(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
当技術分野において、半導体レーザまたはレーザダイオードとも呼ばれる固体レーザが周知である。これらの素子は、通常、1枚以上の活性半導体層(active semiconductor layers)を有する平板な多層半導体構造体からなる。これらの活性半導体層は、その端部において、ミラーとして機能するへき開面(cleaved surface)によって結合されている。この構造体では、活性層の一方の側の半導体層には不純物が添加されていて過剰の自由電子(mobile electrons)が存在し、他方の側の半導体層にも不純物が添加されていて自由電子の欠落が生じている。つまり、こちら側の半導体層には、正に帯電したキャリアである正孔が過剰に存在している。過剰の電子が存在する層は「n型」つまり「負」であり、過剰の正孔が存在する層は「p型」つまり「正」である。
【0003】
電極を介して層構造体のp側とn側との間に電位差を適用すれば、正孔および電子の一方または両方が、p−n接合を横切る、平板層に垂直な方向に駆動されて活性層に「注入」される。この活性層内で電子が正孔とが再結合すると光が生じる。へき開ミラーによる光フィードバックによって放射光の一部が共振(resonance)し、半導体レーザ構造体のミラー状の(mirrored)1縁部においてコヒーレント「レージング」が生じる。
【0004】
短周期表のIII−V族窒化物半導体層をサファイア基板上で成長させた半導体レーザ構造体は、360nm〜650nmの範囲内である、近紫外線から可視スペクトルの範囲の光を放出する。
【0005】
青色/紫レーザダイオードが放射する短波長によれば、赤色および赤外線(IR)レーザダイオードが放射する長波長と比較して、レーザプリント動作や高密度光記録において、より小さなスポットおよび良好な焦点距離を提供する。
【0006】
短周期表III−V族窒化物を用いれば、室温で動作し、継続動作において青―紫の範囲内の短波長可視光を放射するダイオードレーザを提供できる。III−V族窒化物は短周期表のIII族およびV族の元素によって作られた化合物を含む。
【0007】
こうした物質を短波長発光素子に用いることは、いくつかの理由のために、非常に見込みがある。つまり、AlGaInN系は可視スペクトルの全体をカバーする大きなバンドギャップを有し、短周期表III−V族窒化物は強力な化学結合を有するという利点もある。この結合のために、これらの物質は非常に安定しており、斯かる素子の活性領域が曝されているような高電流や強度の光照射の状態においても劣化し難い。またこれらの物質は、一旦成長させると、転位を形成し難い。
【0008】
高速かつ高解像度でプリントするためには、出力パワーの変動が僅かであるか、皆無であるレーザ装置が必要である。例えば、赤色およびIRレーザダイオードを印刷に用いる場合、レーザ光出力の変動は4%未満であることが求められる。これらの必要要件はAlGaInNレーザダイオードについても同様であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
有限抵抗を有する、金属電極と半導体との界面全域において電圧が降下すると発熱する。また、抵抗性の半導体層の全域で電圧が降下しても発熱する。エネルギーをレーザの活性領域に導入するためには、伝導帯に電子を注入するか、正孔を価電子帯に注入するか、またはその両方を行う。電子が緩和すると伝導帯のエネルギーレベルが最低になり、正孔が、光を放射しない処理によって弛緩すると、価電子帯のエネルギーレベルが最低になり、エネルギーを熱として放出される。
【0011】
レーザ素子をオフからオンに切り替えると、過渡加熱(transient heating)、つまり時間の経過と共に変化する熱によって、AlGaInNレーザダイオードの光出力を大幅に低下させてしまう可能性がある。
【0012】
図示するように、AlGaInN青色レーザダイオードは、レージング閾値電流より大きな定電流によって順方向バイアスがかけられている。最初の時間t=0の場合、定電流が65mAであれば、
図1に示すように、この青色レーザダイオードの最初の出力パワーP1は9.5mWであり、レーザ構造体の温度は20℃である。
【0013】
しかし、レージング閾値より大きな定電流を有する青色レーザダイオードでは、時間の経過と共に、レーザ構造体の温度が上昇する。この温度上昇によって、AlGaInNレーザダイオードの出力パワーが低下する。
【0014】
後続の時間t=∞、定電流が65mAであれば、
図1に示すように、青色レーザの出力パワーは第2の出力パワーP2である6.2mWとなり、レーザ構造体の温度は30℃になる。第2の出力パワーは第1の出力パワーより小さい。したがって、出力パワーと時間との関係を示す
