(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走行レバーが後進又は前進位置にある時には、動力運搬車の前進方向への力が作用した際にはブレーキがかかるように走行レバーを中立位置に移動させる安全バーを前記動力運搬車の操作位置の前方に設けたことを特徴とする請求項1に記載の動力運搬車の操向装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来の動力運搬車の操向装置によると、走行速度の切替え毎に相互に離れた位置に設けてある独立した走行クラッチレバーと変速切替えレバー又は副変速レバーに視線を向けて、それぞれのレバーを操作しなければならない。このために、操縦者の注意力が散乱して動力運搬車の前進又は後進方向の人や物に接触したり衝突する危険性があった。とくに後進時に操縦者の後方に障害物がある場合には、挟まれる危険性があった。又、動力運搬車が除雪車のように操縦者の足元が滑り易い悪条件に加えて前後進の切替えや速度の切替え操作が頻繁に生じる場合にはこの傾向が強く、操作が容易で安全に運転できる動力運搬車が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、低高切替えレバーを低速又は高速位置へ移動させるだけで、走行クラッチレバーを操作しないいわゆるノークラッチで操作できる動力運搬車を提供することを目的としてなされたものであってその手段とするところは、請求項1においては、動力運搬車の前進、中立、後進の3段位置に切換えるクラッチ操作をする走行レバーと、
該走行レバーが前進位置又は後進位置にある時には、前進
速度又は後進
速度をそれぞれ低速又は高速に変速切換えを行う低高速切替レバーを具備する動力運搬車
の操向装置であって、
前記走行レバーによって回転するカム軸に固定して設けた前後進カムと走行クラッチカム、前記前後進カムの外周に沿って回転するボールベアリングを具備する支持アームと一端に前進、後進、中立に切換えるワイヤーを連結した連結アームを有しその中間部をレバー軸に回転自在に固定された前後進カムレバー、前記走行クラッチカムの外周に沿って回転するボールベアリングを具備する支持アームと一端に動力伝達系統への動力伝達又は解除の切換えをする走行クラッチワイヤーを連結した連結アームを有しその中間部をレバー軸に回転自在に固定された走行クラッチカムレバー、前記低高速切替レバーによって回転する前記カム軸に回転自在に外嵌した回転筒に固定して設けた低速カムと高速カム、前記低速カムの外周に沿って回転するボールベアリングを具備する支持アームと一端に変速クラッチ装置の低速運転を入切する第1のワイヤーを連結した連結アームを有しその中間部をレバー軸に回転自在に固定された低速カムレバー、
前記高速カムの外周に沿って回転するボールベアリングを具備する支持アームと一端に変速クラッチ装置の高速運転を入切する第2のワイヤーを連結した連結アームを有しその中間部をレバー軸に回転自在に固定された高速カムレバー、を具備し、
前記走行レバーが中立位置にある時には、前記前進カムの外周に沿うボールベアリングの移動に伴い前後進カムレバーがレバー軸を中心に回動することに伴うワイヤーによって前進位置とし、同時に走行クラッチカムの外周に沿うボールベアリングの移動に伴い走行クラッチカムレバーがレバー軸を中心に回動することに伴うワイヤーの移動によって動力伝達系統が解除されて且つブレーキが掛り、前記走行レバーが前進位置にある時には、中立位置の時と同様に前後進カムレバーがレバー軸を中心に回動することに伴うワイヤーによって前進位置とし、同時に走行クラッチカムの外周に沿うボールベアリングの移動に伴い走行クラッチカムレバーがレバー軸を中心に回動して走行クラッチワイヤーの移動によって動力伝達系統が伝達されて且つブレーキが解除され、前記走行レバーが後進位置にある時には、前記前進カムの外周に沿うボールベアリングの移動に伴い前後進カムレバーがレバー軸を中心に回動することに伴うワイヤーによって後進位置とし、同時に走行クラッチカムの外周に沿うボールベアリングの移動に伴い走行クラッチレバーがレバー軸を中心に回動して走行クラッチワイヤーの移動によって動力伝達系統が伝達されて且つブレーキが解除され、前記走行レバーが前進位置、後進位置のいずれの位置であっても、低高速切替レバーが低速又は高速位置にある時には、前記低速カム又は高速カムの外周に沿うボールベアリングの移動に伴い低速カムレバー又は高速カムレバーがレバー軸を中心に回動して第1又は第2のワイヤーによって変速クラッチ装置を操作して低速又は高速に切換える動力運搬車の操向装置としたところにある。
