【実施例】
【0024】
以下では蛍光を発する金属としてユーロピウム及びテルビウムを使用した有機/金属ハイブリッドポリマーの合成とその発光特性についての実施例を説明する。
【0025】
先ず、側鎖にPEG鎖を有するビス(ターピリジン)配位子の合成を行った。この合成の一連の過程を
図1に示す。このようにして得られた配位子と硝酸ユーロピウムを用いた滴定試験から、
図2に示すように、配位子:金属=1:1で錯形成することを確認した。
図2は、配位子のみの溶液にユーロピウム金属塩を加えていった過程における紫外領域の吸光度のスペクトルの変化を示している。スペクトルのピークの変化が配位子:金属=1:1のところまで見られるが、その後、更に金属塩を加えても変化しないことから、配位子:金属=1:1で錯形成した状態が安定であることがわかる。
【0026】
次に、このようにして合成された配位子を、
図3に示すようにEu(NO
2)
3(あるいはTb(NO
2)
3)、Et
3N及びMeOHと混合して還流することにより、有機/ユーロピウムハイブリッドポリマー(あるいは有機/テルビウムハイブリッドポリマー)を定量的に(つまり、ほぼ100%で)合成した。なお、希土類元素の供給源としてその硝酸塩の代わりにランタノイドトリフラートLn(OTf)
3などを使用することもできる。
【0027】
以下では有機/ユーロピウムハイブリッドポリマーについてその蛍光特性などを説明するが、有機/テルビウムハイブリッドポリマーも、蛍光色は異なるものの、その他の特性については同じ傾向を示した。
【0028】
なお、ここで金属塩に関しては、Eu塩やTb塩以外に、希土類塩であれば代替可能である。塩基としては、Et
3N以外に、NaOH、KOHなどの無機塩基、Bu
3Nなどの有機塩基で代替可能である。また、溶媒はエタノール、エチレングリコールなどのアルコール系であれば代替可能である。
【0029】
上記配位子及び有機/金属ハイブリッドポリマーの具体的な合成過程は以下の通りであった。
【0030】
○Diethnyl-4'-(4-bromophenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateの合成
4'-(4-bromophenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarbonitrile(8.77g,20.0mmol)の濃硫酸(90mL)、酢酸(90mL)、水(20mL)混合溶媒を100℃で12時間撹拌した後、800mLの氷水に加えた。沈殿を回収し、水およびアセトニトリルで洗浄し、乾燥した。アイスバス中の600mLのエタノールに24gの塩化チオチルを加え、室温で15分撹拌した後に上記の沈殿を加え、12時間還流撹拌した。溶媒留去後1000mLのクロロホルムを加え、5%NaHCO
3水溶液で洗浄した。有機層を分離し、MgSO
4,で乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CH
2Cl
2 : MeOH = 99 : 1)で精製し、dimethnyl-4'-(4-bromophenyl)-2,2': 6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateを得た。(5.01g,47.1%)
【0031】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, 298 K )δ=
8.81 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.80 (s, 2H), 8.16 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.01 (t, 2H, J = 7.8 Hz), 7.76 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.66 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 4.52 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.49 (t, 6H, J = 7.1 Hz);
13C NMR (75 MHz, CDCl
3, 298 K) δ=
165.2, 156.2, 155.2, 149.5, 147.9, 137.8, 137.3, 132.1, 129.0, 125.1, 124.4, 123.6, 119.6, 61.9, 14.3.
【0032】
○Diethnyl-4'-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaboryl)phenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateの合成
Dimethnyl-4'-(4-bromophenyl)-2,2':6',2''- terpyridine-6,6''-dicarboxylate(5.32g,10.0mmol)のDMSO(40mL)にビスピナコラトジボロン(bispinacolatodiboron)(2.79g,11.0mmol)、酢酸カリウム(4.91g,50.0mmol)及びPdCl
2(PPh
3)
2(702mg,1.0mmol)を加え、窒素雰囲気下120℃12時間撹拌した。室温に冷却した後にろ過で触媒を除き、クロロホルムで洗浄した。母液を水で洗浄し、有機層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CH
2Cl
2)で精製し、diethnyl-4'-(4-(4,4,5,5- tetramethyl-1,3,2-dioxaboryl)phenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateを得た。(5.21g,89.9%)
【0033】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, 298 K ) δ=
8.87 (s, 2H), 8.83 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.17 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.01 (t, 2H, J = 7.8 Hz), 7.98 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.92 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 4.52 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.49 (t, 6H, J = 7.1 Hz), 1.39 (s, 12H);
13C NMR (75 MHz, CDCl
3, 298 K) δ=165.4, 156.3, 155.2, 150.5, 147.9, 140.9, 137.8, 135.4, 126.7, 125.0, 124.4, 120.0, 84.0, 61.9, 24.9, 14.3.
【0034】
○配位子合成
Diethnyl-4'-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaboryl)phenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylate(127mg,0.22mmol)のDMSO(2mL)溶液に1,4-dibromo-2,5- bis(3,4,5-tris(2-(2-(2-methoxyethoxy)ethoxy)ethoxy)benzyloxy)benzene(142mg,0.10mmol)、potassium carbonate(69.1mg,0.50mmol)及びPdCl
2(PPh
3)
2(7.02mg,10μmol)を加え、窒素雰囲気下120℃で24時間撹拌した。室温に冷却した後にろ過で触媒を除き、クロロホルムで洗浄した。母液を水で洗浄し、有機層を分離後硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CH
2Cl
2)とリサイクルGPCで精製し、粘性の固体を得た。(38.1mg,8.8%)
【0035】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, 298 K ) δ=
8.93 (s, 4H), 8.87 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.19 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.04 (t, 4H, J = 7.9 Hz), 8.03 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.84 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.21 (s, 2H), 6.57 (s, 4H), 5.02 (s, 4H), 4.54 (q, 8H, J = 7.1 Hz), 4.07 (m, 12H), 3.79-3.40 (m, 60H) 3.34 (s, 6H), 3.29(s, 12H), 1.50 (t, 12H, J = 7.1 Hz);
13C NMR (75 MHz, CDCl
3, 298 K) δ=
165.3, 156.3, 155.3, 152.6, 150.4, 150.2, 148.0, 139.2, 137.8, 137.0, 132.5, 131.2, 130.3, 127.1, 125.1, 124.4, 119.7, 117.2, 106.1, 72.3, 71.9, 71.8, 70.6, 70.5, 70.4, 69.6, 68.7, 61.9, 58.9, 14.4.
