【実施例】
【0031】
本発明について下記のように実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0032】
下記実施例及び比較例において、得られた可撓防汚性複合シートの評価に用いた試験方法は、下記の通りである。
1)屋外曝露試験
幅20cm×長さ2mの供試シートを可撓性光触媒防汚層を表側にして、南向きに設置された傾斜角30°方向の曝露台上に展張して屋外曝露試験に供し、曝露期間:12ヶ月後、供試シートの汚れの発生状態を下記のように観察及び評価した(色差 ΔE、艶ムラの状況、親水性:水の接触角)。
1−1)防汚性(色差 ΔE)
曝露開始時の試料の色を基準として、曝露12ヶ月後の試料の表面の色との色差 ΔE
(JIS Z 8729)をシート表面の5箇所において測定し、平均値を計算し下記の判定基準により防汚性を評価した。
ΔE= 3未満 : 1=汚れが認められない。
3以上6未満 : 2=わずかな汚れが認められる。
6以上12未満 : 3=汚れが認められる。
12以上 : 4=顕著な汚れが認められる。
1−2)艶ムラの状況
曝露後の供試シートの表面を目視観察を行い、艶のある部分と艶のない部分を特定し、その部分の光沢度を光沢針(日本電色工業(株)製 Gloass Meter VG−2000 測定角度:60°)で測定し、光沢度の差の絶対値を計算し、下記の判定基準により艶ムラの状況を評価した。
光沢度の差の絶対値 3未満 : 1=艶ムラが認められない。
3以上8未満 : 2=艶ムラが認められる。
8以上 : 3=顕著な艶ムラが認められる。
1−3)親水性:水の接触角
曝露後の供試シートの表面をメタノールで洗浄し、乾燥した後、可撓性光触媒防汚層に水滴を滴下し、30秒後の可撓性光触媒防汚層と水滴との接触角を、接触角計(協和界面科学社(株)製 CA−D)を用いて測定した。
2)接合部の溶着試験及び促進曝露試験
2枚の供試シートを用意し、一方の可撓性光触媒防汚層と、もう一方の可撓性アクリル樹脂層とが互いに接触するように重ね合わせ、ラップ巾40mmで高周波ウエルダー溶着して接合し、接着性を評価した。さらに溶着性があることを確認できた供試シートについて、接合部引張試験用に巾30mm長さ300mmにカットし、この試料を(社)日本膜構造協会試験標準(MSAJ/M−03−2003)促進曝露試験に準じて、供試シートの可撓性光触媒防汚層面の接合部に、キセノンアーク光源(照度 180W/m
2(300〜400nm))による416時間(屋外曝露2年間に相当)の照射を行ない促進曝露試験を実施し、促進曝露後接合部引張試験を行ない、接合部引張強さの初期引張強さに対する保持率を算出し、下記の判定基準により評価した。
接合部引張強さ保持率 100%〜80%:1=(社)日本膜構造協会品質基準に適合
80%未満:2=(社)日本膜構造協会品質基準に適合せず
【0033】
〔
参考例1〕
(1)シート基体の作製
基布として、下記組織のポリエステルフィラメント平織物を用いた。
(1111dtex×1111dtex)/(22糸条/25.4mm×25糸条/25.4mm)目付:215g/m
2
この基布を、ポリ塩化ビニル樹脂(乳化重合タイプ)を含む下記配合(1)の樹脂組成物の溶剤希釈液中に浸漬して、繊維布帛に樹脂液を含浸し、絞り、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理して、繊維布帛に対し前記樹脂を145g/m
2の付着量で付着させて、下塗り層を形成した。次に、塩化ビニル樹脂(懸濁重合タイプ)を含む、下記配合(2)の樹脂組成物からなるフィルム(厚さ:0.16mm、質量:200g/m
2)を、カレンダーを用いて作製し、これを前記下塗り層含浸基布の両面に貼着して、片面当り付着量200g/m
2の可撓性ポリ塩化ビニル系樹脂層を形成し、合計重量760g/m
2の基体シートを作製した。
配合(1)(基布含浸下塗り樹脂組成)
ポリ塩化ビニル樹脂(乳化重合タイプ)重合度p=1700 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
トルエン(溶剤) 20質量部
配合(2)(可撓性ポリ塩化ビニル樹脂層組成)
ポリ塩化ビニル樹脂(懸濁重合タイプ)重合度p=1300 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
白顔料(TiO
2) 0.5質量部
【0034】
(2)接着保護層の形成
前記基体シートの表面上に、下記配合(3)に示された組成のアクリルシリコン樹脂処理液をグラビヤコーターで30g/m
2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、6.0g/m
2の保護接着層を形成した。
配合(3)(接着保護層処理液組成)
シリコン含有量3mol%のアクリル−シリコン共重合体樹脂8重量%(固形分)を含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50重量比)溶液 100質量部
ポリシロキサンとして、メチルシリケートMS51(コルコート(株)製)の20%エタノール溶液 8質量部
シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 1質量部
【0035】
(3)可撓性光触媒防汚層の形成