【0006】
請求項2においては、前記走行レバーが後進又は前進位置にある時には、動力運搬車の前進方向への力が作用した際にはブレーキがかかるように走行レバーを中立位置に移動させる安全バーを前記動力運搬車の操作位置の前方に設けたことにある。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によると、走行レバーが前進、中立、後進の3段位置に切替えクラッチ操作でき、中立の位置にある時には動力運搬車にブレーキが掛るので、前進から後進あるいは後進から前進への進行方向を転換する際には、必ず一旦中立位置を通るので動力運搬車をブレーキを掛けて停止することになり、安全運転が可能である。
【0008】
又、前記走行レバーによって回動するレバー軸には走行クラッチカムと前後進カムが固定されており、この走行クラッチカム及び前後進カムと係合する走行クラッチレバー及び前後進カムレバーがレバー軸に回転自在に固定されていることから、これら各レバーと接続しているワイヤーを引張ることで動力運搬車が前記のように前進、中立、後進の3段位置に切替り、且つ、中立位置の際には動力源が切断されてブレーキが作用して停止できる。
【0009】
さらに又、前記低高速切替レバーを固定している回転筒には低速カムと高速カムが固定され、これら低速カムと高速カムは前記レバー軸に回転自在に固定している低速カムレバーと高速カムレバーに係合しており、これら低速カムレバーと高速カムレバーは動力運搬車を低速又は高速駆動させることができる走行クラッチ装置と連結されているので容易に切替えできる。この時の低速カムと高速カムは低速カムレバーが走行クラッチ装置も低速駆動させる位置にある時は高速カムレバーが高速駆動させる位置から離れるように作動、高速カムレバーが走行クラッチ装置の高速駆動位置にある時は低速カムレバーが低速駆動させる位置から離れるように作動させる、位置関係になるように所定の角度で固定されている。又、前記走行レバーが中立位置にある時は低速及び高速駆動のいずれの駆動位置から離れるようになっている。
【0010】
上記のようにこの発明の動力運搬車の操向装置は、走行レバー及び低高速切替レバーの回動によって、それぞれのレバーの軸に固定しているカムを回動させて、これらカムに噛み合うレバーの動きによって、動力運搬車の前進、中立、後進の切換え及び前進、後進の場合の低速、高速の切替えを行っているので、リンク
機構によって各レバーを動作させる場合と比較してそれぞれの切換動作が迅速かつ確実に行なえる利点がある。
【0011】
又、請求項2の発明によると、安全バーを設けているので、動力運搬車の前後進時に操縦者の後方に建物や物があって挟まれそうになった場合には、この安全バーが操縦者に当接して安全バーを前方へ押す力が作用して、動力運搬車にブレーキが掛るので、操縦者は挟まれることなく安全である。又、不注意によって前方に人や物の障害物があるのを見逃して走行レバーを操作する余裕がなくても安全バーに体を当接させるだけで停止できるので事故防止に役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の動力運搬車の操向装置の実施形態について以下図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、この動力運搬車の操向装置は、動力運搬車1のハンドル2に設けてある走行レバー3によって前進、中立、後進の3段位置に切替えるクラッチ操作と低高速切替レバー4によって、前進、後進位置における低速、高速の切替えを行う操向装置である。前進の低速、高速の2速の切替え及び後進の低速、高速の2速の切替えは、低高速切替レバー4の操作のみで行うことができる装置である。
【0014】
前記動力運搬車1は、
