特許第5747265号(P5747265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747265
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】ひずみ計
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20150618BHJP
   G01B 7/24 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   G01B7/00 101H
   G01B7/24
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-20438(P2013-20438)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-153081(P2014-153081A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2014年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000151520
【氏名又は名称】株式会社東京測器研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村越 潤
(72)【発明者】
【氏名】田中 良樹
(72)【発明者】
【氏名】末吉 良敏
(72)【発明者】
【氏名】浅田 知之
【審査官】 堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−318856(JP,A)
【文献】 特開昭60−157009(JP,A)
【文献】 特開2005−114403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−34
G01N 27/72−90
G01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料を含む物体に生じるひずみ又は応力を測定するためのひずみ計であって、
第1磁石が搭載されており、前記物体の測定箇所で、該物体と前記第1磁石との間に作用する磁力によって該物体に固定される第1部材と、
第2磁石が搭載されており、前記物体の測定箇所に前記第1部材に並列して配置されると共に該物体と前記第2磁石との間に作用する磁力によって該物体に固定される第2部材と、
前記第1部材及び第2部材が前記物体の測定箇所に固定された状態で、前記第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ生成される磁場が作用するように前記第1部材及び第2部材のいずれか一方に搭載されており、前記物体に固定された前記第1部材と第2部材との間の相対的変位に伴う前記磁場の変化に応じた出力を発生する磁場検知素子とを備えることを特徴とするひずみ計。
【請求項2】
請求項1記載のひずみ計において、
前記磁場検知素子は、前記第1部材及び第2部材があらかじめ定められた所定の位置関係で前記物体の測定箇所に固定された当初の初期状態で、前記第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ生成される磁場が互いに打ち消し合う位置に配置されるように前記第1部材及び第2部材のいずれか一方に搭載されていることを特徴とするひずみ計。
【請求項3】
請求項1記載のひずみ計において、
前記第1部材及び第2部材があらかじめ定められた所定の位置関係で前記物体の測定箇所に固定された当初の初期状態で、前記第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ前記磁場検知素子の配置位置に生成される磁場の合成磁場と打ち消し合う磁場を該磁場検知素子の配置位置に生成する第3磁石が、前記第1部材及び第2部材の少なくともいずれか一方に搭載されていることを特徴とするひずみ計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体のひずみ又は応力を測定するためのひずみ計に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の構造物の保守、管理等のために、該構造物に含まれる鋼材等の物体のひずみ又は応力を測定することが従来より行われている。
【0003】
そして、この種の測定には、ひずみゲージ、あるいは、ひずみセンサを含むひずみ計が従来より一般に使用されている(例えば、特許文献1、2、3を参照)。ひずみゲージは、通常、物体の測定箇所に接着剤により接着される。また、ひずみ計は、通常、ボルト等の締結部材により物体の測定箇所に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−55608号公報
【特許文献2】特開2009−237805号公報
【特許文献3】特開2011−180065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体に接着するひずみゲージ、あるいは、物体にボルト等の締結部材で固定するひずみ計を使用する従来の測定では、次のような不都合があった。
