特許第5747247号(P5747247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747247有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー及びその配位子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747247
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー及びその配位子
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20150618BHJP
   C07D 213/22 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C09K11/06 680
   C07D213/22
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-52361(P2011-52361)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-188519(P2012-188519A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌芳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/049371(WO,A1)
【文献】 特表2006−504779(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/081762(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/143324(WO,A1)
【文献】 特開2008−162979(JP,A)
【文献】 特開2006−016577(JP,A)
【文献】 特開昭64−045365(JP,A)
【文献】 Samir Mameri et al.,Efficient route to hybrid polypyridine-carboxylate ligands for lanthanide complexation,Tetrahedron Letters,2007年,48,9132-9136
【文献】 Loic Charbonniere et al.,Tuning the Coordination Sphere around Highly Luminescent Lanthanide Complexes,Inorganic Chemistry,2008年,47,3748-3762
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
C07D 213/00−213/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスターピリジン誘導体の配位子と、希土類金属イオンと、カウンターカチオンとを含む、以下の一般式で表される構造を有する有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー。
【化1】

ただし、Lは希土類金属イオンであり、
置換基A1からA4はカルボキシル基及び以下の構造式で表される置換基
【化2】

からなる群から選択されるとともに、置換基A1とA2の少なくとも一方、及び置換基A3とA4の少なくとも一方はカルボキシル基であり、
Xは2つのターピリジル置換基の間にあり少なくとも1つの芳香環を有するスペーサ、であるとともに、以下の(1)、(2)及び(3)の構造の群から選択される何れかの構造を有する。
(1)以下の化学式で表される構造。
【化3】

ただし、Rは側鎖にPEG基を有する、以下の構造式で表される置換基である。
【化4】

(2)以下の何れかの化学式で表される構造。
【化5】

(3)以下の何れかの化学式で表される構造。
【化6】

ただし、構造(2)及び(3)において、R〜Rは夫々上記Rで表される複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、R及びRは上記R及びRの選択肢として示された複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、前記複数のR”は前記R”の選択肢として示されている複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、1≦X≦100,000であり、1≦n≦20である。
【請求項2】
前記一般式中のnは500以下である、請求項1に記載の有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー。
【請求項3】
前記カウンターカチオンはNa、K,HN(R)、N(R)からなる群から選択され、ただし、Rは
−CH
−(CH)CH
−CHCHO(CHCH)CH
(ただし、1≦n≦5)
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー。
【請求項4】
前記希土類金属はEuまたはTbである、請求項1から3の何れかに記載の有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー。
【請求項5】
酸の蒸気に曝露することにより蛍光性を失う、請求項1から4の何れかに記載の有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー。
【請求項6】
アミン類またはアンモニアの蒸気に曝露することにより、失われた蛍光性が復活する、請求項5に記載の有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマー。
【請求項7】
以下の一般式で表される構造を有する、ビスターピリジン誘導体からなる配位子。
【化7】

ただし、置換基AからA4はカルボキシル基または以下の構造式で表される置換基
【化8】

からなる群から選択されるとともに、置換基A1とA2の少なくとも一方、及び置換基A3とA4の少なくとも一方はカルボキシル基であり、
Xは2つのターピリジル置換基の間にあり少なくとも1つの芳香環を有するスペーサ、であるとともに、以下の(1)、(2)及び(3)の構造の群から選択される何れかの構造を有する。
(1)以下の化学式で表される構造。
【化9】