図1に示すように、クローラ5によって走行する車体6の前方に雪積載及び除雪機能を具備する荷台7が設けられ、後方にエンジン8、前記ハンドル2等が設けられている歩行運転形式の動力運搬車1である。前記ハンドル2は棒ハンドルで左右1本ずつに別かれていて、動力運搬車1の後方で操縦者が前方を向きながら両手で左右のハンドル2を握りながら操縦できる。このハンドル2の中間の下方には安全バー9が操縦者に対向する位置に設けられている。
【0015】
前記走行レバー3は、
図2などにおいて示すように、前記左右のハンドル2の下方に固定されている取付板10にその両端を回転自在に支持されているカム軸11に固定されており、この走行レバー3を、
図3〜
図8に示すように、操縦者から見て前後方向に回動させることによって、カム軸11もそれに応じて回動して、このカム軸11に固定されている前後進カム12及び走行クラッチカム13によって、前進、中立、後進のそれぞれの位置を維持する。
【0016】
前記低高速切替レバー4は、
図2などにおいて示すように、前記カム軸11に回転自在に外嵌している回転筒14に固定されており、この低高速切替レバー4を操縦者から見て上下方向に回転させることによって、回転筒14もそれに応じて回転して、この回転筒14に固定されている低速カム15及び高速カム16によって、前進又は後進の走行速度をそれぞれ低速又は高速の2段切替えすることができる。
【0017】
前記前後進カム12と走行クラッチカム13は所定間隔を空けてカム軸11に固定され、前記走行レバー3の回転と共に回転するが、前後進カム12は前記カム軸11と平行に前記取付板10に両端を回転自在に固定されているレバー軸17に回転自在に外嵌している前後進カムレバー18と
、図3、図5に示し後述するように、係合している。又、同様に前記走行クラッチカム13は前記レバー軸17に回動自在に外嵌している走行クラッチカムレバー19と
、図4、図6に示し後述するように、係合している。
【0018】
前記走行クラッチカム13は、
図4、
図6によく現れているようにブレーキを掛ける時とブレーキを解除する時の2通りの選択に用いるカムであって、長手方向の一辺が直線辺13aで他の辺が曲線からなる概略長方形状を有し、直線辺13aの略中央で前記カム軸11に固定されており、直線辺13aの相対向する曲線辺の中央部分は両側にテーパー面がある平滑部13bとその両端に後進凹部13cと前進凹部13dを形成しているカムである。又、前記前後進カム12は、
図3,
図5によく現れているように、図外のクラッチを中立、前進、後進の3段のいずれかに切り替える際に用いるカムであって、長手方向の一辺が直線で他の辺が曲線斜辺からなる大略三角形状を有し、直線辺12aの略中央で前記走行クラッチカム13の直線辺13aと平行になるようにしてカム軸11に固定されており、該直線辺12aと相対抗する曲線斜辺の中央には中央凹部12bとこの中央凹部12bを挟むように斜辺の一方端側の大凸部12cと他端側の小凸部12dが形成されている。
【0019】
前記前後進カムレバー18と走行クラッチカムレバー19とは同じ外形状をしており、略くの字形に形成された折り曲げ部位には前記レバー軸17に回軸自在に外嵌される
円筒部18a,19aが形成され、折れ曲がった一方側の連結アーム18b,19b先端には連結穴18c,19c形成され、折れ曲った他方側の支持アーム18d,19dの先端にはボールベアリング20が固定されている。この前後進カムレバー18のボールベアリング20は前後進カム12の曲線斜辺に沿って回動し、走行クラッチカムレバー19のボールベアリング20は走行クラッチカム13の曲線辺に沿って回動する。
ムレバー19と
、図4、図6に示し後述するように、係合している。
【0020】
これを更に詳しく説明すると、
図3に示すように、走行レバー3を中立位置に保持している場合には、前後進カムレバー18のボールベアリング20が前後進カム12の中央凹部12bの安定した位置にあり、この時
図4に示すように、走行クラッチカムレバー19のボールベアリング20が走行クラッチカム13の平滑部13bの安定した位置にあるので、前後進カムレバー18がバネ21によって連結アーム18bに回転付勢力が生じていても、前後進カムレバー18を中立位置に維持した状態とする。
図3に示すようにこの時の前後進カムレバー18の前記連結アーム18bの連結穴18cと円筒部18aの中心を結ぶ作用線Aは所定方向を向いて静止している。
る。