【0006】
すなわち、ひずみゲージを物体に接着する場合には、通常、ひずみゲージを物体に接着する前に、物体の測定箇所の表面の塗装を除去して研磨する加工作業が必要となる。また、ひずみ計を物体にボルト等の締結部材で固定する場合には、通常、ひずみ計を物体に固定する前に、物体の測定箇所周辺に穴あけ加工を施す等の加工作業が必要となる。
【0007】
このため、かかる加工作業を伴うひずみゲージの設置作業、あるいは、ひずみ計の設置作業に時間がかかりやすい。特に、多点測定を行う場合には、多数のひずみゲージあるいはひずみ計の設置作業に多大な工数を要するものとなる。
【0008】
また、上記研磨や穴あけ加工等の加工作業を測定対象の物体に施すために、該物体が損傷を受けて、該物体の挙動特性(応力による変形特性等)が元々の状態から変化してしまう虞もある。
【0009】
さらに、物体に接着したひずみゲージは再利用できない。また、ひずみゲージを接着した測定箇所、あるいは、ひずみ計を固定した測定箇所で物体の亀裂もしくは破断が生じたような場合には、該ひずみゲージ、あるいは、ひずみ計も損傷してしまう場合が多い。このため、測定コストの高コスト化を招きやすい。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、鋼材等、磁性材料を含む物体のひずみ又は応力を測定するにあたって、その測定のためのひずみ計を容易に物体の測定箇所に設置することができると共に、測定コストの低コスト化を実現することができるひずみ計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のひずみ計は、かかる目的を達成するために、磁性材料を含む物体に生じるひずみ又は応力を測定するためのひずみ計であって、第1磁石が搭載されており、前記物体の測定箇所で、該物体と前記第1磁石との間に作用する磁力によって該物体に固定される第1部材と、第2磁石が搭載されており、前記物体の測定箇所に前記第1部材に並列して配置されると共に該物体と前記第2磁石との間に作用する磁力によって該物体に固定される第2部材と、前記第1部材及び第2部材が前記物体の測定箇所に固定された状態で、前記第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ生成される磁場が作用するように前記第1部材及び第2部材のいずれか一方に搭載されており、前記物体に固定された前記第1部材と第2部材との間の相対的変位に伴う前記磁場の変化に応じた出力を発生する磁場検知素子とを備えることを特徴とする(第1発明)。
【0012】
かかる第1発明によれば、前記物体(鋼材等、磁性材料を含む物体)に生じるひずみ又は応力を測定する際には、前記第1部材及び第2部材は、それぞれに搭載された第1磁石、第2磁石と前記物体との間に作用する磁力によって該物体に固定される。このため、物体に研磨加工や穴あけ加工等の加工作業を施すことを必要とすることなく、ひいては、物体もしくはその表面の塗装等の防食層を傷つけることなく、第1部材及び第2部材を物体の測定箇所に容易に短時間で設置することができる。
【0013】
第1部材及び第2部材を物体の測定箇所に設置した後に、該測定箇所で物体のひずみが発生すると、物体にそれぞれ固定されている第1部材及び第2部材の間の相対的変位が生じる。この相対的変位によって、前記第1磁石又は第2磁石の前記磁場検知素子に対する位置関係が変化するため、該第1磁石及び第2磁石から前記磁場検知素子に作用するトータルの磁場(第1磁石及び第2磁石が磁場検知素子の配置位置にそれぞれ生成する磁場の合成磁場)が変化する。ひいては、磁場検知素子の出力が変化する。
【0014】
従って、磁場検知素子の出力は、前記測定箇所での物体のひずみに応じて変化することとなり、該磁場検知素子の出力に基づいて、物体に発生したひずみ、あるいは、該ひずみに対応する応力を測定できることとなる。
【0015】
また、この場合、第1部材と第2部材とは、それぞれ磁力によって物体に固定されていると共に、互いに分離された別体の部材であるので、第1部材と第2部材との間で物体のひずみによる亀裂や破断が生じても、第1部材と第2部材とが損傷を受けるようなことはない。
【0016】
また、第1部材及び第2部材は、それぞれ磁力によって物体に固定されるものであるから、測定の終了後には、前記磁力に抗する力を第1部材及び第2部材に作用させるだけで、物体もしくはその表面の防食層、あるいは、第1部材及び第2部材を損傷させることなく、物体から取り外すことができる。そして、物体から取り外した第1部材及び第2部材は、そのまま支障なく再利用することができる。
【0017】
よって、第1発明によれば、鋼材等、磁性材料を含む物体のひずみ又は応力を測定するにあたって、その測定のためのひずみ計を容易に物体の測定箇所に設置することができると共に、測定コストの低コスト化を実現することができる。
【0018】