ここでRは側鎖にPEG基を有する、以下の構造式で表される置換基である)
【化10】

(2)以下の何れかの化学式で表される構造。
【化11】

(3)以下の何れかの化学式で表される構造。
【化12】

ただし、構造(2)及び(3)において、R〜Rは夫々上記Rで表される複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、R及びRは上記R及びRの選択肢として示された複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、前記複数のR”は前記R”の選択肢として示されている複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、1≦X≦100,000であり、1≦n≦20である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光性を有する有機/金属ハイブリッドポリマーに関し、特に蛍光性を可逆的に消失させることができる、すなわち蛍光性の消失とその復活を繰り返すことができる有機/金属ハイブリッドポリマー及びその配位子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機/金属ハイブリッドポリマーは、有機部位(有機モジュール)と金属種がナノスケールでハイブリッド化(複合化)したポリマーであり、従来の有機ポリマーにない電子・光・磁気・触媒機能の発現が期待されている。本願発明者らはある種の有機/金属ハイブリッドポリマーにおいては、電圧の印加によるその金属イオンの酸化/還元によって特定の色で発色/脱色するという優れたエレクトロクロミック特性を有することを見出し、これに基づき、このような特性を有する各種の有機/金属ハイブリッドポリマー、その配位子として使用されるビスターピリジン誘導体、及びその表示素子などへの各種応用について特許出願等を行ってきた(特許文献1〜10)。
【0003】
しかし、有機/金属ハイブリッドポリマーによる視覚的・光学的効果を、上述したような電圧の印加以外の方法で達成することについてはこれまで知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、蛍光性を有するとともに、特定の雰囲気に曝露することで蛍光性を可逆的に失わせまた復活させることができる有機/金属ハイブリッドポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、ビスターピリジン誘導体の配位子と、希土類金属イオンと、カウンターカチオンとを含む、以下の一般式で表される構造を有する有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマーが与えられる。
【化1】

ただし、Lは希土類金属イオン、Xは2つのターピリジル置換基の間にあり少なくとも1つの芳香環を有するスペーサ、置換基A1とA2の少なくとも一方、及び置換基A3とA4の少なくとも一方はカルボキシル基である。
ここにおいて、前記置換基A1からA4はカルボキシル基または以下の構造式で表される置換基であってよい。
【化2】

また、前記スペーサは以下の構造を有してよい。
【化3】

ただし、Rは側鎖にPEG基を有する、以下の構造式で表される置換基である。
【化4】

また、前記スペーサは以下の何れかの構造を有してよい。
【化5】


【化6】

ただし、R〜Rは夫々上記Rで表される複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、R及びRは上記R及びRの選択肢として示された複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、前記複数のR”は前記R”の選択肢として示されている複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、1≦X≦100,000であり、1≦n≦20である。
また、前記カウンターカチオンはNa、K,HN(R)、N(R)からなる群から選択されてよい。ただし、Rは
−CH
−(CH)CH
−CHCHO(CHCH)CH
(ただし、1≦n≦5)
からなる群から選択される。
また、前記希土類金属はEuまたはTbであってよい。
また、この有機/蛍光性金属ハイブリッドポリマーは酸の蒸気に曝露することにより蛍光性を失ってよい。
また、アミン類またはアンモニアの蒸気に曝露することにより、失われた蛍光性が復活してよい。
本発明の他の側面によれば、以下の一般式で表される構造を有する、ビスターピリジン誘導体からなる配位子が与えられる。
【化7】

ただし、Xは2つのターピリジル置換基の間にあり少なくとも1つの芳香環を有するスペーサ、置換基A1とA2の少なくとも一方、及び置換基A3とA4の少なくとも一方はカルボキシル基である。
ここで、前記置換基A1からA4はカルボキシル基または以下の構造式で表される置換基であってよい。
【化8】

