特許第5747208号(P5747208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5747208-水害回避機能を具えたスペース 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5747208
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】水害回避機能を具えたスペース
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20150618BHJP
【FI】
   E02B3/06 302
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-122629(P2014-122629)
(22)【出願日】2014年6月13日
【審査請求日】2014年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−241806(JP,A)
【文献】 特開2006−257829(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/092897(WO,A1)
【文献】 特開2012−057401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04− 3/14
E02B 7/20− 7/54
E01C 1/00−23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部において起伏自在に枢着した防潮制御板部の先端に、通常は自動車道、遊歩道、その他の水上施設用のスペースとして利用されるスペース面形成用板状体を枢着し、これを1枚以上必要枚数その側面において連なるように列設すると共に、当該板状体の下面にフロートを設け、
当該フロートに対して浮力が働かない状態にあっては、当該板状体は地表に立設した脚柱によって水平状態に支持され、水位が上がって浮力が働いた際、当該板状体が平坦を保って上方に浮き上がり、これに連動して防潮制御板部を斜状に立ち上がらせることによって防潮作用を生じさせ、水位の更なる上昇に基づき防潮制御板部の斜状化が制限位置に達した後は、スペース面形成用板状体の浮き上がりに基づく斜状化が開始され、当該板状体はスペース面形成の役割から斜状化により防潮用としての役割を果たすように構成した津波阻止機能を具えたスペース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常は自動車道、遊歩道等のスペースとして利用され、例えば津波、洪水等が押し寄せた際には、これを阻止するための防波的作用が自動的に展開されるようにしたスペースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば津波等に対する対策は、堤防を津波の高さを想定した高さまで積み上げることを通例とした。 また、このような積み上げに代えて、パネル状の津波防潮壁を積み上げるようにしたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−253461号公報
【特許文献2】特開2012−233381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような従来のものであると、堤防または防潮壁の高さは、想定津波高さをこえたものに設定するため、必然、著しく丈高なものとされる。 そのため、海岸線の美感は著しく損ねられるばかりでなく、海岸線が隠されてしまうと言うような景観的劣化を招いてしまうことを余儀なくされた。
【0005】
本発明はこのような従来の問題を解決するために、「水害回避機能を具えたスペース」と言う新規の技術の提供を図ったものであって、通常高さの津波の場合は、上昇に基づきスペース面を平坦を保った状態での防潮壁としての通常的展開が、そして、稀的に発生した大きな津波の場合は、当該スペース面全体が斜状に立ち上がらせることに依るこれに即応した著しく丈高な堤防高さを得るような展開が図られるようにしたことを特徴とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基端部において起伏自在に枢着した防潮制御板部の先端に、通常は自動車道、遊歩道、その他の水上施設用のスペースとして利用されるスペース面形成用板状体を枢着し、これを1枚以上必要枚数その側面において連なるように列設すると共に、当該板状体の下面にフロートを設け、当該フロートに対して浮力が働かない状態にあっては、当該板状体は地表に立設した脚柱によって水平状態に支持され、水位が上がって浮力が働いた際、当該板状体が平坦を保って上方に浮き上がり、これに連動して防潮制御板部を斜状に立ち上がらせることによって防潮作用を生じさせ、水位の更なる上昇に基づき防潮制御板部の斜状化が制限位置に達した後は、スペース面形成用板状体の浮き上がりに基づく斜状化が開始され、当該板状体はスペース面形成の役割から斜状化により防潮用としての役割を果たすように構成した津波阻止機能を具えたスペースに係る。