上記第1発明では、前記磁場検知素子は、前記第1部材及び第2部材があらかじめ定められた所定の位置関係で前記物体の測定箇所に固定された当初の初期状態で、前記第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ生成される磁場が互いに打ち消し合う位置に配置されるように前記第1部材及び第2部材のいずれか一方に搭載されていることが好ましい(第2発明)。
【0019】
あるいは、前記第1部材及び第2部材があらかじめ定められた所定の位置関係で前記物体の測定箇所に固定された当初の初期状態で、前記第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ前記磁場検知素子の配置位置に生成される磁場の合成磁場と打ち消し合う磁場を該磁場検知素子の配置位置に生成する第3磁石が、前記第1部材及び第2部材の少なくともいずれか一方に搭載されていることが好ましい(第3発明)。
【0020】
上記第2発明によれば、前記初期状態で、第1磁石及び第2磁石によりそれぞれ磁場検知素子の配置位置に生成される磁場が互いに打ち消し合うので、第1部材及び第2部材の相互の位置関係が前記初期状態又はそれに近い状態で一定に保たれている状況では、第1部材及び第2部材の周囲の環境温度の変化に起因して、第1磁石及び第2磁石のそれぞれが生成する磁場が変化しても、磁場検知素子の配置位置でのトータルの磁場(第1磁石による磁場と第2磁石による磁場との合成磁場)を一定もしくはほぼ一定に保つことが可能となる。
【0021】
このため、環境温度の変化に起因して、磁場検知素子の出力が変動するのを防止もしくは抑制することが可能となる。ひいては、磁場検知素子の出力に基づく、物体のひずみ又は応力の測定の信頼性を高めることができる。
【0022】
また、上記第3発明によれば、前記初期状態で、第1磁石及び第2磁石のそれぞれによって磁場検知素子の配置位置に生成される磁場の合成磁場と、第3磁石によって磁場検知素子の配置位置に生成される磁場とが互いに打ち消し合うので、第1部材及び第2部材の相互の位置関係が前記初期状態又はそれに近い状態で一定に保たれている状況では、第1部材及び第2部材の周囲の環境温度の変化に起因して、第1磁石、第2磁石及び第3磁石のそれぞれが生成する磁場が変化しても、磁場検知素子の配置位置でのトータルの磁場(第1磁石による磁場と第2磁石による磁場と第3磁石による磁場との合成磁場)を一定もしくはほぼ一定に保つことが可能となる。
【0023】
このため、前記第2発明と同様に、環境温度の変化に起因して、磁場検知素子の出力が変動するのを防止もしくは抑制することが可能となる。ひいては、磁場検知素子の出力に基づく、物体のひずみ又は応力の測定の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態のひずみ計の構成を示す斜視図。
図2】実施形態のひずみ計の出力特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態を図1及び図2を参照して以下に説明する。本実施形態のひずみ計1によってひずみ又は応力を測定しようとする物体Wは、鋼材等、磁性材料により構成された物体、あるいは、磁性材料を十分に含む材質により構成された物体(換言すれば、任意の磁石を磁力によって吸着させることが可能な物体)である。
【0026】
このひずみ計1は、図1に示すように、物体Wのひずみ又は応力の測定に際して、物体Wの測定箇所の表面に固定される2つの部材として、筐体状の第1部材2及び第2部材3を備える。
【0027】
第1部材2及び第2部材3には、それぞれ、第1磁石4、第2磁石5が搭載されている。また、第1部材2及び第2部材3の一方、例えば第1部材2には、さらに第3磁石6と磁場検知素子としてのホール素子7とが搭載されている。
【0028】
第1磁石4は、その周囲に磁場を生成すると同時に、その磁場によって第1部材2を物体Wに固定させる力(引力)となる磁力を該第1部材2と物体Wとの間に発生させるための磁石である。この第1磁石4は、本実施形態では、第1部材2の底面(物体Wへの接触面)寄りの位置で第1部材2の内部に収容されて該第1部材2に固定されている。
【0029】
また、第2磁石5は、その周囲に磁場を生成すると同時に、その磁場によって第2部材3を物体Wに固定させる力(引力)となる磁力を該第2部材3と物体Wとの間に発生させるための磁石である。この第2磁石5は、本実施形態では、第2部材3の底面(物体Wへの接触面)寄りの位置で第2部材3の内部に収容されて該第2部材3に固定されている。
【0030】
上記のように第1磁石4、第2磁石5がそれぞれ搭載された第1部材2と第2部材3とは、物体Wのひずみ又は応力の測定当初において、図1に示すように、物体Wの測定箇所にあらかじめ定められた所定の位置関係で間隔を存して測定する方向に並列するように配置される。そして、この配置状態(以降、初期配置状態という)で、第1部材2及び第2部材3が、それぞれに搭載されている第1磁石4、第2磁石5と物体Wとの間に作用する磁力(引力)によって、物体Wに固定(吸着)されることとなる。
【0031】
ホール素子7は、自身の配置位置における磁場(第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6により生成される磁場)の強度及び向き(極性)に応じた信号(電圧信号)を出力する磁場検知素子であり、本実施形態では、第1部材2の第2部材3に面した側面部外面に取り付けられて、該第1部材2に固定されている。