また、前記スペーサは以下の構造を有してよい。
【化9】

(ここでRは側鎖にPEG基を有する、以下の構造式で表される置換基である)
【化10】

前記スペーサは以下の何れかの構造を有してよい。
【化11】

【化12】

ただし、R〜Rは夫々上記Rで表される複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、R及びRは上記R及びRの選択肢として示された複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、前記複数のR”は前記R”の選択肢として示されている複数の構造からなる群から互いに独立に選択され、1≦X≦100,000であり、1≦n≦20である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蛍光性を有する有機/金属ハイブリッドポリマーを提供することができる。また、この有機/金属ハイブリッドポリマーはその蛍光性を消失させまた復活させるという蛍光性消失−復活サイクルを繰り返すことができるという、これまでの蛍光性材料には見られない特有の性質を有する。また、本発明の有機/金属ハイブリッドポリマーは自己支持膜を形成することができるため、各種の応用に当たっての加工の自由度が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例における配位子合成の過程を示す図。
図2】Eu(NOを本発明の実施例で合成した配位子に0.1mol当量ずつ段階的に添加した時のメタノール中での紫外可視吸収スペクトル変化を示す図。
図3図1に示すようにして得られた配位子から本発明の実施例における有機/金属ハイブリッドポリマーを合成する反応を示す図。
図4】本発明の一実施例による有機/ユーロピウムハイブリッドポリマーのAFM像。
図5】本発明の一実施例による有機/ユーロピウムハイブリッドポリマーの蛍光性を示す図。
図6】本発明の一実施例による有機/ユーロピウムハイブリッドポリマーの蛍光性の可逆的な消失と復活を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の有機/金属ハイブリッドポリマーは、ビスターピリジン誘導体の配位子と、希土類金属イオンと、カウンターカチオンとを含む、以下の一般式で表される構造を有する。
【0009】
【化13】
【0010】
ここで、Lはユーロピウム、テルビウムなどの一般に蛍光体の付活物質として使用される希土類金属イオン、Xは2つのターピリジル置換基の間にあり、少なくとも1つの芳香環を有するスペーサ、A1〜A4は夫々−COOH、
【0011】
【化14】
【0012】
などの置換基から選択することができるが、A1とA2の少なくとも一方、及びA3とA4の少なくとも一方はカルボキシル基である。スペーサXは例えば以下の構造を有するものを使用してよいが、
【0013】
【化15】

