lのフラスコに、ハイペールCH(水添ロジン)240gとキシレン240gをフラスコに入れ、更に、前記水添ロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70〜80℃で3時間還流脱水した。その後、冷却しろ過を行うことにより、水添ロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明溶液、固形分約60%)を得た。得られたキシレン溶液の加熱残分は、60.6%であった。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
<試験例3(ロータリー試験)>
水槽の中央に直径515mm及び高さ440mmの回転ドラムを取付け、これをモーターで回転できるようにした。また、海水の温度を一定に保つための冷却装置、及び海水のpHを一定に保つためのpH自動コントローラーを取付けた。
試験板を下記の方法に従って2つ作製した。
まず、チタン板(71×100×0.5mm)上に、防錆塗料(エポキシビニル系A/C)を乾燥後の厚みが約100μmとなるよう塗布し乾燥させることにより防錆塗膜を形成した。その後、実施例1〜22及び比較例1〜11で得られた塗料組成物を、それぞれ前記防錆塗膜の上に、乾燥後の厚みが約300μmとなるよう塗布した。得られた塗布物を40℃で3日間乾燥させることにより、厚みが約300μmの乾燥塗膜を有する試験板を作製した。
作製した試験板のうちの一枚を上記装置の回転装置の回転ドラムに海水と接触するように固定して、20ノットの速度で回転ドラムを回転させた。その間、海水の温度を25℃、pHを8.0〜8.2に保ち、一週間毎に海水を入れ換えた。
各試験板の初期と試験開始後3ヶ月毎の残存膜厚をレーザーフォーカス変位計で測定し、その差から溶解した塗膜厚を計算することにより1ヶ月あたりの塗膜溶解量(μm/月)を得た。なお、前記測定は24ヶ月間行われ、前記塗膜溶解量を12ヶ月経過ごとに算出した。
また、ロータリー試験終了後(24ヶ月後)の試験板を乾燥後、各塗膜表面を肉眼観察し、塗膜の状態を評価した。
評価は以下の方法で行った。
◎:全く異常のない場合
○:僅かにヘアークラックが見られるもの
△:塗膜全面にヘアークラックが見られるもの
×:クラック、ブリスター又はハガレなどの塗膜に異常が見られるもの
【0059】
結果を表5〜表7に示す。表5〜表7から、本発明の塗料組成物(実施例1〜22)を用いて形成された塗膜は、海水中での溶解量が、1ヶ月当たり2〜5μm程度(年平均)であることがわかる。更に、本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、耐水性に優れクラックやヘアークラック等を生じないため、長期間防汚性能を維持することができる。特に、実施例4〜5、9〜11、15〜16、20〜22の塗料組成物を用いて形成された塗膜は低分子量の共重合体を用いているにもかかわらず、クラックやヘアークラック等が生じない。
一方、比較例1〜11の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、低分子量の共重合体を使用しているため、長期間経過するとクラックやハガレなどの塗膜に異常が見られる。すなわち長期間、防汚性能を発揮できない。
【0060】
<試験例4(防汚試験)>
実施例1〜22及び比較例1〜11で得られた塗料組成物を、硬質塩ビ板(100×200×2mm)の両面に乾燥塗膜としての厚みが約200μmとなるよう塗布した。得られた塗布物を室温(25℃)で3日間乾燥させることにより、厚みが約200μmの乾燥塗膜を有する試験板を作製した。この試験板を三重県尾鷲市の海面下1.5mに浸漬して付着物による試験板の汚損を12ヶ月観察した。
評価は、塗膜表面の状態を目視観察することにより行い、以下の基準で判断した。
◎:貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつ、スライムも殆どなし。
○:貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつ、スライムが薄く(塗膜面が見える程度)付着しているものの刷毛で軽く拭いて取れるレベル。
△:貝類や藻類などの汚損生物の付着はないが、塗膜面が見えない程スライムが厚く付着しており、刷毛で強く拭いても取れないレベル。
×:貝類や藻類などの汚損生物が付着しているレベル
【0061】
結果を表5〜表7に示す。表5〜表7から、本発明の塗料組成物(実施例1〜22)を用いて形成された塗膜には、貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつスライムの付着も殆どないことがわかる。
一方、比較例1〜11の塗料組成物を用いて形成された塗膜には、12ヶ月間浸漬後、スライムや貝類や藻類などの汚損生物が付着していることがわかる。