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特許5747287無線通信路上におけるデジタル信号の送受信用システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747287
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】無線通信路上におけるデジタル信号の送受信用システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/10 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   H04L27/10 D
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-539327(P2012-539327)
(86)(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-511876(P2013-511876A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2010067755
(87)【国際公開番号】WO2011061255
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】0905591
(32)【優先日】2009年11月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、ピエール−アンドレ
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−545311(JP,A)
【文献】 特表2002−502149(JP,A)
【文献】 特表2002−502148(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0286653(US,A1)
【文献】 P. A. Laurent,Exact and Approximate Construction of Digital Phase Modulations by Superposition of Amplitude Modulated Pulses (AMP),IEEE Transactions on Communications,米国,1986年,Vol. 34, No. 2,Pages 150 - 160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータの変調と前記変調された信号の復調のための、一定振幅及び連続位相の変調方法であって、前記データは3以上の状態の数Mをとることができる符号の形を示し、それが少なくとも次のステップ:
・送信されるべきデジタルデータの符号a(n)の回復が、一定の時間間隔Tで与えられるステップと、
・各符号a(n)と、Lが1以上の整数であり、その形が明確にa(n)の値に依存する長さLTの周波数パルスである、h(a(n))と称される周波数パルスとを関連付けるステップと、
a(n)と関連する全体的位相変化により、周波数パルスh(a(n),t)を重み付けするステップであって、この全体的位相変化がa(n)=0、1、−−−、M−1においてπ(2a(n)−(M−1))/Mの形をとり、そして0≦m<Mである値mの符号に対して、前記関数hが2K+1の個々のパルスの組合せに対応する形:
【数1】
を持ち、ここで前記関数gは標準偏差σ及び、それぞれwe,m,i及びσe,m,iに対する最適化された重み付け係数の連続関数、ae,m,iは送信された信号のスペクトル幅および1に等しいh(m,t)の積分を制限するための、符号及び幾つかのそれらの連続的導関数、Kは前記重み付け係数w(i)と関連する自由度であるステップと、
・送信されるべき信号を生成するために、電圧制御される発振器(25)の入力に連続的な重み付けされたパルスの合計を加えるステップと、
・前記変調の状態の数にかかわらず、単一のインパルス応答フィルターC(t)により、受信信号を受信の際にフィルタリング(23)するステップと、
・符号間の干渉を最小化するために、前記周波数パルスh(a(n),t)及びC(t)のパラメータが調整されるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