(ここでRは側鎖にPEG基を有する、以下の構造式で表される置換基である)
【0014】
【化16】
【0015】
スペーサXとしてはそれ以外にも多様な構造を取ることができる。スペーサの限定的でない例を以下に示す。
【0016】
【化17】
【0017】
【化18】
【0018】
なお、上に列挙したスペーサの構造において、R〜Rは夫々Rで表される任意の構造を互いに独立に取ることができる。RとR並びに複数のR”についてもその選択肢として示されている複数の構造中から互いに独立に任意に選択できる。また、1≦X≦100,000であり、また1≦n≦20である。
【0019】
カウンターカチオンとしては例えば
Na、K,HN(R)、N(R)
などを使用することができる。ここで、Rは以下の構造を示す。
−CH
−(CH)CH
−CHCHO(CHCH)CH
(ただし、1≦n≦5)
【0020】
上で構造を説明した配位子と希土類金属塩とをメタノール中で還流させることにより、上述した本発明の有機/金属ハイブリッドポリマーが合成される。
【0021】
なお、還流の際には、メタノールの他に、KOH、NaOHなどの無機塩基やトリエチルアミンなどの有機塩基などを使用することができる。また、希土類金属塩としてはEu、Tbなどの希土類金属硝酸塩の他に、例えばランタノイドトリフラートなども使用することができる。
【0022】
このようにして合成された有機/金属ハイブリッドポリマーは特に他のポリマーなどの膜の形成やその強度の改善などを助ける物質を混入しなくともそれ自体で自己支持膜を形成できるので、基板などの支持体を使用できない応用の場合にも、薄いにもかかわらず強い蛍光を発する膜を提供することができるという利点がある。
【0023】
更に、この膜を塩酸などの各種の酸(一般にはプロトンを発生する酸であれば何でも良い)の蒸気の雰囲気中に曝露すると蛍光性がほとんど消光し、またこのような処理のために蛍光性が失われた膜をトリエチルアミンなどの各種のアミン類あるいはアンモニアの蒸気の雰囲気に曝露することで蛍光性がほとんど元の状態に復活する。この蛍光性消失−復活のサイクルは10回以上繰り返すことができる。すなわち、本発明の有機/金属ハイブリッドポリマーにおける蛍光性消失は可逆的であることが確認された。
【実施例】
【0024】
以下では蛍光を発する金属としてユーロピウム及びテルビウムを使用した有機/金属ハイブリッドポリマーの合成とその発光特性についての実施例を説明する。
【0025】
先ず、側鎖にPEG鎖を有するビス(ターピリジン)配位子の合成を行った。この合成の一連の過程を図1に示す。このようにして得られた配位子と硝酸ユーロピウムを用いた滴定試験から、図2に示すように、配位子:金属=1:1で錯形成することを確認した。図2は、配位子のみの溶液にユーロピウム金属塩を加えていった過程における紫外領域の吸光度のスペクトルの変化を示している。スペクトルのピークの変化が配位子:金属=1:1のところまで見られるが、その後、更に金属塩を加えても変化しないことから、配位子:金属=1:1で錯形成した状態が安定であることがわかる。
【0026】
次に、このようにして合成された配位子を、図3に示すようにEu(NO(あるいはTb(NO)、EtN及びMeOHと混合して還流することにより、有機/ユーロピウムハイブリッドポリマー(あるいは有機/テルビウムハイブリッドポリマー)を定量的に(つまり、ほぼ100%で)合成した。なお、希土類元素の供給源としてその硝酸塩の代わりにランタノイドトリフラートLn(OTf)などを使用することもできる。
【0027】
以下では有機/ユーロピウムハイブリッドポリマーについてその蛍光特性などを説明するが、有機/テルビウムハイブリッドポリマーも、蛍光色は異なるものの、その他の特性については同じ傾向を示した。
【0028】
なお、ここで金属塩に関しては、Eu塩やTb塩以外に、希土類塩であれば代替可能である。塩基としては、EtN以外に、NaOH、KOHなどの無機塩基、BuNなどの有機塩基で代替可能である。また、溶媒はエタノール、エチレングリコールなどのアルコール系であれば代替可能である。
【0029】
上記配位子及び有機/金属ハイブリッドポリマーの具体的な合成過程は以下の通りであった。
【0030】
○Diethnyl-4'-(4-bromophenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateの合成
4'-(4-bromophenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarbonitrile(8.77g,20.0mmol)の濃硫酸(90mL)、酢酸(90mL)、水(20mL)混合溶媒を100℃で12時間撹拌した後、800mLの氷水に加えた。沈殿を回収し、水およびアセトニトリルで洗浄し、乾燥した。アイスバス中の600mLのエタノールに24gの塩化チオチルを加え、室温で15分撹拌した後に上記の沈殿を加え、12時間還流撹拌した。溶媒留去後1000mLのクロロホルムを加え、5%NaHCO水溶液で洗浄した。有機層を分離し、MgSO4,で乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CH2Cl2 : MeOH = 99 : 1)で精製し、dimethnyl-4'-(4-bromophenyl)-2,2': 6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateを得た。(5.01g,47.1%)
【0031】