【0021】
一方、
図4に示すように、前記走行クラッチカムレバー19の連結アーム19bの先端の連結穴19cと接続している走行クラッチワイヤー22によってクラッチが外れてエンジン8の動力が切断される。
【0022】
以上の中立位置にある走行レバー3を前進方向に、すなわち、
図5に示すように前方へ倒すとカム軸11が回転するので、前後進カム12と走行クラッチカム13も同時に同方向(矢印C)へ同じ角度だけ回転する。すると、
図5に示すように、前後進カムレバー18のボールベアリング20は前後進カム12の斜辺の中央凹部12bの位置から小凸部12dの外側曲面を転げた所定位置まで移動するが、この時の小凸部12dの外側曲面は前後進カムレバー18を
レバー軸17を中心に回動させないように形成されているために、作用線Aは中立位置と同じ方向を向いて前進位置を維持している。ボールベアリング20は小凸部12dの曲面に当接したままである。
【0023】
一方、
図6に示すように、前記走行クラッチカム13の平滑部13bにあった走行クラッチカムレバー19のボールベアリング20は、曲線辺を転がりながら移動して前進凹部13dの中に入り込んで静止し、安定するので曲面にボールベアリング20が当接している前進カムレバー18も安定する。このとき、走行クラッチカムレバー19はレバー軸17を中心に回転して作用線がBからDの位置に移動する。この角度の移動によって連結アーム19bが連結穴19cに接続している走行クラッチワイヤー22を付勢力に抗して引張ることになる。すなわち、この走行クラッチワイヤー22の他端は図外のブレーキ装置と接続されているのでブレーキを解除する。
【0024】
次に、前記中立位置にある走行レバー3を後進方向にすなわち、
図7に示すように後方へ倒すと、カム軸11が回転するので、前後進カム12と走行クラッチカム13も同時に同方向(矢印E)へ同じ角度だけ回動する。すると、前後進カムレバー18のボールベアリング20は前後進カム12の大凸部12cの外側曲面に達して、前後進カムレバー18はカム軸11を中心に連結アーム18bを作用線Fの位置まで持ち上げて、連結穴18cに連結しているワイヤー23を付勢力に抗して引張り後進位置に切替える。
【0025】
一方、前記走行クラッチカム13の平滑部13bにあったボールベアリング20はその曲線辺を転がりながら移動して、
図8に示すように後進凹部13cの中に入り込んで静止し安定しているので曲面辺にボールベアリング20が当接している前後進カムレバー18も安定する。このとき、走行クラッチカムレバー13はレバー軸17を中心に回転して
図4の作用線Bから作用線Gの位置に移動する。この角度の移動によって連結アーム19bが連結穴19cに接続している走行クラッチワイヤー22を付勢力に抗して引張り、ブレーキを解除する。すなわち、走行クラッチレバー19の作用線Gの位置は前進位置の時の作用線Dと同じ位置となってブレーキが解除される。つまり、前進位置、後進位置の双方においてブレーキが解除される。
【0026】
図2,
図9において、前記低高速切替レバー4が回転筒14に固定され
ているが、この回転筒14には低速カム15と高速カム16がそれぞれの直線辺15a,16b側で固定されているので、低高速切替レバー4を上下方向に回動させるとこれら2つのカム15,16も同時に同方向に回動する。低速カム15は、
図10に示すように、全体として大略長方形類似であり、直線辺15aの向い側の辺は曲線形状となっており、その中央部分は緩やかな凹み部15bを有しその一方端側には、先端凹部15cを形成している。
図11に示すように、高速カム16も全体としては大略長方形状であり、直線辺16aの向い側の辺は曲線形状となっており、その一方端側には先端凹部16bを形成し他端側近くの回転筒14の連結部側には段差のある係止凹部16cが形成されている。
【0027】
これら低速カム15
、高速カム16とそれぞれボールベアリング20を介して係合する低速カムレバー24と高速カムレバー25は同じ外形状を有し、略くの字形に形成された折り曲げ部位には前記したレバー軸17に回転自在に外嵌される円筒部24a,25aが形成され、折れ曲った一方側の連結アーム24b,25bの先端には連結穴24c,25cが形成され、折れ曲った他方の支持アーム24d,25dの先端には