前記基体シート上の接着保護層上に、下記配合(4)に示された組成の可撓性光触媒防汚層処理をグラビヤコーターで30g/m
2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、6.0g/m
2の光触媒防汚層を形成した。
配合(4)(可撓性光触媒防汚層処理液組成)
フッ化ビニリデン系樹脂(商標:KYNAR710、アルケマ社製) 20質量部
MEK−トルエン−DMF(40/30/30重量比)(溶剤) 80質量部
酸化チタン光触媒粒子(品番:PC−101(住友化学(株))) 1質量部
ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)
商標イルガノックス1076(BASFジャパン(株)) 0.2質量部
前記イルガノックス1076は、オクタデシル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなるラジカル捕捉物質であり、光触媒粒子の質量に対し20質量%の配合量で用いられた。
【0036】
(4)可撓性アクリル系樹脂層の形成
前記基体シートの裏面上に、下記配合(5)に示された組成の可撓性アクリル系樹脂層処理液をグラビヤコーターで30g/m
2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、6.0g/m
2の可撓性アクリル系樹脂層を形成し、防汚性シートを作製した。
配合(5)(可撓性アクリル系樹脂層組成)
アクリル系樹脂(商標:アクリプレン ペレットHBS001、三菱レイヨン(株))
20質量部
トルエン−MEK(50/50質量比)(溶剤) 80質量部
上記の工程により得られた可撓防汚性複合シートの可撓性光触媒防汚層の表面にはFT−IRによる分析により、ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)が露出存在していることを確認した。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表1に示す。
【0037】
〔
参考例2〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製した。但し、可撓性光触媒防汚層を上層と下層からなる2層構造に構成した。可撓性光触媒防汚層の上層は下記の可撓性光触媒防汚層処理液配合(6)を用いて、塗布量3g/m
2に形成し、可撓性光触媒防汚層の下層は下記の可撓性光触媒防汚層処理液配合(7)を用いて、塗布量3g/m
2に形成した。
配合(6)可撓性光触媒防汚層処理液組成(上層)
フッ化ビニリデン系樹脂(商標:KYNAR710、アルケマ社製) 20質量部
MEK−トルエン−DMF(40/30/30重量比)(溶剤) 80質量部
酸化チタン光触媒粒子(品番:PC−101(住友化学(株))) 1質量部
ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)
商標:イルガノックス1076(BASFジャパン(株)) 0.3質量部
配合(7)可撓性光触媒防汚層処理液組成(下層)
フッ化ビニリデン系樹脂(商標:KYNAR710、アルケマ社製) 20質量部
MEK−トルエン−DMF(40/30/30重量比)(溶剤) 80質量部
酸化チタン光触媒粒子(品番:PC−101(住友化学(株))) 1質量部
ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)商標:イルガノックス1076(BASFジャパン(株)) 0.1質量部
前記イルガノックス1076は、オクタデシル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなるラジカル捕捉物質であり、光触媒防汚下層においては光触媒粒子の質量に対し10質量%の配合量である。一方、光触媒防汚上層におけるラジカル捕捉物質の配合量は光触媒粒子の質量に対し30質量%であるから、可撓性光触媒防汚層の表面近傍においてのラジカル捕捉物質の高密度偏在が明らかである。また、上記の工程により得られた可撓防汚性複合シートの可撓性光触媒防汚層の表面にはFT−IR分析により、ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)が露出存在することを確認した。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表1に示す。
【0038】
〔
参考例3〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製した。但し、可撓性光触媒防汚層の形成に使用する可撓性光触媒防汚層処理液配合(4)の酸化チタン光触媒粒子を、ラジカル捕捉物質担持アパタイト被覆酸化チタン光触媒粒子に変更して、下記配合(8)に示す処理液組成を用いた。
配合(8)(可撓性光触媒防汚層処理液組成)
フッ化ビニリデン系樹脂(商標:KYNAR710、アルケマ社製) 20質量部
MEK−トルエン−DMF(40/30/30重量比)(溶剤) 80質量部
ラジカル捕捉物質担持アパタイト被覆酸化チタン光触媒粒子 1.1質量部