関数g(a,σ,t)が、その周りを標準偏差σの関数が中心とする点である、平均aの標準化されたガウス分布であり、tが与えられた瞬間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関数g(a,σ,t)が、与えられた数の連続度を有する調整可能な幅及び位置の関数であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
インパルス応答を受けるフィルターC(t)が:
パルスh(m,t)と同じ方法により構築された受信パルスh(t)、すなわち:
【数2】
の選定であって、ここで関数gは標準偏差σ及び、それぞれw(i)である最適化された重み付け係数w(i)の連続関数、ar,i送信された信号のスペクトル幅を制限するための、符号及び幾つかのそれらの連続的導関数、そしてaは1に等しい積分、Kは前記重み付け係数w(i)と関連する自由度である選定と、
(t)で表わされる、h(t)の積分の計算:
【数3】
と、次に:
【数4】
により与えられる関数S(t)と、
そして最後に適合するフィルターC(t)の構成要素:
【数5】
のように構築される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記関数g(a,σ,t)が、平均a及び標準偏差σの標準ガウス分布である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記関数又は別の任意の関数g(a,σ,t)が、与えられた連続度の調整可能な幅及び位置の関数であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法を実行するのに適合した、デジタルデータを変調するため及び前記変調された信号を復調するための、一定振幅及び連続位相の変調システムであって、前記データが3以上の状態の数Mをとることができる符号の形を示し、それが少なくとも次の要素:
・請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法の実行により決定された転送機能を有する、一揃いのフィルター(23)を含む送信モジュール(26)と、
・前記変調された符号を結合する加算器(24)と、
・電圧制御される発振器(25)と、
・C(t)の値が、請求項1に記載の方法のステップを実行することにより得られる、変調の状態の数にかかわらない、単独のインパルス応答フィルター(10)C(t)と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
送信ステップ及び/又は受信ステップにおいて挿入される少なくとも1つの帯域フィルターを備え、前記フィルターが、送信された信号の帯域幅を制限するため、及び/又は周波数オフセット妨害の受信を避けるために適合していることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線チャンネル上における、一定振幅又は準一定振幅の変調を用いて変調された情報を含むデジタル信号の送受信用の方法及び、その実行を可能にするシステムに関する。
【0002】
送信機を部分的に又は全体的に飽和状態で動作させることにより、その効率を増大させることが目的であるとき、それはとりわけ無線チャンネル上におけるデジタル通信の分野で用いられる。
【0003】
それは特に連続位相変調又はCPMに対して適用される。それは"Gaussian Minimum Shift Keying"(ガウス最小シフトキーイング)の頭字語GMSK変調を用いる、GSM携帯電話システムにおいて有用である。
【0004】
より一般的に、それは一定振幅又は準一定振幅を示す全ての変調に対して用いられ得る。
【背景技術】
【0005】
これ以降、明細書中で出願者は次の定義を使用するであろう:
―符号に関する用語「状態」("state")は、前記符号の複素平面における表現を示すために使われる。
―符号の複素数列に関する用語「配列」は、複素平面における前記符号の表現を示すために使われる。
【0006】
用語h(a(n),t)は、その入力がa(n)δ(t−nT)で、それが符号a(n)と関連する周波数パルスとなる、フィルターのインパルス応答である。
【0007】
幾つかの最近の電気通信システムにおいて、一定振幅の変調、例えば位相変調又は周波数変調の使用が好ましく、それは後者が前記システムの範囲を最大化できるようにするためである。実際に、この場合送信電力は一定かつ最大である。