前記ボールベアリング20が固定されている。このボールベアリング20はそれぞれ対応する低速カム15と高速カム16の曲線形状の辺に沿って移動するように付勢されている。
【0028】
図9,
図10に示すように、低高速カムレバー24が低速位置にあり、低速カム15の先端凹部15cに低速カムレバー24のボールベアリング20が嵌っている時には、
図9,
図11に示すように、高速カム16の係止凹部16cに高速カムレバー25のボールベアリングが嵌っている。この状態に納まっているのは、高速カム16の連結突起16dに一端を接続している引張杆26が一端側を動力運搬車1の車体6に固定されたバネ27の他端と連結されていて、しかも、
図15にも示すように、この引張杆26の軸線Hが低,高速カム15,16の回転中心となるカム軸11の中心よりもズレているからである。
【0029】
次にこの状態から低高速切替レバー4が高速位置へと切替ると、回転筒14が回転して、
図12乃至
図14,
図16に示すように、引張杆26の軸線Hが低、高速カム15,16の回転中心となるカム軸11を超えて反対側に位置することになり高速カム16の先端凹部16bに高速カムレバー25のボールベアリング20が嵌り、低速カム15の凹み部15bに低速カムレバー24のボールベアリング20が嵌ることになって安定した状態となる。
【0030】
以上のように、低高速切替レバー4を上下方向に回動させて低速から高速へ、高速から低速に切替える時には、低,高速レバー15,16のそれぞれの曲線辺に沿ってそれぞれのボールベアリング20,20が移動し、それぞれの凹部や凹み部に嵌り込んで安定した状態を保つこととなり、低速及び高速状態が維持されるのである。
【0031】
前記低速カムレバー24及び高速カムレバー25のそれぞれの連結アーム24b,25bの先端の連結穴24c,25cに、は
図9にも現われているように、それぞれ変速クラッチ装置28を操作する第1のワイヤー29と第2のワイヤー30がそれぞれ接続されており、これらの低速及び高速カムレバー24,25が前記のように、低速カム15及び高速カム16の動きによって回動する時にそれらを付勢力に抗して引張り又は緩めることによって低速又は高速に切替える。
【0032】
詳しく説明すると、
図17乃至
図20に示すように、動力運搬車1はエンジン8の動力によって回転可能にエンジン8に設けられた第1及び第2の駆動プーリ31,32と回転力を減速
機に伝達可能に減速
機に設けられた第1及び第2の従動プーリ33,34を備えている。更に、動力運搬車1は、第1の駆動プーリ31及び第1の従動プーリ33に緩く巻きつけられた環状の第1のベルト35と、第2の駆動プーリ32及び、第2の従動プーリ34に緩く巻き掛けられた環状の第2のベルト36を備えている。ここで、第1の従動プーリ33は、第1のベルト35を巻き掛ける部分の外周が、第2の従動プーリ34において第2のベルト35を巻き掛ける部分の外周よりも長く、第1の駆動プーリ31,第1の従動プーリ33及び第1のベルト35は低速用の動力伝達系統である一方、第2の駆動プーリ32、第2の従動プーリ34及び第2のベルト36は高速用の動力伝達系統である。なお、第1及び第2のベルト35,36としては、例えばVベルトが挙げられる。
【0033】
変速クラッチ装置28は、
図18に示すように、第1のベルト35へのテンションを付与するか、又は付与したテンションを解除するための第1テンションアーム37と、第2のベルト36へのテンションを付与するか。又は付与したテンションを解除するための第2のテンションアーム38とを備えている。
【0034】
第1のテンションアーム37は
図18,
図19によく現われているように、略S字形の形状を有し、一端に、第1のベルト35を押圧するためのテンションローラ39と、他端に、第1のワイヤー29の他端を連結可能なワイヤー連結部40とを有している。また、第1テンションアーム37は、中央付辺に設けられた固定部41によって、テンションローラ39が第1のベルト35の一側に位置するように動力運搬車1の車体6に回転可能に固定されている。同時に、第2のテンションアーム38は、
図18,