前記ラジカル捕捉物質担持アパタイト被覆酸化チタン光触媒粒子は、昭和電工(株)のアパタイト被覆酸化チタン光触媒粒子(商標:ジュピター)100質量部に対し、ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)として、BASFジャパン(株)の商品名:イルガノックス1076を10質量部をアパタイト部に担持させた複合調整粒子である。イルガノックス1076は、オクタデシル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなるラジカル捕捉物質であり、光触媒粒子の質量に対し10質量%の配合量である。
上記の工程により得られた可撓防汚性複合シートの可撓性光触媒防汚層の表面にはFT−IR分析により、ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)が露出存在することを確認した。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表1に示す。
【0039】
〔実施例4〕
参考例2と同様にして防汚性シートを作製した。但し、可撓性光触媒防汚層の上層の形成に使用する可撓性光触媒防汚層処理液配合(6)を、下記の可撓性光触媒防汚層処理液配合(9)に変更した。
配合(9)可撓性光触媒防汚層処理液組成(上層)
フッ化ビニリデン系樹脂(商標:KYNAR710、アルケマ社製) 20質量部
MEK−トルエン−DMF(40/30/30重量比)(溶剤) 80質量部
酸化チタン光触媒粒子(品番:PC−101(住友化学(株))) 1.5質量部
ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)
商標:イルガノックス1076(BASFジャパン(株)) 0.3質量部
イルガノックス1076は、オクタデシル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなるラジカル捕捉物質であり、光触媒防汚下層においては光触媒粒子の質量に対し10質量%の配合量である。一方、光触媒防汚上層におけるラジカル捕捉物質の配合量は光触媒粒子の質量に対し20質量%であるから、可撓性光触媒防汚層の表面近傍においてのラジカル捕捉物質の高密度偏在が明らかである。さらに、光触媒防汚上層の光触媒粒子含有率は、光触媒防汚下層の光触媒粒子含有率よりも高くなっている。上記の工程により得られた可撓防汚性複合シートの可撓性光触媒防汚層の表面にはFT−IR分析により、ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)が露出存在することを確認した。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
参考例1〜3、実施例4で得られた可撓防汚性複合シートは、表1に示すように、屋外曝露試験12ヶ月後の表面のΔEは3以下で、汚れが認められず、艶ムラもなく非常に良好な防汚性を示した。また、水との接触角はすべて40°以下を示し、初期、及び経時的に安定した親水性により優れた防汚性が発現している。また、接合部の促進曝露試験後の接合部引張強さ保持率もすべて80%以上の十分な値を示し、接合部の耐久信頼性が優れている。
【0042】
〔比較例1〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製した。但し、
参考例1の可撓性光触媒防汚層にラジカル捕捉物質を添加しなかった。このシートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。このシートは、表1に示すように、屋外曝露試験12ヶ月後の表面のΔEは6〜10(平均8)とシートの場所によってバラツキがあり、不均一に汚れており、艶ムラも認められ防汚性は不十分なレベルであった。また、水との接触角は75°で親水性は全く示さず、この可撓防汚性複合シートの防汚性の発現は可撓性光触媒防汚層の分解性によるものであり、この分解性の不均一化によってΔEのばらつきと艶ムラが発生したと考えられる。また、接合部の促進曝露試験後の接合部引張強さ保持率は、55%と低値を示した。これは、促進曝露試験によりシートの可撓性光触媒防汚層が分解が進行し、接合部の端の部分も基材の可撓性光触媒防汚層の分解が進み、その断面から接合部に挟まれた防汚層への分解の侵食が進み接合部の樹脂強度が低下したと考えられ、屋外で長期使用した場合には、接合部の信頼性に大きな不安がある。
【0043】
〔比較例2〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製した。但し、
参考例1の可撓性アクリル系樹脂層を形成しなかった。
このシートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。このシートは、表1に示すように、屋外曝露試験12ヶ月後の防汚性は
参考例1と同様に良好であったが、可撓性光触媒防汚層と、裏面の最外層とが互いに接触するように重ね合わせ状態での熱溶着性が全くなかった。得られた可撓防汚性複合シートを実際に接合するには、接合する部分の可撓性光触媒防汚層を削り取り熱溶着するか、或いは、断面同士を突合せてシーミングテープを使用し裏面から熱溶着する必要があり、接合が非常に煩雑になる。
【0044】
〔比較例3〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製した。但し、
参考例1の可撓性光触媒防汚層用樹脂としてアクリル系樹脂を使用し、下記配合(10)の処理液組成の可撓性光触媒防汚層に変更した。