図2においては、レーザ素子をオンにしたばかりの第1の出力パワーP1が、青色レーザダイオードが動作するにつれて「衰退(drooping)」し、P1より低い第2の出力パワーP2になることを示している。
【0015】
このような熱変動は、均質な光パワー出力を維持するためには有害である。これは、特にパルス変調において有害である。しかも、こうしたレーザの全ての適用において、レーザ出力を変調して一連のパルスにする必要がある。
【0016】
本発明は、過渡加熱によるパワー出力の変動を軽減する青色レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によると、短周期表のIII−V族窒化物青色レーザダイオードは、増幅領域と変調領域とを有する。増幅領域は定電流を有し、該領域をレージング閾値の近傍に維持する。変調領域は、変動する小さな順方向電圧または逆バイアス電圧を有する。この電流または電圧によってレーザの光出力を制御する。この2領域青色レーザダイオードが必要とする電力消費量は、直接変調型のレーザ(directly modulated laser)の電力消費量よりも遥かに少ないため、過渡加熱および、光出力の「衰退」を軽減する。
【0018】
レーザダイオードの光出力は、変調領域における吸収を変化させることで制御する。吸収の変化は、フィールド効果(例えば、QCSE)やキャリア効果(例えば、バンドフィリング、フィールドスクリーニング)を利用して誘引できる。これらの効果を得るための電力消費量は、直接変調型のレーザのそれよりも遥かに少ない。
【0019】
レーザダイオードの僅かな部分だけを用いて出力パワーを制御する。したがって、このようにして得た少ない容量によれば、変調速度を高めることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図3を参照する。
図3は、本発明に係る2領域III−V族窒化物に基づく基本的な半導体合金ダイオードレーザ100を示す。半導体レーザ構造体100は、C面(0001)またはA面(1120)配向サファイア(Al
2O
3)基板102を有する。この基板102上に半導体層がエピタクシーによって連続的に堆積される。このレーザ構造体100は、このサファイア基板102上に形成され、核形成層としても周知である薄膜バッファ層103を有する。このバッファ層103は主に濡れ層として機能し、サファイア基板102の上面を滑らかで均質な状態で覆う。バッファ層103は任意の適切な物質を含むことができる。通常、バッファ層103は二元または三元のIII−V族窒化物質で形成する。例えば、GaN,AlN,InGaN,AlGaN等である。バッファ層103は通常、約10nm〜約30nmの厚さを有する。通常、薄膜バッファ層103には不純物が添加されていない。
【0022】
バッファ層103の上には第2のIII−V族窒化物層104が形成される。第2のIII−V族窒化物層104はn型GaNまたはAlGaN層である。この第2のIII−V族窒化物層104は、横方向nコンタクト電流拡散層(lateral n-contact and current spreading layer)として機能する。第2のIII−V族窒化物層104は通常、約1μm〜約10μmの厚さを有し、n型GaN:SiまたはAlGaN:Siである。
【0023】
第2のIII−V族窒化物層104の上には第3のIII−V族窒化物層105が形成される。第3のIII−V族窒化物層105は欠陥低減層である。第3のIII−V族窒化物層105は通常、約25nm〜200nmの厚さを有し、活性領域108中のInGaN量子井戸より少ないIn組成(In-content)を有するn型InGaN:Siである。
【0024】
第3のIII−V族窒化物層105の上には第4のIII−V族窒化物層106が形成される。第4のIII−V族窒化物層106はn型クラッディグ層である。第4のIII−V族窒化物層106は通常、約0.2μm〜約2μmの厚さを有し、第3または第2のIII−V族窒化物層より大きなAl組成を有するn型AlGaN:Siである。
【0025】
第4のIII−V族窒化物層106の上には導波層である第5のIII−V族窒化物層107が形成される。第5のIII−V族窒化物層107は通常、活性領域108中のInGaN量子井戸より少ないIn組成を有するn型InGaN:Si、GaN:Si、InGaN:unまたはGaN:unである。第5のIII−V族窒化物層107の全体的な厚さは通常、約0.05μm〜約0.2μmである。
【0026】
