(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747298
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】射出成形金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20150625BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/26
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-127574(P2012-127574)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-248868(P2013-248868A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 康晃
(72)【発明者】
【氏名】奥田 英介
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−207136(JP,A)
【文献】
特開2006−82454(JP,A)
【文献】
特開平3−099767(JP,A)
【文献】
特開平4−224911(JP,A)
【文献】
特開2007−10261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠転写面及び該意匠転写面の反対側に熱媒体配管の一部を没した状態で敷設可能な溝を有する一次模型を熱溶融性材料で形成する工程と、
上記溝に沿って一次模型に熱媒体配管を敷設する工程と、
上記一次模型及び上記熱媒体配管の周りを鋳砂で覆い固めて砂型とする工程と、
上記砂型中の上記一次模型を溶融除去し、形成された空洞に溶融金属を充填して二次模型を成形する工程と、
上記鋳砂を除去して上記二次模型を取り出す工程と、
上記二次模型の意匠転写面の反対側の二次模型及び熱媒体配管の周りにバックアップ層を形成する工程と、を含む、射出成形金型の製造方法。
【請求項2】
前記熱媒体配管に配管固定棒を固定する工程を含む、請求項1記載の射出成形金型の製造方法。
【請求項3】
前記一次模型が、前記意匠転写面の反対側に枠型を備えて熱溶融性材料で形成される、請求項1又は2記載の射出成形金型の製造方法。
【請求項4】
枠型を前記二次模型の意匠転写面の反対側に配置する工程を備える、請求項1又は2記載の射出成形金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機等に用いられる金型および金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル、ドアトリム、グラブドア、コンソールボックス等の車両内装部品又はバンパー、サイドマッドガード、ドアミラー等の車両外装品には樹脂成形品から構成されているものがあり、樹脂成形品の表面には微細な凹凸がつけられている。このような微細な凹凸模様を再現した樹脂を成形するために、射出成形機に樹脂を充填する際に、金型殻を温め、充填後には速やかに金型殻を冷却することが必要とされる。
【0003】
金型殻を加熱及び/又は冷却するため、
図5に示すように、意匠転写面22を有する金属層の反対側に熱媒体配管23を設け、さらに当該意匠転写面22の反対側にモルタルやコンクリート等からなるバックアップ層24を備えた射出成形金型21が知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−82454号公報
【特許文献2】特開2002−264138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、電鋳法又は金属板を機械加工して成形した金型殻の意匠転写面の反対側に、溶接等により複数の熱媒体配管を敷設し溶接等で固定した後、当該意匠転写面の反対側にバックアップ層を形成する射出成形金型の製造方法を開示する。しかし、この方法は、金型殻の成形に時間を要すること、熱媒体配管と意匠転写面の裏面との接触面積が小さいため、金型殻の意匠転写面への伝熱効果が低いこと、角部又は複雑な意匠形状が連続する領域には熱媒体配管を固定することが困難であること、などの問題がある。
【0006】
特許文献2は、母型の意匠面付近に熱媒体配管を設置し、次いで母型の意匠表面にニッケルを蒸着して、意匠転写面と熱媒体配管とを有する金型殻を形成した後、母型と金型殻を分離し、意匠転写面の反対側にバックアップ層を形成する射出成形金型の製造方法を開示する。この方法では、複雑な意匠形状領域に熱媒体配管を敷設することができるが、この領域内で形成された金型のニッケル層では、厚みにバラツキ又は層の亀裂が生じやすく、また、発生した薄い層厚の領域や亀裂を溶接で肉盛り補強すると、高温割れが生じやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、複雑な意匠形状領域にも熱媒体配管を敷設することができ、複雑な意匠形状領域でも金型の金属層に亀裂が生じない射出成形金型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の射出成形金型の製造方法は、