1H NMR (300 MHz, CDCl3, 298 K )δ= 8.81 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.80 (s, 2H), 8.16 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.01 (t, 2H, J = 7.8 Hz), 7.76 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.66 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 4.52 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.49 (t, 6H, J = 7.1 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl3, 298 K) δ= 165.2, 156.2, 155.2, 149.5, 147.9, 137.8, 137.3, 132.1, 129.0, 125.1, 124.4, 123.6, 119.6, 61.9, 14.3.
【0032】
○Diethnyl-4'-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaboryl)phenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateの合成
Dimethnyl-4'-(4-bromophenyl)-2,2':6',2''- terpyridine-6,6''-dicarboxylate(5.32g,10.0mmol)のDMSO(40mL)にビスピナコラトジボロン(bispinacolatodiboron)(2.79g,11.0mmol)、酢酸カリウム(4.91g,50.0mmol)及びPdCl(PPh(702mg,1.0mmol)を加え、窒素雰囲気下120℃12時間撹拌した。室温に冷却した後にろ過で触媒を除き、クロロホルムで洗浄した。母液を水で洗浄し、有機層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl)で精製し、diethnyl-4'-(4-(4,4,5,5- tetramethyl-1,3,2-dioxaboryl)phenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylateを得た。(5.21g,89.9%)
【0033】
1H NMR (300 MHz, CDCl3, 298 K ) δ= 8.87 (s, 2H), 8.83 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.17 (d, 2H, J = 7.8 Hz), 8.01 (t, 2H, J = 7.8 Hz), 7.98 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.92 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 4.52 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.49 (t, 6H, J = 7.1 Hz), 1.39 (s, 12H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3, 298 K) δ=165.4, 156.3, 155.2, 150.5, 147.9, 140.9, 137.8, 135.4, 126.7, 125.0, 124.4, 120.0, 84.0, 61.9, 24.9, 14.3.
【0034】
○配位子合成
Diethnyl-4'-(4-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaboryl)phenyl)-2,2':6',2''-terpyridine-6,6''-dicarboxylate(127mg,0.22mmol)のDMSO(2mL)溶液に1,4-dibromo-2,5- bis(3,4,5-tris(2-(2-(2-methoxyethoxy)ethoxy)ethoxy)benzyloxy)benzene(142mg,0.10mmol)、potassium carbonate(69.1mg,0.50mmol)及びPdCl2(PPh3)2(7.02mg,10μmol)を加え、窒素雰囲気下120℃で24時間撹拌した。室温に冷却した後にろ過で触媒を除き、クロロホルムで洗浄した。母液を水で洗浄し、有機層を分離後硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl)とリサイクルGPCで精製し、粘性の固体を得た。(38.1mg,8.8%)
【0035】
1H NMR (300 MHz, CDCl3, 298 K ) δ= 8.93 (s, 4H), 8.87 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.19 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.04 (t, 4H, J = 7.9 Hz), 8.03 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.84 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.21 (s, 2H), 6.57 (s, 4H), 5.02 (s, 4H), 4.54 (q, 8H, J = 7.1 Hz), 4.07 (m, 12H), 3.79-3.40 (m, 60H) 3.34 (s, 6H), 3.29(s, 12H), 1.50 (t, 12H, J = 7.1 Hz); 13C NMR (75 MHz, CDCl3, 298 K) δ= 165.3, 156.3, 155.3, 152.6, 150.4, 150.2, 148.0, 139.2, 137.8, 137.0, 132.5, 131.2, 130.3, 127.1, 125.1, 124.4, 119.7, 117.2, 106.1, 72.3, 71.9, 71.8, 70.6, 70.5, 70.4, 69.6, 68.7, 61.9, 58.9, 14.4.
【0036】