第5のIII−V族窒化物層107の上にはInGaN量子井戸活性領域108が形成される。これは少なくとも1個のInGaN量子井戸を含む。多数の量子井戸を含む活性領域の場合、量子井戸の各々は通常、約10オングストロ−ム〜約100オングストロ−ムの厚さを有し、InGaNまたはGaNバリア層で分離されている。InGaNまたはGaNバリア層は通常、約10オングストロ−ム〜約200オングストロ−ムの厚さを有する。通常、InGaN量子井戸およびInGaNまたはGaNバリア層には不純物が添加されていない。あるいは、Siを添加しても良い。
【0027】
InGaN(多重)量子井戸活性領域108の上には、キャリア制限層である第6のIII−V族窒化物層109が形成される。第6のIII−V族窒化物層109は、量子井戸活性領域よりも高いバンドギャップを有する。第6のIII−V族窒化物層109は通常、x=0.05〜x=0.4の範囲のAl組成を有するp型Al
xGa
1−xN:Mgである。第6のIII−V族窒化物層109の全体的な厚さは通常、約5nm〜約100nmである。
【0028】
第6のIII−V族窒化物層109の上には、導波層である第7のIII−V族窒化物層110が形成される。第7のIII−V族窒化物層110は通常、活性領域内のInGaN多数井戸より小さいIn組成を有するp型InGaN:MgまたはGaN:Mgである。第7のIII−V族窒化物層110の全体的な厚さは通常、約50nm〜約200nmである。
【0029】
第7のIII−V族窒化物層110の上には第8のIII−V族窒化物層111が形成される。第8のIII−V族窒化物層111はp型クラッディング層として機能する。第8のIII−V族窒化物層111は通常、約0.2μm〜約1μmの厚さを有し、第7のIII−V族窒化物層より大きなAl組成を有するAlGaN:Mgである。
【0030】
第8のIII−V族窒化物層111の上には第9のIII−V族窒化物層112が形成される。第9のIII−V族窒化物層112は、ヘテロ構造体100のp側に接触するための、最小抵抗金属電極に対するpコンタクト層を形成する。第9のIII−V族窒化物層112は通常、約10nm〜200nmの厚さを有する。
【0031】
レーザ構造体100は、当技術分野において周知である有機金属気相成長法(MOCVD)または分子線エピタキシー法等の技術によって形成することができる。MOCVDによる成長は通常、2インチ(5.08cm)または3インチ(7.62cm)の直径を有するサファイア基盤ウェーハ上で行なう。基板102は、C面(0001)またはA面(1120)配向サファイア(Al
2O
3)基板でも良い。サファイア基板ウェーハは一方の面にエピタキシャルポリッシュを有し、典型的な厚さが10ミル〜17ミル(0.254mm〜0.4318mm)である標準的な仕様である。基板の他の例としては、4H−SiC,6H−SiC,AlNまたはGaN等でも良いが、これらに限定されるわけではない。GaN基板上で成長させる場合は、核形成層を形成せずに、基板102の上面に直接、第2の第2のIII−V族窒化物層104を形成することができる。
【0032】
MOCVDによる成長の後、(Al)GaN:Mg層内のMgのp添加を開始する(activated)。これは、窒素雰囲気の中で850℃で5分間、RTA(急速熱処理)することで行なう。次に、
図4に示すように、Ar(アルゴン)/Cl
2(塩素)/BCl
3(三塩化ホウ素)混合ガス中で、第7のIII−V族窒化物層110を、CAIBE(chemical assisted ion beam etching)またはRIE(reactive ion beam etching)によってドライエッチングして、リッジ(ridge)導波構造を形成する。
【0033】
素子の利得領域(gain)および変調領域を形成するために、
図5に示すように、リッジ導波構造をエッチングして分離トレンチ114を形成する。分離トレンチ114は、リッジ導波管をエッチング形成するステップと同じステップで形成できる。あるいは、別のステップで形成して、エッチングの深さを異ならせても良い。例えばプラズマ強化化学蒸着法(PE−CVD)によって、トレンチの中に電気絶縁層(例えば、シリコンオキシナイトライドまたはSiO
2またはSi
3N
4)を蒸着させて(図示せず)、光学モード(optical mode)の障害(disturbance)を軽減し、露出面の保護層とすることもできる。
【0034】
Ar/Cl
2/BCl
3混合ガス中でCAIBEまたはRIEを用いたドライエッチングを、GaN:Si層104に届くまで行い、nコンタクトを形成する。n―コンタクト120は、第2のIII−V族窒化物層104の上に形成される。第2のIII−V族窒化物層104は、横方向コンタクト(lateral contact)層として機能する。
【0035】
図4に示すn電極120は、