【0008】
連続位相変調の場合、2つの知られた利点が存在する:
・隣接する送信チャンネル間の干渉の低減をもたらす、妥当なスペクトルの占有と、
・増幅直線性を過度に気にかける必要なしに、送信機の出力増幅器をそれらの最大出力で使うことを可能にする一定振幅。これは所与の平均的送信電力で、リンクバジェットの最適化を可能にする。
【0009】
これらの変調の内で、特に携帯無線電話において最も広く使われているものの1つはGMSK変調である。後者は、搬送周波数に関して偏差の関数としての最大の減少を示す、その周波数スペクトルのために採用されている。送信されるべき2つの連続的ビットが異なるとき(0/1又は1/0)、搬送波が+π/2又は反対の場合に−π/2の全体的相回転を受けるという点で、それは二元の(従って2つの状態の)、そして異なるタイプの変調である。
【0010】
CPM変調は、相回転の絶対値の平均値がhπであるように、実際は周波数パルスにより、そして変調指数hにより完全に定義される。殆どの場合、そして受信機の使用の単純さの目的で、hは1/2である。
【0011】
しかしながら、所与のビットに関連する周波数パルスの持続時間は、ビットの持続時間には制限されない。従って、前述のGMSK変調に対して、定義上ガウス曲線が無限の長さであるため、それは無限であるべきである。実際には、理論的な場合と比較して性能の低下が無視できるように、有限の持続時間(2又は3ビット)の制限が課される。
【0012】
システムが二元の場合に制限される限り、受信機は比較的単純なままである。
【0013】
公表文献"Exact and Appropriate Construction of Digital Phase Modulations by Superposition of Amplitude Modulated Pulses (AMP)"[振幅変調されたパルス(AMP)の重ね合わせによるデジタル位相変調の正確で適切な構造], Pierre. A. Laurent, IEEE Transactions on Communications, Vol. COM−34, No 2, February 1986, pp150−160において説明されている、1980年代の中頃に練り上げられた理論は、このタイプの変調が従来の振幅変調と位相変調により近似され、それゆえ低複雑度の受信機により復調され得ることを示した。これは二元の場合(1ビット/符号)にのみ当てはまる。
【0014】
現時点で、有用なビットレートに関する必要性は非常に増大しており、従って3つ以上の状態にCPM変調を一般化することが必要とされている。4つの状態は1ビット/符号でなく2ビット/符号の伝達を可能にし、8つの状態は3ビット/符号を、そして16の状態は4ビット/符号の伝達を可能にする。
【0015】
あいにく、この種の変調に固有の符号内干渉は問題をかなり複雑化するため、4つの状態であっても、受信機は2つの状態よりも大幅に複雑になる。所与の符号に関して受信した信号は、その状態とその近傍の状態に依存し、構成の数が非常に多くなるため、前記符号の値を決定する単純な方法は存在しない。
【0016】
さらに、ビットレートの増加にはまた、伝播による問題の出現に付随する問題とともに変調速度の増加が伴う。与えられた瞬間に、信号は送信機の直視範囲において受信され得るが、しかし符号の持続時間に関連して無視できないか、又は明らかにより大きな遅れを有する、1つ以上の遅れた複製(建物に対する反射等)と共に受信され得る。これは受信機の複雑性をさらに増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
出願者の知る限りでは、一定振幅又は準一定振幅の変調の場合、想定される状態の数が3以上であるとき、単純な設計の送信−受信システムは存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、デジタルデータの変調と前記変調された信号の復調のための、一定振幅及び連続位相の変調方法に関し、前記データは3以上の状態の数Mをとることができる符号の形を示し、それが少なくとも次のステップ:
・送信されるべきデジタルデータの符号a(n)の回復が、一定の時間間隔Tで与えられるステップと、
・各符号a(n)と、Lが1以上の整数であり、その形が明確にa(n)の値に依存する長さLTの周波数パルスである、h(a(n))と称される周波数パルスとを関連付けるステップと、