図20によく現れているように、略S字状の形状を有し、一端に、第2ベルト36を押圧するためのテンションローラ42と、他端に、第2のワイヤー30の他端を連結可能なワイヤー連結部43とを有している。また、第2のテンションアーム38は、中央付近に設けられた固定部44によって、テンションローラ42が第2のベルト36の一側に位置するように車体6に回転可能に固定されている。
【0035】
このような構成により、その一端側を前記低速カムレバー24及び高速カムレバー25の連結アーム24b,25bに接続している第1又は第2のワイヤー29,30を各レバー24,25の回動によって第1又は第2のベルト35,36が配置されている側とは反対側に引くことによって、第1又は第2のテンションアーム37,38の各テンションローラ39,42を第1又は第2のベルト35,36にそれぞれ押圧させる方向に第1又は第2テンションアーム37,38をそれぞれ回転させることができる。一方、第1又は第2のワイヤー29,30を第1又は第2のベルト35,36が配置されている側にそれぞれ押し出す
方向に移動することにより、第1又は第2のテンションアーム37,38の各テンションローラ39,42を第1又は第2のベルト35,36からそれぞれ離反させる方向に第1又は第2のテンションアーム37,38をそれぞれ回転させることができる。
【0036】
以上のように、低高速切替レバー4の上下方向への回動操作によって、このレバー4と回転筒14で一体に連結されている低速カム15及び高速カム16が回動し、前述したこれら低速及び高速カム15,16と係合している低速カムレバー24及び高速カムレバー25の回動によって、動力運搬車1の低速と高速の切替えを低高速切替レバー4のみの操作によって行うことができるのである。このような切替は前進、後進のいずれかの走向でも同じである。
【0037】
前記変速クラッチ装置28は、
図17,
図18に示すように、第1及び第2のテンションアーム37,38の一側に設けられると共に、前記走行レバー3と共に回動する走行クラッチカム13と係合している走行クラッチカムレバー19の連結アーム19bの連結穴19cに一端を接続している走行クラッチワイヤー22の他端に固定されて、第1及び第2のワイヤー29,30の中間部分を第1及び第2のテンションアーム37,38から離れる方向に引くか、又は近づける方向に押し出すことによって、第1及び第2のテンションアーム37,38の各テンションローラ39,42をそれぞれ第1及び第2のベルト35,36へ同時に近づけるか、又は同時に遠ざけるためのブラケット45をさらに備えている。
【0038】
ブラケット45は、
図18に示すように、略平板状の形状を有し、一端に、第1及び第2のワイヤー29,30をそれぞれ挿通可能な第1及び第2の挿通孔46,47を有し、他端に、前記走行クラッチワイヤー22の他端を連結するためのワイヤー連結部48を有している。当該ブラケット45は、中央付辺において、車体のフレーム6に回転可能に転結する車体連結部49を有しており、当該車体連結部49によって、表面又は裏面が第1及び第2のテンションアーム37,38側に向くように連結されている。
【0039】
従って走行レバー3の回動によって、前記走行クラッチワイヤー22により、ブラケット45が第1及び第2のテンションアーム37,38に近づく方向に回動され、あるいは逆に遠ざかる方向に回動されるので、第1及び第2のテンションアーム37,38の各テンションローラ39,42が第1及び第2のベルト35,36から同時に離反する方向又は接する方向に移動する。これによって変速クラッチ装置28が低速及び高速のいずれもエンジン8の駆動力をも伝達しなくなり且つブレーキが掛る中立位置も走行レバー3により選ぶことができる。この中立位置においては、前記前後進カム12が前後進カムレバー18の連結アーム18bと接続しているワイヤー23により前進位置に保持している。この状態が
図3,
図4に示す中立状態である。
【0040】
次に、走行レバー3を中立位置から前方向に倒して前進位置にすると、
図5,
図6に示すように、又、前述したように前後進カムレバー18は回動しなく前進位置のままであるが走行クラッチカム19も同じ矢印C方向に回動することによって、走行クラッチカムレバー19を作用線BからDの位置まで回動させることに伴い連結アーム19bと連結する走行クラッチワイヤー22を付勢力に抗して引張ることになる。これによって、この走行クラッチワイヤー22の他端と連結している図外のブレーキ装置のブレーキが解除されて、動力運搬車1が前進することができる。