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水害回避用機能を具えたスペースは、基端部において起伏自在に枢着した防潮制御板部の先端に、通常は自動車道、遊歩道、その他の水上施設用のスペースとして利用されるスペース面形成用板状体を枢着し、これを1枚以上必要枚数その側面において連なるように列設すると共に、当該板状体の下面にフロートを設け、当該フロートに対して浮力が働かない状態にあっては、当該板状体は地表に立設した脚柱によって水平状態に支持され、水位が上がって浮力が働いた際、当該板状体が平坦を保って上方に浮き上がり、これに連動して防潮制御板部を斜状に立ち上がらせることによって防潮作用を生じさせ、水位の更なる上昇に基づき防潮制御板部の斜状化が制限位置に達した後は、スペース面形成用板状体の浮き上がりに基づく斜状化が開始され、当該板状体はスペース面形成の役割から斜状化により防潮用としての役割を果たすように構成したから、下記のような作用効果を奏する事となる。
【0008】
すなわち、本発明を津波対策用として実施した場合、通常は平板状を保つために、海岸線等の景観を損ねることがない。 従って、その地域の風光性に対する悪影響を及ぼすことがないばかりでなく、人工的施設としての利用が図られる。 そして、津波が押し寄せた場合はフロートに依る浮力、すなわち、潮流による押上げ力でスペース面形成用板状体2が、平坦を保って上方に浮き上がるため、その役割は継続された状態で押し上げられる。 同時に、これと連動して防潮制御板部3が斜状に立ち上がり、防潮壁として作動することとなる。 そして、水位の更なる上昇に基づき防潮制御板部の斜状化が制限位置に達した後は、スペース面形成用板状体の浮き上がりに基づく斜状化が開始され、当該板状体はスペース面形成の役割から斜状化により防潮用としての役割を果たすこととなる。 そして水が引くことに依り、スペース面形成用板状体2及び防潮制御板部3の復元に基づき今までと同様のスペースとしての利用が再開される。
【0009】
更に本発明は上記のように海岸ではなく、河川の堤防付近または山道等に設置することに依り、河川による洪水の阻止、山道での鉄砲水、或いは土石流に対して対応させるような実施も可能とされる。
【0010】
そして、潮流の高さが著しいものとなった際は、スペース面形成用板状体2自体も斜状化されこれが防潮作用に参加することとなり、これにより非常に高い水位の潮流が発生してもその防潮作用が果たされることとなる。
【0011】
結局、本発明によれば、通常時は自動車道、遊歩道、その他の水上施設用のスペースとしての役割を果たし、非常時には防潮壁として機能するものであるから、通常時及び非常時の何れの場合にあっても社会的役割を果たすこととなる。 従って、本発明に依れば防潮設備の有効的利用が図られると言う社会的有用性が奏されることとなる。
【0012】
更に、本発明に依れば防潮制御板部3の斜状化に基づく防潮作用と、スペース面形成用板状体2の斜状化に基づく防潮作用と言うように、2段階での防潮作用が奏され、比較的低い潮流の場合は、スペース面形成用板状体2は水平状態に保たれているため、高波中であっても当該板状体2上での作業の継続が許容されると共に、当該部分に対する載置備品が傾きに基づく落下又は混乱化する様な事がない。 そして、著しく大きな高波の場合は、当該スペース面形成用板状体2の斜状化に基づき著しく大きな高波に対する防衛対策が果たされる。 そして、これらの対策は発生高波に基づき自動的に展開可能とするため、その管理の簡易化に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の全体を表した説明用側面図である。
図2】本発明の要部を表した説明用平面図である。
図3図2におけるX−X線部分の説明用断面図である。
図4】本発明の他の実施例を表した説明用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はこれを津波対策用として実施する場合は、海岸線等を添うように水上に構築し、通常は自動車道、遊歩道、その他の水上施設用のスペースとして利用可能とし、若し、著しい高波が押し寄せた場合は、これを立ち上がらせるように展開することに依り、津波用潮堤としての役割が果たされるようにすることを主たる実施目的とする。
【0015】
そして、本発明は、津波を対象とする防潮堤としての役割以外、洪水、濁流、冠水等に対する対応用たる河川堤防、土堰流、火山流に対応する陸上設置の堤防として機能するような実施も可能とする。
【0016】
以下、本発明の構成を、図面に示す津波対策用とする実施例について詳細に説明する。
図に於いて、1は水中に立設した脚柱であって、海岸線に沿って所要数所定間隔を保って整然と立設されている。
