(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5747300
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】溢水防止装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20150625BHJP
E02B 7/50 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
E02B3/04
E02B7/50
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-151741(P2014-151741)
(22)【出願日】2014年7月25日
【審査請求日】2014年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−31936(JP,A)
【文献】
特開昭61−49013(JP,A)
【文献】
特開2000−345537(JP,A)
【文献】
特開2003−214049(JP,A)
【文献】
特開2004−360430(JP,A)
【文献】
特公昭39−28164(JP,B1)
【文献】
特開2012−255292(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0268506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/14
E02B 7/20−7/54
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口の溝状を呈する基体ブロック内に、当該基体ブロックの上面開口部を覆う大きさを具えた平板部とその両側部に垂設した脚状枠桿の間に板状フロートを取付けて成る遮水用パネルを昇降自在に収装してなる溢水防止装置であって、
当該基体ブロックの一側面の上縁に形成されている隙間から流水を受入れると共に、他側の隙間は遮水用パネルの昇降を妨げない状態で弾力的に閉鎖することに依り、当該隙間から水が漏れない様に閉鎖し、
当該基体ブロックは、一側面を溢水側に向け、他側面を溢水阻止側に向けると共に、上縁を地表に合わせた状態で埋設し、基体ブロック内に水が入り込むと共に当該基体ブロック内に留まらせることに依り、遮水用パネルがその浮力に基づき上昇して遮水作用を奏するように構成した溢水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波、堤防決壊、豪雨等に基づき家屋等に対する溢水の危険が生じた場合、これに対する防御が自動的に採られるようにした溢水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、津波、堤防決壊、豪雨等に基づき家屋等に対する溢水の危険が生じた場合、「土嚢」等を積み上げて浸水を防止することが一般的に採られている(例えば、特許文献1参照。)。
更に、浸水防止を迅速に行うための手段として、組み立て式の「遮水壁」を用いるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293260号公報
【特許文献2】特開2004−68271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した「土嚢」を用いた場合、その作業に時間が採られるため、余程事前に積み上げておかないと、溢水発生に間に合わなくなってしまう。 更に、その積み上げには顕著な労働性を伴うため、一般家庭においては玄関口、店頭等極めて狭い部分に対する設置に限られ、広い部分に対する設置には専門動労力の助けを借りなければ不可能とされた。
【0005】
また、上述した「遮水壁」の場合、ある程度の迅速性が得られるが、それでも溢水発生前に人手に基づく準備しておかなければならず、設置が遅れ場合は「間に合わなかった」と言うような事態を招いてしまうこととなる。 そして、その設置には少人数であるが人手を要するため、作業員確保と言うような問題も伴うこととなった。
【0006】
本発明は所要箇所の地中に予め設置しておき、洪水等が押し寄せた場合に、遮水用パネルが自動的に突出し、溢水に対する対策が押し寄せた水の力で達成されると言うような新規な技術の提供を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上面開口の溝状を呈する基体ブロック内に、当該基体ブロックの上面開口部を覆う大きさを具えた平板部とその両側部に垂設した脚状枠桿の間に板状フロートを取付けて成る遮水用パネルを昇降自在に収装
してなる溢水防止装置であって、 当該基体ブロックの一側面の上縁に形成されている隙間から流水を受入れると共に、他側の隙間は遮水用パネルの昇降を妨げない状態で弾力的に閉鎖することに依り、当該隙間から水が漏れない様に閉鎖し、当該基体ブロックは、一側面を溢水側に向け、他側面を溢水阻止側に向けると共に、上縁を地表に合わせた状態で埋設し、基体ブロック内に水が入り込む
と共に当該基体ブロック内の水の貯蔵に基づき、遮水用パネルがその浮力に基づき上昇して遮水作用を奏するように構成した溢水防止装置に係る。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上面開口の溝状を呈する基体ブロック内に、当該基体ブロックの上面開口部を覆う大きさを具えた平板部とその両側部に垂設した脚状枠桿の間に板状フロートを取付けて成る遮水用パネルを昇降自在に収装
してなる溢水防止装置であって、 当該基体ブロックの一側面の上縁に形成されている隙間から流水を受入れると共に、他側の隙間は遮水用パネルの昇降を妨げない状態で弾力的に閉鎖することに依り、当該隙間から水が漏れない様に閉鎖し、当該基体ブロックは、一側面を溢水側に向け、他側面を溢水阻止側に向けると共に、上縁を地表に合わせた状態で埋設し、基体ブロック内に水が入り込む