a(n)と関連する全体的位相変化により、周波数パルスh(a(n),t)を重み付けするステップであって、この全体的位相変化がa(n)=0、1、−−−、M−1においてπ(2a(n)−(M−1))/Mの形をとり、そして0≦m<Mである値mの符号に対して、前記関数hが2K+1の個々のパルスの組合せに対応する形:
【数1】
を持ち、ここで関数gは標準偏差σ及び、それぞれwe,m,i及びσe,m,iに対する最適化された重み付け係数の連続関数、ae,m,iは送信された信号のスペクトル幅および1に等しいh(m,t)の積分を制限するための、符号及び幾つかのそれらの連続的導関数、Kは重み付け係数w(i)と関連する自由度であるステップと、
・送信されるべき信号を生成するために、電圧制御発振器の入力に連続的な重み付けされたパルスの合計を加えるステップと、
・変調の状態の数にかかわらず、単一のインパルス応答フィルターC(t)により、受信信号を受信の際にフィルタリングするステップと、
・符号間の干渉を最小化するために、周波数パルスh(a(n),t)及びC(t)のパラメータが調整されるステップと
を含むことを特徴とする。
【0019】
関数g(a,σ,t)は、例えばその周りを標準偏差σの関数が中心とする点である、平均aの標準化されたガウス分布であり、tは与えられた瞬間である。
【0020】
関数g(a,σ,t)は、例えば平均aの標準化されたガウス分布と標準偏差σ、又は十分な連続度を有する調整可能な幅及び位置の、あらゆる他の関数である。
【0021】
インパルス応答を受けるフィルターC(t)は、次のように構築され得る:
パルスh(m,t)と同じ方法により構築された受信パルスh(t)、すなわち:
【数2】
の選定であって、ここで関数gは標準偏差σ及び、それぞれの最適化された重み付け係数Wr,iの連続関数、そしてar,iは送信された信号のスペクトル幅および1に等しいh(t)の積分を制限するための、符号及び前記関数gの幾つかの連続的導関数、Kは重み付け係数w(i)と関連する自由度である選定と、
(t)で表わされる、h(t)の積分の計算:
【数3】
と、次に:
【数4】
により与えられる関数S(t)と、
そして最後に適合したフィルターC(t)の構成要素:
【数5】
とである。
【0022】
本発明は、関数g(a,σ,t)が、平均aの標準化されたガウス分布と標準偏差σ、又は十分な連続度を有する調整可能な幅及び位置の、あらゆる他の関数である場合に、上記で説明された方法のステップを実行する復調方法に関する。
【0023】
1つの実施形態によれば、本方法は、送信された信号の帯域幅を制限するため、及び/又は周波数オフセット妨害の受信を避けるために、送信及び/又は受信において挿入される帯域フィルターの組み入れを含み得る。周波数パルスh(m,t)又はh(a(n),t)及び受信フィルターC(t)を定義する係数の最適化は、挿入されたフィルターの影響を考慮することにより、符号間干渉を最小化するために行なわれる。
【0024】
本発明はまた、本発明による方法、デジタルデータを変調するため及び前記変調された信号を復調するための、前記一定振幅及び連続位相の変調システムを実行できるようにするシステムに関し、前記データは3以上の状態の数Mをとることができる符号の形を示し、それが少なくとも次の要素:
・上記で説明された方法の実行により決定された転送機能を有する、一揃いのフィルターを含む送信モジュールと、
・前記変調された符号を結合する加算器と、
・電圧制御される発振器と、
・C(t)の値が本方法のステップを実行することにより得られる、変調の状態の数にかかわらない、単一のインパルス応答フィルターC(t)と
を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明による方法及びシステムの、その他の特徴及び利点は、添付図と共に制限されない例証として与えられている、例示的実施形態の以下の記述を読むことにより、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】連続位相変調に関する信号の生成を示す。
図2】フィルターの出力における、単一ビットにより生成されたパルスの表示である。
図3】既知の先行技術による例示的受信機である。
図4a】4つの状態を有する場合に関する、例示的配列(図3内のD(nT)の値)である。
図4b】8つの状態を有する場合に関して得られる、例示的配列である。
図5】本発明による例示的な送信機構成である。