一面に意匠転写面と該意匠転写面の反対側面に熱媒体配管の一部を没した状態で敷設可能な溝とを有する一次模型を、熱溶融性材料で形成する工程と、
一次模型の溝に熱媒体配管を敷設する工程と、
一次模型及び熱媒体配管の周りを鋳砂で覆い固めて砂型とする工程と、
砂型中の一次模型を溶融除去し、形成された空洞に溶融金属を充填して二次模型を成形する工程と、
鋳砂を除去して二次模型を取り出す工程と、
二次模型の意匠転写面の反対側にバックアップ層を形成する工程と、を含む方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の射出成形金型の製造方法は、複雑な意匠形状領域にも熱媒体配管を敷設することができるため、金型殻の意匠転写面への伝熱効率のよい射出成形金型を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態1の製造工程を示す概略図である。
【
図2】実施形態1において、角部が連続するような複雑な形状を有する意匠転写面の反対側に形成された溝を備える一次模型の一部拡大図である。
【
図3】実施形態1の別の製造工程を示す概略図である。
【
図5】従来の方法で製造された熱媒体配管を備える射出成形金型の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、幾つかの実施形態を参照して本発明の射出成形金型の製造方法を詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態の射出成形金型の製造方法は、先ず、一面側に意匠転写面を有すると共に、該意匠転写面の反対側面に熱媒体配管の一部を没した状態で敷設可能な溝とを有する一次模型を熱溶融性材料で形成する工程と、溝に沿って一次模型に配管固定棒を固定した熱媒体配管を敷設する工程と、一次模型、配管固定棒及び熱媒体配管の周りを鋳砂で覆い固めて砂型とする工程と、砂型中の一次模型を溶融除去し、形成された空洞に溶融金属を充填して二次模型を成形する工程と、鋳砂を除去して二次模型を取り出し、意匠転写面の反対側に型枠を配置する工程と、二次模型の意匠転写面の反対側にバックアップ層を形成する工程とを含む、射出成形金型の製造方法である。
【0012】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態に係る射出成形金型の製造方法では、
一面側に母型(図示しない)の意匠面を模写した意匠転写面2と、この意匠転写面2の反対側面に熱媒体配管3の一部を没した状態で敷設可能な溝6と、を有する一次模型5を、熱溶融性材料で形成する工程(
図1の(イ)及び(ロ))と、
溝6に沿って一次模型5に、配管固定棒4が固定された熱媒体配管3を敷設する工程(
図1の(ハ))と、
一次模型5、配管固定棒4及び熱媒体配管3の周りを鋳砂8で覆い固めて砂型7とする工程(
図1の(ニ))と、
砂型7中の一次模型5を溶融除去し、形成された空洞に溶融金属を充填して二次模型9を成形する工程(
図1の(ホ))と、
鋳砂8を除去して二次模型9を取り出し(
図1の(ヘ))、意匠転写面2の反対側の縁に型枠10を配置する工程(
図1の(ト))と、
二次模型9の意匠転写面2の反対側にバックアップ層11を形成する工程(
図1の(チ))と、を具備している。
【0013】
図1の(ロ)に示す一次模型5は、蝋、発泡スチロール等の熱溶融性樹脂で形成されており、上述したように、一面側(
図1において下面)に母型(図示せず)の意匠を模写した意匠転写面2と、意匠転写面2の反対側の面(
図1において上面)に熱媒体配管3の一部を没した状態で敷設可能となるように形成された溝6を備える厚みが25〜30mm程度の板状の模型である。具体的には、母型の意匠面を模写した意匠転写面2を備える板状の熱溶融性樹脂(
図1の(イ))の意匠転写面2の反対側の面に溝6を形成して一次模型5とすればよい。熱媒体配管3の一部が没した状態とは、熱媒体配管3が、固形状の熱溶解性樹脂の水平面から内側に沈み込んだ状態を意味しており、わずかに沈み込んだ程度であってもよく、熱媒体配管3の配管径の半分くらいが没する深さの溝を形成するのが好ましい。
【0014】
図2は、一次模型5の意匠面が複雑な形状を示す例を示したものである。このように、意匠転写面2が複雑な意匠形状を有する領域や角部12を有していても、一次模型5の厚みをほとんど変えることなく溝6を設けることが可能である。このように一次模型5の厚みをほぼ一定の状態にすることができるため、後述する二次模型に関し、厚みもほぼ一定にすることができ、また、角部12に溝6を設けても、二次模型の形成工程で角部12に亀裂を生ずることなく鋳造することが可能である。
【0015】
溝6に配管固定棒4が固定された熱媒体配管3を溝6中に敷設する理由は、一次模型5を溶融除去する際に、熱媒体配管3が砂型7中で安定して維持されるようにするためである。熱媒体配管3と配管固定棒4との固定は、例えば、溶接によって行えばよい。