と共に当該基体ブロック内の水の貯蔵に基づき、遮水用パネルがその浮力に基づき上昇して遮水作用を奏するように構成したから、要溢水防止箇所に対して事前に設置しておくことに依り、大雨、洪水、津波等が発生して水が押し寄せた際、自動的に遮水用パネルAを立ち上がらせ、保護対象物に対する溢水発生を未然に防止することとなる。
そして、基体ブロック内に貯蔵された水が、溢水阻止側に流れ込むことがない。
【0009】
従って、従来のように、大雨、洪水、津波等が予想される際にあわてて構築するような「土嚢」積み、或いは、組み立て式の「遮水壁」の緊急組立に依存する場合に生じた、大きな労力の必要性、及び、直前の設置作業の必要性と言うような問題は全く解消されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】本発明の設置状態を表しかつ
図3に於けるY−Y線で切断した説明用断面図である。
【
図5】
図4の状態から作動した状態を表した説明用断面図である。
【
図6】本発明の基本的な一つの使用例を表した略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図において、1は上面開口の溝状を呈する基体ブロックであって、正面版部1aと背面版部1bと底版部1cとから成るものである。 そして、当該基体ブロック1は溢水を阻止するための場所に、その上縁を地表に合わせた状態で埋設するように構成してある(
図4及び
図5参照)。
【0012】
Aは遮水用パネルであって、下記する昇降用フレーム2と、板状フロート3とから成るものであり、上記した基体ブロック1内に昇降自在に収装されている。
【0013】
2は上記昇降フレームであって、前述した基体ブロック1の上面開口部を覆う程度の大きさを具えた平板部2aと、その両側部に垂設した脚状枠桿2b,2bとから成るものである。
そして、当該基体ブロック1内に収装した際、昇降用フレーム2の下端が底版部1cに接した状態において、その上端は基体ブロック1の上縁を超えた状態となることに依り、地表と平板部2aの間に水流入用隙間Mが形成されるように構成してある。
【0014】
2cは線状滑子であって、脚状枠桿2b,2bの前後面に突出状態で付設してある。 これは、基体ブロック1における正面版部1aと背面版部1bの内面に対する当該脚状枠桿2b,2bの接触摩擦の軽減化、すなわち、当該線状滑子2cによる線的接触に基づく昇降作動の円滑化を図るためのものである。 尚、これは他の手段で摩擦軽減を図るように構成しても良い。
【0015】
3は単独気泡を具えたプラスチック材などで形成した板状フロートであって、上記した脚状枠桿2b,2b間に張設してある。 そして、当該フロート3は、前述した溝状を呈する基体ブロック1内に水が入り込むことに依り、その浮力で上昇するように構成してある。
【0016】
4は弾力性を具えたパイプ材であって、複数の遮水用パネルAを横方向に連続させて設ける場合、各遮水用パネルAの間に介在させてその隙間を埋めると共に、互いに連動した昇降が成されるようにするための連動用介在材としての使命を担うものである。
【0017】
ところで、前記した基体ブロック1は一側面(例えば正面版部1aがわ)を溢水側(水が押し寄せる側)に向け、他側面(例えば背面版部1aがわ)を溢水阻止側(家屋等がある側)に向けて埋設する。 そして、当該一側面の上縁に形成されている隙間Mから流水を受入れると共に、他側の隙間Nはラバー帯B等を用いて、遮水用パネルAの昇降を妨げない状態で弾力的に閉鎖することに依り、当該隙間Nから水が漏れない様に構成してある。(
図4及び
図5参照)。
なお、当該隙間Nから水が漏れないための手段は、このようなラバー帯Bに代えて他の適宜な手段であっても可とする。
【0018】
以上のような構成を具えた本発明は、
図6に示すように家屋の前に、その他、ビル、マンション、地下通路、道路等その他任意の保護対象物の前面若しくは所要箇所に設置する。 そして、溝状を呈する基体ブロック1内に、遮水用パネルAをひっこめた状態(降下させた状態)に保っておくことに依り、通常時の邪魔性を回避する。
【0019】
そして、大雨、洪水、津波等により水が押し寄せてきた場合、隙間Mから流水が受け入れられるため、基体ブロック1内は水が満たされる。 そして、他側の隙間Nは、ラバー帯B等を用いて遮水用パネルAの昇降を妨げない状態で閉鎖することに依り、すなわち、弾力的に接触閉鎖することに依り、当該隙間Nからの水排出が阻止される様に構成してある。
【0020】
そのため、基体ブロック1内への水の貯蔵に基づき、板状フロート3に対する浮力付与が成され、遮水用パネルA全体の上昇が成され、当該遮水用パネルによる溢水阻止作用が果たされる。
図5は当該溢水阻止状態を表したものであって、通常同図に示すHの高さまでの水流阻止作用が奏されることとなるため、家屋等に対する良好なる溢水阻止作用が自動的に奏されることとなる。
【0021】
なお、水が引いた場合は、遮水用パネルAは自重により自動的に復元する。 また、余剰水が存在した場合は、ポンプ等を用いて排除することに依り、遮水用パネルAは完全に元状復帰させることが出来る。
【0022】
尚、本発明は遮水用パネルAを一枚分当たりの部分を一単位とし、必要に応じて複数単位を横方向に連ねることに依り、必要長さの溢水防止壁の形成が可能化される。
【符号の説明】
【0023】
1 基体ブロック
1a 正面版部
1b 背面版部
1c 底版部
A 遮水用パネル
2 昇降用フレーム
2a 平板部
2b 脚状枠桿
2c 線状滑子
3 板状フロート
4 パイプ材
B ラバー帯
N 隙間
【要約】
【課題】 本発明は堤防決壊、豪雨等に基づき家屋等に対する溢水の危険が生じた場合、これに対する防御が自動的に採られるようにした溢水防止装置に関する。
【解決手段】
上面開口の溝状を呈する基体ブロック1内に、当該基体ブロック1の上面開口部を覆う大きさを具えた平板部2aとその両側部に垂設した脚状枠桿2b,2bの間に板状フロート3を取付けて成る遮水用パネルAを昇降自在に収装し、基体ブロック1内に水が入り込むことに依り、遮水用パネルAがその浮力に基づき上昇して遮水作用を奏するように構成した溢水防止装置。
【選択図】
図1