【0032】
このホール素子7は、第1部材2から導出されたケーブル8に電気的に接続されており、ホール素子7の出力信号が、ケーブル8を介して外部に出力されるようになっている。なお、第1部材2には、ホール素子7の出力信号を増幅するアンプ等の回路が搭載されていてもよい。
【0033】
第3磁石6は、第1部材2及び第2部材3を物体Wの測定箇所に設置した状態で、ホール素子7の配置位置に作用するトータルの磁場の強度を調整するための磁石である。この第3磁石6は、第1部材2及び第2部材3の前記初期配置状態で、第1磁石4及び第2磁石5のそれぞれによってホール素子7の配置位置に生成される磁場の合成磁場を打ち消す磁場(該合成磁場との総和の磁場の強度がゼロもしくはほぼゼロとなるような磁場)をホール素子7の配置位置に生成するように、第1部材2の内部に収容されて、該第1部材2に固定されている。
【0034】
すなわち、第1部材2における第3磁石6の位置もしくは姿勢、あるいは、該第3磁石6の大きさ、形状、発生磁場の強度等を適切に設定しておくことで、第1部材2及び第2部材3の前記初期配置状態で、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6によりホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度がゼロもしくはほぼゼロになるようになっている。
【0035】
ここで、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6は、互いに同じ温度特性を有し、それぞれが生成する磁場の強度が、第1部材2及び第2部材3の周囲の環境温度の変化に対してほぼ同じ特性で増減する。
【0036】
このため、第1部材2及び第2部材3の相互の位置関係が、前記初期配置状態もしくはこれに近い状態で一定に保持されている状況(ひいては、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6の相互の位置関係が一定に保持されている状況)では、環境温度が変化しても、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6が、それぞれホール素子7の配置位置に生成する磁場を合成してなるトータルの磁場の強度は、ほぼ一定に保たれるようになっている。
【0037】
なお、本実施形態では、各磁石4,5,6の形状や大きさ、あるいは、前記初期配置状態での各磁石4,5,6及びホール素子7の相互の位置関係等を適切に設定しておくことで、第1部材2及び第2部材3の間の前記初期配置状態からの相対的変位が、該第1部材2及び第2部材3の間隔方向(図1の矢印Yの方向)で生じた場合に、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6によりホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度が比較的感度よく変化するようになっている。
【0038】
次に、本実施形態のひずみ計1による測定処理について説明する。
【0039】
物体Wのひずみ又は応力を測定するにあたって、まず、ひずみ計1の第1部材2及び第2部材3が、前記初期配置状態で、物体Wの測定箇所に配置される。このとき、第1部材2及び第2部材3は、それぞれに搭載された第1磁石4、第2磁石5と物体Wとの間に作用する磁力(引力)によって、物体Wに固定される。
【0040】
このため、物体Wに研磨加工や穴あけ加工等の加工処理を事前に施すことを必要とすることなく、容易に短時間で、物体Wの測定箇所に、ひずみ計1の第1部材2及び第2部材3を設置することができる。
【0041】
上記のように物体Wの測定箇所に、ひずみ計1の第1部材2及び第2部材3を設置した当初の状態(物体Wのひずみが生じていない状態)で、すなわち、第1部材2及び第2部材3の初期配置状態では、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6によりホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度は、ゼロ(もしくはほぼゼロ)である。このため、ホール素子7の出力信号の大きさ(電圧レベル)がゼロレベルとなる。従って、物体Wのひずみが生じていない状態では、ホール素子7の出力信号の大きさは、図2のグラフで示す如くゼロレベルとなる。
【0042】
なお、物体Wのひずみが生じていない状態でも、第1部材2及び第2部材3の周囲の環境温度が変化すると、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6のそれぞれがホール素子7の配置位置に生成する磁場の強度は変化する。ただし、前記したように、第1部材2及び第2部材3の相互の位置関係が一定に保持されている限り、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6のそれぞれがホール素子7の配置位置に生成する磁場を合成してなるトータルの磁場の強度は、環境温度による変化分が打ち消し合うことで、ほぼ一定に保たれる。