【0016】
次いで、一次模型5、配管固定棒4及び熱媒体配管3は、鋳砂8で周りを覆い固められて、砂型7が製造される。
【0017】
そして、砂型7を熱溶融性樹脂の溶融温度以上に加熱し、一次模型5を溶融し、流動性になった熱溶融性樹脂を溶融樹脂溜まり(図示しない)に移動させることにより、一次模型の形状をそのまま空洞とする。形成された空洞に溶融した鋳鉄を注ぎ込み冷却することで、鋳造品である二次模型9を成形する。二次模型9は、一次模型と同じ形状の意匠転写面2を備える鋳造品の層状物であり、意匠転写面の反対面には配管固定棒4を固定した熱媒体配管3の一部が埋没して固着している。鋳造品の厚みは、一次模型の厚みと変わることなく、角部12には亀裂が発生することはない。
【0018】
鋳砂を除去して二次模型9を取り出した後、意匠転写面2の反対側の縁に型枠10を配置する(
図1の(ト))。型枠10は、後述する意匠転写面2の反対側にバックアップ層11を形成する工程において、注入した断熱性素材が流れ難くするための障害壁となるものであればよく、その材質は特に限定されるものではない。なお、型枠10を配置する前後で、二次模型9の意匠転写面2を機械工作により修正又は加工し、意匠転写面の滑らかさ又は意匠模写の精緻さを高めてもよい。
【0019】
最後に枠型を配置した二次模型9の枠内にコンクリート又はモルタル等の断熱素材を注入して固め、バックアップ層11を形成する(
図1の(チ))。
【0020】
なお、
図1では、熱媒体配管3に配管固定棒4を固定した例を示したが、配管固定棒4は必ずしも必要ではない。配管固定棒無しの熱媒体配管3を用いた射出成形金型の製造例を
図3の(イ)〜(チ)に示す。
【0021】
すなわち、実施形態1の別の製造例は、
図3に示すように、一面側に意匠転写面2を有すると共に、この意匠転写面2の反対側面に熱媒体配管3の一部を没した状態で敷設可能な溝6を有する一次模型5を熱溶融性材料で形成する工程と、溝6に沿って一次模型5に熱媒体配管3を敷設する工程と、一次模型5及び熱媒体配管3の周りを鋳砂8で覆い固めて砂型7とする工程と、砂型7中の一次模型5を溶融除去し、形成された空洞に溶融金属を充填して二次模型9を成形する工程と、鋳砂8を除去して二次模型9を取り出し、意匠転写面2の反対側周縁に型枠10,10を配置する工程と、二次模型9の意匠転写面2の反対側にバックアップ層11を形成する工程と、を含む、射出成形金型の製造方法である。
【0022】
なお、砂型7を作製する際に、一次模型5及び配管固定棒無しの熱媒体配管3を
図3の(二)又は(ホ)とは逆さまに配置して、すなわち、意匠転写面2を上側にして、鋳砂8で覆い固めてもよい。一次模型5及び熱媒体配管3は鋳砂8で覆われて固められるため、一次模型5を溶融しても配管固定棒無しの熱媒体配管3は砂型7中に安定して維持される。
【0023】
(実施形態2)
本実施形態の製造方法は、実施形態1とは、一次模型が枠型を備えて形成される点で異なる。
具体的には、
図4に示すように、
一面側に意匠転写面2と、該意匠転写面2の反対側面に熱媒体配管3の一部を没した状態で敷設可能な溝6と、意匠転写面2の反対側の周縁に設けた型枠10’,10’とを有する一次模型5’を熱溶融性材料で形成する工程(
図4の(イ)及び(ロ))と、
溝6に沿って一次模型5’に配管固定棒4を固定した熱媒体配管3を敷設する工程(
図4の(ハ))と、
一次模型5’、配管固定棒4及び熱媒体配管3の周りを鋳砂8で覆い固めて砂型7’とする工程(
図4の(二))と、
砂型7’中の一次模型5’を溶融除去し、形成された空洞に溶融金属を充填して二次模型9’を成形する工程(
図4の(ホ))と、
鋳砂8を除去して二次模型9’を取り出し(
図4の(へ))、二次模型9’の意匠転写面2の反対側にバックアップ層11を形成する工程(
図4の(ト))と、を含む、射出成形金型1’の製造方法である。
【0024】
すなわち、本実施形態の製造方法は、一次模型5’が予め枠型10’を備えて熱溶融性材料で形成されている点で、実施形態1の製造方法と異なる。言い換えれば、周縁に型枠10’,10’を備えた一次模型5’は、砂型7’中で溶融され、枠型10’,10’を備えた二次模型9’が溶融金属で成形される点で実施形態1と異なっている。
なお、実施形態1に説明したように、本実施形態においても、熱媒体配管3に配管固定棒4を固定せずに、一次模型5’及び熱媒体配管3の周りを鋳砂8で覆い固めてもよい。
【0025】
実施形態1及び2に述べたように、本発明の方法で製造された射出成形金型は、熱媒体配管の一部が意匠転写面の反対面に埋め込まれているため、熱媒体配管と金型殻との接触面積がより大きくなり、熱伝達効率がよいというメリットを有する。また、二次模型を形成する際に、意匠転写面に存在する角部に亀裂を生ずることがない。
【符号の説明】
【0026】
1,1’ 射出成形金型
2 意匠転写面
3 熱媒体配管
4 配管固定棒
5,5’ 一次模型
6 溝
7,7’ 砂型
8 鋳砂
9,9’ 二次模型
10,10’ 型枠
11 バックアップ層
12 角部
21 射出成形金型
22 意匠転写面
23 熱媒体配管
24 バックアップ層