図6a】4つの状態の変調の場合の、送信機における周波数パルスh(0)、h(1)、h(2)、及びh(3)を示す。
図6b】受信において適合したフィルターのインパルス応答を示す。
図6c】二元の変調に関する周波数スペクトルを示す。
図6d】4つ以上の状態を有する変調に関する周波数スペクトルを示す。
図7a】本発明による方法のステップを実行することにより変調及び復調された信号の、復調後に得られた最終配列を示す。
図7b】本発明による方法のステップを実行することにより変調及び復調された信号の、復調後に得られた最終配列を示す。
図7c】本発明による方法のステップを実行することにより変調及び復調された信号の、復調後に得られた最終配列を示す。
図7d】本発明による方法のステップを実行することにより変調及び復調された信号の、復調後に得られた最終配列を示す。
図8】例示的な閉じ込められた周波数スペクトルを示す。
図9】周波数スペクトルが閉じ込められている時に得られる配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の主題をより良く理解するために、出願者はCPMタイプの一定振幅又は準一定振幅の変調を用いて変調されたデジタル信号用の、送信−受信システムを記述する。このために、CPM変調の原理のレビューが最初に与えられる。
【0028】
連続位相変調(CPM)のレビュー
図1は連続位相変調の図を表わす。送信されるべきデータは符号a(n)の一組又は連続の形をとる。1つ以上のビットが送信される符号と組み合わされる。符号a(n)が情報ビットを伝達する場合、その配列は2つの状態を含むであろう。それが2つのビットを伝達する場合、その配列は4つの状態を含むであろう、等々であり、nビットを伝達する符号に関して、その配列は2の状態を含むであろう。符号の持続時間はTである。ボー(BAUDS)で表わされるTの逆数は変調速度である。
【0029】
Tに等しい期間により相互に隔てられる一連のディラック(Dirac)パルス、すなわちa(n)δ(t−nT)に関して、符号a(n)の値はこの一連のパルスを通じて送信されるべき情報を定義する。
【0030】
二元の変調に関して、符号a(n)は0又は1の値のみをとる。0の値はhπの位相回転を生じさせ、1の値は−hπの位相回転を生じさせる。
【0031】
定数hは変調指数と呼ばれ、しばしば1/2の値である。
【0032】
最終的に、LT(Lは整数)に等しい持続時間にわたり定義され、さもなければ0であり、そしてLTが1において0の積分値である、関数h(t)によって説明されるパルスが存在する。
【0033】
位相回転による変換後のディラックパルスの連続は、h(t)、1により畳み込まれ(フィルタリングされ)、その結果は(Voltage Controlled Oscillator[電圧制御発振器]を表わすVCOとも呼ばれる)周波数変調器2を駆動し、それは送信周波数を中心として、その入力に比例する量だけ、それに対して偏移している信号を発生する。
【0034】
周波数変調器の出力信号は、次の式:
【数6】
により与えられる。
【0035】
複雑な表記法では、より短くそして取り扱いをより便利にして、関係(1)は:
【数7】
となる。ここで関数f(t)は、tがマイナスの場合は0の値、そしてtがLTより大きい場合は1の値を有するh(t)の積分であり、符号Πは乗算に相当する。
【0036】
図2は標準偏差が0.35Tのガウス分布である、L=3を伴う例示的パルスh(t)及びf(t)を例証する。
【0037】
コヒーレント復調は、所与の位相と共に送信された信号が、同じ位相を伴う受信機により確かに捉えられたことを確実にするために、搬送波の「基準位相」を知ることを必要とする。従ってそれは、変調された信号内に挿入される先験的に知られた符号をしばしば用いる、位相推定システムを要する。
【0038】
可能な先行技術による受信機の線図が、図3に例証されている。
【0039】
送信に関連付けられたノイズがそれに加えられる、復調器によって受信された信号S(t)は、適合するフィルター10、すなわちSN比(信号対ノイズ比)の最大化を可能にする、最適な線形フィルターによりフィルタリングされる。この演算X(t)の結果は、次に送信チャンネル及び受信機により届けられる、位相回転を推定するモジュール11に送信され、このモジュールの出力は、推定された位相回転の共役による虚数乗法モジュール12を用いてX(t)を乗算する。信号X(t)はまた、最適なサンプリングの瞬間(符号の同期化)を推定する、モジュール13の入力に設定される。位相補正後の信号X(t)は、次にnTの瞬間に受信される決定された符号D(nT)の値を決定できるようにする、信号のテンポにおける同期信号をシンボルレート13で受信する意思決定モジュール14に送信される。