図6の増幅領域116と変調領域118との両方に共通する。nコンタクト金属の堆積は、熱蒸着、電子ビーム蒸着、またはスパタリングによって行なうことができる。通常は、Ti/Al,Ti/AuまたはTi/Al/Auをn金属コンタクトとして使用する。nコンタクトを窒素雰囲気の中で500℃でアニールして接触抵抗を軽減する。誘電性分離層113(dielectric isolation layer)(例えば、シリコンオキシナイトライドまたはSiO
2またはSi
3N
4)を、プラズマ強化化学蒸着法(PE−CVD)によって、リッジ導波構造体の上に蒸着させる。あるいは、ポリイミドを用いて分離しても良い。pコンタクトを形成するための窓は、CF
4/O
2雰囲気の中でRFプラズマエッチングを行うことで、誘電体分離層にエッチング形成する。
【0036】
図5は、増幅コンタクト層201の上にp電極200が形成されて増幅領域116を形成し、変調コンタクト層301の上にp電極300が生成されて変調領域118を形成している。2個のp電極200,300は分離しており別個の存在なので、増幅領域116と変調領域118とを個別にアドレスできる。Ni/Au,NiO/Au,Pd/Au,Pd/Au/Ti/Au,Pd/Ti/Au,Pd/Ni/Au,Pt/Au,またはPd/Pt/Auを、熱蒸着、電子ビーム蒸着、またはスパッタリングによって、pコンタクト金属として堆積できる。
【0037】
レーザ面(laser facet)は、クリービングまたはドライエッチング(例えばCAIBE)によって形成できる。eビーム蒸着によって、SiO
2/TiO
2,SiO
2/Ta
2O
5、またはSiO
2/HfO
2高反射コーティングをレーザダイオードの後面126に堆積して、ミラーの反射力を強化できる。レーザダイオードの前面124には、eビーム蒸着によって、SiOまたはSiO
2無反射コーティングを堆積できる。
【0038】
図5および
図6に示すように、トレンチ114によって、レーザ構造体100を増幅領域116と変調領域118とに分離する。増幅領域116は金属p電極200と、p−コンタクト層201と、上部クラッディング層202と、上部導波層203と、上部制限層204とを有する。変調領域118は、金属p電極300と、p−コンタクト層301と、上部クラッディング層302と、上部導波層303と、上部制限層304とを有する。
【0039】
増幅p―コンタクト層201は、変調p−コンタクト層301とは分離しており、それぞれ別個に存在するが、これらは共に、溝114をエッチング形成する前にp−コンタクト層112から形成したものである。増幅上部クラディングおよび導波層202,203は、変調上部クラディングおよび導波管層302,303とは分離しており、それぞれ別個に存在するが、これらは共に、溝114をエッチング形成する前に上部制限および導波層110,111から形成したものである。増幅上部制限層204は、変調上部制限層304とは分離しており、それぞれ別個に存在するが、これらは共に、溝114をエッチング形成する前にp−上部制限層109から形成されたものである。
【0040】
図4に示す活性量子井戸層108と、下部導波層107と、下部クラッディング層106と、欠陥低減層105と、厚い(Al)GaN電流拡散層104と、バッファ層103と、基板102とは、増幅領域116および変調領域118に共通である。
【0041】
分離トレンチ114の最適な深さは、完全な電気絶縁が望ましいか、光学モードの障害を最小限にすることが望ましいかによって、異なる。完全な電気絶縁を行うためには、全てのp型層を貫通し、MQW活性領域108まで達するか、これを貫通するまでエッチングしてトレンチ114を形成すれば良い。しかし、このようにすると、素子の変調領域と利得領域との間を往来(traveling)する光学モードを妨害し、拡散損失を招くことになる。一方、p型層の一部だけをエッチングしてトレンチを形成すれば、利得領域と変調領域との間に幾分かの電気的な接続が残る。しかし、これら2領域間のクロストークは非常に小さいと思われる。これは、p型GaNおよびAlGaN層の横方向の抵抗(lateral resistance)が高いためである。例えば、p−AlGaNクラッディング層111(
図4)だけをエッチングしてトレンチ114を形成する場合(
図5に示す)、残りのGaN:Mg導波層110およびp―AlGaN層109(
図4に示す)によって、変調領域と利得領域との間に、約3MΩの直列抵抗が生じるだろう。(ただし、導波層の厚さが100nmであり、トレンチの幅が10μmであり、リッジ導波層の幅が2μmであり、正孔密度が10
18cm
−3であり、自由度(mobility)が1cm
2/Vsであるとする。)
【0042】
オフ状態での増幅領域116からの自発放射を最小限にするために、レーザ構造体100が放射する光ビーム128は、変調領域118に隣接するミラー124から放射される。
【0043】
本発明によれば、増幅領域116の下の活性層108は増幅活性層130であり、変調領域118の下の活性領域108は変調活性層132である。