【0043】
このため、物体Wのひずみが生じていない状態では、環境温度が変化しても、ホール素子7の出力信号の大きさはゼロレベル(もしくはほぼゼロレベル)に保たれる。
【0044】
第1部材2及び第2部材3の設置後に、物体Wのひずみが発生すると、そのひずみに伴い、第1部材2及び第2部材3の間の相対的変位が発生し、ひいては、第1磁石4、第2磁石5及び第3磁石6の相互の位置関係が初期配置状態から変化する。例えば、図1に矢印Yで示す方向で、物体Wにひずみが発生して、第1部材2及び第2部材3の間の間隔が変化する。
【0045】
このとき、ホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度が変化し、それに応じて、ホール素子7の出力信号の大きさがゼロレベルから変化する。
【0046】
この場合、ホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度の変化量は、物体Wのひずみの大きさが大きいほど、大きなものとなる。また、ホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の向きは、該ひずみが、第1部材2及び第2部材3の間の間隔の拡大方向のひずみである場合と、該間隔の縮小方向のひずみである場合とで、互いに逆向きとなる。このため、ホール素子7の出力信号の大きさ及び極性は、例えば図2のグラフで示す如く、物体Wのひずみに応じて変化するものとなる。
【0047】
従って、ホール素子7の出力信号に基づいて、物体Wの測定箇所で生じたひずみを測定できることとなる。さらに、このひずみの測定値から、物体Wの測定箇所で生じた応力を測定することもできる。
【0048】
なお、物体Wのひずみが生じた状態であっても、そのひずみが一定に保たれる状態、ひいては第1部材2及び第2部材3の相互の位置関係が一定に保たれている状態では、物体Wのひずみが生じていない場合と同様に、環境温度が変化しても、ホール素子7の出力信号は、ほぼ一定に保たれる。
【0049】
以上のように、本実施形態のひずみ計1によれば、第1部材2及び第2部材3を、それぞれに搭載した第1磁石4、第2磁石5の磁力によって物体Wに固定できるので、測定対象の物体Wに研磨加工や穴あけ加工等の加工処理を施すことを必要とせずに、ひいては、物体Wやその表面の防食層を傷つけることなく、容易に短時間でひずみ計1を物体Wに設置することができると共に、物体Wの本来の挙動状態で該物体Wに生じるひずみ又は応力を、ホール素子7の出力信号に基づいて測定することができる。
【0050】
また、第1部材2に第3磁石6を追加的に搭載して、第1部材2及び第2部材3の相互の位置関係が一定に保持されている状態で、環境温度が変化しても、ホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度がほぼ一定に保たれるようにしたので、環境温度の変化によらずに、ホール素子7の出力信号に基づいて、物体Wのひずみ又は応力を高い信頼性で測定できる。
【0051】
なお、以上説明した実施形態では、ホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場が環境温度に応じて変化しないようにするために、第1部材2にのみ第3磁石6を搭載するようにしたが、第1部材2の代わりに、第2部材3にだけ第3磁石を搭載したり、あるいは、第1部材2と第2部材3との両方に第3磁石を搭載してもよい。
【0052】
あるいは、第1部材2及び第2部材3の両方に第3磁石を搭載せずに、第1部材2(又は第2部材3)におけるホール素子7の配置位置を適切に設定しておくことによって、第1磁石4及び第2磁石5によりホール素子7の配置位置に生成されるトータルの磁場の強度が、環境温度によらずにほぼ一定に保たれるようにしてもよい。この場合には、第3磁石6は不要である。
【0053】
また、前記実施形態では、第1部材2及び第2部材3の間隔方向で生じるひずみ又はこれに対応する応力を測定する場合を例にとって説明したが、第1部材2及び第2部材3に搭載する各磁石の大きさ、形状、搭載位置、もしくは姿勢、あるいは、第1部材2又は第2部材3に対するホール素子の搭載位置等を適切に設定しておくことで、第1部材2及び第2部材3の間隔方向と直交する方向(図1の矢印Yと直交する方向)での物体Wのひずみに対してホール素子7に作用するトータルの磁場の強度の変化の感度が高まるようにして、第1部材2及び第2部材3の間隔方向と直交する方向での物体Wのひずみ又はこれに対応する応力を測定するようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、磁場検知素子としてホール素子7を用いたが、ホール素子以外の磁場検知素子を使用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ひずみ計、2…第1部材、3…第2部材、4…第1磁石、5…第2磁石、6…第3磁石、7…ホール素子(磁場検知素子)
図1
図2