【0040】
信号D(nT)に対して得られる配列は、図4a、4bに表わされている。実際、この例において現在の符号のパリティに依存する、2つの独特な配列が存在する。これが、4つの状態及び8つの状態の場合のそれぞれにおいて、図4a、4bが2つの配列を別々に示す理由である。
【0041】
理論上は、符号間干渉がない場合、その配列は原点を中心とする円上に規則的に分布した2、4、8又は16点のみを含むべきであり、点の数は状態の数に等しい。
【0042】
(信号がノイズに影響されていない場合に得られる)これらの図4a及び4bの単純な外観検査は、符号間に存在し得る干渉のために、4(8)つの可能性の中で現在の符号の値から決定するのが難しくなり得る点を示す。周波数パルスの持続時間LTが、符号の持続時間であるTよりも大きく、図3の適合したフィルター10の抗力効果により増幅されるとき、この干渉は不可避である。
【実施例】
【0043】
図5は本発明による送信機に関する例示的構成を表わす。
【0044】
前述のような送信されるべき情報は符号a(n)の連続の形をとり、ここで送信されるべき符号の値は、慣例により0、1、−−−M−1に等しい。例えば、情報は一連のディラックパルスの形をとり得る。a(n)δ(t−nT)の連続は、一方でθ(n)=π[2a(n)−(M−1)]/Mの値を出力において生み出す、位相回転モジュール21に送信され、並行してデマルチプレクサー22に送信される。この値θ(n)から及び符号のシーケンスから、デマルチプレクサー22は送信されるべき情報の平行移動を構成する位相θ(n)を抽出する。各々の抽出された位相は、その伝達関数h(m,t)が、後で明細書内において詳しく述べられる構造を有する一揃いのMフィルター23内における所与のフィルターに送信される。この一揃いのフィルターの機能はとりわけ、変調された符号a’(n)を電圧制御発振器又はVCO25に、そして送信モジュール26に送信する以前に、それらの変調された符号a’(n)を結合する加算器24に符号を個々に送信する前に、その符号を変調することである。
【0045】
受信機は図3に記載されているものと同じであるが、主な差異は符号D(nT)内に存在する符号間干渉が極めて低減されており、それは受信機を前記符号間干渉をもはや補償する必要がないように単純化するという事実である。
【0046】
予備的確認事項
本発明の以前の版において、(残留符号間干渉に関連付けられる)「固有の」SN比はおよそ20dBである。これは、接続の良し悪しにかかわらず、このノイズは存在するであろうことを意味する。
【0047】
例えば、外部ノイズが信号よりも20dB低い場合、それは無視し得ない性能低下の原因である:(同じ強さの)固有のノイズがそこに加えられ、従って性能レベルは、固有のノイズがない状態で17dBのSN比を伴う場合のようになる。それゆえ、このノイズを実質的に低減することが適切であり、それこそが本発明の目的である。
【0048】
送信機側において
本着想は:
【数8】
により与えられるK+1のガウス分布の結合に等しい関数h(t)を用いた、送信機部分の先行技術に従って、最初に変調器を変更することにある。
【0049】
従って、結合されたガウス分布の「重み付け」w(i)又は重み付け係数を選定するための、K個の自由度が存在した。
【0050】
本発明の背後にある主導的な着想は、最適化を完全にするために、自由度の数を増加させることである。
【0051】
本発明による方法及びシステムをより良く例証するために、基本の関数としてg(a,σ,t)と称されるガウス分布、すなわちaを中心とし、標準偏差σの標準ガウス分布を採ることにより、説明が与えられるであろう。本発明の枠組みから外れることなしに、本関数は所与の連続度の数を有する、調整可能な幅及び位置の任意の関数であり得る。
【0052】
関数h(t)は、最適化された平均値、標準偏差σ、及び重み付けw(i)の2K+1ガウス分布の対称な結合により置き換えられるであろう。そして、これは次の場合:
【数9】
に応じ、M=2、4、8、16において、送信されるべき符号の値m(0≦m<M)に従って行なわれるであろう。
【0053】