【0044】
2領域青色レーザ構造体100において、増幅領域116には電流が勢いよく注入され、発光領域として機能する。一方、変調領域118には、増幅領域よりも低いレベルで電流が注入されて、高周波変調を行なうことができる。あるいは、変調領域を逆にバイアスすることができ、これによっても高周波動作を行うことができる。
【0045】
増幅領域116は変調領域118より遥かに長い。したがって、増幅領域116の活性層130は、本質的に、所望の出力強度を生じるために必要な全ての利得を提供する。変調領域118の活性層132は、内部損失を高い値から低い値に切り替えることで、レーザ構造体100の出力を制御する。
【0046】
増幅領域116は、p電極200およびn電極120を介して供給される入力電流によって順方向バイアスがかけられる。この電流によって、電子が、不純物が添加されたn型層である電流拡散層104、欠陥低減層105、下部クラッディング層106、下部導波層107から増幅活性層130に向かって流れる。更にこの電流によって、正孔が、不純物が添加されたp型層である増幅コンタクト層201、増幅上部クラッディング層202、増幅上部導波層203、増幅上部制限層204から増幅活性層130に向かって流れる。十分な電流が供給された増幅活性層130において電子と正孔とが再結合すると、光ビーム128の放出が刺激される。
【0047】
増幅領域116に供給される電流を調整して、変調領域118がオン状態(オン状態=変調活性層132が低損失状態にある)の場合には、2領域レーザ構造体100内の活性領域108全体でのミラー損失および光損失を含む光損失の合計を克服する(overcome)ために十分であって、変調領域118がオフ状態(オフ状態=変調活性層132が高損失状態にある)の場合には、活性領域108全体のミラー損失および光損失を含む光損失の合計を超えないような利得が、増幅活性層130において生成されるようにする。増幅電流は一定に維持される。2領域レーザ構造体100は、レーザ発光とレーザ出力パワーとを変調する。これは、レーザ素子の変調領域における活性層132での光損失を変化させることによって行なう。変調領域が高損失状態(オフ状態)にある場合、増幅領域で生成される利得は、光損失の合計を克服する程大きくないので、レージングは禁止される。変調領域を低損失状態(オン状態)に切り替えれば、増幅領域において生成される利得は光損失の合計を克服できる程十分に大きくなるので、レージングを行なうことができる。変調領域における光損失は、変調領域118に対して順方向電流を適用するか、逆バイアス電圧を適用するかによって、変えることができる。
【0048】
本発明に係る2領域青色レーザ構造体100に対して2つの基本的な変調モードがある。
【0049】
一方のモードは「順方向電流変調モード」と呼ばれる。このモードでは、増幅領域116には十分な順方向バイアスがかけられていて、発光を刺激しているが、変調領域には無視できる程度の最小限の順方向バイアス電流しか供給されていない。変調領域118を順方向にバイアスするためには、p電極300およびn電極120を介して入力電流を供給すれば良い。この電流によって、電子が、不純物が添加されたn型層である(n-doped)電流拡散層104、欠陥低減層105、下部クラッディング層106、下部導波層107から変調活性層132に流れ、正孔が、(p-doped)変調コンタクト層301、変調上部クラッディング層302、変調上部導波層303、変調上部制限層304から変調活性層132に流れる。電流が供給されない場合には、変調領域118は高損失状態にあり、レージングが禁止される(オフ状態)。十分な電流によって変調活性層132に電子および正孔を注入すると、変調活性層132における損失が軽減される。変調領域118は低損失状態にあるので、増幅領域116から得られる利得は損失の全てを克服できる程十分に高く、レージングを行なうことができる(オン状態)。
【0050】
他方のモードは「逆バイアス変調モード」と呼ばれ、増幅領域には十分な順方向バイアスが適用されて発光を刺激しており、変調領域には逆バイアス電圧が適用されている。
【0051】
変調領域118に対する逆バイアス入力電圧の適用は、p電極300およびn電極120を介して行うことができる。下部導波層107、InGaNMQW活性領域132、上部電流制限層304によって形成された変調領域p−n接合に逆バイアスを適用することによって、変調領域p−n接合における電界を変えることができる。電圧が適用されない場合は、変調領域118は高損失状態にあり、レージングが禁止される(オフ状態)。外部逆バイアスを適用すると変調領域118は低損失状態にあるので、増幅領域116からの利得は、全損失を克服する程度にまで十分に高まり、レージングを行なうことができる(オン状態)。