【0041】
この前進位置から後進位置に進行方向を切替える場合には、走行レバー3を後方に倒すと一旦中立位置に戻りブレーキが掛る。この中立位置を越えて更に走行レバー3を後方に倒すと、
図7,8に示すように、又前述したように、前後進カム12の矢印E方向への回動に伴い前後進カムレバー18の連結アーム18bの先端の連結穴18cにその一端を連結しているワイヤー23を付勢力に抗して引張って、後進位置に切替える。同時に、走行クラッチカム13も矢印E方向に回動するので、この回動に伴い走行クラッチカムレバー19の連結アーム19bの先端に連結穴19cに接続している走行クラッチワイヤー22が付勢力に抗して引張られてブレーキが解除されて、動力運搬車1が後進することができる。
【0042】
後進位置から中立位置に戻す時には、走行レバー3を前方向に倒すが、このとき、走行クラッチカム13は走行クラッチカムレバー19の連結アーム19bの先端の連結穴19cに接続されている走行クラッチワイヤー22を引張る図外のバネによる引張力を受けているので、走行クラッチカム13の後進凹部13cに嵌っている走行クラッチレバー19のボールベアリング20が当該後進凹部13cから抜け出るとその付勢力によって中立位置に戻る。
【0043】
安全バー9は
図1,
図21に示すようにコの字形をしておりハンドル2の下方位置から少し下向きに後方の突出した位置になるようにその曲った両端がレバー軸17に固定されていて、レバー軸17と共に回動する。そして
図2,
図21に示すようにレバー軸17の端部には第1リンク50の一端側が所定角度で固定されており、その他端側は第1ピン51を支点として第2リンク52及び第3リンク53の一端側と回転自在に固定されている。
図22に良く現れているように、前記カム軸11の端部には作動杆54の中央部が固定されている。この作動杆54の両端にはそれぞれ第2ピン55及び第3ピン56が突出して設けられており、この第2ピン55及び第3ピン56が前記第2リンク52及び第3リンク53の他端側に形成している第2長穴57及び第3長穴58の内側に入って移動自在の構成になっている。
【0044】
上記のような構成からなる安全バー9の動作について説明する。
図22に示すように、走行レバー3が前進位置にある時には、カム軸11が図で時計回りの矢印I方向に付勢されているので、これに伴い第2ピン55は第2リンク52の第2長穴57の他端部に係止し、第3ピン56は第3リンク53の第3長穴58の一端部に係止して、この2つの第2ピン55と第3ピン56の第2リンク52及び第3リンク53に作用する力のバランスで支点となるピン55,56の位置が決まり、これによって安全バー9が前述のようにハンドル2の下方位置から少し下向きに後方へ突出した位置を維持する。
【0045】
同様に
図23に示すように、走行レバー3が後進位置にある時には、カム軸11が図で反時計回りの矢印H方向に付勢されているので、これに伴い第3ピン56は第3リンク53の第3長穴58の他端部に係止し、第2ピン55は第2リンク52の第2長穴57の一端部に係止して、この2つの第3ピン56と第2ピン55の第3リンク53及び第2リンク52に作用する力のバランスで支点となる第2,第3のピン55,56の位置が定まり、これによって、安全バー9が前進位置と同じ角度の位置を維持する。
【0046】
上記の状態において、安全バー9が動力運搬車1と建物や物の間に歩行運転者が挟まれた時には、安全バー9に当るので安全バー9は
図24に示すように下方へ回動させられる。これによって、前進位置、後進位置のいずれの場合であっても、作用杆54が第2ピン55又は第3ピン56が第2長穴57又は第3長穴58に係止して回動する。カム軸11はこの作用杆54と共に回動して、走行レバー3を中立位置に戻してブレーキを掛ける。従って、歩行運転者は挟まれることなく安全である。動力運搬車が前進している時は歩行運転者は挟まれることはないが、不注意で前方の障害物に衝突しかけた際には、体を安全バー9にぶつけるだけで変速クラッチ装置28を中立位置とし、且つ、ブレーキを掛けることができる。これにより、走行レバー3の中立位置への手操作よりも迅速に行える利点がある。