【0036】
さらに、上記粘性固体(170 mg, 79 μmol)を5 mL のTHF-H
2O (v/v = 1 : 1) 混合溶媒に溶解させsodium hydroxide (12.6 mg, 314 μmol)を加え、12 時間還流撹拌した。室温に冷却後、1 M aqueous HClで中性化し、減圧下THFを除いた。水層をchloroformで抽出し、有機層を分離後MgSO
4,で乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、リサイクルGPCで精製し、配位子(117mg, 71.8%)を得た。
【0037】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3, 298 K ) δ=
8.95 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.82 (s, 4H), , 8.34 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.17 (t, 4H, J = 7.9 Hz), 7.99 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.86 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.20 (s, 2H), 6.60 (s, 4H), 5.04 (s, 4H), 4.11 (m, 12H), 3.83-3.40 (m, 60H) 3.34 (s, 6H), 3.21 (s, 12H)
【0038】
○ポリマー合成
等モル量の配位子とEu(NO
2)
3をアルゴンガスでバブリングした無水methanol中で24時間還流撹拌した。溶媒を留去後、methanolに溶解させ,chloroform-hexane混合溶媒に沈殿させ、ろ過により回収し、水およびchloroformで洗浄し、黄色固体を定量的に得た。
【0039】
上述のようにして作成されたビス(ターピリジン)を配位子とする有機/ユーロピウムハイブリッドポリマー(以下、単に有機/金属ハイブリッドポリマーと称する)のAFM像を
図4に示す。
【0040】
得られた有機/金属ハイブリッドポリマーはそれ自体で自己支持膜形成が可能であった。このような膜は具体的には以下のようにして作成した。
【0041】
○自己支持膜の作成
合成した有機/金属ハイブリッドポリマー(10mg)をメタノール(0.5mL)に溶解し、テフロンシャーレにキャストしゆっくりと溶媒を留去することで自己支持膜を得、減圧下で乾燥した。
【0042】
また、更に薄い膜も以下のようにして作製することができた。
【0043】
○薄膜の作成
合成した有機/金属ハイブリッドポリマー(41μg)のメタノール溶液(1mL)をガラス基板上にスピンキャストすることで得、減圧下で乾燥した。
また、以下で説明するように、この膜に紫外線を照射することで蛍光性があることを確認できた。
【0044】
図5の左上の写真は、実験的に作成したこの有機/金属ハイブリッドポリマー膜をピンセットで保持した状態で可視光を左上方から照射した状態を撮影したものである。この状態ではこの膜は蛍光を発していないので、膜のうちの照射光の反射が撮影基材に入射する部分は明るく写っているが、そうでない箇所は暗い背景が膜を通して見えるため、暗く写っている。その結果、この写真中の膜は非常にコントラストが強いように見える。この状態で更に波長が345nmの紫外線による照射を追加した状態を撮影した写真を
図5の右上に示す。膜全体から蛍光を発するため、
図5右上の写真中では膜は全体がほぼ一様の明るさであるように見える。
図5はモノクローム写真であるため膜全体が明るく写っているが、実際にはこの膜全体が赤色の蛍光を発した。また、
図5の右下の写真は台上に載置した本実施例の膜の断片に345nmの紫外線のみを照射した場合の写真である。台上の膜の断片及び膜の微細な破片が上の写真の場合と同様に赤色に発光していることが確認できた。
【0045】
図6の左上の写真はHClガスに曝露する前の本発明の実施例の有機/金属ハイブリッドポリマー膜に345nmの紫外線を照射した状態を示す写真であり、赤色の強い蛍光が観測された。右上の写真はこの膜をHClガスに曝露した後に同様な紫外線照射を行った状態を示す。あらかじめHCl溶液でHClガス雰囲気にした容器内に5〜10秒入れることでHCl曝露した後は、蛍光はほとんど見られなくなった。このように蛍光性が失われた膜をトリエチルアミン(Et
3N)溶液でトリメチルアミン雰囲気にした容器内でその蒸気に30秒〜60秒曝露することで、左上の写真のように蛍光性が復活した。
【0046】
図6の左下のグラフは上で説明した蛍光消失−復活を5回繰り返したときの、蛍光スペクトルを示している。すなわち、このグラフ中には、345nmの紫外線照射により強い蛍光を発している状態のスペクトルの曲線として、HCl蒸気曝露前の1本の曲線と5回の復活時点でのグラフの5本の曲線の都合6本が、また同じ紫外線照射を行ってもほとんど蛍光を発していない状態のスペクトルの曲線として5回の蛍光消失状態の夫々に対応する5本が示されている。また、右下のグラフは、HCl蒸気曝露前、5回の蛍光消失時、及び5回の傾向復活時の各々において、同様な紫外線照射を行った際に発せられる蛍光の612nmにおける強度を示している。これらのグラフから、HCl処理とトリエチルアミン処理を繰り返すことで、蛍光強度はやや低下する傾向があるものの、蛍光性を可逆的に消失−復活させることができることが確認できた。