配合(10)(可撓性光触媒防汚層処理液組成)
アクリル樹脂(商標:アクリプレン ペレットHBS001、三菱レイヨン(株)) 20質量部
トルエン−MEK(50/50質量比)(溶剤) 80質量部
酸化チタン光触媒粒子(品番:PC−101(住友化学(株))) 1質量部
ラジカル捕捉物質:商標:イルガノックス1076(BASFジャパン(株)) 0.2質量部
イルガノックス1076は、オクタデシル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなるラジカル捕捉物質であり、光触媒粒子の質量に対し20質量%の配合量である。
得られた可撓防汚性複合シートは、表1に示すように、屋外曝露試験12ヶ月後の表面のΔEは12以上と全面が汚れており、汚れの程度はシートの場所によってバラツキがあり、艶ムラも認められ、防汚性は不十分なレベルであった。表面の観察では可撓性光触媒防汚層の分解が進んでおり、表面には可撓性光触媒防汚層が脱落した部分があり、その部分の水の接触角は90°と高い値を示した。また、接合部の促進曝露試験後の接合部引張強さ保持率は、51%と低値を示した。これは、促進曝露試験によりシートの可撓性光触媒防汚層が分解され、接合部の端の部分も基材の可撓性光触媒防汚層の分解が進み、その断面から接合部に挟まれた防汚層への分解の侵食が進み接合部の樹脂強度が低下したと考えられ、屋外で長期使用した場合には、接合部の信頼性に大きな不安がある。
【0045】
〔
参考例5〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製し試験に供した。但し、ラジカル捕捉物質として、0.2質量部の商標:イルガフォス168(BASFジャパン(株))(〔トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト〕、ホスファイト系酸化防止性化合物)を用いた。得られた可撓防汚性複合シート中のラジカル捕捉物質の含有量は、光触媒粒子の質量に対して、20質量%であった。また、得られた光触媒防汚層の表面には前記ラジカル捕捉物質が露出存在していることが、FT−IR分析により確認された。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表2に示す。
【0046】
〔
参考例6〕
参考例1と同様にして可撓防汚性複合シートを作製し試験に供した。但し、ラジカル捕捉物質として、0.2質量部の商標:イルガノックスE201(BASFジャパン(株))(〔3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール〕、ビタミンE系酸化防止性化合物)を用いた。得られた可撓防汚性複合シート中のラジカル捕捉物質の含有量は、光触媒粒子の質量に対して、20質量%であった。また、得られた光触媒防汚層の表面には前記ラジカル捕捉物質が露出存在していることが、FT−IR分析により確認された。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表2に示す。
【0047】
〔
参考例7〕
参考例2と同様にして可撓防汚性複合シートを作製し試験に供した。但し、光触媒防汚層の上層は
参考例2の光触媒防汚層の上層と同一にし、光触媒防汚層下層は
参考例6の光触媒防汚層(ビタミンE系酸化防止性化合物)と同様に形成した。得られた可撓防汚性複合シートの光触媒防汚層上層におけるラジカル捕捉物質の含有量は、光触媒粒子の質量に対し30質量%であり、光触媒防汚層の下層においては光触媒粒子の質量に対し20質量%の配合量であった。従って光触媒防汚上層におけるラジカル捕捉物質の配合量は、光触媒防汚下層におけるラジカル捕捉物質の配合量よりも高濃度であり、光触媒防汚層の表面近傍においてのラジカル捕捉物質の高密度偏在が明らかであった。また、得られた可撓防汚性複合シートの光触媒防汚層の表面にはFT−IRによる分析で、ラジカル捕捉物質(フェノール系酸化防止性化合物)の露出存在を確認した。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表2に示す。
【0048】
〔
参考例8〕
参考例3と同様にして可撓防汚性複合シートを作製し試験に供した。但し、ラジカル捕捉物質担持アパタイト被覆酸化チタン光触媒粒子のアパタイト部に担持させるラジカル捕捉物質として、イルガフォス168(商標)、BASFジャパン(株)(〔トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト〕、ホスファイト系酸化防止性化合物)を用いた。得られた可撓防汚性複合シートの光触媒防汚層中のラジカル捕捉物質の含有量は、光触媒粒子の質量に対し10質量%であった。この可撓防汚性複合シートの光触媒防汚層の表面に、前記ラジカル捕捉物質(ホスファイト系酸化防止性化合物)が露出存在することを、FT−IR分析により確認した。得られた可撓防汚性複合シートの試験結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から明らかなように、ラジカル捕捉物質として使用されたホスファイト系及びビタミンE系の酸化防止性化合物を含む可撓防汚性複合シートも、フェノール系酸化防止性化合物を含む場合と同様に、良好な防汚性と、静止接触角が40°以下の良好な親水性を示し、耐久性及び熱溶着性も優れていた。