自由度の数は、次にM/2の周波数パルスの各々に対して3K+1に変化し、それはより入念な最適化を可能にする。M/2は、所与の位相変化に対する周波数パルスが、逆の位相変化に対する周波数パルスの反対のためである。
【0054】
指数mが、一般的に:
【数10】
により与えられるθ(n)の位相変化と関連しており、そしてh(m,t)の台がLT(T=符号の持続時間)である場合、瞬間τにおける瞬時的な周波数はそのとき:
【数11】
により与えられるであろう。
ここでmは、瞬間nTにおいて送信されるべき現在の符号の値である。
【0055】
このようにして得られる様々な波形の値は、例えば送信されるべき周波数パルスをデジタル的に生成するために、読み出し専用メモリ(ROM)内に記憶されるであろう。
【0056】
送信されるべき情報を形成する各符号a(n)と関連する位相変化は、加算器に送信され次にVCOに送信される前に、フィルターh(a(n),t)を通じてフィルタリングされる。
【0057】
受信機側において
導入部で引用した論文において、二元の場合、CPM信号は実際の位相変調された個々のパルスへと分解されることができ、C(t)と称されるそれらの第1番目は、信号のエネルギーの大部分を運ぶことが実証されている。変調の理論によれば、それが信号の全エネルギーを運んだ場合、それはSN比を最大化する、信号に適合したフィルターと一致するであろう。さもなければ、それは少なくともガウス分布に基づくCPMに対して、一般的に非常に良好なその近似である。変調フィルター及び、復調フィルターの係数の決定を可能にする方法のステップを説明するために選ばれるのは、この近似である。
【0058】
1/2に等しい平均指数hの変調の場合、本方法は次の近似を行なう:二元の信号に適合したフィルターはまた、同じ平均指数を有する4、8、16の状態を伴う変調にも適合するであろう。
【0059】
その結果として、受信の際に、適合したフィルターが、送信フィルター用に使われるものと類似の方程式により与えられる、関数h(t)に対して計算されるであろう:
【数12】
【0060】
ここでaはその周りをガウス分布gが中心とする点、σr,iは受信におけるこのガウス分布の標準偏差、そしてtは与えられた瞬間である。
【0061】
このような場合には、本方法はf(t)と称されるh(t)の積分:
【数13】
を最初に決定し、次に:
【数14】
により与えられる関数S(t)、そして最後に、適合したフィルターC(t)の構成要素:
【数15】
を決定する。
ここでΠは、LTが符号の持続時間である、Lにわたる関数Sの積を表わす数学記号である。
【0062】
最適化手順及び結果
送信及び受信において介在する様々なガウス分布の、パラメータの理論的計算は殆ど不可能である。
【0063】
それはシステム設計段階で一度だけ行なわれることに注意されたい。
【0064】
むしろ、その原理が、適合したフィルターの出力においてSN比を最大化することにある制約を伴う、反復アルゴリズムが用いられる。
【0065】
そのアルゴリズムは、「妥当な」値の近傍においてランダムに引き出される値で始まり、パラメータはその結果を改善する修正を保つことにより、徐々に修正される。
【0066】
送信及び受信におけるパラメータ(係数a,σ,wi)は、最高のSN比を必要とする変調に対してのみ同時に最適化される。与えられた例において、8つの状態を有する変調が考えられる。
【0067】
その他全ての変調に関して、このようにして得られたフィルターC(t)は残して置かれ、送信パラメータのみが最適化される。
【0068】
このタイプの変調は従来のGMSKの帯域幅よりも大きい帯域幅を持っているので、その制約は、変調の状態の数に依存する、最大値Bmaxよりも大きい「帯域幅」Bに導く、あらゆるパラメータの組を排斥することにあろう。
【0069】
h(f)が変調の周波数スペクトルである場合、その判断基準は従って次のようになるであろう:
【数16】
【0070】
システムの仕様による―実際に非常に僅かに異なる―幾つかの波形が、こうして定義され得る。
【0071】
前に説明されたステップは、例えばガウス分布を修正されたベッセル関数:
【数17】
によって置き換えることにより、十分な連続度を示す任意の基本関数に関して実行され得る。
【0072】
残りの記述は、その組合せがフィルターを形成する関数のパラメータの値を決定する方法の、幾つかの特有の実施例を与える。
【0073】