さらに、上記粘性固体(170 mg, 79 μmol)を5 mL のTHF-H2O (v/v = 1 : 1) 混合溶媒に溶解させsodium hydroxide (12.6 mg, 314 μmol)を加え、12 時間還流撹拌した。室温に冷却後、1 M aqueous HClで中性化し、減圧下THFを除いた。水層をchloroformで抽出し、有機層を分離後MgSO4,で乾燥後、ろ過し、溶媒を留去後、リサイクルGPCで精製し、配位子(117mg, 71.8%)を得た。
【0037】
1H NMR (300 MHz, CDCl3, 298 K ) δ= 8.95 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.82 (s, 4H), , 8.34 (d, 4H, J = 7.9 Hz), 8.17 (t, 4H, J = 7.9 Hz), 7.99 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.86 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.20 (s, 2H), 6.60 (s, 4H), 5.04 (s, 4H), 4.11 (m, 12H), 3.83-3.40 (m, 60H) 3.34 (s, 6H), 3.21 (s, 12H)
【0038】
○ポリマー合成
等モル量の配位子とEu(NO2)3をアルゴンガスでバブリングした無水methanol中で24時間還流撹拌した。溶媒を留去後、methanolに溶解させ,chloroform-hexane混合溶媒に沈殿させ、ろ過により回収し、水およびchloroformで洗浄し、黄色固体を定量的に得た。
【0039】
上述のようにして作成されたビス(ターピリジン)を配位子とする有機/ユーロピウムハイブリッドポリマー(以下、単に有機/金属ハイブリッドポリマーと称する)のAFM像を図4に示す。
【0040】
得られた有機/金属ハイブリッドポリマーはそれ自体で自己支持膜形成が可能であった。このような膜は具体的には以下のようにして作成した。
【0041】
○自己支持膜の作成
合成した有機/金属ハイブリッドポリマー(10mg)をメタノール(0.5mL)に溶解し、テフロンシャーレにキャストしゆっくりと溶媒を留去することで自己支持膜を得、減圧下で乾燥した。
【0042】
また、更に薄い膜も以下のようにして作製することができた。
【0043】
○薄膜の作成
合成した有機/金属ハイブリッドポリマー(41μg)のメタノール溶液(1mL)をガラス基板上にスピンキャストすることで得、減圧下で乾燥した。
また、以下で説明するように、この膜に紫外線を照射することで蛍光性があることを確認できた。
【0044】
図5の左上の写真は、実験的に作成したこの有機/金属ハイブリッドポリマー膜をピンセットで保持した状態で可視光を左上方から照射した状態を撮影したものである。この状態ではこの膜は蛍光を発していないので、膜のうちの照射光の反射が撮影基材に入射する部分は明るく写っているが、そうでない箇所は暗い背景が膜を通して見えるため、暗く写っている。その結果、この写真中の膜は非常にコントラストが強いように見える。この状態で更に波長が345nmの紫外線による照射を追加した状態を撮影した写真を図5の右上に示す。膜全体から蛍光を発するため、図5右上の写真中では膜は全体がほぼ一様の明るさであるように見える。図5はモノクローム写真であるため膜全体が明るく写っているが、実際にはこの膜全体が赤色の蛍光を発した。また、図5の右下の写真は台上に載置した本実施例の膜の断片に345nmの紫外線のみを照射した場合の写真である。台上の膜の断片及び膜の微細な破片が上の写真の場合と同様に赤色に発光していることが確認できた。
【0045】
図6の左上の写真はHClガスに曝露する前の本発明の実施例の有機/金属ハイブリッドポリマー膜に345nmの紫外線を照射した状態を示す写真であり、赤色の強い蛍光が観測された。右上の写真はこの膜をHClガスに曝露した後に同様な紫外線照射を行った状態を示す。あらかじめHCl溶液でHClガス雰囲気にした容器内に5〜10秒入れることでHCl曝露した後は、蛍光はほとんど見られなくなった。このように蛍光性が失われた膜をトリエチルアミン(EtN)溶液でトリメチルアミン雰囲気にした容器内でその蒸気に30秒〜60秒曝露することで、左上の写真のように蛍光性が復活した。
【0046】
図6の左下のグラフは上で説明した蛍光消失−復活を5回繰り返したときの、蛍光スペクトルを示している。すなわち、このグラフ中には、345nmの紫外線照射により強い蛍光を発している状態のスペクトルの曲線として、HCl蒸気曝露前の1本の曲線と5回の復活時点でのグラフの5本の曲線の都合6本が、また同じ紫外線照射を行ってもほとんど蛍光を発していない状態のスペクトルの曲線として5回の蛍光消失状態の夫々に対応する5本が示されている。また、右下のグラフは、HCl蒸気曝露前、5回の蛍光消失時、及び5回の傾向復活時の各々において、同様な紫外線照射を行った際に発せられる蛍光の612nmにおける強度を示している。これらのグラフから、HCl処理とトリエチルアミン処理を繰り返すことで、蛍光強度はやや低下する傾向があるものの、蛍光性を可逆的に消失−復活させることができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の有機/金属ハイブリッドポリマーは蛍光性を有するだけではなく、簡単な処理で蛍光性の消失と復活を繰り返すことができるという、これまで知られていなかった独自の特性を有するので、各種の表示装置、記憶装置、センサーなどへの多様な応用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】国際公開公報2007/049371
【特許文献2】特開2007−112769
【特許文献3】特開2007−112957
【特許文献4】国際公開公報2008/081762
【特許文献5】特開2008−162967
【特許文献6】特開2008−162976
【特許文献7】特開2008−162979
【特許文献8】国際公開公報2008/143324
【特許文献9】特開2009−223159
【特許文献10】特開2009−265437
図1
図2
図3
図4
図5
図6