【0017】
2は当該脚柱1によって支持されるスペース面形成用板状体であって、当該板状体2はその側面に於いて連なるように必要枚数を並べた様な形態を呈するものである。 3は当該板状体2の陸側端縁に屈曲自在に連設した防潮制御板部であって、当該制御板部3の他端は枢着用ブロック4に対して回転自在に連結固定してある。
【0018】
なお、図面に示す実施例にあっては、板状体2と防潮制御板部3の中央部分に梁状部2bを設け、制御板部3側に位置する梁状部の基端に軸状部分2aを枢着用ブロック4に対して回転自在に遊嵌させるように構成してあるが、当該枢着方式は、これに限定されるものではない。 また、梁状部2bの形態もこれ以外の適宜手段であっても可とする。
【0019】
更に、上記した枢着用ブロックは、スペース面形成用板状体2の立ち上がり角度を、90度を超えない角度、望ましくは75度程度とするように、その開口角度を設定しておくものとする。
【0020】
5はスペース面形成用板状体2の下面に取付けたフロートであって、水位が高まって当該フロート5を超えた場合に、その浮遊力に基づき当該板状体2を図1に鎖線で示すように、水平を保った状態で押し上げる。 この状態において、当該板状体2はスペース面としての役割を継続する。
そして、これと連動して防潮制御板部3が斜状に立ち上がり、防潮壁として利用可能とするような展開が図られる。 図1においてHは水位差を示す。 更に、水位が著しく高まった際は、スペース面形成用板状体2の垂直的浮遊運動から、水位がHからMに至るような更なる上昇に基づき、上記垂直的浮遊運動から、防潮制御板部3と同一斜状面化するような斜状展開が行われ、これにより、著しく大きい津波に対する対応が採られることとなる。 なお、水位が戻った場合は、フロート5の降下と共に、スペース面形成用板状体2及び防潮制御板部3は元状に復帰する様に構成してある。
【0021】
ところで、当該フロート5であるが、これは図示のように別体のものを取り付ける以外、例えば、スペース面形成用板状体2を中空体とする等して、当該板状体2と一体に形成したもので実施することも可能である。
【0022】
上記したようなスペース面形成用板状体2が展開する際には、予め危険警報等に基づき、その上面を無人化しておくことは勿論である。
【0023】
なお、本発明は上述したように海岸線に設置して津波対策用として実施する以外、陸上に設置して例えば洪水等に対する対策用として実施することもできる。 この場合、脚柱1は陸上に立設すると共に、この上にスペース面形成用板状体2を1枚以上、必要場所に応じた必要枚数を並べるようにする。 そして、当該板状体2の展開は上記と同様に洪水等の押上げに基づく浮力で行われるが、その復元は自重によってなされることとなる。これは洪水の押し寄せが一過性の際、或いは水の引きが速かった場合に行われる作動である。
【0024】
なお、水位がこれ以上となった場合は、今度はスペース面形成用板状体2自体も斜状に傾いた状態で浮き上がるため、その下面側による防潮作用が開始される。
【0025】
そして、水位が戻った場合は、フロート5の降下と共に、スペース面形成用板状体2は元状に復帰する様に構成してある。
【0026】
ところで、上記のようなスペース面形成用板状体2が展開する際には、予め危険警報等に基づき、その上面を無人化しておくことは勿論である。
【0027】
図4は本発明の他の実施例を表したものである。 これは前述したスペース面形成用板状体2の垂直的浮遊運動から、水位がHからMに至るような更なる上昇に基づき、防潮制御板部3と同一平面化するような斜状展開に際し(図4に鎖線で示す状態)、両者の合体化の円滑性を図るために、防潮制御板部3側に背当て的板部3aを連設するように構成したものである。 この様な構成を採ることに依り、両者の端縁部に間隙が生じることなく、また、重ね合せに基づく結合の強化が図られるように構成したものである。 本発明はこのような形態で実施する場合もある。
【符号の説明】
【0028】
1 脚柱
2 スペース面形成用板状体
2a 軸状部分
3 防潮制御板部
3a 背当て的板部
4 枢着用ブロック
5 フロート
【要約】      (修正有)
【課題】通常は自動車道、遊歩道等スペースとして利用され、例えば津波等が押し寄せた際には、これを阻止するための堤防的作用が自動的に展開されるスペースを提供する。
【解決手段】スペース面形成用板状体2を、1枚以上必要枚数その側面において連なるように並べると共に、その一側端縁において防潮制御板部3を介して起伏自在に枢着し、スペース面形成用板状体2の下面に取付けるか或いはスペース面形成用板状体2に一体化して設けたフロート5を具え、フロート5に対する浮力が働かない状態にあっては、スペース面形成用板状体2は地表に立設した脚柱1によって水平状態に支持され、水位が上がって浮力が働いた際、スペース面形成用板状体2が垂直状に浮き上がることに依る防潮制御板部3の斜状立ち上がりに基づき防潮作用を生じさせる。
【選択図】図1
図2
図1
図3
図4