残りの記述例に関して、K=1の数が採られており、それは周波数パルスが、そこから2つの同じガウス分布が両側において差し引かれる、主なガウス分布の合計であることを意味する。
【0074】
例えば、−35dBの最大帯域外エネルギー及び27dBの最小SN比に対して、次の結果:
図6aに示される(ここでM=4に対して両端間に置かれている)変調関数h(m,t)と、
図6bに示される、受信側の適合したフィルターC(t)のインパルス応答と
が得られる。
【0075】
「適合したフィルター」は、最適化の後で次のパラメータを有する:
【数18】
図6cにおける、二元の変調に対する周波数スペクトル(周波数の単位は変調速度、ボーである)と、
図6dにおける、M=4、8、16の状態に対する(3つの全ての場合に殆ど同じ)周波数スペクトルと、
―最後に図7a、7b、7c及び7dにおける、M=2、4、8及び16の状態に対して得られる、(対の)配列。
【0076】
M=2に対して、h(1,t)=h(0,t)という事実を考慮に入れた、h(0,t)に関する最適化後のパラメータは:
【数19】
である。
【0077】
M=4に対して、h(3,t)=h(0,t)及びh(2,t)=h(1,t)という事実を考慮に入れた、h(0,t)及びh(1,t)に関する最適化後のパラメータは:
【数20】
である。
【0078】
M=8に対して、h(7,t)=h(0,t)、h(6,t)=h(1,t)、h(5,t)=h(2,t)、及びh(4,t)=h(3,t)という事実を考慮に入れた、h(0,t)、h(1,t)、h(2,t)及びh(3,t)に関する最適化後のパラメータは:
【数21】
である。
【0079】
得られた固有のSN比は、以前の特許において提案された解決策と比較して、少なくとも7dBの改善を示す。
M=2の状態: SNRi>47dB
M=4の状態: SNRi>33dB
M=8の状態: SNRi>28dB
M=16の状態: SNRi>27dB
【0080】
スペクトル特性
前節において示された周波数スペクトルは、搬送波からの距離が増加するにつれて強く連続的な減少を示し、それは全ての導関数が任意の順序で連続するガウス関数に基づく変調の特性である。しかしながら、使用された周波数パルスが単一のガウス分布よりも速い時間変化を示すという事実は、周波数スペクトルがより広いことを意味する。
【0081】
信号を変調器の直前でフィルタリングすることにより、周波数スペクトルをその中央部分に制限することができる。これは送信された信号の振幅が、もはや厳密には一定でないという事実に反映され、これはフィルターが正しく選定されている場合に、全く許容できる1〜1.5dBの間で変化する、「波高率」(送信されるべき最大出力と送信された平均出力との間の比率)により反映される。出力増幅器は「少し」線形であることが必要で、その非線形性を殆ど全体的に補償するために、変調された信号に事前ひずみを与えることが常に可能である。同じフィルターを受信において用いることにより、性能レベルは殆ど低下しない。
【0082】
図8は、8つの状態の場合の、フィルタリング後の周波数スペクトルを表わす(波高率は1.3dBである)。強力な干渉による隣接したチャンネルの汚染は以前よりもずっと低いであろうことが確認できる。
【0083】
図9は依然として8つの状態で得られた配列を示す。送信及び受信のパラメータが不変であるのに対して、フィルタリング無しの場合と比較した低下は僅かである。
【0084】
変調器の後で送信において使用されるフィルターと、適合したフィルターの前で受信において使用されるフィルターとがうまく特性化されている場合、様々な係数の最適化は、それらの存在を考慮に入れるために再度行なわれ得る。
【0085】
本発明による方法は、とりわけ次の利点を提供する:
【0086】
送信側において
一定の包絡線を伴う変調のおかげによる、送信効率の最大化。
【0087】
3つ以上の状態を有する変調のおかげによる、送信されるビットレートの最大化。
【0088】
良好な線形性を有する送信機を必要としないこと。
【0089】
受信側において
3以上の(4、8又は16の)状態を有する変調に対してであっても、出来る限り単純な受信機を持つこと。
【0090】
理論的な性能レベルに非常に近い性能レベルを得ること。
【0091】
例えば伝播の危険性に対抗するための、任意のタイプのイコライザーである、いわゆる「線形」変調に対して従来実施されているアルゴリズムを使用できること。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9